1D - 歯科医師/歯科技師/歯科衛生士のセミナー視聴サービスなら

モール

保険診療のコンポジットレジンでおすすめ製品はこれだ!メーカーごとの価格や評判、口コミを比較

保険診療のコンポジットレジンでおすすめ製品はこれだ!メーカーごとの価格や評判、口コミを比較

最終更新日

例えば、保険のコンポジットレジン充填で詰めた直後にマージンラインに小さな気泡が入っているのを見つけて冷や汗をかいた経験はないだろうか。あるいはシェードテイキング(色合わせ)に時間を取られた挙げ句、隣在歯と微妙に色調が合わず患者に指摘されたことはないだろうか。保険診療の範囲内であっても、白いレジン充填におけるこうした失敗や悩みは、多くの歯科医師に共通するものだ。

保険診療で日々多数のう蝕を充填していると、材料選びや扱い方の些細な違いが、臨床結果にも医院の効率にも大きな影響を与える。「保険だから何を使っても同じ」ではなく、製品ごとの特徴を知り使いこなすことで、充填のクオリティとチェアタイム短縮の両立は十分に可能である。本記事では、筆者自身の臨床経験と業界知見を踏まえ、保険適用のコンポジットレジン主要製品について客観データに基づく比較と、臨床的ヒント&経営的戦略を提供する。悩める先生方が自信を持って製品を選び抜き、保険診療の現場で最大限のROI(投資対効果)を引き出せるよう、一緒に考えていきたい。

主要コンポジットレジンの比較早見表

まずは主要メーカーから販売されている代表的なコンポジットレジンを一覧にまとめる。臨床面の特徴に加え、おおよその価格帯やタイムパフォーマンス(作業効率)への影響も含めて比較した。自院の重視ポイントに照らし、気になる製品があれば後続の詳細レビューを参照してほしい。

製品(メーカー)主な臨床特徴 (物性・操作性・審美性)価格目安 (税別)経営効率のポイント (コスト&タイム)
エステライトΣクイック(トクヤマ)/高速重合型:従来比1/3の照射時間で硬化/スープラナノ球状フィラー配合で研磨性◎/カメレオン効果による優れた色調適応/約¥3,000/3.8gシリンジ/照射時間短縮でチェアタイム削減/1色で広範囲カバーし在庫管理が容易/
クリアフィル マジェスティ(クラレ)/高充填ナノフィラーで強度・耐摩耗性◎/自然な光拡散性で天然歯に近い色調再現/前後部両用の汎用タイプで適応範囲広い/約¥3,000/3.6gシリンジ/汎用性高く用途ごとに材料を使い分け不要/臨床実績豊富で安心感(リスク低減)/
ビューティフィル II(松風)/S-PRGフィラー搭載のGiomer:フッ素徐放性あり/十分な強度と良好な研磨性(改善された光沢維持)/色調はビタ基準で全13色と細やか/約¥3,000/4gシリンジ/フッ素徐放により再治療リスク低減の期待/国産品で価格も標準的(コスパ良好)/
オムニクロマ(トクヤマ)/世界初のシェードレスレジン:1色であらゆる歯質色に適応/顔料不使用・構造色テクノロジーで自然な色調同化/260nm球状フィラーで物性・研磨性も良好/約¥3,500/4gシリンジ/在庫シェード数激減で材料管理が容易/色合わせの時間を大幅短縮できる/
フィルテック シュープリーム XT(3M)/ナノクラスター充填で高強度・高耐久性/高研磨性:短時間研磨で持続する光沢/審美性高く、シェードバリエーション豊富/約¥3,500/4gシリンジ/1歯当たり材料費は数十円〜百円台/豊富なシェードで自費症例にも転用可/
ジーニアル アコード(ジーシー)/最新世代の国産レジン:前後部どちらにも対応/適度な粘稠性でべたつかず操作しやすい/簡略化シェード設計:少数色で広範囲をカバー/約¥3,000/3.5gシリンジ/前歯〜大臼歯まで一材で対応可能/少数色で在庫負担軽減、価格も良心的/

※上記は代表的な一例であり、各製品とも内容量やセット構成によって価格は多少変動する。また材料費は1症例あたり数十〜数百円程度と僅少であり、むしろ作業時間の短縮効果や再治療リスクの低減効果こそが医院経営に与える影響が大きい点に留意したい。

