
松風のユニシェードレジン 「ビューティフィルユニシェード」の 評判や価格は?
日々の診療でう蝕充填を行う際、「この歯にはA2かA3か」とシェードガイドを手に迷った経験がある歯科医師は少なくないであろう。治療後にライトの下でふと見ると、充填部の色がわずかに浮いて見え、患者に説明に窮した苦い記憶を持つ方もいるかもしれない。また、多数のコンポジットレジンのシェード在庫を管理しつつ、使い切れずに期限切れで廃棄する無駄も経営者としては頭の痛い問題である。こうした臨床上・経営上のジレンマを背景に、シェード選択そのものを不要にするコンセプトのレジンが登場した。松風の「ビューティフィル ユニシェード」は、周囲の歯と調和するユニバーサルシェード(単一色)のコンポジットレジンである。本稿では、その臨床的価値と経営的インパクトを経験豊富な視点から多角的に分析し、読者が本製品導入後の成功イメージを具体的に描けるようになることを目指す。
ビューティフィル ユニシェードの製品概要
ビューティフィル ユニシェード(Beautifil UniShade)は、株式会社松風が2021年に国内発売した歯科充填用コンポジットレジンである。レジン充填修復においてシェード選択を省略できることを特徴とし、前歯から大臼歯まで幅広い部位に使用可能なユニバーサル(前臼歯共用)タイプの審美修復材料である。適応症は従来のレジンと同様に、Ⅰ級からⅤ級までのう蝕窩洞充填やくさび状欠損、ダイレクトベニアなど多岐にわたる。医療機器区分は管理医療機器(クラスII)であり、医療機器認証番号は302AKBZX00097000となっている。
内容量は1本あたり2.1mL(約4.5g)のシリンジで提供され、定価は約3,820円(税別)である。シェードは製品名が示す通り「ユニシェード」1色のみであり、在庫すべき色数が大幅に削減できる。ただし、重度の変色歯や金属露出面の遮蔽用に高不透明度のコンパニオン製品「ビューティフィル ユニシェード ブロッカー」(同容量・同価格)が別途用意されている。また、本製品の流動型バージョンとして「ビューティフィル ユニシェード フロー」(1.2mL、約2.2g入り)およびその遮蔽用「ブロッカー フロー」も後日発売されている。基本となるペーストタイプのユニシェードは適度な粘性を持つハンドリングしやすいペーストレジンで、従来のシリンジ充填法で使用できる。総じて、特殊な器具を必要としない汎用的な設計であり、小規模クリニックから大規模医院まで導入障壁は低いと言える。
光学的ブレンド技術と4mm一括充填性能
ビューティフィル ユニシェード最大の特徴は、周囲の歯質に自然に同化する光学特性である。松風独自のS-PRGフィラー(表面反応型プリレジンガラス)技術により、レジン内部で光が拡散・透過しやすく設計されている。このフィラーは照射光の一部を様々な角度へ散乱させ、充填部周囲の歯質からの反射光を取り込む働きを持つ。平たく言えば、周囲の歯の色をレジンが映し取るような効果である。そのため、充填部と歯質との色差がわずかになり、肉眼では境界が目立ちにくくなる。実際、メーカーの提示する症例写真では、ユニシェード1色のみでA1からA4、さらには漂白後のホワイトシェード(W1)まで調和した補綴物が報告されている。しかも光重合前後でレジンの透明度が変化しないため、充填時点で術後の仕上がりをイメージしやすい。これは従来レジンの一部に見られた「硬化させた途端に半透明になり、下地が透けて予定と異なる色合いになる」といった問題を解消するスペックである。
