
歯科用レセコンをランキングで比較!価格が安いメーカーやシェアが高い製品は?
歯科医院の運営で「レセコン選び」に頭を悩ませた経験はないだろうか。保険請求のレセプト作成は診療報酬という医院収入に直結する業務であり、その効率と正確さは経営にも大きく影響する。実際、歯科医院の約99%がレセプトコンピュータ(レセコン)を導入している必須ツールである。
しかしメーカー各社から数多くの製品が発売され、それぞれ機能も費用も異なるため、どれが自院に最適なのか判断が難しいという声を多く聞く。また、現在使用中のレセコンのサポート終了や更新費用の高騰を機に、乗り換えを検討する歯科医師も少なくないだろう。
本記事では、歯科用レセコンの主要製品について臨床現場での使い勝手と医院経営への貢献の両面から徹底比較し、それぞれの強みと弱みを明らかにする。単なる人気ランキングや価格比較にとどまらず、各製品がどのような診療スタイル・経営戦略にマッチするかまで踏み込み、投資対効果(ROI)を最大化するためのヒントを提供したい。
主要歯科用レセコン一覧
以下に、本記事で取り上げる主な歯科用レセコンの特徴をまとめた。導入形態(クラウド型 or オンプレミス型)、初期費用と月額費用(いずれも税込の目安)、そして特筆すべきポイントを一覧で比較している。
製品名(メーカー) | 導入形態 | 初期費用(税込) | 月額費用(税込) | 特徴・ポイント |
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WiseStaff(ノーザ) | オンプレミス | 要問い合わせ ※ | 要問い合わせ ※ | 歯科レセコン市場シェア上位(約22%、2019年調査)、24時間保守対応、豊富な他社システム連携 |
palette / MIC WEB SERVICE(ミック) | オンプレミス(※クラウドサービスあり) | エントリープラン: 約1,900,000円 | 月額16,280円~ | 老舗メーカーの全国導入実績、電子カルテ機能搭載、必要機能を選んで導入可能 |
POWER5G(デンタルシステムズ) | クラウド型 | 約187,000円~ | 月額25,300円 | クラウド型レセコンの代表例、Windows/Mac対応、直感的UIと高速レセプト請求 |
Sunny-NORIS(サンシステム) | クラウド・オンプレ選択可 | 約296,000円~ | 月額40,000円~ | クラウド/オンプレ自在、手厚いサポート(訪問対応あり)、保険証スキャナ標準搭載 |
Opt.one(オプテック) | オンプレミス | 約1,500,000~1,900,000円 | 月額23,900~28,600円 | 電子カルテ一体型の高機能レセコン、時系列表示カルテで視認性◎、他システム連携多数 |
DOC-5 プロキオン(モリタ) | 院内クラウド方式 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 歯科大手メーカー製、算定漏れ自動チェック機能、ハードは既存PC利用で導入容易 |
アットレセ(ベントサイド) | クラウド型 | 0円 | 月額14,410円 | 初期費用・サポート無料の低価格モデル、必要機能に特化、3ヶ月間の無料お試し可 |
ジュレア(ピクオス) | クラウド型 | 0円 | 月額25,300円 | 初期費用0円で端末制限なし、予約システム標準搭載で入力手間削減、月額定額制 |
iQalte(プラネット) | オンプレミス | 0円~ | 非会員: 月額20,900円~ ※ | 紙カルテ感覚の画面デザイン、分かりやすい操作体系、会員制度あり費用優遇 |
Dentis(メドレー) | クラウド型 | 約500,000円 | 月額40,000円 | 新興クラウド型、予約・在宅診療など多彩な機能、手書きメモやオンライン診療対応 |
※価格は2025年現在の情報であり、実際の導入費用は構成や時期により異なる場合がある。また「要問い合わせ」はメーカーに個別見積もりが必要なことを示す。
歯科レセコンを選ぶための比較ポイント
数あるレセコンの中から自院に最適な1台を選び抜くには、いくつか注目すべき比較ポイントが存在する。ここでは臨床面と経営面の双方で重要となる評価軸を整理し、各軸でどのような差異が生まれるか、それが診療現場の質や医院収益にどう影響するかを解説する。
機能・操作性と臨床現場での有用性
レセコン選定でまず考慮すべきは、搭載している機能と操作性である。各メーカーともレセプト請求や会計、予約管理など基本機能は共通しているが、細かな使い勝手や追加機能に違いがある。例えば、カルテ入力のしやすさは臨床効率に直結する。紙のカルテと同じレイアウトで画面表示する製品(例:iQalte)や、テンプレート文字列を選ぶだけでカルテ記入が完了する機能を持つ製品(例:ミックのpalette)など、初心者でも直感的に扱える工夫を凝らしたレセコンも存在する。操作が複雑なシステムでは、スタッフの習熟に時間がかかりヒューマンエラーの原因にもなりうるため、誰でも迷わず入力できるUI設計かどうかは重要な比較ポイントである。
また、製品ごとに強みとなる特徴的な機能にも注目したい。例えば訪問歯科診療への対応は近年重要度を増している。訪問診療の入力業務を簡素化する機能(POWER5Gでは訪問診療の入力が3ステップで完了できる設計)や、介護保険請求への対応(WiseStaffやDentisなど、介護サービスの居宅療養管理指導料を扱える機能)は、高齢患者を多く診る医院では必須だろう。同様に、画像管理や口腔内写真の取り込み、口腔内所見の記録など、診療の質に関わる機能が充実しているかも臨床面での選定基準となる。
