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異種骨・同種骨骨補填材とは?バイオオス等の主要材料の特徴を比較しながら解説!

異種骨・同種骨骨補填材とは?バイオオス等の主要材料の特徴を比較しながら解説!

最終更新日

異種骨・同種骨の骨補填材とは?バイオオス等の主要材料の特徴を比較しながら解説

インプラント手術で「あごの骨が足りない」と言われ、骨造成の方法に悩んだ経験はないだろうか。自家骨を削って移植する方法は確実だが、患者への負担が大きい。一方、市販の骨補填材を使おうにも異種骨(動物由来)にするか同種骨(ヒト由来)にするか判断に迷い、時間だけが過ぎてしまった――開業医であれば一度は直面するジレンマである。術後にレントゲンを撮影した際、移植した人工骨の粒が思いのほか残存しており「このまま本当に自分の骨になるのだろうか」と不安になったことはないだろうか。また患者から「先生、その骨は人の骨ですか?それとも牛の骨ですか?」と尋ねられ、返答に困った経験があるかもしれない。骨補填材の選択は単なる材料選びではなく、治療結果の予知性や患者の安心感、さらには医院の経営にも直結する重要な戦略である。

本記事では、そうした悩みを解決するために異種骨・同種骨骨補填材の特徴を徹底比較する。長年の臨床経験に基づき、それぞれの材料の臨床的な価値(骨再生の能力・扱いやすさ・安全性など)と経営的な価値(コストパフォーマンス・治療時間への影響・ROIなど)を客観的に分析する。主要な製品であるバイオオス(Bio-Oss)等を例に、各材料の強み・弱みと、「どのような診療スタイルの先生に適しているか」を具体的に解説する。記事の最後にはよくある質問にも答えるので、骨補填材選びの指針を明日からの臨床に活かしてほしい。

異種骨・同種骨骨補填材の主要製品比較一覧

異種骨(動物由来)と同種骨(ヒト由来)の代表的な骨補填材について、臨床性能と経営効率の観点から主要項目を比較する。以下の表は各製品の種別や骨再生特性、操作性、コスト目安、主な用途をまとめた早見表である。

製品名(種別)骨再生特性操作性・形状コスト目安(材料費)主な用途・適応例
Bio-Oss (異種骨・ウシ由来HA)骨伝導性のみ 非吸収性(長期残存)顆粒状(要混和・膜で覆う)高価(約3万円/0.5g)大規模なインプラント骨造成 審美部位の骨幅維持
Boneject (異種骨・ウシHA+コラーゲン)骨伝導性のみ 非吸収性(長期残存)ペースト状(注入充填容易)高価(約2万円/1g※保険適用可)歯周欠損・抜歯窩への充填 手技を簡便にしたい症例
Puros (同種骨・ヒト乾燥骨)骨伝導性主体 徐々に吸収置換顆粒状(要湿潤・充填容易)高価(約2〜3万円/0.5cc)インプラントGBR全般 短期間での骨成熟を図りたい症例
OraGraft (同種骨・ヒト脱灰骨)骨誘導性あり(BMP含有) 吸収性(完全置換)半固形ペースト状(練和不要)高価(約2万円/0.5cc)歯周組織再生療法(GTR) 細かい骨欠損の充填に最適

※価格は目安(税別)であり、容量や仕入先により変動する。またBonejectは保険収載されており、適応症例では1gあたり約6,390円の償還価格が設定されている。

各製品ともいずれも自費診療向けの高価な材料であるが、それぞれ独自のメリットによって臨床成果と投資対効果のバランスが取られている。次章では、骨補填材を評価するうえで重要な比較ポイントを解説し、その後に各製品の詳しい特徴を見ていく。

骨補填材を比較する5つのポイント(臨床性能と経営効率)

骨補填材を選択する際には、単に「骨ができるかどうか」だけでなく複数の観点から評価する必要がある。臨床的な性能に加え、医院経営への影響(コストや治療時間)も見逃せない。ここでは(1)骨形成能力と骨置換の仕組み, (2)吸収速度とボリューム維持, (3)操作性・施術の容易さ, (4)安全性・リスク管理, (5)コストとROIの5つの軸で異種骨と同種骨を比較する。それぞれの軸で生じる差が臨床結果および医院の収益にどう影響するのかを考察する。

骨形成能力と骨置換について、骨伝導性か骨誘導性か

骨補填材が新生骨をどれだけ生み出せるかは、その骨形成メカニズムによって左右される。異種骨・同種骨いずれの材料も基本的には骨の「足場」となる骨伝導性を有し、周囲から骨芽細胞が侵入して徐々に骨組織が形成される。ただし骨誘導能(材料自体が骨の形成を誘発する能力)には差がある。

異種骨材料(例:Bio-OssやBoneject)は、供給源である牛骨由来の無機成分のみで構成される。そのため細胞や骨形成因子(BMPなど)は含まれておらず、純粋な骨伝導性のみを提供する。言い換えれば、「骨の入れ物・スペース」を確保する役割だ。周囲に十分な血液や骨細胞があれば着実に骨ができるが、材料自体が骨を作り出す作用はない。臨床的には、安定した足場によって予知性の高い骨造成が可能である一方、自家骨に比べ骨新生のスピードや量は限定的とされる。そのため、大きな骨欠損では足場として異種骨を用い、同時に少量の自家骨や成長因子を混ぜて骨誘導性を補強するケースも多い。

