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GC/ナカニシ「バリオサージ 4」レビュー!ワイヤレスFCとSurgic Pro2連携

GC/ナカニシ「バリオサージ 4」レビュー!ワイヤレスFCとSurgic Pro2連携

最終更新日

抜歯窩の骨整形やサイナスフロアエレベーションにおいて、従来の超音波ボーンサージェリーでは硬い皮質骨での切削時間が延びる、フットペダルや潅流チューブの配線が術野や術者の動線に干渉する、といった運用上のストレスが指摘されてきた。近年、GCとナカニシが無線フットコントロールや他機器連携を備えた最新機種を市場投入しており、こうしたボトルネックを解消することを狙った設計がなされている。ここでは臨床的観点と経営的観点の両面から新世代超音波ボーンサージェリーの有用性を検証し、導入判断のための実務的指針を整理する。

本稿は機器の物理的性能や臨床効果だけでなく、ワークフロー改善、メンテナンス負荷、導入後の収益性を総合的に評価することを目的とする。実運用におけるメリット・デメリットを明確化し、投資対効果(ROI)を合理的に見積もるためのチェックリストを提示する。特に無線フットコントロールと他機器連携というファクターが、術中の効率性やスタッフの負担軽減に与える影響を中心に検討する。

製品の概要

本製品は「バリオサージ 4」という正式名称で、市販上の一般的名称は電動式骨手術器械である。管理医療機器かつ特定保守管理医療機器として認証を受けており、認証番号は307ABBZX00004000である。販売形態としてはフットコントロール無しのセットが基本となり、操作の好みや施設の運用に合わせて無線または有線のフットコントロールを別売で追加できる仕様になっている。

ハードウエアはコントロールユニットとLED付ハンドピースを中核に構成されており、手術室での取り回しや設置に配慮した設計である。院内移動用の専用カート(i CART-L)や、複数機器をまとめて設置するためのリンクスタンドなどのオプションが用意されているため、診療室や手術室の環境に応じた柔軟な配置が可能である。コントロールユニットは設定や出力の管理を担い、LED付ハンドピースは視認性と取り回し性を両立している。

チップ類は多種がラインアップされており、骨切りや骨整形、抜歯補助、逆根管充填窩洞の形成、メインテナンスといった多様な術式に対応する設計である。臨床で想定される各種処置に合わせてチップを交換することで、1台で幅広い用途をカバーできる点が特徴である。安全性と精度を保ちつつ、治療の効率化を図ることが想定されている。

本機はナカニシ社の口腔外科用マイクロモーターシステム「Surgic Pro2」とBluetoothで連携し、1台のフットコントロールで両機を切り替えて操作できる点が大きな利点である。これにより、インプラント窩形成から骨切削へ、あるいはその逆への移行を足元のペダルを移動することなくスムーズに行うことができ、手術中の動線や操作負担の軽減に寄与する。複数機器を使用する場面でのワークフロー改善に有用な設計である。

主要スペックと臨床的意味

コントロールユニットと出力制御

発振周波数が28〜32kHzという設計は、骨と軟組織を選択的に効率よく処理するための周波数帯域に位置する。超音波振動は周波数と振幅の組み合わせで切削能が決まり、28〜32kHz程度の安定した振動域は骨切削において効率と安全性の両立に寄与すると考えられる。これに加え、オートチューニングによる負荷追従機能は、手術中の抵抗変化に対して発振特性を自動補正し、振幅やパワーの急激な変動を抑えて安定した切削を維持することを目指している。

プリセットプログラムがSURGで5、ENDOが2、PERIOが2と分かれている点は、術式ごとの操作再現性を高める実用的な配慮である。術者はデフォルト設定を基準に微調整を行うことで操作の標準化が図れ、術式ごとの経験差を吸収しやすくなる。注水ポンプは最大76mL/minの流量を持ち、切削時の熱発生抑制とチップ先端の視認性確保という相反する要件をバランスさせる設計である。十分な注水により骨の温度上昇を抑え、熱による骨壊死リスクの低減を期待できる一方で、光学的な視認性も維持できる流量領域が確保されている点が臨床的意味を持つ。

