クローズドロック

「クローズドロック」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月14日

クローズドロックとは?

クローズドロックとは、非復位性顎関節円板障害(顎関節症Ⅲb型)でのほとんどを占める関節円板前方転位に随伴する開口障害の呼称である。

クローズドロックの病態

クローズドロックでは、顎運動の全期間を通じ関節円板が前方へ転位したままであり、下顎頭の運動制限により開口障害が生じている状態となっている。また、ときどき顎が引っ掛かり開口できなくなるクローズドロックのことを、間欠性ロックと呼ぶ。

非復位性顎関節円板障害の疫学

クリック症例は、3年後に9%、あるいは5年後に17%がクローズドロックに移行する程度とされており、放置しても症状に変化のない例が多い。復位性円板転位から非復位性、変形性顎関節症へと進行する頻度はあまり高くない。

クローズドロックの無治療自然経過例でも約7ヵ月で疼痛は緩和し、2年半では43%が治癒し33%が軽快するが、25%は自然寛解しないとされている。しかし、保存療法で70%が40mm以上の開口が可能となり、手術が必要となるのは5%未満である。

19 歳以下の若年者の顎関節症は大半が15~19歳であり、Ⅲ型が86.5%と高い割合を示す。前歯部開校、過蓋咬合、下顎角開大、下顎後退位などの特徴を有し、偏側咀嚼との関係が深い。疼痛を訴えず、雑音のみの例が多く、間欠的クローズドロックの頻度が高く、骨変化もまれでない。

近畿大学における顎関節症の統計では、頻度がもっとも高いのは20歳代の若い女性で、次いで40歳代の女性であった。男女比は1:3で、顎関節症全体に対して半数以上がⅢ型(顎関節内障)であり、その半分が復位不能な円板前方転位であるクローズドロックであった。Ⅲ型に次いで多いのは顎関節症Ⅳ型で、約20%であった。

非復位性顎関節円板障害の新しい考え

従来、クローズドロックは、前方転位した円板後方肥厚部が下顎頭の前方滑走を阻害して開口障害を生じるとされてきたのに対して、最近では関節腔内癒着病変やvacuum effect などにより円板の可動性が障害される結果、下顎頭の滑走が制限されて開口障害が発症する、と考えられるようになってきている。

治療により臨床症状が改善しても円板は整位することは少なく、大部分は復位不能な円板前方転位のまま関節円板の可動域が増加して開口域が増大する。すなわち、円板はより前方に転位して変形が進行し、下顎頭の外側極付近の骨吸収性変化で下顎頭が小さくなり関節結節が平坦化し、下顎頭の運動域が増大する。

非復位性顎関節円板障害の診断法

非復位性顎関節円板障害の確定診断は、MRI検査による。

一方、MRIが利用できない場合の非復位性関節円板前方転位の診断は、開口障害および下顎頭の前方運動障害、相反性クリックあるいは間欠性ロックの既往とその直後の有痛性開口障害強制開口による患側顎関節痛の惹起の3要件を満たせば、可能であると考えられている。

非復位性顎関節円板障害の治療法

顎関節症と診断された患者が必ずしもすべて治療対象になるわけではなく、何らかの日常生活上の障害が認められることが必要条件となる。すなわち、疼痛を伴わずに40mm以上開口可能で、患者も気にならない関節雑音は治療対象にはならない。

顎関節円板障害(Ⅲa型)の大部分および顎関節円板障害(Ⅲb型)と変形性顎関節症(Ⅳ型)は、完治は望めず、35mm以上の最大開口、日常生活障害が軽度で満足せざるを得ない場合がある。また、その場合には自然経過よりも病悩期間をいかに短縮するかが治療目標となる。

以下に治療法についてまとめたものを示す。

  1. I. 非観血的治療(non-surgicalmodalities)
    1. 生活改善セルフケア,栄養補助食品(lifestyle adaptation, self-managing and supplement)
      1. 生活改善
      2. セルフケア
      3. 栄養補助食品
      4. 関節可動化訓練(対象:非復位性関節円板前方転位)
    2. 薬物療法(pharmacologictherapies)
      1.  内服薬(oralmedicine)
        1. 非ステロイド系消炎鎮痛薬(nonsteroidalant inflammatory drugs, NSAIDs)
        2. 中枢性筋弛緩薬(musclerelaxants)
        3. 麻薬系薬物(opioids)
        4. ベンゾジアゼピン系薬物(benzodiazepines)
        5. 抗うつ薬(antidepressants)
      2. 関節腔注入薬(intracapsularinjected agent)
        1. 副腎皮質ステロイド薬(corticosteroids)
        2. ヒアルロン酸(hyaluronicacid)
    3. 理学療法(physicalmedicine modalities)
      1. 顎運動療法,ストレッチ(jaw exercise/stretching)
      2. マッサージ,マニピュレーション(massage/jawmanipulation)
      3.  筋電図バイオフィードバック療法(EMG biofeedback therapy)
      4. 超音波・温熱療法(ultrasound/thermal therapies)
      5. 低出カレーザー照射療法(low-levellaser therapy)
      6. TENS, 低周波電流適電療法(electronic stimulation)
      7. 針治療(acupuncture)
    4. スプリント療法(oral appliances)
      1.  スタビライゼーションスプリント stabilization splint
      2. リポジショニングスプリントanterior repositioning splint
      3. リラクセーションスプリントrelaxation splint
      4. ピボットスプリントpivot splint
    5. 咬合治療(managementof dental occlusion)
    6. 認知行動および心身医学療法(cognitive-behavioral and psychological treatment)
  2. 観血的治療(surgical modalities)
    1.  関節腔洗浄療法(arthrocentesis)
    2. パンピング ・マ二ピュレーション(pumping manipulation)
    3.  関節鏡視下手術(arthroscopic surgery)
    4.  関節開放手術(open surgery)
      1. 関節円板形成術(meniscoplasty)
        1. 関節円板整位術(surgical disc repositioning)
          1. 関節円板修正術(discrecontouring)
          2. 関節円板修復術(discrepair)
          3. 関節円板切除術(meniscectomy)
            1. 円板切除術(meniscectomywithout implant)
            2. 円板切除後中間挿入物を使用する術式(meniscectomy with implant)
              1. 暫間的使用(temporaryimplant)
              2. 永久的使用(permanentimplant)


「クローズドロック」の文献・書籍など

【読み】

くろーずどろっく

【文献・書籍】

『最新 口腔外科学 第5版』, 榎本昭二ら, 医歯薬出版株式会社, 2017.
『標準口腔外科学 第4版第1刷』, 野間弘康ら, 株式会社医学書院, 2015.
『口腔外科学 第4版』, 白砂兼光ら, 医歯薬出版株式会社, 2020.

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。