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ナカニシ「VarioSurg 4」レビュー!Surgic Pro2とのワイヤレス接続なども解説!

ナカニシ「VarioSurg 4」レビュー!Surgic Pro2とのワイヤレス接続なども解説!

最終更新日

抜歯窩縁の鋭利な段差を整える場面や、サイナスフロア直上に残る薄い皮質骨を安全に切除しなければならない局面は臨床で頻繁に遭遇する。バーによる切削では熱と振動が問題となり、組織損傷や患者の不快感を招きやすい。一方でマイクロソーは切削精度や骨片管理に優れる反面、視野確保や取り回しの面で負担となることがある。こうした中間領域を埋める手段として超音波ボーンサージェリーは有力な選択肢であり、選択的に硬組織を削る特性とソフトティッシュの保護という利点を持つ。

ナカニシのVarioSurg 4は、臨床での再現性と運用性を重視した設計を特徴とする製品であるとされる。超音波振動を利用することにより熱の蓄積を抑えつつ振動を最小化し、微細なコントロールで薄い骨板の切開や抜歯窩縁の整形が行いやすい点が注目されている。術野の視認性を保ちながら繊細な操作を要求されるケースに対して、従来のバーやマイクロソーの利点と欠点を補完する役割を果たし得る。

さらに、Surgic Pro2とのワイヤレス連携を軸にした運用は、臨床的・経営的両面での利便性向上が期待できる。ケーブル類による視野の邪魔を減らし器材間の切替をスムーズにすることで手術効率が上がり、術者の集中力維持に寄与する可能性がある。導入を検討する際は、初期投資や消耗品、メンテナンス体制、スタッフ教育の負担も含めた総合的な費用対効果を評価することが重要である。実際の院内運用に即したデモやトライアル、メーカーや代理店によるサポート体制の確認を推奨する。

製品の概要

正式名称と薬事情報

正式名称はバリオサージ 4であり、一般的名称は電動式骨手術器械である。薬事上の区分は管理医療機器および特定保守管理医療機器に該当し、医療機器認証番号は307ABBZX00004000である。禁忌や使用上の注意は添付文書の最新版で確認する必要がある。

機器は医療機器に関する法規や施設基準に従って使用・保守されなければならない。定期点検や消耗部品の交換、滅菌操作などは添付文書および販売元の指示に従い、施設内の管理体制を整えて運用することが求められる。付属品や専用チップが別途認証を要する場合があるため、導入時には適合確認を行うことが重要である。

ラインナップと型番

標準セットは「VarioSurg 4 w/o FC 100V」で、型番はY1500708である。名称にあるとおりフットコントロールは標準に含まれておらず、無線タイプがFC‑86、有線タイプがFC‑78として別売で提供されている。チェーンアップや機器配置を容易にするリンクスタンド3(製品番号ZA16230001)も用意され、Surgic Pro2との上下安全積載が可能である。

可搬用のキャリングオプションやカート設置用アクセサリなどもラインアップされているが、価格や在庫状況は販売店経由での確認が必要である。導入を検討する際には、使用環境の電源仕様(標準セットは100V表記)やフットコントロールの有線/無線の選択、対応チップの種類と交換性などを事前に確認するとよい。

用途と適応の範囲

本機は骨切り、骨切除、骨整形、骨採取といった外科的な骨操作に加え、サイナスフロアリフトの側方および歯槽頂アプローチ、粘膜剥離、抜歯やインプラント除去、窩洞前処置、逆根管充填窩洞形成、さらにスケーリングやルートプレーニングなどの歯周処置に至るまで幅広い用途に用いられる。各処置においては使用チップの形状や材質、回転や出力設定の選択が処置結果に影響する。

適応の最終判断は術者の経験、患者の解剖学的条件、周辺組織の状態に基づいて行う必要がある。特にサイナスリフトやインプラント周囲の操作では粘膜や神経血管の保護が重要であり、適切なトレーニングと術前計画が不可欠である。安全に使用するため、添付文書に示された禁忌や注意事項、推奨される使用方法を遵守し、必要に応じてメーカーや販売代理店に問い合わせて機器やチップの適合性を確認することが望ましい。

Surgic Pro2とのワイヤレス連携の実像

接続要件とフットコントロール

VarioSurg 4とSurgic Pro2はBluetoothを用いたワイヤレス接続に対応しており、1台のフットコントロールで両機を切り替えて操作できる設計である。臨床現場での運用はSurgic Pro2側のフットコントロールを用いる想定が基本となるため、まずはSurgic Pro2とペダルの安定したペアリングを確立することが重要である。無線フットコントロールはIPX8相当の耐水性能を備えており、術野での水濡れや清拭に対する耐性が高く、軽量化により位置変更や取り回しが容易である。

