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GC/ナカニシ「インプラントモーター IM-IV」レビュー!大型LCDと操作性

GC/ナカニシ「インプラントモーター IM-IV」レビュー!大型LCDと操作性

最終更新日

抜歯窩の骨壁が薄く、冷却不足でドリルの発熱が懸念される状況や、埋入ステップごとにトルク設定を都度呼び出す煩雑さ、術者交代時に発生しやすい操作ミスは、インプラント外科の現場で頻繁に耳にする課題である。これらは手技の安全性と効率、さらには術後の予後に直結するため、単なる機器の利便性を超えた臨床的意味を持つ。特に抜歯窩が薄い症例では過度の熱や過剰トルクが骨壊死やインプラントの初期固定不良を招くリスクがあり、冷却とトルク管理の両面からの対策が求められる。

本稿は、ジーシーとナカニシが共同で展開する「インプラントモーター IM-IV」を、臨床現場と歯科医院経営の両側面から検証することを目的とする。機器の仕様やメーカー提供のデータを踏まえつつ、実際の手術シミュレーションと複数術者による操作評価を通して、冷却性能やトルク制御の実効性、術者交代時の操作性と安全機構の有効性を確認する。単に性能を列挙するのではなく、導入後の運用フローや院内教育、滅菌・メンテナンス体制まで含めた具体的な運用像を描くことを重視する。

また、導入の投資妥当性については初期費用のみならず、稼働率や消耗品・保守費用、術時間短縮による患者回転の向上などを含めた収支シミュレーションを行う。導入前後でのトラブル発生件数や術中の手技時間、スタッフの作業負担の変化を定量的に評価し、投資回収期間や費用対効果の指標を提示する予定である。臨床と経営の両眼で検証することにより、現場が直面する具体的課題に対してIM-IVが現実的な解決策を提供できるかを明らかにする。

製品の概要

ジーシー インプラントモーター IM-IVは、歯科インプラント手術向けに設計された卓上型マイクロモーターシステムである。製造販売は株式会社ナカニシ、販売は株式会社ジーシーが担当しており、薬事区分は管理医療機器に分類される。基本構成ではライト付ハンドピースとコントロールユニットを組み合わせ、臨床での使いやすさと安全性を両立させる設計になっている。

本機のハンドピースはX-SG20MLを標準装備し、減速比は20対1であるため、高トルク低速領域での窩形成やタッピング、埋入といったインプラント関連操作に適する。内部注水と外部注水の両方に対応しており、術野冷却や術中視認性の確保が容易である。コントロールユニットは大型のLCD表示を備え、アイコンベースの操作系で直感的な設定変更が可能である点が特徴である。

さらにワイヤレスフットコントロールに対応し、ケーブルの煩雑さを軽減するとともに術者の操作性を向上させている。AHC機能によるトルク補正が搭載され、負荷変動時にも設定トルクを保持することで安定した埋入が行いやすい設計である。発売日は2021年12月であり、近年の臨床需要を踏まえた機能が盛り込まれている。

項目仕様・内容
製造販売株式会社ナカニシ
発売元株式会社ジーシー
医療機器区分管理医療機器
標準ハンドピースX-SG20ML(ライト付)
減速比20:1
注水方式内部注水 / 外部注水対応
表示・操作大型LCD・アイコンベース
フットコントロールワイヤレス対応
主要機能AHC(トルク補正)
発売日2021年12月

同梱とオプション構成

標準同梱品はコントロールユニット本体、ライト付モーター、ライト付ハンドピース、ワイヤレスフットコントロール、注水関連アクセサリなど、臨床開始に必要な構成が一式で含まれている。イリゲーションチューブはディスポーザブルで、基本パッケージは10本入りとなっており、衛生管理上の使い捨て運用を想定している。付属のアクセサリや交換部品は添付文書に従って管理し、滅菌や保守を適切に行う必要がある。

別売りのオプションとしては、他ユニットとの連携を可能にするリンクモジュールや、積み重ね設置を前提にしたリンクスタンドが用意されている。リンクモジュールを用いることでバリオサージ3などの別ユニットと一つのフットコントロールで切り替え運用が可能となり、ユニット間のスムーズな移行や省スペース化に寄与する。リンクスタンドは複数ユニットを効率的に設置するための専用アクセサリであり、診療室のレイアウトに応じた運用が行える。

