GC「ティオン」ホワイトニングシリーズ徹底比較!オフィス・ホームプラチナ・ホームウィズ
午前の最終アポイントに結婚式を控えた患者が来院した。写真写りを短期間で改善したいという強い要望と、術後のしみ(知覚過敏や色ムラ)をできるだけ抑えたいという事情が同居する。こうしたケースでは術式と材の選択が悩ましく、臨床的な即時効果と患者満足、院内運用やコストの折り合いをどうつけるかが判断の分かれ目となる。本稿はその迷いをほどくために、ティオンのオフィス、ホーム プラチナ、ホーム ウィズの三製品を臨床的価値と経営的価値の二軸で比較し、自院の診療スタイルに最適な導入判断を支援することを目的とする。薬事面、運用面、コスト、時間管理が臨床アウトカムと収益にどう影響するかを具体的に示し、現場での実務につながる実践的な指針を提示する。
目次
比較サマリー表(早見表)
| 製品 | 薬事区分 | 有効成分濃度 | 方式 | 施術時間の目安 | 1症例コスト目安 | パッケージ例 | 保守保証 | 供給性 | 保管取扱 | 互換適合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ティオン オフィス | 高度管理医療機器 22200BZX00785000 医薬用外劇物 | 過酸化水素 約23%(混和後) | 光触媒併用のオフィス用。光照射で反応促進 | 約1〜2時間/回 | 約5,800円/症例目安(セット1函使用想定) | A1.0g + B1.0g 各1本、リアクター2.0g、歯肉保護レジン1.5g ほか | 照射器は別途。製品情報参照 | 定番流通 | 要冷蔵、取扱注意 | 専用照射器と相性良 |
| ティオン ホーム プラチナ | 高度管理医療機器 22900BZX00205000 | 過酸化尿素 10% | マウストレー型 | 最長120分×14日 | スターター約6,500円 | 2.5mL×4本、トレーシート2枚、ケース1個 | 該当なし | 定番流通 | 要冷蔵、トレー作製必要 | 既存成形機で作製可 |
| ティオン ホーム ウィズ | 高度管理医療機器 30600BZX00056000 | 過酸化水素 6%(過酸化尿素約17%相当) | マウストレー型 | 標準60分×10日、最長90分 | スターター約6,900円 | 1.8mL×4本、トレーシート2枚、ケース1個 | 該当なし | 定番流通 | 要冷蔵、トレー作製必要 | 既存成形機で作製可 |
表は医院が購入する標準パッケージの希望価格を基にした目安である。ホーム材はスターターを1患者に1函使用する前提、オフィスはセット1函を1症例で使い切る前提の単純試算である。濃度や使用時間は知覚過敏や既往の影響を受けるため、効果や必要回数には個人差が生じる。表の読み方として、濃度と使用時間は臨床アウトカムの立ち上がりとチェアタイムに直結し、価格と保管は在庫運用と原価に直結する。
【項目別】比較するための軸
この節では三製品の違いを臨床基準と経営基準に結び付け、現場で判断できるように整理する。根拠を端的に示し、運用手順と境界条件を明示することで導入と日常運用に落とし込める形を目指す。
臨床精度と再現性
オフィス材は光触媒を併用し、照射によってラジカル反応を制御し短時間で効果を引き出す設計である。術者が視野内で反応を管理できるため、前処置、遮蔽、塗布、照射、除去までの一連プロトコルを厳格に守れば同一術者内での再現性は高い。一方ホーム材はトレー適合とジェルの滞留性が結果の鍵になる。プラチナは水と馴染みやすく歯面へ浸透しやすい性状、ウィズは水に溶けにくく白色ジェルで残留を視認しやすい設計である。模型精度から装着指導までを標準化すれば日々の再現性は向上する。