コンポジットレジン選びで比較すべきポイント

コンポジットレジンの製品ごとの違いを理解するには、臨床性能と経営効率の両面から複数の視点で比較することが重要である。以下では、特に注目すべき比較軸として「物性・耐久性」「操作性」「審美性」「コスト・タイムパフォーマンス」の4つを取り上げ、それぞれが臨床結果と医院収益にどう影響するかを解説する。

物性・耐久性

コンポジットレジンの機械的強度や耐久性は、修復の長期予後を左右する重要な要素である。近年の製品はどれも充填後の硬さ(硬度)や曲げ強さが向上しており、小〜中規模のう蝕充填であれば保険診療であっても長期間機能する。しかし製品間でフィラー(充填剤)の種類や含有率に差があり、それが耐摩耗性や収縮特性の違いとなって現れる。例えば、ナノフィラーを高充填したレジンは咬耗しにくく割れにくい傾向があるため、大臼歯部でも詰めたレジンが欠けにくい。強度が高ければ修復物の再治療頻度が下がり、結果的に医院の長期的な利益(リコール間隔の安定化)にも繋がるだろう。

一方、重合収縮の大きさも比較ポイントである。充填時のポリマー収縮が大きすぎると、辺縁部のシール不良や二次う蝕の原因となりうる。最近は「収縮率1%以下」を謳う低収縮レジン(例:新規モノマー配合の製品)も登場しており、こうした材料はマージンギャップを減らし、術後の知覚過敏やう蝕再発リスクを軽減できる可能性がある。ただし、物性を最大限発揮するには適切なボンディング処理と築盛技術が不可欠であり、材料任せにせず臨床手技も洗練させる必要がある。

操作性

操作性(ハンドリング)は日々の臨床効率に直結するポイントである。ペーストが「ねっとりして器具に付着しやすい」か「さらさらして流れやすい」か、あるいは「適度にコシがあり形態付与しやすい」か――製品ごとに質感は異なる。例えば粘度が高くベタつくレジンでは器具から離れにくく、窩洞への適応に時間がかかる。一方で柔らかすぎるレジンは流動性が高いため細部に行き渡りやすいが、積層時に歯軸方向へ垂れやすく、形態を整えるのにコツが要る。近年の製品はナノフィラー技術や樹脂の改良により「べたつきを抑えつつ適度に流れる」絶妙な操作感を実現しているものが多い。実際、操作性に優れたレジンを使うと充填に要する時間が短縮され、気泡混入や余剰レジン除去といった無駄な手間も減らせる。

また作業時間に関わる点では、ワーキングタイムと光重合時間も重要だ。環境光下で硬化が始まるまでの余裕時間が長い製品(例:光安定性が高く90秒以上操作可能なもの)であれば、落ち着いて充填操作ができる。一方、照射硬化に必要な時間が短い材料(例:専用光重合開始剤により10秒程度で硬化する高速重合型)を用いれば、多数歯治療で1歯あたり数十秒ずつの短縮が積み重なり大きな時間節約となる。チェアタイム短縮は患者の肉体的負担軽減にもつながり、医院としても回転率向上やスタッフ残業削減といった経営メリットを享受できる。

審美性

患者にとって白い詰め物の見た目の自然さは満足度を左右する大きな要因であり、歯科医師にとっても審美性の高い修復は技量のアピールとなる。コンポジットレジン各製品は色調の合わせやすさや艶の持続性の点でも違いがある。まずシェード(色)展開だが、従来はA1〜A4等の複数色を揃え微調整していた。しかし最近は1色で広範囲の歯に調和する「ユニバーサルシェード」コンセプトが登場し、色選びの煩雑さが大きく軽減されている。例えばオムニクロマや一部のフロアブルレジンでは、歯質に同化する構造色技術によりシェード選択不要を実現している。これによりシェード合わせに悩む時間がゼロになり、在庫すべき色数も減らせる。一方で、複数シェードでのレイヤリング(積層)に慣れている術者にとっては単一色レジンは重度変色歯への遮蔽などで工夫が必要な場合もあり、必要に応じてオペーク材(ブロッカー)を併用することになる。