光学特性だけでなく、充填材としての物性も高水準である。フィラー充填率は約87wt%と非常に高く、これにより重合収縮率は約1.7vol%と低く抑えられている。一般的なナノハイブリッドレジンの収縮がおおよそ2〜3%であることを考えると、応力発生が少なく術後の辺縁封鎖性や適合に有利である。同時に高フィラーは圧縮強さや耐摩耗性など機械的強度の向上にも寄与し、大臼歯部咬合面への使用にも十分耐えうる。実際に本製品は前歯部のみならず臼歯部修復用として位置づけられており、咬合圧に晒される部位でも長期安定を目指した物性となっている。加えてS-PRGフィラーはフッ化物イオンやストロンチウムイオンなど6種の有効イオンを放出する特性があり、周囲の環境を穏和化する効果が確認されている。酸性下でpHを中和しうる緩衝能や、歯垢の付着抑制効果、さらにレジン周囲歯質の初期脱灰抑制効果については学術的報告がある。これらGiomer(ジャイオマー)特有の抗菌・防歯質劣化作用は、二次う蝕リスクの高い症例での再発予防や長期安定にプラスに働く可能性がある。X線造影性も高く(アルミニウム換算で数百%程度)、術後のX線検査で充填部を容易に識別できるため、経過観察時の診断性にも優れる。総じて、ビューティフィル ユニシェードは審美性と機能性を両立した高性能レジンと言えるが、次項ではその活用面についてさらに詳しく見ていく。
互換性と運用方法
ビューティフィル ユニシェードは基本的に従来型のコンポジットレジンと同じ要領で扱うことができる。ボンディング処理や照射機器なども、現在クリニックで使用中のものをそのまま活用できる互換性がある。重合開始波長はカンファーキノン系の標準的範囲であり、ハロゲン光・LED光重合器いずれでも問題なく硬化可能である(メーカー推奨の照射条件に従うことが望ましい)。深さ4mmまでの一括充填が可能とはいえ、十分な光量・照射時間の確保は重要である。もし旧式の光重合器を使用している場合は、適切な光量が得られるか事前に点検し、必要に応じて照射時間を延長するなどの対策を取るべきである。
既存材料との相性という観点では、本製品と他社アドヒーシブとの間に特別な禁忌や問題は報告されていない。自前のボンディング剤(例えば松風のビューティーボンドX等)だけでなく、現在使用している各種ボンディング材と併用して差し支えない。色調面でも、ユニシェードは単独で多くの場合調和するため他のシェードレジンを混ぜる必要は基本的に無いが、臨床判断でごく一部にエナメル用シェードや着色材を併用することも可能である(例えば切縁部にブルー系のエフェクトを足す等)。メーカーからは先述の専用ブロッカーの活用が推奨されており、重度の変色歯や金属色の遮蔽、あるいは大きなIV級修復の近遠心舌側壁の裏打ちにはブロッカーを0.5mm程度ライニングし、その上にユニシェード本体を築盛する方法が示されている。この操作により背景をコントロールでき、ユニシェード本来の色調適合性を十分に発揮できる。
運用上のポイントとしては、まず院内スタッフへの周知とトレーニングが挙げられる。シェード選択不要とはいえ、スタッフが従来通りシェードガイドを準備して待機していたり、無用な混乱が生じないよう、ユニシェード導入時にはチームで手順を確認すべきである。「この症例には何色を使いますか?」という問いかけ自体が不要になるため、アシスタントにはあらかじめ「ユニシェード1本で全て対応する」旨を説明しておくと良い。実際に使用経験のある歯科医師からは「金色の派手なパッケージなので、引き出しの中でもすぐ見つかりスタッフに好評」といった声もあり、現場の効率化に一役買っている。逆に言えば、パッケージ色が他材と類似している場合は取り違えに注意が必要で、例えば同社の従来シェード品(Beautifil IIなど)と併用している場合には誤用防止策を講じたい。
感染対策の面では、ユニシェードのペーストタイプはシリンジから直接口腔内へは塗布せず、一旦パレットなどに押し出してから充填器で窩洞へ運ぶのが一般的である。これは他のコンポジットレジンと同様の手技であり、シリンジ先端が患者の唾液や血液に触れる機会を極力減らすことで材料の長期保存性と院内感染リスクの低減につながる。フロータイプについてはディスポーザブルのニードルチップを装着し、必要量だけ直接注入できるため細部の充填に便利である。使用後のニードルは使い捨て、シリンジ本体はアルコール清拭で清潔に保管する。いずれのタイプも保管時には直射日光を避け、所定の温度範囲内で保管することが重要である(光硬化型材料のため)。特別なキャリブレーションや定期調整が必要な機器ではないため、導入後のランニングコストは追加購入の材料費程度に限られる。
