ゴールデンハー症候群

「ゴールデンハー症候群」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年08月02日

ゴールデンハー症候群とは?

ゴールデンハー症候群とは、第一・第二鰓弓由来の組織が片側性に発育異常を示す先天奇形症候群である。ゴールデンハー症候群とhemifacial microsomia、第一第二鰓弓症候群を含めてOVAS(oculo-auriculo-vertebral spectrum)としての疾患概念としてまとめられている。OAVSの最重症型がゴールデンハー症候群とされる。
 


ゴールデンハー症候群の原因

ゴールデンハー症候群は、第一第二鰓弓の発生異常がその原因と考えられている。母体糖尿病が原因となることがある。

ゴールデンハー症候群の病態

ゴールデンハー症候群は片側に起こりやすく、上顎骨、頬骨、下顎骨の低形成(とくに下顎枝の形成不全)、横顔裂、副耳、小耳症、外耳道閉鎖、眼球結膜類皮腫がみられる。

口腔内では舌や軟口蓋の形成不全を呈する場合もあり、鼻咽腔閉鎖不全例も報告されている。口唇裂・口蓋裂を合併する例もある。

また、頸部領域を中心とした脊椎異常を認め、片側頚椎の欠損や後頭骨環椎癒合などがみられる。ゴールデンハー症候群の発症頻度は、5000~25000人に1人程度である。

ゴールデンハー症候群の症状

ゴールデンハー症候群の症状は、以下の通りである。
  • 上下顎骨形成不全、頬骨形成不全、片側性下顎(枝)低形成→顔面非対称
  • 片側性顎関節形成不全(関節突起形成不全)
  • 片側性咀嚼筋低形成
  • 横顔裂合併による巨口症
  • 口蓋裂、高口蓋
  • 脊椎奇形(二分肋骨がみられることもある)
  • 眼・耳異形成症(眼球結膜の類上皮腫、副耳、耳介奇形、小耳症、聴覚障害)

ゴールデンハー症候群の合併症

ゴールデンハー症候群の合併症としては、出生後三ヶ月程度は呼吸障害に注意する。初診時に腎奇形と心奇形をスクリーニングする。ゴールデンハー症候群は時に中枢神経奇形を合併する。 

ゴールデンハー症候群の画像所見

ゴールデンハー症候群の画像所見は、エックス線写真、CTにて片側の下顎形成不全が認められる。

ゴールデンハー症候群の治療法

ゴールデンハー症候群の治療法は、それぞれの症状に対して以下の様なものが挙げられる。
  1. 眼、耳異常に対して
    眼瞼結膜類上皮腫や副耳は外科的切除、耳介奇形には耳介再建術を行う。

  2. 顔面軟組織に対して
    横顔面裂は新生児期に外科的形成手術を行うことが多い。

  3. 顎顔面骨格に対して
  • 上下顎骨形成不全や片側関節突起形成不全に対して外科的顎矯正手術が行われる。上下顎骨切り術に骨移植(腸骨、肋骨・肋軟骨など)を併用することが多い。
  • 骨延長装置装着後に皮質骨を切除し顎骨延長術を試みることもある。
  • 形態的な改善が行われたのち、咬合に関しては機能的顎矯正装置やマルチブラケット装置による咬合改善を行うことがある。

下顎の発育異常を示す症候群

ゴールデンハー症候群をはじめとして、下顎の発育異常を伴う疾患の例として以下のものが挙げられる。

1. 下顎劣成長(小下顎症)
  • ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)
  • Treacher Collins症候群
  • ゴールデンハー症候群
  • Hallermann-Streiff症候群
  • Prader-Willi症候群
  • Moebius症候群
  • Cornelia de Lange症候群(全身的低形成)
 
2. 下顎過成長
  • Beckwith-Wiedemann症候群(全身的過成長)
  • 巨人症
  • アクロメガリー

ゴールデンハー症候群と混同されやすい症候群 : Treacher-Collins症候群

Treacher-collins症候群とは、第一鰓弓由来の組織が発育以上を示す先天奇形症候群のことである。Treacher-collins症候群の発現頻度は1万人に1人である。Treacher-collins症候群の主な症状は以下の通りである。
  • 小下顎症
  • 下顎の発育不全・下顎劣成長
  • たれ目
  • 両側の関節突起(下顎頭)の形成不全
  • 口蓋裂
  • 高口蓋
  • 耳介の奇形、副耳

ゴールデンハー症候群とTreacher-Collins症候群の違い

ゴールデンハー症候群とTreacher-Collins症候群は、どちらも関節突起(下顎頭)の形成不全を伴うが、両側性の関節突起(下顎頭)形成不全がみられるのがTreacher-Collins症候群であり、片側性の関節突起(下顎頭)形成不全がみられるのがゴールデンハー症候群である。




「ゴールデンハー症候群」の文献・書籍など

【読み】

ごーるでんはーしょうこうぐん

【文献・書籍】

『口腔外科学 第4版』, 白砂兼光ら, 医歯薬出版株式会社, 2020
『NewText ⑥ 外科・放射 第11版』, 麻布デンタルアカデミー, 株式会社干乃コーポレーション, 2019.
『歯科医師国家試験参考書New Text別冊 口腔外科セレクトアトラス 第1版』, 麻布デンタルアカデミー, 株式会社干乃コーポレーション, 2012.

著者/監修者情報
歯科医師

1992年千葉県生まれ。鶴見大学⻭学部歯学科卒業後、⻭科医師免許を取得。学生時代から個人でアプリやWebサービスの開発を行う。東京⻭科大学大学院博士課程中退。2017年にワンディー株式会社を創業。

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