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GC「ティオン オフィス」レビュー!V-CATの効果と過酸化水素濃度

GC「ティオン オフィス」レビュー!V-CATの効果と過酸化水素濃度

最終更新日

初診でシェードがA3と深く、どうしても短期間で白くしたいという患者が来院したとき、オフィスホワイトニングは有力な選択肢になります。しかし、臨床で安定した結果を出すには再現性、椅子時間の管理、術後の不快症状への対策が不可欠です。GCのティオン オフィスは、可視光応答型光触媒V‑CATを組み合わせることで、比較的低濃度の過酸化水素でも所期の漂白効果を狙えるように設計された製品です。本稿では、臨床的観点と経営的観点の両面からティオン オフィスの特徴と限界を整理し、導入時の判断基準や運用のポイントをわかりやすく提示します。

製品の概要と薬事情報

製品名はティオン オフィス。薬事上は高度管理医療機器に分類される歯科用漂白材で、承認番号は22200BZX00785000です。製剤は二成分のシリンジ(AとB)を使用直前に混合して使うタイプで、混合後の過酸化水素濃度はおおむね21.4〜24.1%のレンジにあります。主成分は過酸化水素で、反応促進用に可視光応答型酸化チタン「V‑CAT」を別体のリアクターで供給する構成です。パッケージは漂白材A・B、リアクター、歯肉保護用のレジン、使い捨ての小物類を含む単回施術想定のセットになっています。

添付文書では妊娠中、無カタラーゼ症、光線過敏症などが禁忌とされており、歯肉白化の発現が一部で報告されています。保管については医薬用外劇物の取り扱い基準に従い、冷蔵保管が求められます。院内での管理は温度管理と使用期限の厳守、単回使用の徹底が基本です。

製品の主要仕様を簡潔にまとめると次の通りです。

項目内容
製品名ティオン オフィス
薬事区分高度管理医療機器(歯科用漂白材)
承認番号22200BZX00785000
製剤形態二成分シリンジ混合型ジェル(A・B)+リアクター
混合後過酸化水素濃度約21.4〜24.1%
光触媒可視光応答型酸化チタン(V‑CAT)
包装1回施術想定のキット(ジェル、リアクター、保護材等)
保管冷蔵(医薬用外劇物取扱基準に準拠)
主な禁忌妊娠中、無カタラーゼ症、光線過敏症 等

臨床導入にあたっては、添付文書の禁忌・注意を確認し、院内の薬物管理体制と収納条件が満たされているかを事前に確認してください。

主要スペックと臨床的意味

ティオン オフィスの臨床価値は、濃度設計とV‑CAT光触媒の組合せにあります。日本市場のオフィス系漂白材は使用時に約23%前後の過酸化水素を採用する製品が多く、刺激性と効果の両立を目指す折衷設計になっています。混合後の21.4〜24.1%というレンジは、粘度や拡散性、発熱性のバランスをとるうえで現実的な設定です。

重要なポイントは塗布の厚さと歯頸部保護です。塗布が厚すぎたり、歯頸部の保護が不十分だと局所的な過漂白や不均一な仕上がり、歯肉の白化や知覚過敏が起こる恐れがあります。ジェルは目安として0.5〜1.0mmの薄層で均一に塗布することが推奨されます。塗布面が均一であるほど光触媒反応が安定し、再現性が高まります。

V‑CAT光触媒の働き

V‑CATは二酸化チタンの一部の酸素を窒素で置換して可視光に応答するよう改変した光触媒です。可視光照射下でラジカル生成を助け、過酸化水素の分解と酸化力の発現を促進します。これにより、同一濃度の過酸化水素でも反応効率が高まることを狙っています。

臨床的には、照射光の均一性とジェル表面の状態が反応効率に影響します。唾液被膜やジェルの過厚、不均一な塗布は光の透過を妨げ、光触媒の効果を減殺します。リアクターの塗布や乾燥工程を適切に行い、照射時に均一な光が当たるようにすることが重要です。

光源とエネルギー条件

単歯の処置では歯科用重合器での照射を想定し、1歯につき1分が基準となります。多数歯を一度に処置する場合は、歯面漂白用の加熱装置や専用照射器を用い、380〜520nmの有効波長内で総放射照度積(エネルギーの総量)が概ね300〜840 mW·cm⁻²·minとなるように6〜12分程度を目安に設定します。

