
ペントロンのコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?
日々の臨床で、小さな気泡がマージンに入ってしまったり、レジンの重ね塗りに時間を取られて焦った経験はないだろうか。保険診療で数多くの充填をこなす先生ほど、「もっと時短できて失敗の少ない材料はないか」と感じる瞬間がある。また自費治療を手がける先生なら、オールセラミックに適したコア材や、金属に頼らない審美的な支台築造の必要性を痛感しているかもしれない。
本記事では、ペントロン社のコンポジットレジン製品に焦点を当て、臨床現場の悩みを解決するヒントと経営的視点での戦略を提供する。筆者自身、20年以上の臨床経験を通じて様々な材料を試してきたが、ペントロンのレジンには独自の工夫が光る。臨床での使い勝手や患者満足度はもちろん、「材料費に見合う価値はあるのか」「導入で診療効率は上がるのか」といった医院経営上の疑問についても、一つひとつ検証していく。忙しい日々の中で投資対効果(ROI)を最大化しつつ、質の高い歯科医療を提供したいと願う先生方に、本記事がその指針となれば幸いである。
ペントロン製コンポジットレジン比較早見表
以下に、ペントロンが日本国内で展開する主要なコンポジットレジン製品4種をまとめた。臨床用途・硬化方式・特徴・価格帯の観点から比較した早見表である。それぞれ得意分野が異なるため、まずは全体像を把握してほしい。
製品名 (メーカー) | 用途・タイプ | 硬化方式 | 主な特徴 (臨床性能) | 価格帯※ |
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Flow-It ALC (ペントロン) | フロアブルレジン(流動性コンポジット)小窩洞充填・ベース材用 | 光重合※高出力LEDで瞬時硬化可 | フィラー充填率65%(重量比)わずか3〜10秒で硬化(光条件による)22色と豊富なバリエーション(乳歯用・漂白用含む)カモフラージュ効果で歯質色になじみやすい | 1mLシリンジ単品 約3,000〜4,000円※6本セット割引あり |
Alert (ペントロン) | パッカブルレジン(圧縮充填型コンポジット)大臼歯部直接修復用 | 光重合 | フィラー充填率83% + グラスファイバー配合厚さ5mmまで一括充填可能な深い重合性年平均摩耗量3.5µm以下と高い耐摩耗性重合収縮1.9%以下と低収縮 | 4gシリンジ単品 標準価格5,300円(実売は割引あり) |
Build-It FR (ペントロン) | ファイバー強化型コア築造用レジン支台築造(ポスト併用可) | デュアルキュア(光+自己重合) | フィラー充填率68% + 微細ガラス繊維配合圧縮強度約280MPaと十分な支台強度A2・A3・白は光併用硬化(確実硬化)、青・金は自己硬化色象牙質類似の削削感で滑らかな形成面 | 4mLシリンジ 定価5,200円25mL大型カートリッジ 定価16,400円(ディスペンサー別売) |
Oxford FlowCore ZR (ペントロン) | ジルコニア強化型コア築造用レジン支台築造(高強度タイプ) | デュアルキュア | ナノジルコニアフィラー配合で高強度圧縮強度320MPaと優れた耐久性A2一色(天然象牙質に近い色調)切削時の手応えが歯質に近く調整しやすい | 5mLシリンジ 定価8,000円(専用ディスペンサー対応) |
※価格は税別の目安。実際の販売価格は仕入先や数量により変動する。標準価格はメーカー公表の定価であり、歯科ディーラーでの実売は割引後の金額となる。
この表から分かるように、ペントロンのレジン製品は用途に応じて特化した設計になっている。次章では、臨床と経営の両側面から各製品を評価するためのポイントを、項目別に掘り下げていく。
コンポジットレジン比較のポイント
同じ「コンポジットレジン」といっても、臨床で求められる性能は用途ごとに異なる。ここでは物性・耐久性」「操作性」「審美性」「経営効率(コスト&タイムパフォーマンス)」という4つの軸で、ペントロン製品同士の違いと、その差が臨床結果および医院収益にどう影響するかを解説する。
物性・耐久性の比較
充填材の強度や耐久性は、治療の長期予後に直結する重要ポイントである。ペントロンの各レジンは、それぞれ異なる物性上の特徴を持つ。
Flow-It ALC(フローイット)はフロアブル特有の流動性を持ちながら、屈曲強さや引張強さがハイブリッドレジン並みに高い。このため小さな窩洞やくさび状欠損の充填でも十分な耐久性を発揮する。従来、フロアブルレジンは「脆い」「摩耗しやすい」と敬遠されたが、本製品はフィラー含有率65%と高充填で強化されており、咬合圧の低い部位なら単独充填も可能である。ただし大臼歯咬合面など高負荷部位では、さすがに万能ではない。流動性ゆえ厚盛りすると収縮応力が蓄積しやすいため、広い窩洞では本製品をベースに表層を他のハイブリッドレジンでカバーするなどの工夫が望ましい。強度と流動性のバランスが取れた材料だが、「薄い箇所に行き渡らせる役」と「最後に咬合面を仕上げる役」を使い分けることで、修復物の長期安定性が高まる。
