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切削研磨バーの東洋ダイヤモンドバー FG (CAD/CAM形成用)とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

切削研磨バーの東洋ダイヤモンドバー FG (CAD/CAM形成用)とは?用途や主要スペック、特徴などを解説!

最終更新日

CAD CAM冠の形成において咬合面の厚みと軸面の丸みを適切に揃え、スキャナが読み取りやすい面性を確保することが歩留まりを左右する要素である。とくに保険適用のハイブリッド系ブロックではエッジが立ち過ぎたり段差が残ったりすることが再製作の主因になりやすい。支台歯形成に特化して形態と粒度を絞り込んだ切削研磨バーの選択は臨床的アウトカムのみならずチェアタイムや材料原価にも大きく影響する。本稿では東洋ダイヤモンドバー FG CAD CAM形成用を公開情報に基づき臨床面と経営面の両面から検討し、実務で使える運用指針を提示する。

目次

製品の概要

東洋ダイヤモンドバー FG CAD CAM形成用は製品名として東洋ダイヤモンドバーで登録されており、一般的名称は歯科用ダイヤモンドバーである。JMDNコードは16670000でクラスは第一分類に属する。医療機器届出番号は11B3X10042000006であり、国内での製造販売業者の届出が確認できる範囲にある。形態はCAD CAM形成のワークフローに合わせて複数が用意されており、TM1からTM5までの形態に加えて仕上げ用のTM5FFが流通している。出荷単位は12本入りが基本で市場価格は税別で四千五百円程度と見られるため、1本換算で三百七十五円程度の原価感である。セット構成としては支台歯形成に必要な形態を網羅したスターターキットが用意されており、滅菌可能なキットケース付きのバリエーションも提供されるため導入直後から工程順での運用がしやすい点が特徴である。製品の形態設計はCAD CAM修復で求められる軸面の丸みと咬合面の厚みを再現しやすいことを意図しており、粗形成から仕上げに至る工程を想定した粒度と組合せがラインナップされている。

形態ヘッド長さの目安主な用途
TM19.0ミリメートルクラス前歯の軸面から切縁移行の粗形成
TM29.0ミリメートルクラス前歯の軸面整形と移行部の調整
TM37.0ミリメートルクラス臼歯の近遠心や見通しの悪い部位のタッチアップ
TM4ヘッド径大きめ咬合面の平面化と溝の除去
TM511.0ミリメートルクラス臼歯の長い軸面トレース
TM5FFTM5と同形状の特仕仕上げ最終仕上げと条痕低減

主要スペックと臨床的意味

東洋ダイヤモンドバー FG CAD CAM形成用の要点は粒度設計と形態の最適化である。粒度は大きく分けてスタンダードが約125マイクロメートルでスーパーファインが約28マイクロメートルで供給される点が臨床的に重要である。粗形成に用いる125マイクロメートルは硬組織やハイブリッドレジン系材料に対する切削能が高く、削除効率と切削抵抗のバランスが比較的良好であるため短時間で面取りやボリューム確保が行える。一方でスーパーファインの28マイクロメートルは仕上げ工程での条痕を浅くし、コーナーの過剰な丸め込みを防ぐ目的に適している。条痕が浅いほど光学スキャナの読み取りが安定しやすく、スキャンのやり直しやミリング設計の調整回数を減らせるためチェアタイム短縮に寄与する。形態ごとの設計もワークフローと整合するようになっており前歯はTM1またはTM2で軸面と切縁移行を大まかに作り最終段階でTM5FFを用いて表面のストリエーションを消すという流れが実務では有効である。臼歯では咬合面の厚みをTM4で確保しTM5で長軸ストロークをトレースし、見通しの悪い近遠心部のみTM3でフィニッシュすることで操作性と効率を両立できる。最高回転数は形態と粒度で差がありTM1からTM3相当は45万回転を上限としTM4とTM5は30万回転を上限とする一方でスーパーファインは10万回転を推奨している点に注意が必要である。スーパーファインの回転上限が低いのは砥粒の保持と熱発生抑制を両立するための設計思想であり、注水と過圧回避を徹底することでマージン焼けや微小亀裂の発生を抑制できる。

