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口腔トレーニング器具のペコぱんだ こども用とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

口腔トレーニング器具のペコぱんだ こども用とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

最終更新日

小児の口腔機能に関する相談は年々増加している。よく噛めない、飲み込みに時間がかかる、サ行やラ行の発音が不明瞭である、いつも口が開いていて舌が前に出ているといった訴えは、日常診療でも珍しくない所見である。診療報酬上も口腔機能発達不全症の評価と管理が位置付けられ、舌圧検査を含めた系統的な評価が求められる流れにある。

しかし評価ができても、その後どのようなトレーニングを提示するか、家庭でどこまで継続してもらえるかという点で悩む歯科医師は多い。舌圧トレーニング用具ペコぱんだ こども用は、このギャップを埋めるための具体的なツールであり、舌と口蓋の接触力を自宅でも反復して鍛えることを目的に開発された器具である。

本稿では、ペコぱんだ こども用の用途と仕様、臨床での使いどころ、経営的なインパクトまでを整理し、自院の診療スタイルや患者層に照らして導入を検討するための実務的な視点を提示する。

目次

ペコぱんだ こども用の基本コンセプト

ペコぱんだは、舌の筋力を強化する目的で開発された自主訓練用の舌圧トレーニング器具である。メーカーは「舌の筋力を強化するために開発された自立訓練用トレーニング用具」と定義しており、もともとは高齢者の摂食嚥下リハビリテーションでの活用を想定していた。

その後、小児の口腔機能発達不全症や開咬、低位舌などへの応用が広がり、小児分野でも舌圧トレーニング用具として活用されるようになった。実際に小児の舌圧検査と機能訓練の解説では、ペコぱんだを使った舌圧トレーニングが最大舌圧の改善と嚥下機能の獲得に有用であることが紹介されている。

ペコぱんだ こども用は、こうした小児でのニーズに応えるかたちで追加された規格であり、従来規格の約85パーセントに縮小したサイズと、子ども向けに調整された3段階の硬さを備えている。 これにより乳歯列期から学童期前半の小さな口腔内でも扱いやすく、舌の挙上運動を安全かつ反復しやすい設計となっている。

ラインナップと仕様から見る特徴

硬さ別ラインナップと色分け

ペコぱんだ こども用の硬さは3種類である。やわらかめはベリー色、ふつうはグレープ色、かためはライム色として提供される。 大人用ペコぱんだの硬さ体系と比較すると、こども用のやわらかめは大人用S、ふつうはMS、かためはMに相当すると案内されている。

この対応関係から、こども用3規格はいずれも大人用の中では比較的柔らかい領域に位置していることが分かる。すなわち、こども用は舌圧が未発達な児にも扱いやすいように設定されており、必要に応じて成人用の硬め規格へステップアップしていくという発達的な連続性を意識した設計である。

サイズ、重量、材質

ペコぱんだ こども用の仕様として、製品名が舌圧トレーニング用具であること、重量が約6グラムであること、材質がスチレン系熱可塑性エラストマーであることが公開されている。 従来規格の85パーセントに縮小された全長と、軽量の弾性体という組み合わせは、小さな口腔内でも持ち手部が邪魔になりにくく、舌で持ち上げる負荷が弾性による変形に集中するよう配慮された設計であると考えられる。

また、こども用は非医療機器として分類されており、製品案内上も「非医療機器」と明記されている。 これは舌圧トレーニング用具があくまで機能訓練用の器具であり、器具単体で治療効果をうたうものではないという位置付けを示している。この点は、薬機法への配慮という観点からも押さえておくべきポイントである。

対象年齢と販売単位

市販カタログやディーラー情報では、ペコぱんだ こども用の対象年齢は3歳以上と案内されている。 販売単位は1個包装が基本であり、メーカーの案内では5個入り箱を20箱まとめた梱包単位も設定されている。

標準販売価としては単品1個あたり900円台前半の希望価格が示されており、トレーニング期間を数か月と想定した場合の1日あたりコストは数十円以下のオーダーになる。 材料費としては決して高額ではなく、診療報酬や自費指導料とのバランスを考えやすい価格帯といえる。