研磨性も審美性に直結するポイントだ。フィラー粒子が均一で微細なレジンほど短時間で滑沢な表面艶が得られ、その光沢が長期間維持されやすい。研磨性に優れる材料では、保険診療の限られた時間内でも十分なポリッシングが可能であり、数年経っても辺縁着色しにくい修復物となる。結果として患者から「詰め物が黄ばんできた」とクレームを受けるリスクを下げ、医院の信頼向上にも寄与するだろう。ただし、いくら材料が良くても研磨手順の省略は禁物である。適切なステップで研磨・光沢付与を行うことで初めて各レジンの審美ポテンシャルが発揮される点は肝に銘じたい。

コストとタイムパフォーマンス

保険診療では治療点数が限られるため、使用材料のコストや治療の効率は医院経営にシビアに響いてくる。しかしコンポジットレジン材に関して言えば、実は材料費の占める割合はごく小さい。1本数千円のシリンジから得られる充填回数を考えれば、1歯あたりのレジン材料費は100円前後に過ぎない。極端な話、シリンジ価格が数百円上下しても経営全体への影響は軽微である。それよりも各製品の違いが生む「時間あたり収益」の差に注目すべきだ。例えば硬化時間が半分になる材料を使えば、それだけで同じ時間でより多くの処置が可能になる。また操作性が良く失敗が減ればやり直しによる無償再治療も防げるし、患者満足度向上によってリコール来院や紹介増といった波及効果も期待できる。

さらに、性能の高いレジンで質の良い治療を提供すれば、将来的に自費診療への移行がスムーズになる可能性もある。保険の範囲内でもこれだけきれいに治るのか、と患者が感じれば、より難しい大きな修復ではセラミックや高価な自費レジンを提案しても受け入れてもらいやすくなるだろう。このようにコンポジットレジンへの投資は間接的に医院の利益拡大に繋がると考えることができる。総じて、「材料費を削る」発想より「賢く投資して時間と信頼を得る」発想が、現代の保険診療には求められている。

主なコンポジットレジン製品のレビュー

では、以上の比較軸を念頭に、保険診療で使用される代表的なコンポジットレジン製品それぞれの特徴と向き不向きについて詳しく見ていこう。ここでは各製品の客観的な強み・弱みに加え、どのような診療スタイルの先生に適しているかを経験に基づいて述べる。いずれも厚生労働省の認証を取得した歯科用コンポジットレジンであり、保険診療で安心して使用できる材料であることを付記しておく。

エステライトΣクイックは高速重合と優れた色調適応性が特徴

トクヤマデンタルのエステライトΣクイック(エステライトシグマクイック)は、その名の通り光重合の速さが際立つ製品である。独自のラジカル増強型光開始剤を配合しており、従来比およそ3分の1の照射時間で硬化が完了する。標準的なハロゲンライトで20秒必要だった充填が、このレジンならわずか10秒程度で確実に硬化するため、多数歯充填時の時間短縮に大きく寄与する。実際、筆者が本製品を初めて使用した際も、その硬化の早さと確実さによって「あの煩わしかった硬化待ちの時間がなくなる」という解放感を得たものである。加えて、環境光に対する安定性も高く、ユニット照明下でも約90秒のワーキングタイムを確保できるため、焦らずに充填操作を行える安心感がある。

臨床物性の面では、エステライトΣクイックはスープラナノフィラー(超微小球状フィラー)を高充填していることが特筆できる。フィラー粒径は約0.2マイクロメートルと極めて小さく均一で、硬化後のレジン表面は磨耗しにくく高滑沢である。実際の研磨でも短時間で鏡面艶が得られ、その光沢は長期間維持されやすい。これは審美修復で定評のあるエステライトシリーズ共通の美点であり、保険診療でも術後の着色や変色が少ない質の高い充填を実現できる。また球状フィラー配合によりペーストは適度にクリーミーで伸びが良く、かつ築盛後の形態保持性にも優れるため、器具離れが良いのに垂れにくいという絶妙な操作感を備えている。経験的にも、小さなI級窩洞から中程度のII級窩洞まで非常に扱いやすく、細部までしっかり充填できる印象だ。

