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ナカニシ「Surgic Pro 2」レビュー!AHC機能と安全性などについて解説!

ナカニシ「Surgic Pro 2」レビュー!AHC機能と安全性などについて解説!

最終更新日

製品の概要

Surgic Pro 2(正式名称:サージック Pro2)は、株式会社ナカニシが製造販売する外科用マイクロモーターシステムである。口腔外科領域の骨切削やインプラント埋入に伴う回転切削を目的として設計された医療機器であり、臨床での使用を前提としたコントロールユニットとマイクロモーターを中核とする構成である。標準構成にはライト付きとライト無しのモデルがあり、術者の使用環境やニーズに応じて選択できるようになっている。

標準セットの主な構成品は以下の通りである。コントロールユニットは出力や回転速度の制御を担い、マイクロモーターは実際の切削動力を供給する。減速機構として20対1の減速コントラが含まれ、細かな回転制御や高トルクが必要な処置に対応する。ワイヤレスのフットコントロールやイリゲーションチューブも標準に含まれ、術中の操作性や洗浄機能を補助する。これらはセット品として一括で供給されるため、導入後すぐに臨床で使用できる利便性がある。

医療機器としての区分は管理医療機器であり、一般的名称は「電動式骨手術器械」である。適応は主に口腔外科領域の骨切削やインプラント埋入に関する回転切削であり、詳細な適応・禁忌および注意事項は添付文書に従う必要がある。使用に際しては添付文書の記載内容を遵守し、必要な研修や滅菌・保守手順を適切に行うことが求められる。

流通実勢価格は、ライト無しモデルが約59万円台、ライト付きモデルが約75万円台と確認されている。ただし価格は販売店や導入条件、付属品の有無によって変動する可能性があるため、導入時は販売代理店やメーカーに最新の見積もりを確認することが望ましい。製品の性能や安全性に関する詳細はメーカー提供の製品情報や添付文書を参照のうえ、施設の使用条件に合わせて検討することが重要である。

主要スペックと臨床的意味

Surgic Pro 2 のコアは、トルク5〜80 Ncm、回転200〜40,000 min⁻¹という幅広い制御域と、回転・トルク・注水の安定性である。低速から高速まで一貫した制御が可能なため、インプラント埋入の初期形成から最終拡大、ボーンサージェリーまで一台で対応しやすい。特に低速高トルク領域での出力安定性は、タッピングや最終締結時の挙動に影響しやすく、術者の手応えと実際の出力の乖離を小さくすることが期待される。

注水ポンプは最大75 mL/minの出力量を持ち、静粛性が高い点は患者の安心感と術者の集中維持に寄与する。チューブの装着手順が直感的で教育負荷が低いことは、導入施設での運用開始を容易にし、誤装着によるトラブルの頻度を下げる効果がある。高演色LEDライトの採用により血液や軟組織の色調が正確に再現され、ドリリング深度や骨質判定時の視認性が向上するのも臨床上の利点である。

大型LCDは10段階の調光と高感度タッチにより、グローブ着用のまま操作が可能であるため術中の視線移動や手技の中断を減らす設計である。ワイヤレスフットコントロールはBluetooth接続で動作し、カスタマイズ可能な選択ボタンとIPX8の耐水性能を備えているため、設置自由度と感染対策の両立が図られている。これらの仕様は単独の性能向上だけでなく、手術室のワークフロー改善にも繋がる。

AHC機能の要点

AHC(Advanced Handpiece Calibration)はハンドピースごとの個体差や摩耗を考慮して、設定値と実際の出力のズレを最小化するための補正機能である。ハンドピース内部のベアリングやギアの摩耗、結合部の微小な差異は避けられないが、AHCは無負荷校正と負荷校正を組み合わせることで系の内部抵抗を推定し、コントロールユニット側で補正を行う仕組みである。

臨床上の体感としては、特に低速高トルク域でビットが骨質の変化に遭遇した際に出力の立ち上がりや粘りが均質になり、計画した臨床ステップに沿った手応えが得やすくなる。これにより術中の「突然の挙動変化」による戸惑いが減り、術者はより安定した操作を行える可能性がある。ただし、AHCはあくまで機器側の補正であり、手技や材料、ドリルの状態といった他の因子も結果に大きく影響する点は留意が必要である。

