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メドレーの歯科レセコン「Dentis(デンティス)」のログイン方法を解説

メドレーの歯科レセコン「Dentis(デンティス)」のログイン方法を解説

最終更新日

歯科医院の受付や会計業務が重なる時間帯に、レセコン端末の前でスタッフが順番待ちをする光景は珍しくない。

例えば、夕方の診療後に当日のレセプト処理をしようとした院長が、同じ端末で受付スタッフが予約管理を続けていて待たされた経験があるかもしれない。院内LAN上の従来型レセコンでは、院外からカルテを確認したくてもアクセスできず、診療後に医院へ戻って入力し直すといった手間も発生する。

こうした非効率を解消するためクラウド型レセコンの導入を検討する歯科医師は増えている。その代表例が株式会社メドレーの提供するDentis(デンティス)である。

本記事ではDentisの基本的なログイン方法から、院内運用のポイントや経営的な視点での導入メリット・留意点までを解説する。読者が翌日から安全かつ効率的にDentisを活用できるよう、臨床と経営の両面から実務に役立つ知見を提供する。

要点の早見表

項目内容
適応となる医院複数スタッフで同時に業務を行う中規模以上の歯科医院、新規開業でクラウド活用を志向するケース、訪問診療やオンライン診療に注力する医院などで特に効果を発揮する
ログイン方法Dentis専用のログインページにアクセスし、院ごとに発行された医療機関IDを入力後、各ユーザーに割り当てられたID(またはメールアドレス)とパスワードで認証する二段階方式を採用
必要な環境インターネットに接続できるWindowsまたはMacのPC、あるいは最新のiPad。本体にソフトのインストールは不要で、Google ChromeやSafariなど最新版ブラウザで利用可能。実効速度2Mbps以上の安定した回線推奨【2025年8月現在】
主な機能予約受付管理、電子カルテ、レセプトチェック・オンライン請求、Web問診票、オンライン診療、キャッシュレス決済、リコール(SMS・メール配信)、物販管理、訪問診療管理、収益分析など歯科医院運営に必要な機能を一体提供
臨床面のポイントスタッフ全員がクラウド上で同じ患者情報やスケジュールを共有でき、カルテ記入の順番待ちが不要。リアルタイムの入力補助や点検機能で記録漏れや入力ミスを減らし、診療の質と患者サービスの向上に寄与する
経営面のポイント院内サーバーや専用機器が不要でIT管理コストを削減。保険点数改定なども自動アップデートされ追加費用不要。予約システムやリコール機能によりキャンセル率低減や定期来院率向上が期待でき、分析機能でデータに基づく経営判断が可能
費用(導入・運用)初期費用約50万円、月額利用料4万円(税別、2025年8月現在)。端末台数やユーザー数による追加料金はなく定額制。クラウド型のためハード保守費が不要で、複数の別システムを併用する場合に比べ総コストを抑制しやすい
データ安全性と制度対応通信はSSL/TLSで暗号化され、Dentis提供元は国際標準の情報セキュリティ認証(ISO27001/27017)を取得済。データは日本国内のクラウドに毎日バックアップ保管。オンライン資格確認やレセプトの原則オンライン請求にも対応しており、2024年以降の制度要件も満たす
導入上の注意点インターネット接続に依存するため、回線障害時には一時的にシステムが利用できないリスクがある。導入初期にはスタッフ研修や旧システムからのデータ移行に時間を要する。クラウド上に患者データを預けることへの心理的抵抗がある場合は、セキュリティ対策内容を周知し安心感を醸成する必要がある

理解を深めるための軸

Dentisを評価するにあたっては、臨床面と経営面の二つの軸からその効果を考察することが重要である。それぞれの観点でDentis導入がもたらす変化を整理し、両者の関係性を捉えておきたい。

臨床現場にもたらす変化

Dentis導入により歯科診療の現場では情報共有と作業効率が飛躍的に向上する。例えば、予約から会計までの情報がクラウド上で一元管理されるため、従来は別々のシステムや紙で管理していた予約帳やカルテ記録をスタッフ全員が同じ画面上で確認できる。複数のユニットで同時間帯に処置が行われている状況でも、院長と歯科衛生士、受付がリアルタイムに患者情報や診療の進行状況を共有でき、カルテ入力や次の処置準備のための待ち時間が発生しない。患者の滞在時間短縮や待ち時間軽減につながり、サービス品質の向上が期待できる。

