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歯周保護材とは?コーパックやバリケード等の種類から主な製品の特徴まで徹底比較

歯周保護材とは?コーパックやバリケード等の種類から主な製品の特徴まで徹底比較

最終更新日

歯周外科処置の後、創部を保護するために歯周保護材(いわゆる歯肉パック)を使用した経験は多くの歯科医師にあるだろう。例えば、苦労して術野に詰めたパックが翌日には外れてしまい患者に飲み込まれてしまったり、「口の中に粘土みたいなものがあって気になる」と患者から苦情を受けたことはないだろうか。あるいは審美領域のオペ後に目立つ灰色のパック材が装着され、患者が鏡を見て落胆したケースも想像できる。術後の繊細な歯周組織を守るための処置であるはずが、適材を選ばないとかえって患者の不満や術後合併症につながることもある。

本記事では、 20年以上の臨床経験と医院経営の視点から、歯周保護材の代表的な種類と製品を客観的データに基づき比較検討する。臨床現場で直面する悩み(操作性・適合・審美性など)と経営面での課題(コスト・ROI・患者満足度)を両面から解決するヒントを提示したい。読者自身の診療スタイルに最適な製品を選び抜き、術後ケアの質と医院経営の効率を両立させる戦略を考えていこう。

歯周保護材の種類と比較サマリー

歯周保護材(歯肉包帯剤)は、歯周外科や抜歯後の創面を覆い保護するための材料である。大きく分けて、昔から使われてきた硬化ペーストタイプ(ユージノール系/非ユージノール系の化学硬化型)と、近年登場した光硬化レジンタイプ、そして自己硬化・生分解タイプなどが存在する。以下に主要な製品のスペックをまとめた。

製品名種類・硬化方式操作・硬化時間審美性保護期間コスト感(目安)
コーパック (GC)非ユージノール系ペースト2剤式 (混和による常温硬化)指で混練約2分→約15分間可塑性維持。硬化後はゴム質でひび割れしにくい。適用時は濡れガーゼで成形色は灰白色で目立つ。臭い・味はほぼなし約1週間保持。自己溶解せず除去が必要キット数万円。1症例あたり数百円以下(低コスト)
バリケード (デンツプライ)光重合型レジンペースト (単一シリンジ)シリンジ先端から直接塗布→光照射10秒/部位で即時硬化。操作中はペーストが指に付きやすく、ワセリン塗布で成形性向上ピンク色半透明で目立ちにくい。無味無臭で患者抵抗感が少ない1〜2週間安定保持。除去時は一塊で除去可能4gシリンジ数万円。1症例あたり数千円(高コスト)
レソパック (ハガー社)自己硬化・生分解性ペースト (即時使用)チューブから軟膏状ペーストを創面に塗布。硬化せず軟らかい被膜を形成し創部に密着。唾液中で徐々に溶解半透明ジェル状で目立たない。無味無臭。硬化しないため装着時の圧迫感が少ない約30時間で自然溶解し消失。基本的に除去不要25gチューブ数千円。1症例あたり数百円(中コスト)

上記のように、それぞれ材質・硬化メカニズムが異なることで、操作感や見た目、維持期間、そしてコストに大きな違いが生じる。以下、臨床的な観点と経営的な観点から、歯周保護材選びの比較ポイントを掘り下げて解説する。

歯周保護材を選ぶ比較ポイント

物性と保護効果の違い

歯周保護材の第一の目的は、術後の創面を安定して覆い、外力や感染から守ることである。そのため各製品の硬化後の物性(硬さ・弾性・付着力)は重要な比較軸となる。

従来型のペーストタイプ(コーパック等)は硬化後にゴム状の弾性を持ち、適度な柔軟性で歯肉に追従する。非ユージノール系のコーパックは、従来のユージノール系に比べて割れにくく、長期間にわたり創面を安定して保護できるのが利点である。実際、コーパックは硬化後もある程度の弾力を保ち、咀嚼時の軽微な圧力や外力から歯肉弁を守る役割を果たす。

一方、光重合レジンタイプのバリケードは、硬化後に弾性を持つ樹脂となり、コーパック同様に非脆性的であるがやや硬質なカバーを形成する。樹脂製ドレッシングは薄く成形しても充分な強度があり、厚塗りせずとも創面を覆えるため、患部への余計な圧迫を避けつつ保護できる点が優れている。またレジンは唾液中でも形態が変化しにくく、外れにくい安定性を示す。ただし、歯間部に深く入り込み硬化すると機械的ロックが生じ、除去時に歯間乳頭を巻き込む恐れがあるため、適用時の形態付けには注意が必要である。

