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コアフロント「サージボーン」レビュー!ピエゾ振動と軟組織への安全性は?

コアフロント「サージボーン」レビュー!ピエゾ振動と軟組織への安全性は?

最終更新日

製品の概要

サージボーンは正式には「歯科用多目的超音波治療機器」と呼ばれる歯科用デバイスである。販売元はコアフロント、製造元はイタリアのSilfradent s.r.l.であり、医療機器承認番号は22300BZX00102000である。上顎洞底挙上術などの軟組織近接領域での骨切削を念頭に設計されており、周辺組織への影響を抑えた選択的な切削が期待される機器である。

想定される適用領域は、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)、ソケットリフト、リッジエクスパンション、ブロックボーン採取など、骨切削を伴う口腔外科的処置である。標準チップは複数の形状が用意されており、内部注水型でオートクレーブ滅菌に対応しているため、外科領域での使いやすさを考慮した構成となっている。適応および禁忌の詳細は添付文書に従う必要があり、特定症例への使用可否や術中の取り扱いについては必ず添付文書とメーカーの指示を確認することが重要である。

セット構成は本体、ハンドピース、フットスイッチ、トルクレンチ、滅菌ケースなどが含まれるのが基本である。標準チップ一式は内部注水でオートクレーブ対応のほか、形状の使い分けにより処置用途に応じた選択が可能である。価格帯は本体が概ね110万円台、標準チップ一式が10万円台が目安であるが、流通経路やオプション、保守サービスの有無によって変動するため、導入を検討する際は見積の取得と販売元によるデモやトレーニングの確認が前提となる。保守点検や消耗品の交換に関する詳細もメーカーの指示に従って運用することが推奨される。

主要スペックと臨床的意味

サージボーンのコアはピエゾ素子を6枚搭載したハンドピースを中心とする骨切削用超音波装置である。従来の歯科用超音波スケーラーと異なり、骨に最適化された周波数帯で駆動する設計となっており、硬組織にエネルギーを集中させることによって軟組織への影響を相対的に小さく抑えることを狙っている。この選択性は、微小侵襲手技や隣接軟組織が近接する部位での安全性向上に寄与する。

実臨床では機械的特性だけでなくチップ形状や術者の操作挙動が結果に大きく影響するため、スペックを理解した上で適切なチップ選択と操作習熟が求められる。装置単体の出力や振幅が高くても、不適切な当て方や過度のストロークは周囲組織へのリスクを高めうるため、安全域を確保する操作指針が重要である。

周波数と振幅

公表されている周波数は25〜35kHz、最大振幅は200µmである。この周波数帯は骨に対する実効的な切削効率と軟組織保護のバランスを意図して設定されている。周波数が高いほど軟組織への作用は減少する傾向があり、逆に振幅が大きいほど切削力は増すため、両者の兼ね合いで安全性と効率性を両立している。

最大振幅200µmは皮質骨の切削開始を支援する十分なストロークを与えるが、実際の切削感はチップ形状や接触角、面圧によって大きく左右される。したがって術者はストロークを不必要に大きくせず、面圧を一定に保ちながらチップを安定して当てることが推奨される。振幅や周波数の特性を理解することで、難易度の高い部位でも効率的かつ安全な骨形態修正が可能となる。

冷却と連続使用

循環水量は0〜50mL/minで調整でき、3時間を超える連続使用が可能とされる。注水は削り熱の発生を抑え、骨壊死のリスクを低減するために不可欠である。特に上顎洞や薄い骨膜に近い操作では、過剰な水圧が膜に負荷をかけないように低流量から立ち上げ、必要に応じて徐々に増やす運用が安全である。

ハンドピース内の素子を6枚構成にしたことは発熱分散に寄与し、長時間の連続的な手術でも温度上昇を抑えやすい。とはいえ長時間使用時には定期的なインターバルや水路の詰まり確認、吸引との併用による視野確保を行い、術野の温度管理と周囲組織保護を徹底することが望ましい。

筐体と設置要件

本体サイズはW340×D266×H170mm、重量は4.9kg、電源はAC100Vで定格170VAと比較的コンパクトで持ち運びや設置自由度が高い。ユニット一体型ではない独立筐体であるため、既存の歯科ユニットメーカーに依存せず導入できる点が利点である。ただし設置場所では給水経路と排水、足元のフットスイッチ配線を含めた動線を確保する必要がある。

