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FG用のカーバイドバー、Komet H1SEMシリーズ(低速・CA用)とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

FG用のカーバイドバー、Komet H1SEMシリーズ(低速・CA用)とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

最終更新日

う蝕除去の場面で、軟化象牙質だけを確実に取り切りたいと思いながらも、ラウンドバーの切れ味や摩耗に不満を感じている歯科医師は多いはずである。従来よく用いられてきたスチールバーやステンレススチールバーは、切れ味の低下や耐腐食性の点で限界があり、う蝕が深い症例では余計な圧をかけてしまい、歯髄刺激や健全象牙質の過切削につながるリスクがあると感じる場面も少なくない。

一方で、MIコンセプトが浸透した現在、軟化象牙質を十分に除去しつつ、硬化した象牙質は最大限温存したいという要求は高まっている。特に開業医では、チェアタイムやスタッフ教育の負荷を考えながら、う蝕除去の質と再治療率をどこまで標準化できるかが医院経営上のテーマとなる。

Komet H1SEMシリーズは、こうしたニーズに応えるために設計された軟化象牙質除去用のMIカーバイドバーである。低速のCAハンドピースで使用することを前提に、タングステンカーバイド製ブレードとクロスカット刃形を組み合わせ、低速でも高い切れ味と低振動を狙った製品であり、軟化象牙質除去の工程そのものを見直すきっかけとなり得るインスツルメントである。

本稿では、Komet H1SEMシリーズの用途や主要スペック、臨床的特徴を整理するとともに、導入によって得られる経営面のメリットや注意点を検討する。単に「良く切れるバー」というレベルにとどまらず、う蝕治療の品質と医院全体の生産性をどこまで引き上げられるかという視点で読み進めてほしい。

目次

Komet H1SEMシリーズとはどのようなバーか

製品の概要と薬事情報

Komet H1SEMシリーズは、軟化象牙質除去用のMIカーバイドバーとして位置付けられている。シャンクはCA用で、全長22mmの通常長と26mmのロングが用意されており、う蝕除去を主目的としたラウンド形状のタングステンカーバイドバーである。

日本国内の資料では、H1SEMシリーズは一般医療機器に分類され、一般的名称が歯科用カーバイドバー、販売名がコメット カーバイドバーとして届出されている。届出番号は27B2X00091000002とされており、複数のディーラー資料でも同様の情報が確認できる。

サイズバリエーションは、おおよそ直径1.0mmから2.3mm程度まで複数の径が用意されており、CAとCAロングの両方に同じサイズ展開がある。臨床的には、従来のラウンドバーとほぼ同じ感覚でサイズ選択が可能であり、う蝕の広がりやアクセス性に応じて使い分けられる構成である。

コンセプトとポジション

製品コンセプトとしては、低速でも軟化象牙質が「サクサク切れる」ことを前面に出したMIカーバイドバーである。従来、軟化象牙質除去にはスチールバーやステンレススチールバーが使われてきたが、耐腐食性や切れ味の持続性に課題があった。H1SEMはタングステンカーバイド製ブレードとクロスカット刃形により、その欠点を補うことを目指した製品である。

Komet本社の資料では、H1SE/H1SEMがカリエスエクスカベーション用のラウンドバーとして位置付けられ、粘稠な軟化象牙質を効率よく除去するために大きめのチップスペースとハイブリッドトゥーシングが採用されていることが示されている。これにより、低振動でスムーズな切削を実現し、患者と術者双方の快適性向上を狙った設計であると説明されている。

H1SEMシリーズの主要スペックと臨床的意味

材質と硬度

タングステンカーバイドによる高硬度

H1SEMシリーズのブレードには、耐腐食性の高いタングステンカーバイドが用いられている。国内資料では、タングステンカーバイドのビッカーズ硬度が約1600であるのに対し、従来一般的なスチールバーは約800、ステンレススチールバーは約600であると紹介されている。

この数値から分かるのは、H1SEMのブレードがスチールやステンレスに比べて大幅に硬く、刃こぼれや摩耗に強いという点である。高硬度であることは、う蝕除去時の切れ味が長く維持されることにつながり、結果としてバーの交換頻度を抑えつつ、安定した切削感を得やすいという臨床的メリットを生む。

