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歯科用レジン 「クリアフィルDCコア」とは?手順・術式、添付文書について解説

歯科用レジン 「クリアフィルDCコア」とは?手順・術式、添付文書について解説

最終更新日

例えば、根管治療後に装着したクラウンが程なく脱離し、中からレジンコアごと抜け落ちてしまった経験はないだろうか。コアの脱離や破折は患者の信頼を損ない、再治療に伴う時間的・経済的ロスを招く。支台築造(コア)の安定性と効率向上は、日々の診療の質と医院経営に直結する重要課題である。本稿では、近年注目される歯科用デュアルキュアレジン「クリアフィル DCコア オートミックス ONE」に焦点を当てる。その臨床的特徴と術式上のポイント、添付文書に基づく留意点を整理し、製品導入の判断材料を提供する。

クリアフィル DCコア オートミックス ONEの概要

クリアフィル DCコア オートミックス ONE(以下、DCコア ONEと略す)は、クラレノリタケデンタル株式会社が提供するデュアルキュア(光・自己重合)型の歯科用支台築造用コンポジットレジンである。根管内での化学重合硬化と光照射硬化の両方に対応し、直接法および間接法によるコア築造に使用できるよう設計された製品である。材料はAペースト(ベース)とBペースト(触媒)の二剤からなり、専用の二連シリンジで自動練和(オートミックス)される。混和チップ先端に装着する細径のガイドチップを用いることで、根管深部までレジンペーストを直接押し出し充填することが可能である。本製品は管理医療機器(クラスII)に分類され、歯科用支台築造材料として薬機法の承認・認証を取得している。なお、シェード(色調)は歯質との識別が容易な「ホワイト」と審美性に配慮した「デンチン」の2種類が用意されている。

主要スペックと臨床での意義

デュアルキュア型のため、光照射だけでなく化学重合でも硬化が進行する。根管の深部や金属によって光が遮蔽される部位でも確実に硬化できる点は、臨床上大きな安心材料である。実際の操作時間(ワーキングタイム)は混和開始から約3分間で、口腔内で築盛操作を行うには十分な猶予がある。一方、化学重合による初期硬化はおよそ6分後に完了し、その時点で支台歯形成(削合)が可能な硬さに達する。充填後、必要に応じて表層に光照射を併用すれば、さらに早期に硬化を完了させられる。

フィラー(無機充填材)含有率は約74重量%と高充填であり、高い機械的強度(圧縮強さ・曲げ強さ)と低収縮を両立している。強度値は他社の代表的コア用レジンと比較しても遜色なく、硬化後のレジンは象牙質に近い硬度・弾性率を示すため、支台歯形成時の切削感も天然歯に近い。これにより、歯質とレジンコアの境目でバーが跳ねたり段差ができたりするリスクが小さい。さらに本製品はX線不透過性を有し、術後のX線写真でコアが明瞭に描出されるため、残存う蝕の見落とし防止や後々の評価にも役立つ。

色調は前述のホワイト(白色不透明)とデンチン(象牙質色)の2種類があり、それぞれ用途に応じて選択する。ホワイトは歯質とのコントラストが明確で、築造時や削合時に歯との境界が視認しやすい利点がある。一方デンチン色は天然歯に近い色調で、特にオールセラミッククラウン等の下でコアの透けが目立たないよう配慮されたシェードである。

接着システムとの互換性・使用上のポイント

本製品を使用するには、適切な歯面処理とボンディング操作が不可欠である。メーカーは、同社の「クリアフィル ユニバーサルボンド Quick 2」あるいは「クリアフィル ボンド SE ONE」との併用を推奨している。これらの接着剤は混合や待ち時間を要さないワンステップタイプで、DCコア ONEと接触すると酸化還元反応によって化学重合が開始される特性を持つ。すなわち、光の届きにくい根管内でもボンディング層が硬化し、歯質との強固な接着が得られる。ただし、いずれの場合もメーカーは最終的に光照射を行うよう指示しており、可能な範囲でボンディング材は十分に光硬化させておくのが安全である。他社製ボンディングを用いる場合も、デュアルキュア対応もしくは自己重合型の製品を選択し、根管内において確実に硬化するよう留意する必要がある。万一、光重合専用の接着剤しか手元にない場合には、あらかじめデュアルキュア用の触媒剤が提供されているか確認し、無い場合は使用を避けるか、リスクを承知した上で根管入口部のみ接着して用いるなどの工夫が必要になる。