同種骨材料(例:PurosやOraGraft)は、人間の提供骨を加工したものだ。提供骨中に元来含まれるタンパク質や成長因子の一部が残存する場合があり、特に脱灰処理された同種骨(DFDBA)ではBMPをはじめとする誘導因子が露出するため、骨誘導性を持つとされる。同種骨(DFDBA)は動物実験や一部臨床研究で骨形成の促進が報告され、難治性の歯周骨欠損で骨の充填率を高めた例もある。ただし、同種骨であっても誘導効果は自家骨ほど強力ではなく個体差も大きい。また、脱灰により構造が脆弱な場合は単独使用で十分なボリューム維持が難しいこともある。そのため臨床では骨誘導能を期待しつつも足場としての充填材と併用したり、自家骨チップと混合して両者の長所を狙う戦略が取られる。

以上から、「足場重視」で行くか「骨誘導力も欲しい」のかが材料選択のポイントになる。足場としての骨伝導性が確保できればインプラント埋入に必要な骨量は形成されうるが、誘導性が加われば骨質の向上や治癒期間の短縮が期待できる。ただ誘導性素材は高価で効果にバラつきもあるため、費用対効果の観点では症例を選ぶ慎重さが求められる。

吸収速度とボリューム維持について、残る材料か置換される骨か

骨補填材がどのくらいの速さで吸収され、自分の骨に置き換わるかも重要な違いである。これは異種骨か同種骨かによる素材の違いだけでなく、製品ごとの物理的性状(緻密さや結晶構造)にも左右される。

異種骨由来の材料(牛骨HA)は基本的に非吸収性と称され、体内で極めてゆっくりとしか分解されない。例えばBio-Ossの顆粒は、動物実験や生検研究で数年以上経過してもその形態が残存していることが報告されている。長所として、この「残る性質」のおかげで移植部位のボリュームが長期にわたり維持されやすい。上顎洞挙上術(サイナスリフト)では、異種骨を用いることで10年以上にわたり垂直的な骨高さが保持されたとの臨床報告もある。骨補填材が吸収されにくい分、周囲骨のリモデリング(再構築)が緩徐で長期安定性に優れるのがメリットである。一方デメリットは、材料が骨に置換されず残留する割合が高いため、長期的に見た新生骨の容積比はやや低くなることである。レントゲン上で移植部に白い粒状の陰影がいつまでも見えるが、それ自体は異常ではなく足場が残っている証拠である。ただ、万一将来その部位が感染を起こした場合、残存顆粒が異物となって除去が厄介になる可能性は否定できない(もっとも臨床的には頻度は高くない)。

同種骨由来の材料は、程度の差こそあれ吸収性があり、最終的に患者自身の骨に置き換わることを目指した素材である。特に脱灰同種骨 (DFDBA) はコラーゲン主体のマトリックスでできており、数ヶ月〜1年スパンで大部分が吸収され新生骨に転化する。長所は、最終的に残るのは患者自身の生体骨のみとなるため、生理的な骨リモデリングが継続しやすく骨質が自然に近い点である。また吸収が早い分、早期にインプラント埋入へ移行できるケースもある。短所としては、吸収が早すぎると初期骨ボリュームの維持が難しいことである。閉鎖環境でない垂直的な欠損では、せっかく造成した骨が減少してしまうリスクもある。そのため、大きな骨延長が必要なケースで同種骨のみを用いるのは不利な場合があり、非吸収性の異種骨や人工骨とミックスして使う戦略が取られることも多い。また同種骨(特にFDBA:無脱灰凍結乾燥骨)の場合、鉱物成分が残っているため吸収スピードはDFDBAより穏やかで、異種骨と同様に一部は長期残存する。製品によって吸収性はさまざまであり、「残存して形態を保つか」「速やかに置換して純自骨にするか」は症例ニーズに合わせて選ぶ必要がある。

要するに、形を保つ安定志向の材料か、完全に置換して生体骨化する材料かの選択である。前者はボリュームロスを極力避けたいインプラントの大量造成に向き、後者は骨の質を重視する歯周再生や小規模欠損に向く傾向がある。経営的視点では、非吸収性材料は再手術リスクを減らす安心感につながり、一度の処置で確実に結果を出すことで無駄なコストを防げる。一方、吸収性材料は早期に次の治療段階へ移行でき回転率を上げられるメリットがある。治療期間が短縮できれば患者満足度も上がり、紹介やリピートにもつながる可能性が高い。

操作性・施術の容易さについて、扱いやすさが時間とストレスを左右する

骨補填材の操作性(ハンドリング特性)も、臨床効率と結果に直結する重要なポイントである。手術中の扱いやすさは処置時間や術野の清潔保持に影響し、ひいては材料の効果発現や術後合併症リスクにも関わってくる。また、操作性はスタッフの習熟度や医院のオペ環境にも影響されるため、自院に合った特性の材料を選ぶことが望ましい。