導入コスト・運用コストと経営効率
レセコンは高価な機器であり、その導入コストと運用コストを把握することは経営判断上避けて通れない。大きく分けて、クラウド型とオンプレミス型(院内設置型)で費用構造が異なる。クラウド型は初期費用がゼロ〜数十万円程度と低めで、月額利用料(概ね2〜3万円前後)が継続的に発生するモデルである。一方、オンプレミス型は買い切り型とも言われ、ソフトウェア使用ライセンスや専用機器に対してまとまった初期投資(200万円前後になるケースも多い)が必要だが、その後の月額費用は保守料程度(年数十万円)に抑えられる。
単純な5年間の総支出で比較すると、多くの場合クラウド型の方が初期負担が軽く、トータルでも抑えやすい傾向にある。例えばクラウド型レセコンに月額3万円で5年間(60ヶ月)契約した場合の総額は約180万円となる。
一方、オンプレミス型で初期費用250万円・年間保守12万円と仮定すると、5年で計310万円の支出となり、クラウド型より高額だ。ただしオンプレミス型はハードを長期間使い続ければ長期的には元が取れる可能性もあるため、自院の事業計画に合わせて試算するとよい。また現在はIT導入補助金など公的助成を利用できる場合も多く、条件に合致すれば初期費用負担を大幅に軽減できる。経営効率の観点からは、「1症例あたりのITコスト」を意識するとわかりやすい。月あたりのレセコン費用を新患・来院数で割り算すれば、1患者あたり何円のIT投資になるかが計算できる。高機能だが高額なシステムが、その費用に見合うだけの生産性向上や増患効果をもたらすかを判断する材料になるであろう。
クラウド型かオンプレミス型か:利便性とリスク
前述のコストに関連して、クラウド型 vs オンプレミス型の選択も重要な比較軸である。クラウド型レセコンはインターネット経由でサービスにアクセスするため、院外や在宅でもデータ閲覧・入力が可能であり、訪問診療時にその強みを発揮する。また、ソフトウェアのバージョンアップや診療報酬改定への対応が自動で迅速に行われる点もメリットだ。例えばクラウド型なら点数改定後1〜2日でシステムが更新されるのに対し、オンプレミス型では各医院がメーカー提供のパッチを適用するまで1週間程度かかる例もあると言われる。常に最新制度に追随できることはレセプト請求漏れ防止につながり、結果的に収入機会の損失を防げる経営メリットがある。
一方、クラウド型にも留意点はある。通信環境に依存するため、ネットワーク障害時には業務が停止するリスクがある点だ。ただし各メーカーとも非常時に備えたデータバックアップやオフライン対応策を講じており、たとえば定期的に院内へデータを自動保存したり、一時的にオフラインモードで入力を続行できる仕組みを備えるなど工夫している。逆にオンプレミス型は院内ネットワーク内で完結するため、外部インターネットに左右されず安定性が高い利点がある。ただし停電や災害で院内機器が故障した場合に備え、RAID構成の活用や外部ストレージへのバックアップ保存など自前でのBCP対策が必要だ。総じて、クラウドは利便性と自動更新で優れる反面、通信リスクを管理する必要があり、オンプレミスは速度と独立性で優れるが、自院で機器管理をする手間がかかると言える。
電子カルテ連携・他システムとの拡張性
歯科用レセコンの中には、単なる請求・会計システムに留まらず電子カルテ機能を内蔵しているものが多い。たとえばミックの「palette」は予約機能や電子カルテをワンパッケージで提供し、オプテックの「Opt.one」は電子カルテを軸とした運用を前提に設計されている。これに対し、昔ながらのレセコンでは会計・請求に特化し、カルテは紙や別ソフトで管理していたケースもある。近年は一体型が主流とはいえ、自院の運用スタイルによっては敢えてシンプルなレセコン+紙カルテの組み合わせを維持する選択肢も考えられる。電子カルテ一体型のメリットは、患者情報が一元管理でき業務効率が高まる点だが、もし現在使用中の独立した電子カルテソフトがありそれを継続利用したい場合、レセコン側が他社製カルテとのデータ連携に対応しているかがポイントとなる。ORCA(医科で普及しているオープンソースのレセコン基盤)のように、複数の電子カルテとAPI連携できる製品も一部存在するが、歯科では自社開発のクローズドなシステムが多いため、導入前に確認したい。
さらに、画像診断装置や予約システムとの連携も拡張性の観点で重要だ。例えばデジタルレントゲンや口腔内スキャナーの画像をレセコンの患者画面からシームレスに閲覧できれば説明ツールとして有用であるし、ウェブ予約システムやリマインダーサービスと接続できれば患者の無断キャンセル減少やリコール促進による増患効果も期待できる。Opt.oneやWiseStaffでは他社製システムとの連携モジュールが多数用意されており、導入後に医院独自のITエコシステムを構築しやすい。対して単体完結型のシステムでは連携機能が限定的な場合もあるが、その分設定が簡潔でトラブルが少ないという利点もある。将来的な拡張の余地をどこまで求めるか、現在のIT環境と照らし合わせて選定しよう。
サポート体制と運用時の安心感
レセコンは毎日の診療で酷使されるシステムだけに、導入後のサポート体制も製品選びの重要な判断基準である。トラブルや疑問が生じた際に迅速かつ的確なサポートを受けられないと、診療や会計業務が滞り患者にも迷惑がかかってしまう。老舗メーカーの多くは全国に支店や担当SEを配置し、導入時の講習や定期メンテナンス、電話サポートなどを充実させている。例えばノーザ社のWiseStaffは24時間体制のリモート保守サービスを提供しており、夜間でも緊急の問い合わせに応じてもらえる安心感がある。またデンタルシステムズ社のPOWER5Gは土曜日も電話サポートを受け付けており、週末診療のクリニックでも心強い。