Alert(アラート)は物性面で突出した特徴を持つ。フィラー83%に加え短いグラスファイバーまで配合した充填材で、硬化後の重合収縮は1.9%以下と極めて低い。一般的なレジンの収縮率が2%以上と言われる中、収縮ストレスによる辺縁漏洩リスクを抑制できる点は大きな利点だ。また年間摩耗量わずか3.5µmというデータが示すように、咬合面での耐摩耗性が非常に高い。これは、大臼歯の咬合力が強い患者やブラキシズム傾向のある患者に使用しても、修復物がすり減って二次う蝕の原因になるリスクを減らせることを意味する。臨床的な安心感が高い半面、材料自体が非常に硬い分、研磨にはやや時間を要することがある。しかし術式どおりにしっかり研磨すれば滑沢な表面が得られ、10年以上の長期にわたり良好な状態を維持できたとの報告もある。結果として再治療や補綴物再製作の頻度が下がれば、患者の信頼を得るとともに医院の無償修正コストも減らすことができるだろう。
Build-It FR(ビルドイットFR)とOxford FlowCore ZR(フローコアZR)の両コア材も、物性は強靭である。Build-It FRは圧縮強度280MPa・曲げ強さ120MPaとコア材として十分な値を示すうえ、微細なチョップドファイバーを含有することで靱性(タフネス)を高めている。靱性が高い材料は、荷重が加わった際にクラックの進行を抑える傾向があり、支台歯の破折防止に寄与する可能性がある。例えば、従来のメタルポスト+レジン築造では力の集中により歯根破折を起こすリスクが指摘されていたが、ファイバーポスト+レジン築造では歯質と近似した弾性係数により応力分散され、残存歯質の保全につながる【注:1】。Build-It FRはまさに歯質に近い弾性と切削性を備えるため、長期的に安心して使えるコア材といえる。対するFlowCore ZRはファイバーではなくナノ粒子ジルコニアフィラーを採用し、圧縮強度320MPaという極めて高い強度を実現している。ジルコニア由来の高硬度により、支台築造後の形成時もカチカチに硬く削りにくいのではと懸念されるかもしれない。しかし実際には、硬化後も象牙質に近い感触でバーが進むよう調整されており、支台形成で歯質とレジンの境目に段差が生じにくい。これは形成面の平滑性向上につながり、最終補綴物の適合精度にも好影響を与える。両製品とも支台築造の剛性と適合を高い水準で両立しており、コア崩壊や補綴物脱離といったトラブルを防ぐことで、再治療にかかるコスト・時間のロスを減らす効果が期待できる。
操作性の比較
日々の診療では、材料の操作性が術者のストレスと処置時間を大きく左右する。ペントロンの各レジンは、臨床現場の声を反映して操作性にも工夫が凝らされている。
Flow-It ALCの操作性は、フロアブルならではの隅々まで行き渡る充填性が最大の魅力である。適度な粘度を持ち流れすぎないよう調整されているため、細かな溝やアンダーカットにも筆で誘導するようにスッと入り込む。一度置いたらドロッと流れてしまう心配が少なく、充填コントロールがしやすい点は多くの術者に好評である。筆者も過去に、深いクラスV窩洞で他社フロアブルを使った際、材料が粘調すぎてブラシで延ばすうちに糸を引き、逆に気泡を巻き込んでしまった苦い経験がある。Flow-It ALCで同様の処置を試したところ、適度に自己整形して表面平滑性を保ちつつ、気泡の混入が少ない印象を受けた。加えて注目すべきは硬化時間の短さで、高出力LEDライトを用いればわずか3秒程度で光重合が完了する。一般的なハロゲン光でも10秒程度とされ、通常のコンポジットの半分以下だ。この差はチェアタイム短縮に直結する。小児のう蝕処置など一刻を争う状況では、瞬時硬化できるメリットは計り知れない。術者にとっては「早く固まれ…」と念じるストレスから解放され、患者にとっては開口時間の短縮という利益になる。ただし、光照射が不十分だと深部で硬化不良を起こすリスクはどんな材料にもある。3秒硬化を謳っていても、照射器の光量や照射角度に留意し、必要に応じて保険をかけてもう数秒照射する慎重さは持ちたい。時短と確実さのバランスを取りつつ、本製品の高速重合を活かせれば、忙しい診療の強い味方となるだろう。
Alert(アラート)は一見するとペーストのように高粘度だが、その操作感はアマルガム充填に近いとも言われる。実際、圧縮充填型(コンデンサブル)と称されるだけあり、インスツルメントで練るように圧接してもベタつかず形が崩れない。充填器で詰めた後に彫刻刀で咬合面を大まかに整形する操作もやりやすく、解剖学的形態を付与しやすい。筆者が知るあるベテラン歯科医師は「コンポジットは嫌いだ、粘ついて形が作れん」と長年アマルガム派だったが、Alertを試したことで「これはまるでアマルガムのように練れるから良い」と評価を改めたという。そのくらい操作フィーリングが独特で、他のレジンでは得がたい手応えがあるようだ。もちろん感触だけでなく、一度で5mmまで充填できるという機能的な扱いやすさも見逃せない。通常なら2〜3回に分け硬化する深い窩洞でも、Alertなら一度の充填と光照射で完了する(メーカー推奨は必要最小限の照射だが、念のため深部は追加照射すると安心である)。この一括充填はテクニックエラーの軽減にもつながる。レジンを継ぎ足す際の気泡混入や層間接着不良のリスクが減り、結果的に充填物の品質安定と再治療リスク低減に貢献する。術式の簡略化により新人歯科医師でも扱いやすくなるため、院内教育の面でもプラス材料と言えよう。ただし硬化が速いFlow-Itとは異なり、Alertは通常の光重合時間(20秒程度)が必要だ。高粘度ゆえ表面は固まっても下層が未硬化にならないよう、光源を近づけ充分な時間をかけて照射する注意は必要である。適切な操作をすれば手早く高精度な充填が可能な材料として、忙しい保険診療の現場でも頼もしい存在となるだろう。