校正の仕組み

実運用では、ハンドピースを装着した都度または新しいハンドピースを使用する際にAHCを実行する。校正は短時間で完了し、以後はそのハンドピースの条件に基づいた制御が働くため、装着ごとに安定した出力を期待できる。複数のコントラをローテーションする運用や、整備・メンテナンス後の初回稼働時には再校正が推奨される。

臨床中にトルク表示や出力に違和感を覚えた場合は、次の症例の前に再校正することで再現性が回復することが多い。校正情報はハンドピース単位で保持される設計が一般的であるため、どのハンドピースがどの条件で校正されているかを明確に管理することが望ましい。定期的な校正習慣は、長期的な器械信頼性の維持にも寄与する。

臨床でのリスク低減の考察

トルクの逸脱は過度な切削抵抗を招き、骨温の上昇やスクリュー破断のリスクを高める可能性がある。AHCは設定トルクに対する偏差を補正することで出力のばらつきを抑制し、ガイド使用時の初期形成やタッピング、最終拡大での過大負荷を回避する助けになる。結果として、症例間のばらつきを小さくする効果が期待されるが、これが個々の症例の成功を保証するものではない。

実際のリスク管理にはドリルの鋭利さや連続使用時間、注水の適正管理、骨質評価に基づくドリリング戦略の順守が不可欠である。AHCは有力な補助機能ではあるが、術者の手技と補助的な温度管理や適切なドリルチェンジなど、総合的なリスク管理と併用することが肝要である。

ワイヤレスと表示系

Surgic Pro 2 はiPadアプリと連携し、回転数やトルクなどのデータをリアルタイム表示して保存できる。Osseo 100+によるISQ測定値もシステムを介して記録可能であり、術者間の情報共有や術後説明、トレーサビリティ確保に役立つ。保存データは術後の振り返りや教育用途に有効であるため、運用ルールを整えておくことが推奨される。

VarioSurg 4とはBluetoothでリンクし、1基のフットコントロールで機器切り替えができる点はワークフローの効率化に直結する。足元で埋入とボーンサージェリーを切り替えられることでアシスタントへの合図や視線の分散を減らし、手技の連続性を保てる。導入時にはBluetooth接続の安定性確認や、データのバックアップ、セキュリティ対策(アクセス制限やログ管理)をあらかじめ整備しておくと運用がスムーズである。

ポンプと注水

最大75 mL/minの出力は多孔式注水を用いた高速形成においても十分な冷却を提供しうる。静粛性は術者の集中維持や患者の不安軽減に寄与するため、術場の環境改善という観点でも価値がある。注水ラインは専用チューブを前面で装着する構造であり、装着が簡便で教育負担が少ない点も実用的である。

ただし注水量は骨質やドリル径、形成速度に応じて微調整することが重要である。適切な注水とドリル交換、冷却の組み合わせにより骨温上昇を抑えることができるため、術者は初期設定に依存せず症例ごとに最適化する習慣を持つべきである。チューブは滅菌または使い捨ての仕様を確認し、気泡や詰まりの有無を必ず術前に点検することが安全運用の基本である。

互換性と運用

Surgic Pro 2 の標準コントラは X‑SG20 系であり、ISO 3964 準拠の E タイプモーター接続に対応するため、E タイプのハンドピースやモーターが広く流通しているメリットがある。流通性が高いことで滅菌や保守の手順を統一しやすく、汎用部品の在庫管理でコストやダウンタイムを抑えられる。ただし、機器ごとの細かな適合性やアダプタの要否はメーカーやモデルにより異なることがあるため、導入前に実機での接続確認と互換性一覧の整備を行うことが重要である。院内で使用する組合せはリスト化して購買・保守担当と共有すると運用負荷が減る。

校正情報がハンドピース単位で保持されるため、同一症例中に頻繁にハンドピースを付け替えると形成精度や出力のズレが生じやすい。症例ごとに使用する形成系の組み合わせを事前に決定し、手術開始前に一度動作確認と簡易校正を実施することで差異を最小化できる。運用上はハンドピースに識別ラベルを貼付して使用履歴や校正日時を管理し、交換頻度や滅菌回数のログを残すことが推奨される。万一の故障や調整が必要になった際に交換用の滅菌済みスペアを常備しておけば手術の中断を避けられる。