消耗品や交換部品の供給体制については、メーカーの指示に従って適切に発注・管理することが重要である。特に注水チューブやシーラブルなハンドピース部材は使用頻度に応じて計画的に交換し、感染対策と機器の性能維持を両立させるべきである。

適応の範囲と制約

IM-IVは一般的なインプラント窩形成、タッピング、埋入操作を想定したマイクロモーターであるため、インプラント手技における標準的なドリリングや埋入に適している。減速比20:1のハンドピースは高トルクでの挿入操作に向いており、AHC機能により負荷変動時のトルク補正が期待できる。ただし術者は埋入トルクや回転数の設定を適切に行い、骨質やインプラントの種類に応じて操作を調整する必要がある。

一方、骨切除やサイナスリフトに代表される超音波ボーンサージェリーなど、特殊な骨操作は別ユニットの適応領域である。IM-IV単体では超音波式骨切削の機能やエネルギー形態が異なるため、これらの手術は専用の機器を使用するべきである。また本機の使用に際しては添付文書に示される禁忌や注意事項に必ず従い、患者の全身状態や局所条件を総合的に評価して適応判断を行うことが求められる。

滅菌管理、日常点検、メンテナンスは製造元が定める手順に従って実施しなければならない。ハンドピースや注水系統の管理不備は感染リスクや機器故障につながるため、滅菌不可の部位は適切なカバーやディスポーザブル部品を用いることが望ましい。臨床運用に際しては、スタッフの教育と定期的な点検記録の整備を行い、安全で安定した診療を確保することが重要である。

互換性と運用要件

IM-IVは単体運用のほか、超音波ボーンサージェリーであるバリオサージ3とリンクモジュールで接続し、1つのフットコントロールで切り替えながら使用できる設計である。これにより外科的フローの連続性が保たれ、器械間の切替による操作の中断を最小限に抑えられる。フットコントロールの割当や切替方法は術者の動線に合わせて事前に設定しておくことが望ましい。

公表では最新世代であるバリオサージ4もIM-IVとのリンクを想定した設計が示されており、ユニット配置やケーブル配線の自由度が高いレイアウトが作りやすい。実際の導入時には手術室内のスペース、電源・ガス配線、その他の周辺機器との干渉を確認したうえで、操作パネルやフットスイッチの配置をシミュレーションするとよい。さらに、リンク運用に伴うソフトウェアのバージョン整合性や将来的な互換性維持については、販売元と保守契約の段階で確認しておく必要がある。

手術の中断を避けるためには、スタッフ教育と標準操作手順(SOP)の整備が欠かせない。リンク時のエラー対処、切替時の安全確認、予備品の取り扱いなどを事前に定めておくことで、運用上のリスクを低減できる。

ハンドピースX-SG20MLの仕様

X-SG20MLは20対1の減速機構を備えており、減速比によりトルクを稼ぎつつ微速での正確な操作が可能である。歯科・口腔外科領域での骨削除やインプラント下処理など、低速高トルクが求められる場面で有用であるが、術者は回転数とトルクの関係を理解した上で適切な回転域を選択する必要がある。

注水は内部注水と外部注水の両対応であるため、使用する術式や切削生成物の排除状況に応じて使い分けられる。照明にはグラスロッドライトを採用し、32,000 LUX以上の照度を確保しているとされるため、視認性の向上に寄与する。ただし照度表示は実測条件により変動し得るため、臨床環境での確認が望ましい。

チャックはプッシュボタン式で操作性に優れ、JIS規格のサージカルドリルに適合する設計となっている。滅菌については135℃のオートクレーブおよび熱水洗浄器への対応が示されているが、シール部や光学部材の取り扱い、滅菌サイクル回数限度などはメーカーの詳細指示に従う必要がある。特に繰り返し滅菌が必要な部位の保守・交換計画を立てておくことが重要である。

設置と清掃保守

コントロールユニットの外形は幅245 mm、奥行235 mm、高さ90 mm、重量2.1 kgであり、ユニット脇のサイドテーブルに載せる設置が標準的である。コンパクトなサイズは限られたスペースでも配置しやすい利点があるが、ケーブルやチューブの取り回し、電源の確保、周辺機器との干渉防止を事前に確認しておく必要がある。通気や排熱のスペースも確保し、器具が密着しないよう配置することが長期的な安定稼働につながる。

