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トクヤマデンタルの「オムニクロマ」の衝撃。症例や口コミ・評判、価格は?

トクヤマデンタルの「オムニクロマ」の衝撃。症例や口コミ・評判、価格は?

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何種類ものコンポジットレジンをシェードガイドと睨めっこしながら選んでは、充填後に「あれ、色が合わない…」と冷や汗をかいた経験はないだろうか。保管庫には使用頻度の低いシェードのレジンが未使用のまま期限切れになっていたり、患者ごとに微妙な色合わせに時間を取られてチェアタイムが延びてしまったり。開業歯科医にとってレジンの色調選択は小さくない悩みの種である。そんな中、登場と同時に歯科界を驚かせたのが、トクヤマデンタルの「オムニクロマ」である。一体どんな症例でもシェード選択不要で歯に馴染むというその革新的コンセプトは、多忙な臨床現場にどのような変化をもたらすのか。本稿では臨床と経営の両面からオムニクロマの真価を検証し、読者が自院に導入すべきか判断する一助となる情報を提供する。

オムニクロマとは何か?製品の概要

オムニクロマ(正式名称パルフィークオムニクロマ)は、トクヤマデンタルが開発した歯科充填用コンポジットレジン(光硬化型)である。従来のレジンのようなシェード(色調)のバリエーションが存在せず、単一色でVita社のA1~D4全範囲の歯の色に適合する世界初のユニバーサルシェードレジンとして2019年にデビューした。1本のシリンジは内容量4gで、前歯部から臼歯部まで保険診療で使用可能(2020年8月保険収載)なレジン充填に幅広く適応できる。また、広範囲の欠損では色調の明度を調整する補助材「オムニクロマブロッカー」を併用する仕様となっている。適応症例としては、う蝕除去後の直接充填修復(クラスⅠ~Ⅴ)はもちろん、コンポジットレジンベニアやダイアステマ(正中離開)の閉鎖、欠けた陶材修復物の修理など、多岐にわたる。なお、日本において本製品はクラスIIの管理医療機器(認証番号:230AFBZX00049000)に分類され、歯科医師が使用できる業務用材料である。

オムニクロマの主要スペックと臨床的意義

オムニクロマ最大の特徴は、シェードレスを実現する独自技術「スマートクロマティックテクノロジー」にある。このレジンには平均粒径260nmの均一な超微小球状フィラー(シリカ-ジルコニア)が約79重量%(68体積%)含有されており、光を透過・拡散することで構造色※による赤~黄の波長を発現する仕組みだ。簡単に言えば、レジンそのものに着色顔料を混ぜなくともフィラーの構造で歯の色調を再現できるので、周囲の歯質に溶け込むような色合わせが可能になる。硬化前はペーストが白く不透明なので操作視認性に優れるが、光重合すると一転して周囲の歯と同じ色に同化し、境界が目立たなくなる。この光学的特性により、窩洞のマージンがぼやけて修復物と歯の段差が見えにくくなる効果も期待できる。実際、筆者も初めてオムニクロマを使用した際、充填直後に肉眼で確認できていたレジンと歯質の境界ラインが、ポリッシングを終える頃にはほとんど判別不能になる様子に驚かされた。

機械的特性の面でも、オムニクロマは日常臨床に十分な性能を備えている。高充填かつ球状フィラー構造により高い機械的強度(曲げ強さや圧縮強度)は既存の代表的レジンと同等であり、咬合圧のかかる臼歯部修復にも問題なく耐える。また、フィラーの均一微小化によって優れた研磨性と艶の持続性が実現されており、短時間の研磨で鏡面光沢が得られ、それが経時的にも失われにくい。これにより、審美修復に必要な自然な艶を長期間維持できる。さらに耐摩耗性にも優れ、自身がすり減りにくい一方で対合歯を過剰に摩耗させないという両立し難い特性を持つ点は特筆に値する。加えて、フィラー充填率の高さは重合収縮の低減にも寄与しており、ポリマー化に伴う収縮応力や辺縁漏洩のリスクを抑え、長期的な辺縁封鎖性にも有利と考えられる。総じて、色調適合の革新性だけでなく基本的な物性もハイエンドなレジンに匹敵する水準であり、前臼歯を問わず安心して使用できるスペックである。

※構造色とは、モルフォ蝶の羽のように、物質自体の微細構造によって特定の色が発現する現象を指す。オムニクロマではフィラーの構造で赤~黄の色を呈し、それが周囲歯質からの反射光と合わさって歯の色を再現する。