顆粒タイプの骨補填材(代表例:Bio-Oss顆粒、Puros顆粒など)は、粒状の粉骨を容器から取り出し生理食塩水や患者血液と混和して使用する。利点は細かな欠損形態にも詰めやすく、自由な形に成形できる点である。しかしその反面、粒子がばらけて術野に散乱しやすいという難点がある。特に粘調な血液とよく混ぜないまま置くと、顆粒が周囲の軟組織に飛び散り定着しないことがある。また充填後も安定させるためにコラーゲンメンブレンで覆蓋する追加処置がほぼ必須であり、これが手技を煩雑にする要因となる。経験の浅い術者にとって、骨補填材の調製から膜でのカバーまで一連の操作は時間がかかりがちで、手際が悪いと感染リスクも上がる可能性がある。したがって顆粒タイプを扱う際はあらかじめトレーニングを積み、器具も準備しておくことが望ましい。ただしBio-Ossなど近年の製品は親水性が高く、数分も経たず血液と混ざってペースト状になるため、適切に扱えば充填自体は容易である。また粒径のバリエーションが用意されており(細粒Sと粗粒Lなど)、欠損の大きさに応じてサイズを使い分けることで操作性と治療効果を両立できる。

ペースト状・ブロック状の骨補填材(代表例:Bonejectペースト、OraGraft Puttyなど)は、顆粒に比べてまとまりが良く扱いやすいことが特徴である。Bonejectは牛骨HA顆粒をアテロコラーゲンで練り合わせたペーストが滅菌カートリッジに封入されており、シリンジからそのまま欠損部に押し出して充填できる。この「飛び散らない」利点により、細かな骨欠損や複雑な形態の部位でも短時間で確実に材料を行き渡らせることが可能だ。また、コラーゲン由来の粘着性により充填後は粒子同士が塊状を維持するため、必ずしも膜で覆わずとも初期安定性が得られやすい(ただし大きな欠損では膜使用が推奨される)。一方、ペーストやブロックは既成形ゆえ形態の自由度が制限される場合もある。狭い割れ目状の欠損にはペーストが詰め込みづらい、硬質のブロックはフィットさせるためトリミングが必要、といったケースだ。ただ総じてペースト系は術者のストレスを軽減し、オペ時間短縮に寄与する場面が多い。開業医の経営面では、オペ時間短縮はすなわち患者1人あたりの拘束時間減と術後トラブルリスク減につながり、結果として回転率と患者満足度の向上をもたらす。特にスタッフ数が限られるクリニックでは、操作性の高い材料を使うことが時間コスト削減の鍵となる。

なお、操作性には保存・取扱い上の注意も含まれる。同種骨製品は凍結乾燥品が多く、使用前に滅菌水や生食で十分な再水和(リハイドレーション)が必要なものがある。手順を誤ると材料が硬化不良や感染リスクを招くため、取扱説明書に沿った準備が重要だ。またBonejectのようなコラーゲン含有材は要冷蔵保存であり、開封後の扱いにも注意がいる。こうした管理面の煩雑さも踏まえ、複数の材料を使い分ける際は院内のスタッフ教育や在庫管理に気を配る必要がある。

安全性・リスク管理について、感染症リスクと患者の受容性

患者に移植する以上、骨補填材の安全性は最重要の検討事項である。異種骨・同種骨いずれも生体由来の材料であり、感染症伝播や免疫学的拒絶といったリスクが理論上存在する。加えて、患者が精神的抵抗感を持つ可能性も含め、総合的にリスク管理をする必要がある。

感染症リスク

同種骨は人由来ゆえ、ウイルスやプリオンなど未知の病原体が混入している可能性を完全には否定できない。もっとも現在市販されている同種骨製品は、提供者(ドナー)の詳細なスクリーニングと各種ウイルス不活化処理・ガンマ線滅菌が施されており、実際に歯科治療で感染症が起こった報告は皆無に近い。日本国内では厚労省の指針により、同種骨を取り扱う場合は認可された組織バンク由来の製品を用いることが求められている。一方、異種骨材料もかつて狂牛病(プリオン病)のリスクが懸念された。しかし、Bio-Ossを例にとれば原料は汚染のない国のウシ骨のみを使用し、高温焼成で有機物を完全除去する工程でプリオンを含む病原体は不活化されている。現在まで異種骨由来材で感染症が発生した例は報告されておらず、安全性は極めて高いと言える。ただし「絶対安全」と断言することは薬機法上できないため、患者説明では「理論上のリスクはゼロではないが、現実的には無視できるほど低い」といった慎重な表現を用いるべきだ。

免疫・炎症反応

骨補填材そのものは無細胞・無抗原化処理がなされており、臓器移植のような拒絶反応は起こらない。しかし異種骨では、ごく稀に初期治癒過程で異物反応的な慢性炎症が起こり吸収が促進されたとの報告もある。また同種骨でも、保存過程で残留したタンパクに対して稀に抗体反応を生じる可能性が論じられる。ただいずれも臨床上ほとんど問題になるケースはなく、適切な症例選択と無菌手技の徹底により回避できるレベルのリスクである。むしろ実際に注意すべきは、感染時のリカバリーだ。前述のように異種骨は感染に弱く、一度細菌感染が起きると組織に炎症が拡がりやすい。感染創から散らばった残存粒子が周囲に異物肉芽を形成してしまうと、徹底的なデブリードマン(掻爬)が必要となり、結果的に骨造成が振り出しに戻ることもある。クリニックの評判やコスト面へのダメージを避けるためにも、術後感染の芽は早期に摘み、必要なら早めに補填材を除去して対処することが肝要である。