バーストモードの使い分け

バーストモードは基本的に連続振動に短い高振幅の振動を重畳することで、ハンマー効果に近い力学的刺激を与え、硬い皮質骨に対して効率的に進入できるように設計されている。3段階の設定により、骨質や術式の要求に応じて追い込み具合を調整できるため、過度な押しつけ圧に頼らずに切削を開始する局面で有用である。硬い骨に対して無理に力を加えるよりも、段階的にバースト強度を上げることで削進性を改善し、周囲組織への不要なストレスを軽減しやすい。

臨床運用では、硬組織の境界や狭窄部位での使用判断が鍵となる。通常の連続振動で進行しない場合にバーストモードを選択することで、術野での操作性を向上させる一方、バーストの強度や当て方を誤ると局所的な熱発生や振動による不快感が生じる可能性があるため、逐次的な評価と細やかな操作が求められる。したがって、術者は骨質評価と目的に応じて適切な段階を選択し、温度管理と視認性を確保しながら使い分けることが重要である。

ハンドピースと視認性

LED搭載のスリムで軽量なハンドピースは、口腔後方や開口制限のある症例でのアクセス性を高める設計である。重量・形状の最適化によって術者の疲労を軽減し、長時間の操作でも手元の安定性を保ちやすい点が臨床上の利点となる。光量調整機能を備えることで暗視野を避けつつ、注水下での反射を抑えて刃先や処置面のコントラストを維持しやすく、精細な操作の補助となる。

骨切削用チップに施されたTiNコーティングや刃先の目立て処理は、摩耗耐性と目詰まり抑制の両面で効果を発揮する設計である。コーティングにより切れ味の持続が期待でき、切削効率の低下を防ぎやすい。さらに、これらのチップは滅菌やメンテナンスの観点でも扱いやすさを考慮した素材・表面処理がなされていることが望ましく、臨床ではチップの交換タイミングや清掃手順を規定しておくことが安全性と再現性確保に繋がる。

無線フットコントロールの運用価値

無線フットコントロールは単四電池3本で駆動し、本体寸法は260×185×65mm、重量は1.1kgである。ケーブルに縛られない配置自由度は術者の姿勢保持を助けるだけでなく、アシスタントや機器の動線確保にも寄与するため、術中の効率化と安全確保に資する。無線による配線削減は床周りの煩雑さを減らし、器材の不意な引っかかりや転倒リスクの低減にもつながる。

一方で電波環境や院内の方針に応じては有線仕様を選択できる点は実務的である。無線機器は電波干渉やバッテリー切れの懸念が存在するため、重要手技時の確実性を重視する場合には有線での運用や予備の電池管理、接続確認のワークフロー整備が必要となる。感染対策や清掃の観点からはフットコントロールの表面素材や防水性も運用上の考慮点であり、臨床導入時には日常のメンテナンス手順を確立しておくことが望ましい。

連携機能の臨床的意味

Surgic Pro2とのリンクにより、インプラントサイトの形成から超音波を用いた骨整形へシームレスに1ペダルで移行できるワークフローは、術中の動作効率と安全性を高める利点がある。回転機器と超音波機器の操作を統合することで、機器間の切替ミスや手技の中断を減らし、術野への集中を維持しやすくなる。これにより手術時間の短縮や術者の負担軽減が期待される。

さらにSurgic Pro2のiPadアプリを介した回転速度やトルクの記録、Osseo 100+のISQ(インプラントの初期固定指標)を併せたデータ保存は、術後経過の追跡や根拠に基づく説明に有用である。データ一元化は患者への術後説明、リスクコミュニケーション、学術的な記録管理や施設内の品質管理にも利便性を提供する。ただしデータ管理は個人情報保護や院内規程に従った運用が必要であり、適切なバックアップとアクセス制御を設定することが不可欠である。

互換性と院内運用

設置と機器レイアウト

本体は幅245mm、奥行235mm、高さ90mmとコンパクトであり、天面もほぼフラットな設計であるため、限られたスペースへの据え付けや器材との併置がしやすい。キャリングケースとi CART-Lが用意されているため、オペ室と診療室の間での可搬運用や、ユニット側面にまとめて配置する運用が取りやすい。リンクスタンドを併用すればSurgic Pro2との縦置き一体運用が可能となり、器材の一体化で作業動線が整理される利点がある。

設置時には機器の重心や取り回し、清掃性を考慮して配置することが重要である。移動運用を前提とする場合はキャリングケースの耐久性と持ち運び時の固定方法、ユニット併設時はアクセスしやすい位置に配線を通すことを確認する。手技中の視認性やアシスタントの動線と干渉しない高さと向きに調整し、万一の落下や転倒を防ぐための固定具や荷重確認を行うことが推奨される。