ポスト(土台)の併用については、ファイバーポストの使用が一般的である。本製品もガラス繊維強化樹脂製のポストと相性が良く、メーカーも自社製「クリアフィル ADファイバーポストII」との組み合わせを推奨している。ファイバーポストは光透過性があり、本製品のホワイト色とも色調調和が取りやすい。金属製ポストを用いることも不可能ではないが、その場合はポスト表面に適切な前処理(サンドブラストやメタルプライマーの塗布)を施し、レジンとの接着性を高める必要がある点に注意する。

実際の操作では、まず根管充填後の歯質を適切に前処理(例えばエッチング+プライマー、またはSE系ボンドの塗布)し、ボンディング材を根管内壁から窩洞全体に行き渡らせる。余剰をエアーブロー等で除去し、可能であれば光照射して硬化させておく。その後、DCコア ONEの二連シリンジに新しいミキシングチップを装着する。この際、シリンジのA・B各ペーストの吐出口の位置が正しく揃っていることを確認する(ずれている場合はシリンジ先端の可動部を回転させて調整する)。混和チップは直射日光やユニットライトの強光が長時間当たると内部で硬化が始まり作業時間が短くなるため、必要な準備を整えてから装着することが望ましい。混和チップ先端には細いガイドチップを接続し、根管内の最深部に届くよう挿入する。そしてトリガー(手押しでも可)をゆっくり引き、ペーストを根管底から満たしていく。ガイドチップを徐々に引き上げながら注入することで、気泡の混入を防ぎつつ隅々までレジンを行き渡らせることができる。根管が複数ある大臼歯では、太いガイドチップで主根管にポストを植立しつつ、他の細い根管には細いチップでレジンのみ充填するといった対応も可能である。ポストはあらかじめ試適して長さ調整を済ませておき、レジン充填後に速やかに挿入する。挿入後は過剰な圧を避けつつ必要な位置で保持し、周囲にさらにペーストを築盛してコアの形態をおおよそ整える。そのまま化学重合で硬化を待つか、適宜光照射を併用して硬化を促進する。硬化後はポスト突出部の切断や、粗造な形態の修正を行い、最終的な支台歯形成へと移行する。

繰り返し使用するシリンジ自体の管理としては、使用後に混和チップを外し、シリンジ先端を清潔に拭って付属のキャップで密閉保存する。保存時は冷蔵庫(2~8℃)で直射日光や照明が当たらないよう保管するのが推奨されている。冷蔵庫から取り出した直後はペースト粘度が高く操作性が損なわれる可能性があるため、室温で約15分間おいて温度を戻してから使用するのが望ましい。なお、混和チップ装着後に長時間放置したペーストはシリンジ内で硬化が進む恐れがあるため、一度装着したチップは早めに使い切ることが原則である(硬化しかけたペーストを再使用すると、混合不良や吐出不良を招く)。作業中にガイドチップの向きを変える必要がある場合は、根元部分を持ってゆっくり回すようにし、細い先端を折らないように注意する。使用後のチップ内の残留物は硬化して取り除けないため使い捨てとなる。

以上のように、本製品の運用にあたっては、適合する接着システムの選択と、提供されるチップ類を活用した的確な操作手順が重要になる。メーカーからは各種マニュアルやデモ動画が提供されており、初めて導入する際にはそれらを参照し、スタッフ全員で手順を共有しておくと良いだろう。

経営面でのインパクト

DCコア ONEの価格は1本あたり約8,000円(税別、卸価格目安)であり、内容量から換算すると1歯のコア築造に要する材料費はおよそ800~1,000円程度になる(症例の欠損量によるが、1本のシリンジで約8~10歯に使用可能である)。これにボンディング材やポストの費用(ファイバーポスト1本あたり数百円)を加えると、1症例あたり1,000~1,500円前後のコストが発生する計算になる。一方、保険診療での支台築造の診療報酬(直接法、ファイバーポスト併用時)は部位にもよるがおよそ500~750円程度であり、材料費だけを見れば収支はトントンかやや赤字となる。しかし、従来法である鋳造メタルコアの作製には技工所への支払い(鋳造料・合金代)が発生し、さらに印象採得・仮封・セットのための追加来院が必要であったことを考えると、院内完結するレジンコアはトータルで経済的メリットが大きい。追加の来院を省略できれば、その分他の患者を診療できるため機会損失を減らせる上、患者の負担軽減による満足度向上にもつながる。特に保険診療中心で日々多くの患者を診ている医院にとって、1歯あたり1回の通院削減効果は決して小さくない。

