
GC(ジーシー)のコンポジットレジン「ソラーレ」の評判や価格、使い方は?
日々のう蝕処置でコンポジットレジン修復を行うたび、思い通りにいかない場面に心当たりはないだろうか。例えば、前歯の色合わせに神経を使ったのに、光重合後にわずかに色調がずれて患者に指摘されて冷や汗をかいた経験や、咬合面の形態をスパチュラで整えた瞬間にペーストが器具にまとわりついて形が崩れてしまった苦い記憶が、一度はあるはずである。そうした臨床現場での細かなストレスは、材料選択と扱い方次第で大きく軽減できる。本稿では、GC(ジーシー)の光重合型コンポジットレジン「ソラーレ」に焦点を当て、その臨床的ヒントと医院経営の視点を織り交ぜながら、評判・価格・使い方を詳しく解説する。日々のレジン充填の質と効率を向上させ、投資対効果(ROI)を最大化する一助となれば幸いである。
製品の概要
ソラーレは、GC社が提供する前歯修復用の歯科用コンポジットレジンである。正式な薬事区分名は「歯科充填用コンポジットレジン ジーシー ソラーレ」で、管理医療機器に分類される(承認番号: 21600BZZ00375000)。光重合(可視光硬化)型のハイブリッドレジンであり、天然歯に近い審美性を追求して開発された製品である。適応症は前歯部全般および咬合圧のかからない小さな臼歯部窩洞などで、審美性が重視される部位でのダイレクト充填修復に用いることを想定している。名前こそ前歯用という位置づけであるが、小臼歯や大臼歯の頬側面のような非咬合面や浅い窩洞であれば使用可能である。逆に強い咬合力がかかる大臼歯の咬合面や大きな修復に対しては適応外とされており、その用途には後述する姉妹品の「ソラーレP」(臼歯部用コンポジットレジン)が用意されている。
ソラーレの発売は2000年代前半で、同社の前世代製品「グラディア」の技術を基に開発された経緯がある。登場から約20年が経過した現在でもカタログに残るロングセラーであり、その背景には扱いやすさと安定した臨床成績への評価がある。色調やパッケージはマイナーチェンジを経ているものの、本質的なコンセプトは「誰でも天然歯のような自然な詰め物が作れるレジン」で一貫している。前歯部修復を日常的に行う一般歯科医にとって、ソラーレは“困った時の頼れる一本”として存在感を放ってきた製品である。
主要スペックと臨床でのポイント
ソラーレの性能を語る上で重要なスペックとして、フィラー組成、色調ラインナップ、操作性、X線造影性の4点が挙げられる。以下、それぞれの内容と臨床現場で意味するところを解説する。
フィラー組成と機械的特性
ソラーレはMFRハイブリッド型のコンポジットレジンと称される。MFRとはメーカー独自の呼称で、有機質と無機質の複合フィラー(Micro Filled Reinforcedフィラー)を含むことを意味する。具体的には、樹脂でできた有機フィラーと直径2µm以下の微細な無機フィラー(ガラス等)を組み合わせている。この混合フィラー技術により、従来の大型フィラー入りレジンに比べて研磨後の表面平滑性が高く、かつ微小フィラーのみのレジンより充填率を高めて強度と耐摩耗性も両立している。平均粒径は約0.7µmと微細で、充填後の光沢や歯面とのなじみが良好である。圧縮強さや曲げ強さといった機械的指標は、同時期の他社ハイブリッドレジンと同等レベルに達しており、日常臨床で前歯から小臼歯まで安心して用いられる強度を備えている。ただし大臼歯の咬合面修復など応力負荷の大きいケースでは、長期的にすり減りが生じやすい点には留意が必要である。これは後継のナノフィラー系レジンと比較するとやや研磨後光沢や耐摩耗で劣る部分でもあり、過度な負荷が見込まれる部位への使用は避けた方が無難である。
色調ラインナップと審美性
