サホライド

「サホライド」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年11月23日

サホライドとは?

サホライドとは、歯科で使われる薬剤の一つで、う蝕抑制・象牙質知覚過敏鈍麻剤に使われる。サホライドは商品名で、一般名としてはフッ化ジアンミン銀である。


サホライドの特徴

初期う蝕の進行抑制、二次う蝕の抑制、象牙質知覚過敏症の抑制(象牙質鈍麻)に用いられる無色澄明の液である。わずかにアンモニア臭があり、光もしくは熱によって徐々に変化する性質を持つ。フッ化ジアンミン銀の塗布により、銀の沈着で象牙質が黒変する。

サホライドの効能や効果

サホライドは以下の効果がある。
  • 初期う蝕の進行抑制
  • 二次う蝕の抑制(窩洞や支台歯に塗布する)
  • 象牙質知覚過敏症の抑制(象牙質鈍麻)

サホライドの欠点

  • 銀の沈着で象牙質が黒変するので審美障害が起きる。(それ故にサホライドは永久歯の前歯では使用不可である)
  • 歯髄障害を起こすので、深い齲蝕には使えない。

サホライドと予防の概念

Leavell and Clarkが提唱した疾病の自然史と1~3次の予防の概念を齲蝕とおよび歯の喪失にあてはめた
サホライドの塗布は2次予防の早期発見早期治療に当たる。

サホライド(フッ化ジアンミン銀)の用法と用量

サホライド(フッ化ジアンミン銀)の使い方を下記にて解説する。

① 歯面清掃
歯牙沈着物を完全に除去したのち、オキシドールで歯面を充分に清拭する。

② 防湿乾燥
塗布する歯を中心として巻綿花を用いて歯を孤立させる。唾液の多い場合には排唾管を挿入する。綿球で唾液をぬぐった後、圧搾空気で歯面を乾燥する(きわめて歯肉に近い部分に塗布する場合は、ラバーダムを用いるか、もしくは歯肉部分にワセリン等を塗布して薬液との接触を防ぐ)。

③ 薬剤の塗布
小綿球に薬液数滴(0.15 ~ 0.20mL)を浸ませ、3~4分間塗布する。患歯数、症状により適宜増減する。

④ 塗布後の処置
塗布後は、防湿除去・巻綿花を取り除き、洗口水もしくは希食塩水で洗口させる。

⑤ 塗布の回数
通常、3~4回塗布を行う。上記の術式を、数日間隔で行なう。

症状によるフッ化ジアンミン銀の塗布方法の違い

フッ化ジアンミン銀の塗布方法は、各種症状により多少異なることがある。

【乳歯う蝕の進行抑制】
う蝕部分の遊離エナメル質をスプーンエキスカベーター等を用いて除去し、通法により局部の清掃乾燥を行ったあと上記の手順・術式に従ってフッ化ジアンミン銀を3~4分間作用させて、第1回目の処置とする。この塗布を、2〜7日間隔で計3回、繰り返し行う。 以後3〜6ヵ月に1回、硬さなどの経過を観察することが望ましい。前歯部においては、隣接面をスライスカットし自浄作用を良くしてフッ化ジアンミン銀を塗布すると効果的である。

【二次う蝕の抑制】
窩洞形成・支台歯形成を行なった後、上記の手順・術式に従って1〜2回フッ化ジアンミン銀を塗布する。

【象牙質知覚過敏症の抑制(象牙質鈍麻)】
2〜3日間隔で上記の手順・術式に従ってフッ化ジアンミン銀を塗布し、経過を観察しつつ、3〜4回まで繰り返す。窩洞形成・支台歯形成を行なった後、上記の手順・術式に従って1〜2回フッ化ジアンミン銀を塗布し、知覚鈍麻を待って翌日以降に軟化象牙質の除去を行う。

フッ化ジアンミン銀の使用上の注意

フッ化ジアンミン銀を使用する上では、下記の注意が必要である。

  • 永久歯前歯部(黒変するため審美的問題が生じる)
  • 深在性う蝕(塗布した場合歯髄障害を引き起こすことがある)
  • 粘膜の腐食(誤って粘膜に付着すると腐蝕するためラバーダム防湿などが必要である)
  • 皮膚や衣類、器具への付着(黒変し脱色しにくいため注意する)



「サホライド」の文献・書籍など

【読み】

さほらいど

【文献・書籍】

『口腔保健・予防歯科学 第1版』, 安井利一ら, 医歯薬出版株式会社, 2017.
『スタンダード口腔保健学 ー健康科学として考えるー 第4版』, 荒川浩久ら, 株式会社学建書院, 2014.
う蝕抑制・象牙質知覚過敏鈍麻剤 サホライド ®液歯科用38% 添付文書

