下顎神経

「下顎神経」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年08月02日

下顎神経とは?

下顎神経とは脳神経の三叉神経の枝の一つである。下顎骨周囲を中心に顎顔面領域を支配し、皮膚・粘膜の感覚や咀嚼筋などの運動に働く。



下顎神経の特徴

下顎神経(三叉神経第 Ⅲ 枝):mandibular nerve(mandibular division)。

下顎神経は脳硬膜に分布する硬膜枝を出した後、 卵円孔を通って頭蓋を去り、側頭下窩に至る。 硬膜の感覚、側頭部。 耳介前部・オトガイ部の皮膚感覚、 下顎の歯と歯肉の感覚、下唇の感覚、舌前2/3の感覚を伝える。

一般体性求心性線維以外に、 三叉神経運動根のすべての運動線維を含み、 運動線維は咀嚼筋、鼓膜張筋、口蓋帆張筋、 顎二腹筋前腹、顎舌骨筋を支配する。

下顎神経の枝

  1. 第 Ⅰ 枝:硬膜枝(meningeal branch)
    棘孔から頭蓋腔に入り、上顎神経の硬膜枝とともに硬膜に分布する感覚性の枝である。

  2. 第 Ⅱ 枝:頬神経(buccal nerve)
    外側翼突筋の上頭と下頭の間または下頭の下から外側に出て頬筋の外側を前に進み、 頬粘膜の感覚を伝える。

  3. 第 Ⅲ 枝:下歯槽神経(inferior alveolar nerve)
    下顎神経の最大枝で、舌神経に並んでその後を下行し、下歯槽動・静脈とともに下顎孔から下顎管に入る。その経過中に、下歯神経叢(inferior dental plexus)をつくり、臼後枝、 臼歯枝、 小臼歯枝を出す。これらの枝から下歯枝(inferior dental branches)、 下歯肉枝(inferior gingival branches)が分かれ、下顎の歯、 歯肉に分布する。切歯枝はオトガイ孔を出る前に分かれ、 切歯部に分布する。

    下歯槽神経はオトガイ孔を出るとオトガイ神経(mental nerve)と名前を変え、オトガイ部、下唇に分布する。また、下歯槽神経が下顎孔に入る前に分かれる顎舌骨筋神経(nerve to mylohyoid)は顎舌骨筋神経溝を通り、顎舌骨筋と顎二腹筋の前腹に分布する。

  4. 第 Ⅳ 枝舌神経(lingual nerve)
    下顎神経の終枝の1 つで、舌体の味覚と一般感覚、 舌下部の感覚および顎下腺と舌下腺の分泌を支配する。 内側翼突筋と外側翼突筋の間を弓状に弯曲して下方から前方に向きを変え、口腔底に達して顎舌骨筋の上、 舌骨舌筋の外側を前に進む。舌の外側縁で多くの枝(口峡枝、舌枝)に分かれ、口峡および舌体に分布し、舌下腺およびその周囲に舌下部神経 sublingual nerve を送り、末端では舌下神経と交通する。 

    側頭下窓を下行中に、後上方から顔面神経に由来する味覚線維と副交感性節前線維を含む鼓索神経chorda tympani が舌神経に合流する。味覚線維は舌枝に進んで舌体に分布し、 副交感性節前線維は顎下枝を通って顎下神経節に入る。 節後線維は腺枝によって顎下腺を、また顎下枝から舌神経および舌下部神経を経て舌下腺を支配する。

  5. 第 Ⅴ 枝耳介側頭神経(auriculotemporal nerve)
    卵円孔直下で下顎神経から分かれて後方に走り、下顎頸の内側を過ぎて上方に向かい、 多くの枝に分かれて外耳道鼓膜外面、耳介前部と側頭部の皮府および耳下腺に分布する感覚神経である。 起始部に耳神経節からの交通枝(副交感性節後線維)を受ける。 この副交感性線維は耳介側頭神経の耳下腺枝pa rotid b l anch es を経て耳下腺に至る。

  6. 第 Ⅵ 枝咀嚼筋に分布する枝(咀嚼筋枝)
    ① 咬筋神経(masseteric nerve)
    下顎切痕を通って下顎枝外面に出て、咬筋に分布する。

    ② 内側翼突筋神経(nerve to medial pterygoid)
    前下方に向かい、 内側翼突筋に分布する。

    ③ 外側翼突筋神経(nerve to lateral pterygoid)
    前方に向かい、外側翼突筋に分布する。

    ④ 深側頭神経(deep temporal nerves)
    前後に分かれて上方に向かい、側頭筋に分布する。

  7. 第 Ⅶ 枝耳神経節 otic ganglion
    卵円孔直下の下顎神経の内側に位置する副交感性神経節である。 副交感根と感覚根はいずれも小錐体神経(lesser petrosal nerve:舌咽神経由来の節前線維と感覚線維の両方を含む)であり、 内側翼突筋神経の枝(三叉神経由来の運動根、特殊内臓性遠心性線維)および中硬膜動脈を包む交感神経叢の枝(外頸動脈神経叢由来の交感根)を受ける。 

    神経節から末梢に向かう枝により副交感神性節後線維を耳下腺に(耳介側頭神経との交通枝) 、 特殊内臓性遠心性線維を鼓膜張筋(鼓膜張筋神経 nerve to tensor tympani )と口蓋帆張筋(口蓋帆張筋神経 nerve to tensor veli palatini )に送る。




「下顎神経」の文献・書籍など

【読み】

かがくしんけい

【文献・書籍】

『口腔解剖学 第2版3刷』, 脇田稔ら, 医歯薬出版株式会社, 2019

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。