生態学的プラーク仮説

「生態学的プラーク仮説」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月14日

生態学的プラーク仮説とは?

生態学的プラーク仮説とは、プラークを1つの生態系と捉えて口腔疾患の原因を理解する考え方である。う蝕が発生する原因は、プラーク中の特定の菌種とされていたが、口腔常在菌の動態変化に影響されることへ転換された。生態学的プラーク仮説は英語ではEcological Plaque Hypothesisという。

「生態学的プラーク仮説」の文献・書籍など

【読み】

せいたいがくてきぷらーくかせつ

【文献・書籍】

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。

う蝕の症例リスト

歯科医療の旬なキーワード「生態学的プラーク仮説」を解説✍️

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●伊藤中先生 カリオロジー
《背景》
・25年前にカリオロジーという言葉が広まった
・【欧米と日本の当時の違いはあり方】
歯周治療に偏ったう蝕治療への継承
病因論に基づくう蝕治療(プロセスに基づく治療)う蝕ができるまでのメカニズムに介入していく→だからカリエスリスクを知らないければならない
・以前のう蝕は修復治療だった
・う蝕とう窩は違う
・当時のリスク評価はレーダーチャートを用いていた
・カリオロジーに基づいた治療が普及したがそれがあったから現在のう蝕数が減ったとは限らない
・当時の欧米とのう蝕有病率の差はシステムの違いと思われていたが、ただ流行が遅れていただけかもしれない
・現在は低う蝕時代、虫歯が減ってきていると言われるようになった
・若年層は疾患の局在化、高齢者は健康の局在化が崩れてきつつある
・DMFTに関与しないCOは増えていく
・若年層の治療が難しくなってきた→白斑病変COと呼ばれるもの:隣接面は見落としやすい、治療タイミングの判断
・管理しているつもりでも宿主の要因や生活習慣や全身疾患が関与し、管理しきれてない状況
・健康な人でも高齢になるにつれて根面が晒され、ローリスクのままでは済まない
・う蝕は減っていて、一部の人に限局している。細菌検査などしなくてもハイリスクの人を見つけるのは簡単
・成人においては二次齲蝕や根面う蝕の問題がでてきている
《リスク》
・う蝕と細菌の関わり方の変化
・う蝕は唾液、細菌、食習慣、社会的地位、収入、健康観、教育レベルなど様々なことが関与している
・カイスの輪(細菌、糖、宿主+時間)
・原因菌が存在すれば発症する→う蝕も歯周病もこの原則を満たしていない。カリエスフリーの人にもS.ミュータンス菌が検出されるから。これは外因感染というよりも常在細菌・外因感染によって起こると考えられる
・これからは細菌との関わり方が変わってくる
・生態学的プラーク仮設:自分で酸を産生し、酸の中でも生活できる菌が増える→もっと酸が増える→普通の細菌が減る→脱灰が起きやすくなる
・プラークは採取した場所によって組成が違う
・【マイクロバイオーム】
・2012年に一般向けにマイクロバイオームが特集された
・健常者にどんな細菌がいるか遺伝子レベルで調べた
・マイクロバイオームの疾患 
①宿主の要因には遺伝子が関与
②環境で変わる 
③宿主と常在細菌がお互いに影響しあっている
バランスがとれているが環境要因がそれを撹乱することがある(ディスバイオーシス)安定した状態(シンバイオーシス)
・人間はひとりで生きているのではなく、細菌とともに生きている(0にするのではない)
・う蝕は多因子疾患(原因はない。細菌ですら要因のひとつ)
・リスクコントロールの考え方→絶対なるわけではない
歯を磨かないと虫歯になる→歯を磨かないと虫歯になりやすくなる
甘い物ばかり食べていると虫歯になる→甘い物ばかり食べていると虫歯になりやすくなる
・DHは意図を持った雑談で情報を引き出そう
・う蝕経験は年齢とともに考える(高齢者でDMFTが多くてハイリスクと言えるか?0ならローリスクといえる。小児でdmft0はローリスク?当たり前。逆に多いとものすごいハイリスクになる)
・う蝕に関連する唾液の役割(緩衝作用、浄化作用、カルシウムイオンやリン酸イオンの供給、抗菌作用)
・ライフステージとカリエスリスク(卒乳、兄姉の心理状態、家族の健康感、反抗期、仕上げ磨き嫌い、兄弟と間食する etc)
・適切なホームケアと食生活、リコールに来続ける習慣を若いうちに身につけておく
・高齢者の課題は根面の露出とからだの機能の低下
・根面齲蝕との一貫した相関性を有すると推測される特定の菌数は存在しない
・高齢者は日常生活の問題が食習慣に反映される
病変への対応
・カリエスリスクのコントロール:どれもこれもなおすのではなく一番リスクの高そうなところから介入する
・リスクが高い20歳未満でう蝕診断に視診が不可能な場合、6〜12ヶ月ごとの咬翼法のレントゲン写真が必要。成人の場合は6〜18ヶ月。リスクの低い人達は1〜2年に1回撮ればよい。若年者の場合は1〜3年。もしくはダイアグノデントを用いる(当て方によって差あり)。
・う蝕予防はエネメル質を強化するか、酸を出にくくするか、カルシウムイオンリン酸イオンを供給する
・キシリトールはプラークのpHを低下させない、唾液の分泌促進、S.m菌抑制効果。再石灰化を促すというのは疑わしい
・根面う蝕予防:一次予防は年1回のサホライド 二次予防は3ヶ月に一度バーニッシュ
・虫歯で苦労したことのない親の増加で今後どうなっていくか
「動物園で育った動物は子育てできない」のと同じで、「虫歯になったことのない親は虫歯予防ができない」だから親の指導が必要。

