【歯科医向け】ホームブリーチング剤 徹底比較!ティオン・ハイライト・NITEホワイトなど
初診カウンセリングでホームホワイトニングを提案すると、患者は必ず装着時間としみの不安を尋ねる。忙しい社会人は短時間で完了したいと望む一方、知覚過敏が心配という声は根強い。本稿は、国内で流通実績のあるホーム用ブリーチング剤を比較し、臨床に即した実践的ヒントと医院経営の観点からの導入戦略を併せて示すものである。対象製品はティオンのホーム系二種、松風ハイライト ホーム、NITEホワイト・エクセルである。いずれも歯科専売の医療機器であり、歯科医師の指導管理下で用いる前提で論じる。
目次
比較サマリー表(早見表)
| 製品 | 主成分/濃度 | 推奨装着時間と回数 | ジェル容量とセット概略 | 薬事区分と承認番号 | 保存条件 | 価格レンジの目安 | タイム効率 | 供給と教育資材 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ティオン ホーム プラチナ | 過酸化尿素 10% | 1日1回 最長120分×最長14日 | 2.5mLシリンジ×4を含むスターター、リフィルあり | 高度管理医療機器 22900BZX00205000 | 要冷蔵 | スターター6千円台 | 標準 | 国内正規供給、操作動画とFAQあり |
| ティオン ホーム ウィズ | 過酸化水素 6%(過酸化尿素換算約17%相当) | 1日1回 標準60分×10日(最長90分) | 1.8mLシリンジ×4を含むスターター、リフィルあり | 高度管理医療機器 30600BZX00056000 | 要冷蔵 | スターター6千円台後半 | 短時間 | 国内正規供給、比較資料とFAQあり |
| 松風 ハイライト ホーム | 過酸化尿素 10% | 1日1回 120分×最長14日 | 1.2mLシリンジ×8を含むホームセット、単品補充あり | 高度管理医療機器 21800BZG10006A01 | 冷蔵推奨 | セット6千円台 | 標準 | 国内正規供給、患者説明書あり |
| NITEホワイト・エクセル | 過酸化尿素 10% | 1日1回 最長120分×最長14日 | 3gシリンジ中心のセット、リフィルや周辺資材が豊富 | 高度管理医療機器 21300BZG00047000 | 冷暗所(冷蔵不要) | セット6千円台 | 標準 | 国内正規供給、周辺資材が多い |
表の読み方を整理する。装着時間は患者のチェア外時間と直結するため、短時間設計の製品は患者のコンプライアンスを高めやすい。一方で漂白剤の濃度が高いほど知覚過敏の発現率が上昇する傾向がある点に留意すること。保存条件は院内在庫管理や患者の持ち帰り指導に影響するため、要冷蔵製品は温度管理とロス管理の仕組みを準備する必要がある。
【項目別】比較するための軸
本節の目的は、臨床結果と医院収益に効く判断軸を因果関係で可視化することである。単にスペックを並べるのではなく、適応と運用条件に即して評価する。
臨床の基準
漂白剤の濃度は漂白速度と知覚過敏の発現リスクのバランスを規定する。過酸化尿素10%は作用が緩徐でマイルドな経過を取りやすく、ホームブリーチング初心者やホワイトスポットが目立ちやすい症例に適応しやすい。過酸化水素6%は作用成分が直接的に働き、同等の目標シェードへ短時間で到達しやすいが、装着時間や禁忌の遵守がより重要になる。
トレー適合とジェル物性が色調変化に与える影響
色調改善の再現性はマウストレーの適合性とジェルの広がりやすさ、唾液中での安定性に大きく依存する。専用トレーシートは柔軟性と透明性を備え、細部まで再現しやすいことが望ましい。トレーが歯頸部に均一に密着し、ジェルが水となじみながら唾液に流されにくい性状であれば、作用時間全体で有効成分が歯面に留まりやすく、ムラの少ない色調変化につながる。
知覚過敏の発現抑制と術式