物理的なケーブルが不要になることで、配線に起因する偶発的な踏み替えや引っ掛かりが減少するという利点がある。ただし無線化に伴い電波環境やバッテリー残量が操作性に影響を及ぼす可能性があるため、術前の点検項目にペダルのバッテリー確認や接続テストを組み込むことが望ましい。重要な操作を行う局面では有線のバックアップ手段を用意しておくことで、万一の通信トラブル時にも迅速に対応できる。

臨床ワークフローへの効果

インプラント窩形成と骨の微調整を同一視野で往復する場面では、フットペダルの操作だけでモーターと超音波を切り替えられるため、術者の姿勢や視線の乱れが少なくなる。これにより手元での工具交換回数を減らし、術中の時間効率と集中度を高められる。フットスイッチの操作が一貫することでアシスタントとの動作連携も取りやすくなり、注水や吸引との同期がスムーズになるという実務上の利点がある。

Surgic Pro2はiPadアプリと連携して回転数やトルク、さらにOsseo 100+を介したISQ値を保存できるため、術中のパラメータを患者データと紐付けて記録することが可能である。これにより術後説明や経時的評価の根拠を残しやすく、臨床記録の標準化にも寄与する。一方で超音波装置側の個別パラメータのログはVarioSurg 4側で管理されるため、両者のログを統合して運用するプロトコルを事前に定めておくことが重要である。

導入でつまずきやすい点

初回セットアップではユニットとフットコントロール、さらに機器間リンクを同時に進めると設定が交差しやすく混乱が生じる。実務上はまずSurgic Pro2とフットコントロールのペアリングを完了させ、その後にVarioSurg 4とSurgic Pro2をリンクさせる順で進めると安定しやすい。設定変更やソフトウェア更新が入った場合は、再度ペアリング手順を確認し、実際の操作で問題がないかを必ずテストすることが望ましい。

電波環境は金属家具や医療機器の配置によって変動しやすいため、ペダル位置と本体位置を決めたら術室内でテスト走行を行い、感度の落ちる死角や遅延が発生する箇所を把握しておくことが求められる。さらにバッテリー切れや通信断が発生した際の復旧手順や有線に切り替える手順をチームで共有しておくと、トラブル発生時に冷静に対処できる。導入時のトレーニングとチェックリストを整備することが、安定運用への近道である。

主要スペックと臨床的意味

発振周波数と出力制御

発振周波数は28〜32 kHzであり、皮質骨の切削に必要な刃先変位を確保しつつ軟組織への選択性を得やすい帯域である。臨床ではこの周波数帯が硬組織に対して効率よくエネルギーを伝達し、周辺粘膜や血管へのダメージを抑えやすいという評価が多い。特に顎堤の骨質が部位や患者で大きく異なる場合でも、適切な周波数帯域は切削感の安定に寄与する。

コントロールユニットはフィードバックとオートチューニング機能を備え、負荷変動に応じて出力を自動補正する設計である。これにより手元に伝わる抵抗感や切れ味の変動が小さくなり、術中の微妙なコントロールがしやすくなる。特に骨質差が大きい顎堤での連続作業においては、出力の安定化が手技の再現性向上につながる。

硬組織切削の再現性

周波数制御とチップ形状の組み合わせは切削効率と熱発生のバランスを左右する重要な要素である。同一設定でも刃先の目立てや表面処理、例えばTiNコーティングの有無によって切れ込みの立ち上がり方が変わり、結果として術者の手の入れ替え回数や切削時間に差が出ることがある。コーティングされたチップは初動の切れ味が出やすく、滑らかな切削感を得やすい傾向がある。

また、切削効率が良い=短時間で済むという単純な図式だけでなく、熱管理とのトレードオフを考慮する必要がある。刃先の鋭さや剛性が高いと局所的な摩擦熱が高まりやすいため、注水と出力のバランスを術式ごとに最適化することが再現性と安全性を高める要件である。

バーストモードの使いどころ

Surgモードにおいて3段階のバーストモードが設定されている。これは一定振動に短周期の小さな振動を重畳することでいわゆるハンマー効果を生み出し、厚い皮質骨の切り出しやノミ様のタッチを要する局面で有効である。骨を「はじく」ような感触が得られるため、力をかけずに効率よく厚い皮質を割るような手技に適している。

一方でバースト動作は刃先に瞬間的な衝撃を与えるため、過度に頼ると刃先の暴れや熱の発生につながるリスクがある。骨密度や使用するチップの剛性を考慮し、段階を限定して使うことが重要である。初回は低段階から始め、必要に応じて上げることで安定した切削感を維持できる。