審美性に関しても、エステライトΣクイックはいわゆる“カメレオン効果”が強く、周囲歯に対する色調適応性が高い。カラーマッチングが多少ラフでも自然に馴染みやすいため、保険診療では主要なA系シェード数本を揃えておけば大抵の症例に対応できる。一方で、ラインナップ上はエナメル質用・象牙質用の2層構成や漂白歯用シェードなどはなく、本格的な審美修復用途にはトクヤマの自費用レジン(エステライト・アステリアなど)が別途用意されている。そのため「保険の範囲でできるだけ審美的に」というニーズには十分応えられるが、重度変色歯のマスキングや高度なレイヤリングが必要なケースではシェードが単調に感じられるかもしれない。総じてエステライトΣクイックは、チェアタイム短縮を図りつつ質の高い充填を行いたい先生にとって非常に頼もしい味方である。価格は1本あたりおよそ3,000円台と標準的ながら、硬化時間短縮による時間節約効果で投資回収は容易だろう。保険診療の効率アップに直結しやすい製品として、忙しい開業医の先生にはまず検討いただきたいレジンである。

クリアフィル マジェスティは強度と審美性のバランスに優れる万能レジン

クラレノリタケデンタルのクリアフィル マジェスティシリーズは、総合力の高さで多くの支持を集める国産コンポジットレジンである。保険診療用としては前身のAP-Xから実績があり、現在のマジェスティES-2(エストレーション2)に至るまで長年にわたり改良と洗練を重ねてきた。最大の特長は、高密度に充填されたナノフィラーによる優れた機械的強度と天然歯に近い光学特性の両立である。臼歯部咬合面の充填に耐える高い耐摩耗性・耐衝撃性を持ちながら、充填物の透明感や色調の調和は前歯部でも違和感が少ない。これはフィラーと樹脂マトリックスの屈折率マッチングや光拡散性の最適化により、周囲の歯質になじむ光学的性質を実現しているためだ。実際、マジェスティで充填したレジンは、適度な乳濁感がありつつ内部からの明度が感じられる仕上がりで、患者が鏡で見ても詰め物と気づきにくい自然さが得られる。

操作性に関して言えば、クリアフィル マジェスティはやや硬めでしっかりとしたペーストであり、形態付与がしやすいのが特徴だ。造形中にへたったりベタついたりしにくいため、咬頭や隣接面の形を付けやすく、解剖学的な彫刻を好む術者には心地よい扱い心地といえる。一方で粘性が高めな分、細かい溝や複雑な形態への適応では多少の押し込み操作が必要になることもあるが、その点はボンディング材での濡潤やウェッジの工夫で十分カバーできる範囲だろう。重合収縮も少なく抑えられており、適切なボンディングと相まって辺縁封鎖性に優れた修復が期待できる。メーカー公表の物性データや臨床評価からも、二次う蝕の発生率が低く長期安定性が高いことが示唆されており、治療予後の信頼性という意味でも非常にバランスの良い製品である。

クリアフィル マジェスティはカラーバリエーションが豊富な点も見逃せない。保険診療の範囲でも基本シェードに加え、OA(不透明色)やCW(漂白歯色)など多彩な色調が用意されている。審美修復を突き詰めたい場合には自費用のマジェスティEVなど上位製品もあるが、保険版のマジェスティでも簡易的な2層築盛によってかなり高度な色再現が可能だ。実際、臼歯部は単色、前歯部切端付近はエナメル系と象牙質系の2色で対応するといった使い分けをしている先生も多く、その柔軟性は開業医にとって心強い。欠点らしい欠点はほぼ見当たらないが、強いて言えば全体に高性能ゆえ価格も比較的高め(と言っても1本3,000円台程度)であり、「安価で大量に使いたい」という場合にコスト重視で他製品を選ぶケースもあるだろう。しかし前述の通り材料費は治療全体の一部でしかなく、むしろ安心感・汎用性という付加価値を考えればマジェスティの価格は十分に許容範囲と言える。製品選びに迷ったらまずこれを押さえておけば間違いないと評されるほど定評のある万能レジンであり、保険診療から一歩進んだ質の向上を図りたい先生におすすめである。