次に、チェアタイム短縮と回転率向上の観点を見てみよう。自動練和シリンジによる直接法コア築造は、手練りや間接法と比べて診療時間の短縮に寄与する。例えば、従来の手練りレジンではペースト計量・練和・充填に手間取り、混合ムラによる硬化遅延や気泡混入のリスクもあった。DCコア ONEではシリンジを装着して押し出すだけで適切に混和されたレジンが供給され、確実に短時間で硬化するため、1症例あたり数分程度のチェアタイム短縮が期待できる。また、上述の通り鋳造コアでは少なくとも1回分の通院とセットに要する時間(15~30分程度)が必要だったものが、レジンコアでは不要となる。短縮された時間を他の有収益処置に充てることで、生産性の向上=売上増加につながる可能性がある。

さらに、再治療リスクの低減という長期的視点でもメリットがある。接着性レジンコアは歯質と一体化した築造が可能であり、鋳造金属コアに比べて残存歯質へのストレス分散に優れるとされる。特にファイバーポスト一体型のレジンコアは、金属ポストによる歯根破折のリスクを低減できるとの報告もあり、長期的に見て歯の生存率向上に寄与し得る。コア脱離や歯根破折が減少すれば、再治療や補綴物の作り直しにかかるコスト(材料費・技工費・人件費)を削減できるだけでなく、患者からの信頼維持にもつながる。医院にとって、保証期間内の補綴物脱離は無収入の再装着や再製作を強いられる痛手であるが、コアの段階でリスクを最小化しておくことは、このような隠れたコストの発生抑制につながる。

最後に、自費診療への波及効果にも触れておきたい。近年は「メタルフリー治療」を訴求する医院も増えている。レジンコアとファイバーポストの組み合わせは完全に金属を排した支台築造を可能にし、オールセラミッククラウン等の自費補綴との親和性が高い。患者にとっても歯の内部まで金属を使わないという付加価値は分かりやすく、治療選択の後押しになる場合がある。また、審美症例でコアの色調が歯肉から透けたり、補綴物越しにグレーが影響する心配がないことは、術者にとっても自費治療の品質管理上のメリットである。結果として、本製品の導入は自費補綴の満足度向上や選択率アップにつながり、長期的な収益増に寄与し得る。さらに、高機能な材料を導入していること自体が医院の先進性アピールとなり、患者からの信頼感や差別化にもつながるだろう。

使いこなしのポイント

導入初期の留意点

初めて本製品を使用する際は、簡便さゆえに基本的なステップを省略しないことが肝要である。例えば、ボンディング材のエアーブロー不足や歯面の汚染(湿気・唾液付着)があると、せっかくの高性能レジンも十分な接着力を発揮できない。ラバーダムや確実な隔壁の装着による確実な湿度管理は従来以上に重要である。また、混和チップ装着後は一気に操作を完了させる段取りが必要だ。途中で他の作業に気を取られていると、チップ内で硬化が進み、吐出不良やボンディング層との接続不良を招きかねない。導入当初はタイマーを用いて硬化時間を把握し、3分以内で充填・ポスト挿入・築盛を終えるペース配分を身につけることが望ましい。

築盛時の工夫

大きく崩壊した歯や隣接面が欠損しているケースでは、レジンがはみ出し過ぎないようマトリックス(矩形バンド)を装着して築造するとよい。ほどよい形態で硬化させられれば、削合に要する時間を短縮できる。ペーストの非流動性が高いため通常は垂直方向に流れ落ちる心配は少ないが、それでも築盛量が多い場合には途中でライト照射を数秒当てて一部を仮硬化させ、レジンがズレないよう安定させてから全体を硬化させる方法も有効である。ただし長時間の照射は自己重合成分が働く時間を奪いかねないため、あくまで微調整に留める。支台歯形成においては、象牙質との境界を意識して慎重にバーを当て、段差が生じないよう滑らかに仕上げる。切削抵抗が似ているとはいえ全く同一ではないため、最初のうちは力加減を調整しながら削ると良い。

院内教育と習熟

DCコア ONEは操作自体はシンプルであるが、歯科医師のみならずアシスタントにも一連の段取りを理解させておくことが望ましい。とくに、ボンディングのタイミングや混和チップの扱い(装着・廃棄・交換タイミング)などでスタッフの的確なサポートがあると、術者は築造に専念できる。メーカー提供のトレーニング用コンテンツやデモンストレーションビデオをスタッフと共有し、導入前に模型や抜去歯でシミュレーションしておけば、本番でもスムーズに使いこなせるだろう。さらに、患者への説明においても、新しい材料のメリット(メタルフリーであること、治療回数が少なくて済むこと等)をわかりやすく伝えることで、患者の安心感や治療選択への納得感が高まる。