オムニクロマの運用方法とブロッカーの使い方

オムニクロマの使用法自体は、基本的に従来のコンポジットレジンと何ら変わらない。ボンディング処理を施した窩洞にペーストを充填し、2mm厚以下の層で光重合するというオーソドックスな手技で対応できる。ただし、本製品を初めて使う際にはいくつか留意すべきポイントがある。

第一に、硬化前の色と硬化後の色が大きく異なることを理解しておく必要がある。未重合時のペーストは不透明な白色のため、一見すると「周囲より明るすぎるのでは?」と不安になるが、照射硬化すれば一気に周囲色に溶け込む。術者やスタッフはこの特性をあらかじめ把握し、作業中に違和感を覚えても硬化まで慌てず対処することが重要だ(患者にも事前に「光を当てると歯の色になります」と説明しておくと良いだろう)。なお、シェード選択のプロセスそのものが不要になるため、術前に歯面にレジンを仮当てして色確認する従来の習慣はむしろできない点には注意したい(硬化しないと色が合わないため)。この点は煩雑なシェードテイキングが省けるメリットの裏返しでもある。

第二に、症例によってはオムニクロマブロッカーの活用が適切となる。ブロッカーはオムニクロマと同系統のレジンで、やや高い不透明度と明度を持つ下地用材料である。具体的には、隣接面や舌側に健全歯質が少ない大きなクラスⅣや切端部の欠損などで、レジンの下地が暗い口腔内や透過光になってしまう場合に使用する。ブロッカーを薄く一層敷いて硬化させ、その上を本剤で充填する二層テクニックにより、背景の暗さを遮蔽して最終色調を安定させることができる。また、変色歯を削ったケースでわずかな残留着色をカバーしたい場合や、一般的なA1よりも明るい漂白直後の歯に近づけたい場合にも、ブロッカーを併用することでわずかに明度を上げた仕上がりに調整可能である。ブロッカーの使用有無は症例の欠損範囲と背景条件によって判断し、必要な場合はためらわず用いるのがオムニクロマを使いこなすコツである。

第三に、保管・ハンドリングについても配慮が必要だ。他のレジンと同様、未使用時は冷蔵保管が推奨されるが、使用時には室温に戻してペーストの硬さを適度にすることが望ましい。実際に本材を使用した歯科医からは「練和紙上に出したペーストが冷えて硬く、器具への載せ取りにややコツがいる」という指摘もある。しかしメーカーからは「18~30℃に15分以上置いて常温にもどすと操作性が向上する」とのフィードバックがあり、術前に必要量を出しておき温度を馴染ませることで解決できる。適切な粘性になれば、同社エステライト系列に慣れた術者であれば違和感なく練和・充填操作が行えるはずだ。光重合器や研磨システムは特段選ばず既存の機材・手順をそのまま踏襲できる点も現場に優しい。要は「シェード選択さえ気にしなければ、あとは普通のレジンと同じ感覚」で使えるのがオムニクロマの魅力である。

オムニクロマ導入の価格と経営インパクト

革新的な製品とはいえ、医院経営の視点からは「費用対効果」が最大の関心事である。オムニクロマは高額な設備投資を要する機器ではなく、比較的安価な消耗材であるため初期導入のハードルは低い。標準的な医院向け価格は1本あたり5,000~6,000円前後(4gシリンジ)で、従来のシェード付きレジンとほぼ同等の価格帯である。仮に1本のシリンジで20~40歯分の充填に使えるとすれば、1症例あたりの材料費は150~300円程度に収まる計算であり、コスト面で特段の負担増にはならない。むしろ、シェード在庫を多数抱える場合に比べてトータルの材料在庫コストは削減できる可能性が高い。例えば、これまでA系・B系など複数シェードのレジンを常備し、使い切れず廃棄する無駄が発生していた医院では、オムニクロマに統一することで在庫本数と廃棄ロスを大幅に圧縮できる。滅多に使わない色のために数千円の商品を寝かせ、期限切れで処分するといった非効率が解消すれば、年間で見れば数万円単位のコスト減も十分見込める。

一方、チェアタイム短縮による経済効果も見逃せない。シェード選択から調色までにかけていた時間がゼロになる恩恵は、特に保険診療で多くの症例を手がける先生ほど大きいだろう。仮に1症例あたりシェード選択に1分費やしていたとすれば、1日10症例で10分、年間200日診療なら約2,000分(33時間)もの時間が色合わせに充てられていた計算になる。その時間をカットできれば、年間で数十時間分を他の診療や患者ケアに振り向けられる。実際には色合わせ以外にもレジン充填には注意深いテクニックが必要だが、少なくとも「迷う」「悩む」というプロセスが省略される心理的負担軽減の効果も大きい。結果としてオペレーターのストレス低減や業務効率の向上につながり、それがひいては回転率アップや患者満足度の向上(治療時間の短縮)はもちろん、術者の集中力温存にも寄与するだろう。