ビューティフィル II はフッ素徐放性で予防効果を志向した国産レジン

松風のビューティフィル IIは、世界的にも珍しいGiomer(ジャイオマー)と呼ばれるカテゴリのコンポジットレジンである。Giomerとはガラスアイオノマーの良さを取り込んだレジン複合材料であり、ビューティフィル IIにはS-PRGフィラー(表面反応型ガラスフィラー)が配合されている。このフィラーはフッ素などのイオンを内部に含有しており、硬化後も唾液中に少しずつフッ素やストロンチウムイオンを放出・取り込みする性質を持つ。つまりビューティフィル IIで充填された歯は、わずかながら周囲歯質へのフッ素補給や酸性環境の中和が期待でき、結果として二次う蝕の抑制に繋がる可能性がある。保険診療では頻繁にう蝕を繰り返すハイリスク患者も多いが、そうしたケースでも材料自体が予防的に働いてくれる点は、本製品の大きな強みだ。実際の臨床でも、ビューティフィルで充填した症例では周囲の歯質が脱灰しにくいとの報告もあり(※ただし適切なプラークコントロールとの併用が前提)、予防歯科的視点を重視する先生には魅力的な特徴と言える。

物性面では、ビューティフィル IIは初期の頃こそ「研磨すると艶がやや落ちる」「長期経過で少し変色する」といった意見もあったが、現在の改良版では研磨性・光沢保持性ともに他のハイブリッドレジンと遜色ないレベルに達している。粒子径数百ナノ〜数ミクロンのフィラーを高充填しており、硬さ・耐摩耗性も充分で臼歯部への使用にも耐える(実際、保険適用CAD/CAM冠用のハイブリッドブロックにもS-PRGテクノロジーが応用されている)。操作感は適度にクリーミーで練和しやすく、かつフロー過多にならない絶妙な硬さがある。エステライトほどではないがカメレオン効果も備えており、色調もビタシェード基準でA系からエナメル色、OPA2などまで全13色をラインナップするため、ある程度凝った色合わせも可能である。

ビューティフィル IIの弱点を挙げるとすれば、他の最新ナノハイブリッドに比べ長期経過で表面艶がやや落ちやすいとの指摘がある点だろう。S-PRGフィラーはガラス由来のため、経年的な表面粗さやわずかな色調変化が生じる可能性がある。ただし臨床的には定期メンテナンス時に表面研磨を施せば十分リカバーできる程度であり、患者が日常で気付くレベルではないことがほとんどだ。また、本製品の最大の売りであるフッ素徐放効果についても、「劇的な予防効果がある」とまでは言えないものの、リスク要因を少しでも減らせる材料を選ぶという姿勢自体に意義がある。価格は1本あたり3,000円前後と他製品とほぼ同等であり、特別なコスト負担なく予防的アプローチを織り込める点は経営的にも魅力的だ。総じてビューティフィル IIは、小児や高リスク患者が多く予防歯科に力を入れたい先生や、国産メーカーの手厚いサポートを重視する医院にとって有力な選択肢となるだろう。もちろん一般的な充填でもオールマイティに使える性能を備えているため、「次はちょっと違った切り口の材料を試したい」という場合にもおすすめできる製品である。

オムニクロマはシェード選択不要の画期的ユニバーサルレジン

トクヤマデンタルのオムニクロマは、2019年に登場して以来大きな話題を呼んだシェードレス(単一色)コンポジットレジンである。通常、コンポジットレジンには歯の色に合わせた顔料が練り込まれているが、オムニクロマには一切の着色顔料が含まれていない。その代わりに、均一サイズ(約260nm)の特殊フィラーを用いることで光の干渉現象をコントロールし、充填したレジン自体が周囲の歯と同じ色に見えるという原理を実現した。言わばモルフォ蝶の翅のような構造色テクノロジーを歯科材料に応用した画期的製品であり、シリンジ1本ですべてのシェードに対応可能という点は、日々色選びに悩んでいた臨床家にとって衝撃的であった。

実際、オムニクロマを実験的に様々な色調の抜去歯に充填してみると、照射後には明度の高いA1から沈着したC4の象牙質色まで、不思議なほど周囲と調和して見える。シェードテイキングの工程が不要となることで、臨床フローはシンプルになり時間短縮にも繋がる。加えて「在庫すべきレジンは1シェードのみ」でよいという利点は、材料管理やコストの面でも大きなメリットである。特に開業まもない医院やユニット数の少ないクリニックでは、必要最低限の在庫であらゆる症例に臨める安心感は計り知れないだろう。オムニクロマの登場以降、他メーカーも追随してユニバーサルシェード製品(例:松風ビューティフィル ユニシェードやクラレのUniversalフローなど)を投入し始めており、歯科用コンポジットレジンの流れが大きく変わりつつある。