小児臨床での適応と症例イメージ

口腔機能発達不全症管理での位置付け

小児の口腔機能発達不全症では、食べる、話す、その他の全身要因に分けた評価に加え、舌圧検査が重要な指標とされている。診療報酬改定により、小児の舌圧検査も算定対象となり、年齢別の基準値との比較による評価が推奨されている。

この文脈において、ペコぱんだ こども用は、舌圧測定で基準値を下回った児や、低位舌が疑われる症例に対する機能訓練ツールとして活用されている。舌圧測定器で数値を示し、その改善を目標にペコぱんだで筋力トレーニングを行うことで、保護者と児が機能訓練の必要性と成果を視覚的に共有しやすくなる。

舌小帯短縮症術前後の機能訓練

舌小帯短縮症の症例報告では、術前にスポットポジションやポッピングの訓練を行い、術後にはペコぱんだを用いた舌圧トレーニングを継続した結果、最大舌圧が2キロパスカル台から15キロパスカル台まで改善し、舌挙上も理想的に行えるようになったと報告されている。

このケースでは、術前からペコぱんだを含むトレーニングを遊び感覚で導入することで、器具への抵抗感を軽減し、術後も継続的にトレーニングに取り組めたことが示唆されている。こども用サイズであれば、小さな口腔内でもトレーニング部と位置決め部を安定して配置できるため、舌の動きを意識しやすい。

開咬や異常嚥下癖に関連する症例

開咬や異常嚥下癖がみられる小児では、舌の筋力低下や低位舌が背景にあることが多い。小児の舌圧検査と機能訓練の事例では、舌圧が低く舌が持ち上がらない児に対して、ペコぱんだを用いた基礎トレーニングと、ガムやスティックを用いた応用トレーニングを組み合わせることで、数年間で舌圧と舌位の改善が得られた経過が示されている。

ここで重要なのは、ペコぱんだが単独で開咬や不正咬合を治すわけではないという点である。あくまで舌圧と舌挙上パターンの改善を通じて、矯正治療や口腔習癖改善の基盤を整える位置付けであり、MFTや矯正治療と組み合わせた包括的な介入が前提となる。

トレーニング方法と指導プロトコル

基本的な使用方法

ペコぱんだ こども用の使用方法はシンプルである。持ち手部の穴に指を入れて持ち、トレーニング部を舌の方向に向けて口腔内に挿入する。トレーニング部を舌の上に載せた状態で、位置決め部を上顎前歯で軽く噛ませて固定し、その状態から舌でトレーニング部を繰り返し押し上げて押しつぶす。

正しく押しつぶせている場合、ペコぱんだ全体に振動が伝わるように設計されており、保護者は位置決め部や持ち手部を軽く持ちながら、この振動を触覚的に確認できる。 この「振動が伝わるかどうか」は、舌が十分にトレーニング部を口蓋方向へ押し上げているかを評価する簡便な指標となる。

トレーニング頻度と負荷設定

具体的な頻度は施設や症例により異なるが、症例報告では週3回程度の舌訓練を8週間継続することで、最大舌圧が有意に上昇したデータが報告されている。 小児の口腔機能訓練では、1回あたりのトレーニング時間を数分以内に抑え、日常生活の中で無理なく継続できるプロトコルが現実的である。

例えば、1回につき10秒程度の押し上げを5セット、1日2回を目安とする設定であれば、総負荷として過大になりにくく、家庭での実施も現実的である。実際の設定は年齢や基礎疾患、疲労しやすさを踏まえて調整し、定期的な再評価で増減するのが望ましい。

硬さのステップアップ

硬さの選び方に関する案内では、大人用ではSから開始することが推奨されており、こども用でもやわらかめから開始し、慣れてきたらふつう、かためへと段階的に移行することが示されている。 初期段階で必要以上に硬い規格を選ぶと、押しつぶすことができず挫折感につながるため、まずは成功体験を重ねさせることが重要である。

経営インパクトとROIの考え方

1症例あたりのコスト構造

ペコぱんだ こども用の標準販売価は1個あたり900円台前半であり、こども1人に対してやわらかめとふつうを各1個配布するとしても、材料費は2個分にとどまる。 トレーニング期間を6か月と仮定すると、1日あたりの器具コストは数十円以下となり、診療報酬や自費指導料を含めた収益構造に与える影響は小さい。