さらに、高品質な審美修復を手間なく提供できることは経営的な差別化要因にもなり得る。例えば、「短時間で目立たないキレイな詰め物ができる」という評判は患者紹介やリピートにもつながる。自費診療でダイレクトボンディングなど高度なコンポジット修復を展開する場合でも、オムニクロマなら色調の調整工程を簡略化でき、効率よく施術することで利益率向上に貢献するかもしれない。このように、オムニクロマ導入によって材料費そのもの以上に時間・在庫管理・患者評価の面でROI(投資利益率)を高める効果が期待できると言える。

オムニクロマを使いこなすポイント

新しい材料を導入しても、それを十分に活用できなければ宝の持ち腐れになる。オムニクロマを現場で使いこなすためのポイントを、臨床経験に基づきいくつか挙げておきたい。

まず、小さく始めて慣れることが肝要である。初めて使用する際はいきなり難易度の高い前歯部審美ケースで試すのではなく、比較的単純な小さなう蝕の充填から始めてみると良い。クラスⅠや浅いクラスⅡなどで色調適合や操作感を確かめ、「本当にどんな色にも合う」ことを自分の目で確認することで自信がつく。筆者自身、最初に臼歯部の小さなインレー窩洞に使用し、充填後に自然と歯と一体化する様子に感銘を受けた経験がある。それからは前歯部にも安心して応用できるようになった。まずは簡単な症例で性能を実感する──これはスタッフ教育の面でも有効だ。スタッフが本当に色が馴染むことを理解すれば、術中アシストや調色の手間に関する認識も変わり、チーム全体でスムーズに導入できる。

次に、ブロッカーの使用判断基準をチームで共有することもポイントだ。先述の通り、ブロッカーが必要になる症例は限られるが、大きな欠損で「あれ、ちょっと色が浮いて見えるかも?」と悩んだときに手早く対処できるよう、事前に使用ルールを決めておくと良い。例えば「クラスIVで切縁までレジンになる場合は原則ブロッカー併用」「隣接する歯がかなり暗い場合はブロッカーで明度調整」など、院内でガイドラインを作成しておけば迷いが減る。ブロッカー自体の操作も通常のレジンと同様なので、トレーニングは難しくない。むしろポイントは「使いどきの見極め」にあるため、症例写真やメーカー提供のケースレポートを用いて院内ミーティングで共有するのも有効だ。適材適所でブロッカーを活用する戦略が、オムニクロマによる色調再現性を最大限に引き出す鍵となる。

また、患者への説明や付加価値化にも工夫できる。保険診療で使う場合でも、「一色でどんな歯にも自然に合わせられる最新材料を使っています」といった説明を加えると、患者の安心感や医院への信頼感アップにつながるだろう。ただし薬機法の観点から効果や安全性を断定的に謳うことは禁物なので、「最新技術で開発された材料」「たくさんの色を用意しなくても自然に馴染む」といった事実ベースの紹介に留めることが肝心だ。自費治療の場面では「色合わせのための型取りや試適が不要なので、その分短期間で終えられます」など、オムニクロマの利点を時間的メリットとしてアピールすることもできるだろう。患者目線での付加価値を伝えることで、ただ材料を替えるだけでなく医院のサービス品質向上にもつなげていきたい。

オムニクロマが活躍する症例と適さないケース

万能に思えるオムニクロマだが、当然ながら適不適のある症例も存在する。どんな症例で真価を発揮し、逆にどういったケースでは注意が必要なのかを整理してみよう。

まず適応が特に有用と思われるケースとしては、色調合わせに悩みがちな場面全般が挙げられる。具体的には、中程度までのう蝕に対する単純なコンポジットレジン充填はオムニクロマの真骨頂だ。小~中規模のクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅴの修復では、ほぼ例外なく周囲歯質に溶け込む自然な充填が可能である。隣接歯とのシェード差に悩む必要がなく、日常の保険診療で量的に多いこれらの処置において大きな効果を発揮する。また、複数歯にまたがるカリエス処置でも有用だ。例えば上顎前歯部の隣り合う2歯を同日に充填する場合、通常ならシェードテイキングや隣在歯との色調バランスに気を遣うところだが、本材なら両方とも自然に周囲と調和し、左右差も気になりにくい。これは患者にとっても術者にとってもメリットが大きい。さらに、補綴物修理や仮封後のワンポイント修復など、色合わせが難しいスポット的なレジン使用でも、オムニクロマであれば簡便に処置できる。例えばクラウン辺縁の二次う蝕をレジンで一時修復する際など、わざわざシェードを測らずとも周囲と馴染ませられるのは臨床的にありがたい。