一方で地域密着型の中小メーカーでは、対応エリアが限定される代わりにきめ細かな訪問対応やユーザーコミュニティによる情報共有が手厚い場合もある。例えばリード社の「Win Smile」は関東圏のみのサポート展開だが、その分導入先への直接フォローアップに力を入れているとされる。レセコンは長期にわたり使い続けるインフラであり、メーカーの経営体力やサポート拠点の充実度も無視できない。市場シェアの高いメーカーはユーザー数が多くノウハウも蓄積されている反面、一人ひとりのユーザーへの対応は画一的になりがちだ。逆にシェアが小さい新興メーカーでも、もし自院のニーズに合致した独自サービスを提供しているなら検討価値はあるだろう。導入後に困ったとき駆け込める先があるか、契約前にサポート内容を確認しよう。例えば「平日夜間や休日のサポート可否」「リモート保守の有無」「定期研修会や操作トレーニングの提供」などを比較すると、製品ごとの運用面での安心感の差が見えてくる。
主要レセコン製品ごとの特徴とレビュー
以上の比較軸を念頭に、ここからは日本国内で導入例の多い代表的な歯科用レセコンについて、各製品の特徴と専門家視点での評価を述べていく。それぞれ客観的なデータに基づく強み・弱みを整理し、併せて「どのような歯科医院に向いているか」を検討する。読者自身の診療スタイルや経営方針と照らし合わせながら参考にしてほしい。
WiseStaff(ノーザ)— シェアトップクラスの安定型レセコン
WiseStaffシリーズは株式会社ノーザが提供する歯科用レセコンで、国内トップシェア(約22%、2019年調査)を誇る王道製品である。長年にわたり改良を重ねてきた実績があり、信頼性・安定性に定評がある。導入形態は院内サーバーを用いるオンプレミス型であり、スタンドアロンでも安定して稼働する。大規模な歯科医院から小規模クリニックまで幅広く導入されており、操作に癖が少ないオーソドックスな設計は多くの歯科スタッフが使い慣れているだろう。
標準で歯科診療に必要な機能は一通り網羅されており、レセプト請求漏れを防ぐチェック機能やオンライン請求機能も完備している。オプションで介護保険請求ソフト「+Care」や歯周検査入力「+Perio」などを追加でき、必要に応じて機能拡張が可能だ。他社システムとの連携実績も豊富で、予約管理システムやデジタルレントゲンなどと連動させて業務効率を高めるクリニックも多い。メーカーのノーザは全国にサポート網を持ち、前述の通り24時間対応の保守サービスも選択できるため、夜間や休日でもトラブルに即応してもらえる安心感がある。長期間使っているユーザーも多く、アップデートを経ても操作体系が大きく変わらず継続利用しやすい点も評価される。
しかし、クラウド型全盛の時代においてもオンプレミス中心のため、初期導入費用が比較的高額になりやすい傾向がある。また高機能ゆえに「自院では使いこなせない機能まで搭載されている」という声もあり、小規模で必要最低限の運用を望む医院にはオーバースペックとなる可能性もある。月額保守料やオプション費用を含めるとランニングコストは安くはなく、コスト重視で最低限の機能だけ使いたい場合には他の低価格クラウド型も検討したい。
総合すると、レセコンに安定性と充実したサポートを最優先する医院に適した製品である。特に日々の診療件数が多くレセプト業務が膨大な中・大規模医院や、夜間休日も含めトラブル対応の体制を万全にしておきたい医院には安心して導入できるだろう。逆に多少コストが嵩んでも確実に請求漏れを防ぎたい、様々な機能を駆使して保険請求の点数を最大化したいと考える院長にとって、WiseStaffは心強いパートナーとなる。
一方、費用を抑えたい小規模医院やITに明るい若手歯科医師で「クラウドで十分」という場合には、後述するクラウド型製品の方が合致する可能性がある。
palette/MIC WEB SERVICE(ミック)— 老舗メーカーの柔軟なオールインワン
株式会社ミックの提供する「palette(パレット)」は、40年以上の歴史を持つ歯科レセコンの草分け的存在である。現在はクラウド技術を取り入れた「MIC WEB SERVICE」として提供されており、必要な機能のみを選択して契約できるサブスクリプションモデルを採用している。導入形態は基本的に院内サーバー型だが、クラウドを活用した遠隔サービスやデータ連携にも対応しており、クラウドとオンプレミスのハイブリッド的な柔軟性が特徴だ。
老舗企業だけあって、歯科医院の実情に即したきめ細かい機能が充実している。電子カルテ機能や予約管理、経営分析まで包括した歯科トータルシステムとして利用できるのがpaletteの大きなメリットだ。カルテ入力ではあらかじめ登録した定型文を選ぶだけで記録が完了する機能があり、紙カルテ記入よりも大幅なタイムセーブを実現できる。高度な分析機能も備え、例えば患者属性や治療内容から自院の収支バランスを分析するといった経営支援まで可能である。また、ミックはユーザー向けのエントリーモデルも用意しており、導入費用を抑えたいクリニックには基本機能だけを低価格で提供するプランを選ぶこともできる。後からオプション機能を追加していける拡張性もあり、開業当初は最低限から始めて徐々にシステムを強化するという使い方も許容されている。