また、Dentisの電子カルテには入力補助機能やリアルタイムのレセプトチェック機能が搭載されている。これにより、記入漏れや記載ミスをその場で検知して修正でき、診療後に返戻や査定で対応に追われるリスクを減らせる。臨床の現場ではこのような機能が「ヒヤリハット」の低減にも寄与し、結果的に患者の安全につながる。例えば処置の算定漏れをその場で防ぐことで、後日の患者への追加請求や説明といったトラブルを回避できる。Dentis上で蓄積された診療データや画像データは院内のどの端末からでも確認できるため、症例検討会や他院への紹介状作成の際にも迅速に必要情報を取り出せる。こうした情報への即時アクセス性は、医師同士の連携や研鑽にもプラスに働き、ひいては臨床の質の底上げに寄与する。

加えて、クラウド型であるDentisはインターネット環境があれば院外からもアクセス可能である。往診先で患者情報を参照したり、自宅で診療記録を確認したりといった柔軟な働き方を実現し、紙のカルテやフィルムを持ち運ぶ必要がなくなる。これにより診療以外の業務負担を軽減し、本来の診療や患者対応に専念できる時間を増やすことができる。結果として、Dentisの臨床面での効果は、効率化によるスタッフ負担軽減と患者サービス向上という二つの側面で現れる。

医院経営にもたらす影響

一方でDentis導入が医院経営にもたらす影響も大きい。まず、複数のシステムを統合することで重複投資を避けられる点は財務面のメリットである。予約システム、レセコン、電子カルテ、患者向けメール配信などを別々に契約するとライセンス費用や保守契約が重複しがちだが、Dentisはそれらを一括提供するためトータルのコストを抑えやすい。初期費用と月額費用は発生するものの、院内サーバーの設置や定期的なハードウェア更新が不要になるため、中長期的には従来型システムに比べてコスト優位性が生じる。

人的リソース面でも、業務効率化は人件費の最適化につながる。例えばDentis導入によって1日あたりの事務作業時間が削減できれば、その分スタッフを患者対応や予防指導に振り向けることが可能になる。実際にDentisのユーザーからは、紙カルテの整理に費やしていた時間が1日1時間以上削減でき、少人数のスタッフでも医院運営が回るようになったとの報告がある。スタッフ残業の削減やパート従業員の勤務時間圧縮によって、Dentisの月額費用以上の人件費削減効果が得られるケースも考えられる。

さらに、Dentisを活用することで患者数や収益の増加も期待できる。オンライン予約の導入により新患の予約流入が促進されたり、リコール(定期メンテナンス案内)の効率化によって来院間隔が短縮されることは、結果的に収益向上に直結する。例えば、キャンセル率が高かった医院がDentisのリマインドメール機能を使って無断キャンセルを減少させ、稼働率アップにつなげた事例も報告されている。Dentisが持つデータ分析機能も経営改善に役立つ。診療内容別の売上構成や来院頻度、患者属性ごとの傾向などを可視化することで、提供する自費メニューの見直しやキャンペーン施策の立案など、データに基づいた戦略的な意思決定が可能となる。

経営リスクの低減という観点でもDentisは有用である。クラウド上にデータが保管されるため、院内PCの故障や災害によるデータ喪失リスクが極めて低い。データは日次でバックアップされており、万一院内の端末が破損しても別の端末から業務を再開できるため、診療の継続性確保というリスクマネジメント上の利点がある。また、保険制度の改定や診療報酬の算定要件変更にもクラウド経由でタイムリーに対応するため、経営側で煩雑なアップデート作業や情報収集に追われることがない。スタッフ教育に関しても、Dentisの操作は直感的でマニュアルなしでも習熟しやすいとの声があるほか、公式のヘルプセンターや動画チュートリアルが充実しており、新人スタッフの研修コストも抑えられる。総じてDentisの導入は、収益機会を拡大しつつコストとリスクを適切にコントロールするための経営戦略ツールとして機能すると言える。

このように臨床面の効率化と経営面の効率化は密接に関連している。診療現場の効率向上が患者満足度を高め、その結果リピート増加や紹介増にもつながる。一方、経営が安定しスタッフに余裕が生まれることで、より丁寧な患者対応や新たな医療サービス導入に投資でき、再び臨床の質向上に循環する。Dentisの特徴は、この好循環をテクノロジーで後押しし、診療と経営の双方の目標を両立させる点にある。