知覚過敏は使用総曝露量、既往症、象牙質露出など複数因子で決まる。装着時間は上限を守りつつ徐々に延ばす方が安全である。トレーの辺縁は歯頸線に沿って過不足なくトリミングし、ジェルのあふれは速やかに拭き取る。就寝中の装着を禁止する製品では夜間連続使用を避ける指示が必須である。フッ化物配合ペーストやCPP-ACP併用は術後の快適性向上に寄与するが、使用可否は各製品の添付文書に準拠して判断する。
術式適合とタイムマネジメント
短時間連続プロトコルは忙しい社会人や挙式前の患者に適する。60分×10日などの短時間設定は暦日を短縮し、患者満足までの期間を短くする。じっくり進める必要がある症例やホワイトバンドが気になる症例では、過酸化尿素10%を用いる120分×14日プロトコルが選択肢になる。院内の標準工程は印象採得、模型作業、真空成形、トリミング、装着指導の流れで確立できる。トレーに液だまりを作らず、歯頸部の密着性を優先することが重要である。
感染対策と清掃
使用後のトレーは流水と歯ブラシで清掃する。高温の水や熱源はトレーの変形リスクを高めるため避ける。保管は専用ケースを用い、ジェルは製品ごとの保存温度に従う。要冷蔵製品を持ち帰る際は温度上昇を避ける指導を徹底する必要がある。
技工連携と患者説明
患者には米粒大または米粒二つ分程度の少量塗布を目安に示すとよい。白色ジェルであればあふれの視認性が高く、自己管理がしやすい。術前にはシェードガイドで計測し、術前・術後の写真記録を残すことでコンプライアンスと満足度が向上する。タッチアップ時期の説明は後戻りの自覚と食習慣を踏まえて行う。
経営効率の分解
ホームブリーチングはチェア占有時間が少なく、説明とトレー作製が主要な工数である。短時間プロトコルは開始から満足までの日数を短縮しやすく、紹介や自費の付帯処置につながる可能性がある。一方で知覚過敏対応や保管指導などのフォローの質が再来率と紹介率を左右する点に注意する。
1症例あたりコストの考え方
1症例の材料費はジェル使用本数×単価+トレー材料×枚数+消耗品で算出できる。実勢の仕入れ価格はディーラー条件で変動するため、医院ごとに把握しておく必要がある。短時間プロトコルはジェル使用量がやや少なく済む場合があり、同一目標シェードでも原価が変動する可能性がある。
稼働率とスタッフ教育負荷
装着指導は動画や患者用パンフレットを活用することで標準化しやすい。保存条件の違いは受付や衛生士の説明負荷に直結するため、製品別チェックリストに要冷蔵か冷暗所かを明記するとミスを減らせる。
【製品別】製品ごとのレビュー
本節の目的は、各製品の客観情報を踏まえ、どのような医院と患者に向くかを具体像として示すことである。
ティオン ホーム プラチナは低濃度でじっくり進める用途に適合
主成分は過酸化尿素10%で、推奨は1日1回最大120分を最長14日間とされる。ジェルは白色であふれが視認しやすく、2.5mLシリンジ×4を含むスターター構成が一般的でリフィルもある。専用トレーシートは柔軟性と透明性が高く、歯頸部への密着が得やすい。保存は要冷蔵である。臨床的にはホームブリーチング初心者、知覚過敏既往、ホワイトスポットを配慮したい症例に向く。価格はセットで6千円台が目安で、説明資料やFAQも整備されているため教育負荷が比較的低い。
ティオン ホーム ウィズは短時間志向のニーズに合う
主成分は過酸化水素6%で、過酸化尿素換算では約17%相当の作用を示す。標準プロトコルは60分×10日で、最長90分までとされるため短期間での効果実感を期待できる。1.8mLシリンジ中心のスターター構成で保存は要冷蔵である。短期間で結果を求める患者、タイトな日程での施術や迅速なタッチアップが必要なケースに適する。就寝中の装着は禁止されており、装着時間の厳守と知覚過敏モニタリングが重要である。価格は6千円台後半が目安で、比較資料が提供されることでカウンセリングを効率化できる。