専用照射装置であるティオンライトにはクイックモードが備わっており、6分での短時間照射が想定されています。一般的なプロトコルでは1サイクル照射後にジェルを除去し、必要であれば最大3サイクルまで繰り返します。

濃度と知覚過敏の関係

過酸化水素濃度が高いほど即効性は得やすい一方で、象牙細管刺激や熱感、術後の知覚過敏のリスクも上がります。約23%帯は効果と患者許容性のバランスが取れた領域とみなされますが、操作の丁寧さによって安全域は大きく変わります。特に歯頸部の保護とジェルの薄層化、適切な乾燥管理をルーチン化することで不快症状を抑えることが可能です。

インターナルブリーチへの適否

一部資料ではインターナルブリーチへの適用が示唆されることがありますが、現行の添付文書上はウォーキングブリーチや髄室内漂白への使用は禁忌と明記されています。無髄歯の漂白を検討する場合は、添付文書に適合した別の製品を選ぶ必要があります。

互換性と運用の実際

実務面では、照射器との互換性が臨床効率に直結します。多数歯照射を主体にするなら、ティオンライトやブリリカ ビアンコなど、可視光域で所定の放射照度積を満たす専用装置の導入が合理的です。単歯や少数歯の処置が中心であれば、既存のLED重合器でも運用可能ですが、光強度や波長の範囲に注意してください。特に1500 mW/cm²程度以下の出力条件や、短波長成分の過度な含有を避けることが望まれます。

運用上の手順で安定性を高めるポイントは次のとおりです。 ・二成分ジェルの混和は規定回数以上(目安20往復程度)行い、均一に混ざったことを確認する。 ・リアクターは塗布前に歯面へ薄く一層塗布して乾燥させる。表面に艶がなくなるまで乾燥させると反応が安定しやすい。 ・ジェルは試し出しで性状を確認してから薄層で塗布する。厚塗りは不均一の原因になる。 ・照射距離は装置ごとに推奨される値を守り、術者とアシスタントで光の当たり方を目視確認する。 ・保管は冷蔵を徹底し、キットは患者ごとに単回使用を徹底する。

教育の要点は歯肉保護レジンの築盛、塗布厚の視覚的基準化、照射距離の再現化の三つです。これらをマニュアル化し、スタッフ間で練習することで術者依存性を下げられます。

経営インパクトと簡易ROI

導入判断には資材費、装置償却、チェアタイム、人件費、そして想定売上を組み合わせた収支シミュレーションが必要です。大まかな考え方は以下の通りです。

消耗材費は1症例あたりキットを1つ使用するとして、公開情報では数千円台半ばの目安が示されています。専用照射装置の市場価格は機種により差がありますが、ティオンライトは税抜で50万円台半ば、ブリリカ ビアンコは40万円前後を目安とする流通情報があります。装置は3年償却などで費用按分するのが現実的です。

チェアタイムは準備・照射・片付けを含めて30分前後が一般的で、照射自体は6〜12分を1サイクルとして最大3サイクルまで設定することが多いです。したがって、1症例あたりの総コストは次の式で見積もれます。

1症例総コスト=消耗材費+(装置価格 ÷ 償却期間内総症例数)+(人件費 × チェアタイム)

自費価格の設定は地域相場や院内のブランディングによって大きく変わります。装置が既にある場合は初期投資を抑えられるため利益率は高くなります。逆に装置を新規購入する場合は、年間の想定症例数を現実的に見積もり、回収シミュレーションを行うことが不可欠です。

チェアを塞ぐ時間は機会費用に直結します。衛生士の稼働率を落とさずにホワイトニングを回すには、クイックモードなど短時間で処置を終えられる装置や多数歯照射器の導入を検討する価値があります。保守費や消耗部材の追加費用は公開情報が限られるため、導入前に販売店から詳細見積を取り、TCO(総所有コスト)を明確にしておくのが安全です。

使いこなしのポイント

導入直後に最も重要なトレーニング項目は歯肉保護レジンの築盛と塗布厚のコントロールです。以下の実践ポイントをルーチン化すると合併症の抑制と再現性向上につながります。