著者/監修者情報

歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。

う蝕の症例リスト

●伊藤中先生 カリオロジー
《背景》
・25年前にカリオロジーという言葉が広まった
・【欧米と日本の当時の違いはあり方】
歯周治療に偏ったう蝕治療への継承
病因論に基づくう蝕治療(プロセスに基づく治療)う蝕ができるまでのメカニズムに介入していく→だからカリエスリスクを知らないければならない
・以前のう蝕は修復治療だった
・う蝕とう窩は違う
・当時のリスク評価はレーダーチャートを用いていた
・カリオロジーに基づいた治療が普及したがそれがあったから現在のう蝕数が減ったとは限らない
・当時の欧米とのう蝕有病率の差はシステムの違いと思われていたが、ただ流行が遅れていただけかもしれない
・現在は低う蝕時代、虫歯が減ってきていると言われるようになった
・若年層は疾患の局在化、高齢者は健康の局在化が崩れてきつつある
・DMFTに関与しないCOは増えていく
・若年層の治療が難しくなってきた→白斑病変COと呼ばれるもの:隣接面は見落としやすい、治療タイミングの判断
・管理しているつもりでも宿主の要因や生活習慣や全身疾患が関与し、管理しきれてない状況
・健康な人でも高齢になるにつれて根面が晒され、ローリスクのままでは済まない
・う蝕は減っていて、一部の人に限局している。細菌検査などしなくてもハイリスクの人を見つけるのは簡単
・成人においては二次齲蝕や根面う蝕の問題がでてきている
《リスク》
・う蝕と細菌の関わり方の変化
・う蝕は唾液、細菌、食習慣、社会的地位、収入、健康観、教育レベルなど様々なことが関与している
・カイスの輪(細菌、糖、宿主+時間)
・原因菌が存在すれば発症する→う蝕も歯周病もこの原則を満たしていない。カリエスフリーの人にもS.ミュータンス菌が検出されるから。これは外因感染というよりも常在細菌・外因感染によって起こると考えられる
・これからは細菌との関わり方が変わってくる
・生態学的プラーク仮設:自分で酸を産生し、酸の中でも生活できる菌が増える→もっと酸が増える→普通の細菌が減る→脱灰が起きやすくなる
・プラークは採取した場所によって組成が違う
・【マイクロバイオーム】
・2012年に一般向けにマイクロバイオームが特集された
・健常者にどんな細菌がいるか遺伝子レベルで調べた
・マイクロバイオームの疾患 
①宿主の要因には遺伝子が関与
②環境で変わる 
③宿主と常在細菌がお互いに影響しあっている
バランスがとれているが環境要因がそれを撹乱することがある(ディスバイオーシス)安定した状態(シンバイオーシス)
・人間はひとりで生きているのではなく、細菌とともに生きている(0にするのではない)
・う蝕は多因子疾患(原因はない。細菌ですら要因のひとつ)
・リスクコントロールの考え方→絶対なるわけではない
歯を磨かないと虫歯になる→歯を磨かないと虫歯になりやすくなる
甘い物ばかり食べていると虫歯になる→甘い物ばかり食べていると虫歯になりやすくなる
・DHは意図を持った雑談で情報を引き出そう
・う蝕経験は年齢とともに考える(高齢者でDMFTが多くてハイリスクと言えるか?0ならローリスクといえる。小児でdmft0はローリスク?当たり前。逆に多いとものすごいハイリスクになる)
・う蝕に関連する唾液の役割(緩衝作用、浄化作用、カルシウムイオンやリン酸イオンの供給、抗菌作用)
・ライフステージとカリエスリスク(卒乳、兄姉の心理状態、家族の健康感、反抗期、仕上げ磨き嫌い、兄弟と間食する etc)
・適切なホームケアと食生活、リコールに来続ける習慣を若いうちに身につけておく
・高齢者の課題は根面の露出とからだの機能の低下
・根面齲蝕との一貫した相関性を有すると推測される特定の菌数は存在しない
・高齢者は日常生活の問題が食習慣に反映される
病変への対応
・カリエスリスクのコントロール:どれもこれもなおすのではなく一番リスクの高そうなところから介入する
・リスクが高い20歳未満でう蝕診断に視診が不可能な場合、6〜12ヶ月ごとの咬翼法のレントゲン写真が必要。成人の場合は6〜18ヶ月。リスクの低い人達は1〜2年に1回撮ればよい。若年者の場合は1〜3年。もしくはダイアグノデントを用いる(当て方によって差あり)。
・う蝕予防はエネメル質を強化するか、酸を出にくくするか、カルシウムイオンリン酸イオンを供給する
・キシリトールはプラークのpHを低下させない、唾液の分泌促進、S.m菌抑制効果。再石灰化を促すというのは疑わしい
・根面う蝕予防:一次予防は年1回のサホライド 二次予防は3ヶ月に一度バーニッシュ
・虫歯で苦労したことのない親の増加で今後どうなっていくか
「動物園で育った動物は子育てできない」のと同じで、「虫歯になったことのない親は虫歯予防ができない」だから親の指導が必要。

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