患者の心理的受容性

安全性と並んで見逃せないのが、患者が材料に対して抱く感情だ。「人の亡骸の骨を体に入れるなんて」「動物の骨なんて気持ち悪い」と感じる患者も一定数存在する。特に日本人は臓器移植や献体への抵抗感が強い文化的背景もあり、同種骨に対する心理的ハードルは欧米より高いと言われる。そのため、自費のインプラント説明時などには、異種骨・同種骨それぞれの由来や安全性を丁寧に説明し、患者の同意を得るプロセスが不可欠である。患者が強い拒否感を示す場合、自家骨採取や人工骨など代替手段も提案できるよう準備しておくとよい。経営面では、患者の不安を和らげる工夫(パンフレットやエビデンス資料の提示など)により治療受諾率が上がり、結果的に医院の収益にもプラスとなる。逆に説明不足で患者トラブルに発展すれば、信用失墜による機会損失は計り知れない。「安全性」と「安心感」の両輪を満たすことが現代の歯科医療には求められている。

材料費だけでなく治療戦略全体で考える

最後に、骨補填材選択の経営的視点としてコストパフォーマンスとROI(投資対効果)を考察する。冒頭の比較表の通り、異種骨・同種骨の市販材料はいずれも安価ではない。一瓶数万円する材料を使用すれば、当然ながら症例あたりの経費は上昇する。しかし、それによって得られる臨床的メリットが大きければ、長期的には医院の利益に貢献する投資となり得る。

まず直接コストとしては、材料そのものの価格に加え、膜やピンなど付随器材の費用も考慮する必要がある。例えばBio-Oss顆粒を1cc使用すれば約3万円、さらにコラーゲンメンブレン(Bio-Gide等)で2〜3万円と、単一症例で数万円台後半の材料費が発生しうる。自費診療であればこれを治療費に転嫁できるが、保険診療の範囲内で用いる場合(骨嚢胞摘出後のBoneject充填など)は医院の持ち出しになる部分もある。したがって、費用対効果のバランスを見極めることが重要だ。

異種骨・同種骨材の費用対効果を評価するには、材料費だけでなく治療成功率や再治療率まで含めて考える必要がある。質の高い骨造成が一回で成功すれば、追加の骨移植手術やインプラントやり直しといった将来のコストを回避できる。Bio-Ossのような実績ある材料を使うことでインプラント成功率が上がり、長期的な補綴リスクが減少すれば、そのリスク回避分が経済的価値となる。また、同種骨を用いて治癒期間を短縮できれば、患者の通院回数を減らし早期にインプラント埋入〜補綴へ移行できるため、医院の生産性向上につながる。例えば通常9ヶ月待つところを6ヶ月で次の処置に進めれば、3ヶ月分早くインプラントの収益を得られる計算になる。

さらに、骨補填材の導入は医院のメニュー拡大と差別化にも寄与する。高度な骨造成が自院で可能になれば、「骨が足りないと言われたがインプラントをあきらめた」という患者層を新たに取り込める。これは新患増による収益アップだけでなく、難症例に対応できる医院としてのブランディング効果ももたらす。とりわけ、異種骨・同種骨を駆使した先進的な再生治療をアピールすれば、自費率の向上や紹介患者の増加といった波及効果も期待できるだろう。

もっとも、経営視点で見過ごせないのは在庫管理とロスコストである。高価な材料を無駄なく使い切る工夫が求められる。骨補填材は滅菌製品のため一度開封すると保管が難しく、使い残しを次回に回すことは推奨されない。症例の規模に合わせて適切な容量の製品を選ぶ(0.25g瓶〜2g瓶など)こと、開封後は同一患者内でできるだけ使い切ることが大切だ。例えば小さな抜歯窩保存に2gボトルを開けてしまうと大半が廃棄となり、大幅なコスト増になる。複数患者での使い回しは感染リスク上不可能であるため、症例ごとの適量発注を徹底したい。

総括すれば、「良い材料には相応のコストがかかる」が「良い材料だからこそ生み出せる付加価値も大きい」ということになる。医院経営としては、初期投資として材料費をかけても十分なリターン(治療成功と患者満足度向上)が得られる場面では惜しまず投資し、逆に効果が薄い場面では無理に高価な材料を使わないというメリハリ戦略が重要である。

以上の比較ポイントを踏まえ、次章から代表的な異種骨・同種骨骨補填材の具体的な特徴を見ていこう。それぞれの製品がどのような強み・弱みを持ち、どのような診療スタイルの先生に適しているのか、臨床と経営の両面から掘り下げる。

主要骨補填材のレビュー

ここからは、市場で入手可能な主要な骨補填材について、臨床性能と経営効率の観点から個別にレビューする。異種骨代表のバイオオス(Bio-Oss)、国産異種骨ペーストのボーンジェクト(Boneject)、同種骨代表のプuros(Puros)、骨誘導型同種骨のオーラグラフト(OraGraft)の4製品を取り上げる。それぞれの製品ごとに、客観的なデータに基づいた強み・弱みと、想定される適応症・適した歯科医師像を解説する。

Bio-Oss(バイオオス)/長期安定性で世界的スタンダードとなったウシ由来骨材

Bio-Ossは、スイスのGeistlich社が開発したウシ由来の異種骨骨補填材である。牛の海綿骨を高温処理して有機物を除去し、骨ミネラルの多孔質構造のみを残した顆粒であり、その構造はヒトの骨組織と酷似している。サイズは細粒(S:0.25–1mm)と粗粒(L:1–2mm)があり、用途に応じて選択できる。