適応と適さないケース

適応が高い症例

DCコア ONEは、根管治療後に支台歯の大部分が失われた歯のコア築造に広く適応する。特に、ファイバーポストを併用できるだけの根管長が確保でき、周囲の湿度管理も可能なケースで真価を発揮する。具体的には、前歯から小臼歯では審美目的でメタルフリーの支台築造が求められる症例、大臼歯では太い主根管にポストを通しつつ他の細い根管はレジンで封鎖したい症例などに有用である。また、金属アレルギーの患者や、従来法でメタルポストによる根裂を経験した患者への再治療においても、レジン+ファイバー方式は歯に優しい代替策となる。さらに、コア築造後すぐに支台歯形成や印象採得を進めたい場合(即日コア→形成)にも、硬化待ち時間が短い本製品は適している。

慎重な検討を要する症例

一方で、すべてのケースがレジンコアで最適とは限らない。例えば、残存歯質がごくわずかでフェルールが確保できない歯では、そもそも保存治療の適否自体を検討すべきであり、保存するにしても支台築造前にコアアンカーの併用(スクリューポスト埋入など)や外科的歯冠延長による歯質確保を考慮する必要がある。また、歯肉縁下に及ぶ深いう蝕がある場合や出血コントロールが困難な場合、接着操作が十分行えないため、レジンコアの恩恵を得にくい。そのようなケースでは、一時的にグラスアイオノマーで築造して様子を見るか、最終的には抜歯・インプラントの選択肢も視野に入る。術者の経験によっても向き不向きがあり、接着操作に不慣れでどうしても不安が拭えない場合には、無理にレジンコアに拘らず従来から慣れ親しんだ方法(鋳造コア等)を選択することも一つの判断である。ただし、その場合でも将来的には本製品のような新しい選択肢を習得しておくことで、より幅広い症例に柔軟に対応できるようになるだろう。

導入判断の指針

保険診療中心で効率重視の医院の場合

日々多くの患者を回転させている保険診療主体の医院では、DCコア ONEの導入は治療効率の向上という観点で大きなメリットがある。鋳造コアに頼らずその場で築造を完了できるため、通院回数を減らしつつクラウンまでスピーディに進行できる。患者満足度の向上によるキャンセル減少や口コミ効果も期待できよう。ただ、材料費の負担増は無視できないため、例えばレジンコアが真価を発揮するケース(明らかに残存歯質が少ない歯や美観が問題となる前歯部など)を中心に優先的に適用し、健全歯質が多くポスト不要と判断したケースでは従来通り簡便な充填法で済ませる、といったバランスを取ることも一策である。重要なのは、本製品への投資を時間資源の節約で回収するという視点である。空いたチェアタイムに他の処置を組み込む工夫や、技工料の削減分を計算に入れて院内収支を検討すれば、十分採算に合う可能性が高い。総じて、効率最優先の医院ほど「短時間で確実な築造」を実現する本製品の恩恵を享受できるだろう。

高付加価値・自費診療志向の医院の場合

自費率が高くクオリティを重視する医院にとって、DCコア ONEの導入は患者満足度と診療品質のさらなる向上につながる投資である。費用面のハードルは保険診療ほど問題にならず、むしろ「ベストな材料を使っている」という付加価値が重要だ。メタルフリーの支台築造はオールセラミック修復との親和性が高く、審美面・生体親和性の両面で患者へのアピールポイントとなる。また、切削性や作業性の良さは術者のストレス軽減にも寄与し、細部までこだわった治療を提供しやすくなるだろう。既に同様のコンセプトのレジンコアを活用している医院も多いが、もし旧来型の材料やメタルポストを使い続けているようであれば、競合他院との差別化の観点からも本製品の採用を前向きに検討したい。高付加価値志向の医院ほど「最先端の材料・技術を導入している」事実そのものがブランド力となり、患者からの信頼獲得にもつながるのである。

インプラント・口腔外科中心の医院の場合

インプラント治療や外科処置が主体の医院では、保存修復に用いる材料の導入優先度は下がりがちである。しかし、DCコア ONEは限られた症例において歯の延命や補綴の安定に寄与する武器となり得る。例えば、大規模なインプラント治療計画の中で保存可能な歯がわずかに残る場合、それらを的確に補強して活用することで治療全体の予後を高めることができる。ファイバーポスト+レジンコアで歯根を保全すれば、ブリッジ支台や部分義歯の鉤歯として最後まで機能させられるケースもある。また、金属コアと違い将来的な再根管治療の際にも除去が比較的容易で、生物学的リスク管理の面でも優れる。インプラント中心のドクターは外科的措置(挺出や歯肉整形)を駆使してでも歯を残す選択肢を提示できることが差別化につながる場合もあり、その際に本製品のような現代的支台築造法を知っておくことは武器になる。使用頻度が少ない場合でも、1本用意しておけばいざという時に迅速な対応が可能である。高額な機器と比べればコスト負担も軽微であり、トータルな口腔再建を掲げる医院として持っておいて損のないツールと言えるだろう。