松風 ハイライト ホームは高粘度で取り扱いやすい
主成分は過酸化尿素10%で、基本は1日120分を最長14日間のプロトコルである。セットは1.2mLシリンジ×8本にトレー材やシェードメモが含まれ、ジェルは高粘度で滞留性が高くトレーからの漏出感を抑えやすい。保存は冷蔵推奨である。国産ブランドとして安定供給とシンプルな手順を重視する医院にマッチする。価格はホームセットで6千円台が目安である。
NITEホワイト・エクセルは長期実績と周辺資材の充実が特徴
主成分は過酸化尿素10%で、装着は1日最大120分を最長14日とされる。国内で早期に承認を受けた実績があり、3gシリンジのセットやリフィルに加えてEVAシートやポーチ、患者向け小冊子など周辺資材が充実している点が特徴である。保存は冷暗所が推奨されており、冷蔵は不要である。長期の臨床実績や院内の一括導入を重視する医院に適し、スターター価格は6千円台が目安である。
導入戦略とROI試算
本節の目的は、医院の診療スタイルに合わせた導入順序と投資回収の枠組みを提示することである。自費メニューの強化を目指す医院は短時間完結プロトコルを中心にカウンセリング導線を設計し、モニター症例の術前術後写真を体系化すると効果的である。保険中心の医院はマイルド処方を標準化して知覚過敏対応とホームケア製品の併売を組み合わせ、患者満足を高める戦略が有効である。
ROIの評価はホームメニューの売上から材料費、トレー作製工賃、説明時間に要する人件費を差し引き、紹介やタッチアップによる派生売上を加味して算出する。製品間の差は装着日数や保存条件に起因する運用コストの差として現れる。短時間プロトコルは暦日の短縮により患者満足の早期獲得と紹介率の向上が期待でき、これが利益率改善に寄与しやすい。
導入時の実務チェックリスト案を提示する。
・仕入れ単価とディスカウント条件の確認
・在庫管理ルールの整備(要冷蔵品は温度管理記録)
・衛生士向け標準操作手順の作成(印象、成形、トリミング、指導)
・患者向け説明資料と動画の準備
・術前写真とシェード管理のワークフロー化
・フォローアップ予定の設定と連絡方法の確定
簡易ROIシミュレーションの例(概算)
・自費価格:1セット 20,000円
・材料原価:3,000円
・トレー作製人件費:1,500円
・衛生士説明時間コスト:1,000円
・1症例粗利:20,000 −(3,000+1,500+1,000)=14,500円
・月間10症例で粗利145,000円、年間で約1,740,000円 この試算に紹介やタッチアップによる追加収益を加えれば回収はさらに早まる。
よくある質問(FAQ)
Q 就寝中に装着してよいか
A 製品によっては就寝中の連続装着を禁止しているものがある。短時間型製品では夜間の長時間装着を想定していないため、日中の管理可能な時間帯で運用することが安全である。
Q 保存はどのように指導すべきか
A 要冷蔵製品は持ち帰り時の高温曝露を避け、帰宅後速やかに冷蔵保存するよう指導する。冷暗所保管の製品は直射日光や高温を避けること。いずれも凍結は避ける。
Q 知覚過敏が出た場合の対応は
A まず使用を中断し、症状が軽減したら装着時間を短くして段階的に再開する。トレー辺縁の再調整やジェル量の見直しを行い、必要に応じてフッ化物配合製品やCPP-ACPの併用を検討する。
Q ホワイトスポットが目立つ症例への選択は
A 作用速度が速い方法では一時的にコントラストが強調されることがあるため、マイルド処方でゆっくり進める方が安全である。経過観察を行い、必要ならタッチアップを計画する。
Q 法的な注意点は
A いずれも医療機器であり、歯科医師の指導管理下でのみ使用可能である。無カタラーゼ症、妊娠中・授乳中、小児、重度の歯周炎などは禁忌に該当する場合があるため添付文書に従って適応判断を行うこと。効果の保証や過度な表現は避ける。