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集塵機・集塵ボックスのレンフェルト サイレントパワーCAM ECとは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

集塵機・集塵ボックスのレンフェルト サイレントパワーCAM ECとは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

最終更新日

乾式ミリングを導入した後に粉塵の扱いが追いつかないという相談を受けることが多い。ジルコニアやPMMAの微粉は機内にとどまらず配管や周囲に堆積し、吸引能力が不足するとバーの寿命だけでなく加工精度や装置の稼働率に悪影響を及ぼす。そこで本稿では歯科技工所や院内ラボで広く採用されているレンフェルトのSILENT powerCAM ECに焦点を当てる。用途と主要スペックを臨床と経営の観点から検討し、導入判断の基準を明確にする。さらに導入後に失敗を回避するための運用上の要点を整理する。機種選定や配管設計、フィルター運用、ランニングコストの見積もりなど現場で判断に直結する情報を中心にまとめる。既存設備との連携や自治体や施設の安全要件との整合も視野に入れ、実務での運用に即した提言を行う。特に自動起動機能と自動クリーニング機能の使い方、設置環境に応じた排気処理の考え方、複数台運用時の配管設計上の注意点について具体的に述べる。導入を検討する技工所や院内ラボの担当者が、設備の性能を過大にも過小にも評価せず、運用設計によって期待する効果を実現できることを最終目的とする。判断材料としての数値と現場での運用ノウハウをバランスよく提示することで、投資対効果の見通しを明確にすることを目指す。

目次

製品の概要

製品の正式名称はSILENT powerCAM ECであり、レンフェルトが提供するCAM専用の集塵機である。本機は主に歯科技工用ミリングから発生する粉塵を効率的に吸引し集塵する目的で設計されている。100ボルト仕様の代表的な品番は29392000で、標準梱包には本体と長さ二メートルの吸引ホースが含まれる。用途としては乾式ミリング中に発生するジルコニアやコバルトクロム合金、レジンなどの粉塵の回収が想定されている。手動での運転も可能であるが、特徴的なのはCAM装置と双方向通信で連動できることだ。CAM側の起動停止に同期して本機が自動で始動し、運転状況に応じて自動的にフィルタークリーニングを行う機能が備わっている。薬事区分に関する公開情報は確認できなかったため、本稿では医療機器としての表現は避け、設備機器として評価する観点で記載する。外形寸法は横幅二百七十ミリ深さ五百四十ミリ高さ五百三十五ミリで重量は約十八キログラムとなる。ホースの接続口は内径三十二点五ミリ外径四十ミリ程度の仕様が公開されている。フィルター方式はバッグレスのファインフィルターを採用し、EN六零三三五二六九に基づくClass M相当の集塵性能をうたっている。駆動部はブラシレスのECモーターで、連続稼働時間に関する目安や保証条件が提示されているため長時間運用にも配慮された設計である。機器本体は比較的コンパクトで静音設計のためラボフロアへの常設も現実的であるが、背面の開口確保や熱処理については設置時の配慮が必要である。導入に際してはミリング機との物理的接続と通信ケーブルの手配、設置スペースの確保、電源回路の容量確認を事前に行うべきである。

主要スペックと臨床的意味

本機の主要スペックは次のとおりである。消費電力は100ボルト仕様で1250ワットであり、最大体積流量は三九八四リットル毎分、最大静圧はおおむね二百五十五から二百六十二ヘクトパスカル、ダストトレー容量は約七リットル、最大騒音は五十四点三デシベル程度である。フィルター方式はバッグレスのファインフィルターであり、規格的にはEN六零三三五二六九に基づくClass Mの性能を満たす構成になっている。モーターはブラシレスのECモーターで連続稼働五千時間の保証条件が示される。CAMとのインターフェースはRJ四五であり、PLCの入出力が各二点充てられて双方向通信により自動起動と自動フィルタークリーニングが実現する。外形寸法と重量は先に述べたとおりであり、ホース接続は内径三十二点五ミリ外径四十ミリ程度が公開されている。これらの数値を現場の臨床運用に落とし込むとどうなるかを以下で整理する。

項目仕様
消費電力1250ワット
体積流量約3984リットル毎分
最大静圧約255から262ヘクトパスカル
ダストトレー容量約7リットル
騒音最大約54.3デシベル
フィルター規格EN60335-2-69 Class M
モーターブラシレスECモーター
インターフェースRJ45 PLC入出力各2点
外形寸法幅270×奥行540×高さ535ミリ
重量約18キログラム