HIP製法による耐久性

Kometの技術資料では、高密度に焼結された微細粒子タングステンカーバイドにより、刃が長期間鋭さを保つことが強調されている。適切な条件でオートクレーブ滅菌を繰り返しても刃部が錆びにくく、切れ味が長持ちすることは、同じバーを一定数の症例に繰り返し使用できることを意味する。

臨床的には、う蝕除去で毎回バーの切れ味を気にする必要が減り、手の感覚を一定に保ちやすくなる。これは、複数の歯科医師が勤務する医院で、治療のばらつきを抑えるうえでも有利に働く。

刃部形状とネック設計

クロスカットと低振動

H1SEMシリーズは、ラウンド形状のブレードにクロスカットが施されている。国内の製品資料では、このクロスカットによって目詰まりが抑えられ、従来のラウンドバーに比べて低振動で使用できることが強調されている。

クロスカットは切削片を細かく分断しながら排出する働きを持つため、軟化象牙質のような粘稠な歯質を削る際にもバー先端へのデブリ付着が起こりにくい。これにより、切れ味の低下を感じにくく、低速でも一定の切削効率を維持しやすい。

Komet本社はH1SE/H1SEMに関して、ハイブリッドトゥーシングとラウンド形状が低振動で高速なエクスカベーションを可能にし、患者と術者の快適さを高めると説明している。MIう蝕治療においては、振動が少ないことは患者の不快感を軽減し、術者が切削感の変化を指先で感じ取りやすくするという二重の意味を持つ。

スリムネックとロングネック

H1SEMシリーズは、スリムネックおよびロングネックの設計が特徴であり、隣接面方向からのアクセスや深い窩洞での視認性向上を意図している。国内資料でも、スリムネックによる術野の視認性の高さと、CAロングによる外科処置や肉芽の処置への応用可能性が言及されている。

視認性が高いことは、ミラー越しやラバーダム下での操作時にバー先端位置を把握しやすいことを意味し、小さな窩洞や二次う蝕の除去で特に有利である。隣接面カリエスの処置で、隣接歯を不用意に傷つけたくない場面でも、スリムネック形状が操作性向上に寄与すると考えられる。

推奨回転数と使用条件

H1SEMシリーズの適正回転数は、国内カタログおよびKomet本社資料の双方で毎分1000〜1500回転と記載されている。最高回転数として毎分100000回転が示されている資料もあるが、あくまで推奨は低速であり、緑リングのコントラアングルで軽圧操作を行うことが前提である。

Kometの推奨では、歯髄への熱的障害リスクを抑えるため、低速で無圧に近い操作を行い、緑リングのコントラアングルを用いることが示されている。この条件を守ることで、発熱を最小限に抑えつつ、軟化象牙質のみを選択的に除去しやすくなる。

MIの観点から見ると、低速での操作は健全象牙質と軟化象牙質の切削抵抗の違いを触知しやすくするため、歯髄温存を目的としたう蝕除去に適したスペックであるといえる。

互換性と運用方法のポイント

使用ハンドピースとシャンク仕様

H1SEMシリーズはCAシャンクの低速バーであり、国内資料では全長22mmのCAと26mmのCAロングが明記されている。ハイスピード用のFGではなく、等速コントラや低速モーターに装着する前提で設計されている。

そのため、ユニット側で回転数を低速に設定し、緑リングのコントラアングルに装着する運用が基本となる。コントラアングルとFGタービンを頻繁に持ち替える診療スタイルでは、どのフェーズでH1SEMに切り替えるかをフローとして明確にしておくとよい。

FG用のMIカーバイドバーとしてH1SMシリーズが別途用意されており、5倍速コントラのままで低速切削を行うアプローチも紹介されているが、本稿のレビュー対象であるH1SEMはあくまでCA用である点を区別しておく必要がある。

感染対策とオートクレーブ適合性

H1SEMはタングステンカーバイド製ブレードとステンレスシャンクを採用しており、オートクレーブ滅菌に対応している。タングステンカーバイドは耐腐食性に優れ、スチールバーに比べて錆が生じにくいことが国内資料でも示されている。