よくある質問

Q1. レジンコアの耐久性はどのくらいか。金属コアと比べて長持ちするのか。
A1. レジンコアそのものは適切に接着・築造されていれば非常に高い耐久性を示す。実際、同種のデュアルキュア型レジンコアは国内外で十年以上にわたり臨床使用されており、金属コアと遜色ない長期症例報告が蓄積している。ただし、耐久性は材料だけでなく残存歯質の量・形態やポストの有無、補綴物の適合・種類、咬合力など多くの要因に左右される。適切な症例選択と手技がなされていれば、本製品を用いたコアが数年で劣化・脱離するといった心配は過度にする必要はないだろう。むしろ、金属コアより歯質へのダメージが少ない分、長期的な歯の生存率向上に寄与する可能性も報告されている。

Q2. 現在使用しているボンディングシステム(他社製)と併用できるか。
A2. 基本的には併用可能である。ただし、前述の通りデュアルキュア型もしくは自己重合型の接着システムであることが条件になる。例えば、単独では光重合にしか対応しないボンディング材しか手元にない場合、そのままでは根管内で硬化が不十分となる恐れがある。その場合は製造元が提供するデュアルキュア用触媒や、別途デュアルキュア型の接着材を導入する必要がある。一方、近年の多くのボンディング剤(いわゆるユニバーサルボンドなど)は光・化学両重合に対応しているため、それらであれば本製品と併用して問題ない。簡便さや確実性の観点では、メーカー推奨の専用ボンド(SE ONEやUniversal Bond Quick 2)を用いるのが理想的だが、臨床的には現在お使いのシステムを踏襲しつつ導入している先生方も多い。

Q3. ファイバーポストを必ず併用しなければならないのか。
A3. ファイバーポストの併用は症例ごとの判断になる。残存歯質が十分あり、歯冠部にある程度の高さと軸面が確保できる場合(いわゆるフェルールが取れるケース)では、無理にポストを挿入しなくてもレジンコアのみで所要の保持力が得られることも多い。本製品もポスト非使用で単独の築造材料として問題なく機能する。一方、歯質が大きく欠損している場合や、細長い歯(例えば根管が長い前歯など)では、レジンだけで支えるとレバーアームが長くなり過剰な力がかかるため、ファイバーポストを併用して内部から補強する方が安全である。まとめると、ファイバーポストは「あれば望ましいが必ずしも必須ではない」ツールであり、症例に応じて柔軟に判断するとよい。

Q4. もしコアが破折したり、再び根管治療が必要になった場合、除去や修復は容易か。
A4. レジンコアは金属コアに比べて修復・除去の自由度が高い。コアの一部が破損した場合でも、露出したレジン面を荒らしてボンディング処理を施せば、新たなレジンを追加築盛して補修できる可能性がある(状況によっては一度全て除去して築造し直した方が確実なケースもある)。また、根管内のファイバーポストを含むレジンコア一式を除去する場合も、ダイヤモンドバーや超音波チップで削合可能であり、金属ポストを除去するより比較的容易だと感じる術者が多い。ファイバーポスト自体がX線透過性を有するため、術前のレントゲンで位置や長さを把握しにくいデメリットはあるが、適切な器具を使えば除去は概ね可能である。総じて、レジンコアは修復・再処置の柔軟性という点でも有利と言える。

Q5. 製品の保管や器材面で注意すべき点はあるか。
A5. 本製品は樹脂系材料であるため、高温や光に長時間さらされる環境は避ける必要がある。未開封・開封後ともに冷蔵保存(2~8℃)が推奨されており、使用時には室温に戻してからシリンジを扱うようにする。また、開封後の使用期限(使用期間)も留意したいポイントである。製造ロットごとに定められた使用期限(多くは製造から2~3年程度)があるので、購入後はその期間内に使い切る計画を立てることが望ましい。混和チップやガイドチップは使い捨てであり、再利用すると混合不良や吐出不良の原因となるため厳禁である。なお、シリンジからペーストを押し出す際に専用ディスペンサー(ガンタイプの押し出し器)を用いると一定の力で安定して注入できる。手押しでも問題はないが、ディスペンサーがあれば長めのガイドチップ使用時もブレが少なく操作しやすい。これらの付属器材や保管条件を守ることで、製品性能を最大限発揮しつつ安全に使用し続けることができる。