経営インパクト
次に、本製品導入が医院経営にもたらす影響を考えてみる。ビューティフィル ユニシェードの単体価格は約3,820円であり、従来の一般的なコンポジットレジンと同程度の水準である。しかし「1色ですべてを賄える」という特性が在庫コストに与える恩恵は大きい。例えば従来のレジンではA系、B系、C系、漂白シェードなど複数の色調を備える必要があった。仮に主要なシェードを7〜8色ストックすれば、それだけで2〜3万円以上の材料在庫を抱える計算になる。しかも臨床でよく使う色(A3など)と滅多に使わない色が発生し、後者は期限切れで廃棄する非効率も生じがちであった。ユニシェード導入後は基本1本だけ発注すれば良いため、在庫管理が飛躍的にシンプルになり、無駄な廃棄コストも減らせる。特に開業当初で予算に限りがある場合や、小規模医院で出番の少ない色まで揃える負担は軽くないが、ユニシェードであれば最低限の投資で必要十分な体制を整えられる。また使用量についても、1本(4.5g)でおよそ20〜30歯分程度の充填が可能と見積もられる。症例の大小で差はあるが、1充填あたり数十円〜百数十円程度の材料費となり、これは他の消耗品と比しても微々たるものである。仮に従来より材料費が若干高めだとしても、シェードミスマッチによるやり直しや、在庫過多による死蔵コストが減る恩恵を考えれば十分許容範囲と言えるだろう。
チェアタイム短縮による人件費削減効果も見逃せないポイントである。ユニシェードの利点であるシェード選択省略と4mm一括充填により、1症例あたりの処置時間が確実に減少する。例えば、シェード選択・確認に通常数分、複数回のレジン積層と硬化にさらに数分を要していたものが、ユニシェードでは「迷わず1色+一発充填」で済む。症例によって異なるが、一処置あたり5分前後の短縮も十分可能である。これは多忙な保険診療主体の医院ではそのまま回転率の向上=「同じ時間でより多くの患者を診療できる」ことに繋がる。仮に1日5件のレジン充填で各5分短縮できれば、1日に25分の余裕が生まれる計算である。この時間を新たな予約枠に充てることができれば、売上増加が期待できるし、そこまでしなくとも診療進行にゆとりが生まれ残業抑制やスタッフ負担軽減といった効果もあるだろう。また、自費診療中心の医院でも、短縮した時間を他の高付加価値カウンセリングや処置に回すことで機会損失を防ぎ、収益最大化に貢献できる。単純な材料費の比較だけでは測れない、時間価値の向上というROI効果が本製品にはある。
患者満足度と経営効果の関係にも触れておきたい。コンポジットレジン修復は小さな処置であっても、見た目の印象が患者の満足度に直結しやすい治療である。ユニシェードの導入によって「いつも色がピッタリ合う」「詰め物がどこにあるか分からない」といった仕上がりが安定して提供できれば、患者からの信頼獲得や口コミ増加といった間接的な経営メリットも期待できる。特に審美修復に敏感な患者層には、後述するようにホワイトニング後の変色への適応力やフッ素徐放といった付加価値を説明することで、「この医院は最新の良い材料を使ってくれる」という安心感にも繋がるだろう。ただし医療広告ガイドライン上、対外的に「最新素材で絶対に綺麗に治ります」等と謳うことはできないため、あくまで診療コミュニケーションの中でさりげなくメリットを伝える程度に留める必要はある。総合的に見れば、ビューティフィル ユニシェードは小投資で診療効率と品質の双方を底上げしうる製品であり、投資対効果(ROI)の面でも魅力的な選択肢と言える。
使いこなしのポイント