前面のガラスパネルはフラットで清拭動線が短いため、日常の清掃が容易である。清拭時は使用薬剤がパネルや接合部に影響を与えないか確認し、推奨される清掃方法を遵守することが重要である。ハンドピースやチューブの外部洗浄、注水ラインのフラッシングなど、個々の部品ごとに定期的な点検・清掃手順を作成しておくと管理がスムーズになる。

保守契約や点検費の細目は公開情報がなく、具体的費用は販売店見積りとなるため、導入前に保守範囲、応答時間、交換部品費用、定期点検の頻度を明確にしておくことが重要である。保証期間内外の修理対応、貸出機器の有無、ユーザートレーニングの可否などを比較検討して契約条件を整えるとよい。

データの取り扱い

iPadアプリで取得できる回転数やトルクのデータは、院内教育や術後評価に有用である一方で、ファイル形式や外部連携APIの仕様は公開されていないため、そのまま電子カルテに自動取り込みできるとは限らない。現時点ではスクリーンショットやPDF化して症例記録に添付する運用が現実的であるが、手動作業が増えるため運用フローの明確化と担当者の負担軽減策が必要である。

データを診療記録として保管する場合は、患者識別子やタイムスタンプを確実に紐付け、院内の情報セキュリティ規程や個人情報保護法に従って保存・アクセス制御を行うことが求められる。バックアップ体制や長期保存ポリシーも事前に定め、データの整合性を保つ運用を設計するべきである。

将来的に電子カルテや院内システムとの連携を検討する場合は、導入前に販売元へAPIやデータ出力仕様の提供可否を確認し、必要であればインターフェース開発やIT部門との協議を行う。ベンダーが仕様を公開していない場合でも、CSVやPDFなど取り扱い可能な形式でのエクスポート方法や、セキュアなデータ転送手段について交渉しておくと運用の幅が広がる。

経営インパクトと簡易ROI

IM-IVの導入判断は、機器減価の按分、消耗品費、チェアタイムの短縮効果、術後トラブルや再治療率への影響を一つの枠組みで評価することで合理化される。本体希望価格が754,000円、イリゲーションチューブが10本で15,000円(1症例当たり1,500円)、同時注水時に必要な二分岐チューブが1本2,600円であるという前提を用いると、1症例当たりの直接費用を明瞭に算出できる。これに電池などの微小費用を加えることで、実際のランニングコストが把握できる。

簡易ROIは、年間の導入効果を金額換算して年次コストと比較することで算出する。年次効果にはチェアタイム短縮による人件費削減、再治療回避による原価低減、設備操作性向上によるオペレーション効率が含まれる。初期投資を何年で回収するかという視点でブレイクイーブンを求めると、導入の是非がより実務的に判断できるようになる。

一症例コストの考え方

1症例総原価は「本体取得費÷想定総稼働回数+イリゲーションチューブ単価+同時注水時の二分岐チューブ単価+その他微小費」で求められる。想定総稼働回数は年間症例数に想定使用年数をかけた値を用いるのが一般的であり、税務上の耐用年数と実運用年数の双方を検討して院内ポリシーを決める必要がある。設備の稼働率やメンテナンス頻度によって実効稼働回数は変動するため、保守費用や故障率も見積もりに含めるとより現実的である。

具体例を挙げると、本体取得費754,000円を想定使用年数5年で年間500症例と仮定した場合、総稼働回数は2,500回となり1症例あたりの減価償却費は約302円となる。年間200症例、5年で1,000回なら1症例あたり754円、年間1,000症例で5年5,000回なら約151円となる。ここにイリゲーションチューブ1,500円、同時注水であればさらに2,600円を加えることで、1症例にかかる直接コストの目安が導き出される。

チェアタイム短縮の価値化

機器の操作性向上やアイコンUI、フットコントロールによる操作集約は、ステップ間の機器操作時間を短縮することが多い。短縮時間を金額に換算する場合はスタッフの時給を用いて算出するのが基本である。たとえばスタッフの時給を2,000円とした場合、1分当たり換算は約33円となり、5分の短縮で約167円の人件費削減相当になる。術者時間の機会費も重要であり、術者の時間単価が高いほど短縮効果の金銭的価値は大きくなる。