オペ室での使用や汎用チェアでの運用は可能であるが、安定した設置面と簡易なメンテナンスアクセスが確保されていることが重要である。また電源容量や感染対策の観点から周辺機器との併用条件を事前に確認し、滅菌・洗浄のためのスペースも確保しておくことが運用上の安全性向上につながる。

付属品と操作系

フットスイッチはパワーのオンオフや手元集中操作を支援し、手術中の効率を高める。トルクレンチはチップの締結力を再現し、毎回同一の締結トルクを維持することで切削感のバラつきを減らす役割を果たす。チップは内部注水式であり、滅菌はオートクレーブ対応であるため感染管理面での整合性が取れている。

再現性の高い締結と一貫した滅菌手順は術者間での操作差を小さくし、予測可能な切削結果を実現する。日常のメンテナンスとしてはチップ接合部の清掃とトルク管理、注水路の定期的洗浄を怠らないことが重要である。必要に応じて消耗部品や専用アクセサリの交換サイクルを計画し、機器性能を安定して維持することが推奨される。

互換性と運用要件

サージボーンはSB表記の専用チップラインナップを備え、各形状ごとに切開、剥離、骨切削、開窓などの役割が整理されている。全品オートクレーブ対応で、内部注水が標準となる設計であるため、滅菌と同時にチップ内部の洗浄と注水経路の管理が求められる。他社システムのチップとはねじ規格や共振特性が異なるため、安易な流用は推奨されない。公開情報に基づく互換性の保証は明確ではないため、原則としてサージボーン用チップを用いることが推奨される。

チップの互換性と推奨使用

チップは形状ごとに役割が明確化されているため、用途に応じたチップ選定が治療効率と安全性に直結する。例えば骨切削用と剥離用では刃先形状や剛性が異なり、誤ったチップの使用は切削効率の低下やチップ破損、さらには患者への不要なダメージをもたらす可能性がある。メーカーが指定するSB表記のチップを用いることで、製品設計上の共振特性や取り付け強度が確保される。

他社製チップを使用する際は、ねじピッチや埋め込み長、質量配分などが適合することを確認しなければならない。しかし、公開情報のみでは細部の一致が確認できないことが多く、互換を謳う情報であっても動作保証や安全性の観点から十分とは言えない。臨床現場では、メーカー推奨の組合せを守ることが事故防止に最も有効である。

滅菌・注水・取り扱い上の注意

全品オートクレーブ対応であるものの、注水路の扱いには注意が必要である。注水路は血液や骨粉、組織液によって閉塞しやすく、オペ終了直後の洗浄と乾燥をルーチン化しないと内部閉塞や腐敗の原因になる。洗浄は速やかに行い、可視的な汚れが残らないことを確認したうえで滅菌工程に入れることが望ましい。

ハンドピースやチップは落下衝撃に弱いため、滅菌トレー内での固定方法と搬送手順を明確化することが重要である。特にチップの取り付け・取り外し時にはトルク管理や取り扱い方向を守ることでねじ部や先端の損傷を防げる。製品ごとの取り扱いマニュアルに従い、破損リスクを低減する運用を定着させるべきである。

日常点検と消耗品管理

日常点検は運用の要であり、定期的なチェックリストを作成して習慣化することが推奨される。注水経路の通水確認、チップの摩耗・欠損の確認、ねじ部の締め付け状態、外観のひび割れや変形の有無などを項目化して記録することで、早期に異常を発見できる。消耗品は予備を用意し、使用期限や滅菌回数の管理も行うべきである。

具体的な日常点検項目としては、以下のような点を定期的に確認するとよい。 ・注水の流れと噴出口の詰まりの有無

・チップ先端の摩耗や変形

・ねじ部の損傷や緩み

・ハンドピース本体の外観およびコネクタ部の接触不良

これらを習慣化することで、オペ時のトラブルを未然に防止し、機器寿命を延ばすことができる。

校正と異常時の対応

機器の校正はメーカーやサービス体制に従って定期的に実施することが基本である。振動特性や出力特性の変化は性能低下や安全性の問題に直結するため、点検周期を守ることが重要だ。外部サービスを利用する場合は、認定された技術者による点検・校正を依頼することが推奨される。

使用中に異常振動や過度の発熱を感じた場合は、直ちに使用を中止して点検に回すこと。無理に使用を続けるとチップ破損やハンドピースの故障、さらには患者損傷につながる恐れがある。異常発生時は記録を残し、発生状況や使用条件を添えてメーカーサービスへ報告し、適切な対応を受けることが安全運用につながる。