生分解タイプのレソパックは特殊な水溶性ポリマー基材でできており、硬化せず軟らかいまま創面に留まる点で異色である。粘着性が高く、出血や滲出液がある創面にも密着するが、約1〜2日で唾液中に溶けて徐々に減耗する。このため短期間(術直後〜翌日)の一時的保護には有用だが、1週間程度の長期保護には不向きである。反面、軟らかいジェル状で組織圧迫が少ないため、移植直後の自家歯肉や処置部位を優しく覆う用途には適している。

操作性と扱いやすさの比較

術者にとっての扱いやすさも、製品選択の大きなポイントである。操作性の違いは硬化プロセスと適用手順の違いから生まれる。

コーパックのようなペースト2剤混和型では、あらかじめ手指でペーストを練和する工程が必要になる。適切な割合でベースと触媒ペーストを混ぜ、約2分間練ると次第に粘性が増し指に付きにくくなる。その後、およそ15分間は可塑性を保つため、その間に口腔内で帯状に成形し、頬側と舌側から歯肉を被覆することができる。十分な操作時間がある点は利点だが、一方で混和に技術と手間がかかるため、アシスタントの協力や習熟が求められる。特に初心者の場合、硬化が始まるタイミングを掴めず手にまとわりついたり、逆に練和が不十分で軟らかすぎて術野に適合しない、といった失敗談も少なくない。また、練和時に手袋に付着しやすいため、水で湿らせたガーゼ越しに成形するなどコツが要る。

バリケード(光重合型)の操作性は一長一短である。メリットとして、事前の練和が不要でチューブからそのまま患部に塗布できる簡便さが挙げられる。術式の最終段階で手早く適用し、必要な形に盛り上げたら、すぐに光照射して硬化できるため、待ち時間なく処置を完了できるのは大きな利点である。これは、長時間の手術で術者も患者も疲弊している状況で、早く処置を終えられるというタイムパフォーマンスの向上につながる。一方でデメリットとして、未硬化樹脂は非常に粘稠で手指にまとわりつきやすいことが挙げられる。何も対策せず素手で操作するとペーストが手袋にくっついてしまい、患部にうまく留まらないため戸惑うことになる。コツとして、ワセリンを手袋や成形用器具に塗布したり、あらかじめ口唇や頬粘膜に保護ワックスを塗ることでペーストの付着を防ぎながら形態を整えると良い。初めは扱いにくく感じるかもしれないが、慣れれば所要量の見極めも含めて短時間で美しく適合させることが可能である。

レソパック(生分解型)は、取り扱いに関しては最も手軽でシンプルである。ペースト状の製剤をチューブから直接創面に塗るか、ガーゼや綿棒にとって患部に塗布するだけで良い。混和や光照射といった工程が不要なため、スケーリング・ルートプレーニング直後の簡易保護など短時間で済ませたい場面に適している。ただし軟らかいままの材料を厚盛りすると、患者が違和感を覚えて舌で触れてしまい脱離しやすい。そのため、必要最小限の量を薄く塗布し、上から湿らせたガーゼで軽く押さえて定着させる工夫が望ましい。総じて、各製品で操作手順と硬化待ち時間が異なるため、自身のオペ後のルーティンに無理なく組み込めるものを選ぶと良い。

審美性と患者快適性への影響

術後の包帯処置とはいえ、患者にとって口腔内に装着される物の見た目や快適さは無視できないポイントである。特に上顎前歯部の歯周手術後など、笑った際に包帯剤が見えてしまうケースでは、その審美性が患者満足度を左右しかねない。

コーパックを代表とする従来型パック材は、色調が灰色がかった白〜淡褐色で目立ちやすい。前歯部に装着するとまるで歯ぐきに粘土を貼り付けたように見えるため、患者によっては術後の自分の口元を見て驚くこともある。また、硬化後は表面がややざらつくことがあり、装着期間中に舌で触ると異物感を覚えやすい。近年の非ユージノール系製品ではほぼ無味無臭で粘膜への刺激も少なくなっているが、それでも「何かが付いている」という違和感はゼロにはできない。

バリケードは審美性・快適性の面で、従来品に比べ大きなアドバンテージを持つ。硬化後の樹脂は淡いピンク色に着色されており、歯肉の色味になじむ半透明の仕上がりである。遠目には装着していることがほとんど分からず、患者自身も鏡で見て安心できる。実際、審美領域のオペでバリケードを使用したところ「処置痕が目立たず良かった」と評価する患者は多い。また表面がツルっとした樹脂膜のため、舌触りも滑らかで装着による不快感が少ない。味や臭いも無いため、装着中に異物の存在を思い出させる要素が極力排除されていると言える。ただし、樹脂ゆえに硬化後のエッジが鋭利にならないよう、照射前にしっかりと辺縁を丸めておくことが望ましい。