トピック別の深掘り解説

Dentis導入に適したケースと注意すべきケース

Dentisの導入効果が高いのは、デジタル技術を積極的に診療に取り入れたい歯科医院である。具体的には、複数の歯科医師やスタッフが在籍し同時並行で業務が進む中規模以上の医院、新規開業時に最新のクラウド環境を整備したい医院、予防歯科や訪問診療・オンライン診療など新しい取り組みに注力している医院などでは、Dentisの包括的な機能が真価を発揮する。一方で、インターネット回線が不安定な地域にある診療所や、院長以下スタッフがパソコン操作に極めて不慣れで紙中心の運用から急に移行する場合は注意が必要である。このようなケースでは、事前に通信環境を整備したり、段階的な導入(例えば予約システムだけ先に使ってみる等)で慣らしたりする工夫が求められる。高齢の院長が数年内に引退予定で大幅なシステム投資の回収期間が取れない場合などは、無理にDentisを導入せず最低限のレセコン更新に留める判断もあり得る。ただし、令和6年以降は原則としてレセプトのオンライン請求や電子的保険資格確認が求められる流れであり、長期的にはクラウド型を含むデジタル化は避けて通れない。Dentis以外の選択肢も含め、自院の規模、方針、ITリテラシー、地域事情を踏まえて総合的に判断することが重要である。

標準的な運用フローと品質管理の要点

Dentis導入後の標準的な一日の流れをイメージしてみる。朝、スタッフは診療開始前にDentisにログインし、その日の予約リストやカルテ情報を確認する。受付では患者の来院時にオンライン資格確認(マイナンバーカードによる保険証確認)をDentis経由で行い、問診票もペーパーレスでDentis上に入力される。診療中は歯科医師とアシスタントがチェアサイドのタブレットから処置内容をカルテ入力し、処置が終わればすぐに会計画面へ情報が連携される。会計担当者はDentisの会計機能で窓口負担金を算出し、必要に応じて領収書や明細書を印刷する。月末にはDentis上でレセプトデータを点検し、不備がなければボタン一つでオンライン請求ファイルを送信できる。

このようなワークフローを安定して運用するにはいくつかの品質管理上のポイントがある。まず、ユーザー権限の管理だ。Dentisでは院長や事務長を管理者として複数のスタッフアカウントを発行できるため、スタッフ個々にアカウントを割り当てて操作ログを明確にしておく。これにより誰がどの入力を行ったか追跡可能となり、インシデント発生時の原因究明がしやすい。また、スタッフにはログインパスワードの適切な管理を徹底し、他人への共有や使い回しを禁止する。次に、端末やネットワークの整備である。Dentis自体はクラウドサービスのため院内サーバーは不要だが、各ユニットや受付のPC・タブレットが快適に動作するよう、推奨スペックの端末と高速な通信環境を用意する。特に同時アクセスが増えると通信帯域を消費するため、可能であれば有線LAN接続や安定したWi-Fiルーターを設置し、回線の冗長化(予備のポケットWi-Fiなど)も検討したい。さらに、Dentisの各種チェック機能や入力必須項目を適切に設定し、院内ルールとして治療内容は退席前に入力・点検する、日報的に未入力カルテがないか確認する、といった運用を習慣化することが望ましい。こうした品質管理の工夫によって、Dentisの機能を最大限に活かしつつ、安全で確実な診療記録と請求業務を実現できる。

安全管理と患者への説明実務

Dentisを運用する上でデータの安全管理は最優先事項である。クラウド上に患者情報を預けることになるため、診療所としても情報セキュリティポリシーを策定し、スタッフ全員に周知しておく必要がある。具体的には、院内の端末にはタイムアウトによる自動ログアウト設定や画面ロックを導入し、無人の受付でカルテ情報が表示されたまま放置される事態を防ぐ。また、Dentisのログインパスワードは推測されにくい強度の高いものを設定し、定期的な変更を行う。スタッフ退職時にはただちに当該アカウントを無効化し、アクセス権限を適切に管理する。Dentis自体は通信暗号化や認証で高い安全性を担保しているが、院内のヒューマンエラー対策も同様に重要である。

患者への説明責任にも留意が必要だ。Dentisを使ってオンライン診療やWeb問診を行う場合、患者には事前に操作方法を案内し、不安があればスタッフがサポートする体制を整える。特に高齢の患者には、オンライン診療の際に事前に接続テストを行うなど配慮すると良い。クラウドにデータを保存することについて患者から質問があれば、「通信は暗号化され安全に管理されています」「紙のカルテと同等にプライバシーは保護されています」といった趣旨で丁寧に説明し、安心していただく。万一システム障害やネット回線不調でDentisが使用できない場合に備えて、受付用の紙台帳や紙カルテ用紙を予備で用意しておき、速やかに手書きで対応するといったバックアップ手順も周知しておく。復旧後にはDentisに速やかに転記し、紙の控えは適切にシュレッダー処理する。こうしたリスクシナリオを事前に共有しておくことで、患者への影響を最小限に抑えつつDentisを安心安全に運用できる。