感染対策の観点では、他のバーと同様に、使用後にバー専用ホルダーで洗浄し、超音波洗浄と十分な乾燥を行ったうえでオートクレーブ滅菌を行う標準的なプロトコルに組み込める。ケースによってはバーセット用ケースが滅菌不可とされている資料もあるため、ケースとバー本体の取り扱いを分けて管理する必要がある。

チェアサイドワークフローへの組み込み

実際のワークフローとしては、エナメル質の開拡とラフな形態付与までは従来通りダイヤモンドポイントや別のバーで行い、象牙質の軟化層を除去するフェーズでH1SEMに切り替えるのが現実的である。Kometの推奨する低速・軽圧操作を守ることで、発熱を抑えつつMI的なう蝕除去を行いやすくなる。

医院としては、「う蝕除去の第二段階で必ずH1SEMを使用する」といったルールを作っておくと、歯科医師間での治療プロトコルの共有が容易になる。若手歯科医師や非常勤医師への教育でも、使用バーが明確であれば具体的な指導がしやすくなり、う蝕除去の質のばらつきを減らす効果が期待できる。

MIう蝕除去における臨床的価値

軟化象牙質除去の効率とコントロール

H1SEMの最大の臨床的価値は、軟化象牙質除去を効率よく、かつコントロールしやすく行える点にある。クロスカットされたタングステンカーバイドブレードが低速でも高い切れ味を発揮し、目詰まりが少ないため、粘稠な軟化象牙質を連続的に除去しやすい。

特に深在性う蝕や大臼歯の広範なカリエスでは、軟化象牙質層が厚く、従来のスチールバーでは途中で切れ味が落ちてバー交換を繰り返すことが多かった。H1SEMであれば、同一バーで複数窩洞を処理しても切削感の変化が小さく、オペレーターのストレス軽減に寄与する。

歯髄保存とMIコンセプト

Komet本社はH1SE/H1SEMに関して、低速で無圧に近い操作を行うことで歯髄の熱的外傷リスクを抑え、歯髄に優しいう蝕除去が可能であると説明している。MIう蝕治療では、染色液と触診を組み合わせて軟化象牙質を段階的に除去し、硬い象牙質は極力残すことが重要であるが、H1SEMはその触診精度を支える道具として機能する。

実際の臨床では、H1SEMによる低速切削で大部分の軟化象牙質を除去した後、窩底近くは回転数をさらに落とし、ストロークを小さくして操作することで、健全象牙質への侵入を最小限に抑えやすい。最後の仕上げをスプーンエキスカベーターに切り替えることで、さらにMI性を高めることも可能である。

患者体験の向上

低速での切削は、ハイスピードに比べて音と振動が抑えられ、患者の恐怖心や不快感を軽減しやすい。特に小児や不安の強い患者では、エナメル開拡後の象牙質処理をH1SEMで行うことで、治療全体の受け入れやすさが高まる可能性がある。

また、スリムネックによる視認性向上は、ミラー操作下での精密なう蝕除去を助け、術者のストレスを軽減する。これは、拡大鏡や顕微鏡を用いた精密治療と組み合わせた際にも大きなメリットとなる。

経営的価値とROIの考え方

1症例材料費の整理

国内ディーラーの情報を総合すると、H1SEMシリーズの標準医院価格は、1本入でおおむね1000〜1400円前後、5本入で5000〜6400円前後のレンジに収まる。従来のスチールバーと比べると単価は高めだが、タングステンカーバイドによる耐摩耗性と切れ味の持続性を考慮すると、1症例あたりの実質原価は必ずしも大きくはならない。

1本のバーを平均n症例で使用すると仮定した場合、バー本体の1症例あたりコストは「バー単価÷n」であり、これに滅菌コストと人件費を加えたものが実質原価となる。H1SEMのような高耐久バーはnを大きく取りやすいため、単価の高さをある程度相殺できる構造である。

チェアタイム短縮の人件費換算

う蝕除去に要する時間が短縮されれば、同じ診療時間内で処置できる症例数が増えるか、あるいはスタッフの残業時間を減らすことができる。簡易的には、ユニット1分あたりの人件費をp円、H1SEM使用による平均短縮時間をt分とすると、1症例あたりの時間的メリットはp×t円と表現できる。