オンプレミスをベースとするシステムなので、クラウド専業の新興サービスに比べると初期費用やサーバー管理の負担がかかる。また機能が多彩な分、全てを使いこなすにはそれなりのITリテラシーと慣れが必要かもしれない。とはいえサポート体制は充実しており、全国サポート網に加えてオンラインでの操作説明や研修も行っているため、習熟面の不安はメーカー側でフォローしてくれる。もう一点、paletteは従来からのユーザーが多く導入実績が豊富な反面、「画面デザインや操作体系がやや古くさい」という指摘もある。最近のスタイリッシュなUIに慣れた世代には、レトロな画面レイアウトが好みに合わない可能性もある。ただ逆に言えばレセコン黎明期からの安定した操作性が継承されているとも取れ、既存ユーザーにとっては居心地の良い改善を積み重ねている印象である。
歯科医院経営をオールインワンのITシステムで包括的に管理したい院長に適した製品と言える。レセプト請求だけでなく予約・カルテ・経営分析まで一元管理し、将来的に自費診療の拡大や医院経営の効率化を図りたい場合、paletteの豊富な機能群が力を発揮するだろう。また全国の多数のユーザーコミュニティから得られる情報交換や安心感も、老舗メーカーならではの利点である。初期コストに余裕があり、長期的に見て自院独自のシステムを作り込みたいと考える場合にも、柔軟にカスタマイズ可能なpaletteは魅力的だ。
一方で、予約機能やカルテは他社製を使っているからレセコン単体で良い、といった場合には、もう少しシンプルな製品を選んだ方がコストパフォーマンスに優れるかもしれない。
POWER5G(デンタルシステムズ)
POWER5G(パワーファイブジー)は、デンタルシステムズ株式会社が提供するクラウド型の歯科用レセコンである。比較的新しい世代の製品であり、WindowsパソコンだけでなくMacやタブレットからも利用できるマルチOS対応や、紙カルテの操作感を意識した直感的なUI設計が特徴的だ。料金プランは月額課金のサブスクリプションモデルと、ソフトウェアライセンス買い切りモデルの両方が用意されており、医院の資金計画に合わせて選択できる点もユニークである。
完全クラウド型の利点を活かし、場所を選ばず入力・閲覧可能な柔軟性が第一に挙げられる。院内のどの端末からでも同じデータにアクセスでき、院外からもVPN等を介して利用可能なため、在宅での事務作業や往診先でのカルテ参照にも便利だ。また操作性への配慮が随所に見られ、画面レイアウトはあたかも紙のカルテをめくるような感覚で使えるよう工夫されている。入力の手順も簡略化されており、特に煩雑になりがちな訪問診療のレセプト入力が3ステップで完了する設計は実用的である。レセプト請求処理自体も高速で、月末の請求業務に時間を取られない。さらに、メーカーが土曜日も電話サポートを行っており、週末に不具合が起きてもすぐに相談できるのはクラウド型では珍しい手厚さだ。
クラウドサービス全般に言えることだが、利用には常時安定したネット接続が前提となるため、通信環境が脆弱な地域では導入に注意が必要だ。また、従来型のレセコンから乗り換える場合には操作体系がかなり刷新されているため、最初は戸惑うスタッフもいるかもしれない(もっともUIが直感的なため慣れやすいとの評価が多い)。費用面では月額利用料が2〜3万円台と平均的だが、複数端末で利用する場合も追加料金が発生しないため、結果的にコストパフォーマンスは高いと言える。初期費用はクラウド版なら20万円未満と安価だが、ライセンス購入プランを選ぶと十数万円〜数十万円の機器費用が一括発生するため、契約形態によって支払いタイミングが異なる点に留意したい。
ITへの抵抗が少なく、最新のクラウド技術による効率化を積極的に取り入れたい医院に適している。例えば、スタッフが自宅から日報入力を行ったり、院長が訪問診療先でカルテを確認したいといったニーズがある場合、POWER5Gのクラウド性は大きな武器となるだろう。Windows PCに限らずMacやiPadでも操作したいというこだわりを持つ医院にも有力な選択肢である。また、IT導入補助金の対象ツールでもあり、補助金を活用して比較的低予算で先進的なレセコンを導入したい新規開業医にもマッチする。
一方で既存のレセコン資産(例えば過去の膨大な蓄積データ)をそのまま移行したいケースでは、クラウド間のデータコンバートに時間を要する可能性もあるので、事前にメーカーへ確認が必要だ。
Sunny-NORIS(サンシステム)
Sunny-NORIS(サニーノリス)は、サンシステム株式会社が開発した歯科用レセコンで、クラウド型・オンプレミス型のどちらにも対応した珍しいモデルである。医院の方針や環境に合わせてクラウド運用か院内サーバー運用かを選べるため、「ネット環境は不安だがクラウドのメリットも捨てがたい」というニーズに応えられる柔軟性がある。加えて、サポートの手厚さにも定評があり、電話・メール・リモート対応はもちろんのこと、必要に応じてFAXやスタッフ訪問によるフォローまで行ってくれる。
最大の特徴は前述の導入形態の選択肢である。開業時にクラウド型でスタートし、その後院内サーバーに切り替える(またはその逆)といった運用変更も可能で、クリニックの成長や環境変化に合わせた柔軟な対応ができる。また、他社に先駆けて保険証スキャナー機能を標準搭載しており、患者の保険証をスキャンするだけで資格情報を自動入力できる。これにより入力ミスが減り、受付の時短にもつながると評判だ。電話の着信ポップアップ機能もあり、診療中にかかってきた電話の内容を逃さず記録できるなど、痒いところに手が届く工夫が光る。2025年には新バージョン「Sunny-XROSS(クロス)」もリリースされ、オンライン請求の自動化や医療機器との連携強化などDXを推進する機能が追加されている。サポート面では、地方医院でも安心の訪問サポートやリモート保守が充実し、導入後の不安を徹底的に取り除く姿勢が評価されている。
