歯性上顎洞炎

「歯性上顎洞炎」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月14日

歯性上顎洞炎とは?

歯性上顎洞炎とは、上顎洞炎のうち、歯および歯周組織の病変が原因で生じる上顎洞炎を歯性上顎洞炎という。急性歯性上顎洞炎と慢性歯性上顎洞炎がある。



歯性上顎洞炎が片側性で有ることが多い理由

歯性上顎洞炎は通常は片側性であることが多い。それに対し、鼻性上顎洞炎では両側性のことが多い。歯性上顎洞炎が発症する背景には、上顎の小臼歯や大臼歯の歯根尖が上顎洞に近接あるいは突出しているとことが多いという解剖学的な理由がある。

歯性上顎洞炎の原因

歯性上顎洞炎の原因は以下のような場合がある。
  • 上顎臼歯の根尖性歯周炎や慢性歯周炎に由来する感染上顎洞に波及して発症する場合
  • 根管治療、抜歯時の上顎洞穿孔、歯根やインプラント体の洞内迷入、サイナスリフトに用いた骨補填材料の感染など歯科治療に起因して発症する場合

歯性上顎洞炎と画像検査

歯性上顎洞炎を含む、上顎洞の病変や上顎洞の状態を検査するには、Waters法エックス線撮影やCTが適応になる。
Waters法エックス線撮影は上顎洞によるエックス線不過像を比較的明隙に描出できるが、歯と上顎洞の位置関係の観察には適していない。しかしながら被曝量が少ないこと、撮影時間が少ないことが利点である。
CTは上顎洞の観察には最も有用で、上顎洞と歯との位握関係が明瞭で、軟組織と硬組織の両方が見られるため、診断価値は高い。

急性歯性上顎洞炎の臨床的所見

急性歯性上顎洞炎の臨床的所見は以下の通りである。
  • 原因歯のある片側に発症する。
  • 患側頬部のび漫性腫脹や拍動性疼痛を認める。
  • 原因歯の打診痛や挺出感があり、根尖相当部歯肉から歯肉頬移行郎に発赤、腫脹、圧痛がみられる。
  • 頭痛、頭重感、鼻閉感、後鼻漏、膿性の鼻漏、嗅覚異常、眼窩下部の圧痛がみられる。
  • 鼻腔所見では患側の鼻腔側壁粘膜や下鼻甲介に発赤、腫脹があり、鼻道には自然孔から排泄された膿汁を認めることがある。
  • 炎症が眼窩部に波及すると眼瞼浮腫、 眼痛、 羞明、流涙などがみられる。
  • 炎症が後方に進展すると開口障害を生じる。

急性歯性上顎洞炎の治療法

急性歯性上顎洞炎の治療法は以下の通りである。
  • 抗菌薬、抗炎症薬を投与し、安静や補液、栄養補給をはかる。(急性期には基本的にはペニシリン系やニューキノロン系の抗菌薬が選択される。)
  • 急性症状が強い場合には原因歯を抜去して抜歯窩から排膿をはかる。
  • 患者に数回来院してもらい、抜歯窩から生理食塩水による洞内洗浄を繰り返し行う。
  • 内視鏡下に上顎洞膜様部を開放し、排膿、通気の改善をはかることもある。
  • 上顎洞の症状が消退しない場合は、上顎洞根治術(後述)を行う事がある。

慢性歯性上顎洞炎の臨床的所見

急性歯性上顎洞炎と同じであるが、急性歯性上顎洞炎より軽微であることが多い。

慢性歯性上顎洞炎の治療法

慢性歯性上顎洞炎の治療法は以下の通りである。
  • 原因歯に対する処置(抜歯、根尖病巣の除去)を行い、抗菌薬や抗炎症薬の投与、洞内洗浄を行う。
  • 原因歯への対処後、炎症性サイトカインの抑制、洞粘膜の線毛機能の調節を目的に少量のマクロライド系抗菌薬の長期投与が行われる。
  • 保存療法が奏効しない場合や再発を繰り返し慢性化する場合には上顎洞根治術(後述)が行われる。

歯性上顎洞炎と上顎洞根治術

再発例や炎症が消退しない歯性上顎洞炎の治療法として、上顎洞根治術がある。
上顎洞根治手術は病的な洞粘膜を除去し、下鼻道に対孔を形成する方法である。
手術法にはCaldwell-Luc法と和辻-Denker法がある。
  • Caldwell-Luc法
    • 上顎歯肉移行部に横切開を加え、骨を開け、洞内病的粘膜を除去し中鼻道、下鼻道への交通路(対孔)を形成する手術法である。上顎洞根治術としては、通常Caldwell-Luc法が行われる。
  • 和辻-Denker法
    • Caldwell-Luc法とほぼ同様だが、対孔形成時に梨状口縁の骨壁を切除するものである。

上顎洞根治術は、対孔が閉じると術後性上顎嚢胞を生じることがある。

近年、耳鼻咽喉科で内視鏡下での鼻内手術が普及し、経口腔的な上顎洞根治手術が行われることは少なくなっている。

歯性上顎洞炎と口腔外科

上顎洞自体は歯科・歯科口腔外科と耳鼻科と領域が重なる場所であるが、歯性上顎洞炎は鼻性上顎洞炎と違い歯科・歯科口腔外科での治療対象となる疾患である。




「歯性上顎洞炎」の文献・書籍など

【読み】

しせいじょうがくこうえん

【文献・書籍】

『SIMPLE TEXT口腔外科の疾患と治療 第3版』, 栗田賢一ら, 株式会社永末書店, 2011.
『最新 口腔外科学 第5版』, 榎本昭二ら, 医歯薬出版株式会社, 2017.
『標準口腔外科学 第4版第1刷』, 野間弘康ら, 株式会社医学書院, 2015.

著者/監修者情報
歯科医師

1992年生まれ。千葉県の漁村で育つ。鶴見大学歯学部在学中からアプリやWebサービスの開発を趣味で行う。東京歯科大学大学院博士課程に進学するもお金が無くて中退。2017年にワンディー株式会社を創業。

口腔外科疾患の症例リスト

初めて症例を上げさせて頂きます。よろしくお願いします。

26歳 女性
主訴:右頬が腫れて痛い
診断:右上6番Per、歯性上顎洞炎

消炎、抜歯した後、インプラント治療を希望されたので、抜歯後3か月で埋入計画。垂直的骨量が2㎜程度であったが、口蓋側に骨量があったため、口蓋側から頬側に傾斜させてソケットリフト、埋入。術後4か月で最終補綴となりました。
現在特に症状はありません。

至らない点等ありますがご指導の程よろしくお願いします。

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レベルが違うオーバー根充?
パノラマ画像で右上6番に見える非常に長いガッタパーチャは、他院でGBR中に上顎洞の外で処置されたものです。
EXTし、同部位にはインプラントを埋入する予定です。

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残根抜歯について。
残根の上顎6番を抜歯をします。パントモで見たところ上顎洞と根が非常に近接しています。
皆さんは複数根の抜歯をする時 分割しますか。また上顎洞に近い時何か気をつけることはありますでしょうか。意見もらえれば幸いです。よろしくお願いいたします!

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