データとアクセサリの互換性

公開情報上では超音波本体からのデジタル記録機能は限定的であり、術中データの保存はSurgic Pro2側が担う構成になっている。そのため術中動画や計測データを確実に保存・管理するためには、Surgic Pro2の記録設定やバックアップ運用を事前に確認し、院内の電子カルテや画像管理システムとの連携可否を整備しておく必要がある。外部へのエクスポート機能やデータ保存期間についても運用ポリシーとして明確にしておくことが望ましい。

チップは用途に応じた多数のバリエーションが用意されており、先端形状や粗さ、長さの選択によって切削効率と組織への侵襲のバランスを調整できる。取扱説明書では十分な注水と温度上昇への注意が求められているため、術中の温度管理や注水の方法をチェックリストに組み込み、担当者間で標準手順を共有しておくと安全性が高まる。術中トラブルを避けるため、チップの摩耗管理や在庫管理、交換タイミングについても院内ルールとして定めておくことを推奨する。

歯科ユニットとの相性

GCの歯科用ユニット群はアクセサリ類や電源取り回しの選択肢が豊富に用意されており、サイドテーブルやアシスタント側の動線と干渉しない設置が比較的容易である。ユニット側面へのまとめ配置やリンクスタンドとの連結により、作業スペースを圧迫せずに必要機材を近接配置できる点が実務上の大きなメリットである。設置時にはアシスタントの手の届く範囲やペダル操作のしやすさを優先してレイアウトを検討することが重要である。

超音波とマイクロモーターを1ペダルに集約する運用は、床面のケーブル本数を減らすことで清掃性が向上し、転倒リスクの低減にも寄与する。ケーブルやホースの取り回しは滅菌カバーや配線ダクトを用いて整理し、定期的な点検で摩耗や断線の早期発見に努めることが望まれる。また、ユニットとの物理的接続や電源条件が機器仕様に合致しているかを導入前に確認し、必要であればメーカーと調整した上で運用ルールを整備しておくべきである。

経営インパクトと簡易ROI

医療機器導入では、購入価格だけでなく運用コストと得られる便益を合わせて評価する必要がある。機器の稼働率や消耗品の単価、スタッフの時間配分が院内収支に与える影響は大きく、導入前に簡易的なROI(投資対効果)を算出しておくことで意思決定の精度が高まる。以下は現場で集めやすい指標と、簡単な算出方法の例である。

初期費用の把握

本体の希望小売価格は一例として税別930,000円である。フットコントロールは無線と有線の選択肢があり、セット構成やキャンペーンにより実勢価格は変動するため、正式な見積もりは販売代理店やメーカーに確認することが重要である。導入時には本体に加えてチップ追加、潅流ライン、設置台、運送費、設置作業費、導入研修や初期点検費用などがパッケージに含まれる場合がある。これらを含めたトータルの初期投資額を押さえておくことが第一歩である。

また会計処理や資金調達の方法により負担感が変わる。購入一括とリースではキャッシュフローが異なり、減価償却年数の設定や残存価値の有無も院内の会計方針によって決まる。保守契約の内容や保証期間、消耗部品の供給体制も長期運用コストに直結するため、見積書に保守・交換条件を明記してもらい比較検討することを勧める。

1症例コストの考え方

潅流チューブは基本的に単回使用で、メーカー純正品と互換品で価格差が生じる。参考値として10本入りで税別16,000円という市場情報があり、この場合は1症例あたり約1,600円と見積もることができる。ただし単価は購入ロットや仕入先、キャンペーンで変化するため、実際の購入単価を元に算出することが必要である。その他の消耗品や滅菌材料、廃棄処理費用も1症例コストに含めるべきである。

チップ類は術式や使用頻度により摩耗速度が異なり、年間症例数と交換頻度から按分して費用を算出する。例えばチップが年に数回交換を要する場合は、年間交換コストを総症例数で割って1症例当たりのコストを求める。加えて、定期点検やセンサー交換といった保守費用も年間費用として按分する必要がある。実際の現場データを集め、純正品・互換品の比較やボリュームディスカウントの可能性を確認することが重要である。