ただし、初期費用および月額費用は他社クラウド型に比べるとやや高めに設定されている(初期導入費用30万円前後、月額4万円程度)。そのため小規模医院が費用対効果だけを見ると導入を躊躇するケースもあるかもしれない。しかし上記のようにサービス内容が充実しているため、単純な価格比較では測れないバリューがある点は理解しておきたい。また、全国展開はしているもののメーカー自体の知名度はノーザやミックに比べれば高くないため、周囲の同業者から口コミ情報を得にくいという難点もある。導入する場合はデモ機や説明会などで事前によく操作感を確認し、自院スタッフにも意見を聞いて納得した上で進めると良いだろう。
サポートの手厚さと将来の運用変更の自由度を重視する医院にフィットする製品である。地方で周囲に頼れるIT人材が少ない環境でも、メーカーがまるで「専属のIT担当」のように懇切丁寧に支援してくれる安心感は大きい。また、将来的に分院展開や施設拡張の可能性があり、クラウド⇔オンプレの構成を見直す可能性がある場合にも、Sunny-NORISなら柔軟に対応できる。多少コストがかさんでも「安心料」と割り切れる規模の医院や、受付業務の効率化(保険証スキャン等)に価値を感じる院長には、検討する価値が高いだろう。
Opt.one(オプテック)
Opt.one(オプトワン)は株式会社オプテックが提供する歯科用レセコンで、電子カルテ機能と完全に統合されたハイエンド志向の製品である。厚生労働省の電子カルテ指針に沿った高いセキュリティとコンプライアンス対応を謳っており、大規模医療法人などでも導入されている。導入形態はオンプレミス型で、初期費用は電子カルテ+レセコン+周辺システム一式で150〜200万円程度と比較的大きな投資が必要だが、その分豊富な機能を備える。
カルテを中心に据えたシステム設計が特徴で、診療記録が時系列で誰にでも見やすく表示されるインターフェースになっている。文章作成支援ツールも搭載され、患者にとって分かりやすい文章で指導や説明文を作成・印刷できるなど、医療サービスの質向上につながる機能が多い。iPad用の問診票アプリも用意されており、タブレットで患者に記入してもらった内容が即座にサーバーに取り込まれる仕組みも先進的だ。他社システムとの連携も柔軟で、画像診断ソフトや他社製電子カルテ、さらには歯科医院向けPOSレジシステムなど多数のシステムとデータ連係できる拡張性を持つ。導入後は歯科医療ITに精通したスタッフがサポートしてくれるため、高度な機能も使いこなせるよう丁寧にフォローしてもらえる。
しかし、初期導入コストと月々の維持費用(ライセンス料等)は高額である点はやはりネックになりやすい。またクラウドサービスではないため、院外からアクセスしたり自宅PCで確認したりといった使い方は基本的に想定されていない(VPN等を組めば不可能ではないが専門知識が要る)。画像や連携機能が豊富な反面、それらをフル活用しない小規模医院では宝の持ち腐れになる可能性もある。さらに多機能ゆえにセットアップやカスタマイズに時間がかかり、導入プロジェクトには余裕を持ったスケジュールが必要だ。診療を止めずに旧システムからデータ移行するには細心の注意がいるため、導入前にメーカー担当と十分な打ち合わせをしたい。
質の高い歯科医療サービスの提供と高度な院内IT化を目指す医院にはうってつけだ。患者への説明資料をその場で作成したり、歯周病検査結果を詳細に電子管理してモニタで可視化するなど、診療レベルでITを駆使したい先生には大きな助けとなる。特に自費治療や予防歯科に力を入れており、患者満足度向上やリピート率アップを狙う経営方針であれば、Opt.oneの豊富な機能に投資する見返りは十分期待できる。
一方、保険中心でシンプルな運用を望む場合や、予算に限りがある場合は、ここまでの高機能は不要かもしれない。その場合はより安価で必要最低限の機能に絞った製品の方がROIが高くなるだろう。
DOC-5 プロキオン(モリタ)
DOC-5(ドックファイブ)プロキオンは歯科器材大手の株式会社モリタが提供するレセコンである。長らくパッケージ販売されてきたが、近年は月額ライセンス方式も取り入れるなど時代に合わせたビジネスモデル転換も進めている。導入形態は「院内クラウド方式」と称されるオンプレミス型で、複数端末から院内ネットワーク経由でサーバにアクセスするタイプだ。現行バージョンは電子カルテとも連動し、問題志向型(Problem Oriented)カルテの概念を取り入れた先進的な特徴を持つ。
診療入力中にリアルタイムで算定ガイドを画面表示してくれるなど、うっかりミスや見落としの防止を重視した設計になっている。診療終了時には自動でレセプトチェックが走り、本来加算すべき点数の漏れがあれば教えてくれる機能もユニークだ。これによりベテランでも見逃すことがあるような請求漏れを防ぎ、収益機会を最大化する助けとなる。またハードウェアには特別な専用機を必要とせず、既存のWindows PCで動作するため追加の設備投資を抑えられる点が特徴。院内LAN上でサーバ・クライアント構成を組む方式なので、仮にインターネット接続が断たれても院内業務には支障が出ず、安定稼働を維持できる。
しかし、現時点(2025年)ではフルクラウド型の提供がなく、完全なリモートアクセスやクラウドバックアップといった機能は準備中である。他社がクラウド移行を進める中、少し対応が遅れている印象は否めない。また価格については公開されておらず要問い合わせで、導入規模に応じた見積もりが必要だ。一般的に大手メーカー製品は保守料金なども高めに設定される傾向があり、中小の新興メーカー製品と比べコスト面で劣勢になる可能性はある。とはいえ、モリタブランドへの信頼感や将来的なクラウド版リリースへの期待感もあり、一概にデメリットとは言い切れない部分もあるだろう。