データ連携は iPad アプリ経由で行われるが、書き出しフォーマットや出力されるメタデータの種類が限定的である場合があるため、院内の電子カルテや画像管理システムと連携させる際は事前に出力サンプルで適合検証を行うことが望ましい。院内保存のルールとしては、ファイル命名規則、保存先フォルダ、メタデータ項目、保存期間、バックアップ方法、アクセス権限を運用規定として明文化しておくと運用混乱を防げる。患者データを扱う場合は暗号化やアクセスログ管理を含めた情報管理の手順と、スタッフ向けの操作手順書を整備することが必須である。

感染対策の観点では、フットコントロールの防水性とワイヤレス化がケーブル交差を減らし、床面や動線の清掃性を向上させる利点がある。ただしワイヤレス機器はバッテリー管理や通信干渉のリスクがあるため、充電状態の管理ルールや予備バッテリーの運用を決めておく必要がある。防水仕様であっても消毒剤の種類や滅菌方法は機器の取扱説明書に従い、耐熱・耐薬性の限界を確認したうえで清拭や滅菌を行うこと。運用時のチェックリスト例としては、機器互換性の確認、ハンドピース識別と校正ログの記録、データ出力の事前検証、消毒手順とワイヤレス機器の充電管理を含めた日常点検項目を整備することが有効である。

使いこなしのポイント

導入初期はAHC手順を日常業務に組み込み、習慣化することが重要である。症例前点検の中に必ず校正作業を組み込み、コントラごとに管理台帳を用意しておくとよい。台帳には機器の識別番号、校正値、最終点検日、前回点検での所見や異音の有無を記録しておくことで、わずかな違和感も早期に発見しやすくなる。定期的に台帳をレビューし、異常傾向があれば早めにメンテナンスやメーカー相談を行う体制を整えておくべきである。

注水設定は最大値で固定せず、ドリル径や骨質(D1〜D4)に応じて細かく調整する技能を身につけることが求められる。一般に硬い骨質では切削抵抗と発熱が大きくなりやすいため注水量を増やす必要があるが、過剰な注水は視野の悪化や切削効率低下を招くこともある。初めは保守的な設定から始め、切削時の抵抗や発熱感、組織の変色などを観察しながら段階的に調整することで最適値を習得していくのが実務上有効である。

iPadなどのデバイス連携は導入時に即本番運用に入れず、ダミー症例を用いて記録から保管までのフローを事前に検証することが望ましい。接続の安定性やバッテリー持続時間、マウントの固定具合、データの自動保存や暗号化の動作確認を行い、実際の手術環境で問題がないかを確認する。加えて記録映像やデータの取り扱いに関する同意取得、院内のデータ管理ルール、バックアップ体制を明確にしておくことで運用上のリスクを減らせる。

VarioSurgなど外部機器との連携運用では、踏み替え(モード切替)タイミングの合図や声かけをアシスタントとあらかじめ取り決め、誤った切替を未然に防ぐ仕組みを作ることが肝要である。実際の操作前に必ず合図を確認し合う短いルーチンや、切替時に操作を二重確認するチェックポイントを設けると安全性が高まる。導入初期はシミュレーションや院内トレーニングを繰り返し、チーム内での合意形成と習慣化を図ることが、トラブル低減につながる。

適応と適さないケース

ガイド手術や狭小開口の症例では、本機種のミニヘッドと低速高トルク特性が大きな利点となる。ミニヘッドは視野の確保と器具の干渉軽減に寄与し、ガイド使用時にガイドスリーブとの適合性やアクセス性が向上する。硬い骨質や低速で高トルクが要求される形成操作でも安定したトルク供給が期待でき、オペ時間短縮や器具の操作性向上につながる場合が多い。

一方で、術中のトルク急変や微細な力加減に極めて敏感な症例では注意が必要である。埋入時にトルクの突発的な変動が臨床結果に影響する可能性があるため、こうした症例では術前評価とトルク監視を厳格に行うことが望ましい。また、手術室内で電波干渉が強い環境ではワイヤレス接続に支障をきたすおそれがあるため、無線設定での運用を前提とする場合は事前の環境チェックと有線もしくは代替通信手段の確保が必要である。