優れた材料とはいえ、導入初期には適切な手順とコツを押さえることで真価を発揮できる。まず最初の数症例は慎重に適応を選ぶことが勧められる。具体的には、色調適合が比較的容易な中等度の窩洞や、小〜中規模の修復から始め、ユニシェードの色合わせ感覚を掴むと良い。術者の中には「本当にこれ1本で大丈夫か?」と半信半疑になるケースもあるが、実際に重ねてみると周囲と馴染んでいく様子が確認でき、自信に繋がるはずである。術中に違和感があれば硬化前に一度シリンジから直接隣接歯面にレジンを当ててみて、カメレオン効果でどの程度色が映り込むか確認するのも一法である(硬化しなければ何度でも拭い取れる)。硬化前後で透明度が変わらないとはいえ、最終的なポリッシュまで完了すると光沢や周囲反射環境が変化しわずかな色味が調整されるため、研磨まで行った状態で評価することが重要だ。初期のうちは治療直後に口腔内写真を撮影して記録を残し、経日変化や色調を客観的に検証しておくと、次第にユニシェードの発色傾向を自分の中で把握できるようになる。
充填操作そのものは従来と変わらないが、一括充填時の気泡混入やコンタクト確保には引き続き注意が必要である。粘性が高く垂直方向に盛り上がりやすいユニシェードとはいえ、隣接面のコンタクト形成にはマトリックスとウェッジの確実な装着が不可欠である。4mmまで一度に充填できるとはいえ、特にII級窩洞では最下層部だけ先に少量充填・硬化しコンタクトを安定させてから、残りを二段階目で一括築盛するというハイブリッド充填テクニックも有効である。術者の好みや症例に応じて、無理に常に一回で充填しようとせず適宜ステップ充填を組み合わせても良い。築盛時には充填器やヘラで壁面に確実に押し付けるように適合させ、気泡が入りにくいよう少量ずつ連続して練り込むイメージで充填するとよい。ペーストが練ってもボソボソしにくく適度に歯面へ粘着する感触があるため、操作性は良好である。むしろ一般的なハイブリッドレジンに比べ「もっちり」した質感との評価もあり、器具にまとわりついてしまう場合は器具にアルコールを一拭きするか、表面を照射光外でわずかにエアブローし粘度を上げてから成形すると操作しやすくなる。
ポリッシングの手順も通常のレジン修復と同様である。ユニシェードは充填後の未重合層が比較的少なく、表面が緻密に仕上がる印象があるが、最終研磨を怠ればプラークが付着し光沢も鈍ってしまう点は他材料と変わらない。研磨ディスクやポイントで充分に研磨し、ツヤを出すことで周囲歯面との境界がさらに分かりにくくなる。S-PRGフィラーの配合により長期的な艶の維持が期待できるのも本製品の美点なので、初期研磨でそのポテンシャルを引き出すことが重要である。
患者説明のポイントとしては、直接的に材料名を売り込む必要は無いが、審美性や機能性に関するメリットをわかりやすく伝えると良いだろう。例えば「今回の詰め物はご自身の歯の色に近い素材で修復します」「治療後も自然な見た目になります」といった表現であれば患者の安心感に繋がる。ホワイトニング希望者には「後から歯を白くしても馴染みやすい材料」と伝えておくと、将来的な色調不一致への不安を和らげられるかもしれない。ただし「必ず目立ちません」「虫歯が再発しません」などの断定的表現は避け、あくまで素材の特徴として説明するに留めるべきである。導入初期には担当ディーラーやメーカーの技術相談窓口を積極的に活用し、疑問点やコツを問い合わせるのも有効だ。松風の提供する製品カタログやWeb上の動画には、ブロッカーとの使い分け症例や色調評価の仕方などが掲載されているため、スタッフ全員で事前に目を通しておけば院内教育もスムーズに進むだろう。
適応症と適さないケース