粒度切替の臨床効果

実際の臨床では粗形成を行った後に粒度を切り替えて軽くなでるだけでマージンの段差が緩和され仮着時のフェザーマージン化が容易になるという効果がある。粗形成の圧を残してしまうと角が立ちすぎて仮着やスキャンの段階で不具合が出やすく、最終的に再製作や手戻りが発生しやすい。逆に粗形成側であまりに削り過ぎないように肩や咬合面ピークを仕上げ側に残す設計にしておくと最終的な丸みの管理が安定しやすい。以上の工程設計は再製作率の低下と研磨時間の短縮という相反する要求をバランスよく満たす点で価値がある。

互換性と運用方法

本製品はFGシャンク仕様でJIS T 5504 1の規格に準拠する直径1.6ミリメートル系のフリクショングリップに適合するため一般的な高回転ハンドピースおよび増速コントラの両方で使用可能である。使用時にはバー側の最高回転数を基準に運用することが重要で、形態ごとの上限を超えた周速での運転は発熱や振れにつながり支台歯の亀裂や面荒れを招くためハンドピース側の設定を工程ごとに切り替える運用が望ましい。供給状態は未滅菌であるため初回使用前に洗浄と滅菌を行う必要がある。ダイヤモンドバーは切削粉が砥着層に固着しやすい性質があるため超音波洗浄とブラッシングを組み合わせた洗浄手順を標準化すると切削能の劣化を抑えられる。バーの摩耗は視診だけでは判りにくいことが多いため照明下で砥粒の反射や砥着層から地金が露出していないかを確認し摩耗の進行が早い形態については症例数ベースで交換時期を定めることが望ましい。CAD CAM形成セットに滅菌可能なケースが付属している場合は工程順に並べ替えて運用することで準備と介助の手間が減り新人スタッフでも迷いが少なくなる利点がある。形成面の面性は光学スキャナのトレーサビリティとミリング側の刃先負荷に直結するため条痕を浅く保ちコーナーの丸みを過度に失わない仕上げは設計から加工に至るワークフロー全体の手戻りを減らす効果をもたらす。

経営インパクトと簡易ROI

材料費の把握は導入判断を支える重要な要素である。本製品の市場表記から12本入り税別四千五百円を基準にすると一本当たり税別三百七十五円で換算できるため症例あたりの材料費は使用するバー本数に応じて簡単に推定できる。粗形成のみを一本で行う運用であれば一症例当たりのバー材料費は三百七十五円であるし粗形成と仕上げの二本を用いる想定であれば七百五十円となる。ここに仮封材やテンポラリー材の原価を加えると形成工程の直接材料費の概算が把握できる。チェアタイム短縮の人件費換算を行うと一分当たりの人件費をh円とし最適化によって短縮できる時間をt分とすれば節減額はh掛けるtで表現できる。スキャンのやり直しや印象の再取得が減るほどtは大きくなりたとえバーの本数が増えても総合コストは下がる場合がある。再製作率の低下は技工費の手戻りを抑えるため外注費の平準化にも資する。消耗品である点を踏まえると導入後の初期投資はキット費用と在庫増であるが材料費と時間価値の差額は短期で回収される可能性が高い。耐久性については繰り返し使用の目安が公開情報では明確でないため一症例当たりの実使用本数を診療所ごとに管理し摩耗閾値で計画交換する体制を作ることが重要である。簡易ROIの評価としては一症例当たりの材料費増と想定される時間短縮による人件費や外注手戻りの削減額を比較するシナリオ分析が有効である。

使いこなしのポイント

形成計画の冒頭で粒度と形態ごとの工程表をあらかじめ決めておくと臨床での押し引きや注水量の調整が同期しやすくなる。粗形成で面を作り過ぎないことが肝要であり肩の角や咬合面のピークは仕上げ側に残しておくと丸みの管理が安定する。スーパーファインは回転上限が低いため増速コントラを使用する際はバー側の上限に合わせて回転を下げる運用が必要である。送り速度を無理に上げずに切削痕を重ねるようにして切削感を確認しながら進めると表面品質を保てる。バーの先端を局所的に当て続けないことが熱割れやマージン焼けの予防に有効である。口腔内スキャナを併用する場合は形成直後にブロワと注水でスメアを完全に流し表面の粉塵を除去してからスキャンすると読み取りが安定しやすい。撮像のノイズ源になる鋭い稜線は早めにTM5FFのような仕上げ用で除去することでスキャンの再取得が減り総合的なチェアタイム削減につながる。仮着や最終セメントの清掃性も表面の条痕やコーナーの丸みで大きく変わるため形成終了時の品質基準を写真で保存しスタッフと共有しておくと教育コストが下がる。バーの摩耗管理は視診と操作感に加えて症例数での履歴管理を組み合わせると安定する。