従来のスチールバーでは、切れ味低下によるストローク増加やバー交換の手間が積み重なり、症例によって処置時間のばらつきが大きかった。H1SEM導入により、う蝕除去フェーズの時間と品質を平準化できれば、チェアタイムの予測可能性が高まり、予約管理やスケジューリングの精度向上にもつながる。

再治療率とTCOの観点

う蝕除去が不十分であれば、二次う蝕や再治療のリスクが高まり、長期的には医院の収益性にマイナスとなる。一方、過度な切削により歯髄を露出させてしまえば、直接覆罩や抜髄のリスクが増え、患者満足度の低下を招く。

H1SEMはMI的なう蝕除去を支援する設計であり、適切な術式と組み合わせれば、取り残しと取り過ぎの双方を減らす方向に働くことが期待できる。これは、単なる材料費の差額を超えて、総保有コストと長期的な医院評価の改善に寄与する可能性がある。

H1SEMシリーズを使いこなす臨床テクニック

バーサイズの選択と組み合わせ

H1SEMを導入するにあたり、まず検討したいのがサイズ構成である。多くの一般開業医では、象牙質う蝕除去に直径1.0〜1.8mm程度のラウンドバーを多用しているため、H1SEMでも同範囲のサイズを中心に導入すると移行がスムーズである。

大臼歯の広範なう蝕では、中径〜大径のバーで大部分の軟化象牙質を除去し、窩底付近は一回り小さい径に切り替えるなど、段階的なサイズダウンを意識するとMI性を高めやすい。隣接面う蝕では、小径バーに加えてスリムネック形状を生かし、隣接面からのアプローチを取り入れると良い。

う蝕除去ステップの標準化

院内でう蝕除去のステップを標準化する際には、H1SEMを「軟化象牙質除去フェーズの第一選択工具」として明示的に位置付けるとよい。例えば、エナメル開拡後にH1SEMで大部分の軟化象牙質を除去し、残存う蝕が疑われる部位はう蝕検知液とスプーンエキスカベーターで仕上げるという流れである。

このようなプロトコルを文書化し、全歯科医師とスタッフに共有しておけば、新規採用医師や研修医にも同じ水準のう蝕除去を求めやすくなる。H1SEMはその切削性能と視認性により、こうしたプロトコルの中心ツールとして位置付けやすい。

発熱とエナメルマージンへの配慮

どれほど切れ味の良いバーであっても、過度な圧や高回転で使用すれば発熱や歯質破折のリスクは避けられない。H1SEMでは、推奨回転数1000〜1500回転と軽圧操作を守ることが重要であり、特に歯髄近接部では、バー先端を窩底に押し付けるのではなく、側面を滑らせるようなストロークで操作することが望ましい。

また、エナメル辺縁に対して強く当てるとマイクロクラックを生じる可能性があるため、マージン形成や仕上げは別のバーやポイントに切り替えた方がよい。H1SEMはあくまで軟化象牙質除去が主目的であり、最終的なマージン整形まで一貫して担わせる必要はない。

適応症と適さないケース

H1SEMが力を発揮する症例

H1SEMが最も適するのは、象牙質に達したう蝕で、軟化象牙質層が明確に存在する症例である。深在性う蝕で歯髄保存を図りたい症例、小児の大きなデンティンカリエス、二次う蝕の除去などにおいて、低振動でコントロールしやすいう蝕除去が行える。

特に、窩底近くまで軟化象牙質が広がっている場合でも、低速・軽圧操作と触診を組み合わせることで、歯髄側への過度な侵入を避けつつ、必要な範囲のう蝕を取り切ることが可能になる。

別アプローチを検討すべき症例

一方で、エナメル質内に限局する初期う蝕や、脱灰主体で軟化層が薄い症例では、H1SEMの優位性は限定的である。こうした症例では、削らずに経過観察する選択肢や、最小限の切削のみを行うMIコンセプトの方が優先される場合が多い。

また、根面う蝕や根分岐部近くのう蝕など、アクセスが極端に難しい部位では、細径の手用インスツルメントや超音波チップの方が有効であることもある。H1SEMは万能器ではなく、軟化象牙質除去の主役でありながらも、他のツールと併用する前提で考えるべきである。