審美性の観点では、ソラーレは単色でも周囲の歯と調和しやすいよう最適化されている。シェードは合計13色と豊富で、日常使いする標準シェード(A1、A2、A3、A3.5、A4、B2、B3、C3)に加え、隠蔽性の高いオペークシェード(AO2、AO3)、歯頸部用シェード(CV: サービカル、CVD: サービカルダーク)、漂白歯用の高明度シェード(BW: ブリーチングホワイト)が用意されている。この充実したカラーバリエーションに加え、ソラーレ自体のレジンマトリックスが硬化前後で色調変化が少なく設計されているため、色合わせの段階で「充填時に見えた色が、硬化後もそのまま再現される」安心感がある。さらに、レジンの光学特性として周囲の歯質の色を取り込む“カメレオン効果”が高い点も特徴である。適度な半透明性を持たせることで、充填物単独で色を隠すのではなく、歯の内部からの色を透過・反映させて自然な調和を実現するコンセプトである。そのため、例えば「A3」と「CV」の2色さえ揃えておけば、多くの中高年患者の前歯から頬側露出面までかなり広範囲の色に対応できるという臨床報告もあるほどだ。審美修復が求められるケースでも、必要に応じてオペークシェードで背景の変色を遮蔽し、表層はスタンダードシェードで調和させるといった二層充填も可能である。総じて、ソラーレは審美性に関して「保険適用内の単色充填でできる限り天然歯に近づけたい」というニーズに応えるスペックを持つと言える。
操作性(ハンドリング)
臨床家からの評判が特に高いポイントが、このペーストの操作性である。ソラーレはペースト状の充填材で、適度に柔軟でスムースに伸びる触感を持つ。前歯部用として開発されただけあり、薄く延ばしてもダマになりにくく、筆積みレジンのような繊細な築盛操作にも追従する。一方で、不必要にベタベタと粘らないためインスツルメントからの離れが良く、スパチュラや充填器にくっついてせっかく成形した形態が乱れるというストレスが少ない。実際、10年以上本製品を使用している臨床家からも「適度な軟らかさで咬合面を付与しやすく、器具に貼り付かないので扱いやすい」との声があるほどである。また、重合前のペーストが垂れたり流れたりせず、しっかり形を保持する点も操作性を高めている。具体的には、隣接面のマトリックスバンドに盛ったレジンが自己の重みでズルッと沈んでしまう、といった事態が起こりにくい。臼歯部用のソラーレPほどコシの強い硬さではないものの、通常のクラスIII~V程度であれば十分に形態を保持できる粘性である。この「軟らかすぎず硬すぎない」絶妙なペースト性状が、経験の浅い術者であっても綺麗な充填を行いやすい理由の一つと言えよう。
X線造影性
注意すべきスペックとして、X線造影性の有無が挙げられる。ソラーレ(前歯用)はメーカー公表スペックでX線造影性が無い。これは配合フィラーの種類によるもので、レジン充填後の部位をX線写真で撮影しても充填部が歯と区別できないことを意味する。臨床的には、二次う蝕の発見や充填範囲の把握がレントゲンでは困難になるデメリットがある。とりわけ、隣接面カリエスのコンポジットレジン修復では再発う蝕の早期発見にX線が重要であり、造影性の無い材料だと判別がつきにくくなる。対策としては、どうしてもソラーレを使いたい審美重視のケースではあらかじめ裏層に薄いフロアブルレジン(造影性有り)を敷いておく方法や、定期検診でのバイトウィング撮影時に充填部位の形状を事前に把握しておくなどが挙げられる。あるいは初めから造影性を求められる部位では姉妹品のソラーレPに切り替える選択も現実的である。なお、X線造影性が無いこと自体は材料の品質や臨床性能には直接関係しない。実際、ソラーレは発売当初から造影性を持たないが、多くの前歯部症例で良好な経過を示している。ただし術後のフォローアップ体制によってはデメリットにもなりうる点として、導入前に認識しておきたい。
互換性と運用方法
ソラーレは基本的に他社製品と広く互換性がある汎用的なレジン材料である。接着操作にはエナメル・デンチン用のボンディング剤が必要だが、特段ソラーレ専用の接着システムを用いる必要はない。GC社では同社の「G-プレミオボンド」や「ユニフィルボンド」等との組み合わせを推奨しているが、臨床現場では手持ちのワンステップボンドやツーステップボンドと組み合わせても問題なく良好な接着が得られている。実際、ソラーレを含め殆どのコンポジットレジンはボンディング剤のメーカー縛りがなく、術者が習熟した接着手順をそのまま踏襲できる。強いて言えば、ボンディング材との親和性としてメーカーが言及しているのは、同社製フロアブルレジン(ユニフィルフローなど)とのなじみが良い点である。必要に応じてソラーレとフロアブルを併用することで、細部の充填や裏打ちが効率よく行える。
