流涎

「流涎」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月30日

流涎とは

唾液が意図せずに口腔外へ流れ出ることをいう。読み方は「りゅうぜん」である。



流涎の原因

  • 筋萎縮性側索硬化症 (ALS: amyotrophic lateral sclerosis)
    運動ニューロンが選択的に侵される原因不明の変性疾患であり、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが さまざまな程度で侵される。運動ニューロンの喪失は 筋萎縮と筋力低下の原因となり麻痺を引き起こす。下位運動ニューロンの変性は、言語障害、嚥下障害、咀嚼障害、呼吸障害などを生じる。感覚障害はほとんどみられない 。

    流涎は口腔期の症状として見られる。頚椎不安定や頸下がり、上肢・体幹の筋力低下による接触時の疲労で、摂取の減少を生じる。また、呼吸障害がみられる。

    口腔期症状は、開口障害、咀嚼筋力低下、顔面筋力(特に口輪筋)低下による食塊保持困難と、流涎、舌の萎縮と線維束攣縮による口腔内での食塊形成困難や移送不良、鼻咽腔閉鎖不全による鼻腔への逆流などがみられる 。

    咽頭期症状は口 ・咽頭筋力低下による食塊の咽頭への移送困難、嚥下反射の遅延や惹起不全、輪状咽頭筋弛緩不全、呼吸筋・腹筋の筋力低下による誤嚥や咽頭残留、痰の喀出困難がみられる 。

  • パーキンソン病
    パーキンソン病は、黒質の神経細胞の変性を主体とする進行性の神経変性疾患で、無動、筋固縮、振戦、姿勢反射障害などの運動症状を主徴とするが、 精神症状、自律神経障害、睡眠障害などの非運動症状も高率に合併する。うつ病や認知症などがみられることもある。重症度分類は Hoehn and Yahrの分類や「生活機能障害度分類」が用いられる。

    なお、パーキンソン病患者の摂食嚥下障害の特徴として、Hoehn& Yahr 重症度分類とは相関しないことが指摘されている。

    パーキンソン病では 薬物療法によるコントロールが重要となるが、薬の効 果が早く切れてしまう「Wearing-off 現象」や、薬の服用に関係なく症状が急に悪くなったり良くなったりする「on-off 現象」というものがある。ユニッ トに移乗ができて治療を開始したが、オフになってしまい、ユニットから降りられなくなってしまうなど、別人のような動きの良し悪しを呈することもある。時間によりそのような傾向がある場合にはアポイントや 処置時間の配慮を行う。

    近年では進行期パーキンソン病患者に対する外科治療として、視床下核脳深部刺激療法(Subthalamic nucleus deep brain stimulation:STN-DBS)も多く実施されるよ うになってきており、歯科治療に際しては心臓ペースメーカーに準じた注意が必要である。

    口腔では、流涎、口腔乾燥、 ジスキネジア、嚥下障害が高頻度にみられ、生活の質に影響を及ぼすほか、嚥下障害が原因となる肺炎や窒息、栄養障害などは本疾患の死因の上位を占めている。パーキンソン病患者の流涎の原因として、これまで唾液を嚥下する回数の減少や、頭頸部の前屈位などが指摘されている。パーキンソン病患者は口腔、咽頭筋の動作緩慢が嚥下障害の一因と考えられ、流涎も同様の原因から生じている可能性が考えられる。

  • 口唇癌
    手術侵襲により口唇の運動や感覚麻痺が生じ、流涎や摂食時の食塊の口腔外漏出などが認められることが少なくない。

  • 舌癌・口底癌
    舌癌や口底癌により舌に外科的侵襲が及ぶと、感覚障害、味覚障害、食塊の形成障害と保持障害、咽頭への食塊の送り込み障害などが起こり、さらに嚥下強調運動の失調から咽頭期の障害も生じる。また 口底癌術後では口腔前方における食塊残留が著明で、口唇 閉鎖不全による流涎も認められることが多い。


「流涎」の文献・書籍など

【読み】

りゅうぜん

【文献・書籍】

『歯学生のための摂食・嚥下リハビリテーション学 第1版』, 向井美恵ら, 医歯薬出版株式会社, 2008.
梅本丈二, 北嶋哲郎, 坪井義夫, & 喜久田利弘. (2009). パーキンソン病患者の流涎と摂食・嚥下障害の関係. 老年歯科医学, 24(3), 306-310.
飯田良平. (2020). パーキンソン病の口腔機能管理. 日本補綴歯科学会誌, 12(4), 316-321.

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。

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