実際の導入効果を明確にするためには、導入前後で術中操作のタイムスタディを行うことが推奨される。平均短縮時間と年間症例数を掛け合わせれば年間の時間削減量が求まり、それにスタッフ時給や術者の時間単価を乗じることで年間のコスト削減額を算出できる。こうした数値を年度比較で示すことで、導入による運用上の優位性を経営層に説明しやすくなる。

再治療率と原価改善

AHC(自動トルク補正)などにより設定トルクと実トルクの乖離が小さくなると、埋入時の過負荷やドリルの焼き付きなど術中トラブルのリスクが低減する可能性がある。機器仕様だけで直接的な予後改善を断定することはできないが、術中エラーの減少は間接的に再治療率の低下に寄与しうるため、再治療に伴う直接原価の抑制につながる。重要なのは、自院の症例データで再治療率の推移を継続的に追跡することである。

評価手順としては、導入前1年分の再治療率を基準値として算定し、導入後に同じ指標を追跡する。再治療1件あたりの平均原価を設定すれば、回避できた再治療件数に基づく年間コスト削減額を見積もることができる。例えば基準が3%、導入後に2%に低下した場合、年間症例が1,000件なら10件の再治療回避となり、1件当たりの再治療原価を50,000円と仮定すれば年間で500,000円のコスト削減に相当する。こうした具体数値は経営判断を裏付ける有力な材料となる。

使いこなしのポイント

導入初期は、使用するインプラントシステムごとに8プログラムの割り当てを決め、段階名称を術式の流れに合わせて院内標準化することが有効である。術式の各フェーズを明確に呼称化しておけば、術者間で用語や操作手順の齟齬が生じにくく、手順の再現性が高まる。標準化は単に設定を揃えるだけでなく、誰が見ても一目で現在の段階が分かる表示やチェックリストを併用することで効果が上がる。

術者交代が多い医院では、回転数とトルクの表示位置の読み合わせ訓練を短時間で反復することが重要である。特にライトやモニタ配置、表示色の違いなどで誤認が起きやすいため、実際の機器操作を想定したロールプレイを取り入れ、認識のズレを早期に修正する。さらに操作マニュアルは図示や写真を多用し、視覚的に同一動作を確認できるように整備しておくとよい。

予防的な運用ルールを明文化しておくことで、現場での判断負荷を減らすことができる。たとえば「同一症例につきドリルは必ず新品から開始する」「重大な異常があれば稼働停止し上長に報告する」といった簡潔なガイドラインを掲示しておけば、業務の均質化と安全性の向上につながる。

AHCの運用とドリル管理

AHC(オートハンドピースキャリブレーション)はハンドピース交換時と定期メンテナンス後に必ず実施し、校正日や実施者名をユニット側に貼付して可視化することが勧められる。校正の記録を明確に残すことで、トラブル発生時に原因追及が容易になり、予防保守の制度化が進む。校正手順は簡潔にまとめ、診療補助者でも確実に実行できるようにする。

ドリル管理は劣化による発熱が術中の問題に直結するため、使用回数と使用状況を厳密に管理する必要がある。診療補助者に回数管理を委任し、使用ログをシンプルな台帳またはバーコード/QR管理で可視化すると運用負担が軽減される。ガイド下手術では精度と冷却が特に重要となるため、シーケンスドリルは必ず新品のものを確保し、保管・補充ルールも明確に定めておく。

点検項目としては、刃先の摩耗、有無、ねじ山の欠損、清掃状態、滅菌記録などを含め、定期的に写真記録を残すことが望ましい。劣化が疑われる場合は使用を中止し、代替品を直ちに用意することで術中トラブルを未然に防止できる。

サージカルガイド併用時の注意

サージカルガイド併用はヘッドが小型化されアクセス性が向上する利点があるが、同時に注水や冷却が届きにくくなる場面が残る。特に深部や角度の付いた導入路では外部注水だけでは不十分になり得るため、注水ルートを事前に検討することが重要である。術者は視認性と冷却のバランスを常に意識して手技を進めるべきである。