レソパックは見た目には半透明〜淡黄色のジェルが薄く付着する程度で、非常に目立ちにくい。また硬化せず柔らかいため、装着直後から歯肉になじみ、患者から「固い物が貼り付いている」感じをほとんど抱かれない。この点では快適性が高いが、一方で唾液中ですぐゼリー状に軟化・流出してしまうため、装着後数時間経つと患者は「いつの間にか無くなっていた」と感じることも多い。そのため、長期間にわたって装着物による不快を感じさせない反面、保護材としての存在感も短いことになる。患者説明の際には「これは翌日くらいまでに自然になくなります」と伝えておくと良いだろう。

経営効率

歯科医院経営の視点からは、材料コストと処置時間も重要な判断基準となる。歯周保護材自体は高額な機器ではないが、保険診療での採算や自費処置での付加価値を考慮して選ぶ必要がある。

まず、材料コストについて比較すると、コーパックのような従来ペーストは一度購入すれば数十症例以上に使えるため、1症例あたりに換算すると数十〜数百円程度と経済的である。例えばコーパックは 90gずつのペーストセットで販売され、保存も利くため、開業当初に導入しておけば長期間にわたり追加コストなく運用できる。ただし混和に手間がかかるため、オペ毎に術者またはスタッフの作業時間コストが発生する点も見逃せない。とはいえ硬化待ちを含めても数分の違いであり、多くの保険点数に含まれる外科処置においては、低コストで確実なコーパックは費用対効果の高い選択と言える。

バリケードは 1シリンジあたりの価格が数万円と高価に感じられるが、実際には1本で複数症例に対応可能な容量がある。しかしメーカーは使い捨てを推奨しており、交差感染防止の観点から一患者につき1シリンジを新規使用するのが理想である。そのため保険診療の小規模手術(例えば 1歯だけの歯肉弁根尖側移動術など)に毎回用いると、材料費が保険点数を上回り赤字になりかねない。実際、バリケードは保険適用の算定項目が無く(パック処置自体が包括)、完全に医院側のサービスとして提供する位置づけである。このため、保険診療中心の医院では経済的負担がネックとなり導入をためらう場合もある。一方で自費の歯周形成手術やインプラント周囲の骨造成手術では、数千円〜 1万円程度のコストを見込んでも審美性・機能性を優先したいケースが多い。そのような付加価値の高い治療では、バリケードを用いて患者満足度を上げることで術後ケアの質をアピールでき、結果的に口コミやリピートにつながるというプラスのROIも期待できる。

レソパックは価格帯としては中庸で、1チューブで複数症例に使えるため症例単価ではコーパック並みの安さである。さらに塗るだけで完了する手軽さから、チェアタイム短縮の効果も見逃せない。特に SRP後の知覚過敏予防や、抜歯即時植立インプラントの仮封代わりなど、短時間で終えたい処置にさっと使えるのは人件費削減と患者回転率向上につながるだろう。しかし、長期保護が必要な本格的な歯周手術では結局別の保護材を追加する必要があり、二度手間になる場合もある。また日本ではまだあまり流通しておらず、入手性や使用経験者の情報が少ないため、導入に慎重になる医院もあるだろう。経営的には、使う場面を限定することでコストを最小化しつつ、患者ケア向上のサービスとして位置づける運用が考えられる。

主な歯周保護材の製品別レビュー

以上の比較ポイントを踏まえ、代表的な製品ごとの特徴と、どのような診療スタイル・ニーズに適するかを解説する。それぞれ強みだけでなく弱みや注意点も挙げるので、自院で採用する際の判断材料にしてほしい。

コーパック

コーパックは、長年にわたり世界中で使われている歯肉パック材であり、非ユージノール系の化学硬化ペーストとして現在もスタンダードな存在である。2本のペーストを混和することで約15分間可塑性を維持し、その後ゴム質に硬化して創面を覆う。硬化中・硬化後ともに収縮が少なく安定性が高いため、術後 1週間程度しっかりと創部を保護できるのが最大の強みである。またユージノールを含まない処方のため、古典的パックで問題だった粘膜刺激やアレルギーのリスクが抑えられている点も安心材料と言える。