サージボーンと上顎洞底拳上術の実際

サージボーンは骨組織に選択的にエネルギーを伝えるため、上顎洞底拳上術において膜(シュナイダー膜)近傍の骨壁開削や窩底形成で有利に働く。従来のソーやバーに比べ術者の微小な手ブレが軟組織損傷に直結しにくく、膜と接する骨面のデリケートな剥離や最終的な薄化処理で良好な手応えを得やすい。振動特性や切削機序の違いにより、膜に対する直接的な切創リスクが低減される一方で、術者は器具の特性を理解した上で用いなければならない。

一方でサージボーンは万能ではない。皮質骨が厚く硬い症例では切削効率が落ち、手術時間が延びやすい。実際の臨床では窩形成の初期段階をエンジンやバーで効率的に行い、膜近傍の最終調整にサージボーンを切り替えるハイブリッドな運用が現実的である。また注水管理は慎重を要する。注水は最初は低流量で開始し、膜に水圧がかからない範囲で視野を確保する。過剰な圧力は膜損傷につながるため避けるべきであり、切削中の温度管理と視野維持のバランスが重要である。

手技面ではチップ先端を押し込むように用いるのではなく、擦過とスイープを意識して切削面を育てることが膜破綻回避に直結する。術中の確認方法としては窩底が薄くなった段階で慎重に触診し、バルサルバテストや生理食塩水充填によるリークチェックを行う。万一膜穿孔が生じた場合は大きさや位置に応じて粘膜縫合、コラーゲン膜などの封鎖材使用、あるいは一時的に手技を中断して処置を行うなどの対処が必要である。器械選択、切削方向、力のコントロール、注水量の調整を総合的に管理することで安全性と効率を両立できる。

実臨床でのポイント ・初期の骨除去は効率を優先してエンジンやバーを用い、膜近傍のファイナルワークはサージボーンに切り替える。

・注水は低流量から開始し、視野確保と膜への水圧回避のバランスを保つ。

・チップは押し込まずに擦過・スイープで用い、切削面を徐々に整形する。

・皮質骨が著しく硬い場合は時間短縮のために器械の併用を検討する一方、過度の熱発生に注意する。

・膜の完整性は触診と生理食塩水でのリークチェックで随時確認し、穿孔時には縫合や被覆材で速やかに対応する。

これらの実践により、サージボーンの利点を活かしつつ上顎洞底拳上術の安全性と予後を高めることが期待される。技術習熟と状況に応じた器械選択が最終的な成否を左右する点を忘れてはならない。

経営インパクトとROI試算

サージボーン導入の経営的価値は、保険加算による直接的な増収と、自費診療におけるリスク管理や無形効果によるコスト回避の両面で評価できる。令和6年の点数表では超音波切削機器加算が1,000点であり、J069・J075・J075-2に掲げる手術で算定可能であることから、算定要件を満たすケースが一定数ある医院では即効性のある収益源となる。ただし算定要件は告示および実地審査に従う必要があり、導入前に事務手続きや記録管理の整備が不可欠である。

前提と算出モデルを明確にした上で、実際の回収シミュレーションを行うことが重要である。導入にかかる代表的な費用は本体約111.5万円、標準チップ一式約10.6万円であり、初期投資は合計で約122.1万円程度になる。超音波切削機器加算による1症例あたりの増収を1万円と単純化すると、本体相当分の単純回収ラインは約112症例前後である。初期投資全額を回収する場合は約122症例が必要になる計算である。

収益・費用の構成と計算式

増収と費用を明確にすることで投資対効果が見えやすくなる。代表的な式は次のとおりである。

加算による増収合計 = 対象手術件数 × 1万円
可変費合計 = チップ費用 ÷ チップ耐用症例数 × 使用本数 + 滅菌関連費
固定費年額 = 本体価格 ÷ 償却年数 + 年間保守費
営業利益差 = 増収合計 − 可変費合計 − 固定費年額

各項目は医院ごとに幅があるため、以下の要素を必ず院内データで設定してから計算することが重要である。チップの耐用症例数、1症例あたりの滅菌コスト、想定する償却年数、年間保守費、そして実際に算定できる対象手術件数である。

収支シミュレーションの例(想定ケース)