もっとも、オムニクロマにも注意点はある。完全にどんな状況でも色が合う魔法の材料というわけではない。例えば、充填窩洞の周囲に天然歯質がほとんど残っておらず背景が口腔内の暗い空洞になってしまうケース(大きな欠損やII級窩洞の近心壁欠損など)では、発色に必要な「周囲からの反射光」が足りず、グレーがかった色調に見えることがある。そのため、メーカーからはそうした場合に備えてオムニクロマ ブロッカー(遮蔽用レジン)が別売提供されており、大きな欠損の底にブロッカーを一層敷いて背景を整えた上でオムニクロマ本剤を充填することで対応できる。言い換えれば、オムニクロマは窩洞条件によっては一手間必要な場合があり、万能ではない。とはいえ通常の小〜中程度のう蝕充填であれば追加材料なしにほぼ違和感なく馴染むため、今なお国内外で症例報告が増えている。

物性面では、オムニクロマは前述のエステライトΣクイックと同様にトクヤマの先進的フィラー技術を受け継いでおり、強度・研磨性・操作性ともにハイレベルである。特にペーストの扱いやすさは評判が良く、適度な流動性があって細部までフィットしつつ、積層しても形が崩れにくいバランスが取れている。強度についても臼歯部咬合に耐えうる十分な数値を示しており、保険診療で日常的に使う分には何ら問題ないだろう。価格はシリンジ1本あたり3,500円前後とやや従来品より高めだが、「1本で何本分もの色を兼ねる」ことを考えれば実質的なコストパフォーマンスは良好である。シェード選択に煩わされずに充填を進めたい先生、あるいは在庫管理や材料ロスを極限まで減らしたい医院には、オムニクロマは一度試す価値のある革新的な選択肢といえる。

フィルテック シュープリーム XT は世界標準の高強度ナノコンポジット

3Mのフィルテック シュープリーム XT(海外名:Filtek Supreme Ultra)は、ナノテクノロジーを駆使した高性能コンポジットレジンとして世界的に広く使用されている製品である。特にナノクラスター充填技術は3Mレジンの代名詞であり、数十ナノサイズのシリカ粒子とジルコニア粒子を密に複合化することで、優れた機械的強度と研磨持続性を両立している。臨床的には、フィルテックで修復した部位は咬合圧による摩耗や破折が起きにくく、長期にわたって安定した形態を保つことが多い。また研磨直後の光沢が美しいだけでなく、経年的な表面のざらつきが少ないため艶が長持ちしやすい点もメリットだ。これはフィラー脱落が起こりにくい堅牢なナノクラスター構造によるもので、「詰めたレジンが数年後でもなお綺麗」という患者満足に直結する性能を備えている。

フィルテック シュープリーム XTのペーストは適度な粘性としまりがあり、器具への付きにくさと形態付与のしやすさのバランスが良い。筆者の印象では、マジェスティほど硬くはなく、エステライトほど柔らかくもない中庸な触感で、誰にでも扱いやすい標準的なハンドリングという印象だ。充填中もダレにくいので隣接面の形態も作りやすく、咬合面の彫刻もサクサクと進められる。重合収縮率も低〜中程度に抑えられており、適切な照射を行えば辺縁適合も良好で二次う蝕のリスクも小さいとされる。事実、フィルテックシリーズは世界各国の多数の臨床研究で高い成績が報告されており、その信頼性・汎用性は折り紙付きだ。保険診療で使用してももちろん問題なく、グローバルスタンダードの安心感を求める先生にはまさにうってつけだろう。

審美面についても、フィルテック シュープリーム XTはシェードの豊富さと自然な仕上がりで定評がある。メーカー既定の色調だけでもエナメル系・デンチン系・OPAシェードなど20色以上が揃い、自費診療レベルの細やかな色再現も可能だ。保険診療ではここまで多くの色を使い分ける必要はないが、例えば保険内で前歯部の高い審美性を要求される場合など、フィルテックの多彩なシェードを活用すれば限られた条件下でも質の高い色合わせができる。さらに、もし将来的に自費のダイレクトボンディング治療に参入する場合も、同じフィルテックシリーズを継続利用できれば材料特性に習熟した状態でスムーズに移行できるという利点もある。価格は1本あたり3,500円程度と標準的で、ネット通販などでも安定して入手可能だ。強いて注意点を挙げるなら、3M製品ゆえ取り扱いは歯科商社経由が主で、メーカーのセミナーや情報が英語ベースのこともあるが、最近は日本語のサポートや講習も充実してきているため大きな障害ではない。総合すると、フィルテック シュープリーム XTは「迷ったらこれを選べ」と言える信頼の国際ブランドであり、最新のエビデンスに裏付けされた材料を好む先生や自費診療も見据えて技術を磨きたい先生にとって有力な選択肢である。