注水ポンプと熱管理

最大注水量は76 mL/minである。ドライ傾向にすると骨温上昇が早くなり、過度の注水は術野の視認性低下や超音波効率の低下を招く。臨床的には厚みのある皮質骨で50 mL/min前後、海綿骨主体の整形では30 mL/min前後を目安に術式ごとにベースプロファイルを登録しておき、術中はフットペダルで微調整する運用が安全であると考えられる。

注水は単に冷却するだけでなく、切削面の洗浄や組織の視認性保持にも役立つため、流量と噴霧の角度を含めた全体設計で熱管理を行う必要がある。特に長時間の切削や高出力を用いる場面では、定期的に設定と流量を確認するプロトコルを設けると事故防止につながる。

生理食塩水運用の作法

生理食塩水の供給ラインは宙吊りチューブの屈曲やアシスタントの動きで流量が揺れやすい。流量変動は切削面の乾湿ムラを生じさせ、局所的な過熱や視野不良の原因となるため、ハンドピースの保持角や体位を変える前にアシスタントに流量確認の合図を統一しておくとよい。簡潔な合図の運用規則は術中の無駄な中断を減らす。

また、注水ラインの定期点検や接続部の確認をルーチン化することで、術中の突発的な流量低下を未然に防げる。可能であれば術前に短時間の噴霧確認を行い、期待する散布パターンと実際の流れを一致させておくことがすすめられる。

ハンドピースと視認性

LED内蔵のスーパースリムハンドピースは頬側からの深いアプローチでも光軸が術野に入りやすく、視認性の向上に寄与する。先端の細さは切削ラインの視認性を高めるだけでなく、粘膜や軟組織への接触時の当たりを柔らかくし、出血や損傷のリスクを抑える効果が期待できる。狭い空間での精密操作においては感覚的な負担を軽減する設計と言える。

長時間の操作ではハンドピースの重量とグリップ形状が指先の負荷に直結する。指先負荷が軽減されることで術中の姿勢保持が楽になり、結果として操作精度の維持や疲労によるエラー低減につながる。ハンドピースの取り回しと術者の姿勢を考慮した配置が重要である。

フットコントロールと防水性能

無線フットコントロールはIPX8相当の防水性能を有しており、術中の水滴や持ち込み消毒に対する扱いが容易である点が利点である。上部に配置された選択ボタンは任意の機能割り当てが可能であり、注水の一時停止やプログラム呼び出しを割り当てておけば手を止めずに操作を続けられる。こうした操作性は術中の流れを止めないために有用である。

有線タイプは無線に比べて遅延が少なく、電池管理を気にせずに使用できる安心感がある。どちらを選ぶかは術場の配置や滅菌・消毒フロー、使用頻度を踏まえて判断するのが良い。フットコントロールを複数所持し状況に応じて使い分ける運用も現場では見られる。

サイズと設置性

本体寸法はW245 D235 H90 mm、重量は約2.2 kgであり、設置性に優れたコンパクトなサイズである。Surgic Pro2と縦積みできるリンクスタンド3を併用するとユニット周りの占有面積を減らせ、ユニット裏の吸引ボトルや電源タップへのアクセスも向上する。狭いオペ室やモバイル使用を想定した配置に適している。

可搬ケースを用意すればオペ室と一般ユニット間の移動や機器の保護がしやすく、複数現場での横断運用が容易である。機器の接続や配置設計を術前に標準化しておくことでセッティング時間を短縮でき、術中トラブルの発生率も低下するだろう。

互換性と運用

データ連携と記録

Surgic Pro2は専用アプリで回転数やトルクの履歴を保存でき、Osseo 100+経由のISQ値も同一画面で確認できるため、インプラント埋入時の客観的データを一元管理できる。VarioSurg 4単体の切削ログは保存対象外であるため、超音波側のパラメータやチップ選択は別途記録が必要である。臨床ではユニット内メモリーに残る数値と電子カルテの記載を併用し、術後説明にはSurgic Pro2側の数値を主に提示すると説明が簡潔である。

超音波側の再現性を高めるには、チップの型番、出力設定、出力段階を写真や動画で残す運用が有効である。術式プロファイルは院内で標準化したテンプレートを作成しておくと、術者間のばらつきが減る。データ保存や連携に関しては院内の個人情報保護規程と機器ベンダーの仕様を照合し、バックアップやアクセス権限を明確にしておくことが重要である。