ビューティフィル ユニシェードは、「多くの症例に無難に適応できる一方で、一部の症例では補助的手段が必要」という特性を理解しておくことが肝要である。得意とするのは、健全歯質に囲まれた中程度までの齲蝕欠損の直接充填である。こうしたケースでは周囲歯の色と素直に調和し、ほぼ色調調整なしで審美的な修復が完了する。また、複数歯にまたがる小さなレジン修復を一括で行う場合にもユニシェードは有用である。例えば隣り合う歯にそれぞれ小さなう蝕がある場合、従来なら個々にシェード選択していたものが、ユニシェードであれば同一マテリアルで一気に処置でき、隣同士の色ズレも生じにくい。これは審美面のみならず手技の簡便さからもメリットが大きい。ホワイトニング直前直後の修復にも適している。漂白治療を予定している患者では、術前に合わせるべきか術後の白さに合わせるべきか判断が難しいことがあるが、本製品はどちらの状態でもある程度順応するため、極端なケースでなければレジンをやり替えることなく経過を見守れる可能性がある。
一方、不得意なケースや注意すべき状況も存在する。まず、歯そのものが強く変色している症例である。例えばテトラサイクリン歯や失活歯で象牙質が暗褐色を呈しているような場合、ユニシェード単独では充填部が周囲に同化しきれず、やや明度の高い部分として浮いて見える恐れがある。そのため、前述のようにブロッカーなどの遮蔽操作を併用するか、そもそもラミネートべニアやクラウンなど他の修復アプローチを検討した方が良いケースもある。また、大きなIV級窩洞で切縁部に高度な半透明感やマメロン表現を求められる場合、単一シェードではどうしても再現に限界がある。こうした審美最重視のケースでは、ユニシェードをベースに使いつつも、切縁側はエナメル質用コンポジットを薄くラミネートして質感を調整するといった多重築盛が有効となる。あるいは審美セラミック修復へ切り替える判断も必要だろう。同様に、広範な咬頭修復や大規模な築造では、複数色を使い分けた方が隣接歯とのグラデーションを巧みに再現できることがある。ユニシェード1色で充填可能でも、隣接歯が経年的に変色している場合は充填部だけ新品のように白く映るリスクもゼロではない。患者の審美要求水準や口腔内のトータルバランスを考慮し、必要に応じて他のシェードとの併用や経年的な調和も計算に入れた設計を行うことが望ましい。
耐久性の面でも無敵というわけではない。確かに高フィラーで強度は高いが、ブラキシズムなど極度の咬耗力には他のレジンと同様に摩耗やマージンの微小欠損が起こりうる。特に大臼歯部で全面的に咬合再構成を要するような症例では、レジンよりも間接修復(CAD/CAM冠やインレー)の方が長期には有利なこともあるだろう。また、本製品のフッ素徐放による二次カリエス抑制効果は期待できるものの、日々のプラークコントロールや定期管理が不要になるわけではない。患者には通常通りブラッシング指導を行い、レジン充填部も含めた口腔衛生管理を徹底する必要がある。
以上を整理すると、ビューティフィル ユニシェードは「通常のコンポジットレジンで対応可能なケース」のほぼ全般に使えるが、「通常なら他の手段が望ましいケース」を魔法のように解決するものではない、ということである。得意分野と不得意分野を正しく見極め、状況に応じて他材料や他術式と組み合わせてこそ、本製品の価値を最大限に引き出せる。
導入判断の指針
歯科医院にも様々なカラーがあり、ユニシェードの有用性もその診療方針によって感じ方が異なるだろう。以下にいくつかの医院タイプ別に、本製品の向き不向きや導入メリットを考察する。
保険診療中心で効率重視の歯科医院の場合