また、物理的な互換性・適合性の観点では、ソラーレはシリンジタイプとPLT(プレロードティップ)タイプの2形態で提供されている。シリンジ(注射器)タイプは1本あたり4g入りで、少量ずつ押し出してパレット上で練和スパチュラに取る使い方になる。一方、PLTはあらかじめ0.2g程度のレジンが充填された小型カプセルで、専用のディスペンサー(ガン)に装着して直接窩洞に押し出すことができる。院内感染対策の観点ではPLTは一患者ごとに新品を用いる運用がしやすく、未使用分は遮光容器内で清潔に保管できるメリットがある。シリンジも、先端からペーストを出す際に直接口腔内へ触れさせない限りは複数患者で使い回すことが可能だが、細心の注意が必要である。コスト面では通常PLTのほうが包装分単価が割高になるため、コスト重視ならシリンジ、感染予防重視ならPLTと医院方針に合わせて選択するとよいだろう。
運用上の取り扱いでは、他のレジンと同様保管温度と光に注意する必要がある。未開封品・在庫品は直射日光を避けた冷暗所で保管し、長期保存する場合は夏場などは冷蔵庫で保管すると品質の安定に有効である。ただし使用時に冷蔵庫から出したばかりの冷たいレジンペーストを即座に充填するのは避けたい。温度が低いままだとペーストが硬く感じられ操作性が落ちる上、重合反応の進行も遅くなり物性低下や収縮ギャップ増大のリスクが示唆されている。推奨される方法は、使用前に室温へ戻すかレジンウォーマーで40℃前後に温めてから使用することである。適温に調整したソラーレは一層やわらかく適合性が向上し、重合度も高まる傾向が報告されている。但し、カプセルやシリンジ全体を長時間加温し続けると経時劣化を早める可能性もあるため、使用直前に使う分だけ温めることが肝要である。
ソラーレの光重合条件は、一般的なハロゲン・LED光重合器で照射時間20秒前後が目安となっている(メーカー推奨値に準拠)。深い窩洞では2mm以下の積層に分けて確実に照射することが重要だ。硬化後は通常のコンポジットレジン同様に研磨・研削が可能で、市販のポリッシャーやポイントで艶出しを行う。研磨後に表面光沢を長持ちさせたい場合、同じGC社の表面コーティング材「G-コート」を塗布して光照射する方法も知られている(保険適用外の処置となる点には注意)。いずれにせよ、研磨操作性は良好で短時間で滑沢な表面が得られるため、チェアタイム短縮にも寄与するだろう。
経営インパクト(コストとROI)
開業医にとって材料選択は経営判断でもある。ソラーレの価格は市販実勢でシリンジ1本あたり約4,000円前後(税込み)である。内容量4g入りのため、1gあたり1,000円程度の計算になる。例えば前歯の中等度のう蝕で0.2gを使用すると仮定すれば、1歯の充填材料費は約200円に相当する。保険診療で算定されるコンポジットレジン充填の点数と比較すれば材料費の占める割合は小さく、むしろ適切な材料を使うことで得られる再治療の減少や患者満足度向上のメリットのほうが経営に与える影響は大きい。ソラーレは審美的な仕上がりが良いため、保険診療内であっても患者から「きれいに治してくれた」と評価されることでリコール来院や紹介増にもつながりやすい。これは間接的に医院の収益向上に寄与する要素である。
直接的なROI(投資対効果)という点では、コンポジットレジン材料そのものは高額投資機器とは異なり導入コストも少額で、明確な売上増加要因にはなりにくい。しかし、臨床効率や品質向上によるコスト削減効果が期待できる。例えばソラーレの操作性により充填に要する時間が平均して1ケースあたり数分短縮できれば、積み重ねで1日あたり数十分の診療時間を生み出せるかもしれない。空いた時間に追加の患者対応や他の処置を行えれば、それが実質的な収益増に繋がる。また、術者・スタッフのストレス軽減も長期的には見逃せないメリットである。扱いにくい材料で神経をすり減らすより、扱いやすい材料で効率よく処置できれば人的コストの削減効果がある。さらにソラーレの長期安定性によって充填物のやり直し(保証修復)が減れば、無償修復に割かれる時間と材料の浪費も減るだろう。このように目に見えにくい部分でのROI改善が期待できる点は、経営者目線で評価しておきたい。
使いこなしのポイント
ソラーレを最大限に活かすには、いくつか臨床テクニック上の工夫が有効である。まず充填操作のコツとして、本材は器具離れが良いため通常の金属製充填器やヘラで問題ないが、更にストレスを減らすなら撥水性コーティングされたレジンべラやチタン製スパチュラを使うとより快適である。ペーストが引き伸ばされて薄い膜状になるような操作(例えば前歯のレジンラミネート充填など)では、筆先やマイクロブラシにボンディング材少量を含ませてレジン表面をなぞると滑らかに形成できる。ソラーレ自体は表面がなめらかに延びる特性があるため、最終形態の調整段階で表面にエアブローしながら樹脂を馴染ませておくと、光重合後の研磨に費やす時間を更に短縮できる。