導入費用と収益構造の考え方

Dentisの導入にあたって発生する費用は初期導入費用と月額利用料である。前述の通り執筆時点では初期費用約50万円、月額利用料4万円(税抜)という価格設定であるが、この額面だけを見て高いと判断するのは早計である。従来型のレセコンではサーバー機器の購入や設置工事、さらに毎月の保守点検費用が発生していたことを考えると、Dentisの価格はこれらすべてを含んだものである。また、DentisではPCやタブレットなど汎用端末を用いるため専用機器費用が不要であり、機器故障時も市販品で代替できる点でコストリスクが小さい。仮に同等機能を持つ別々のシステム(予約管理ソフト、カルテソフト、レセコン、メール配信サービス等)を個別に契約すれば、初期導入費用合算で100万円を超え、月額費用もトータル数万円~10万円程度になるケースが多い。それらをDentis一つにまとめることで重複コストを省き、窓口も一本化できるメリットは見逃せない。

収益面の効果も合わせて考慮すべきである。Dentis導入によって前述のようにキャンセル減少や定期来院増加が実現すれば、年間の診療収入が数%向上する可能性がある。仮に年間売上が5000万円の医院で2%増収できれば100万円の増収となり、Dentisの年間コスト約50万円(4万円×12ヶ月+初期費用を5年償却ベース換算)を上回るリターンが得られる計算である。また、医療DXを推進する観点から国のIT導入補助金等の公的支援策が利用できる場合もあり、条件が合えば初期費用の一部負担が受けられる可能性がある。Dentis導入を単なるコストではなく、中長期的な投資と捉え、効率化で削減できる人件費や新たに創出できる収益機会を総合勘案することが肝要である。

外注・他システム利用との比較検討

Dentis導入を判断する際には、他の選択肢との比較も行う必要がある。一つは、現行のレセコンや紙運用を維持しつつ、必要に応じて部分的に外部サービスを利用する方法である。例えば、現在のレセコンを使い続けながら、新患獲得のために別途Web予約サービスを契約したり、リコール葉書の送付を外注業者に委託したりするケースが考えられる。このアプローチは初期投資を抑えられる反面、情報が分散して二重入力が発生したり、業者とのやり取りに手間がかかったりといった非効率が残る。レセプト業務自体を事務代行会社に委託する方法もあるが、院内で逐次カルテ入力を行う必要は結局残る上、外注費用も発生するため、小規模院を除き常用はしにくい。

他の選択肢としては、オープンソースのレセコン(例えばORCAの歯科版)を用いて自院でカスタマイズ運用する方法も理論上は可能である。しかし、相応のIT知識とメンテナンス工数が必要であり、メーカーサポートが手厚い有償システムに比べてトラブル対応のリスクが高い。大規模医療法人で自前のIT部門を持つような場合を除き、一般の開業医が自力で安定したシステム運用を行うのは現実的ではない。

総じて、Dentis導入に踏み切らない場合でも、今後のオンライン資格確認やレセプトオンライン化に対応できる環境整備は不可欠である。既存システムを使い続けるのであれば、メーカーから提供されるアップデートの適用や、新しい周辺サービスとの連携を模索する必要があるだろう。その点、Dentisはベンダー側で法改正や機能追加に素早く対応してくれるため、自院で逐次対応する手間を省ける優位性がある。他の手段との比較でもこうした将来の柔軟性や見えないコストを考慮し、総合的に判断することが重要となる。

よくある失敗例とその対策

新しいシステム導入には失敗もつきものだが、あらかじめ典型的な失敗パターンを知り対策しておけば回避しやすい。まず多いのは、導入初期に十分な研修期間を取らず現場が混乱してしまうケースである。繁忙期や患者の多い曜日にいきなりDentisを本稼働させた結果、スタッフが操作に慣れず受付や会計に時間がかかり、患者を待たせてしまうといった事態が起こりうる。対策として、導入時期は比較的患者数の少ないタイミングを選び、事前にスタッフ全員でデモ環境を使ったシミュレーション研修を行うことが望ましい。メドレー社のサポート担当者に相談すれば、導入スケジュールに合わせてトレーニング計画を立ててくれるので積極的に活用したい。

次によくあるのは、せっかくDentisを導入したのに予約のオンライン化やリコールメール配信など一部機能を使いこなせず宝の持ち腐れになるケースである。従来のやり方に固執するスタッフがいる場合、新機能の活用が進まず、紙の台帳や電話予約と二重管理になってしまうこともある。これでは効率化効果が出ないため、院長自らが率先してDentisの機能を使い倒し、便利さをスタッフと共有していくことが大切である。例えば、予約枠の公開設定やリマインドメールのテンプレート作成などは院長・事務長が中心となって設定し、スタッフにもメリット(電話対応件数が減る等)を感じてもらうよう工夫する。