むしろ経営的インパクトとして大きいのは、口腔機能発達不全症の評価と管理を通じて、定期的な来院と継続的な関係性を構築できる点である。小児期から舌機能や嚥下機能に介入している医院は、保護者から「機能まで見てくれる歯科」として認識されやすく、長期的な患者維持と紹介につながる。

チェアタイムとスタッフ教育とのバランス

ペコぱんだを用いたトレーニング指導には、初回でおおむね5〜10分程度のチェアタイムが必要である。その時間で舌圧検査結果の説明、器具の使い方のデモンストレーション、保護者への清掃方法と安全上の注意の説明を行うことになる。この時間は単なる「教育コスト」ではなく、口腔機能発達不全症管理の一部として診療報酬に反映される部分であり、医院としては時間単価の高い診療に位置付けられる。

スタッフ教育の面では、歯科衛生士が中心となって口腔機能評価とトレーニング指導を担う体制を整えることで、院長の負担を抑えつつ機能分担を図ることができる。実際の事例でも、スタッフ全員がセミナーを受講したうえで、口腔機能管理と舌圧トレーニング指導を行っている報告がある。

再治療リスクと長期的な価値

舌圧低下や低位舌を放置した場合、開咬や叢生の悪化、口呼吸に伴うう蝕や歯周病リスクの増加、発音への影響など、将来的に矯正治療や補綴治療が必要となる可能性が高まる。ペコぱんだ こども用によるトレーニングは、それらのリスク要因の一部を軽減する基礎介入として位置付けられる。

長期的なROIを考えると、ペコぱんだを導入したことによる直接的な売上よりも、機能面まで包括的に診る医院としてのブランド価値向上と、世代をまたいだ患者維持効果の方が大きい。祖父母世代には摂食嚥下リハビリテーションとして成人用ペコぱんだを活用し、その孫世代にはこども用を用いるような運用は、地域の「口から食べることを生涯支える歯科」としてのポジショニングを強化する。

導入時の注意点と失敗パターン

渡しただけで終わるパターン

最も典型的な失敗は、ペコぱんだとパンフレットを渡して家庭でのトレーニングを指示するだけで、次回来院時に使用状況を具体的に確認しないパターンである。この場合、多くの家庭では数日でトレーニングが途絶え、舌圧の改善も見込めない。

これを防ぐには、初回にトレーニングの目的と評価方法を明確に共有しておくことが重要である。舌圧測定器がある場合には、初診時の数値と年齢別の平均値を示し、「半年後にこの辺りまで上げていくことを目標にする」というように、数値と期間を具体的に提示するとよい。

安全対策と誤使用の防止

ペコぱんだ こども用は、誤使用を防ぐためにも保護者がそばで見守ることが前提とされている。 強く噛みしめてトレーニング部を噛み切ろうとしたり、持ち手部を深く咽頭側まで入れてしまったりするリスクを考慮し、診療室で実際に保護者にも持たせながら正しい使用方法と「やってはいけないこと」を具体的に伝えておく必要がある。

また、材質が熱可塑性エラストマーであり、オートクレーブ滅菌は不可である点にも注意する必要がある。 診療室で共用することは避け、患者ごとに専用の器具を配布し、家庭での洗浄と保管方法を指導する体制が望ましい。

他の口腔トレーニング機器との比較と棲み分け

舌圧トレーニングには、ガムやタブレットを用いた訓練、ストローやスティックを用いる方法、舌圧測定器に付属するトレーニングアタッチメントなど、多様な手段がある。ガムトレーニングでは咀嚼と舌圧を同時に鍛えられる利点があるが、誤嚥や窒息のリスクを考えると乳幼児には適用しにくい。

ペコぱんだ こども用の強みは、舌を口蓋方向に持ち上げるというシンプルで明確な運動を比較的安全に反復できる点である。位置決め部とトレーニング部が一体構造であるため、毎回同じ位置と方向で負荷をかけやすく、運動学習の再現性が高い。一方で、口唇閉鎖力や咀嚼機能のトレーニングには直接作用しないため、口唇トレーニング器具や咀嚼訓練と組み合わせて総合的に口腔機能改善プログラムを構成することが望ましい。