診療スタイル別の導入指針

保険中心クリニックの場合

保険診療を主体とする一般開業医では、う蝕除去は日常診療の大きな割合を占める。H1SEMを導入し、軟化象牙質除去フェーズの標準ツールと位置付けることで、治療の質とチェアタイムを同時にコントロールしやすくなる。

材料単価はスチールバーより高いものの、バーの寿命とチェアタイム短縮、再治療率低下の効果を加味すれば、トータルでのコストパフォーマンスは悪くないと考えられる。う蝕症例数が多いクリニックほど、その効果が積み上がりやすい。

MI歯科や小児歯科を掲げるクリニックの場合

MIコンセプトを前面に打ち出すクリニックや小児歯科では、う蝕除去の質そのものが医院ブランドの重要な要素となる。H1SEMを、低速・軽圧操作と触診を組み合わせたMIう蝕除去プロトコルの中心に据えることで、歯髄保存率の向上や再治療率の低減を狙いやすくなる。

小児患者にとっても、低速での静かな切削は受け入れやすく、長期的な歯科受診へのポジティブな印象づくりにも寄与する可能性がある。

インプラント・外科中心クリニックの場合

インプラントや外科処置が多いクリニックでは、う蝕症例の絶対数は少ないかもしれないが、H1SEMは肉芽組織の除去など外科的な用途にも応用可能とされている。ただし、この用途は補助的な位置付けであり、適応は慎重に判断すべきである。

う蝕症例が少ない医院では、在庫を最小限のサイズに絞り、必要な時に確実に使える体制を整える程度でもよい。主な投資回収は、少数ながらも精度の高いう蝕治療と患者満足度の向上に求めることになる。

Komet H1SEMシリーズに関するよくある質問

Q H1SEMシリーズと従来のスチールラウンドバーの一番大きな違いは何か
A 最も大きな違いは材質と刃形である。H1SEMはビッカーズ硬度約1600のタングステンカーバイドブレードを採用し、スチールバーやステンレススチールバーより大幅に硬く摩耗しにくい。加えてクロスカットされた刃部と大きめのチップスペースにより、低速でも高い切れ味と低振動を維持しやすい設計となっている。

Q 推奨回転数を超えて高速で使用してもよいか
A Kometおよび国内資料はいずれも、H1SEMを毎分1000〜1500回転の低速で使用し、緑リングのコントラアングルで軽圧操作を行うことを推奨している。最高回転数として毎分100000回転が示されている資料もあるが、これは安全域の上限であり、MI的なう蝕除去というコンセプトから考えると、推奨回転数を大きく超えて使用するメリットは少なく、発熱や歯質ダメージのリスクを増やす可能性が高い。

Q オートクレーブ滅菌による劣化はどの程度考慮すべきか
A タングステンカーバイドは耐腐食性に優れ、スチールバーに比べてオートクレーブ滅菌後の錆や切れ味低下が起こりにくいとされている。ただし、実際の寿命は使用症例数と操作方法によって大きく左右されるため、医院ごとに目安となる症例数や切削感の変化を基準に交換ルールを設けるのが現実的である。

Q どのサイズから導入するのが現実的か
A 一般開業医では、象牙質う蝕除去に直径1.0〜1.8mm程度のラウンドバーを多用していることが多いため、H1SEMでも010〜018クラスを中心に導入するのが現実的である。まずはCAの標準長でよく使うサイズを揃え、実際の使用頻度を見ながらCAロングや大径サイズの追加を検討すると、在庫とコストのバランスを取りやすい。

Q 保険診療中心の医院でも導入する価値はあるか
A 保険診療ではバー単価の高さが気になるかもしれないが、H1SEMは切れ味と耐久性により、う蝕除去のチェアタイム短縮と再治療リスクの低減に寄与し得る。う蝕症例数が多い一般開業医ほど、1症例あたりの実質材料費は薄まり、時間短縮と治療品質向上による経営メリットが積み上がる可能性がある。導入時には、症例数と想定使用期間に基づき、バー単価と時間価値のバランスを検討することが重要である。