臨床的な強みとして、幅広い症例で無難に使える汎用性が挙げられる。フラップ手術、歯肉切除、抜歯後創部、インプラント周囲の骨移植など、出血や疼痛のリスクがある処置であれば概ね適応できる。また、しっかり硬化したコーパックは適切に歯間部に固定されていれば簡単には脱落しない信頼感がある。術後の患者にも「1週間後の再診までこのままにしておいてください」と伝えやすく、管理が容易である。

一方で弱みや注意点もある。審美性の低さはすでに述べた通りで、特に前歯部の自費手術では患者の承諾を得ていても不満が出る場合がある。また硬化後は良くも悪くも強固に留まるため、除去時には器具を用いて剥離する必要があり、一部が歯肉溝内に残ると除去しづらい。術者の感覚としても「やや古臭い手法」というイメージがあり、最新機器を駆使するクリニックでは患者から見て技術的な新規性を感じにくいかもしれない。しかし、こと保険診療においては低コストで確実な本製品の価値は揺るがない。特に「保険中心で堅実経営を志向し、材料費は極力抑えたい」という先生には、コーパックの安定感と経済性は大きな味方となるだろう。逆に言えば、「多少コストがかかっても最新材料で患者サービスを向上させたい」というケースでは、後述の他製品も検討すべきである。

バリケード

バリケードは、デンツプライ社が開発した光重合レジンタイプの歯肉保護材で、審美性と手早さを追求して登場した製品である。半透明ピンクのレジンペーストを直接創部に盛り付け、数十秒の光照射で即座に硬化させる仕組みは、従来のパック材とは一線を画す。強みとしてまず挙げられるのが、術後の見た目の良さである。硬化後は歯肉とほぼ同化する色調で、患者が人前で口を開けてもまず気付かれない。これは、前歯の歯周形成手術や美容目的のガムピーリング後などで患者満足度を高め、術後の不安を軽減する大きな要因となる。また、樹脂材料は口腔内の動的環境下でも位置ズレや変形が起こりにくく、適切に硬化させれば装着期間を通じて安定したカバー力を発揮する。実際、バリケード使用後の患者からは「術後に違和感がほとんど無かった」「見た目に手術跡が分からず安心した」といった声が聞かれることが多い。

経営的視点でのメリットもある。それは、バリケードの使用がそのまま医院の先進性や高品質なケアのアピールにつながる点である。たとえばホームページやカウンセリングで「当院では審美性の高い歯周保護ドレッシング材を使用し、手術後の見た目にも配慮しています」と謳えば、患者にはワンランク上の丁寧な診療を提供している印象を与えることができる。実際にその効果を目にした患者がリピートにつながったり、口コミで広がることも期待できるため、初期コスト以上のリターンが見込める場合もある。

もっとも、バリケードにも弱点や注意点はある。操作章でも触れたように、扱いには習熟が必要であり、慣れないうちは従来のパック材より適用に時間がかかってしまう可能性がある。特に粘膜やグローブへの付着トラブルで苦戦すると、「結局コーパックの方が早かった」という本末転倒になりかねない。また費用面でも、保険診療で頻用すると赤字リスクが高いため、用途を自費や特別なケースに絞る戦略が必要となるだろう。さらに、樹脂アレルギー(メタクリレートアレルギー)を持つ患者には禁忌である点にも留意したい(稀ではあるが、術者自身がアレルギーを持つ場合も防護策が必要)。総合的に見て、バリケードは「最先端のツールを駆使し、患者満足度を極限まで高めたい」と考える先生にとって魅力的な選択肢である。特に審美歯科や高度歯周治療を掲げるクリニックで、その価値は最大限発揮されるだろう。

レソパック

レソパックは、聞き慣れない先生も多いかもしれないが、ヨーロッパを中心に使用されている自己溶解性の歯周ドレッシングである。チューブ入りのペーストを傷口に塗布するだけで使用でき、固まらずに軟らかいフィルム状の被膜を形成する。特筆すべきは、唾液や創出液に触れてもすぐには流れ落ちず約30時間ほど患部に留まったあと自然に溶けて消えるという性質である。このため、術後翌日の急性期だけ創部をそっと覆い、その後は患者のセルフケアを優先したいような場面で威力を発揮する。

レソパックの強みは、その手軽さと患者負担の少なさにある。塗るだけで完了し除去のための再来院も不要なので、患者には「いつの間にか無くなっていた」というストレスフリーな体験となる。例えば抜歯後の穴やインプラント埋入部の歯肉に塗っておけば、出血予防と食片の侵入防止に一定の効果があり、翌日には自然脱落しているため患者自身で何か操作する必要も無い。同様に、歯周ポケットに対するフラップレスレーザー治療後など、外科的侵襲は最小だが初期保護だけしておきたいケースにもマッチする。また、ペーストが軟らかいまま固まらないため、縫合したフラップや包帯下の組織を物理的に圧迫しないのも利点である。移植した遊離歯肉や結合組織片の上にも、レソパックなら無理な力をかけず保護膜を置ける。

