1D - 歯科医師/歯科技師/歯科衛生士のセミナー視聴サービスなら

モール

アドデント社/モリタ「ライトライト」レビュー!コードレスLEDシェードテイキングライト

アドデント社/モリタ「ライトライト」レビュー!コードレスLEDシェードテイキングライト

最終更新日

製品の概要

ライトライトシリーズは、携帯性に優れたハンドヘルド型のシェードテイキングライトであり、臨床現場での歯の色調判定を目的に設計されている。小型筐体でありながら自然光に近い色味を再現するための光源特性と高い演色性を備え、人工光源による色再現の偏りを抑えることを主眼にしている。口腔内の微細な色差を観察する際にも取り回しが良く、チェアサイドでの使用に適している。

後継機のライトライト2は、多スペクトル表示に対応しており、従来の単一光源表示に比べて複数の波長帯での観察が可能となることで、色調判定の幅を広げることができる設計である。上位モデルであるライトプロは充電式バッテリーを内蔵し、ブラックライト機能を追加している仕様があるため、用途や診療スタイルに応じて機種選択が可能である。いずれのモデルにもニュートラルカラーの背景タブが付属し、背景色による色ノイズを抑えて比較評価を容易にしている。

正式名称とバージョン

国内での呼称は初代がライトライト、改良版がライトライト2(海外表記では Rite‑Lite 2 HI CRI に相当)である。上位モデルはライトプロ(Rite‑Lite PRO 相当)とされ、製品仕様としては偏光フィルター付属仕様と本体のみの仕様が用意される場合がある。用途に応じて偏光仕様を選ぶことで表面反射の抑制や観察精度の向上が期待できるが、選定時は実際の臨床要件と照合することが望ましい。

海外仕様では型番表記が P/N 140001 などのパーツナンバーで示されることがあるが、国内流通では販売会社やディーラーごとに品目コードや管理番号で扱われることが多い。導入時には販売ページや添付文書で正確な型番・付属品・仕様を確認すると同時に、偏光フィルターやニュートラルタブの同梱有無を確認しておくと運用上の混乱を避けられる。

適応と薬事区分

本機器群の主な適応はシェードテイキングおよび補綴物の色調確認である。チェアサイドでの色比較や補綴物作製のための視覚的補助具として用いられ、実際の治療行為そのものの効果を直接担保するものではない。臨床で使用する際は、観察条件(周囲照明、モニターや写真の色管理、被写体までの距離など)を統一することが正確な色判定には重要である。

薬事区分に関しては、公表情報の範囲では明確な区分が確認できないため、導入や使用に際しては販売業者から提示される区分表記や添付文書に従う必要がある。施設での採用前には、該当製品の添付文書、販売元の説明、および必要に応じて医療機器の審査・届出状況を確認し、院内の規程や地域の法令に沿って取り扱うことが求められる。導入後の保守や校正についても販売業者と確認しておくと運用上のトラブルを防げる。

主要スペックと臨床的意味

ライトライト、ライトライト2、ライトプロはいずれも歯科臨床における色彩再現と観察性の向上を目的とした携帯用照明機器である。各機は色温度や演色性、光量、電源方式などの設計が異なり、それぞれ臨床での適用場面や運用上の注意点が異なる。共通して言えるのは、正しい色診断や材料評価には光源の特性が直接影響するため、使用する照明のスペックを理解したうえでワークフローに組み込む必要があるということである。

機器選定にあたっては、持ち運びの頻度、院内での照明条件の多様性、蛍光性の確認の必要性、連続使用時間や充電インフラといった運用面も考慮すべきである。単に演色指数や灯数だけでなく、現場での再現性やラボとの情報共有のしやすさを基準にすることで、術後のトラブルや色に関するクレームの低減につながる。

ライトライトの要点

ライトライトはLED6灯、色温度5500K、演色指数CRI 92、単3電池2本で連続点灯約5時間、質量約180gという仕様から、単一スペクトルでの色合わせに特化したシンプルな運用を志向している。CRI 92という高演色性は、特にシェードガイドと患者の同視野比較を行う際に有利であり、口腔粘膜や舌の赤味の影響を抑えた色診断を行いやすい点が臨床上の利点である。

単3電池駆動であるため、訪問診療や院外でのラボチェックなど持ち運びが多い場面で安定した運用が可能である。乾電池での運用は充電インフラを必要としない利点がある一方、電池切れや電池の種類による出力差に注意する必要がある。使用時は一定距離と角度を保ち、背景タブなどの補助器具を併用して視覚条件を標準化することが推奨される。