定期的なログレビューを実施し、インプラント成績や合併症との関連を評価することが望ましい。問題が生じた症例は遡ってパラメータや動画を確認し、プロトコール改善につなげると臨床の品質向上に寄与する。

感染対策と清掃

フットコントロールの防水等級が高い機器は、拭き上げ等の日常清掃の負荷を下げ、短時間で清潔を保ちやすくなる。ハンドピースやチューブ類の滅菌や洗浄方法は機種ごとに指定が異なるため、取扱説明書に従うことが原則である。院内では器材ごとの取り扱いフローを文書化し、滅菌方法、滅菌可能回数、消耗品交換のタイミングを現場で共有しておくべきである。

注水回路はセットアップが簡素化されている一方で、滅菌保証の観点から装着から使用までの時間管理が問題になる。院内規程で「装着後何分以内に使用するか」や「連続使用後の洗浄間隔」などを定め、滅菌負荷や感染リスクを低減する運用を導入するとよい。カバー類やディスポーザブル部材の適切な使用を徹底し、必要に応じて製造元に清掃手順やバリデーションを確認しておく。

清掃・滅菌担当者の教育と実地チェックも欠かせない。定期的な監査と記録によって運用の遵守状況を確認し、問題点があれば速やかに改善策を講じることが院内感染対策の基本である。

電源と設置

機器の電源仕様はAC100〜240V、50/60Hzに対応しているため、一般的な診療所の電源で動作する。専用の電源工事が不要であることが多いが、設置にあたっては周辺機器との干渉や安全性を考慮する必要がある。無線通信を使用する場合は、本体周囲に金属物や大型モーター機器を置かないようにし、電磁干渉による通信断のリスクを低減するのが望ましい。

カート運用ではスタンドの固定方法とケーブルの逃がし方を事前に決め、ペダルの可動域を常に確保する配置にすることが肝要である。ケーブルの取り回しはつまずきや断線の原因となるため、床面固定やフックでの整理を行い、移動時の衝撃に対する保護を施す。設置後は通電試験と機能確認を実施し、診療開始前に異常がないことを確認する手順を標準業務に組み込むとよい。

必要に応じて医療施設の設備担当者と連携し、接地やサージプロテクションの確認を行う。電源周りの仕様変更や追加設置がある場合は事前に評価を行い、安全対策を講じることが重要である。

院内教育と標準化

初回導入時にはペアリング、プロファイル登録、チップ交換の3項目を動画とチェックリストで共通化し、全スタッフが同一の手順で扱えるようにする。実地トレーニングでは実際のシナリオを想定した模擬操作を取り入れ、緊急時の対応やトラブルシューティング手順も含めて教育することで現場での混乱を減らせる。学習の定着を図るために習熟度評価や再教育のスケジュールを予め設定しておくことが望ましい。

術中の役割分担を明確にし、ペダル割り当ての院内標準を決めておくと、交代時や新人参加時の事故を未然に防げる。交代手順やハンドオーバー時の確認項目をチェックリスト化し、回数や使用設定を記録することで責任の所在を明確にする。定期的なケースレビューを通じて運用ルールの妥当性を検証し、必要に応じてプロトコールを更新する体制を整える。

また、術式プロファイルや使用ログを基に教育素材を作成し、症例ごとの学びを組織全体で共有することで継続的な品質向上につながる。新機種導入時にはベンダー公認のトレーニングを活用し、院内教育と外部指導を組み合わせることが効果的である。

経営インパクトとROI試算

VarioSurg 4とSurgic Pro2の連携導入は、設備投資としての直接費用だけでなく、診療効率や患者説明の質向上を通じた間接的な収益影響をもたらす可能性がある。本稿ではメーカー公表価格を基にした初期投資、1症例当たりコスト、チェアタイム短縮による人件費換算、自費治療の増収機会という4つの観点から概算でのROI(投資収益率)評価に必要な考え方と試算例を示す。前提条件(耐用年数、年間症例数、時間短縮の想定値など)は院内の実情に合わせて調整することが重要である。

本稿の数値はメーカーの標準価格や一般的な前提に基づく試算であり、消耗品費や保守費、導入に伴う教育コスト、税および配送費は個別に加算して算出する必要がある。特に保守契約や消耗品供給条件は購買契約によって大きく変動するため、導入検討時には複数見積もりを取り比較検討することを推奨する。

初期投資の内訳

メーカー公表の標準価格を基にすると、VarioSurg 4標準セットは税別930,000円、無線フットコントロールFC‑86は91,000円、有線のFC‑78は96,000円である。これらを合わせたVarioSurg 4側の資本的支出は概ね1,021,000円となる(税別・設置費別)。一方、Surgic Pro2は市場流通価格が概ね550,000〜750,000円のレンジであるため、未導入の場合は同時導入で総投資が約1,600,000〜1,770,000円程度となる見込みである。