評価の基準としては同一光源下でのシェード比較と写真記録を併用する。オフィス材は照射サイクルごとの乾燥影響を踏まえ、即時評価と1週間後の経過を並行して確認する。ホーム材は規定時間に達しない装着やジェル過量による縁漏れを避ける指導が重要となる。
再現性が高まると術後トラブル対応の工数が減り、スタッフ時間を他業務へ振り向けられる。ホーム材は装着指導や経過確認の手順を定型化することで来院1回あたりの説明時間を短縮でき、結果としてクリーニングや検査など付随サービスの稼働率向上につながる。
材料と薬事の違い
オフィス材は過酸化水素約23%で設計され、光触媒により可視光域で反応を促進する。インターナルブリーチにも対応できる設計であり、歯肉保護と隔壁形成を確実に行うことが安全運用の前提である。ホーム材はプラチナが過酸化尿素10%でマイルド、ウィズは過酸化水素6%で立ち上がりが比較的速い。いずれも高度管理医療機器であり、適正な保管と院内ルールの整備が求められる。
薬事上の取り扱いと患者説明は明確にしておく必要がある。特にオフィス材は「医薬用外劇物」に該当する扱いがあり、鍵付き保管や使用記録の保管など院内手順を整備することが望ましい。
タイム効率とチェアタイム
オフィスの照射は照射モードにより時間が変動し、総チェアタイムは前処置、遮蔽、照射、仕上げを含めて約1〜2時間を見込む。ホーム材は来院回数を最小限に抑えられる点が特徴で、プラチナは最長120分×14日、ウィズは標準60分×10日という設定である。イベント前の短期改善を狙う場合はオフィスが優位に立つ。継続的な持続力や患者の自宅での管理を重視する場合はホーム材が有利となる。
チェアタイム短縮を人件費に換算すると影響は大きい。例えばオフィスで1症例あたり20分の時間短縮ができれば、月10症例で約200分の余剰時間が生まれる。衛生士の時給やユニット回転に換算すれば粗利に直結しやすい。ホーム材は来院を2回に抑えればユニット占有がほとんど発生せず、外来枠の圧迫回避につながる。
感染対策と保管条件
三製品とも要冷蔵の保管が必要である。オフィス材は医薬用外劇物の取り扱いとなるため、手順書作成や鍵付き保管、使用記録の保持が望ましい。ホーム材は患者に配布する際にトレーケースの保管方法や室温上昇を避ける説明を行う。トレーの清掃は水洗と乾燥を基本とし、歯ブラシでの強擦や熱湯での消毒は避けて変形を防ぐ。院内ではジェルの取扱責任者を定め、温度管理ログを残すことが監査対応や品質管理に有効である。
技工、説明、患者体験
トレーはスチレン・イソプレン系シートを用い、薄く柔軟な装着感を目指して成形する。縁の延長やリリーフは患者の発音や嚥下で確認し、縁からのジェル滲出を最小にする。ウィズの白色ジェルは過量を視認しやすく、患者自身が拭い取りやすい利点がある。プラチナは知覚過敏を懸念する患者に提案しやすく、装着時間が長くても就寝前に組み込みやすい性格を持つ。写真とシェードサンプルで効果を可視化すれば患者満足度が向上する。
教育負荷と標準化
オフィス導入時は歯肉保護や隔壁形成、塗布量、照射距離など教育項目が多いが、一度プロトコルを確立すればスタッフへの展開は容易である。ホーム材は模型作製からトレー成形、カットバック、装着説明までの手順をチェックリスト化すれば新人でも短期間で習得可能である。説明資料は写真入りの手順書と色見本をセット化し、既往歴や生活習慣に応じた装着時間の微調整を記録することで、スタッフ間のバラつきを減らせる。
臨床現場での使い分け戦略
イベント直前で即時性を求められる症例はティオン オフィスを軸に計画する。短時間で見栄えを改善できるが、後戻りを懸念するならホーム材を併用することを最初から組み込むと効果と持続のバランスを取りやすい。具体的にはオフィスで即時のトーンアップを行い、術後の持続や微調整はホーム プラチナでマイルドに追従させる運用が有効である。