院内でのデータ共有や記録管理については、書き出し仕様とセキュリティ要件を事前に確認することが不可欠である。STLやCT画像(DICOM)などの汎用ファイル形式に対応しているか、暗号化やアクセス制御の要件を満たすかを確認し、院内システムとの連携可否を確実にしておくべきである。禁忌や使用上の制限は添付文書に準拠し、他社ドリルやインプラントシステムとの併用については適合情報を必ず事前に確認すること。互換性の不確かな組み合わせは保証や安全性に影響するため避けるべきである。

導入・運用上の実務としては、術前の模擬操作やスタッフ教育、ファームウェアやソフトウェアの更新管理、滅菌・再処理手順の遵守を徹底することが重要である。ワイヤレス運用を行う場合は手術前に通信チェックリストを用いて干渉や接続安定性を確認し、問題が起きた際のバックアップ手順をあらかじめ定めておくと安全性が高まる。最終的には各症例ごとに適応を評価し、メーカー添付文書と院内プロトコルに基づいて判断することが求められる。

導入判断の指針

設備の導入判断は装置のスペックだけを見て決めるべきではない。日々の診療フローにどう馴染ませるか、スタッフがどの程度で習熟できるか、データをどのように運用して診療や説明に活かすかまでを含めて検討することが重要である。特に注水や表示系の取り扱い、ワイヤレス設置の有無と配線の簡便さは短時間の処置が多い医院での回転効率に直結するため、導入前に現場での動作を想定した運用設計を行うべきである。

保険診療中心で回転効率を最優先する医院では、注水の安定供給と表示系の即時性が重要である。操作が直感的で切り替えが速い装置は短い診療間隔を保つうえで有利であり、ワイヤレス設置は配線によるスペースや清掃の負担を減らす効果がある。導入時は実際の処置時間を測定し、装置交換や準備に要する時間が滞りを生まないかを評価しておくべきである。

自費診療の強化を目指す医院では、データ可視化による患者説明の質向上と術者間の標準化が大きな強みになる。画像や計測値を用いた説明はインフォームドコンセントの充実につながり、料金に見合う価値を患者に伝えやすくする。術式やパラメータの標準化は再現性の高い治療結果をもたらすため、プロトコル作成とスタッフ教育をセットで行うことが成果を左右する。

口腔外科を中心とする施設では、VarioSurgとの連携やAHCの安定感がオペの連続性と安全性を高める要素となる。機器間のリンクによって情報の流れがスムーズになれば、術者は手元の装置だけで必要な情報にアクセスできるようになり、手技に集中できる。いずれの施設にも共通する最終的な鍵は校正とデータ運用の習熟であり、導入判断は装置単体の性能評価に留めず、運用設計、教育計画、定期的な校正・保守体制を含めて意思決定することが望ましい。

導入を検討する際の実務的なチェック項目は次の通りである。機器の操作性を複数回の模擬運用で検証すること、スタッフの教育計画と習熟評価を明確にすること、データの保存・閲覧・共有のフローを定義して院内ルールに落とし込むこと、校正と保守の頻度およびコストを見積もること、そして導入効果を診療時間短縮や患者満足度、収益で定量的に評価する期間を設定することである。これらをあらかじめ設計することで、単なる設備投資を越えた運用改善につなげることができる。

よくある質問

AHCは毎回行うべきか

ハンドピースごとに摩耗や個体差、取り付け状態が異なるため、付け替え時とメンテナンス後には必ず確認することが安全である。術前に違和感や異音を感じた場合も同様であり、症例直前のチェックでトラブルを未然に防げる。AHCは短時間で完了する項目が多いため、ルーチンに組み込んでもチェアタイムへの影響は最小限にとどまる。

定期的な点検を習慣化すると、故障予兆の早期発見や突発的なダウンタイムの削減につながる。点検記録を残しておくことで、故障傾向や消耗サイクルを把握しやすくなり、保守計画や予備部品の発注にも役立つ。院内でチェック項目と合格基準を明文化し、担当者やタイミングを決めておくことを推奨する。

実施頻度は器材の使用頻度や症例の種類、院内の安全方針によって調整するのが現実的である。高負荷で使用する器材やインプラント関連の手技で用いるハンドピースはより厳密な管理が必要であり、必要に応じてメーカー推奨の点検間隔に従うのが望ましい。

