下歯槽神経

「下歯槽神経」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月14日

下歯槽神経とは?

下歯槽神経とは、下顎神経(三叉神経第三枝)の枝のひとつである。舌神経に並んでその後を下行し、下顎孔から下顎管に侵入する。下顎孔に入る直前に分かれる顎舌骨筋神経は、下顎骨内面の顎舌骨筋神経溝を前下方に進み、顎舌骨筋と顎二腹筋前腹に運動神経を送ると同時にオトガイ下部と顎下部の皮膚の知覚を支配する。下歯槽神経は下顎管中で枝を出し、下歯槽神経叢を作って下顎枝と下顎肉枝を出し、下顎の歯髄と歯肉を支配する。下歯槽神経は最後にオトガイ神経となってオトガイ孔から出た後、オトガイ枝と下唇枝に分かれて付近の皮膚と下唇粘膜に分布する。

歯科治療による下歯槽神経の損傷について

下歯槽神経は、下顎骨内の下顎管という皮質骨に囲まれた空間内を走行しているために、日常生活上の軽度の衝撃などにより損傷は受けにくいが、歯科治療器具やインプラントによる機械的圧迫、歯内療法などによる薬剤の波及または下顎骨骨折などによっては神経が損傷を受けることがある。

以下に、歯科治療において下歯槽神経の損傷が起こり得るケースを記載する。

  1. 下顎智歯、下顎埋伏歯の抜歯により下歯槽神経に傷害や力が加わってしまった場合。
  2. インプラント(人工歯根)埋入時に、下歯槽神経に近接した場合。
  3. 局所麻酔注入による場合(ほとんどが一過性)。
  4. 下歯槽神経に近い下顎歯の根管治療を行った場合。
  5. 下顎顎骨内の腫瘍等を摘出する手術を行った場合。
  6. 下顎周囲の粘膜を切開、損傷した場合。
  7. 顎変形症において、下顎の顎矯正手術を行った場合(下顎枝矢状分割術 下顎枝垂直骨切り術など)。
  8. 美容外科的下顎輪郭形成における損傷。

発生原因の半数は智歯抜歯

歯科治療による下歯槽神経の損傷の発生原因では、第三大臼歯の抜歯が50パーセント以上と大半を占めている。他にも、局所麻酔注射などがあるほか、近年ではインプラント埋入術に起因する症例も少なくない。こうした医療事故の発生部位としては、下歯槽神経が舌神経よりも多い。

つまり、下歯槽神経の損傷は医原性であることが多く、そのため少なくない症例で訴訟問題を抱えている可能性がある。

下歯槽神経の損傷による症状

下歯槽神経を損傷した場合、どのような症状が出現するのか。下歯槽神経は感覚神経であることから、症状として現れるのは下唇や口角、オトガイ部の知覚異常である。下歯槽神経の支配する領域である下唇や口腔内の「感覚が鈍い」「しびれ」などという症状を認めることが多い。

また、少数ではあるが下歯槽神経の損傷によって異常な痛みを生じさせることがある。

「下歯槽神経」の文献・書籍など

【読み】

かしそうしんけい

【文献・書籍】

『歯学生の口腔インプラント学 第1版』, 高森等ら, 医歯薬出版株式会社, 2014.

著者/監修者情報
歯科医師

1992年生まれ。千葉県の漁村で育つ。鶴見大学歯学部在学中からアプリやWebサービスの開発を趣味で行う。東京歯科大学大学院博士課程に進学するもお金が無くて中退。2017年にワンディー株式会社を創業。

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下顎第三大臼歯と下顎管の位置関係...????

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先週、下顎小臼歯部のインプラント埋入で海綿骨が予想以上に疎雑だったのか下顎下縁まで迷入した症例を診ましたが、CTを撮影したところ、アンテリアループを避けるように舌側を通ったようで、幸いにも神経障害症状も軽度でした。
しかしなかなか恐ろしいX線像でした。パノラマを見た時点では、下手をすれば下歯槽神経を切断しているのではないかと思いました。
迷入したインプラント体は当院ドクターが綺麗に抜去しました。現在麻痺の治療中です。
画像等の持ち出しが厳に禁止されている施設なので悪しからずです。

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翼突下顎隙にあるもの
下歯槽神経、舌神経、下歯槽動静脈、鼓索神経、蝶下顎靱帯、翼突筋静脈叢

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