ライトライト2の要点

ライトライト2はLED12灯で、5500Kに加え3200Kと3900Kの三モード表示に対応するため、室内照明や混合照明条件での色の見え方を院内で簡便に検証できる。初期選択を5500Kで行い、メタメリズムのリスクや光源依存性を3200K/3900Kで検証するというワークフローは、前装冠やラミネートベニア納品前のチェックとして有効である。

さらに電圧レギュレータを用いた一定光量維持の機構により、電池残量による色のぶれを抑制できる点は臨床上の再現性向上に寄与する。院内の異なる環境下での色評価を定着させることで、ラボとのコミュニケーションが円滑になり、納品後の不一致による手戻りを減らすことが期待できる。ただし、照明モードの切替時や観察角度の違いによる視覚的変化は残るため、測色器など他の補助手段と併用するのが望ましい。

ライトプロの要点

ライトプロはLED24灯を搭載し、三段階の光量切替と偏光フィルター、さらに395nm近傍のブラックライトを備える高出力ユニットである。76mm距離の高出力設定では10,000lx以上を得られるため、表面反射を抑えつつ内部性状の観察を行う際に有効である。偏光フィルターの使用により鏡面反射が軽減され、エナメル質と象牙質の層構造や材料の内部拡散性が観察しやすくなる。

ブラックライト(約395nm)は材料や天然歯の蛍光性を可視化する機能を持ち、特にレジンブランド間の蛍光差やジルコニアコアの透過性評価に有用である。充電式リチウムイオン電池内蔵で約2.5時間で満充電、1分観察を約60回行える運用性は、院内での連続使用や検査プロトコルに適する。運用コストは使い方次第で乾電池方式より低減しやすいが、充電状態管理とバッテリー寿命の把握が必要である。

使用上の注意点として、395nmは近紫外線領域であるため目や皮膚への安全配慮が必要である。長時間の直接照射は避け、機器の取扱説明書に従った保護具や使用手順を守ることが重要である。

多スペクトルとメタメリズム

メタメリズムとは、ある光源下で一致して見えた色が、異なる光源の下で不一致に見える現象であり、臨床の審美補綴では重要な問題である。5500Kで選んだシェードが3200Kや3900Kで破綻しないかを現場で検証できることは、色合わせの妥当性を担保する上で合理的である。ライトライト2のような多色温モード搭載機は、院内での事前検証により納品後の色クレームを減らす効果が期待できる。

実際の検証では、患者の自然光下での見え方だけでなく、室内照明やカメラフラッシュなど実際に遭遇する光源を想定して複数モードで確認することが推奨される。また、視覚評価に加えて標準化された写真撮影や測色器データを添えてラボと共有することで、主観性を低減し信頼性を高めることができる。しかし、多スペクトル照明での検証は万能ではなく、材料特性や表面仕上げ、口腔内の湿潤状態など他因子も色調に影響する点に留意する。

ブラックライトの臨床的活用

395nm付近のブラックライトは自然歯や各種歯科材料の蛍光性を可視化するため、補綴物やレジン材料の選択、コア材の評価において実務的価値が高い。蛍光性の違いを写真記録に残してラボと共有すると、特定材料の選定根拠が明確になり、修正依頼の精度が上がる。特に夜間撮影やフラッシュ撮影での色の違和感を事前に評価できる点は、審美補綴の完成度向上に貢献する。

ただし、蛍光性の評価は環境光や撮影機材、被写体の表面状態に左右されやすいため、評価プロトコルを標準化することが重要である。加えて、395nmは可視光に近いが紫外成分を含むため、患者や診療スタッフの目や皮膚への影響を考慮し短時間での使用、直接視線を避けるなど安全対策を徹底する必要がある。記録と共有の際は蛍光条件を明記し、ラボ側でも同等の評価環境を整えてもらうことが望ましい。

互換性と運用

ライトライトシリーズは独立動作を前提としており、DICOMやSTLなどの医用画像・3Dデータフォーマットとの直接的な互換性は関係しない。したがって機器選定や運用指針は、臨床現場での視認性やワークフロー効率を優先して設計するのが有効である。実運用では光学系と周辺機器との連携が結果の再現性を左右するため、シェードガイド、口腔内カメラ、偏光フィルター付きレンズとの組合せをあらかじめ標準化しておく必要がある。