臨床的な強み

Bio-Oss最大の利点は、豊富な臨床実績に裏打ちされた予知性である。世界中で数多く使用され、関連論文は1,000報以上にも上る。上顎洞底挙上や骨幅増大(GBR)など大規模な骨造成でも、Bio-Ossを用いることで良好なインプラント成功率が報告されている。非吸収性ゆえ移植部のボリューム維持能力が高く、長期安定性に優れる点も見逃せない。実際、10年以上経過症例でもBio-Oss粒子に囲まれた骨高度が保持されているケースが多く、大きく骨が痩せてしまうリスクを低減できる。また、骨伝導性の足場として確実に機能し、軟組織の侵入を防ぐことで患者自身の骨形成をサポートする。

臨床的な弱み

一方、Bio-Ossは残存し続けるという長所の裏返しで、完全には自家骨に置き換わらない点がデメリットとも言える。骨質の面では、新生骨と一体化したBio-Oss粒子はインプラント支持には問題ないが、純粋な自骨に比べると骨リモデリングは抑制される。このため、若年患者で長期的に骨代謝が活発なケースでは、将来的な骨質変化を念頭に置く必要がある。また、初期治癒でBio-Ossが残りすぎると、レントゲンで白い粒が見えて患者が不安を感じることがある。実害はないとはいえ、「骨ではなく人工物が残っている」状況に心理的抵抗を示す患者もいるため、術前説明でこの点を十分に伝えることが大切だ。さらに、Bio-Oss単独では骨誘導能がないため、難治性の垂直骨欠損などでは自家骨併用が推奨されることもデメリットと言える。

経営的視点

Bio-Ossは高価な材料だが、その投資対効果は大きい。特にインプラントが絡む骨造成では、一度の手術で確実に骨量を稼げることが極めて重要である。Bio-Ossを用いることで再手術のリスクが減り、ひいては無駄なコストや患者の不満を抑制できる。また、長期安定性のおかげでインプラント予後が安定しやすく、補綴トラブルの頻度低減にもつながる。これは医院の保証期間内の無償メンテナンス負担を減らすメリットとなる。価格面では、Bio-Oss 0.5gあたり2〜3万円と高額だが、多めに使ったからといって悪影響はなく、むしろ不足して骨ができない事態を避ける保険になる。費用をかけて十分な材料を入れておけば、インプラント埋入時に「骨がまだ足りなかった」という事態を避けられ、施術スケジュールも計画通り進められる。これは患者との信頼関係維持にも直結する。

こんな歯科医師におすすめ

Bio-Ossは「多少コストがかかっても確実な骨造成を成功させたい」という価値観を持つ先生に最適である。具体的には、自費のインプラント症例を多く扱い、難易度の高い骨造成にも取り組む開業医だ。ゴールドスタンダードともいえる実績に裏付けされた材料を使うことで、術者自身の安心感も高まり、患者説明の説得力も増すだろう。また、将来の医院の評判や保証リスクを考えて長期的な安全策を講じたい経営者タイプの先生にも向く。逆に、保険診療中心でコスト最優先の医院や、短期間での骨置換を重視する歯周再生メインの先生には、必ずしも第一選択ではないかもしれない。それでもBio-Ossの信頼性は捨てがたい魅力であり、特に「インプラントの成功率向上」を医院の差別化ポイントに掲げるなら導入して損はない製品である。

Boneject(ボーンジェクト)/コラーゲン添加の国産異種骨で操作性と安定性を両立

Bonejectは、日本で開発・販売されているウシ由来骨補填材で、異種骨HAにアテロコラーゲンを配合した注入ペーストタイプが特徴である。高研/GC社により供給され、歯周病由来骨欠損や歯根端の嚢胞摘出後など幅広い用途で保険適用可能な人工骨材料として位置付けられている。

臨床的な強み

Bonejectの最大の利点は、その抜群の操作性にある。製品はあらかじめ滅菌カートリッジに充填された半固形ペースト状で、使用時にシリンジガンで押し出すだけで欠損部に材料を充填できる。これにより、煩雑な練和操作が不要で、顆粒飛散のリスクも極めて低い。特に深いポケット状の骨欠損や、口蓋側からのアプローチが難しい部位でも、ノズル先端を挿入してペーストを確実に行き渡らせることができる。コラーゲン由来の粘性により充填後すぐに材料がまとまって安定するため、出血や唾液による流出も起こりにくい。骨伝導性の足場材としての性能はBio-Oss同等でありながら、確実にその場に留まって骨化を待てるという安心感がある。また、Bonejectは粒径サイズ違いのSタイプ(細粒)とMタイプ(粗粒)があり、歯周欠損にはS、インプラント部位にはMと使い分けることでより適切な骨充填が可能だ。