歯科用ユニットから材料に至るまでモリタ製品で揃えているようなモリタ党の医院には選びやすい選択肢である。また、算定漏れなく確実に請求したい、問題指向型カルテで体系立てた診療記録を残したいといった品質志向の院長にも向いている。既存PCで動かせるためハード入れ替えコストを抑えたい場合や、院内にIT担当者がおり自前でサーバを管理できる場合にもマッチするだろう。逆に、クラウドの便利さ(場所を問わないアクセスや自動アップデート)を最優先したい医院には現状では不向きかもしれない。その場合はモリタの今後のクラウド展開を待つか、他社クラウド型への乗り換えを検討した方がよい。
With(ウィズ)(メディア)
With(ウィズ)はメディア株式会社が開発する歯科用レセコン兼電子カルテシステムである。医科分野でもシェアを持つメーカーらしく、歯科ならではの機能に加えて他科領域の知見を活かした安全性の高いシステム設計となっている。クラウド型とオンプレミス型の両対応で、クリニックのポリシーに合わせて運用できる。特徴的な機能として、患者の全身状態や既往歴に応じた医療面接ガイドを搭載している点が挙げられる。
患者が高血圧症や糖尿病など全身疾患を抱えている場合、歯科治療時に注意すべきポイント(投薬の影響や禁忌処置など)を画面上でアラート表示してくれるのが医療面接ガイド機能である。高齢者や全身状態が複雑な患者が増える中、こうした医科的視点を取り入れた安全管理は、歯科単独開業医にとって心強いサポートとなるだろう。また独自の高セキュリティ通信基盤「@Mcom」を利用しており、オンライン請求データなどのやり取りを堅牢に保護するとともに、ソフトのバージョンアップも高速に行える。電話着信時に該当患者の情報画面が自動で表示されるので、スムーズに対応できる。受付電話対応がスムーズになる配慮も光る。
価格は要問い合わせで、導入コストがどの程度か不明確な部分がある。高機能なシステムである分、安価なクラウド専業サービスに比べれば費用は高めと推察される。導入規模に応じて見積もり額が変動するため、比較検討の際には具体的な見積もりを取らないと単純な価格比較ができない点はやや煩わしい。操作性に関しては、機能数が多い割に画面設計が整理されていて扱いやすいとの声がある一方で、独自の工夫(例:着信ポップアップ機能など)がゆえに他製品からの乗り換え時には最初気付かない機能が埋もれているという指摘もある。つまりメリットに気付くまで時間がかかる可能性があり、導入後は積極的にメーカーから情報提供を受けて使い倒す意識が重要だ。
患者の安全管理や院内コミュニケーションの円滑化など、レセコンに付加価値的なサポート機能を求める医院に適している。全身疾患を持つ患者を多数抱える地域医療密着型の歯科医院では、医療面接ガイドが事故防止に貢献しうるため、大きな安心材料となるだろう。また電話対応の効率化など細部の機能までこだわりたい医院にとっても、Withの痒い所に手が届く設計は魅力的だ。価格面を最重視する医院にはマッチしない可能性があるが、システムの安全性や患者サービス向上に投資する価値を感じる院長であれば導入を検討して損はない。
アットレセ(ベントサイド)
アットレセは株式会社ベントサイドによるクラウド型歯科用レセコンで、その低価格戦略が際立つ製品である。初期費用無料・サポート料も無料、月額利用料は14,410円(税込)という破格の設定で、多くの歯科医院に手軽に導入できるよう開発されている。1アカウント契約すれば院内の複数PCで利用しても追加費用はかからず、開業したてで資金に余裕がない先生にとって非常に魅力的な選択肢だ。
最大の売りはやはり圧倒的な低コストである。ハードウェアも専用端末を必要とせず、既存のPCやタブレットで動作するため余計な出費がない。また導入前に3ヶ月間の無料お試し利用期間があり、実際の診療現場で使い勝手を確認できるのも親切だ。安価とはいえ機能は一通り揃っており、レセプト請求データ出力や入力時のエラーチェック、領収書や処方箋などの各種帳票の発行、さらには自費診療の管理まで標準で可能である。クラウド型なので自宅や訪問先からのアクセスもでき、在宅でレセプトチェックや翌日の予約確認などを行うことも容易だ。サポートデスクの対応も評価が高く、電話をすれば担当者が同じ操作画面を見ながら説明してくれるため、ITに不慣れなスタッフでも安心して使い始められる。
もちろん、低価格を実現するために機能を絞っている部分があり、他の高機能レセコンと比べると「痒いところに手が届く」ような高度な機能は少ない。例えば訪問診療専用の入力支援機能や、他システムとの自動連携などは実装されていない。そのため、より発展的なIT活用(患者アプリと連動したリコール施策や、自費カウンセリング支援機能など)を求める場合には物足りなく感じる可能性がある。またメーカー規模が大手に比べ小さいため、将来的な会社の存続性やシステムのアップデート継続に一抹の不安を覚えるユーザーもいるようだ。しかし現在まで順調にユーザー数を伸ばしており、頻繁にバージョンアップも実施されているため、過度に心配する必要はないだろう。
コスト最優先で基本機能だけ揃えば十分というクリニックにはベストマッチである。特に保険診療中心で複雑な特殊ケースが少ない歯科医院や、開業直後でまずはランニングコストを抑えたい先生にはうってつけの選択肢だ。将来的に規模拡大や自費診療拡充に合わせてより高度なシステムに乗り換えるまでのつなぎとして導入するのも一策だろう。