日々多数の患者をさばき、1人あたりの単価は低くとも数で勝負する保険診療主体型のクリニックでは、ビューティフィル ユニシェードの恩恵が最も直接的に表れる。前述のようにチェアタイム短縮効果により回転率を上げられるため、薄利多売モデルの収益改善に直結しやすいからである。シェードテイキングの手間が省けることは、ドクター自身だけでなくアシスタントの業務負担軽減にもなる。材料在庫もユニシェードとボンディング材程度で済むため、収納スペースや在庫管理の簡素化も嬉しいポイントだ。保険診療中心の医院では、患者はレジン充填に追加料金を支払うわけではなく、短時間で治療が終わればそれだけ満足度も高まる傾向にある。ユニシェード導入によって「待たせない・通いやすい医院」という評判に繋げることも可能だろう。また、フッ素徐放による虫歯予防効果は、定期検診でのプロモーションにも活かせる。例えば「詰めたところからフッ素が出て歯を守ってくれる素材を使っています」と説明すれば、患者は追加費用がなくとも得をした気分になり、医院への信頼度アップに繋がるかもしれない。総じて、効率と量を追求する医院にとってユニシェードは低コストで導入できる生産性向上ツールとなり得る。
高付加価値の自費診療を志向する歯科医院の場合
審美修復や精密治療にこだわり、時間をかけて質の高い医療を提供するタイプのクリニックでは、ユニシェード導入の判断はやや慎重になるかもしれない。というのも、こうした医院では術者の美学や職人技による多色レイヤリングで極限まで自然歯を再現するケースがあるため、単一シェードでどこまで許容するかは価値観による部分が大きいからである。例えば前歯部の高度な審美修復では、あえて3〜4色のレジンを層状に築盛して微妙なエナメルの透明感や乳白色のマメロンを表現する、といった芸当も行われる。ユニシェード1本である程度近い色合いにはできても、そうしたファインアートの領域に及ぶかというと、正直限界がある。しかし、自費診療の現場でもすべての症例がそこまで高度な美的要求を伴うわけではない。例えば臼歯部の小さなレジン充填や、目立たない部位の修復にまで毎回多色積層を行うのは効率的ではない。ユニシェードを導入すれば、「このケースは1色で十分綺麗にできるから短時間で終え、その分別のケースに時間を充てよう」というメリハリの効いた診療が可能になる。実際、審美にこだわる歯科医師の中にも、前歯部はこだわりのレジンで、臼歯部はユニシェードで時短、と使い分けている例がある。経営的にも、患者一人当たりの滞在時間を短縮できれば、その間に他の高収益処置を並行する余裕が生まれる。あるいは短縮した時間をより丁寧な術後説明やフォローに充てて顧客満足を高める戦略も取れる。ユニシェードのフッ素徐放や高耐久性を付加価値サービスとして語れば、自費治療の説得力も増すだろう。ただし、審美をウリにする医院においては「本当に1色で大丈夫か?」という心理的抵抗が最後まで残るかもしれない。無理に全面採用せずとも、ケースバイケースで柔軟に活用するスタンスで導入するのが賢明である。
外科・インプラント中心の歯科医院の場合
インプラント治療や歯周外科などが診療の柱となっている医院では、コンポジットレジン修復は日常業務の主役ではないかもしれない。しかし、だからこそビューティフィル ユニシェードは「一本常備しておけば何とかなる万能選手」として有用である。外科処置後の小さな修復や、インプラント補綴前後の隣在歯のカリエス処置など、スポット的にレジン出番がある際に、シェード選択に時間を割いたり複数の材料を使い分けたりする手間が省ける恩恵は大きい。普段コンポジットの細かな色調管理に慣れていないドクターやスタッフでも、ユニシェードなら深く考えずに適応できる安心感がある。在庫も1本で済むため、管理負担は最小限で済む。インプラント主体の診療では、患者は高額治療に意識が向いており、小さな虫歯治療には過度な期待を持たない場合も多い。そのような中で、ユニシェードでさっと充填が終わり「ついでの治療も短時間で綺麗にやってくれる」と患者が感じれば、医院全体のサービス評価向上にも繋がるだろう。またフッ素徐放性によりインプラント周囲の隣接歯の二次う蝕リスクを下げられれば、せっかく入れたインプラントの存続にも好影響を与え、長期的にはメンテナンスフリーで信頼できる治療という医院の評価にも寄与するかもしれない。外科中心の医院にとってユニシェードは、影の立役者として診療を支える縁の下の力持ち的存在となる。
よくある質問(FAQ)