ニュートラルカラータブは外来での使い切りに近い運用を徹底することで、背景色や被写体周囲の色変動を抑制できる。背景やステージの色、照度、観察角度を診療室内で統一し、各症例での記録条件を記載したチェックリストを用いると、ラボへの色指示や比較観察の信頼性が高まる。院内で使用するシェード基準(VITAなど)と光源条件を明文化しておくことが重要である。

接続と電源

ライトライトおよびライトライト2は単3乾電池2本で運用される設計であり、標準運用はアルカリ電池が想定されている。充電式ニッケル水素電池(エネループ等)を用いる場合、電圧特性が異なるためLED出力や点灯時間に影響する可能性がある。連続症例が続く時間帯には予備の電池を備え、交換手順と交換タイミングをスタッフ間で周知しておくことが望ましい。

ライトプロはUSB給電で充電し、仕様上は充電中に出力LEDが作動しないため、充電状態の管理が特に重要である。長時間の連続稼働が見込まれるシフトには、予備の充電端末やモバイルバッテリーを準備すると運用が途切れにくくなる。充電ポートやケーブルの損耗にも注意を払い、定期的な点検と代替品のストックを確保しておくことが推奨される。

清掃と感染対策

筐体の清掃は、表面消毒ワイプで拭く方法が基本であり、噴霧や浸漬は電子部品の故障や密閉部への侵入を招くため避けるべきである。オートクレーブによる滅菌は機器材質上不可なので、熱処理を必要とする器具とは分別して運用する。清掃手順と使用する消毒剤の一覧を院内で統一し、スタッフ教育を行うことが感染対策の一貫として重要である。

偏光フィルターは磁石で着脱できる設計のため、取り扱い時はフィルター面に直接指で触れないよう注意する。皮脂や拭き傷が観察画像に影響を与えるため、汚れが目立つ場合は中性洗剤でやさしく洗い、乾いた糸くずの出にくい布で丁寧に乾拭きする。患者の眼への不必要な照射を防ぐため、点灯前に照射面を必ず歯面に向けてからスイッチを入れる運用ルールを徹底することが安全管理につながる。

写真撮影やシェードガイドとの連携

偏光観察により表層反射を低減すると、エナメルのクラックラインやオパール効果といった内部構造がより明瞭に記録できる。これにより、技工所への色・形態指示が具体化され、補綴物の仕上がり精度が向上する。口腔内カメラ側でもクロスポーライズド撮影を整備すれば、術者の見えと写真記録との一致度が高まり、治療計画や術後評価の根拠が強くなる。

シェードガイドはVITA等のメーカー基準や院内で採用するユニバーサルシェードを予め定め、光源条件ごとに撮影記録を残しておくとよい。撮影時には露出やホワイトバランス、撮影距離と角度を可能な限り一定にし、同一条件での比較ができるよう手順化することが望ましい。こうした標準化により臨床写真が治療コミュニケーションの有効なツールとなり、患者説明やラボワークの質が向上する。

経営インパクトとROI

本機導入の主たる価値はチェアタイム短縮、再製作回避、説明時間の圧縮による稼働効率の改善である。価格がディーラー提示制で院内条件により大きく異なるため、絶対値による比較は避け、式ベースで導入判断を行うことが望ましい。評価は年次単位での費用と便益を整理し、感度分析で主要変数の影響を確認するのが有効である。

経営判断に際しては直接的なコスト削減だけでなく、間接的な価値も考慮すべきである。たとえば患者満足度向上に伴う紹介増、スタッフの作業負荷軽減による離職抑制、設備の標準化による品質安定化といった効果は数値化しにくいが長期的な収益基盤に寄与する。これらを定性的に整理した上で、主要な定量項目だけでROIを算出する運用が妥当である。

投資評価の基本的な流れは明快である。年間便益の総和から年間コストを差し引き、正味便益を算出する。その上で初期投資を正味便益で割って回収期間を求め、ROIを算出する。式としては以下のように整理される。正味便益=(チェアタイム短縮効果+再製作回避効果+その他便益)-年間化費用。ROI=正味便益 ÷ 年間化費用。感度分析で想定値の上下に対する回収期間・ROIの変化を必ず確認することが肝要である。

1症例コストの考え方

機器の1症例コストは年間費用を当該機能に紐づく症例数で割って算出するのが基本である。年間費用は減価償却費と保守費、消耗品費、充電や電池代などの運用費を含む。減価償却は取得価格から残存価値を差し引いた額を耐用年数で按分して算出するのが標準的な扱いである。