もっとも、弱点としては保護期間の短さが最大だ。1日ほどで溶けてしまうため、侵襲が大きく長期の保護が必要な手術(歯周外科や再生療法など)には基本的に向かない。そうしたケースでは結局コーパックやバリケード等に出番を譲ることになるだろう。また、日本国内では流通量が少なく、取り扱いディーラーや製品サポートの情報が限られるという難点もある。導入にあたっては輸入商社等から取り寄せる必要がある場合もあり、そうした意味でハードルがやや高い製品と言える。それでも、「短時間の処置後に患者に余計な異物を残したくない」「翌日以降はブラッシング指導を優先し、包帯は不要」といった明確な方針がある先生には、このレソパックは痒い所に手が届く存在となるだろう。例えば高齢者や小児で術後の異物感に敏感な患者に対し、「翌日には自然になくなる保護ジェルを使います」と説明すれば安心感を与えられる。まさに限定的な用途で強い効能を発揮するニッチなツールと言える。

よくある質問(FAQ)

Q1: 歯周手術後には必ず歯周保護材を装着すべきなのでしょうか? A1: 状況による。歯周保護材の主目的は創面保護と止血・疼痛緩和であり、外科的侵襲が大きい処置では装着が望ましい。ただ近年、一部の症例ではあえてパックをせず早期から清掃を行った方が予後が良いとの見解もある。例えば小規模な歯肉切除やポケット掻爬程度であれば、患者がきちんとブラッシングできるよう術後指導を徹底し、保護材を省略するケースもある。ただし痛みや出血が予想される場合は患者の快適性のためにも装着を検討すべきである。要は症例の程度と患者ごとの状況に応じて判断するのが良い。

Q2: コーパックとバリケードはどちらが優れていますか? A2:それぞれ長所が異なるため、一概に優劣は決められない。コーパックは安価で確実性が高く、あらゆる術後に無難に使える点で優れている。一方バリケードは審美性と即時硬化による時短効果が魅力で、患者満足度向上につながる点で秀でている。保険診療メインならコーパックのコストメリットが大きいが、自費治療や審美領域ではバリケードの価値が光る。従って、診療の内容や重視するポイントに応じて使い分けるのが最善である。

Q3: 歯周保護材はどのくらいの期間装着しておくべきですか? A3: 通常は術後1週間前後で次回来院時に除去するのが一般的である。歯周手術の場合、術後7日程度で初期治癒が進み縫合も除去するタイミングになるため、同時に保護材も外す。ただし、途中で外れてしまった場合でも直ちに大きな問題になることは少ない。例えば3日目にコーパックが外れてしまっても、出血や痛みが無ければそのまま経過を見ることも多い。逆に、広範囲骨造成などで2週間程度保護が必要と判断されるときは、1週間後に新しいパック材を詰め直して延長する場合もある。製品ごとの特性も考慮し、基本は1週間、状況に応じて柔軟に対応すると良い。

Q4: 保険診療でパック処置の費用はどのように扱われますか? A4: 歯周手術後のパック装着は、保険点数上独立した算定項目が無い。つまり、パック材やその装着にかかるコストは外科処置の包括費用に含まれており、別途請求できない。したがって高価な材料を使うほど医院側の持ち出しが増える計算になる。そのため、保険診療ではコストに見合った材料選択が重要であり、多くの医院がコーパックなど低コストで済む材料を用いるのはこの理由による。自費診療であれば材料費を治療費に転嫁できるため、バリケードのような高価な材を使用しても経済的負担には直結しない。このように、保険か自費かによって適切な材料選択も変わってくる点に留意が必要だ。

Q5: パック材が途中で外れた場合、すぐ付け直すべきでしょうか? A5: ケースバイケースである。術後早期(24〜48時間)に外れてしまった場合、創面が不安定な可能性があるため付け直しを検討する。特に出血が続いていたり、患者が痛みを訴える場合は再装着した方が良い。一方、術後3〜4日以降であれば初期治癒がある程度進んでいるため、無理に付け直さず経過観察とし、患者には清潔に保つよう指導するだけでも問題ないことが多い。付け直しの際は、一度創面を洗浄し異物を除去してから新しい材料を適用することが重要である。状況によっては無理に触らず自然経過に任せる方がかえって良い場合もあるため、創部の状態と患者の症状を総合的に判断して対応すると良い。