Build-It FRとFlowCore ZRはどちらも支台築造用としての操作性が考え抜かれている。まずBuild-It FRは4mLシリンジと25mLカートリッジの2タイプがあり、いずれも自動練和チップでの直接注入が可能だ。ポストを併用する場合、ポスト穴の底部からレジンをゆっくり押し出せば気泡の混入なく確実に充填できる。付属の先細ノズル(アクセスチップ)は直径1mmの細いタイプも用意され、細い根管や小さな歯でもミキシングチップから直接レジンを送り込める設計だ。適度なチクソトロピー性があり、注入直後は流動性をもって隅々まで行き渡る一方で、充填後は流れすぎず所定の形を維持してくれる。これにより、「土台がダレて崩れてしまい形成しにくい」という事態を防げる。硬化モードについても賢く工夫されている。A2・A3・オペーシャスホワイト色はデュアルキュアでライトを当てればすぐ表面が硬化し、続いて化学重合で芯まで硬くなるため、太いポスト部でも安心だ。ゴールド・ブルー色はあえて自己重合専用とすることで、光が届かない深部まで均一に硬化させることを重視している(光重合成分を含まない分、深部硬化の阻害要因を減らす狙いがある)。自己重合タイプでも作業時間は2分30秒と比較的長めに確保されており、複数歯の支台築造や太いポストの位置調整も落ち着いて行える。硬化完了は約4分と早く、そのまま形成に移行できるため、根管治療直後に支台築造・形成・印象採得まで一連の処置を一回の来院でこなすことも現実的だ。これは患者の通院回数削減に直結し、医院の予約枠運用にもメリットである。FlowCore ZRも基本的な操作性は同様だが、こちらは提供形態が5mLシリンジのみである。Build-It FRとの違いとして専用ガンへの装着使用も可能な点があり、大型カートリッジほどではないが手にフィットするガンで押し出せるのは細かな操作で有利になる場合がある。色調はA2一択でシンプルだが、迷わず使える利点とも言える。補綴装着まで考慮すれば、支台築造では色より確実な硬化と形態の安定が何より優先される。両製品とも、スムーズな注入・確実な硬化・思い通りの築盛を実現しており、支台築造に伴うストレスを軽減する設計となっている。
審美性の比較
レジン修復における審美性は、前歯部の色合わせに限らず、最終補綴物の美しさや患者満足度に影響を与える要素だ。ペントロンのレジン製品は、それぞれの用途に応じた審美面での工夫がみられる。
Flow-It ALCは全22色のカラーバリエーションを誇るように、審美性への配慮が非常に高い。A系~D系の基本シェードだけで16色あり、さらに乳歯用の乳白色、漂白後の明度の高い歯に合わせるExtra Light(ブリーチ)系、加えて特殊用途の色が揃う。これだけ選択肢があればシェードテイキングに困ることは少ないだろう。とはいえ数多くの色見本から最適解を探すのは大変だ。そこで本製品は「カモフラージュ効果」と称して、多少シェードがずれていても歯質に溶け込むような光学特性を持たせている。実際、小さなクラスIIIやIV修復で多少シェードが合わなくとも、周囲の歯に馴染んで目立たなくなるケースが多い。術者にとっては色合わせの負担軽減になり、患者にとっては自然な仕上がりが得られる嬉しい設計だ。またフロアブル特有の表面平滑性も審美性に貢献する。適切に研磨すれば艶やかな光沢が出やすく、唾液中での経年劣化による変色・着色も抑えられている。前歯部のダイレクトボンディング修復はもちろん、小臼歯部の治療でも「治療跡がわからない」と患者に喜ばれることが多く、保険診療内でも高い審美要求に応えられる材料として頼りになる。
Alertは主戦場が大臼歯部とはいえ、A2・A3・A3.5・B1・C2と主要どころのシェードを網羅しているため、色調適合で大きく困ることはない。ややマットな質感ではあるが、研磨すれば自然な艶が出る。とはいえ前歯部向きに半透明エナメルシェードやキャラクライザーが用意されているわけではないため、審美用途より機能重視の材料と割り切る方がよいだろう。Alertの審美性を語るうえで見逃せないのは、実は「メタルフリー修復を可能にする」という点での審美貢献である。従来、大臼歯の大きなう蝕はインレーやクラウンになるケースが多く、銀合金など金属修復が一般的だった。Alertを用いれば、金属を使わずに大臼歯を直接修復で治せる範囲が広がる。つまり患者さんの口腔内から金属色を減らし、オールホワイトニングスマイルに近づけることができるわけだ。実際、保険診療内でもCR充填で大きめのMODを治すケースが増えており、「銀歯を使わない治療」をアピールする医院もある。この潮流の中で、Alertのような高耐久レジンは審美的ニーズを裏で支えていると言えるだろう。詰めた箇所が透明感あるグラデーションでなくとも、咬合面に馴染み違和感のない色で長持ちすることが、結果として患者の笑顔を守ることにつながるのである。