例えばチップ費用が106,000円で、チップ1本あたりの耐用が200症例、滅菌関連費を1症例あたり500円と仮定すると、可変費はおおむね次の水準になる。チップ費用換算が約530円、滅菌費500円を加えると1症例あたりの可変費は約1,030円程度である。1症例あたりの増収を10,000円とすると、1症例あたりの粗利は約8,970円になる。

固定費は本体111.5万円を5年償却とし、年間保守費を本体価格の5%程度と見積もると、年間固定費はおおむね28万円前後になる。年間粗利で固定費を回収するためには、単純計算で約31症例前後が必要である。初期投資全額(約122.1万円)を単純回収する場合は1万円/症例で約122症例、年間運用で回収年数を短縮したければ年間対象症例数の増加が重要である。

以上は一例であり、チップ耐用や滅菌費、算定できる症例割合が変われば結果は大きく変動するため、複数シナリオで感度分析を行うことを勧める。

リスク管理と無形価値の定量化

自費中心の医院では膜破綻や神経血管損傷といった重篤な合併症の発生を抑制することが、直接のリカバリーコスト削減につながる。再処置による損失や患者の信用低下による紹介減少を金額換算することは難しいが、導入前後での再治療率低下や術後合併症発生率の差を金額換算すると無形効果をある程度定量化できる。チェアタイム短縮による診療効率改善も1日当たりの症例数増加や残業削減として換算可能である。

評価のために導入前後で必ず追跡すべきKPIは次のとおりである。平均オペ時間、1症例あたりの可変コスト、再処置率、術後合併症率、算定可能な加算の件数、紹介件数の推移である。これらを定期的に可視化することで、投資対効果の実態が把握でき、必要に応じて運用方針や保守体制を見直す根拠を得られる。

導入判断においては、保険算定要件の遵守と実地審査への備えを優先しつつ、院内データを用いた複数シナリオのROI試算を行うことが最も確実である。初期投資の回収見込みだけでなく、再治療抑制や患者満足度向上といった長期的な無形効果も評価に含めるべきである。

使いこなしのポイント

導入初期には術者ごとに切削感覚に差が出やすいため、共通言語をつくることが重要である。症例の難易度を軽度・中等度・高度などに刻み、それぞれに対するチップ選択やパワーステップ、注水量、当て方をテンプレート化して記録することで再現性が高まる。術例ごとに術者名と日付も併記すれば、個々の習熟度や傾向を追跡でき、チーム内でのフィードバックが容易になる。

手技面ではハンドピースの把持をペングリップとし、面圧はできるだけ軽く保つことが基本である。ストロークは短く刻むように操作すると切削効率と感覚の保持に優れる。押し当てる力をかけ過ぎると切れ味が落ち、摩擦による発熱が生じやすくなり、軟組織選択性という本来の利点を損なうため注意が必要である。短い往復動作を繰り返し、停滞や過度の押し込みを避けることで安全性と精度が向上する。

膜や薄い組織に近い処置では先端幅の細いチップへ交換し、刃先を寝かせた角度で擦過するように当てると損傷リスクを下げられる。面圧を抑えつつ刃先の接触面積を小さくすることで、局所的な熱蓄積を抑えながら繊細な切削が可能になる。術中に切削音や抵抗感が普段と異なると感じた場合は、直ちに当て方や注水量を見直し、必要ならチップ交換や設定の微調整を行うことが望ましい。

術後の保全も装置性能の一部である。手術直後に注水路を十分に通水して血液や組織片を洗い流し、乾燥工程を経てから滅菌工程へ回すことで内部汚染を防げる。チップ座面に付着した油脂や汚れは締結不良や偏心の原因となるため、締結前にアルコールなどで確実に除去しておくことが重要だ。定常的に観察すべき兆候としては、設定パワーが出ない、異常な発熱、切削音の乱れや振動の増加などがあり、これらを早期に発見したら点検やサービスにつなげることで故障や術中事故を未然に防げる。

適応と適さないケース

ピエゾサージェリーのような超音波骨切削は、上顎洞底挙上術や下歯槽神経に近接する埋伏歯の抜歯、歯槽堤拡大やコルチコトミーなど、軟組織や神経・粘膜に近い部位で特に有用である。超音波振動により硬組織を選択的に切削し、軟組織を損なうリスクを低減できるため、上顎洞粘膜の穿孔リスク抑制や神経損傷回避が重要な場面で価値を発揮する。また出血が比較的少なく術野の視認性が向上するため、精密な処置や低侵襲を求められる外科処置に適している。