既にSurgic Pro2を保有している施設ではVarioSurg 4の購入のみで連携環境が整うため、導入ハードルは低い。逆に両機器を同時に揃える場合は初期費用が増えるが、術式の標準化や記録機能をトータルで導入できる利点がある。いずれの場合も設置に伴う配線工事、滅菌トレイや保管ケースの追加、スタッフ教育のための稼働補填費用などを見込んでおくべきである。

1症例コストの概算

資本費の按分は総投資額を耐用年数と年間症例数で割って算出するのが基本である。仮にVarioSurg 4側の総投資を1,021,000円、耐用年数を5年、年間稼働を150症例とした場合、資本費は1症例当たり約1,360円となる。Surgic Pro2を未導入で同時導入する場合は総投資が1,600,000〜1,770,000円となり、同条件での1症例資本費は約2,150〜2,370円となる計算である。

消耗品費や保守費は院内契約条件や利用頻度によって大きく変動するため、本試算には含めていない。消耗品(交換カートリッジ、専用チップ等)や年次保守費、予期せぬ修理費はランニングコストとして別途見積もり、月次または年次で実績をとって費用配分を更新することが望ましい。

1症例コストの計算式

1症例資本費 = 総投資額 ÷ (耐用年数 × 年間症例数)で算定する。総投資額には本体、フットコントロール、設置備品を含め、保守費や消耗品は別途年間費用として同様に年間症例数で按分する。算定根拠を院内文書として残しておくと、機器更新や価格改定時の見直しが容易になる。

チェアタイム短縮の換算

ワイヤレス化や操作性向上により、フットコントロールの切替えや煩雑なケーブル取り回しによる無駄時間が減少し、1症例あたり数分のチェアタイム短縮が期待できる。ここでは便宜的に1症例あたり5分短縮を見込み、医師とアシスタントの合計人件費を時給8,000円と仮定すると、1症例あたり約670円の人件費相当の節減となる。年間150症例ならば約100,000円の人的コスト削減効果が見込め、資本費の一部を相殺できる計算となる。

ただし時間短縮の実効値は術者やアシスタントの習熟度、術式の種類、導入直後の教育期間などに依存する。導入後は一定期間のKPI(症例当たりのチェアタイム、待ち時間、術式毎の処置時間など)を測定し、慣熟曲線が安定した時点で評価を行うことが重要である。時間短縮が診療回転数の増加や患者満足度向上につながれば、間接的な収益改善効果も期待できる。

試算例

総投資1,021,000円、5年償却、年間150症例、時間短縮5分、人件費時給8,000円とした場合、資本費は約1,360円、時間価値は約670円であり、これらを差し引いた実効コストは約690円となる。仮に自費手術の歩留まり向上や再治療率低下が生じれば、回収速度はさらに高まる。逆に導入直後のトレーニング期間や予想外の保守費増加は回収を遅らせる要因となるため、感度分析を行ってリスクを把握することが望ましい。

自費率と収益機会

骨整形やサイナス関連手技の標準化は患者への説明力を高め、自費治療の説得力向上に寄与する。Surgic Pro2のアプリによるログや写真記録を活用すれば、術中の可視化や経過記録を患者に示すことができ、説明時の信頼性が高まる。これによりカウンセリングから治療決定までの離脱抑制や自費コンバージョン率の改善が期待できる。

とはいえ、自費単価や件数の増加見込みは医院の立地、既存患者層、価格戦略、競合状況に大きく依存するため、術式別粗利益を実データで検証することが必要である。具体的には現行の自費施術別利益率をベースに、導入後の想定コンバージョン改善率や件数増をシナリオ化し、投資回収期間を算定することを勧める。なお、自費治療の勧誘や広告にあたっては医療倫理・法令を順守し、透明性のある説明と適正なインフォームドコンセントを徹底することが前提である。

総括すると、VarioSurg 4とSurgic Pro2の連携導入は初期投資を要するが、チェアタイム短縮や診療品質向上、患者向け記録の可視化を通じて実効コストを下げ、自費率向上や再治療減少による収益改善の可能性がある。最終的なROIは院内の実績データと保守・消耗品条件によって大きく変わるため、導入前に複数シナリオでの感度分析を行い、導入後は定期的に実績と前提を突合する体制を整えることが重要である。