・歯肉保護の築盛は0.5mm程度を目安に行う。歯間部の完全な封鎖を徹底することで歯肉の白化や痛みの発現を抑えられる。 ・リアクターはごく薄く均一に塗布し、表面の艶が消えるまで乾燥させる。乾燥が不十分だと反応が不安定になる。 ・ジェルは試し出しで性状を確認してから使用し、目標の塗布厚を守る。厚塗りは不均一や深部刺激の原因となる。 ・照射時は装置の推奨距離を守る。前歯部全体に均等に光が行き渡っているか術者とアシスタントで確認する。 ・施術前後は必ず歯面清掃とシェード記録(写真と数値)を残す。術後に軽い研磨を行うことで表面光沢を回復させ、患者満足度を高められる。 ・知覚過敏の既往がある患者には事前に説明を行い、必要に応じて鎮痛ケアや術後のフッ化物処置、セルフケア指導を組み込む。

これらを手順書化し、スタッフが同一の操作手順を踏めるよう院内研修を実施してください。

適応と適さないケース

適応症例は主に加齢変色や外因性着色を中心とした有髄歯の多数歯漂白です。添付文書の禁忌や注意に従い、次のようなケースは適用外または慎重適用と考えてください。

適応が難しい/禁忌 ・妊娠中の患者 ・無カタラーゼ症や光線過敏症の患者 ・重篤な歯周炎や歯に亀裂(クラック)がある場合 ・幼若永久歯(形成期の歯) ・インターナルブリーチやウォーキングブリーチ(添付文書で禁止) ・テトラサイクリンなどの深部性変色は効果に限界があり事前に期待値調整が必要 ・修復物が多数ある症例は色調の差が残る可能性が高く、補綴計画の見直しを検討する

適応を検討する際は、患者の既往や修復の有無、色ムラの深部性を十分に評価し、必要に応じて代替治療(補綴や外科的対応)を含めた計画を提示してください。

導入判断の指針

医院の診療方針に応じた導入戦略を立てると失敗が少なくなります。大きく三つのタイプに分けて考えると分かりやすいです。

1. 保険中心で効率を重視する医院

既存のLED重合器で単歯照射を中心に段階導入するのが現実的です。初期投資を抑えつつ、スタッフのトレーニングを通して運用を安定させます。

2. 自費診療を強化したい医院

多数歯照射器と写真計測・症例提示のワークフローを整備し、価格設定と症例提示の質を高める投資が有効です。ブランディングと症例数の拡大を目指すなら専用機器導入の効果は大きくなります。

3. 手術系・インプラント中心の医院

チェアブロックによる機会損失が大きいため、クイックモード装置や多数歯を短時間で処理できる機器を導入して時間当たりの粗利を最大化する発想が適しています。

いずれの場合も消耗材単価と装置償却の可視化が意思決定を左右します。導入前には販売店から詳細見積を取り、3〜5年程度の事業計画で回収シミュレーションを行ってください。

よくある質問

Q ティオン オフィスの過酸化水素濃度はどの程度ですか?
A 使用直前に二成分を混合して使用し、混合後の過酸化水素濃度はおおむね21.4〜24.1%です。市場では約23%帯の設計に位置づけられます。

Q V‑CAT光触媒はどの波長で反応しますか?
A V‑CATは可視光応答型で、歯科用照射器の波長帯(概ね380〜520nm)で反応を促進します。多数歯照射ではこの波長域で所定の放射照度積を満たすことが重要です。

Q 推奨される照射時間とサイクルは?
A 単歯は1歯1分が基準、複数歯は装置と出力に応じて6〜12分を1サイクルとし、最大3サイクルまで繰り返します。専用装置のクイックモードでは6分の短縮モードが用意されています。

Q インターナルブリーチに使えますか?
A いいえ。現行の添付文書ではウォーキングブリーチや髄室内漂白への使用は禁止されています。無髄歯の漂白を行う場合は、添付文書に適合した別製品を使用してください。

Q 1症例あたりのコストはどの程度ですか?
A 消耗材は公開情報で1キットあたり数千円台半ばが目安です。これに装置の減価償却と人件費、チェアタイムを加えて算出します。概算式は次のとおりです。
1症例総コスト=消耗材費+(装置価格 ÷ 償却期間内総症例数)+(人件費 × チェアタイム)
具体的な数値は自院の前提条件で確定してください。