重ね塗りのテクニックも審美性向上に重要だ。ソラーレは単色充填でもそこそこの色再現性を発揮するが、ケースによってはやはり単一シェードで再現しきれない微妙な色調が存在する。その際にはデュアルシェードテクニックとして、例えば歯頸部側を一段濃いシェードで充填し、切縁側を明度の高いシェードで築盛する方法が有効である。また、隣接面のブラックマージンを防ぐにはAOシェード(オペーク)を少量用いてエナメル質の薄い縁を先に明度アップしてから、本来のシェードでマスキングするというテクニックも知られる。ソラーレは複数シェードを混ぜ合わせても色調が破綻しにくいので、ベテランの術者は即興でA2とA3を混色して中間のA2.5的な使い方をすることもある。メーカー推奨の使い方ではないが、ある程度勘と経験で自由に色を操れる懐の深さも本製品の魅力である。
光重合の徹底も使いこなしには欠かせない。ソラーレはレジンとして標準的な硬化深度だが、やはり照射不足があると未重合層が残り、術後の色調変化や強度低下につながる。奥まった部位を充填した場合やシェードが濃い色の場合は、メーカー指示より長めに(例:40秒程度)照射したり、複数方向から光を当てて全周を確実に硬化させる習慣を持ちたい。特にオペークシェードやCVDのような濃色シェードは透過光量が減るため、追加照射は惜しまないほうが安全である。
患者説明のポイントとしては、保険診療内でも、白い樹脂で目立たないように治療できる旨をひとこと説明するだけで患者の安心感は大きく違う。ソラーレで実際に充填した箇所を見せ、「詰め物がどこか分からないでしょう?」と声かけすれば、患者との信頼関係構築にも役立つだろう。また、自費診療でレジン審美修復を行う場合にもソラーレは応用できる。その際にはラバーダムや細やかなシェードテイキングなど付加価値を付けて提供すると良い。製品名を患者に告知する必要は無いが、日本製の高品質な歯科用樹脂を使用していることに触れるのも一つのアプローチである。
適応症と適さないケース
ソラーレが得意とする症例は、やはり審美性重視で応力の小さい部位の直接充填である。具体的には、前歯のクラスIII(隣接面う蝕)やクラスIV(切端欠損の修復)、クラスV(歯頸部のくさび状欠損やう蝕)、および小臼歯部の小さな窩洞などが代表例である。これらのケースではソラーレの色調調和性と研磨後の美しい艶が威力を発揮し、天然歯と見分けがつかないレベルの修復が可能となる。また、金属アレルギーや審美目的でアマルガムや金属インレーを白く置換する場合にも、深く大きな欠損でなければソラーレによるダイレクトベニアリングは有効な選択肢となる。特に前歯部で患者が審美性を強く求める場合は、積極的に用いて満足度の高い結果を得やすい。
一方でソラーレが適さない、もしくは注意を要するケースも存在する。まず、大きな咬合面修復には本来向いていない。臼歯部の広範なMOD修復や咬頭を置換するようなレジン築造では、ソラーレではなく高耐久タイプのコンポジット(例:ソラーレPや後継のナノハイブリッドレジン)を選ぶのが賢明である。ソラーレ自体も物性は決して低くないが、長期の咬合圧反復による摩耗や破折リスクを考慮すると、強度優先の材料に譲る場面と割り切ったほうが結果的に医院の信頼を守れる。次に、前述したX線造影性の問題から、隣接面カリエスのハイリスク患者における隣接面充填は慎重に判断したい。そうした症例では経過観察にX線チェックが欠かせないため、造影性のある他製品や間接修復(インレー等)も視野に入れるべきである。
加えて、極端に明度の高い漂白歯症例では色調マッチングに限界が生じる可能性がある。ソラーレのBWシェードは漂白直後の明るい歯にも対応するとされるが、稀にシェードガイドにも無いような特殊な白さの歯に遭遇することもある。その際は、ソラーレ単独で無理に合わせようとせずラミネートベニアや他の審美修復オプションも検討するほうが良いだろう。また、重度のブラキシズム患者で前歯部にもクラックや咬耗が著しいケースでは、たとえ前歯部でもダイレクトレジン自体の適応を見直したほうがいい。材料選択以前に、ナイトガード装着や咬合再構成を優先すべき状況もある。つまり、ソラーレは優れた材料であるが「何でもこれでOK」という万能な存在ではなく、症例を選んでこそ真価を発揮することを忘れてはならない。