使いこなしのポイント

機器の性能を実臨床で安定して引き出すには、導入初期の設定と日々のルーチンの両方が重要である。プロファイルやチップの選定、アシストワークの細部が術者の操作感と術野の安全性に直結するため、単発の設定で終わらせず繰り返し確認・修正を行うことが求められる。ここでは現場で使いやすい実践的な留意点を紹介する。

どの項目も患者への影響を念頭に置き、温度管理や切削選択性といった生体側の反応を抑制する視点を基本に据えることが肝要である。術者とアシスタントの役割分担と声かけのルールを決めることで、手技全体の再現性と安全性が向上する。

ペアリングとプロファイル設定

導入初日はSurg、Perio、Endoなど代表的な術式ごとにプロファイルを決めて登録することが効率化の第一歩である。注水量、出力、バースト段階など主要パラメータは実際の症例や模型で確認してから固定し、術中に調整が必要になった場合の標準操作をあらかじめ定めておくと混乱が少ない。プロファイルは患者や術式に応じて細かく分けておくと切替が容易になる。

機器のリンク設定やペダルのカスタムボタン割り当ては一度で終わらせず、術者・アシスタントでのリハーサルを行うことが重要である。ペダル操作は無意識に行う部分が多いため、ボタン配置や踏み替えの流れを実際の手順で確認し、緊急時の停止操作や瞬時に出力を変える手順を習熟させておく。記録機能がある場合は各手技での設定を保存し、術後に見返せるようにしておくと教育や品質管理に役立つ。

普段からの接続確認と簡易チェックリストを導入するとトラブルを未然に防げる。機器のファームウェアやチップの状態、注水系統の流量チェックを術前ルーチンに組み込み、問題があれば代替プロファイルや予備チップの準備を行うとよい。

チップ選択とストローク

骨窓作成や裂開回避が主眼の場合は薄刃でTiNコーティングされたチップが適している。薄刃は切削ラインを細かく制御でき、TiNコーティングは摩耗耐性と滑りを改善するため切削痕の質が安定しやすい。時間をかけてラインを置き、無理に押し込まないことが欠かせない。

刃先を押し込むよりも振幅を生かして水平ストロークや微小な往復運動を繰り返すことで熱の蓄積を抑えられる。接触時間を短くし、断続的に接触させることで温度上昇を抑制できるため、常に注水と手動の間欠的操作を意識する。高出力に頼ると切削は速くなっても術野の熱的ダメージや振動による不利が生じるため、チップ形状で問題を解決する方が結果として安定する。

チップの摩耗やコーティングの剥離は切削の質を低下させるため、定期的に点検し早めに交換する。使用するチップは術式や骨の硬さに応じて複数の形状を用意し、術中の微調整で最も適したものを選べるようにしておくことが望ましい。術者は手感と切削音からもチップの状態を判断できるよう経験を積むとよい。

視野確保とアシスト

LED光軸と吸引の位置関係を一定に保つことで術者がラインを見失う頻度は減る。光源と吸引の干渉を避けつつ、術野全体に均一な照度を確保することが大切であり、そのためのリトラクターやミラーの挿入位置も術前に確認しておくべきである。視野の乱れは操作ミスや過剰な力の投入につながるため、術野の安定化は優先事項である。

アシスタントは注水流量や吸引力の変化を声で共有し、術者にとって「今の湿り気」が即座に分かるようにすることが有効である。声かけのルールを決め、注水が不足している場合や逆に過剰で視界が悪化している場合の対応を事前に合意しておくと手術のテンポが良くなる。深部からのアプローチではハンドピースの回内を最小に保ち、刃先と骨面の角度を一定に維持することが重要であり、アシストによる視野確保と軸の補助が大きく寄与する。

深い部位では鏡視や角度を付けたチップの使用を検討し、手技中は無理な体勢での保持を避ける。アシスタントが軸を補完することで術者はストロークと出力に集中でき、結果として手技の精度と安全性が高まる。

患者説明の勘所

術前説明では切削選択性と温度管理という二つの概念を簡潔に伝えると患者の理解が進む。切削選択性は「必要な部分だけを削る工夫」であり、温度管理は「骨に過度な熱を与えないための注水や断続的な操作」であるといった表現で説明すると誤解が少ない。術中設定は専門的になりがちなので、患者には起こりうる感覚や術後の経過観察ポイントを中心に伝えるのが良い。

術後説明では機器が記録したトルクやISQなどの数値を用いて経過の客観的指標を示すと説得力がある。数値の意味は専門用語を避け、経過良好であることを示すための「客観的なデータ」として説明する。超音波側の設定や注水条件などは術中写真や術記録で補完し、患者に渡せる資料を用意しておくと安心感を与えやすい。