Build-It FRとFlowCore ZRはいずれも支台内部に隠れる材料ではあるが、補綴物の最終的な審美性に影響を及ぼす。Build-It FRは5色展開で、その内A2・A3・オペーシャスホワイト(不透明白)は前歯部オールセラミックの下地に適した審美色とされる。例えば変色歯のコアに真っ白なオペーシャスホワイトを使えば明度を底上げできるし、天然歯に近いA2・A3で作れば支台が透けにくく、セラミッククラウンの色調再現性が高まる。メタルコアではこうはいかない。どれだけ高価なセラミックでも中の金属色を消すために不透明度を上げねばならず、結果的に「いかにも被せました」な人工的色調になりがちだ。ファイバーポスト+レジンコアはそうした審美障害を取り除く意義が大きく、Build-It FRの色バリエーションはまさに審美修復を陰で支えている。後述のように経営面でも自費補綴の付加価値向上に寄与するポイントである。一方のFlowCore ZRは色がA2のみだが、これも象牙質色としてほぼ万能に使えるため大きな問題はない。むしろ色で迷わず済む利点もあるだろう。コアが単一色になることで、技工士がシェードやステインで微調整しやすいとの声もある。最終的に見えなくなる部分とはいえ、「素材の色」まで意識を配るか否かが補綴物の審美性の差につながる。ペントロンのコア材はその点を疎かにせず、医院が自信をもって「オールセラミックの美しさ」を提供できる裏付けとなっている。
経営効率の比較
歯科材料の選定には、その経営面での効率や投資対効果(ROI)も無視できない。安価な材料でコストを抑えることと、高価でも性能向上で再治療を減らすことのバランスを見極める必要がある。ペントロンの各レジンは、その価格設定と機能から見て経営にどのような影響をもたらすか考察してみよう。
Flow-It ALCの価格は1本あたり数千円程度で、他社の高品質フロアブルレジンと同等かやや割安な水準である。特筆すべきはバリューパック(6本セット)の存在で、まとめ買いすることで1本あたりの単価を大幅に下げることが可能だ。例えば基本色をまとめて揃えたい開業直後の先生や、常に大量のレジン充填を行う保険中心の医院にとって、この価格体系は在庫コストの負担軽減につながる。さらにFlow-Itの高速硬化によるチェアタイム短縮は、経営効率への大きな貢献となる。1本の充填処置につき削減できる時間は数十秒かもしれないが、塵も積もればである。一日20件のCR充填がある医院なら、硬化時間半減でトータル数分の短縮となり、その積み重ねで1週間に数枠の予約枠創出も夢ではない。また、治療時間が短いことは患者満足度を高め、リコール来院や紹介増にも寄与しうる。材料費自体は1窩洞あたり数百円程度で済むため、費用対効果の良い製品と言えるだろう。「安かろう悪かろう」では意味がないが、Flow-Itは品質を犠牲にせず効率化を図れる点で、ハイパフォーマンスな投資となり得る。
Alertは標準価格こそやや高めに見えるが、実売ではボリュームディスカウント等も期待でき、他社のナノハイブリッドコンポジットと同程度の価格帯に収まるケースが多い。ROIを語る上で重要なのは、その一括充填による時間節約と再治療リスク低減がもたらす利益である。複雑なクラスII窩洞を従来法で充填すると、ベースライナー+数回に分けたレジン充填+形態付与と多段階になり、どうしても術者1人あたりの処置可能数に限界が出る。Alertであればベース不要で一度に充填できるため、1症例あたりの処置工程と時間を大幅に減らすことが可能だ。極端な話、同じ時間で治療できる患者数が増えれば売上向上につながるし、患者1人あたりに割ける説明やカウンセリングの時間を捻出することもできる。また低収縮・高耐久ゆえに充填物の不適合や破折によるやり直しが少なくなることも経営上は重要だ。保証修理のため無償で椅子を埋める時間ほど医院経営に痛手なものはない。Alertで確実な修復が得られれば、5年後10年後のリメイク率低下によって見えないコストを削減できるだろう。特に、自費の大きなコンポジット修復(昨今はCAD/CAMインレーではなくあえてダイレクトCRでレイヤリングする審美治療も存在する)を行う場合、材料選択の善し悪しが医院の評判を左右する。高耐久レジンを使うことは保証期間内の無償修復リスクを減らし、収益の安定化に寄与する戦略的判断なのである。
Build-It FRとFlowCore ZRは、材料そのものの価格は決して安くはない。従来の保険診療で行うメタルコア(土台)のコストが数百円〜千円程度とされる中、ファイバーコアシステムはポストとレジン合計で数千円分の原価がかかることもある。しかし、これらを単純に材料費の増加と捉えるのは早計である。まず、ファイバーポスト+レジンコアは多くの場合保険適用外の自費治療として提供されることが多い。オールセラミッククラウンの支台や審美目的の治療では、追加費用をいただいた上でメタルフリー支台築造を行うケースが一般的だろう。その際、Build-It FRやFlowCore ZRの導入コストは、患者への提供価格に十分転嫁できる。むしろ「金属を使わないより良い土台治療」として付加価値を訴求でき、医院の収益アップにつながる可能性がある。患者にとっても、僅かな追加負担で歯ぐきに黒ずみが出にくい綺麗な土台を選べるなら、納得してもらいやすいメリットだ。また仮に保険診療内で使用する場合であっても、再治療の低減という観点でROIを考えたい。前述の通り、金属ポスト由来の歯根破折や二次カリエスで再治療になれば、患者の信頼を損ねるだけでなく、医院としても痛手となる。ファイバーコアを用いた症例の方が予後良好であれば、長期的に見て医院の収益を守る投資と位置づけることができる。また、Build-It FRのように即時硬化→即時形成が可能な材料は、治療工程の集約による人件費・ユニット稼働コストの削減効果も持つ。従来2回法で行っていた根治後の支台築造+支台形成を1回で終えられれば、予約枠の効率化と患者満足度向上(通院回数減)は顕著である。総じて、ペントロンのコア材2種は初期コスト以上のリターンを生み得る戦略的アイテムと言えるだろう。導入に際しては、メーカーやディーラー主催のセミナー・デモを活用し、自院スタッフが使いこなせるようトレーニングすることで投資効果を最大化したい。