医院タイプ別の導入戦略

小児歯科を主軸とする医院

小児歯科中心の医院では、ペコぱんだ こども用を口腔機能発達不全症管理の柱の1つとして位置付けやすい。初診時から舌圧測定と舌位評価をルーチンに組み込み、舌圧低下が疑われる症例にはペコぱんだとトレーニングマニュアルをセットで提示する。

この際、院内で作成したトレーニング日記やスタンプカードなどを用いて、子どもが達成感を感じられる仕組みをあらかじめ準備しておくと継続率が高まる。定期健診時には舌圧の再測定とトレーニング状況の確認を行い、硬さのステップアップやトレーニング内容の変更を行う。

一般歯科に小児が一定数いる医院

一般歯科主体の医院では、すべての小児に導入するのではなく、低位舌や開咬、構音障害が疑われる症例をピックアップし、必要な児に限定してペコぱんだを提案する運用が現実的である。この場合、在庫としては各硬さを少量ずつ持ち、対象児には初回指導を行ったうえで購入してもらう形にすると、在庫リスクを抑えられる。

舌圧測定器が院内にない場合でも、嚥下時の舌前突や口呼吸、安静時の舌位、構音の状態を観察し、「舌の力を少し鍛えてみましょう」という説明で十分に保護者の理解を得られるケースは多い。必要に応じて連携する小児科や言語聴覚士に評価を依頼する体制を整えておくと安心である。

高齢者も多い地域密着型医院

高齢者の摂食嚥下リハビリテーションにも取り組んでいる医院では、成人用ペコぱんだとこども用を併用することで、世代を超えた口腔機能管理のストーリーを描きやすい。祖父母が成人用で舌圧トレーニングを行い、その様子を見た孫がこども用で一緒にトレーニングするという運用は、家族単位でのモチベーション維持にもつながる。

このような医院では、待合室のポスターやパンフレットに「食べる、話すを支える舌のトレーニング」としてペコぱんだを紹介し、口腔機能の重要性を発信することが、患者教育と医院ブランディングの両面で有効である。

よくある質問

Q ペコぱんだ こども用の対象年齢はどのくらいか

A カタログや販売サイトでは対象年齢を3歳以上と案内している。 ただし、実際に使用できるかどうかは年齢だけでなく、指示理解のレベルや器具に対する恐怖心の有無によって左右される。診療室で一度試用し、正しい位置で舌を押し上げる動きができるかどうかを確認したうえで、自宅トレーニングへ移行することが望ましい。

Q ペコぱんだ こども用は医療機器なのか

A メーカーの資料では、ペコぱんだは非医療機器と明記されている。 そのため、器具単体が治療効果を保証するものではなく、歯科医師や言語聴覚士が設計する機能訓練プログラムの一要素として用いることが前提である。診療報酬上も、ペコぱんだ自体ではなく、評価や機能訓練、生活指導といった診療行為が算定の対象となる。

Q どの硬さから始めるのがよいか

A 硬さの選び方に関する案内では、こども用の硬さは大人用S、MS、Mに相当し、初めてトレーニングを行う場合はより柔らかい硬さから始めることが推奨されている。 多くの症例では、やわらかめのベリーから開始し、押しつぶしが容易になった段階でふつう、かためへとステップアップするのが現実的である。

Q どのくらいの期間続けると効果が期待できるか

A 高齢者施設を対象とした舌訓練の報告では、週3回のトレーニングを8週間継続した群で最大舌圧の有意な上昇が認められている。 小児では個体差が大きいが、少なくとも数か月単位で継続し、舌圧測定や嚥下状態、発音の変化を定期的に評価しながらトレーニング内容を調整していくことが望ましい。

Q 発達特性のある子どもにも使用できるか

A 発達特性がある子どもでも、指示理解が可能で口腔内への器具挿入に対する拒否が強くなければ、ペコぱんだ こども用は有用な選択肢となり得る。振動というフィードバックがあるため、トレーニングがうまくできているかどうかを本人が体感しやすい利点もある。ただし、感覚過敏が強い場合や咽頭反射が強い場合には、無理に器具を使用せず、指や綿棒を用いた段階的な慣らしから始めるなど、個々の特性に応じた配慮が必要である。