二分岐チューブによる内部外部同時注水は冷却の確実性を高める効果がある一方で、チューブの取り回しによる抵抗が操作感に影響しやすい。術前にホースの固定位置やホースガイドの配置を決め、抵抗を最小限に抑える工夫をしておくと操作が安定する。さらに術中にチューブが引っかからないよう、術者と補助者で役割を明確にしておくことが望ましい。

術前シミュレーションでは、実際のガイドを用いて注水の到達性や視野の確保を確認し、必要ならばガイドの開口部を調整する。万が一注水が不十分になると熱傷リスクや骨の過熱による合併症につながるため、冷却状況のチェックを術中のルーティンに組み込むことが安全対策となる。

教育とデータ活用

iPad連携などで取得するログは新人教育の教材として非常に有用である。埋入時の踏み込み量とトルクの立ち上がり方の関係を可視化して共有すれば、失敗例の再現学習が効率よく行える。動画やログを用いた振り返りを定期的に実施することで、個々の癖や改善点を客観的に把握できるようになる。

ただしデータの院外共有や長期保存にあたっては個人情報やセキュリティに十分注意する必要がある。患者情報は匿名化した上で共有し、クラウド保存先やアクセス権限、保存期間などのルールを明文化して運用することが必須である。院内での閲覧権限も役割ごとに限定し、ログ改ざん防止のためのタイムスタンプ管理やバックアップ体制を整えておくとよい。

教育プログラムとしては、ログ解析を用いたフィードバックと実機での反復訓練を組み合わせることで習熟が促進される。チーム全体で共通の評価軸を持ち、成功例だけでなく失敗例も学習資源として扱う文化を醸成することが、安全で安定した埋入オペレーションにつながる。

適応と適さないケース

IM‑IV装置は遊離端症例や口腔開口量が限られるケース、ガイド下ドリリングを用いるインプラント埋入、あるいは硬い骨質での埋入操作など、視認性や重心設計の利点が活きる場面で特に有用である。小スペースでの操作性が高く、ハンドピースの取り回しが楽であるため、術者の視界を確保しながら精度よくドリリングや埋入が行える。局所的な骨増生や狭義の骨切削が中心となる手技では、IM‑IV単体で十分に対応可能なことが多い。

一方で、広範囲の骨切除やサイナスリフトのような大きな骨切開を伴う手技では、骨を選択的かつ保護的に切削できる超音波(ピエゾ)デバイスが適応となる場面が多い。超音波装置は軟組織損傷を抑えつつ骨を切削できるため、上顎洞底挙上や薄い骨壁の切除といった繊細な操作に向いている。こうした症例ではIM‑IVでは手技が完結せず、ピエゾや他の補助器具との併用が前提となることが少なくない。

さらに機器選択以前に検討すべき点として、全身状態や服薬管理がある。抗血小板療法や抗凝固療法下の患者、心疾患や出血傾向を有する患者では、歯科単独での判断に限界があり内科医や主治医との連携が不可欠である。治療計画は画像診断と評価を基に器械の適合性を判断し、必要に応じて超音波装置やガイド手技と組み合わせることで安全性と治療効果を高めるのが望ましい。

導入判断の指針

保険中心で効率最優先の医院

保険診療を主軸にし、短時間で多くの患者を回すことが求められる医院では、プログラム運用と表示の統一性が有効である。術者ごとの手順や表示がそろうことで作業のばらつきが減り、チェアタイム中の細切れの待ち時間が少なくなる。結果として診療回転率が向上し、同一スタッフでの教育コストも抑えられるという効果が期待できる。

導入に際しては、プロトコールの標準化とモニタリング体制の構築が重要である。具体的には術式ごとの標準時間や装置設定を定め、実際のチェアタイムや滞留時間を定期的に計測して改善サイクルを回すことが求められる。また、操作画面や提示内容の統一は新人や非常勤医師が混在する環境でも安定した診療を実現するために有効である。

自費比率を高めたい医院

自費診療の比率を上げたい医院では、術中ログや処置の可視化が患者の納得感を高める重要な手段となる。術中の記録や画像、工程の説明を用いることで治療の透明性が向上し、価格提示に対する心理的な抵抗が下がる。説明資料としての術中ログは同意取得や治療後フォローにも使え、患者満足度の向上と紹介増加にもつながる。