Q. 本当に1色だけであらゆる歯の色に合いますか?
A. 一般的な患者の歯であれば概ね調和するよう設計されている。実際、A系~D系はもちろん、漂白後の明度の高い歯までカバーできるデータが示されている。ただし歯が極端に変色している場合(例えば重度の変色歯や真っ白な人工歯など)は、完璧に同化しないこともある。その際は専用ブロッカーで下地を整えるか、必要に応じて別シェードの材料を併用することで対応可能である。
Q. ホワイトニング後に歯が白くなったら、充填したユニシェード部だけ色が浮くことはありませんか?
A. ユニシェードは周囲の歯からの反射光を取り込むため、ある程度周囲の明るさに追随する性質がある。実際、メーカーは「ホワイトニング前後の歯どちらにも調和する」ことを確認している。ただし、漂白直後のように周囲の歯が急激に明度向上した場合、完全に同じトーンになる保証はない。幸い漂白直後の色調変化は安定するまでに時間がかかるため、歯科医師側で充填物の再研磨や表面コーティングなどで微調整しつつ経過を見るのが現実的対応である。必要であれば追加充填や表面への薄いレジンコートで調和を取ることも可能である。
Q. 臼歯の大きな穴や咬合面にも本当に耐えられますか? 強度や摩耗が心配です。
A. ビューティフィル ユニシェードは高充填率フィラーにより強度・耐摩耗性に優れており、小~中規模の修復であれば臼歯部でも十分機能するよう設計されている。実際に前臼歯共用として公式に適応されている。ただし、咬頭を丸ごと再建するような大規模修復や、ブラキシズムが強い症例では、他の直接レジン同様に経年的な摩耗・破折リスクはゼロではない。そのようなケースでは、症例に応じて間接修復や補強材の併用なども検討すべきである。適切な症例選択の範囲内で使えば、臼歯部でも長期に良好な結果が得られている。
Q. フッ素が出るとのことですが、二次う蝕の抑制効果はどの程度期待できますか?
A. S-PRGフィラーから放出されるフッ化物イオンなどには、周囲の歯質の耐酸性向上や再石灰化促進効果が確認されている。ただし、それだけで完全に虫歯の再発を防げるわけではない。あくまで材料によるプラスアルファの予防効果と捉えるべきで、基本は患者自身のブラッシングと定期メンテナンスが重要である。ユニシェード充填部は他のレジンに比べてプラークが付きにくい傾向はあるものの、口腔衛生状態が悪ければ結局二次う蝕は起こり得る。従って、「フッ素が出るから大丈夫」と過信せず、患者にも術後のケアを徹底してもらうことが肝要である。
Q. 既存の他社ユニバーサルシェードレジンと比べて何が違いますか?
A. 現在市場には複数の単一シェードレジン(いわゆるユニバーサルシェードCR)が存在する。それぞれ色調適合の原理や操作感に違いがある。例えば他社製品では顔料を使わずフィラーの構造色のみで発色するものや、硬化後に特定の色調に近づくよう調整されたものがある。ビューティフィル ユニシェードの場合、松風独自のS-PRGフィラー技術により光の拡散と透過で周囲色を再現する点が特徴で、さらにフッ素徐放による予防的機能を併せ持つ点が差別化ポイントである。操作性については、製品によってペースト硬さや流動性がかなり異なる。ユニシェードはペーストタイプがやや硬めで崩れにくく、フロータイプは「ゼロフロー」と称するように垂れない粘度になっている。他社品ではペーストが軟らかく流れやすい代わりに詰めやすい、など対照的な特徴もある。どちらが優れるかは術者の好みによる部分も大きい。したがって、それぞれ実際に手に取って使用感を確かめ、術式や求める臨床結果に合うものを選ぶことが望ましい。いずれにせよビューティフィル ユニシェードは、現時点で日本国内において信頼性の高いユニバーサルシェードレジンの一つであり、他社製品ともども今後のコンポジット修復のスタンダードになり得る存在であると言える。