Frey症候群(フライ症候群)

「Frey症候群(フライ症候群)」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年07月22日

Frey症候群(フライ症候群)とは?

Frey症候群(フライ症候群)とは、耳下腺手術や外傷による耳下腺損傷後、食事や味覚刺激で、耳下腺部、側頭部、頬部皮膚に発赤、発汗、灼熱感を認めるものである。
Frey症候群は、耳介側頭神経症候群、味覚性多汗症ともいう。







Frey症候群(フライ症候群)の原因

Frey症候群は、1938年にFordらが提唱した神経の過誤支配説が支持されている。これは、耳下腺に分布する耳介側頭神経内の副交感神経成分である唾液分泌神経と、皮膚の汗腺に分布する交感神経が手術などにより切断された後、治癒過程で汗腺にこの副交感神経の過誤支配が起こるために発症するというものである。

Frey症候群(フライ症候群)の予防法

Frey症候群(フライ症候群)の予防は、可能なら腫瘍切除の際に腺組織と耳下腺被膜をできるだけ残して摘出部を覆うことである。
露出した耳下腺実質が大きい場合には、露出した耳下腺部を残存耳下腺被膜や胸鎖乳突筋、側頭筋筋膜などで被覆することも予防になる。

Frey症候群(フライ症候群)の治療法

Frey症候群(フライ症候群)は治療として、スコポラミン・クリーム塗布やA型ボツリヌス菌毒素の皮下注射などが報告されている。

耳下腺手術の合併症

Frey症候群(フライ症候群)の他にも、耳下腺手術の際に起こりうる合併症として顔面神経麻痺が挙げられる。顔面神経の直接損傷が無い場合でも、術後の死腔が大きいと圧迫性の麻痺が残ることがある。

術後欠損が大きい場合は、死腔を防ぐため胸鎖乳突筋の有茎皮弁を用いる。神経枝を切断せざるを得ない場合には、再吻合や大耳介神経などの移植を行う。

耳下腺の疾患

Frey症候群(フライ症候群)の原因の一つに耳下腺手術が挙げられる。耳下腺手術を行わなければならない原因として、耳下腺に生じる腫瘍性疾患などが挙げられる。そこで、唾液腺に生じる疾患について概説する。

耳下部、顎下部の腫瘤には唾液腺疾患のほか、リンパ節をはじめとする周囲軟部組織由来の疾患、鰓性器官由来の嚢胞など種々の疾患が含まれる。耳下腺の内側は副咽頭間隙に接しており、この部位から生じる腫瘤との鑑別も必要となる。

唾液腺疾患は、腫瘍性の疾患以外に炎症性疾患、変性疾患など多彩であるにも関わらず、症状としては単なる腫瘤のみのことが少なくないので、鑑別は必ずしも容易ではない。そこで、超音波、CT、MRI、PET(positron emission tomograpy)などの画像診断、及び穿刺細胞吸引によって病理診断を下すこととなる。

唾液腺の腫瘍

唾液腺腫瘍の約85%は耳下腺に生じ、耳下腺腫瘍の過半数は多形腺腫である。顎下腺、舌下線、口腔内小唾液腺原発の腫瘍は少ないが、顎下腺は約半数、舌下線はほとんど全てが悪性である。
以下に唾液腺に生じる代表的な腫瘍性疾患について概説する。

【唾液腺の腫瘍】
多形腺腫
  • 唾液腺腫瘍の過半数を占め、多形腺腫の85%は耳下腺に原発する。
  • 30~60代に多く、男女比は1:2で女性に多い。
  • 無痛性の腫瘤として自覚され、弾性硬で表面は平滑であるが、ときに硬い部分を触れることがある。
  • 周囲組織との癒着は無く(可動良好)、顔面神経麻痺も認めない。
  • 約80%は浅葉に生じるが、深葉に生じた場合は外方には目立たず、傍咽頭間隙へ進展し咽頭側壁の腫脹をみることがある。
  • 経過中に悪性変化を生じる可能性があるので、早期に摘出術を施行することが望ましい。
  • 手術に際しては顔面神経の損傷に注意する。

ワルチン腫瘍
  • ほとんどが耳下腺に生じる。
  • 良性腫瘍では多形腺腫に次いで多い。
  • 50歳以上の男性に多くみられる。喫煙者がほとんどである。
  • 約10%に多発性、両側性にみられる。
  • 弾性軟の腫瘤として触知され、時に疼痛、腫脹感を伴うことがある。
  • Tcシンチグラフィーで高集積像を呈するのが特徴的。

腺癌
  • 通常、無痛性の腫瘤で、周囲組織との癒着・顔面神経麻痺がみられることも多い。
  • 若年者にもみられ、性差は著しくない。
  • 腫瘍細胞の分化度により悪性度が大きく左右される。
  • 根治治療は顔面神経の合併切除を含めた拡大全摘出が必要となることが多い。

腺様嚢胞癌
  • 耳下腺よりも顎下腺、口腔内小唾液腺に多くみられる。
  • 性差はなく、50歳前後に多くみられる。
  • 弾性硬の限局性の腫瘤として認められる。
  • 増殖は緩徐であるが、周囲組織への浸潤傾向が著明で、ことに早期に神経組織に浸潤し、疼痛、知覚鈍麻、神経麻痺を生じやすい。




「Frey症候群(フライ症候群)」の文献・書籍など

【読み】

ふらいしょうこうぐん

【文献・書籍】

『最新 口腔外科学 第5版』, 榎本昭二ら, 医歯薬出版株式会社, 2017.
『図解 耳鼻咽喉科 第1版』, 市村恵一ら, 株式会社金芳堂, 2011.
『新耳鼻咽喉科学 第11版』, 市村恵一ら, 株式会社南山堂, 2013.

著者/監修者情報
歯科医師

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