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う蝕予防シリーズ、最終回。
「なぜう蝕になるのか?」の答えと、まとめです。

歯科医師は「歯の削り方」は知っている。
歯科衛生士は「歯の磨き方」は知っている。
でも、「なぜ歯を削るのか?」、「なぜ歯を磨くのか?」。

意外と知らず、思い込みの多いところではないでしょうか。
かつて僕も同じでした。

現代カリオロジーで最も有力な考え方は、
『生態学的プラーク仮説』です。
アカデミックに、というよりは、分かりやすさを優先して書きます。

口腔内には様々な細菌がいます。
プラーク(バイオフィルム)の中にも色んな菌がいます。
バランスがとれていてpHが中性の口腔内の場合、
いわゆるむし歯菌(う蝕原生菌)はわずかな割合しか構成していません。

しかし、砂糖を含む発酵性炭水化物の摂取頻度が増えると、
その細菌の割合が変化します。
酸が産生されることで酸に弱い菌は死に、酸に強い菌が増えます。
酸に強い菌は酸を出す菌であり、いわゆるむし歯菌です。
そうしてむし歯菌の割合が高まり、より酸が産生されやすくなり、その悪循環の結果、歯のミネラルが失われます。

つまり、「局所環境の変化により常在微生物叢の自然バランスが変化した結果、う蝕になる」ということです。

プラーク(バイオフィルム)そのものがなければこれらの現象は起きない。
だから歯を磨くのです(ブラッシング、PMTC)。
そして、磨ける形態に修正するために、歯を削って詰めるのです。

プラーク(バイオフィルム)があったとしても、
むし歯菌(う蝕原生菌、酸産生菌)優位でなければよい。
だから食事の指導も重要なのです。

きっとみんな、毎日歯みがきや食事のことを伝えるだろうし、
歯を削って詰めるでしょ。

毎日の仕事の本当の意味を知ることって、すごく大切だと思う。

C2だから削るんじゃないよ。
清掃できない形態だから、清掃できる形態にするために削って詰めるんだよ。

取り残しが危険なのは窩洞の深部ではないよ。辺縁部なんだよ。

ブラッシング指導だけじゃだめなんだよ。
食事指導がそれと同じかそれ以上に大切なんだよ。

でも、もっと根本には、
人々の生活背景、社会的背景がある。

だから歯科関係者は、歯科医院に閉じこもってちゃダメなんだよ。

羽ばたこう。
僕たちにできることはもっともっとたくさんあるんだ。

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