導入判断の指針
歯科医院ごとに診療方針や重視する価値は異なる。ここでは、いくつかのタイプの歯科医師像を想定し、それぞれの視点からソラーレ導入の向き不向きやポイントを述べる。
保険診療メインで効率重視の先生の場合
日々多くの患者を診察し、保険診療中心で回しているクリニックでは、とにかくスピードと安定性が求められる。このタイプの先生にとってソラーレは、扱いやすさによる時短効果と確実な仕上がりで貢献できるだろう。保険診療内で用いるコンポジットレジンとして、価格も極端に高価ではなくコスト許容範囲に収まる。むしろ、安価だが扱いづらい材料を使って充填物の調整ややり直しに時間をかけるリスクを考えれば、ソラーレのような実績ある信頼材を使う安心感は大きい。カラーラインナップが豊富なので、在庫管理が煩雑になることを懸念するかもしれないが、実際には主要なA系統色だけ常備し他は必要時に取り寄せる運用もできる。何より、患者満足度の高い白い詰め物を提供できることで、保険中心の医院でも口コミ評価が上がり来患増につながった例もある。効率最優先であっても品質を疎かにしない先生には、ソラーレは“良質で無難な選択”としてマッチすると言える。
自費診療で高付加価値を追求する先生の場合
審美修復や高度治療に力を入れ、自費率の高い医院を志向する先生にとって、材料選定はよりシビアになるだろう。このタイプでは最新のナノハイブリッドレジンやレイヤリングコンポジットなど最先端材料に注目しがちで、ソラーレのような発売から時間の経った材料は魅力に欠けると映るかもしれない。しかし、ソラーレには長年培われた安心感と汎用性という武器がある。例えば、どんなに高価な審美専用レジンでも独特の癖があって扱いづらければ本末転倒である。その点ソラーレは誰が使っても一定以上の結果が出せる安定感があり、医院全体でクオリティを標準化しやすい。また、自費診療においては材料原価は全体コストのごく一部であるため、ソラーレを使ったからといって治療費に高価な材料費が上乗せできるわけではない。重要なのは材料より術者の技術であり、その技術を最大限発揮できる扱いやすい材料としてソラーレを位置付けることができる。もちろん、前歯部審美で超微細な質感再現が必要なケースや、長期の色安定性を最重視するケースでは、さらに上位の審美材料を選択することもあるだろう。しかし「日常臨床の8割程度はソラーレで十分事足り、残り2割の特殊症例だけ他材を使う」という運用でも、高付加価値診療の質は維持できる。要は適材適所であり、ソラーレは高付加価値路線の医院においてもベーシックな土台として活躍し得る存在である。
外科・インプラント中心でコンポジットは最低限という先生の場合
主な診療内容が口腔外科手術やインプラント、補綴治療で占められ、直接レジン充填は必要最低限しか行わないという先生もいるだろう。このタイプの医院ではコンポジットレジンは脇役的存在だが、それでも備えとして何を使うかは意外と大切である。滅多に使わないからこそ、誰でも簡単に扱えてミスの少ない材料が望ましい。ソラーレは、まさに扱いやすさという点で安心感があるため、レジン充填に不慣れなドクターやスタッフでも失敗が少ない。例えば外科処置後の小さな補綴物修正や、仮歯のレジン修復など、予期せぬ場面でコンポジットが必要になる際にもソラーレが一本常置してあれば落ち着いて対応できるだろう。一方で、高額な手術や補綴が主軸の医院では、多少の材料費より確実な治療が優先されるため、ソラーレが多少古い製品であろうと信頼性が証明されている事実のほうが重要である。ただし、もしレジン充填自体を院内でほとんど行わず補綴に委ねる方針ならば、無理に導入する必要はないかもしれない。その場合は必要時にデンタルラボの技工士にシェードを合わせたカスタムレジンを作ってもらうなど別のアプローチもあり得る。しかし一般的には、外科中心の医院でも急な充填ニーズに備えて1~2色程度のレジンを常備しておく意義は大きい。ソラーレなら長期間在庫していても劣化しにくく(未開封であれば有効期限内は品質保持)、万一の時にも信頼できると考えられる。
よくある質問(FAQ)
Q1. ソラーレとソラーレPの違いは何であるか?