一方で、厚い皮質骨を大量に除去するようなケースや、時間的余裕がない救急的対応では回転器具に軍配が上がる。回転切削器具は切削速度と材料除去能が高く、広範囲かつ短時間での骨除去が必要な場面に適しているためだ。さらに歯冠や金属材料の切断、金属を相手にした加工的な用途はピエゾ系では不向きであり、クラウンやスクリュー、インプラント本体の切断には通常の切削器やソーを用いるべきである。

臨床的には両者を使い分けたり併用するのが現実的である。まず回転器具で大まかな骨量を除去し、神経や粘膜に近づいたらピエゾで仕上げるといったハイブリッドな手法が安全性と効率を両立させる。機器の選択には術者の熟練度、手術時間、機材のコストや入手性も影響するため、術前の計画段階で適用範囲と限界を検討し、必要なら装置特性や患者状態を踏まえた適応判断を行うことが重要である。

導入判断の指針

診療タイプ別の検討ポイント

保険診療が中心で効率を最優先する医院では、導入効果は年間の対象手術件数に左右される。対象手術が少ない場合は初期投資の回収が遅くなりやすいが、該当手術に対する加算が適用できる場合は明確な増収源となる。特に難症例が集中する地域では、加算の採算性が高まり導入の有効性も増すため、地域の症例構成を事前に確認することが重要である。

自費診療や高付加価値サービスを志向する医院では、合併症対応に要する時間短縮と評判リスクの低減が導入の主な動機となる。自費患者は治療の快適性や安全性を重視するため、機器導入による説明根拠や差別化が募集・価格設定の合理化につながる。口腔外科やインプラントを中心に診療を行う医院では、回転器具とピエゾの併用設計が現場の手技に合致しやすい。術式ごとに器具の役割を明確に分担させれば、全体としての診療効率と安全性が向上する。

教育設計と運用体制

どの診療タイプでも導入成否の鍵は教育設計にある。指導医による定期的なケースレビューを導入し、実際の術中映像や手技の振り返りを行うことで、個々のスタッフが機器操作と術式の最適化を習得できる。加えて、チップごとに標準化したプロトコルを作成し、どの状況でどのチップを使用するかを明文化しておくことが定着を早める。

デバイス管理の責任者を明確に設定することも不可欠である。管理者は機器の保守スケジュール、消耗品の在庫管理、滅菌・消毒手順の遵守状況を監督し、トラブル時の一次対応を担う。教育と管理の両輪が回ることで、導入初期に起こりがちな手技の属人化や管理ミスを防ぎ、安定した運用に移行できる。

導入プロセスと評価指標

導入は段階的に進めるのが現実的である。まず院内外のニーズを把握するための現状分析を行い、次に限定的なパイロット運用で実務負荷や患者の受容度を検証する。パイロット期間中は術時間、合併症発生率、加算適用件数、機器稼働率といった定量的な指標を継続的に記録し、目標値に対する乖離を評価する。

最終的に導入可否を判断する際は、設備の耐用年数と償却計画も踏まえる必要がある。設備投資の回収見込みは症例数だけでなく、保守費用、消耗品コスト、スタッフ教育の負担も加味して算定すること。運用が軌道に乗った後も定期的にレビューを行い、必要に応じてプロトコル改訂や追加教育を実施することで、長期的な費用対効果を確保する。

指導医によるケースレビュー、チップごとの定型プロトコル、デバイス管理の責任者設定の三点は、院内での定着を加速する最も重要な対策である。これらを実行計画に組み込み、段階的に評価と改善を繰り返すことで、導入投資の最大化と患者安全の両立が可能となる。

よくある質問

Q 保険算定はすべての骨手術で可能か

保険算定については、歯科用超音波切削機器加算はJ069、J075、J075-2に掲げる手術が対象である点をまず確認すべきである。これらはあらかじめ定められた手技や適用範囲に基づくものであり、すべての骨手術が自動的に該当するわけではない。各症例が該当するかどうかは、術式の適否や器材使用の理由付けが必要である。

告示と実地審査の間には解釈の差が生じ得るため、施設内での算定ルールを明確にしておくことが重要である。保険請求を行う前に、症例ごとに算定要件を確認し、適用根拠となる所見や手術記録、使用機器の型番・設定等を文書化しておくと審査対応が容易になる。不明点がある場合は、地域の保険者や専門学会、機器メーカーへ事前確認を行うことを推奨する。