したがって式は次のようになる。年間費用=(取得価格-残存価値)÷耐用年数 + 年間保守費 + 年間消耗費。1症例コスト=年間費用 ÷ シェード関連症例数。ここでシェード関連症例数は実際の運用に基づき年度ごとに変動するため、保守的な想定と楽観的な想定の両方で算出し、感度を把握しておくとよい。

費用算定の際には導入時の教育・研修費や初期設定作業に要するスタッフ工数、稼働立ち上げ期間の低稼働期間を調整項目として含めることが重要である。これらは初年度のコストを押し上げる要因となるため、年間化する際には初年度と以降年度で分けて評価することを推奨する。

チェアタイム短縮の評価

チェアタイム短縮効果は時間短縮分にスタッフ人件費単価を乗じ、症例数で積み上げることで算出する。具体的には年間チェアタイム削減額=時間短縮(分/症例)×人件費(円/分)×シェード関連症例数。写真撮影や患者説明のやり直しが減る場合は、それらの回避時間も同様に加算する必要がある。

さらに重要なのは時間短縮が単なるコスト削減にとどまらない点である。ユニットの回転率が上がれば、同一稼働時間内で扱える症例数が増え、追加的な収益や総粗利の底上げにつながる。外来が保険中心である場合でも、保険診療の受診可能数増により単位時間当たりの収益が改善するため、時間短縮の価値は大きい。

実務上は時間短縮が実際に外来キャパシティの増加に結びつくかどうかを確認する必要がある。物理的なユニット数や他業務のボトルネックによっては短縮分が余剰時間として残る場合もあるため、運用フロー全体を俯瞰して評価することが重要である。

再製作回避の効果

再製作回避による効果は1件あたりの再製作コストをC、年間回避件数をrとすると年間効果はC×rで表される。ここでCは材料費、技工再委託費、再診に伴うチェアタイム(人件費換算)等を合算した値である。式により明確に金額を算出できるため、再製作率低減の効果は比較的定量化しやすい。

審美補綴の占める比率が高い医院では、光源統一や色調再現性の改善による色トラブル低減の寄与は大きい。色調トラブルが減ることで再来院や再作業に伴う患者の不満が減少し、スタッフの対応工数も削減される。これらの効果はC×rに直接反映されるのみならず、間接的な患者維持や紹介増にも影響を与える。

経営的には再製作回避効果の見積もりを慎重に行うことが重要である。過去の再製作率を基にベースラインを設定し、導入後にリアルワールドデータでrを検証する運用を組むとよい。想定外の要因で再製作率が変動する可能性もあるため、定期的な評価と必要に応じた運用改善を実施することが望ましい。

使いこなしのポイント

導入初期はまず手順を標準化することが重要である。患者はややリクライニングさせ、ニュートラルカラータブを歯列の背後に置いて比較対象を固定する。光源は歯面に対してわずかに斜めに保持し、直射による反射を避けつつ色味が正しく出る角度を維持する。初期の色温度は5500Kを基準に選び、必要に応じて3200Kと3900Kの条件でも一致を確認しておくと再現性が高まる。

偏光観察と非偏光観察は交互に行い、表層の光沢や反射と、内部の色調や透明性の両方を把握することが肝要である。偏光を使うことで映り込みを抑え、エナメルの色や下層の象牙質色を評価しやすくなる。ブラックライト(UV)による蛍光観察は周囲を暗くして短時間で比較し、蛍光性の有無や強さを把握するが、患者の眼へ直接照射しないなど安全に配慮する必要がある。

撮影時は白色点(ホワイトバランス)を固定し、露出やISO感度も統一して記録する。ファイル名や撮影記録に使用した照明条件や偏光の有無、蛍光観察の結果を明記しておくことで、後の比較や技工指示が容易になる。ルーティン化されたプロトコールを作成し、すべてのスタッフが同じ手順で実施できるようにすることが再現性向上につながる。

導入初期の注意

導入時は院内スタッフ全員に対し、背景タブの必須使用や光量の段階切替、撮影ファイル名への照明条件追記といった運用ルールを徹底させることが重要である。人によるばらつきを減らすためにチェックリストを用意し、実施ごとに項目を確認する仕組みを整えるとよい。教育は実地で繰り返し行い、記録の取り方や問題が起きた際の対応手順まで含めて共有することが望ましい。