一方、開業当初からハイエンドなデジタル歯科を標榜し、最新鋭のITツールで武装したいと考えている場合には機能面で不足を感じるかもしれない。その場合は初期費用がかさんでも別のシステムを選ぶべきだが、そうでなければ「レセコンに豪華さを求めない」層にとってアットレセは必要十分なパフォーマンスを低価格で発揮してくれる。
ジュレア(ピクオス)
ジュレアはピクオス株式会社が提供するクラウド型レセコンで、こちらも初期費用0円で導入できる。月額費用は25,300円(税込)と相場並みだが、台数無制限で利用でき、法改正時のバージョンアップ料金も一切かからない明朗会計がウリだ。さらにクラウド予約システム「デンタマッププラス」を標準搭載しており、患者のWeb予約情報がレセコンと自動連携するというユニークな特徴を持つ。
機器代が不要で誰でも始めやすい点がまず挙げられる。手持ちのPCで今日からでも使い始められる気軽さは、レセコン導入ハードルを一気に下げている。また予約システムが最初から統合されているため、別途外部サービスを契約して連携させる手間がなく、受付業務がシンプルになる。患者情報や予約情報を何度も入力し直す必要がなくなり、転記ミスも防げるのは実務上大きな助けだ。クラウドサービスなのでアップデートは自動で行われ、利用院は常に最新のプログラムを使える。加えてIT導入補助金2025にも対応しており、補助対象として選べばさらに経済的負担を軽減できる可能性がある。
月額費用は定額とはいえ2万円台後半と安くはなく、長期的に見るとそれなりのコスト累積になる。他のクラウド型と比べて特別割安という訳ではないため、コスト面だけで選ぶなら前述のアットレセに軍配が上がる。機能面では、標準で予約連携がついている反面、逆に言えばそれ以上に突出した機能は少なく、非常にオーソドックスなレセコンと言える。可もなく不可もなく、悪い点はないが強いて「これが決め手」という部分に欠けるため、特徴の薄さが弱みといえば弱みかもしれない。また、専用端末不要とはいえ周辺機器(保険証リーダーやサブモニタ等)を利用するには各自で調達する必要があり、導入時にはそのあたりの細かい確認も必要だ。
イニシャルコストを極力かけずに標準的な機能を確保したい医院に適した選択である。Web予約を既に取り入れている、または導入を検討している医院なら、そのシステムが標準搭載のジュレアは相性が良い。実際、予約システムとカルテ・会計が連動していることで受付スタッフの負担が軽減され、患者さんを待たせない運営に役立ったという声もある。ITやクラウドに馴染みのない院長でも、料金体系がシンプルで分かりやすいため導入を決断しやすいだろう。逆に、独自の予約システムやカルテを既に運用している場合には、それらとの連携ができないとデメリットにもなり得るので注意したい。その場合は無理にジュレアの予約機能を使わず、予約は別システムのままレセコンのみ利用するという方法も考えられるが、本来の統合メリットが薄れてしまう。
iQalte(アイカルテ)(プラネット)
iQalte(アイカルテ)は株式会社プラネットが提供する歯科用レセコン/電子カルテシステムである。名前が示す通り「賢い(intelligent)カルテ」を目指して設計されており、画面構成は昔ながらの1号・2号紙カルテ様式を模しているのが大きな特徴だ。歯科用ユニット大手のフィード社とも提携しており、会員制で優遇価格が適用されるプランも存在する。
誰もが見慣れた紙カルテのイメージで操作できるため、デジタルに不慣れなベテランスタッフでも抵抗なく受け入れられると評判である。余分なボタン類を極力排除したシンプルなUIは、初めて触る人でも直感的に理解しやすい。カルテ作成の流れも部位や病名を選択してから処置内容を入力するよう設計されており、手順が分かりやすいため、素早く操作に慣れることができる。クラウドサービスとして提供されており、初期費用0円から始められる点は魅力だ(プラネットの歯科商社顧客向けには特別価格がある模様)。歯周検査や画像管理、会計連動など一通りの機能も備えており、小規模医院の日常業務をシンプルに支えるには十分な性能を持つ。
反面、機能面では必要最小限に留めている印象がある。例えば高度な経営分析や他サービスとのデータ連携といった部分はあまり前面には出ておらず、良くも悪くも「オーソドックスなカルテ・レセコン」に徹している。また利用にはメーカーや代理店との直接契約が必要で、料金体系もやや複雑(歯科ディーラー経由だと会員制の価格になる等)なため、導入検討時には問い合わせが必須となる。クラウド型とはいえ導入形態や費用について「要お問い合わせ」となる点は、情報収集段階の手間が増えるという意味でマイナスかもしれない。さらに、全国的な普及はこれからといった製品であるため、近隣に使っている医院が少なく口コミ情報が得にくいという面もある。
紙カルテからのスムーズなデジタル移行を望む医院や、複雑な機能は不要で基本的な電子カルテ+レセコンさえ使えれば良いという医院に向いている。ベテラン歯科衛生士や事務スタッフが長年紙でやってきた習慣をデジタルでも極力変えたくない場合、iQalteの画面デザインは受け入れられやすいだろう。また歯科ディーラー(フィード社など)との取引が深い医院では、そうしたルートから導入相談をすることで有利な条件が得られる可能性もある。逆に、他の製品で見られるような最先端の分析機能や外部連携を活用して攻めのIT経営をしたいと考えている場合には、やや物足りなく感じるかもしれない。その場合はOpt.oneやDentisのようなハイエンド志向の製品を視野に入れるとよい。
Dentis(デンティス)(メドレー)