実務としては、術前カンファレンスで使用適応を明確にし、オペ記録や術中写真、術後経過の記載を徹底することが審査に対する備えとなる。万一指摘を受けた際に備え、内部監査や定期的な算定ルールの見直しを実施しておくとよい。

Q チップは他社機と共用できるか

チップの共用については慎重を要する。ねじ規格や共振条件、チップとハンドピース間の固定方式が機器ごとに異なるため、公開情報だけでは安全な互換性を保証できない。特に超音波切削では共振特性が性能と安全性に直結するため、異なる設計の機器で使用すると振動伝達が不適切になり、破損や過熱、切削能率の低下を招く可能性がある。

多くのメーカーは自社機種専用のチップ使用を前提に設計・検査を行っており、サージボーンのような機種でも専用チップの使用が原則である。どうしても他社チップの使用を検討する場合は、メーカーの適合表や技術資料を確認し、実機での適合試験と専門家による評価を経ることが必要である。使用前にメーカーに問い合わせ、保証や保守対応の可否を確認することが安全面・法的観点からも望ましい。

現場運用では、機器寿命やトラブル発生時の責任所在を明確にするため、可能な限りメーカー推奨の消耗品を用いる運用規程を設けることが推奨される。

Q 滅菌や保守の負荷はどうか

チップは基本的にオートクレーブに対応している設計が多く、日常的な滅菌工程は既存の滅菌ワークフローに組み込めることが一般的である。術直後に注水路の洗浄と十分な乾燥を行えば、滅菌負荷は過度にならず日常業務の範囲で運用可能である。ただしチップや接続部の材質・構造によっては滅菌回数に制限がある場合があるため、取扱説明書に従った管理が必要である。

異常振動や発熱、チップの摩耗が見られる場合は速やかに使用を中止し点検に回すことが求められる。定期点検では手元ハンドピースの締結部や電気配線、注水系の閉塞、シール部の劣化を確認し、問題があれば交換や修理を行うことが安全管理上重要である。交換頻度やメンテナンス周期は使用頻度や手術の種類によって変わるため、施設ごとに記録を残して傾向を把握するとよい。

また滅菌ログやメンテ記録を電子的または紙で体系的に保存しておくと、臨床監査や設備トラブルの際に迅速な対応が可能である。メーカーの保守契約を結び、定期的な校正や点検を受けることも安全で安定した運用につながる。

Q 歯科ユニットとの接続要件はあるか

多くの超音波切削装置は独立した電源駆動を前提としており、歯科ユニット本体への特別な依存性は低い。ただし据え置き型のコントロールユニットやハンドピースの配線・スペースの確保が必要であり、設置場所の電源容量や接地、周辺機器との干渉を事前に確認しておく必要がある。施設内の電気安全基準や医療機器設置基準に従って配置を決めることが重要である。

給水はボトル方式やユニット給水との接続が可能な仕様があるため、導入前に給水経路とボトル運用の導線を確認しておくとよい。ユニットとの物理的な干渉や操作導線が悪いと手術効率が低下するため、実際のオペ動線を想定したレイアウト検討を行う。場合によっては小改装や専用台の設置が必要になることもある。

導入時にはメーカーによる立会い設置や操作トレーニングを受け、電気・水道設備のチェックリストを用いて安全確認を行うことを推奨する。既存ユニットとの併用方法や非常時の停止手順をスタッフ全員で共有しておくとトラブル時の対応が迅速になる。

Q 切削速度が遅いと感じる

切削速度が遅く感じられる原因は複数ある。面圧が過度にかかっている場合、超音波の振幅が十分に伝わらず効率が落ちるため、力任せに押し込むのではなく軽いタッチで滑らかに動かす技術が求められる。またチップの形状や材質、サイズが対象骨や目的に合っていないと切削効率が低下することがあるため、適切なチップ選択を見直すことが有効である。

骨の部位や硬さによっては回転器具と併用するハイブリッドな運用が合理的である。例えば皮質骨の立ち上がりや厚い骨で回転切削を用い、膜近傍や微細な骨切りは超音波に切り替えると全体の手術時間を短縮しつつ安全性を確保できる。装置の出力設定や注水量、チップの摩耗状態も速度に影響するため、メーカー推奨の設定を基に調整し、定期的にチップの摩耗を確認することが重要である。

術者の慣れも大きな要因であるため、シミュレーションやハンズオンで適切な操作圧と動き方を習得することを勧める。必要に応じてメーカーの技術指導や同業者の症例共有を活用し、最適な器具選択と操作方法を確立するとよい。