安全面では患者の眼へ直接照射しない、充電中は使用しない、長時間連続照射を避けるなどメーカーの注意事項に従うことが最低限のルールである。装置の発熱や故障を防ぐための定期点検やバッテリー管理も運用に組み込むべきである。加えて、感染対策として光源やグリップ部にバリアを使用し、使用後は消毒可能な部分を適切に清拭する手順を定める。

院内での運用開始後は一定期間ごとに実地監査を行い、プロトコールが正しく守られているかを確認する。記録のサンプルをピックアップして照明条件や撮影条件が一致しているかをチェックし、必要に応じて手順や教育内容を修正することで品質を維持できる。

術式上のコツ

シェードガイドと対象歯は切縁をエッジツーエッジで合わせ、観察窓越しに同一平面で比較すると差異が分かりやすい。視覚的評価はわずかな角度差や組織の濡れ具合で変わるため、乾燥しすぎないように注意し、歯面は微湿潤の状態で短時間に判定する。過度に乾燥させると明度が上がり明るく見えるため、本来の色と乖離するリスクがある。

複数歯のケースでは部位ごとに写真記録を分け、照明条件を厳密に揃えて保存することが重要である。異なる部位を同一写真で比較する場合でも、角度や露出が一貫しているかを確認する。偏光フィルターを活用すると表面反射を抑えられるため、エナメル下の色や修復材料とのマッチング評価に有用である。

色調の再現性を高めるためには、軟組織の位置や唇のリトラクション具合も統一する必要がある。光源の高さや角度、色温度を記録した上でラボに伝えると、補綴や修復物の再現精度が向上する。透明性や蛍光性を評価する際は、背面照明やブラックライト観察の条件も明記し、材料選択やレイヤリングの指示に反映させる。

院内体制と説明

カウンセリングスペースで実際にライトを当てて、照明条件によって色が変わることを患者に体感してもらうと納得度が高まる。患者に実演を交えて説明することで、術後の色調調整や補綴物の仕上がりに関する期待値を適切に設定できる。治療計画書や同意説明書にも照明条件の違いによる色調変化の可能性を明記しておくとトラブルを防げる。

ラボ宛の処方箋には照明条件、偏光の有無、蛍光の所見、再製作の基準を具体的に記載して共有する。技工側と共通の基準を持つことで、試適や再製作のやり取りがスムーズになり、無駄な手戻りを減らせる。必要に応じて定期的にラボスタッフを招いて共同検討会を開催し、双方で評価基準を合わせることが望ましい。

院内の運用体制としては、シェードテイキングのプロトコール、撮影・記録のフォーマット、定期的な教育・監査のサイクルを整備することが基本である。責任者を決めて品質管理を行い、トラブル時の対応フローも明確にしておくと安心である。これらを継続的に見直すことで、導入後の安定運用と患者満足度の向上につながる。

適応と適さないケース

審美領域のレジン充填、ラミネートベニア、前装冠、モノリシックジルコニアのステイン調整など、色調の再現性が治療の満足度に直結するケースに適している。これらは歯の微細な色差や表面特性の再現が求められるため、術中での色確認や微調整を行うことで最終的な見た目を高めることができる。特に前歯部では色調、透明感、表面の光沢が重要であり、術前術中に適切に評価することで補綴物と天然歯の一体感を高められる。

臼歯部でも色調差が小さい場合であっても、辺縁適合や表面の光沢と同様に患者の満足度を左右する場面がある。噛み合せや咬耗、口唇や頬とのコントラストによっては小さな違和感が目立ちやすく、補綴物装着後の違和感や不満を未然に防ぐためにも術中での確認は有効である。歯科医師と歯科技工士が連携して色や表面処理を確認・共有することで、再処置のリスクや来院回数の増加を抑えられる。

一方で、評価環境が制御できない状況では判断が安定しにくい。強い外光が差し込む窓際や異なる色温度の照明が混在する診療室では色の見え方が変わりやすいため、可能な限り色温度の安定した光源下で評価することが望ましい。また、長時間の連続使用が前提となる術式では機器の電源管理やバッテリー運用計画が必要であり、事前に充電や予備電池の準備、連続稼働時の冷却対策を講じておく必要がある。治療計画段階で確認環境と機器運用を整えておくことで、再調整や患者不満を減らせる。

導入判断の指針

導入機器の選択は診療方針と患者構成に依存する。保険診療中心で効率と標準化を最優先する医院では、ライトライトのような単一スペクトル照明を用いてルーチンの色調合わせと写真撮影ワークフローを統一するだけで、臨床上の改善が十分に得られる。単一スペクトルは機器がシンプルで操作が速く、スタッフ教育や保守負担も小さいため、診療効率を落とさずに一定の色再現性を確保できるという利点がある。