ジーニアル アコードは扱いやすさと十分な物性で安心感のあるオールマイティ樹脂

ジーシーのジーニアル アコード(G-ænial A’cord)は、2021年に発売された同社の最新コンポジットレジンであり、前身であるG-ænialシリーズの臨床実績と改良点を引き継いだ製品である。ジーシーは以前からグラディアダイレクトやジーニアルなどの人気レジンを展開してきたが、アコードではそれらの経験を踏まえ操作性と審美性のバランスがさらに向上している。まず操作性に関して、ペーストは柔らかすぎず硬すぎずの中庸な粘度で、充填時のべたつきの少なさが印象的だ。器具からスッと離れつつ、盛り上げた形は崩れにくいため、平滑な表面を付与しやすい。特にII級窩洞で隣接壁にレジンを積層する際も垂れにくいので、マトリックスを外した途端に形が崩れるといったストレスが少ない。また適度にクリーミーさもあるため、小さな窩洞では隅々まで行き渡らせやすく、フロアブルレジンを使わずとも充分な適合性が得られる場面も多い。全体として、レジン充填に不慣れな若手から経験豊富なベテランまで扱いやすいオールラウンドなハンドリングと言えるだろう。

物性面では、ジーニアル アコードはフィラーの充填率・粒子設計などが最適化されており、前作よりも硬度や耐摩耗性が強化されている。メーカー発表によれば曲げ強さや辺縁漏洩試験などで良好な数値を示しており、臼歯部修復でも安心して使える耐久性を備えている。また審美性では、従来のジーニアルの長所であった光拡散性の高さが引き継がれ、単色でも十分自然な色調適合性を示す。ジーシー独自の「Full-coverage Silane coating」によりフィラーと樹脂の屈折率を近づけているため、複数シェードを使わずとも周囲と境界がぼけるように馴染むのが特徴だ。シェード構成自体もシンプルになっており、従来は用途別にAnterior/Posteriorと分かれていたレジンが、アコードでは少数のユニバーサルシェードで前歯・臼歯を問わず使えるよう改良されている。例えばA2やA3といった基本色だけで広範囲の色をカバーできるため、医院で揃えるシリンジ本数を減らせる利点がある。

経営的な視点で見ると、ジーニアル アコードは日本の大手メーカー品である信頼感に加え、価格も1本あたり3,000円程度とリーズナブルで、コストパフォーマンスに優れる。ジーシーは営業・サポート体制が厚く、講習会やテクニカルサービスも充実しているため、導入後のフォローも含めて安心して長く使っていける材料だろう。欠点としては突出した派手さはないものの、その分癖がなく使い勝手の良さが光るため、特筆すべきデメリットは見当たらない。強いて言えば保険診療レベルであれば他社製品との差は体感しにくいかもしれないが、それは裏を返せば「大きな不足がない」ということであり、長期的に見ればミスやトラブルの少なさに繋がるはずだ。総じてジーニアル アコードは、オーソドックスで安定したレジンを求める先生や、これから開業して材料選びに迷った際の基準となる一本としてお薦めできる製品である。

よくある質問(FAQ)

Q. 保険診療用のコンポジットレジンと自費用のレジンでは何が違うのか?
A. 基本的な構造や硬化原理は同じであるが、色調の豊富さや審美性の追求度合いに違いがあることが多い。保険用はコストとのバランスから必要十分な強度・色調を持たせた汎用タイプが中心である。一方、自費用レジンは高価なフィラー技術や多彩なシェード展開を特徴とし、より精密な色再現や特殊効果(透明感、オパール効果など)を付与できる。しかし臨床研究では、保険用でも近年の製品は十分高性能であることが示されており、小〜中規模の修復であれば自費用との明確な耐久性差は小さいともされる。要は使いこなし次第であり、保険診療内でも最新レジンを使えば審美的・機能的にかなり高水準の修復が可能である。