(注:1)参考文献:高橋英和ほか「最近のデュアルキュア型支台築造用コンポジットレジンの諸性質」『日本歯科材料器械学会誌』23巻4号, 2004年 pp.287-293.
製品別レビュー:ペントロンのコンポジットレジン徹底解説
以上の比較ポイントを踏まえ、ここからは各製品の特徴と臨床での活かしどころをさらに詳しく解説する。それぞれの強みと弱みを客観的データに基づいて整理し、どのような診療スタイルの先生にマッチするかを考察する。ご自身の医院のニーズと照らし合わせながら、最適な一品を見極めてほしい。
Flow-It ALC/高速重合と充填性でチェアタイム短縮を叶えるフロアブル
ペントロンのFlow-It ALC(フローイット エーエルシー)は、その名にある「Accelerated Light Cure(加速光重合)」が示す通り、驚異的な硬化スピードが最大の特徴である。高出力LEDライトを用いれば3秒程度、通常のLEDでも約10秒で硬化可能というこの性能は、市販フロアブルの中でも群を抜いている。忙しい保険診療で少しでもタイムロスを減らしたい先生、小児や嘔吐反射の強い患者の処置時間を短くしたい先生には、大きな恩恵となるだろう。
しかしFlow-It ALCの真価は速さだけではない。フィラー含有率65%という充填量の多さに支えられた機械的強度も魅力だ。従来、流れるレジンは脆いイメージがあったが、本製品は曲げ強さ・引張強さともハイブリッドレジンに匹敵し、クラスVや小さなI級・III級なら単独で耐えうる堅牢さを持つ。これは臨床的に大きな利点で、例えばくさび状欠損で広範囲に象牙質が露出したケースでも、Flow-It ALCだけで完結できれば工程がシンプルになる。また適度な粘性にも注目したい。サラサラ過ぎずネバネバ過ぎない絶妙な粘調度で調整されており、細かい溝に自発的に流れ込む一方で、垂れて患部外へ流出するようなトラブルは起きにくい。実際の充填では、スプリングチップ付きシリンジで少量ずつ流し込むように使用するが、先端から出たレジンが糸を引かずスパッと切れるため、狙ったところに置きやすい印象だ。狭い窩壁際にも筆や探針で誘導すればピタリと適合し、結果としてマージンの封鎖性が高まる。術者の細かなテクニックをアシストしてくれる扱いやすいフロアブルという評価ができる。
Flow-It ALCの弱みを敢えて挙げるなら、「単独で大きな咬合面すべてを補う用途には向かない」ことだろう。これは本製品固有の欠点というよりフロアブル全般の宿命だが、やはり圧縮強度・耐摩耗性という観点では、ナノハイブリッドやパックタイプのレジンに一歩譲る。そのため、大臼歯の広いMOD修復をすべてFlow-Itで済ませるのは避けた方が無難だ。ベースや裏層としてFlow-Itを活かし、咬合面の咬頭部分には硬質レジンを盛る、という使い分けができる先生にとっては非常に強力なツールとなる。逆に言えば、「細かいことは抜きに1種類のレジンで完結させたい」というニーズには適さない。そうした割り切りには、次に述べるAlertの方が向いている。
こんな先生におすすめ
毎日多数のCR充填を行う一般開業医、時短しつつ品質も担保したい保険診療中心の先生。特にう蝕処置で患者を回転させたいユニット数の多い医院や、小児歯科で迅速な充填が求められる場面で威力を発揮する。逆に、自費の審美修復でレイヤリング前提の先生には主役にはなりにくいが、「縁下まで流れ込む確実な充填」という特性から、ラミネートベニアやコンポジットインレーのベース付与など裏方としても活用できるだろう。
Alert/アマルガムに代わる一括充填、耐久性重視のコンデンサブルレジン
ペントロンのAlert(アラート)は、その登場当初より「コンデンサブル・コンポジット」として話題を集めた製品である。従来「圧排充填型レジン」などとも呼ばれ、アマルガムに似た操作感で大きな窩洞を一気に埋められる点が最大の特徴だ。フィラーを重量比83%も含有し、更に短いガラス繊維までも混和した独特のレジンシステムで、パテ状に近い硬めのペーストだが操作中に器具へ付着しにくいよう最適化されている。コンデンサーやヘラで圧接すれば隅々まで練れ込み、まさに「詰める充填」が実感できるだろう。これは、ネバつくレジンに苦手意識を持つ術者にとって福音となる。特に長年アマルガムを愛用してきた先生に一度試していただきたい材料である。