簡易式

1症例当たりの総コストは次の和で概算できる。 ・本体の減価償却費を1症例に按分した額 ・フットコントロール等付帯機器の按分費用 ・潅流チューブ等の消耗材費 ・保守点検費等の按分費用 これに対して、チェアタイム短縮など院内の人件費削減効果を便益として差し引けば簡易的なROIの見通しが得られる。

計算式の例を示す。まず本体の年間償却費は本体価格÷想定耐用年数で求め、年間症例数で割って1症例当たりに按分する。消耗品は単価×1症例あたりの使用量で計算する。人件費削減は1症例当たりの短縮時間(時間単位)×スタッフの時給で算出する。実例として仮に本体価格930,000円、耐用年数5年、年間症例数600件、潅流チューブ1,600円/症例、チェアタイム短縮5分(0.083時間)、スタッフ時給3,000円とすると次のようになる。年間償却額は930,000÷5=186,000円、1症例当たりの償却費は186,000÷600=310円。消耗材は1,600円、時間短縮による便益は0.083×3,000=250円である。これらを合わせると1症例当たりの実質コストは310+1,600−250=1,660円となる(保守費用等は別途按分する)。

最後に、導入判断の際は複数シナリオで感度分析を行うことが望ましい。例えば症例数が増減した場合や消耗品単価が変動した場合に収支がどのように変化するかを試算し、最悪・想定・好調の三段階で比較する。メーカー見積もりでバンドル価格やトライアル条件を引き出し、現場での実測データをもとに再評価するプロセスを組み込むことで、より確度の高い投資判断が可能になる。

使いこなしのポイント

無線フットコントロールを安全かつ効率的に運用するには、機器の機能理解と現場での運用ルールの両方が重要である。単に操作方法を教えるだけでなく、どういう場面でどの設定を選ぶか、トラブル時にどう対処するかを現場のワークフローに落とし込むことが必要である。院内マニュアルとチェックリストを整備しておけば、スタッフの入れ替わりがあっても手順のばらつきを減らせる。

日常の運用では、安全確認と記録の習慣を徹底することが事故防止につながる。機器のペアリングを含む初期設定、チップや注水設定の選択理由、トラブル時の担当者や連絡先を明文化しておくとよい。定期的な振り返りとマニュアルの更新を行い、現場の声を反映させることで使い勝手と安全性を両立できる。

初期設定と教育

無線フットコントロールのペアリング手順は製品によって異なるが、手順を明記して院内マニュアルに組み込めば新しいスタッフでも短期間で運用に馴染める。ペアリングの成功確認方法や接続が切れたときの再接続手順、バッテリー管理やファームウェアの更新管理方法も合わせて記載すると運用リスクを低減できる。定期的に機器状態をチェックする日常点検項目もマニュアルに含めるべきである。

初期トレーニングではSURGプリセットの目的と、バーストモードの閾値感覚をスタッフ間で統一することが重要である。具体的にはプリセットごとの想定用途と利点、バーストの動作特性を実機で確認し、切削感覚や聴覚・視覚での反応を共有する。単純な操作技術だけでなく、押しつけ圧(ハンドピッシャーによる過度の押圧)に頼らない正しい切削姿勢と手の使い方を反復トレーニングで定着させることが必要である。

教育プログラムにはシナリオ形式の実習を取り入れると効果的である。実際の症例に近いモデルや模擬手技を用い、異なる骨質や出血状況での設定変更、注水調整、非常時の停電や接続断の想定と対処法まで一連の流れを体験させる。トレーニング後は運用記録をレビューし、個々の習熟度に応じたフォローアップ教育を行う体制を整備することが望ましい。

チップ選択と注水

チップは用途と骨質に応じて適切に選定する必要がある。皮質骨のように硬度が高く厚さのある部位では、TiNコーティング(窒化チタン)などの耐摩耗性の高い骨切り用チップが有効である。これらのチップは摩耗に強く切削面の安定性を保ちやすいため、切り込みが安定しやすい。バーストモードを併用すると、瞬間的な高出力で効率良く切削できる場面があるため、硬い部位では両者の組み合わせが有効だとされる。

一方、海綿骨など内部が多孔質で脆弱な部位では過度な出力や長時間の連続切削を避けることが重要である。高出力を無闇に用いると骨組織の破壊や熱損傷を招きやすく、必要に応じて低出力設定や断続的な切削を選択する。チップの形状やサイズも切削効率と視野確保に影響するため、症例に応じた標準セットを定めておくとよい。