ライト付の臨床的メリットは何か

高演色のLEDライトは軟組織や出血、骨の色調を自然に近い色で再現するため、出血点の同定や微細な色調変化の判別が容易になる。視認性が向上することで処置の正確性が高まり、特に粘膜縁や薄い骨膜の状態確認、止血判断で有用である。写真や動画記録においても色ズレが少なく、術後説明や記録の質が向上する。

光源の配光や角度調整ができる設計であれば、影の発生を抑えつつ必要な部位に十分な照度を確保できる。照度と色温度の切替が可能な機種は、術式や撮影条件に合わせて最適な光を選べるため、術中の判断や術後画像の再現性に貢献する。また、操作中に視界が安定することで手技のスピードと安全性が向上する場合が多い。

臨床導入時には光源の滅菌・滅菌カバー適合性やクリーニング方法、バッテリー運用の可否を確認しておくことが重要である。光学性能だけでなく運用面での取り扱いやすさも総合評価基準に入れることで、日常診療への定着が進む。

データはどこまで残せるか

回転数やトルクなどの運転ログはタブレットや専用端末に表示し、保存・エクスポートできる機種が一般的である。ISQ(インプラント周囲骨の安定性指標)などの測定値は対応する測定器を介して記録でき、症例管理ファイルや術後説明資料に組み込める。保存形式や出力フォーマットは機種ごとに異なるため、院内の電子カルテや記録媒体との互換性を事前に確認しておく必要がある。

データを活用する際は保存ルールとバックアップ体制を整備することが重要である。測定日時や担当者、測定条件を付加した上で一元管理することで、後からの解析やトラブルシュートが容易になる。個人情報や医療情報の取り扱いに関しては院内の情報管理規定と法令に従い、適切なアクセス制限と暗号化を行うべきである。

実臨床では、データの可視化によって治療計画の最適化や説明の説得力向上が期待できる。導入前に記録フローを定め、機器ベンダーやIT担当と連携して運用手順を作成しておくことで、現場での混乱を避けられる。

法定耐用年数と償却の考え方は

医療用の手術機器は一般に5年の耐用年数区分が基準とされることが多い。会計上の償却は購入価格を耐用年数で割る定額法などで計算されるケースが多く、簡易的には導入費用を5年で割った年間償却費を算出して収支評価に組み入れる。実務上は税法や会計基準の変更があり得るため、詳細は税理士や会計担当に確認することが望ましい。

機器導入の評価は償却費だけでなく、消耗品費、補修費、人件費の削減効果などを含めた総所有コスト(TCO)で行うべきである。導入により処置時間が短縮された場合の人件費換算や、故障による稼働停止のリスク低減も含めて比較すると、単年度の償却費だけでは見えない価値を把握できる。

実務的な評価方法としては、年間症例数を基に一症例あたりの償却負担を算出し、そこに消耗品や修繕費、想定される生産性向上の金額を足し合わせて比較する。設備投資の意思決定時には短期的な費用対効果と長期的な運用コストの両面から検討することが重要である。

消耗品のコスト感を教えてほしい

イリゲーションチューブなどの代表的な消耗品は10本単位の供給が一般的で、目安として1症例あたり約1,600円程度のコスト感が想定される。実際の単価は供給元や購入数量、契約条件によって変動するため、定期発注やまとめ買いでコスト低減を図ることが可能である。消耗品は単価だけでなく廃棄ロットや有効期限管理もコスト管理に直結する。

院内在庫管理はロット追跡と在庫回転の両面で徹底すべきである。在庫を過剰に抱えると廃棄ロスが増える一方で不足すると診療停止のリスクが生じる。発注基準や最小在庫レベルを設定し、使用実績に基づく発注サイクルを運用することで無駄な支出を抑えられる。注水量や消費方法の標準化により不必要な消耗を防ぐことも有効である。

コスト管理の実務では、消耗品費と作業効率のバランスを評価することが重要である。安価な消耗品を採用しても作業時間が延びれば総コストは上がるため、運用全体を俯瞰して最適化する視点が求められる。サプライヤーとの条件交渉や定期的な見直しも継続的なコスト改善に寄与する。