臨床性能の面でもAlertは輝きを放つ。まず、一度の充填で最大5mmの厚さまで重合可能という深達性は、大臼歯部では大きなアドバンテージだ。通常なら2〜3層に分けて硬化させる深いクラスIIも、Alertならボンディング後に一発で充填→光照射で完了できる。これは処置時間の短縮だけでなく、レイヤリング時のヒューマンエラー減少にもつながる。複数回充填では各層に気泡やギャップの混入リスクがあるが、一括充填ならその懸念が少ない。結果として辺縁封鎖性の高い修復が得られ、二次カリエス発生率の低減が期待できるだろう。さらに物性面では、83%フィラー充填による高強度・低収縮が長期安定性を支える。摩耗に強く形態崩壊しにくいため、術後の咬合調整や補綴再製作といった手戻りも減らせる。実際、米国Dental Advisorによる10年評価でも高い臨床成績を収めており、長期に安心して口腔内に留められるCRとして評価されている。
一方、Alertのデメリットとして挙がるのは審美適応の狭さと研磨操作の負担である。色調は5色揃っているものの、半透明エナメル質レイヤーを再現するような用途には向かない。審美領域ではもっと適したレジンが他にあるため、Alertは「隠れる部分の機能修復材」と割り切った方が良いだろう。また硬さゆえに研磨にはやや時間がかかる傾向がある。充填後、ダイヤモンドポイントやストリップスで形態修正し、研磨用ポイントやディスクで仕上げる一連の操作には、それ相応の根気が必要だ。特に複雑な咬合面を滑沢に仕上げるには訓練が要る。とはいえ、これはすなわち咬合調整で減りにくい頑丈さの裏返しでもあり、適切に研磨さえしておけば後から点刻の摩耗で形が変わる心配が少ないとも言える。研磨工程に多少時間がかかったとしても、一括充填でトータル時間は短縮できているはずなので、大きな欠点とは言えないだろう。
こんな先生におすすめ
大臼歯の直接修復をよく行う先生、アマルガムからレジンへの移行期にあるベテラン医師、あるいはラバーダム下で大きなう蝕を手早く処置したい保存専門医などに適している。詰めて削る操作が主体のため、「レジンのレイヤリングは苦手だが手技の確実性には自信がある」という先生にはうってつけだ。保険診療でメタルインレーを減らし白い歯にしたいニーズに応える材料でもあり、経営的にも「銀歯ゼロ宣言」の武器となるだろう。一方、審美的要請が高い前歯部や、小さな窩洞で緻密な操作を要するケースでは真価を発揮しにくいため、その場合はFlow-It等との併用・使い分けが望ましい。
Build-It FR/ファイバーコア築造の王道、多彩な色と信頼の実績
ペントロンのBuild-It FR(ビルドイット エフアール)は、グラスファイバー繊維を含有した支台築造用コンポジットレジンとして古くから知られるロングセラー製品である。ファイバーポストとの組み合わせによるメタルフリー支台築造システムは、本製品の登場以降、多くの臨床家に支持されてきた。信頼性の高いコア築造材として築いてきた実績は、何よりもの強みと言えるだろう。
Build-It FRの特徴は、まず物性と操作性のバランスが優れている点だ。前述の通り圧縮強度や曲げ強さなどの数値は同類製品の中でも高水準で、支台として十分な強度と靱性を備える。一方で硬化後の被削性が象牙質に近く、バーで形成する際に引っかかりが少ない。コアの一部が軟らかすぎると急に削れすぎてしまい、逆に硬すぎると今度は歯質との段差ができてしまうが、Build-It FRならそうした心配が少ない。スムーズに歯と一体的に削れるので、支台形成の微調整がしやすく最終的なクラウン適合精度の向上にも貢献する。これは当たり前のようでいて重要なポイントで、メタル製コアではまず望めなかった芸当である。
操作性に関しても、多彩な供給形態と付属品で臨床をサポートする。4mLシリンジタイプは少量の築造に便利で、付属のラージ・スモール2種の細ノズルで直接根管内に流し込める。25mLカートリッジタイプは複数歯や大量築造に向いており、専用ガンで安定した練和・連続充填が可能だ。作業時間が2分半と適度に長いので、複雑なポスト配置も慌てず行える。自己重合型カラー(青・金)を用いれば深部まで硬化不良の心配なく築造でき、デュアルキュア型カラー(A2・A3・白)では表層を光で即時セットさせられるから、コアフォーム(透明プラスチックのテンポラリー冠形態)を使った即時成形法にも応用できる。コアフォームを被せて光照射すれば、一瞬で大まかな支台の形が固まり、その後中まで硬化したらフォームを外すだけで粗削り済みのコアが完成する。このようにアイデア次第で臨床ワークフローを工夫できる柔軟さもBuild-It FRの魅力である。
もう一つ特筆すべきは、5色のカラーバリエーションが臨床的価値を高めている点だ。A2・A3は前歯部でも透けにくい自然な象牙質色、オペーシャスホワイトは変色歯の漂白や明度調整に、ブルーとゴールドは「歯との境目を判別しやすくする」ためのコントラスト色として使える。それぞれ明確な目的があり、症例に応じて色を選択できることは術者にとって大きなメリットだ。例えば「この歯は薄いオールセラミッククラウンだからコアはA2でなじませよう」「隣接のメタルタトゥーを消すため白コアにしよう」「根が薄いから削りすぎ防止に青コアにしよう」といった戦略的な使い分けができる。ファイバーコア築造を数多く手がける医院では、この色選択の幅が症例対応力を高め、ひいては患者満足度につながっている。もちろん、どの色を使っても基本的な物性は変わらないので安心してよい(ただし青・金は自己硬化型である点だけ留意)。