適応と適さないケース

本製品は支台歯形成全般に適応する設計であり金属、プラスチック、陶材など多様な材料の研削に用いることが可能である。CAD CAM冠のための軸面と咬合面の仕上げやマージンの処理が主眼であるため一般的な補綴処置においては十分な適応性を持つ。一方で厚いジルコニアの切断や除去のように大きな切削力と専用の砥粒配合が必要な作業には専用品を用いることが現実的である。スーパーファインを過度に用いて硬いジルコニアの大きな除去を強いる運用は非効率でありバーの早期摩耗を招く。外科的な骨切削やインプラント周囲の骨処置など本製品の一般的名称の想定範囲を超える用途は適応外となる可能性が高いため適応の逸脱を避けることが重要である。さらに高速度での使用や注水不足、過圧での運用は支台歯の微小亀裂やマージン焼けを誘発するため避けるべきである。臨床的にはハイブリッド系ブロックでの仕上げと光学スキャンの親和性が高い場面での利用に向いていると考えられる。

導入判断の指針

診療方針に応じた最小構成を考えることが導入判断の近道である。保険診療中心で回転率を重視する診療所ではTM4とTM5の二形態を基軸として必要時にTM5FFを補うミニマム構成が現実的である。粗仕上げの切り替えポイントを明確にし在庫は形態ごとに均等に補充する運用が効率的である。自費中心で高付加価値を掲げる診療所では前歯用にTM1またはTM2を加え臼歯用にTM4とTM5を揃え仕上げにTM5FFを必ず用いる三段階工程を標準化することが望ましい。形成の写真基準を設けると条痕管理が徹底できスタッフ教育も短縮される。口腔内スキャナを主軸に据える場合は仕上げ工程を多少短縮しても省略せずスキャンやり直しの時間的損失を防ぐ方向で運用することが有効である。口腔外科やインプラント中心の診療所では専用バーと併用し東洋ダイヤモンドバーは補綴前処置と仮歯調整に役割を限定することで在庫管理を簡素化できる。キットケースの導入は工程順管理に有効でありスタッフ教育と棚卸の双方でメリットがあるため初期導入時に検討する価値がある。

よくある質問

医療機器としての区分と届出番号はどのように確認すればよいか。一般的名称は歯科用ダイヤモンドバーで第一分類に該当し届出番号は11B3X10042000006が公開情報として確認できる。診療所での表示や添付文書の記載と照合して整合を取ることが重要である。

最高回転数の違いはどのように運用に反映させればよいか。TM1からTM3相当は上限が45万回転程度でTM4とTM5は上限が30万回転程度である一方スーパーファインは10万回転程度を推奨しているため工程ごとにハンドピース側の回転設定を切り替え注水を確保し過圧を避ける運用が推奨される。スーパーファインを高回転で回すと砥粒の脱落や過剰発熱を招くリスクがあるため特に注意が必要である。

何症例まで使い回せるかをどう管理すればよいか。公開情報では具体的な症例数の明示がないため砥粒の露出や地金の見え方を視診で確認するとともに使用感の変化を操作者で共有し症例数ベースでの交換基準を自院で設定することが望ましい。摩耗閾値を定めることで再治療率抑制につながる。

口腔内スキャナとの親和性はどの程度か。仕上げをスーパーファインで行い条痕を浅く保ち角の丸みを残すとスキャンのやり直しが減り設計とミリングの手戻りが少なくなる。形成面の面性が良好であればトータルの工程時間とコストが低下するためIOSと併用する場合は仕上げ工程を省略しないことが重要である。

一症例当たりの材料費はどの程度か。12本入り税別四千五百円を基準にすると一本当たり税別三百七十五円であり粗形成のみで一本使用なら三百七十五円粗形成と仕上げで二本使用なら七百五十円という単純計算での見積もりが可能である。