Dentis(デンティス)は、オンライン診療システムなどで知られる株式会社メドレーが提供するクラウド型の歯科医院向け統合ソフトウェアである。レセコンと電子カルテはもちろん、予約管理やかかりつけ患者管理、訪問歯科支援、果てはオンライン診療や患者へのメッセージ配信機能まで包含した次世代プラットフォームといえる製品だ。クラウド型でありながら初期費用が約50万円発生する点が珍しいが、その分スタートアップ企業らしい尖った機能が揃っている。
スタッフ全体の動きを可視化するスケジュール機能があり、例えばチェアごとの患者予約状況や担当スタッフの割り当てが一目で把握できるダッシュボード画面が用意されている。これにより院内のリソースを最適配分し、無駄な待ち時間を減らすことで効率化が可能だ。また手書きメモ機能を搭載し、タブレット等で描いた簡単な図解や所見メモをそのままカルテに添付できるため、シェーマなどの記録をカルテに残せる。月次のレセプト請求でエラーが発生した際には、エラーのあった患者カルテ画面にワンクリックで飛んで即修正できるといった痒いところに手が届くUIが評判である。新興クラウド型らしく、オンライン資格確認やオンライン診療との親和性も高く、将来的なリモート診療や予防管理まで視野に入れた設計となっている。
オールインワンの現代的システムである分、料金もそれなりに高額な部類である。初期費用50万円に加え月額4万円となると、従来の中規模以上のクリニック向けレセコン並みのコストであり、小規模開業医にはややハードルが高い。また、メドレー社は歯科業界では後発参入のため、歯科特有の細かなニーズにどこまで応えられるかは今後のアップデート次第という面もある。既に在宅診療やサブカルテ(補綴物管理帳票など)の機能も搭載されているが、ユーザー数が増えて実際の現場フィードバックが蓄積されていけば、より磨かれていくことが期待される。現状では「将来性に投資する」ニュアンスが強く、保守的な医院には不安要素と映るかもしれない。移行時には過去データをCSV等でエクスポートしてからインポートする必要があり、旧レセコン資産との互換性も事前確認が必要だ。
最新テクノロジーで歯科医院のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したい医院にとっては、有力な選択となる。例えば予防歯科で定期メンテナンスのリコールをメール配信したり、将来的にオンラインで簡単な相談や経過チェックを行いたいと考えている先進的な院長には、Dentisの豊富なコミュニケーション機能が武器になるだろう。また訪問歯科診療にも積極的に取り組んでおり、往診車からリアルタイムでデータ入力したいようなケースでもクラウドかつ多機能なDentisは頼もしい。費用対効果の面では、単なる保険請求業務だけではなく患者管理や収益向上施策まで含めてペイするかを判断する必要がある。裏を返せば、それらを駆使して新しい歯科医療サービスを展開しようと意欲のあるクリニックにこそ真価を発揮するシステムと言える。
よくある質問(FAQ)
Q. クラウド型とオンプレミス型では、結局どちらを選ぶべきなのか?
A. 一長一短である。インターネット環境が安定しており、院外アクセスや自動アップデートのメリットを活かしたいならクラウド型が便利である。逆にネット障害リスクを極力排除したい、院内で閉じた環境の方が安心できるという場合はオンプレミス型が適している。クリニックのIT環境や方針によって判断すべきで、迷う場合は両対応の製品(Sunny-NORISなど)を検討するのも手だ。
Q. 新しいレセコンに乗り換える際、既存データの移行は大変だろうか?
A. 多くのメーカーは他社レセコンからのデータ移行サービスを用意しており、患者基本情報や治療履歴などをCSV等でエクスポート・インポートすることで継続利用できるよう支援している。とはいえ項目のマッピング作業など煩雑な部分もあるため、移行を依頼する際は事前にどこまで対応してもらえるか確認し、必要なら移行期間中は並行稼働期間を設けるなどリスク軽減策を取るとよい。
Q. レセコン導入費用を抑える公的な支援策はあるのか?
A. はい、現在「IT導入補助金」制度が活用可能である。歯科用レセコンの多くが補助金の対象ITツールに登録されており、要件を満たせば初期費用や年間費用の一部について国から補助金が支給される。補助率や上限額は年度によって異なるが、導入を検討する際は各メーカーに補助金申請の可否を相談すると良い。また自治体独自の開業支援補助などが使えるケースもある。
Q. 自費診療主体のクリニックでもレセコンは必要だろうか?
A. 保険請求が少なく自費メインであっても、会計管理やカルテ管理ツールとしてレセコンは有用である。特に最近のレセコンは自費診療項目も自由に登録でき、画像管理や患者コミュニケーション機能など自費診療に役立つ機能も搭載されている。むしろ自費診療を効率よく提供するために、ハイエンドなITシステムを活用している審美歯科やインプラント専門クリニックも多い。単にレセプトを出すためだけではなく、経営管理とサービス向上の基盤としてレセコンを位置づけると良いだろう。
Q. 購入後に「失敗した」とならないためには何に注意すればいい?
A. まず上述の通り、自院のニーズを明確化しそれに合致する製品を選ぶこと。そして契約前に必ずサポート内容や契約条件を確認することが重要だ。例えば「保守サポートは何年間継続するか」「解約時に違約金は発生するか」「データの所有権は医院側にあり自由にエクスポートできるか」といった点である。さらに、できれば複数メーカーのデモを体験して操作性を比較することも失敗しないコツだ。一度導入すると乗り換えは容易ではないため、最初に手間をかけて慎重に選ぶ価値は大きい。