ただし、術中ログを商用利用する際は患者の同意取得とプライバシー管理が不可欠である。治療説明用の映像・記録は保存方法や閲覧権限を明確にし、診療記録として適切に扱う必要がある。また、ログを用いたカウンセリング手順や院内での見せ方を標準化し、スタッフ全員が使えるツールに落とし込むことが成約率改善には重要である。

口腔外科やインプラント中心の医院

口腔外科やインプラントを中心に行う医院では、外科機器とシステムの連携がチームワークの負担軽減に直結する。バリオサージとのリンク運用により、機器操作の踏み替え動作や不必要な器具交換が減り、術者と助手間のコール回数が減少する。これにより無駄な動作が減り、手術の流れがスムーズになってスループットが向上する。

導入時には機器間の物理的・ソフトウェア的互換性、ならびに緊急時の手動介入方法を確認しておく必要がある。外科領域では突然のトラブル対応が発生しやすいため、バックアップ装置や手順書、定期的な保守計画を整備しておくことが安全性確保と稼働率維持に重要である。また、チーム全員が連携操作に習熟するためのトレーニング期間を見込むことが効果を得る鍵である。

導入前のチェックポイントと効果測定

導入判断を下す前に確認すべき点は、現行ワークフローの可視化と改善目標の明確化である。まず現状のチェアタイム、滞留時間、助手の稼働状況などを測定し、どの工程で最も効率化効果が得られるかを把握する。次に機器やソフトの互換性、データ保存・セキュリティの要件、スタッフの受け入れ態勢を評価することが必要である。

効果測定は定量的な指標と定性的な評価の両面で行うべきである。定量的には一人当たりの診療件数、平均チェアタイム、滞留時間、助手コール数、自費成約率などをKPIとして設定する。定性的には患者の納得度やスタッフの負担感、手技の標準化度合いをアンケートや観察で評価する。初期はパイロット運用を小規模で行い、得られたデータを基に段階的に範囲を拡大する方法がリスクを下げる最も確実な導入方法である。

よくある質問

IM-IVの薬事区分と番号は何か

IM-IVは管理医療機器に該当する機器である。国内向けの製品情報として承認番号は公表されており、製品添付文書や製造販売業者の資料に承認番号が記載されているため、購入前に確認することが重要である。

承認番号や適応、使用上の注意は添付文書に基づいて確認・遵守する必要がある。医療機関は添付文書に従って適正使用を行い、定期的な点検や保守もメーカー指示に従って実施することが求められる。

ハンドピースX-SG20MLの要点は何か

X-SG20MLハンドピースは20対1の減速機構を備え、低速で高トルクの回転を得られる設計であるため、精密な操作やトルクが求められる処置に適している。内部注水と外部注水の両方に対応するため、治療スタイルや術者の好みに合わせて使用方法を選択できるのが特徴である。

照度は32,000 LUX以上を確保しており、術野の視認性を高めることで処置の精度向上に寄与する。チャックはプッシュボタン式であり、規格ドリルに適合するためドリル交換が容易で作業効率が高い。消耗や故障に備えて、メーカーの保守指示や交換部品情報を事前に把握しておくことが望ましい。

イリゲーションチューブは再使用できるか

イリゲーションチューブは単回使用の医療器材であり、再使用は不可である。使用後の再滅菌や再使用は感染リスクを高めるため、メーカーの指示および関連する法規・ガイドラインに従って廃棄する必要がある。

二分岐チューブも同様に単回使用で設計されている。医療現場では廃棄方法を含めた管理体制を整え、使い捨て部品の在庫管理や廃棄コストを見積もることが重要である。

一式の価格と消耗材の目安はどれくらいか

本体一式の希望医院価格は754,000円と公開されているが、実際の販売価格は販売店や導入条件によって異なる場合があるため、正式な見積りは販売店に確認する必要がある。保守契約費については公開情報がなく、個別に販売店見積りを取得して比較検討することが勧められる。

イリゲーションチューブは10本で15,000円(1本あたり1,500円)で提供されている。複数同時注水を行う場合に用いる二分岐チューブは1本2,600円である。消耗材費は使用頻度や症例数によって変動するため、月次・年次の使用本数を想定してランニングコストを算出すると導入後の運用計画が立てやすくなる。