顎舌骨筋

「顎舌骨筋」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年08月02日

顎舌骨筋とは?

下顎体と舌骨の間に広がる板状の筋で口腔の床の部分(口腔底)を構成するため口腔隔膜(diaphragm)ともよばれ、本筋より上方が口腔内、下方が口腔外である。

顎舌骨筋の特徴

顎ニ腹筋の上方で下顎体内面の顎舌骨筋線から起始し、前方2/3は左右の本筋が正中で合して顎舌骨筋縫線を形成し、後方1/3は舌骨体の下端に停止する。

咀嚼筋と同様に三叉神経(下顎神経の枝の顎舌骨筋神経)に支配される。本筋と口腔底粘膜との間は舌下隙(sublingual space)とよばれ、舌下動脈、舌下腺、顎下腺管など重要な構造物が存在し、炎症の波及路ともなる。 

また、本筋の動きが義歯の不安定の原因となることがあり、下顎義歯の舌側床縁設定に影響を及ぼす。 このように本筋は開ロ・嚥下運動、 義歯形態の決定、炎症の波及路などに深く関与し、臨床的に非常に重要である。

顎舌骨筋神経

小臼歯部から大臼歯部にかけて、下顎体内面を後上方から前下方に斜走する隆線を顎舌骨筋線という顎舌骨筋が付着する部位である。

顎舌骨筋神経溝

下顎孔から前下方に向かって細い溝が顎下腺窩に向かって斜走しており、顎舌骨筋神経溝(mylohyoid groove)とよばれる。下顎神経の枝である顎舌骨筋神経が通る。

義歯と顎舌骨筋の触診

口腔底については白板、潰瘍、腫瘍の有無を診察する。両手指を用いて顎下腺領域や顎舌骨筋の触診を行う。無歯顎患者で中等度開口時の触診によって、口腔底を構成する顎舌骨筋が緊張していることが確認される症例は、下顎全部床義歯の装着にとっては不利な条件となる。

また、下顎全部床義歯舌側床縁を設定する際には、舌下腺の位置や形態、顎舌骨筋線の位置を確認し、参考にする。

顎舌骨筋線周囲の筋圧形成

前顎舌骨筋寓から舌小帯にかけては、嚥下、軽い舌の挙上、舌の側方運動を行わせる。

舌小帯は下唇小帯や頬小帯よりも大きく、強く動くため、舌を挙上させて付着位置を明瞭に記録する。

舌の安静時には舌下ヒダが義歯床の下縁に接触して辺縁封鎖が確保される。軟化したコンパウンドを水平方向にわずかに延長して舌下ヒダと接するようにすると、トレーの吸着は著しく向上する。

反対側の舌側も同様に嚥下運動、舌の運動により筋圧形成を行う。

筋圧形成が終了した個人トレー辺縁部は、後顎舌骨筋窟から前顎舌骨筋窩そして舌小帯へと、緩やかなS 字状を呈している。

これは解剖学的構造と筋の生理的運動によって形成されたもので、無歯顎患者の下顎の定型的形態といえる。

舌骨上筋とは

顎舌骨筋は舌骨上筋群の一つである。

他の骨との関節をもたず空中に浮いたような位置にある舌骨と下顎骨および側頭骨の間に存在する筋群である。

すなわち、舌骨下筋が弛緩し咀哨筋が緊張することによって下顎骨が閉口状態で固定されているとき、舌骨上筋が働くと舌骨および周囲の咽頭・喉頭を引き上げて嚥下運動を行う。

逆に、咀嚼筋が弛緩し舌骨下筋が緊張することによって舌骨の位置が固定されているとき、舌骨上筋が働くと下顎骨を引き下げて開口運動を行う。


「顎舌骨筋」の文献・書籍など

【読み】

がくぜっこつきん

【文献・書籍】

『口腔解剖学 第2版3刷』, 脇田稔ら, 医歯薬出版株式会社, 2019
『無歯顎補綴治療学 第3版』, 市川哲雄ら, 医歯薬出版株式会社, 2016.

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。