自費の審美診療を強化する医院では、ライトライト2のような多スペクトル照明を導入し、メタメリズム検証まで標準化することを推奨する。多スペクトルは光源を変えたときの見え方の違いを検証できるため、異なる照明条件下での色ズレを事前に把握でき、ラボへの指示精度が向上する。実務としては、撮影時に使用したスペクトル情報を記録し、ラボにメタメリズムチェックを依頼する手順を設けることで再製作率を下げられる。

前歯審美や写真ベースでのラボ連携、院内技工を併設する医院では、ライトプロの偏光機能とブラックライトを併用することにより設計段階から内部性状の共有が進む。偏光は表面の反射を抑え、表面質感やテクスチャーを正確に伝えられるため写真ベースの色合わせに有用である。ブラックライトは蛍光性や内部の透過性、微小な気泡やインナーストラクチャーの可視化に役立ち、これらの情報を設計時にラボと共有することで、再製作の閾値判断が明瞭になる。

導入後の運用面では、選んだ機器に合わせた標準手順書の作成、スタッフ教育、定期的なキャリブレーションと品質管理が重要である。コスト対効果を評価する際は、初期投資だけでなく再製作率の低下、患者満足度の向上、ラボとのコミュニケーション時間の短縮などを総合的に勘案すること。最終的には、患者のニーズと医院の診療方針に応じて、どの情報をどの段階で共有するかを明確にした上で機器を選定することが最も現実的である。

よくある質問

どのモデルを基準器として選ぶべきか

目的に応じて基準器を選ぶのが最も重要である。保険診療中心でシンプルな色合わせを標準化するのであればライトライトのような基本モデルで十分であり、操作性とコストのバランスが取りやすい。自費審美の領域まで含め、より詳細な色差検証や微小なトーン差の測定が必要な場合はライトライト2のような上位モデルを検討すべきである。

内部性状の観察や蛍光性の確認まで行いたい施設ではライトプロ相当の高機能機が適する。臨床で扱う症例構成、スタッフの習熟度、教育負荷を踏まえ、導入後にどの程度の精度と作業負荷を期待するかを明確にしてから選定することが賢明である。導入前に実際の症例で比較評価を行い、日常運用での使い勝手とメンテナンス性も確認しておくとよい。

偏光フィルターの使いどころはどこか

偏光フィルターは主に表面の反射(グロスやハイライト)を抑え、表層の白点やマメロンといった細かな色調差を読み取りやすくする用途に向いている。光沢を落として観察すると、内部の色相や透明感の差が見えやすくなり、補綴物や前歯の微細な表面構造を設計する際に有効である。

ただし偏光だけに頼るのではなく、非偏光の状態と必ず比較して評価することが重要である。非偏光での観察は艶感や光沢感、テクスチャがより現実に近く見えるため、最終的な臨床評価や患者説明の際には両者を併用して総合的に判断するべきである。

清掃消毒はどの程度まで可能か

筐体そのものは表面消毒ワイプでの清拭が推奨される。液体の噴霧や浸漬、さらにオートクレーブによる滅菌は機器の故障や腐食、シール部の損傷を招くため避けるべきである。日常の清掃ではアルコール含有ワイプなど指定された消毒剤を用い、過度な力で擦らないことが長期使用の基本である。

偏光フィルターや光学部品は傷に弱いため、柔らかい眼鏡拭きやマイクロファイバークロスで優しく拭き、使用しないときは保護ケースに入れて保管する。定期的に光学部の点検を行い、小さなキズや汚れが測定精度に影響を与えていないか確認するとよい。

価格と保守はどう見るか

国内市場ではディーラー提示制が多く、同一モデルでも価格構成が異なるため単純比較は難しい。導入時には本体価格だけでなく、保証期間、消耗品や予備部品の入手性、バッテリー交換の有無とその費用、ソフトウェアのアップデート方針など保守面を合わせて確認する必要がある。これらを年額コストに換算すると長期的な負担を見積もりやすくなる。

実務的には、以下の点をチェックリストにして比較することを勧める。保証とサポートの範囲、想定耐用年数と交換部品の費用、消耗品の供給体制と納期、保守契約の有無とその費用である。最終的にはシェード関連症例数で年額費用を割って1症例あたりのコストを算出すると、導入判断がしやすくなる。施設ごとの症例構成と予算、期待する精度を照らし合わせて総合的に決定することが必要である。