ホワイトニング経験者のタッチアップや時間に制約のある患者にはウィズが相性良い。短時間で効果を出しやすく白色ジェルで過量管理も行いやすい。初回で知覚過敏を強く懸念する患者、エナメル低形成やホワイトスポットを気にする患者にはプラチナを推奨しやすい。
自費率を高めたい医院は、オフィス単独の訴求よりもホーム併用のメニュー化を検討すると良い。オフィス+ホームのセットメニューは単価向上と患者満足度の向上を両立しやすく、継続受診や物販による継続収益につながる。
具体的な運用例
イベント直前症例
初診でオフィスを実施、術後説明でホーム材スターターを提案して持続管理を促す。
初回で敏感な患者
ホーム プラチナのスターターを提供し、来院時にトレー作製と装着指導を行う。
定期メンテ枠
ホワイトニング経験者の短期タッチアップにウィズを組み込み、メンテ時に配布・指導する。
【製品別】製品ごとのレビュー
ティオン オフィス
短期の見栄え改善を重視する症例に向く製品である。光触媒を併用することで比較的低濃度の過酸化水素でも効率良く反応を進める設計である。手順は遮蔽と塗布、照射を繰り返すサイクルで、照射モードの選択によりトータルのチェアタイムを症例に合わせて調整できる。術者の管理下で色調を追える点が即時性を求める場面での強みである。
互換性と運用面では専用照射器が前提となるが、セットには歯肉保護レジンや必要な補器具が含まれており1症例当たりの原価が比較的把握しやすい。保管は冷蔵で化学火傷リスクへの配慮が必要なためスタッフ教育と運用手順書を整備することが必須である。
導入適合の目安としては、短時間で審美改善を求める患者需要が一定数存在し、ユニット稼働を確保できる医院が最適である。照射器の初期投資をメニュー単価で回収できる患者層の有無が導入判断の分岐点となる。
推奨運用ポイント
・初回カウンセリングで期待値と知覚過敏リスクを明確にする。
・照射モードとサイクルを標準化し、記録を残す。
・術後にホーム材による追従メニューを提示する。
ティオン ホーム プラチナ
過酸化尿素10%で温和な立ち上がりを重視した製品であり、知覚過敏への配慮と持続管理を両立する性格を持つ。装着時間は最長120分で就寝前ルーチンに組み込みやすく、初回受診者や敏感な患者に提案しやすい。スターターにトレー材とケースが含まれるため導入時の説明と装着練習を一貫して提供できる。
互換性と運用面ではトレーの縁延長やリリーフ調整でジェル滲出を抑えやすく、ジェルが水に馴染みやすいため歯面へのムラが生じにくい。保管は冷蔵で、患者配布時に使用時間や保存方法の書面説明を渡すことが望ましい。
導入適合の目安としては、知覚過敏を懸念する患者、ホワイトスポットを気にする患者、ホワイトニング未経験者に適している。メンテナンス来院と組み合わせることで中長期的な満足度向上に寄与しやすい。
推奨運用ポイント
・トレー適合と装着指導を初診で十分に行う。
・使用記録システムを設け、患者の装着時間や反応を追跡する。
・定期チェックで写真とシェード比較を必ず行う。
ティオン ホーム ウィズ
過酸化水素6%で標準60分×10日が目安の製品であり、スピード志向かつタッチアップ用途に向く。白色ジェルは過量でも視認しやすく、水に溶けにくい性状によりトレー内での滞留が確保されやすい。ホワイトニング経験者の短期タッチアップやイベント前の調整に有効である。
互換性と運用面では既存の成形機でトレー作製が可能であり、装着指導はジェルの線状塗布と縁からの拭き取りを重点化する。保管は冷蔵で、配布後の残数管理と誤飲防止の説明を行うことが重要である。