注水は視野確保と温度管理の両立を念頭に置いて調整する必要がある。最大流量に頼るのではなく、切削時の視野を妨げない範囲で流量と噴霧方向を工夫し、骨表面の過熱を防ぐ。製品の使用説明書で推奨される注水方法や温度管理指針は事故防止に直結するため必ず遵守すべきである。注水ポンプやチューブの点検、滅菌手順、詰まりや逆流のチェックも定期的に行い、異常があれば直ちに運用を停止して点検する運用ルールを設けることが望ましい。

適応と適さないケース

適応

超音波骨切削器は、骨の微細な整形や軟組織保護が求められる処置に適している。具体的には骨切削や骨整形、抜歯補助、上顎洞底挙上、逆根管充填窩洞形成、メインテナンスといった場面でその繊細さが生かされる。超音波振動により硬組織を選択的に削るため、隣接する軟組織や神経・血管を傷つけにくいという利点がある。

インプラント窩形成そのものは馬力のあるマイクロモーターで行い、本機は周囲骨の整形や膜の挙上、細部の仕上げに用いる運用が現実的である。こうした併用により、初期形成の効率と仕上げの安全性を両立できる。臨床上の適応を整理すると次のようになる。
・骨縁の微調整や骨面の滑沢化
・抜歯窩のトリミングや残存骨の除去
・上顎洞底の慎重な挙上や薄膜操作
・逆根管(逆根管充填)窩洞の正確な形成
これらはいずれも超音波の制御性と低侵襲性が有利に働く場面である。

適さないケース

一方で、厚い皮質骨の大量切削や時間を最優先する場面では回転切削が優位である。超音波は選択的かつ精密な削除に長けるが、広範囲の大量除去や高速での切削が求められる処置では時間効率が劣る。したがって、骨切除量が多く短時間で終わらせる必要があるケースでは回転工具を選択するべきである。

また、装置周辺の環境や運用面の制約も適合性に影響する。無線フットコントロールを使用する施設でノイズや干渉が多い場合は、有線フットコントロールの方が安定して操作できる。さらに、データの自動保存やトレーサビリティはSurgic Pro2側の機能に依存するため、超音波側単体で厳格な記録管理が必要な運用には適合しにくい。運用上はマイクロモーターとの併用計画、フットコントロールの接続方式確認、記録管理の体制整備を事前に検討することが重要である。

導入判断の指針

保険中心で効率最優先

抜歯や小外科の件数が多く、チェアタイムの微少短縮が収支に直結する診療所では、無線ペダルや1ペダル切替の導入が有効である。これらは術者の動線を減らし手技の切り替えを素早くするため、1症例あたりの滞在時間を着実に短縮しやすい。導入に際しては初期投資と実際の稼働で得られる時間短縮効果を見積もり、回収期間が妥当かを検証することが重要である。

潅流チューブなど消耗品は単価が積み重なると運転資金に影響を与えるため、単価の明示と症例数に基づく在庫計画が必要である。症例頻度や発注リードタイムを基に適正在庫を設定し、使用期限の管理やロットごとのトレーサビリティを整備すると廃棄ロスを抑えられる。仕入先と価格交渉や定期発注契約を結べば単価を抑え、キャッシュフローの安定化につながることが多い。

実務面ではスタッフ教育とメンテナンス体制を同時に整えることが肝要である。機器は日常点検や消耗品交換の手順が簡潔であるほど現場で定着しやすい。また、導入前にパイロット期間を設け、実際のチェアタイムと消耗品使用量を記録してから最終判断するのが望ましい。これにより過剰在庫や期待外れの稼働率を避けることができる。

高付加価値自費強化

インプラントや補綴など高付加価値診療を強化する場合は、手技データの一元化と記録保存がカウンセリングの説得力になる。Surgic Pro2のような機器連携とiPadでの手技ログ保存は、術前説明や術後フォローで客観的資料として提示できるため患者の信頼獲得に寄与する。導入に当たってはデータの保存形式やバックアップ、院内でのアクセス権管理をあらかじめ定めておく必要がある。

フロア移動を伴わない機器配置はチームワークの負担を軽減し、手術室内での作業効率を高める。機器の配置設計は術式ごとの動線を想定して行い、器具や補助機材の置き場を標準化することで切替時の迷いを減らすことができる。さらに、患者説明用のビジュアル資料やログを用いた説明フローをテンプレート化すればカウンセリングの質を安定させられる。