吸引性能と陰圧制御に関しては体積流量三九八四リットル毎分は約二百三十九立方メートル毎時に相当し、乾式ジルコニア切削で一般的な五軸機の排気量を十分にカバーする能力がある。静圧が二百五十五ヘクトパスカル級であることは配管が長くなったり曲がりが多くなった場合の圧損に耐える余力を意味する。実務的には陰圧が安定することで加工室内の粉塵浮遊が抑えられ視認性が向上し、エアブローに伴う巻き上げが減るためバーにかかる刃先負荷が下がり、機内清掃頻度も低下する。これらは最終的に切削時間のばらつき低下やチップ破損リスクの低下として現れるため歩留まり改善につながる。フィルターと自動クリーニングに関してはバッグレスのファインフィルターが定期的に振動して目詰まり粉をトレーへ落とす機構がある。自動クリーニングは電源投入時、吸引不足検知時、連続運転八時間経過時に作動する設定が公開されている。フィルター品質がClass Mであることは一般的なジルコニアやコバルトクロムの乾式切削粉塵に対して作業環境維持の要件を満たす設計であることを示す。排気側のフィルターセットも用意されており設置環境や外部排気の可否に応じて選定できる点は実務上の柔軟性となる。静音性と設置については最大時で五十四点三デシベル程度でありラボフロアに常設した場合でも会話を妨げにくい。閉鎖キャビネットに収納する場合は背面の開口確保や外部排気ダクトの使用を推奨する。背面にクリアランスを設け温排気がこもらないようにすることが吸引力維持には重要である。長いホースや急な曲げは圧損を招くため避け可能な限り短く緩やかな経路で配管することが望ましい。これらのスペックと運用上の注意点を踏まえれば本機は乾式ミリングの現場において実効的な集塵手段となる。

互換性と導入要件

SILENT powerCAM ECはRJ四五によるCAMインターフェースを備え、ミリング機と連動して起動停止やフィルター清掃の指令をやり取りできる。メーカー別の専用ケーブルが用意されており、国内外の主要機種としてRoland DGSHAPE、vhf、imes-icore、Amann Girrbach、Zirkonzahnなどに対応するラインナップが公開されている。ケーブルは本体に付属していないため別途手配が必要であり国内市場ではおおむね一万四千円から一万六千円程度で流通しているという情報がある。導入時には電源回路の容量とコンセント形状を必ず点検することが必要である。消費電力は一二五〇ワットなので専用回路や他機器との負荷分散を考慮するべきである。ミリング機と同期した吸引運転を行うためにはミリング側の入出力設定が正しく行われ、ケーブルの結線が適合していることが前提となる。取扱説明書に従ったI O設定と試運転により吸引の立ち上がりタイミングを確認し、切削開始から十分に吸引が立ち上がるように遅延設定や追い吸い時間を調整する必要がある。キャビネット内に本機を収める場合は背面に開口を設けるか外部排気ダクトを接続するオプションを検討し温排気が滞留しないようにすることが重要である。配管設計上はホースの長さを最短にし曲がりを少なくすることが基本であるが既存設備に接続する場合は適切な曲げ半径を確保し継手や分岐の配置を工夫することで圧損を低減できる。複数台のミリング機を一台の集塵機にまとめる場合は配管の圧損や同時運転時の吸引不足を考慮し、分岐配置とヤードの太さでバランスをとる必要がある。現場での配管工事は専門の技術者と協議して配管経路と排気方法を確定させることが失敗を防ぐために重要である。さらに導入前には騒音振動の評価やフィルター交換ルーチンの決定、電力消費と保守コストを含めたトータルコストの見積もりを行い、運用開始後のメンテナンス体制を整えておくことが推奨される。

集塵ボックスとの違いと併用

SILENT powerCAM ECはミリング機に接続する集塵機であり、ベンチトップ型の集塵ボックスとは役割が異なる。ベンチトップの集塵ボックスは研磨や切断など作業者の手元で発生する粉塵や飛散を近接捕集し作業者周囲の安全確保と視界維持を主目的としている。一方で乾式ミリングは機内でのエアブローに伴って切削粉が大量に排出されるため高い吸引能力と静圧の余力が必要となる。実務ではCAMからの粉塵は本機で確実に回収し、その後の仕上げ研磨や補修など手作業工程では集塵ボックスを併用する構成が安全かつ効率的である。本機の吸引能力を過大に評価して手作業用の簡易なボックスでCAMの排気を賄おうとすると、粉塵の逆流や配管閉塞が発生しやすい。集塵ボックスは局所捕集を得意とするため、研磨時の微粒子の飛散や作業者の吸入リスク低減に有効である。併用の際にはCAMからの主要な粉塵は本機で回収し、仕上げやポリッシングなど局所作業にはボックスを用いることで双方の役割が明確になる。具体的にはミリング機の排気口に本機を接続し、研磨ステーションや仕上げ台の近傍に集塵ボックスを配置する運用が現場で一般的である。両者を単一の系統にまとめる場合は系統設計とバルブ制御が重要となる。たとえば複数作業点を一本の配管で接続する際は同時運転時の吸引分配と圧損が問題となるため、必要に応じて分岐の個別制御やゲートバルブを設けるべきである。結論としてはCAM用の高能力な集塵機と手作業用の集塵ボックスは用途を分けて併用することで現場の安全性と効率性を最大化できる。