Q. コンポジットレジン充填はどのくらいの寿命が期待できるのか?
A. 一般的に、平均5〜7年程度は良好に機能するとされることが多い。ただし寿命は症例条件や患者の口腔衛生状態、さらには術者の技術によって大きく変動する。小さなI級窩洞や非咬合面の充填であれば10年以上トラブルなく保つ例も珍しくない。一方、大きなII級窩洞で辺縁が薄くなったようなケースでは、充填物の欠けや二次う蝕が起こりやすく、数年でやり替えになることもある。使用するレジン材料による差も多少あるが、それ以上にボンディングの適切さや咬合の調整、研磨の徹底などが長持ちの鍵となる。材料選択の段階では、耐摩耗性や収縮特性に優れた信頼性の高い製品を使うことで下地は作れるが、最終的には定期メインテナンスでのフォローも含めて寿命を延ばす努力が重要である。

Q. コンポジットレジン用のボンディング剤は同じメーカー品で揃えた方がよいか?
A. 必ずしも揃える必要はないが、メーカー推奨通りに揃えることで確実性が高まるのも事実である。異なるメーカー間でもレジンとボンディングの基本的な相性は良く、実際に混用して問題なく機能しているケースは多い。ただ各メーカーは自社レジンとの組み合わせで性能評価試験を実施しエビデンスを蓄積しているため、同社製ボンディングを使う方が安心感を持てる面はある。また一部製品ではプライマー内にフィラーを含有させるなど独自の設計をしており、セットで使うことでより効果を発揮するものも存在する。臨床的には、自身が使ってみて問題がなければ混用でも差し支えないが、迷う場合はメーカー推奨の組み合わせに従うのが無難である。重要なのは、どの接着システムでも指示通りの前処理と十分な重合を徹底することであり、材料より手技の影響が大きい点も覚えておきたい。

Q. コンポジットレジンは一度に厚く盛っても大丈夫?(バルク充填の可否)
A. 基本的には2mm以下の厚さで層状に重ねるのが原則である。従来型のレジンは光の透過性に限界があり、深い部分までしっかり硬化光が届かないため、一度に厚く盛りすぎると下面が未重合のまま残るリスクがある。その結果、充填物内部の強度低下や二次う蝕の原因となりかねない。どうしても一括充填したい場合は、各社から出ているバルクフィル用レジン(4~5mm程度の深さまで硬化可能な製品)を使用する必要がある。これらはフィラーや光開始剤の工夫により深部まで硬化しやすく設計されている。ただしバルクフィルでも完璧に隅々まで硬化する保証はなく、強度も若干低めに設定されていることが多い。そのため、確実性を期すなら多少手間でも2mmずつ重ねて重合する方法が最も信頼性が高い。浅い小窩洞などでは例外的に一度に充填することもあるが、その場合も十分な照射時間を確保し、硬化不良が起きていないかを慎重に確認すべきである。

Q. レジン充填後の変色や着色汚れを防ぐにはどうすればよい?
A. まず第一に充填直後の研磨・光沢付与を丁寧に行うことが肝要である。表面が粗いままだと唾液中の色素が付着しやすくなるため、細かい目のポイントやストリップス、研磨ペーストまで使って可能な限り平滑に仕上げる。また、レジン硬化直後に表面に残る未重合層はしっかり除去またはコーティングする。未重合樹脂は着色の温床となるため、アルコール綿巻きで拭き取るか、研磨後に表面シーラーを塗布して光照射し、樹脂表面を安定化させると良い。患者への指導としては、充填当日は濃い色の飲食物(カレー、赤ワイン、コーヒーなど)を控えるよう伝える。硬化直後はレジン表層がわずかに水分などを吸収しやすいため、数時間〜1日程度は着色源との接触を減らすと理想的だ。長期的には定期検診時にポリッシングやハイパーオクルージョンのチェックを行い、必要に応じて表面を磨き直すことでかなり着色を防げる。なお、材料選択の面ではナノフィラー系で高研磨性の製品ほど着色しにくい傾向があるため、審美性重視の場合はそうしたレジンを選ぶのも一策である。日々のメインテナンスと患者指導の積み重ねにより、保険診療のレジンでも美しさを長持ちさせることは十分可能である。