自費診療では費用対効果の説明が重要であるため、導入機器の耐久性やランニングコスト、アップデートの有無を明示しておくと患者説明がしやすい。院内での標準料金や保証規定と合わせ、術式に対する記録保存の運用ルールを作成しておけばトラブル予防にもなる。スタッフに対するデジタル記録の取り扱い研修も忘れてはならない。

口腔外科色の強い医院

骨整形や膜挙上といった高度な外科処置を日常的に行う医院では、バーストモードの活用が有効である。バースト駆動は押しつけ圧を分散させることで視野の確保と触覚情報の維持に寄与し、繊細な手技での安全性を高めることが期待できる。ただし、すべての骨質や部位に万能というわけではないため、適用の可否は症例ごとに評価する必要がある。

重度の皮質骨や硬い骨質では回転切削との併用をあらかじめプロトコル化しておくと、手術中の判断に迷いが生じにくくなる。併用時の機器切替手順、切削条件、冷却方法や器具の持ち替えルールを文書化し、術者と助手で共通理解しておくことが安全管理につながる。術前に想定されるシナリオを複数用意しておけば、突発的な骨質変化にも迅速に対応できる。

導入後は一定期間のレビューを欠かしてはならない。手技別の合併症率や術時間、器具の摩耗具合を定期的に集計して運用改善に反映することで、安全性と効率の両立が図れる。さらに、外科機器は定期点検やメーカーの推奨メンテナンスを遵守することで故障リスクを下げ、長期的にはコスト抑制にもつながる。

よくある質問

認証区分と認証番号は何か

本機器は管理医療機器に該当し、かつ特定保守管理医療機器として扱われる。これは医療機器の中でも使用や保守に際して専門的な管理が求められる区分であるため、導入や運用時には関連法規やメーカーの保守指示に従う必要がある。
認証番号は307ABBZX00004000である。認証番号は製品の適合性を示す重要な情報であり、購入前の確認や施設内での管理資料として保管しておくことが望ましい。

無線フットコントロールの運用上の注意は何か

無線フットコントロールは電源に単四電池を3本使用する設計で、電池残量低下が操作性に影響を与えるため、定期的な点検と予備の準備が必要である。寸法や重量はメーカー公表値を参照のこと。設置場所や使用環境によっては操作感に差が出る場合があるため、導入前に実機での確認を推奨する。
無線機器のため電波環境に左右される点に注意する。手術室内の他機器や構造物による干渉が想定される場合は、有線仕様の選択肢を検討すると安定性が高まる。必要に応じてメーカーや販売店に現場条件を相談し、最適な構成を決定することが重要である。

価格感はどの程度か

本体の希望小売価格の一例として税別930,000円が示されているが、実際の販売価格は構成や付属品、販売ルートによって変動する。追加のアクセサリや保守契約、導入支援が必要な場合は総費用がさらに増える可能性がある。
正確な導入費用を把握するためには、具体的な機種構成と使用環境を明示して販売店から見積を取得することが肝要である。複数の販売ルートで比較検討することで、導入後のコストやサポート体制も含めた判断ができる。

他機器連携の意義は何か

本機器はSurgic Pro2と連携でき、1台のフットコントロールで両機を操作可能である。この連携により回転切削と超音波の切り替えを迅速に行えるため、術中の操作効率向上や手術時間短縮に寄与することが期待される。連携による操作性は実際の手技やユーザーの習熟度によって効果が左右されるため、導入前にデモやトレーニングを行うことが望ましい。
Surgic Pro2はiPadアプリを介して術中データを保存する機能を備えているため、術後の記録管理や症例レビューに有用である。データの保存・管理方法や互換性、セキュリティ要件については施設の情報管理方針に沿って確認しておく必要がある。

消耗品コストはどこを見ればよいか

主な消耗品の一例として潅流チューブがあり、単回使用を前提とした製品では10本入りで税別約16,000円程度の市場例がある。しかし、適合品やパッケージ構成によって価格は変動するため、実際のコストは販売店に確認することが必要である。
消耗品のコストは使用頻度や滅菌・廃棄管理に伴う諸経費とも関係するため、長期的なランニングコストを見積もる際には本体費用と合わせて総合的に評価することが重要である。購入前に適合確認と見積取得を行い、運用開始後も消耗品の使用状況をモニタリングしてコスト管理を行うことを勧める。