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ハンドピース(タービン・コントラ)のティーマックス X25とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

ハンドピース(タービン・コントラ)のティーマックス X25とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

最終更新日

う蝕除去や支台形成の微調整を行う際に、コントラの選択が切削感やチェアタイムに与える影響は大きい。特に保険診療を中心に運営している医院では、回転器具の更新を後回しにしてきた結果、旧式機種のガタや視認性不足が術者のストレス源になりやすい。ティーマックス X25は等速のコントラとしてシンプルな設計を志向しつつ、チタンボディやクリーンヘッドの採用で耐久性と衛生性を高めた機種である。本稿では臨床的な使い勝手と院内運用の観点から X25 の設計思想と実務での扱いを整理し、導入判断に必要なポイントを明確に示す。モータとの互換性、滅菌と注油の運用、臨床シナリオ別の適応範囲、コスト対効果の見積もり方法などを実践的にまとめ、導入後に起こり得るトラブルの予防策や教育の要点まで網羅的に解説する。読者は自院の症例構成と稼働体制を照らし合わせながら、X25 が日常臨床にどのように寄与するかを具体的に判断できるだろう。

目次

製品の概要

ティーマックス X25 はナカニシが展開する Ti Max X シリーズに属する等速コントラである。光源内蔵のモデルは X25L、光なしのモデルは X25 としてラインナップされ、メーカー型番はそれぞれ C601 と C611 である。一般的な呼称はストレート・ギアードアングルハンドピースで、販売名はティーマックス XC、医療機器認証番号も付与されている。想定される基本用途は歯科用コントラバー径二点三五ミリメートルの CA バーによる一般切削であり、研磨用途やプロフィーでの使用は設計想定外である。接続は JIS 規格の E タイプモータに合わせており、許容される入力回転数は毎分四万回転以下とされる。外形は小型ヘッドを志向しつつ耐久性を確保する構造で、光学付きモデルではグラスロッドによる導光を用いて切削点の視認性を高める設計である。本体の素材や注水、チャック方式などは日常臨床での扱いやすさとメンテナンス頻度に影響する要素であるため、導入前に院内の既存モータや滅菌フローとの整合性を確認することが重要である。

主要スペックと臨床的意味

ティーマックス X25 のコア仕様は等速一対一のギア比と毎分四万回転を上限とする回転特性であり、対応するバー径は二点三五ミリメートルの CA バーに限定される。注水は単点方式であり、チャックはプッシュボタン式のためバーの着脱がスムーズに行える。一方でボディ素材にチタンを採用し表面は DURAGRIP 処理が施されているため長時間の保持時でもグリップ感が安定し、滅菌や手汗による微細な傷に対して耐性がある。内部にはクリーンヘッドシステムを採用し、サックバックを低減してベアリング保護と交差感染リスクの軽減を図っている。光学モデルではグラスロッドによる導光が切削点を照らすため、拡大視野と組み合わせることでマージンや二次う蝕の微細な陰影を判別しやすい。これらの仕様が術式に与える影響は大きく、等速はトルク伝達が素直で段差除去や軟化象牙質の段階的除去に適合する反面、大量切削や硬質材料の短時間除去には増速型が優位となる。単点注水は冷却位置のコントロールが明確なため術者の水当てが技術的要素となるが、水の逃げが少ない分視野保持がしやすいという利点もある。バー適合に関しては CA バー専用設計のため FG バーの使用は避けるべきであり、装着長と最大作業長の範囲を守ることが共振やヘッド発熱を防ぐ上で重要である。

互換性と運用方法

X25 の運用に当たってはモータとの接続と電気的仕様を確認することが第一である。E タイプ接続を採用するため既存のユニットのモータが毎分四万回転以下で動作するかどうか、加えてモータ側にライト供給端子があるかどうかを事前に確認する必要がある。ライト付きモデルはユニット側の電源仕様に依存して発光が可能となるため、ユニットとの相性を営業担当と照合しておくべきである。滅菌とメンテナンスの流れは院内運用の肝となる。患者ごとにオートクレーブで滅菌する前に注油を行い、ヘッド内に残った余剰オイルはバーを外して短時間の空運転で排出することが推奨される。推奨滅菌条件としては百三十五度まで対応可能であり、代表例として百二十一度二十分または百三十二度十五分の滅菌サイクルが挙げられる。チャックや水路のフィルタ確認を定期化することで保持力低下や注水不良を未然に防げる。院内教育は安全運用に直結するためバーの着脱は必ず停止後に行うことを明文化し、動画や実機での反復訓練を実施するとよい。研磨ペーストがヘッド内部に入り込む運用は故障の原因となるため避けるようルール化することが重要である。

経営インパクトと簡易ROI

導入コストと運用設計を現実的に把握することは導入判断に欠かせない。標準的な販売価格は光付きの X25L が約百十一千円、光なしの X25 が八十三千円程度とされており、光の有無で二万八千円ほどの差が生じる。一般外来での実務運用を考えると光付きと光なしを併用して二本体制にすることで滅菌待ちでユニットが止まらないようにできるため、稼働率の安定につながる。簡易的な一症例当たりの償却費は本体価格を年間症例数と想定稼働年数の積で割ることで算出できる。チェアタイム短縮による人件費削減や再治療率低下による原価改善は自院の時間単価や再介入に要する時間を変数として計算すべきであり、外部の一般値を安易に当てはめるべきではない。購入後の保守や保証、貸出機対応は販売店との契約内容に左右されるため見積もり段階で確認することが肝要である。滅菌設備や注油器といった付帯設備の整備も購入コストの一部として見積もり、ユニットの本数を余裕を持って確保することで実働率を維持する運用設計が望ましい。