一方、適さないか慎重な検討を要するケースも存在する。その代表は広範囲の審美修復で高度な色彩表現が必要な場合である。前歯部の大きなクラスIV欠損や複数歯にまたがるダイレクトベニアでは、オムニクロマ単品でも平均的な色調には合致するものの、隣在歯特有のキャラクチャー(エナメル質の透明感やカマフェイス、ホワイトスポットなど)までは再現できない。審美要求の高い患者や、微妙な色ムラまで表現したい症例では、オムニクロマをベースに他のエナメル質用レジンや着色材と併用してレイヤリングする選択肢も視野に入れるべきだ。オムニクロマ自体は単一の中間的な色調特性を持つため、術者が意図的に色調をコントロールする余地が少ない。芸術的な審美修復を追求するケースでは逆にこの“何にでも染まる”特性が物足りなく感じることもあるだろう。

また、極端な色調の歯にも注意が必要だ。例えば Vitaガイド外の漂白後の非常に明るい歯(B1よりさらに白い)や、高度に変色した暗い歯(A4より暗い)のケースでは、オムニクロマの適合範囲を超える可能性がある。メーカーは「ホワイトニング後まで追随する」と謳っており実際ある程度の順応性はあるが、周囲組織からの透過光が極端に異なる場合には、完全に同化しきれずわずかに明度差が残ることも考えられる。このような場合はブロッカーの活用や他シェードの併用、あるいはそもそもレジン以外の修復法(ラミネートベニアやクラウン)も検討すべきかもしれない。同様に、大きな金属修復物の隣接や暗色のコア上に直接レジンを盛るような状況でも、背景の影響で色調が冴えない場合があるため、必要に応じ遮蔽効果のあるライナーやブロッカーを噛ませる配慮が望ましい。

最後に留意したいのは、術者がコントロールできる要素が限られる点だ。通常、レジンの色は術者が選択できるが、オムニクロマは「材料任せ」になる。これは大きな利点である半面、色調に関する微調整の自由度が下がることも意味する。したがって、自身の目指すゴール(完璧な審美か、そこそこの調和か)に応じて、必要なら他の材料と使い分ける戦略も必要になる。要はオールマイティだが万能ではないという点を理解し、適材適所で賢く使うことが肝心なのである。

導入判断の指針

以上を踏まえ、どのような歯科医院・歯科医師にオムニクロマがマッチするのか、医院の診療方針別に考えてみよう。

保険診療中心で効率を重視する場合

日々多数の保険診療を捌き、とにかくチェアタイム短縮とオペレーション効率向上が課題という先生には、オムニクロマは極めて相性が良い。シェード選択に悩む時間がゼロになるだけでなく、在庫管理がシンプルになることでスタッフの手間も減る。特に小~中規模のう蝕処置が多い一般歯科診療所では、レジン充填の標準材料として一本化することで業務フローが統一化され、ムダやばらつきが減る効果が期待できる。コスト面でも保険診療の点数内で十分吸収可能な価格帯であり、材料費が経営を圧迫する心配は少ない。患者にとっても毎回安定した色調の詰め物が短時間で入るメリットがあり、医院の回転率と患者満足の双方にプラスとなるだろう。「細かいことに煩わされず、とにかくスピーディに良質の処置を提供したい」という効率重視派の先生には導入を検討する価値があるだろう。

自費診療で高い付加価値を提供したい場合

セラミックや高度なダイレクトボンディングなど審美性重視の自費診療に力を入れている先生にとっても、オムニクロマは有用なツールとなり得る。ただしアプローチは少し異なる。単体で芸術的なレイヤリング表現ができるわけではないが、ベースとして確実な色調適合性と優れた物性を持つ点が強みである。例えばラミネートベニア的なレジン修復を行う際、まずオムニクロマで基本の形態と色調を一発で整え、その上にごく薄いエナメル質シェードやステインを施すことで、効率良く審美修復を完了できる。全てのレイヤーを一から色調設計するより土台が自動調色される分、時間短縮と再現性向上が望める。患者説明の上でも「最新の技術で自然な色に合わせるレジン」を使うことは付加価値になり、適切にその価値を伝えれば価格に見合う満足を提供しやすい。もちろん、極度の審美要求症例では従来通りマルチシェードで細工する方が良いケースもある。しかし「ある程度の審美性を効率良く」というニーズにはオムニクロマは打ってつけであり、高付加価値メニューの標準材料として十分導入検討に値する。