術後の注意点や異常時の連絡先、予定通りの回復が見られないときの受診目安を明確に伝えることが重要である。記録と説明を一貫させることで患者の信頼を得やすく、術後管理の精度も高まる。

適応と適さないケース

得意な症例

上顎洞前壁の開窓や下顎大臼歯の根分岐部周囲、下顎管近傍の骨整形のように、術野が限られ軟組織が近接している場面で扱いやすい。こうした領域では大径のバーや高速での粗削りだと軟組織損傷や視野悪化を招きやすいが、より精密に削れる器械や手法は切削痕のコントラストが読みやすく、微細な形態修正が可能であるため有利である。

抜歯後の骨縁整形やインプラント周囲の微調整など、量的には少ないが形態の正確さが求められる処置にも向く。例えば鋭利な骨縁を滑らかにする、インプラントハードティッシュ周囲の局所的な段差を除去する、といった目的では患者の疼痛や術後の軟組織トラブルの軽減に寄与する場合が多い。

術中の操作としては少しずつ短時間で削ること、頻繁に視認して切削深さを確認することが重要である。術者にとっては tactile feedback(触覚フィードバック)が得やすく、狭い視野でも確実に形態を整えられる点が強みである。

注意が必要な状況

広範囲に厚い皮質骨を高速に削除するような場面では能率が低下しやすく、長時間の運転や高出力設定では熱蓄積のリスクが増す。特に注水や冷却が十分でない環境では骨の熱壊死や周囲軟組織への熱傷につながる可能性があるため、必ず適切な潤滑・冷却を維持し、連続使用を避けて断続的に操作することが求められる。

下顎管や上顎洞など重要な解剖学的構造に近接する場合は術前の画像診断で位置関係を明確にし、切削深度や方向を厳密に管理する必要がある。器具の刃先が摩耗していると不要な力を要し、制御が難しくなるため、器具の点検・交換を怠らないことが重要である。

禁忌事項や機器の出力上限、使用条件については必ず添付文書やメーカーガイドラインに従うこと。大量の骨除去や高効率が優先される処置では、適切な代替手段(大径の外科用バー、鋸、ピエゾサージェリーなど)を選択することが安全確保の観点から望ましい。術中は冷却状態、切削速度、接触時間を常に管理し、疑問点があればメーカーや上級者に確認する習慣をつけるべきである。

導入判断の指針

保険中心で効率最優先の医院

保険診療を中心に回す医院では、初期投資を抑えつつ日常の安全域を確保することが重要である。有線運用は無線に比べて導入コストが低く、バッテリー切れや通信不良といったランダムな停止リスクが少ないため、チェアタイムとスタッフの手戻りを抑えられる。特に抜歯や骨整形など安全マージンが求められる処置では、安定した駆動と確実な制御が診療時間短縮に直結する場合が多い。

既にSurgic Pro2を保有している場合は、リンク運用による機器間の連携で踏み替えの無駄を減らせる。設定や操作体系を統一すると、アシスタントや代替医師が入れ替わっても作業ミスが起きにくく、トレーニング時間の削減にもつながる。日々のメンテナンスや消耗品管理をシンプルにしておくことが、長期的なコスト低減と診療稼働率の向上に貢献する。

導入判断では、設備投資の回収シミュレーションだけでなく、保守契約や故障時の代替手段も考慮することが望ましい。シンプルな有線運用で安定稼働を優先しつつ、将来的な拡張性やデジタル連携の必要性に応じて段階的に設備を増やす戦略が現実的である。

高付加価値自費を強化したい医院

自費診療で付加価値を高めることを目指す医院では、無線フットコントロールとLink Stand 3の組み合わせが導線設計と顧客体験の向上に寄与する。無線化によって器具やモニターの配置に自由度が生まれ、術者の動線や患者説明の視認性を高めることが可能である。これにより高額手術や審美治療での顧客満足度が向上し、リピートや紹介を増やす効果が期待できる。

術中の動画記録や操作ログをワークフローに組み込むと、症例レビューや院内カンファレンスでの教育素材として活用できる。標準化された術式を根拠にした説明は患者への信頼醸成につながり、料金設定の正当化にも役立つ。ただし動画記録には個人情報保護や同意取得の整備が不可欠であり、保存・共有のセキュリティ対策を事前に整えておく必要がある。

導入に際しては、デジタル記録の運用フローとスタッフ教育をセットで計画すると効果が高い。機器の使いやすさだけでなく、撮影・編集・保存・提示の一貫した流れを確立することが収益化への近道である。投資回収のためのKPIを明確にし、段階的に設備や人員を増強していくことが望ましい。