また、インターネット依存ゆえのリスク対応不足も失敗につながる。例えば回線障害が発生した場合に備えていなかったため、診療中にDentisが使えず業務が滞った、といった事例が考えられる。これを避けるには、予備回線を確保したり、一時的にオフラインでも患者対応を続行できるマニュアル(前述の紙台帳の準備など)を用意しておくことが有効だ。さらに、旧システムからのデータ移行でトラブルが起こるケースもある。患者基本情報や過去の診療データをDentisに引き継ぐ際、一部の項目が正しく移行されず抜け落ちてしまったり、データ整形に時間を要したりすることがある。移行作業は時間に余裕を持って行い、必要に応じて手動確認や修正を実施する。また、移行完了後もしばらくは旧システムのデータをバックアップとして保存しておき、万一移行漏れが判明した場合に備えると安心である。

最後に、導入後のフォロー不足も挫折の原因となりうる。最初は順調に使えていても、スタッフの入れ替わりや新機能追加の際に対応できず徐々に使いこなし度が低下してしまう場合がある。これを防ぐため、Dentisのヘルプセンターや定期的なアップデート情報には目を通し、院内で定期的に運用状況をチェックするミーティングを開くと良い。困ったときにはDentisのユーザーコミュニティやサポートに相談し、常にベストプラクティスを取り入れて運用の質を高めていく姿勢が重要である。

導入判断のロードマップ

Dentisの導入を検討するにあたっては、いくつかの段階を踏んで意思決定と準備を行うとスムーズである。まず、自院の課題とニーズを洗い出すことから始める。患者数の規模、現在発生している業務上の無駄やミスの状況、新たに提供したいサービス(例:オンライン診療や矯正など自費診療の拡充)の有無などを整理し、Dentis導入によって解決・実現したい事項を明確にする。次に、概算の予算と投資対効果をシミュレーションする。初期費用や月額費用に対し、業務効率化で削減できる人件費や増やせる診療時間、患者増による増収見込みを数値化し、どの程度でペイするか目安を立てておく。

次の段階では情報収集と相談を行う。Dentis公式サイトから資料請求やオンラインデモを依頼し、実際の画面や操作感を確認する。可能であれば導入済みの同業の先生から使用感を聞いたり、メーカー主催のウェビナーや展示ブースで質問したりして疑問点を解消しておく。また、自院のIT環境(ネット回線速度や院内LANの有無、PCの台数と性能)を点検し、不足があれば事前に整備計画を立てる。例えばWi-Fiの電波が診療チェアまで届いていない場合は中継器を設置する、古いWindows7PCがあればWindows11搭載機に更新するといった措置である。スタッフへの事前説明もこの段階で行う。新システム導入の目的と期待効果を共有し、不安や抵抗感があるスタッフには個別に説明して理解を促す。場合によってはスタッフの中からITリテラシーの高いメンバーを推進担当に指名し、導入準備を手伝ってもらうとよい。

準備が整ったら、導入日程と移行プランを策定する。例えば月初からDentisを稼働開始できるよう、前月のうちに必要なデータ登録を済ませ、メーカー担当者と最終チェックを行う。休診日を利用してスタッフ全員でDentisの操作訓練を実施し、想定される一連の業務(受付〜会計、レントゲン画像の取込み、予約変更やキャンセル処理など)を実際にやってみて手順を確認する。本番開始後1〜2週間はメーカーのサポートを受けつつ、小さな不明点も都度問い合わせて解決し、現場の不安を早めに取り除く。紙の台帳や旧システムからの移行直後は、万一に備えて両システムを併用しながら照合確認する期間を設けてもよい。徐々にDentisの操作に習熟し安定稼働が確認できたら、旧システムはバックアップを残して停止する。

導入後も、定期的にDentisの新機能リリース情報や活用事例に目を通し、現場の声を踏まえて運用ルールを改善していく。スタッフから「この入力が手間」「この画面が見づらい」といった声が出た場合、設定変更やワークアラウンドで解決できないか検討する。Dentisはアップデートで日々進化しているため、改善要望はメーカーに伝えることで将来のバージョンで解消される可能性もある。単にシステムを導入して終わりではなく、自院の成長に合わせてDentisを使いこなしていく姿勢が、最終的な投資対効果を最大化するポイントである。