欠点らしい欠点は少ないが、強いて挙げれば専用ミキシングチップのコストであろう。ビルドアップ用途ゆえ材料自体が高価なのは仕方ないが、混和と精密充填のために毎回使い捨てのチップ類が必要になる。特に4mLシリンジ用はチップ径が細い分、ややレジンのロスも多い。コスト意識の高い先生は嫌がるかもしれないが、そこは確実な練和と気泡ゼロ築造のための必要経費と割り切りたい。むしろ一度に複数歯を築造する場合、25mLカートリッジ+太めチップの方がロスなくコストパフォーマンスが良いので、ケースによって使い分ければ無駄は減らせるだろう。
こんな先生におすすめ
メタルフリー志向でファイバーコアを標準採用している医院、自費のオールセラミック治療が多い審美歯科の先生、あるいは根管治療~補綴まで一貫して行うEndoからProsthまでの流れを重視する先生に最適である。Build-It FRはファイバーコア築造の王道とも言える製品で、長年の使用実績から「とりあえず困ったらこれを選べば間違いない」安心感がある。これからメタルポストを脱却しようと考えている先生にも、導入しやすい一品だろう。なおPentron Japanではファイバーコアポストとのセット提案も行っており、同社製ポストとの組み合わせで使えば相乗効果が得られる。歯根長や太さに応じたポスト選択など、包括的なシステムとして導入できる点も経営的なメリット(在庫管理の簡素化・メーカーサポートの充実など)と言える。
Oxford FlowCore ZR/強度重視の次世代コア、ジルコニア充填で削り心地良好
Oxford FlowCore ZR(オックスフォード フローコア ゼットアール)は、ペントロンが近年リリースしたジルコニア強化型の支台築造用レジンである。従来のBuild-It FRがファイバー充填だったのに対し、FlowCore ZRはナノサイズの酸化ジルコニウムフィラーを高密度に配合することで、コア材に求められる強度と耐久性をさらに向上させた意欲作だ。
最大の特徴は、その圧倒的な圧縮強度(320MPa)である。数値だけ見ればBuild-It FRを上回り、市販コア材の中でもトップクラスと言える。この強さは、特に大臼歯部の支台に心強い。例えば大きなポストを入れたケースや、ブリッジ支台のように咬合負荷が集中しがちな歯でも、FlowCore ZRなら安心感が違うだろう。「コアが割れてクラウンごと脱離」という残念な事態を極力避けたい症例において、一層の高強度は大きな保険となる。
とはいえ、「強すぎて削りにくいのでは?」という懸念が浮かぶかもしれない。ペントロンはその点も抜かりなく、象牙質に近い削削感をキープするようレジンマトリックスの配合を工夫している。実際の切削では、Build-It FRと遜色なくスムーズにバーが進む印象で、ジルコニアフィラーが邪魔をしている感じはない。むしろファイバーが入っていない分、バーで削った面がサラッと滑沢に仕上がる傾向がある。ガラス繊維はときに繊維断面が毛羽立って残ることがあるが、FlowCore ZRではそうしたことがなく、研磨一体型バーで仕上げれば二次的な研磨ステップが要らないほど綺麗な形成面が得られやすい。結果的に、スピーディな形成と補綴物の適合精度向上に貢献するだろう。
FlowCore ZRはデュアルキュア硬化で操作性もBuild-It同様優れているが、カラーバリエーションがA2のみという点は念頭に置きたい。A2は日本人の象牙質としてほぼ標準的な色調であり、多くの症例では問題にならない。しかし変色歯や漂白歯など特殊なケースで色を調整したい場合には、Build-It FRのホワイトやブルーといった選択肢に軍配が上がる。そのためFlowCore ZRは「色に悩むことなく基本に忠実なコア築造をしたい」というニーズにマッチする製品と言える。実際、補綴装着時に支台の色を調整するテクニックを持つ歯科技工士と組むなら、シンプルにA2色で統一してしまった方が管理が楽という考え方もある。医院全体で運用コストや在庫種類を減らしつつ、品質を底上げしたい場合に、この一本化は有効だろう。
総合的に見てFlowCore ZRは、「さらに強いコアが欲しい」「扱いやすさはそのままで支台の信頼性を上げたい」という現場の声に応えた製品である。まだ発売から年数が浅いため臨床実績ではBuild-It FRに譲るが、その設計思想からして信頼に足るスペックを備えている。ペントロンも今後、FlowCore ZRを中心に据えたコア築造システムを展開していく可能性が高く、ユーザーへのサポートも充実していくだろう。
こんな先生におすすめ
支台築造において「強度命」の考えを持つ先生、特に臼歯部のファイバーコアで過去に破折リスクにヒヤリとした経験がある先生には是非試していただきたい。また、医院のコア築造材を一種類に統一し標準化したい場合にも適する。A2だけで困らない症例選択ができるなら、シンプルゆえスタッフ間での取り違えも起こらず運用しやすい。逆に、細かな色使いを駆使して前歯部支台の色調管理までこだわりたい審美歯科クリニックには、Build-It FRとの併用が望ましいかもしれない。いずれにせよFlowCore ZRは、次世代の高強度コア材として今後主流になる可能性を秘めており、先見性のある先生にとって導入価値の高い一品である。
よくある質問(FAQ)
Q1. Flow-It ALCだけで大臼歯の大きなう蝕も充填できますか?