口腔外科・インプラント中心の医院

口腔外科やインプラントを中心とする医院では、用途別に充分なチップや専用プロファイルを揃える投資が臨床効率と安全性の両面で価値を生む。術式ごとに最適なチップと回転数、トルク設定を予め構築しておけば、手技のばらつきが減り合併症リスクの低減につながる。器具管理はケースごとのキット化を進めると滅菌や在庫管理が容易になり、手術準備時間の短縮にも寄与する。

Surgic Pro2との連携で操作インターフェイスを統一すれば、多職種が交替しても同じ操作系で動ける体制を構築できる。これによりオペチームの入れ替えや非常時の対応がスムーズになり、術中のコミュニケーションロスが小さくなる。さらにトレーサビリティを確保するためのログ記録は、術後フォローや品質管理において有益なエビデンスとなる。

導入前には器材の耐久性やメーカーサポート、消耗品の供給体制を確認しておくことが重要である。高額な投資を正当化するためには、症例数や診療報酬の構成、院内の運用能力を踏まえた収益見込みを現実的に評価することが求められる。結果として、標準化と堅牢な運用設計が合わさることで臨床アウトカムと経営の両方が改善される可能性が高い。

よくある質問

Bluetooth接続で遅延は感じるか

ペダル操作の応答は臨床上問題にならない設計である。設計上は有線と同等の操作感を目指しているが、無線方式である以上、電池残量や電波環境の影響を受けやすい点は留意が必要である。環境によっては微小な遅延や応答のばらつきが生じることがあるため、特に高負荷の機器や電波源が多い手術室では事前確認を推奨する。

日常運用では電池交換や機器のペアリング確認をルーチンに組み込むと安心である。手術前に必ずフットコントロールの動作検査を行い、予備の電池や有線コントロールを用意しておくと万一のトラブルに備えられる。ファームウェアやアプリの最新版を適用しておくことも安定した通信のために重要である。

VarioSurg 4のログはiPadに保存できるか

VarioSurg 4本体はユニット内のプロファイル管理を基本としており、個々の設定や手技プロファイルは本体で保持される。一方でSurgic Pro2側は回転数やトルク、ISQなどの計測データをアプリで保存できる設計となっているため、説明資料を作成する際はアプリのログと手術室で撮影した写真記録を組み合わせる運用が現実的である。

実際にiPadへ保存・転送する運用を行う場合は、使用するアプリの対応OSバージョンやエクスポート形式、院内情報システムとの連携方法を事前に確認しておくとよい。データのバックアップとセキュリティ管理も運用設計に含め、必要であれば販社やサポート窓口にエクスポート手順や推奨設定を確認すると安心である。

VarioSurg 3のチップは4でも使えるか

メーカーによる公開情報が確認できない場合は、既存チップの流用は推奨できない。チップの形状や固定方式、材質や熱特性は型式ごとに異なることが多く、適合の可否や安全性は個々の型番で判断する必要がある。互換性を安易に仮定して使用すると装着不良や性能低下、最悪の場合機器損傷を招く恐れがある。

確実な方法は最新のチップガイドと取扱説明書で適合表を確認すること、あるいは販売代理店やメーカーサポートへ直接問い合わせて確認することである。代替チップの使用可否だけでなく、滅菌方法や再使用回数などの取扱条件も合わせて確認すると安全性が高まる。

保守や保証の期間はどうなっているか

保守や保証の条件は一律に公開されているものではなく、購入チャネルや契約内容によって大きく異なる。標準保証の期間、延長保証のオプション、消耗品交換の範囲、現場対応までのリードタイム、代替機の手配条件といった項目は見積段階で明確に確認しておくことが重要である。

運用リスクを下げるためには年額の保守費用や定期点検の頻度、遠隔サポートの可否、故障時の代替機貸出し条件などを契約書に盛り込むことが有効である。見積もり時にこれらを比較評価し、想定されるランニングコストを含めて総所有コストで判断するとよい。

価格はどの程度か

公表されている目安としては、VarioSurg 4標準セットは税別930,000円である。無線フットコントロールFC‑86は91,000円、有線フットコントロールFC‑78は96,000円が公表値である。Surgic Pro2の標準セットは概ね550,000円から750,000円の市場価格帯で流通している。

ただし実勢価格は販売店の条件、オプション構成、保守契約の有無、為替や時期によって変動するため、導入時には最新の見積を取得することを前提に計画することが重要である。機器本体以外にトレーニング費用や消耗品、定期保守費用も発生するため、総費用を見積もりに含めて比較検討するとよい。