経営インパクトと簡易ROI

本体の市場価格情報は税別で五十八万円前後の例が確認される。別売のファインフィルターは税別で六万五千円前後、交換用モーターは税別で十七万円前後という流通価格情報がある。ここでは仮定を明示したうえで簡易的なランニングコスト試算を示す。想定条件は耐用年数五年、年間稼働二千時間、電力単価三十円毎キロワット時、モーター寿命五千時間、フィルターは年一回交換とする。直線償却で時間当たりコストを計算すると本体は一時間当たり約五十八円、フィルターは一時間当たり約三十二円、モーターは一時間当たり約三十四円となる。電力コストは一二五〇ワットの消費で一時間あたり約三十八円になるため合計すると運転一時間当たりのコストは約百六十二円となる。乾式ジルコニアクラウン一本の切削時間を四十五分と仮定すると集塵機の一症例あたりのコストはおおむね百二十円前後になる。二十分切削であれば一症例あたり約五十四円程度となる。これに加えてフィルターやモーターの交換費用や廃棄費用を勘案する必要があるが、吸引が安定することで機内清掃や再加工にかかる時間の短縮、バー破損の頻度低下によるバーコスト削減が期待できる。たとえば月間二百症例で四十五分切削が続く場合、月間の集塵機コストは概算で約二万四千円になる。工程短縮や作業の回復時間削減が実現すれば人件費の節約だけで投資回収に寄与する可能性がある。さらに精度の安定は再製の抑制につながり、材料費や外注コストの削減効果も無視できない。湿式主体や切削頻度が非常に低い施設では本機は過剰投資になる可能性があるため、導入の是非は稼働時間や症例構成を踏まえて判断すべきである。簡易ROIの見積もりは実際の工程時間と人件費単価を用いてシミュレーションを行うと良い。具体的には現状の機内清掃に要する時間や再加工率を数値化し、本機導入によってどの程度短縮されるかを保守費用やランニングコストと比較することで投資回収期間を算出できる。

使いこなしのポイント

導入初期にはミリング機側のI O設定と本機の動作タイミングを合わせることが重要である。吸引開始の遅延や切削停止後の追い吸い時間を適切に設定することで粉塵の機内滞留を最小化できる。配管は可能な限り最短経路にし曲げ半径を大きく取ることが基本である。特に既設キャビネット内に収める場合は背面に開口を設けるか外部排気を確保して温排気がこもらないようにすることが重要である。粉塵廃棄の手順は付属のディスポ袋を用い集塵トレーを舞い上げずに廃棄できる手順を標準化するべきである。自動クリーニング後に吸引不足の警告が繰り返される場合はフィルター交換のサインでありそのまま無理に稼働を続けないことがトラブル回避につながる。ホットワックスや湿潤粉、液体は吸引しないことが機器の健全性を保つ上で重要である。危険物質を扱う場合は安全データシートに沿った個人防護具の着用と排気処理を徹底する必要がある。日常点検項目としては吸引ホースの損傷や継手の緩み、フィルターの目視点検、吸引音の変化、排気口の詰まりなどを定期チェックリスト化し記録することが望ましい。フィルター交換作業は安全と清潔を担保するため二名以上で行うか、作業者を限定して手順書を整備することが推奨される。さらに長期運用ではモーター寿命や振動部の摩耗を監視し、交換部品を事前に確保しておくことでダウンタイムを最小化できる。新規導入時には試運転期間を設け実際の切削条件で吸引性能とフィルタークリーニングの挙動をモニタリングし、必要に応じて遅延や追い吸いの設定を微調整して運用フローに組み込むことが望ましい。