臨床的な弱み

Bonejectの弱点は、基材がBio-Ossに近い性質を持つため吸収・置換に非常に長い時間を要する点である。国内の臨床報告では、Boneject充填部のリモデリング完了に5〜7年を要した例もあり、その間は骨組織中にHA粒子が残存する状態が続く。したがって短期間で骨を置換させたい症例(例:抜歯即時埋入に向けて数ヶ月で骨化させたい場合)には不向きである。また、コラーゲンが入っているとはいえ基本的に骨誘導能はなく、あくまで足場材である点はBio-Ossと同様である。歯周組織再生などではエナメルマトリックス蛋白(エムドゲイン)等の併用が推奨されており、Boneject単独で新付着を獲得する力は期待できない。そして保険適用ゆえに一長一短があり、保険で使う場合は使用部位や適応症に制約がある(例:インプラント目的では保険算定不可など)。自費で自由に使えるBio-Oss等と違い、ルールを踏まえた運用が必要なのは煩わしい点と言える。

経営的視点

Bonejectは国産品で保険収載されていることから、材料コスト負担を抑えたい医院にとって魅力的な選択肢である。特定保険医療材料として1g約6,390円が償還されるため、例えば歯周外科で1筒(約0.3g)使っても実質2,000円程度のコストで済む。これはBio-Oss等の輸入材と比べ桁違いに安価であり、保険診療内で骨補填を提供しても赤字になりにくい。経営面では低コストで患者満足度を向上させる武器となり得る。ただし、実際にBonejectを保険適用するには嚢胞摘出や歯周炎治療など明確な適応が必要で、インプラントのための骨造成には使えない(自由診療なら使用可だが、その場合は逆にBio-Ossを使う医師が多いだろう)。一方、操作性の高さはオペ時間短縮による間接的なコスト削減効果を生む。開業医にとって、1回の手術時間が短く済めばその分他の診療に時間を充てられ、ひいては収益性が増す。Bonejectなら練和や煩雑な膜固定に手間取ることが少なく、短時間で処置を完了できるため、スタッフ負担の軽減や患者の肉体的負担軽減にも役立つだろう。これは患者満足度向上(=紹介増)にもつながりうる。

こんな歯科医師におすすめ

Bonejectは「シンプルな手技で確実に骨欠損を埋めたい」先生に向いている。具体的には、歯周病治療や抜歯即時のソケットプリザベーションを日常的に行う歯科医師だ。ペリオ分野ではテクニックセンシティブな手技が多いが、Bonejectの扱いやすさは術者の負担を軽減し、結果の再現性を高めてくれる。また、開業したてで高度なオペに不慣れな先生にもお勧めしやすい。Bio-Oss+膜によるGBRは難易度が高いが、Bonejectなら半ば充填材感覚で使えて結果も出やすい。保険で使える範囲では積極的に活用し、インプラントなど自費分野ではBio-Ossと使い分けるなどハイブリッド運用する医院もあるだろう。一方、「とにかく早く骨に置換してほしい」というケースではBonejectは不向きなので、そうした症例にはβ-TCP人工骨など別の選択肢を検討すべきである。

Puros(プーロス)/米国由来の同種骨が実現するスピーディな骨再生

Purosは、アメリカの組織バンク由来の同種骨骨補填材であり、ジンマー・バイオメット社(現ZimVie)が提供している製品である。ヒトのドナー骨を精製し、放射線滅菌した顆粒状の骨補填材で、皮質骨・海綿骨の組成違いや粒径違いのバリエーションが存在する(一般には海綿骨由来の顆粒がインプラント用途で用いられる)。

臨床的な強み

Purosの特長は、患者自身の骨への置換が比較的速やかに起こる点である。ミネラルを保持したまま乾燥させた同種骨(FDBA)ではあるが、提供骨本来のコラーゲンマトリックスが残っており、移植後に宿主の血液や細胞が入り込みやすい。臨床経験的にも、Bio-Ossに比べ骨への生え替わり(リモデル)が早いとの声が多く、インプラント一次埋入までの待機期間を短縮できたケースが報告されている。実際、Purosを用いたGBRでは4〜6ヶ月で良質な骨が形成されることが多く、二次手術までの期間を圧縮できることが大きなメリットだ。また、同種骨由来であるため完全に最終的には異物が残らないことも患者・術者双方にとって安心材料となる。骨誘導能については賛否あるが、少なくとも臨床的にはBio-Oss単独症例よりも骨成熟が早い印象があり、これはPurosにわずかながら骨形成因子が含まれる可能性や海綿骨成分が多孔質ゆえ細胞浸潤が良い点が寄与していると考えられる。さらに、Puros顆粒は血液となじみやすく操作性も良好とされる。粒子表面が疎水性の材料だと血液をはじいてしまうが、Purosは一度湿潤すると短時間で一塊状になり、欠損部に充填しやすい。総じて「骨になるスピード」と「扱いやすさ」のバランスが優れた材料と言える。

臨床的な弱み

Purosの弱点は、あくまで骨伝導主体で完全な骨誘導能はないため、状況次第では骨造成量が不足する可能性があることだ。同種骨といえど自家骨ではないため、生きた骨細胞は含まれず、初期の骨形成は周囲からの侵入に依存する。Bio-Ossに比べてリモデルが早い半面、長期的なボリューム維持力ではやや劣るという報告もある。大きな垂直的増骨では、Purosのみだと経時的に吸収が出て骨高が減少するケースも見受けられる。このため広範囲の造成では、Puros顆粒とBio-Ossをミックスして使い初期はPurosで骨化を促しつつ、長期枠組みはBio-Ossで保持する、といったハイブリッド手法が推奨されることもある。また、同種骨ゆえの問題としてロット間での個体差が考えられる。提供者ごとに骨の性状が微妙に異なるため、硬さやリモデル速度に多少の違いが出得る。もっとも大きなばらつきはなく品質管理されているが、工業製品的な均一性では異種骨に軍配が上がるかもしれない。さらに、日本国内での入手に関しては輸入代理店経由となり、安定供給やアフターサポートの面で不安を挙げる医院もある(国内販売元の体制がBio-Ossほど確立していない)。