A1. ソラーレは主に前歯部や小さな修復向けに開発された審美性重視のレジンで、X線造影性が無く柔らかめのペーストである。一方ソラーレPはその名の通り臼歯部用で、咬合圧に耐える強度と高い耐摩耗性を付与した製品である(X線造影性あり)。ペースト硬さもソラーレPのほうがコシがあり、ボックス形態の窩洞にも押し込みやすくなっている。色調はソラーレPが4色(基本色のみ)なのに対し、ソラーレは13色の豊富なラインナップがある。簡潔に言えば、審美重視ならソラーレ、耐久重視ならソラーレPと使い分けることになる。ただし両者は併用も可能で、例えば隣接面はソラーレで美しく仕上げ、咬合面の最表層だけソラーレPで補強するといった応用も現場では行われている。
Q2. ソラーレで充填したレジンはどのくらい長持ちするか?
A2. 適切に充填・研磨されたソラーレ修復は、他のハイブリッドレジンと同程度の長期予後が期待できる。実際、発売直後に充填された症例が10年以上良好に機能しているケースも報告されている。しかし、レジン修復の寿命は材料より術式や症例条件に左右される。ソラーレ自体に長期安定性を損なう欠陥は無いものの、歯との接着状態や患者の口腔衛生、咬合力によって耐用年数は変わる。また前歯部など審美領域では経年的に表面の艶がやや落ちてくることがあるが、その際は研磨し直せば光沢を回復可能である。総合的に見て、ソラーレだから極端に長持ちするわけではないが、逆に特別短命でもない、信頼できる実力を備えた材料である。
Q3. ソラーレはX線に写らないと聞くが、問題はないか?
A3. 前述の通り、ソラーレはX線造影性が無いため充填部位がレントゲンに写りにくい。これは術後の二次う蝕発見には不利になり得る。ただし対策はいくつか可能である。まず、小さい窩洞であれば定期検診時に丁寧な視診・触診を行うことが重要である。隣接面の修復では、事前に充填部の底に造影性のあるフロアブルレジンを一層敷いておくとX線画像上で充填範囲が判別しやすくなる。またどうしても気になる場合は、初めからソラーレPに材料変更する選択もある(同じシェードであれば見た目の差はほとんど無い)。最終的には、術者が充填部位を把握していれば診断上大きな問題は起こりにくい。また患者には「レントゲンでは写りづらい材質だが問題は無い」と説明しておけば過度な不安を与えずに済むだろう。
Q4. ソラーレはどのボンディング剤と組み合わせるべきであるか?
A4. 特に指定のボンディング剤は無い。GC社は自社のG-ボンドシリーズやユニフィルボンドの使用を推奨しているが、臨床的には手持ちの信頼できるボンディング剤で問題なく接着できる。エッチングからボンディングまでの手順を守れば、3ステップ型でも1ステップ型でも好みのものを使用して構わない。ただし、シングルボンディングであっても確実な硬化のため単独光照射を行ったほうが安全である。ソラーレに限らず、接着操作を丁寧に行うことが長持ちの秘訣である。
Q5. 保管や使用上の注意点はあるか?
A5. ソラーレに特有の注意点は少ないが、一般的なレジン材料同様直射日光や高温を避けることが大切である。長期間使わない場合は冷蔵保存が望ましいが、使用時には室温に戻してから使用すること。診療開始時にその日使うシリンジを冷蔵庫から出しておく、といった運用がおすすめである。また、開封後はチューブ先端にレジンが付着したまま放置すると硬化して蓋が開かなくなる場合がある。使用後は先端を清潔なガーゼで拭い、キャップを確実に閉めて保管してほしい。さらに製品ごとの使用期限(ロット番号に記載)にも注意が必要だ。期限切れのレジンは重合不良や色調変化を起こす可能性があるため避けるべきである。適切な保管と取り扱いをすれば、ソラーレは安定した性能を長期間発揮してくれる。