適応と適さないケース

SILENT powerCAM ECは乾式ミリングにおけるジルコニア、コバルトクロム、レジンの粉塵回収に適している。これらの材料は乾式加工で固形粉塵として発生するため本機の吸引性能とフィルター構成がマッチする。逆に湿式加工が主体で水ミストやスラリーが多く発生する環境では本機は用途に合わない。湿潤環境では専用の液体回収系やオイルミスト回収装置が必要となるため別系統を検討すべきである。大量生産ラインで複数台のミリング機を一本の集塵機にまとめて接続する場合は配管の圧損が大きくなりやすく、同時運転時の吸引不足が発生しやすい。そうした場合は本機一台での集約は推奨しにくく、各ミリング機に対して個別の集塵機を設置するか並列で集塵能力を高める設計が必要になる。粉塵のリスク評価が高い材料を扱う場合は作業環境測定や高性能フィルターの選定、外部排気の処理を優先して検討すべきである。小規模で稼働頻度が極端に低い施設や湿式加工主体のワークフローでは本機はオーバースペックになりコスト効率が悪くなる可能性がある。導入判断にあたっては材料構成と一日の稼働時間、同時稼働台数を明確にして適合性を評価することが重要である。結果として本機は乾式加工を中心に一定の工程量を持つラボで最も効果を発揮するが、特殊な材料や工程がある場合は別途専門家の意見を仰ぎ排気系統と作業環境保護の整合を図るべきである。

導入判断の指針

導入判断を行う際は稼働時間と材料構成を最優先に考慮する。保険中心で効率を最優先する院内ラボでは自動連動と静音性の恩恵が大きい。装置起動の手間が減り夜間の自動運転でも八時間ごとの自動クリーニングにより吸引低下を防げるため運用効率が高まる。高付加価値の自費補綴を強化するラボでは粉塵の巻き上がりが減ることでバー摩耗や微小欠けのリスクが下がり再製作の抑制と歩留まりの安定が期待できる。口腔外科やインプラント中心でチタンやコバルトクロムの乾式切削を扱う場合は本機の静圧の余力が有利に働くことが多い。一方で湿式主体や低頻度運用では本機はオーバースペックになりやすい。簡易型の集塵機や機内標準吸引で十分な場合もあるため導入前に稼働実態を数値化することが重要である。判断手順としてはまず一日の平均稼働時間と同時稼働台数を把握し導入候補の吸引能力がそれを満たすかを確認する。次に配管経路と電源容量を現地で点検し必要な工事費用を見積もる。三つ目にランニングコストを既存の清掃や再製時間の削減効果と比較して試算する。最後に保守体制と交換部品の入手性を確認しダウンタイムのリスクを評価する。これらを踏まえて導入の是非を判断すれば過大投資や運用上のミスマッチを避けられる。導入決定後は試運転期間を設けて実際の切削条件で吸引とフィルタークリーニングの挙動を確認し運用手順を現場に浸透させることが成功の鍵となる。

よくある質問

Q ミリングマシンとの連動可能な機種はどれか
A 専用インターフェースケーブルのラインアップが公開されておりRoland DGSHAPE、vhf、imes-icore、Amann Girrbach、Zirkonzahnなど主要なミリング機に対応している。機種ごとにケーブルの型番が異なるため導入前に適合表で確認することが必要である。ケーブルは本体に付属しないため別途調達が必要で購入時に手配するとよい。

Q フィルター交換の目安はどう判断するか
A 自動クリーニング後も吸引不足の警告が続く場合や通常より吸引力が回復しにくい場合はフィルター交換のサインである。稼働時間に基づいた予防交換スケジュールを設けると突発的な交換を避けられる。ユーザーが容易に交換できる設計になっているため作業手順書を整備し安全に交換できる体制を整えることが重要である。

Q 保守と保証の内容はどうなっているか
A ブラシレスのECモーターに関しては五千時間程度の保証条件が提示されている場合が多い。交換用モーターはユーザー側で短時間に交換できる設計がなされており国内価格情報では税別十七万円前後で流通している。保守契約や延長保証の選択肢については販売代理店と事前に確認することを勧める。

Q 価格とランニングコストはどの程度か
A 本体は税別で五十八万円前後の情報があり別売のインターフェースケーブルは一万四千円から一万六千円程度で流通している。ファインフィルターは税別で六万五千円前後の価格情報がある。電力コストは仮に一時間あたりの消費を一二五〇ワットとすると電力単価三十円毎キロワット時で一時間あたり約三十八円となる。実際のランニングコストは稼働時間や交換頻度によって変動するため導入前に現場の稼働実態で見積もることが必要である。

Q 複数台のミリング機を本機でまとめられるか
A 基本的には複数台を一本の系統でまとめると配管の圧損が増え同時運転時に吸引不足が発生するリスクが高まる。そのため複数台運用を検討する場合は配管径の見直しや分岐ごとの制御など設計面での工夫が必要である。大規模ラインでは本機一台での集約は推奨しにくくミラーリングや個別の集塵機導入を検討すべきである。

以上がSILENT powerCAM ECに関する概要と実務的な考察である。導入を検討する際は現地の稼働状況と材料構成を数値化し、配管設計と保守体制を含めたトータルコストで比較することが重要である。必要に応じて現地調査や販売代理店との詳細な打ち合わせを行い最適な運用設計を確定してほしい。