経営的視点

Purosは費用面ではBio-Ossと同程度かやや割安で提供されているが(容量にもよるが0.5ccで2万円台半ば程度)、それ以上に治療期間短縮による経営メリットが注目できる。インプラント治療の全工程を早めに完了できれば、患者の治療意欲が冷める前に補綴まで進められるため、治療中断による機会損失を減らせる。特に高齢患者では長期に及ぶ治療計画は敬遠されがちだが、「骨造成後4ヶ月でインプラント埋入できます」と説明できれば受診のハードルは下がるだろう。これは増患・成約率向上につながる。また、Purosは内容量に対して粒子が軽量で見た目より多くの欠損を埋められるとの意見がある。実際、同じ0.5gでもBio-OssよりPurosの方が嵩高で容積を稼げる感じがあるという声もあり、少量でも十分機能するなら結果的にコスパが良いことになる。さらに、“人の骨”という響きは一部の患者には安心感(人と馴染むという意味で)を与える場合があり、そうした患者層にはPurosを提示することで治療への同意が得られやすくなるメリットもあるだろう。経営的には患者満足度と治療完遂率の向上が収益増に直結するため、Purosのような材料を適切に活用することは賢い経営戦略と言える。

こんな歯科医師におすすめ

Purosは「短期間で確実に骨を作り、早く次のステップに進みたい」先生にマッチする。具体的には、抜歯即時インプラントや早期埋入などタイトなスケジュールで骨造成を組み込む術式を好む外科志向の歯科医師だ。症例を選べば、自家骨採取に匹敵するスピードで骨ができるケースもあり、積極的に最新素材を取り入れて治療効率を上げたい先生には魅力的だろう。また、患者説明で「人由来の骨です」と言うことに抵抗がなく、それをきちんと理解してもらえるコミュニケーションに自信がある先生にも適する。逆に、患者の抵抗感を懸念して説明を避けたりするようであれば、本末転倒なので無理に使う必要はない。Purosの良さを理解し、「患者の治療期間をできるだけ短くしたい」「早期にインプラント治療を完了させて患者のQOLを上げたい」というホスピタリティと効率志向を持つ歯科医師には、Purosは強力な武器となるだろう。

OraGraft(オーラグラフト)/脱灰同種骨による骨誘導で歯周再生に活路

OraGraftは、米国の著名な骨バンクであるLifeNet Health社が提供する同種骨製剤の総称で、日本では主にデンツプライや代理店を通じて入手可能だ。ラインナップにはミネラル含有の顆粒(FDBA)や脱灰した骨マトリックス(DFDBA)の顆粒・ペーストが含まれるが、ここでは特に脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)タイプの特性に焦点を当てる。

臨床的な強み

OraGraft(DFDBA)の際立った利点は、骨誘導因子を豊富に含む可能性がある点である。脱灰処理により骨中のヒドロキシアパタイトが溶出し、骨基質中のBMPやTGF-βなどの成長因子が露出・解放される。このDFDBAは古くから骨誘導能を有する移植材として歯周組織再生や脊椎融合術で研究され、多くの動物・ヒト研究で新生骨形成の促進効果が示唆されてきた。歯周病の垂直性骨欠損への応用では、DFDBA単独で骨充填率の向上と臨床付着の改善が得られたとの報告もある。また、OraGraftのDFDBA製品は顆粒だけでなくペースト状・シート状のバリエーションがあり、使い勝手に応じて選べる。特にペースト状のもの(例:OraGraft Putty)はコラゲナーゼ処理骨を生理的溶液で練った練成材で、患部に充填しやすく、他の骨材や血液と混ぜても扱いやすい。臨床上は、「骨を作る薬」を埋め込むような感覚で、難治部位に追加すると骨再生を底上げできる可能性がある。さらに同種骨なので、最終的に異物が残らず骨組織が自家骨に近づく点も長所だ。

臨床的な弱み

OraGraft DFDBAの弱みは、骨誘導能に個体差が大きい点である。ドナーによってBMP含有量はまちまちで、高い誘導能を示すロットもあれば効果の乏しいロットもあり得る。これは臨床医側からは制御不能な要素であり、いわば宝くじ的な側面がある。またDFDBAは無機成分がほぼ除去されて柔らかくなっているため、足場としての機械的強度が低い。単独で入れても形態を維持しにくく、大きな欠損には不向きである。実際、DFDBA単独ではボリューム確保が難しいため、吸収性HAや非吸収性HAと混合して使う方法が推奨されることも多い。コラーゲン様の基質であるため、術後早期に一部が軟組織へ置換してしまうケースもある。加えて、感染リスクは極めて低いものの生体由来マトリックスゆえの抗原性はゼロではなく、まれに異物反応的な炎症を示す可能性が指摘されている。取り扱いにも注意が必要で、乾燥状態では軽く脆いため、開封〜湿潤の手順を誤ると材料損失につながる。また、供給面ではPuros同様、国内での正式流通は限られており、必要量の確保に計画性が求められる。