A1. 物理的には可能だが推奨しない。Flow-It ALCは高強度だがフロアブル特有の高い流動性を持つため、大きな咬合面すべてを本製品のみで修復すると、咬合力の反復で摩耗や変形が生じるリスクがある。大きなⅡ級やMOD窩洞では、まずFlow-Itをベースや隙間の充填に活用し、最表層の咬合面はハイブリッド型のコンポジットレジンでカバーすると良い。この使い分けにより、適合性と耐久性の両立が図れる。
Q2. ファイバーコア(Build-It FRやFlowCore ZR)は保険診療でも使えますか?
A2. 材料自体の使用は可能である。支台築造用レジンとして医療機器認証を取得しており、保険診療でレジン築造を行う際にBuild-It FRやFlowCore ZRを用いても問題はない。ただし、ガラスファイバーポスト(ファイバーコアポストなど)を併用する場合は現時点で保険算定が認められていないため、自費扱いとなる点に留意が必要である。多くの医院では、ファイバーコア築造を自費治療(または保険外材料費)として提供し、レジンコア+ポストの材料コストを患者に負担いただいているのが実情だ。保険内で使う場合は、材料コスト増を医院が被る形になるが、再治療リスク低減など長期的メリットを考え採用している先生もいる。
Q3. ペントロンのレジンは他社のボンディング剤とも問題なく使えますか?
A3. 基本的に問題なく併用できる。Flow-ItやAlertはエナメル・デンティン用の接着システム(いわゆるボンディング剤)と組み合わせて初めて性能を発揮するが、メーカー純正の「Bond-1」以外にも各種メーカーのボンディングと物理的・化学的適合性が確認されている。Build-It FRやFlowCore ZRについても、ポスト装着時にはペントロン純正のプライマーや接着剤を推奨しているが、基本的接着コンセプトが同じであれば他社ボンドでも接着できる。ただし、最高の結果を得るにはメーカー推奨の組み合わせを使うのが無難だ。特にファイバーポスト表面処理には専用シラン剤(セラミックスボンドIKなど)を併用することで、コアレジンとの一体化がより確実になる。異なるメーカー品を混用する場合は、自己責任で少数症例から試し、臨床成績を確認してから全体に展開するとよい。
Q4. ペントロン製品はどこで購入できますか?
A4. ペントロンジャパンの製品は、主要な歯科ディーラーや歯科材料通販サイトで取り扱われている。FEEDデンタルやCiモールといったオンラインショップでも「Pentron」のカテゴリから注文可能だ。価格はディーラーによって多少異なるため、複数社に見積りを取ってみると良い。また、メーカー直販は基本的に行っていないが、商品に関する技術問い合わせや資料請求はペントロンジャパンのホームページから可能である。導入前に実物を試したい場合、担当ディーラーに依頼すればデモ機材(シリンジのテスターなど)を貸与してくれる場合もある。セミナー参加者には割引価格で販売されるケースもあるので、公式セミナー情報をチェックしてみよう。
Q5. Build-It FRとFlowCore ZRはどちらを選ぶべきでしょうか?
A5. 両者とも優れたコア築造材であり、一長一短がある。強度最優先で、とにかく折れない土台を目指すならFlowCore ZRが適している。一方、色調の選択肢や長年の実績重視ならBuild-It FRに分がある。例えば前歯部中心にオールセラミック補綴が多い医院では、ホワイトやブルーなど症例に合わせ色が選べるBuild-It FRが使いやすいだろう。逆に臼歯部メインで支台を統一色にしたい場合や、新しいものを積極的に取り入れる医院ではFlowCore ZRがマッチする。実際には併用も視野に入れて、前歯はBuild-It FR、臼歯はFlowCore ZRと使い分けている先生もいる。まず少量ずつ購入し、それぞれ試した上で、自院のニーズにより合致する方を主力に据えるのがおすすめだ。同一メーカー製品なので混合使用しても手順が似ており、スタッフ教育の面でも大きな負担増にならないだろう。以上を踏まえ、症例層や重視ポイントに合わせて選択いただきたい。