導入適合の目安は、時間に制約のある社会人、イベント前のタッチアップ需要、定期メンテナンス枠に組み込みたい医院に相性が良い。しみを訴える患者が出た場合は装着時間を段階的に短縮して反応を見ながら調整する。
推奨運用ポイント
・タッチアップ需要を想定した短期メニューを用意する。
・製品特性に合わせた塗布量と拭き取り指導を標準化する。
・フォローアップで過剰反応がないかを早期に確認する。
導入設計と収益シミュレーション
価格感はスターターでプラチナが約6,500円、ウィズが約6,900円、オフィスのセット1函が約5,800円である。オフィス導入には照射器の初期投資が別途必要である。ホーム材はユニット占有が少ないため説明時間の効率化と物販の継続購入で粗利が積み上がりやすい。オフィスは単価を高めに設計しやすいがチェアタイムがかかるため、診療動線と人員配置を再設計する必要がある。
収益モデルの管理は月間症例数、単価、材料原価、スタッフ時間の四要素で行うとブレが少ない。以下は簡易的な想定計算例であり、実際の数値は医院の条件で変動する。
想定例(概算)
・オフィス単価 30,000円、材料原価 5,800円、1症例チェアタイム 90分
・ホーム プラチナ単価 12,000円、材料原価 6,500円、来院チェアタイム 30分(トレー作製含む)
・ウィズ単価 10,000円、材料原価 6,900円、来院チェアタイム 20分
回収計画のポイント
・オフィス照射器は減価償却を念頭に月間症例数計画を立てる。導入後1〜2年で回収できる見込みを立てることが望ましい。
・ホーム材はスターター販売から定期購入へつなげる導線を設計する。来院時の写真記録と色見本提示でリピート率を高める。
・写真記録と色票比較を必ず導入し、満足度を可視化して再来院や物販につなげる。
運用効率化の施策
・標準化された説明資料と動画を用意して説明時間を短縮する。
・トレー作製の平準化で技工時間と再来院を削減する。
・ホーム材の使用記録を電子化し、フォローアップのタイミングを自動化する。
よくある質問(FAQ)
Q オフィスとホームを併用すると効果は高まるか
A 併用は即時性と持続性のバランスを取りやすい。オフィスで短期にトーンアップした後、ホームで追従すると後戻りを緩やかにできる。ただし装着時間の増加で知覚過敏が出る可能性があるため、術後の評価を分けて行い、必要に応じて装着時間を調整する。
Q 知覚過敏が心配な患者にはどれを選ぶべきか
A 初回はホーム プラチナが提案しやすい。濃度が穏やかで装着時間を患者の生活に合わせて微調整できる。ウィズも選択肢になるが、症状が出た場合は使用時間の短縮や休薬日を設ける判断が必要である。
Q トレーの清掃と保管はどうするか
A 使用後は水洗と乾燥を基本とする。歯ブラシでの強擦や熱湯での洗浄は避け、ケースに入れて直射日光や高温を避けて保管する。変形を防ぐため車内放置や熱源近くに置かないよう患者へ指導する。
Q オフィス導入での注意点は何か
A 歯肉保護と隔壁形成を確実に行い、塗布量と照射距離を標準化すること。化学火傷のリスクがあるためスタッフ教育と保管体制を整え、冷蔵保管と鍵管理を徹底する。症例選択では歯のクラックや露出した象牙質の有無に注意する。
Q 価格設定はどう考えるか
A 材料原価にチェアタイムとスタッフ工数を加味し、写真撮影や色調計測を含むサービス価値で単価を設計する。ホーム材はスターターの原価と来院回数の少なさを活かして継続購入につなげ、オフィスは照射器の減価償却を念頭に症例数計画を立てる。
以上の比較と運用提案を踏まえ、自院の患者属性、ユニット稼働、スタッフ体制、地域の需要を照らし合わせて導入計画を検討するとよい。短期効果を求める需要と中長期の持続性を求める需要を両取りする運用設計が、患者満足と収益性の双方を高める鍵である。