外科・インプラント中心で保存修復が最小限の場合

インプラントや外科処置主体でコンポジット修復の頻度が少ない医院にも、実はオムニクロマは合っている。なぜなら、こうした医院ではレジン材料の使用量が少なく、複数シェードを揃えても使い切れずに劣化してしまうリスクが高いからだ。オムニクロマであれば1本常備しておくだけで急な保存修復にも臨機応変に対応でき、滅多に使わないシェード在庫を抱える必要がない。たとえばインプラント埋入後の小さなプロビジョナル修復や、外科処置時に発見されたカリエスの応急充填など、スポットで発生するレジン処置にもシームレスに対応できる安心感がある。術者が保存修復を専門にしていなくとも材料頼みで色調が整うため、仕上がりの品質も安定する。総じて保存系の処置割合が低い医院ほど「たった一色で済む」恩恵は大きく、材料管理を簡素化するアイテムとして導入する価値があるだろう。

よくある質問(FAQ)

本当に一色でどんな歯にも合うのか?

オムニクロマはVitaのA1~D4までほぼ全ての自然歯の範囲をカバーするよう設計されており、通常のう蝕修復であれば一色で違和感のない仕上がりが得られる。ただし極端に漂白された歯(A1より明るい)や著しく変色した歯など、通常の範囲を超えるケースでは完全に同化しきれない可能性もある。その場合はブロッカーを併用したり、別のレジンシェードを使うといった対策で補うのが望ましい。

経年的に変色したり劣化したりしないか?

オムニクロマ自体には着色用の顔料が含まれておらず、経年的な変色は起こりにくいと考えられる。実験データでもコーヒーや紅茶による着色耐性は他の高品質レジンと同等以上で、研磨面の光沢も長期間維持される傾向が示されている。ただし口腔内環境やプラーク付着状況によっては表面が汚れる可能性はあるため、定期的な研磨・メインテナンスは必要である。また機械的強度や摩耗特性も既存製品と同水準であり、適切に詰められていれば長期にわたり安定した機能・形態を保つと期待できる。

オムニクロマは保険診療で使用できるか?

できる。オムニクロマは2020年に歯科用コンポジットレジン材料として保険収載されており、一般的なレジン充填処置に問題なく使用可能である。材料自体の価格も他の保険レジンと同程度なので、保険点数内で収まる範囲で導入できる。ただ、各種加算の要件(例えば前装加算など)は通常のレジン充填と同じく適用されるので、保険請求上も特別な扱いは必要ない。

大きな欠損にも本当に使えるのか?ブロッカーは必須なのか?

大きな欠損、特に前歯部の切端を含むような修復でもオムニクロマは使用可能である。ただしその際は症例に応じてブロッカーの併用を検討すべきだ。広範囲の欠損では周囲の歯質が少ないため、本材だけでは背景の暗さを消せず明度が低く見えることがある。ブロッカーを下層に敷けば明度を底上げでき、最終的な色調適合が良好になる。必ずしも全ての大きな欠損でブロッカーが必要なわけではないが、「仕上がりがやや暗いかも」と感じた場合には追加することで改善できる。また大きな欠損ではレジンの適切な積層と十分な重合がより重要になる点も留意したい。

他のコンポジットと比べて強度や耐摩耗性は問題ないか?

オムニクロマの機械的強度(曲げ強さや圧縮強度)は主要な他社レジン(ナノハイブリッドやマイクロハイブリッド系)と同等レベルであり、臼歯部咬合にも耐えうる。また耐摩耗性に優れ、臼歯部での咬耗や対合歯への影響も少ないと報告されている。これは同社エステライトΣQuickなどで実証されたフィラー技術を継承しているためで、臨床的にも筆者の経験上、半年~1年経過後に形態が崩れたり咬合調整が必要になった例は見当たらない。適切に研磨し咬合調整をしたうえで使えば、他の高品質コンポジットと同様の長期安定性が期待できる。強いて言えば、繰り返しになるが色調調整の自由度が低い点が他のマルチシェード製品との違いであり、強度・耐久性という観点では大きなハンデは無い。安心して通常のコンポジットワークに組み込んでよいだろう。