症例シナリオ別の使い分け

臨床での具体的な使い分けを考えると等速コントラは選択的除去や微修整に威力を発揮する。う蝕除去では回転の立ち上がりが穏やかなため染色に基づく軟化象牙質の段階的除去が行いやすく、周囲組織を過度に削るリスクを減らせる。単点注水は狙点の冷却を明確にし視野を濡らし過ぎないため色調や境界が読み取りやすい。クラウン辺縁やマージンの微修整では振動が少ないギア構造とプッシュボタン式チャックが効率性と安全性に寄与する。仮封やテンポラリーの除去では等速のトルク感が素材の除去過程を読み取る助けとなり、過剰切削や余剰熱による周囲組織損傷を回避しやすい。逆に大量の切削や厚いメタルの除去は増速型の方が短時間で効率的であるため、院内で役割を明確に分担することが望ましい。研磨やペーストを介したポリッシングは本機種の想定外であり、専用の減速機や研磨機の使用を推奨する。

使いこなしのポイント

日常運用での注意点はまずバーの突出長と装着の正確さを守ることである。装着長や最大作業長を超えた突出は共振やヘッドの過熱を招き、窩底への突き上げや不快感の原因になるため厳守が必要だ。バー装着後は前後に軽く押し引きして把持確認を行う習慣を付けると良い。視野形成については拡大鏡と X25L の導光を併用し、単点注水の当て方を常に手元で微調整すると切削点のコントロール性が高まる。水が逃げにくい分飛沫が抑えられるが粉塵が残る場合は短時間のドライ確認を挟むとマージンの読み違いを防げる。日々のメンテナンスはルーティン化が効果的であり、毎患者の注油とオートクレーブ処理、週次のチャック清掃や水路フィルタ確認を組み込めば保持力低下や水量不良の発生は減少する。空運転でのオイル排出はバー非装着で短時間に留め、オイルによる内部残留を最小化することが耐久性向上に繋がる。

適応と適さないケース

X25 の等速特性は切削量を細かくコントロールする場面に向いているため、深在性カリエスの段階的除去や支台歯の微修整、テンポラリー除去のような細やかな操作に適合する。一方で大量切削や厚い金属の切削など短時間で大きな除去量を必要とする作業では時間がかかりやすく、増速タイプのコントラの方が総合的な効率は高い。研磨や PMTC、ストリッピングのようにペーストや特殊チップを要する運用は本機種の設計想定外であり、ヘッド内部への異物侵入やチャック不具合を招く可能性があるため専用機器の使用が無難だ。したがって X25 は医院内の回転器具ラインナップの中で等速領域の役割を担う機器として位置づけ、用途に応じて増速機や研磨専用機と組み合わせる運用が合理的である。

導入判断の指針

医院の診療方針や症例構成に応じて導入の優先順位を付けるとよい。保険中心で効率最優先の医院では光なしの X25 を複数本導入し滅菌サイクルのボトルネックを避ける体制が現実的である。切削量が多い症例は増速機に役割を分担させることでコストを抑えつつ稼働率を高められる。自費診療比率を高めたい医院では X25L を主力に据え、拡大視野と組み合わせることでマージンフィニッシュの再現性を向上させる運用が向く。ライトによる視認性向上は説明時の視覚的説得力や再調整減少の効果をもたらす可能性があり、症例数で費用回収を試算する価値がある。口腔外科やインプラント中心の医院では一般切削の比率が低くなるため X25 を最小限の本数に留め、外科用アタッチメントや増速系を優先して配備する方が無駄がない。いずれのケースでも E タイプモータの発光仕様や滅菌フローの整備、二本体制による稼働余裕など具体的な運用設計を事前に決めることが成功の鍵である。

よくある質問

質問一 光付きの X25L と光なしの X25 のどちらを選ぶべきか 答え 光の有無が最大の差であり、クラウンマージンや遠心部の視認性が重要な処置や拡大鏡を常用する術者には X25L が有利である。一方でユニット側モータに発光機能がなく追加の光を用意する予定があるなら光なしモデルでコストを節約する選択も合理的である。質問二 増速一対五のコントラとの使い分けはどう考えるべきか 答え 大量切削や硬い材料の除去は増速が効率的である。う蝕軟化象牙質の選択的除去や微修整は等速の方がコントロールしやすいため院内で役割を分担するとよい。質問三 滅菌と注油の順序はどうするべきか 答え 使用後に注油を行い、余分なオイルを空運転で排出してから滅菌パックに入れてオートクレーブ処理する方式が推奨される。代表的な滅菌条件は百二十一度二十分または百三十二度十五分である。質問四 規格や接続で注意すべき点はあるか 答え 接続は E タイプであり対応するモータとの整合を確認すること。バーは CA 二点三五ミリメートルのみ適合するため FG バーは使用しない。装着後の把持確認を徹底することでバー飛びや事故を防げる。