経営的視点

OraGraft DFDBAはニッチな材料ではあるが、特定分野での大きな差別化要因となる。特に重度歯周病の再生治療を自費で提供するような医院では、「同種骨由来の再生誘導材を使用した最新の治療」として付加価値を高められる。治療費に数万円程度上乗せする形で導入しても、画期的な材料と説明すれば患者は納得しやすい。患者側も「自分の歯を残すために他人の骨を使ってでも治したい」というケースでは受容性が高く、その需要に応えることで高額自費治療の成約につながる。また、一般的に難しいとされる垂直性骨欠損の改善などで成果を出せれば、症例発表や口コミによる医院の評価アップにも貢献するだろう。費用面では海外輸入品のため割高だが、少量で広範囲に効果を及ぼす可能性があり、ROIは決して低くない。仮に数万円分の材料投入で歯周組織再生が成功し抜歯を回避できれば、患者にとってはインプラント費用数十万円を節約できたことになり、大きな満足を得られる。そうした成功体験の積み重ねは医院の信頼残高を高め、結果的に紹介患者やリピーター増加という形で長期の収益向上につながる。

こんな歯科医師におすすめ

OraGraft DFDBAは「歯周再生や難治ケースでワンランク上の結果を出したい」と願う歯周治療・再生治療に熱心な先生に向いている。具体的には、エムドゲインやGTR膜と併用して少しでも予後を良くしたい専門医や、重度歯周病患者の歯を可能な限り残すことに使命感を持つ歯科医師だ。言うなれば研究熱心で新しいエビデンスを即実践に移したいタイプに刺さる材料である。一方、オペの煩雑さやコスト増を嫌う医院には無理に勧めるものではない。患者説明も高度になるため、ゆとりのない診療スタイルでは扱いきれない可能性がある。限られた症例であっても「ここぞ」という場面で切り札として投入し、成果を出せる先生なら、OraGraftは臨床家冥利に尽きる結果をもたらしてくれるだろう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 異種骨や同種骨の骨補填材を使って感染症にかかる心配はないのか?
A1. 現在流通している骨補填材は極めて厳格な安全管理のもと製造されており、ウイルスや細菌の感染症リスクは非常に低い。実際、歯科領域で市販品による感染症報告はほとんど皆無である。ただし理論上リスクゼロと断言はできないため、使用時には由来や処理方法を十分に確認し、患者にもその旨を説明する。適切に管理された製品を正しく使えば、感染症を過度に心配する必要はない。

Q2. 骨補填材を入れた部位はどのくらいで自分の骨に置き換わるのか?
A2. 材料や症例によって異なるが、吸収性の同種骨材料であれば4〜6ヶ月程度で相当部分が自家骨に置換されることが多い。非吸収性の異種骨材料では数年〜長期にわたり粒子が残存し続けることがある。ただし残存粒子は周囲にしっかり骨ができていれば問題なく、インプラント埋入は通常6〜9ヶ月程度で可能となる。要は材料の種類でスピードが違い、同種骨は早め、異種骨はゆっくりと覚えておくとよい。

Q3. 骨補填材を使用する際、やはり自家骨(患者自身の骨)も混ぜた方がいいのか?
A3. ケースによる。自家骨には生きた細胞や豊富な成長因子が含まれ、骨形成の「エンジン」となるため、難易度の高い骨造成では併用が望ましい場合がある。例えば大幅な垂直増骨では、自家骨チップと異種骨顆粒を3:7ほどの割合で混合すると骨充填量と骨質のバランスが取れると言われる。ただ小規模な欠損や患者負担を抑えたい場合は、市販骨材単独でも十分成果が出る。自家骨採取は追加の侵襲とコストを伴うため、その労力に見合うケースかを見極めて判断するとよい。

Q4. 骨補填材は健康保険で使えるのか? 自費診療でしか使用できないのでは?
A4. 一部の材料は保険適用が可能である。例えば国産のBonejectは「人工骨(非吸収性)」として特定保険医療材料に収載されており、歯周外科処置など一定の条件下で保険算定できる。ただしインプラントやGBRといった保険外の処置では、使用する骨補填材も当然保険外(自費)扱いになる。また輸入のBio-OssやPurosなどは保険適用材料ではないため、自費診療での使用に限られる。要は保険で使えるのはごく限られた材料と場面のみであり、大半の骨造成は自費診療になると考えておいた方がよい。

Q5. 将来的に骨補填材を入れた部分に問題が生じることはないのか?
A5. 適切に骨造成が成功すれば、長期的にも大きな問題が起こることは稀である。非吸収性材料を入れた部位では、何年経ってもレントゲンに粒子の陰影が映ることがあるが、それ自体は異常ではなく当初の骨ボリュームが維持されている証拠だ。ただし、まれにインプラント周囲炎などで感染が起こった際、残存粒子が異物となって炎症を助長する可能性はある。その場合は粒子を除去してデブリードマンする処置が必要になる。総じて、適切なメンテナンスと口腔衛生管理をしていれば長期予後は良好であり、過度に心配する必要はない。万一トラブルが生じても対処法は確立しているので、主治医と相談しながら経過を見守ればよい。