
BSAサクライのコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?
深いう蝕の充填処置でマージンラインに小さな気泡が入り、修復をやり直した経験はないだろうか。あるいは、シェード選択に迷ってチェアタイムが延びてしまったことはないだろうか。臨床での些細なストレスも積み重なれば、医院経営に影響しかねない。高価なコンポジットレジン(CR)を保険診療で使い続けることに不安を覚えた先生も多いだろう。
本記事では、こうした悩みに対し臨床的ヒントと経営的戦略の両面から考察する。BSAサクライのコンポジットレジン製品に注目し、その評判や特徴を客観的データに基づいて比較検証する。長年の臨床経験と経営視点から、読者が自身の診療スタイルに最適な材料を選択し、投資対効果 (ROI) を最大化する一助となれば幸いである。
BSAサクライ コンポジットレジン主要製品の比較早見表
製品名 | タイプ | 主な適応 | 特徴 | 価格 (医院) |
---|---|---|---|---|
チャームフィル プラス | ナノハイブリッド(ペースト) | クラス1~5全般(前歯~大臼歯) | 低収縮 1.2%、高強度で広範な窩洞に対応。ベタつかず器具で形態修正しやすい | 約 1,400 円 (4g×1 本) |
チャームフィル フロー | ナノハイブリッド(フロアブル) | 小~中規模の窩洞、窩底ライナー、浅い 5級など | 低収縮 2.3% で適合性良好。オパール効果で自然な仕上がり(ユニバーサルシェード有) | 約 1,700 円 (2g×2 本) |
チャームフィル フローHV | ナノハイブリッド(高粘度フロアブル) | 3級・5級窩洞、矯正ブラケット接着、隔壁形成 | 垂れにくく形態付与が容易。フロー同様の物性を持ち多用途(ユニバーサル色有) | 約 1,700 円 (2g×2 本) |
チャームコア | デュアルキュア(コア築造用レジン) | ポスト・コア築造、アンレー土台 | 自動練和型で光の届かない部位も確実硬化。圧縮強度 300MPa で耐久性が高い | 約 4,600 円 (10g×2 本) |
*価格は BSA サクライ公式サイトの医院様向け参考価格(税別)である。
コンポジットレジン比較のポイント
BSAサクライの各種コンポジットレジンを評価するにあたり、臨床性能と経営効率の両軸から主要な比較ポイントを整理する。物性・耐久性、操作性、審美性、そしてコストやタイムパフォーマンスといった観点で差異を見てみよう。
物性・耐久性
コンポジットレジンの基本性能として、強度や硬度、ポリメリゼーション収縮(硬化収縮)の大小は修復物の長期安定性に直直結する。チャームフィルシリーズはナノフィラーを高充填したハイブリッドレジンであり、高い機械的強度と低収縮を両立していることがデータから示唆される。実際、チャームフィル プラスの硬化収縮率は約1.2%と、従来のハイブリッド型CR(2%以上が一般的)と比べても極めて低い値である。これにより、硬化時の歯質との隙間(マイクロリーケージ)発生を抑え、辺縁封鎖性の向上が期待できる。曲げ強さ(フレックスラルストレングス)も高く、チャームフィル プラスで約150 MPa、フローでも約140 MPaという試験値が報告されている。これは従来型の後ろ歯用CRを上回る強度であり、咬合力のかかる部位でも十分な耐久性を持つことを意味する。
また、チャームフィルシリーズはX線造影性にも優れる。バリウムガラスを含む特殊フィラー配合により、2 mm アルミニウム板に対し160~180%という高いX線不透過性を示す。これは充填後のレントゲン検査でう蝕の再発や辺縁の適合を判断しやすい利点となる。長期的な摩耗耐性についても、ナノサイズのフィラーによる緻密なマトリックス構造のおかげで、使用後の表面粗さ増加が抑えられツヤが持続しやすい。実際、研磨直後と摩耗後の表面を比較しても光沢の低下が少ないとのデータがある。これらの物性面の特徴から、チャームフィルシリーズは臼歯部の大きな修復から前歯部の修復まで、日常臨床で求められる強度・耐久性を十分に備えていると言える。
コア築造用のチャームコアに関しては、さらに高い強度設計がなされている。圧縮強度は約300 MPa、曲げ強さも120 MPa 以上と公表されており(フィラー充填率 65%以上)、硬化後の硬さが象牙質に近似するよう調整されている。これによりコア形成後の削合も違和感なく行え、築造した支台が過度に脆い・硬すぎるといった問題を防いでいる。総じて、BSAサクライのレジン材料は物性的に見ると大型メーカーの製品と比べても遜色ないか、むしろ一部優れた値を示している。高強度・低収縮という客観データは、材料選択において大きな安心材料となるであろう。
操作性
現場での使いやすさ(ハンドリング)は、臨床効率と仕上がり精度に大きく影響する。チャームフィル プラスはペーストタイプでありながら「ベタつかない」操作感を特徴としている。器具への付着が少ないため、充填後の形態修正がスムーズに行える。実際に使用した一部の臨床家からは「従来の有名メーカー品よりわずかに器具離れで劣るものの、実用上問題のないレベル」との声もある。つまり絶対的な操作感は高価な製品に匹敵しないまでも、臨床で支障をきたすようなストレスはないと評価されている。
一方、フロー系のレジンであるチャームフィル フローおよびフローHVは、それぞれ粘度特性が異なる。通常のチャームフィル フローは流動性が高く、狭い窩洞や複雑な形態のう蝕部位にも良好に適応する。気泡の混入を抑え、窩壁への密着性を高めるため、まずフロアブルを薄くライナー的に敷くテクニックは一般的だが、本製品はその用途に最適である。浅い5級や小さな3級の充填であればフロー単独で仕上げることも可能な扱いやすさだ。ただし流動性が高いぶん、厚盛りすると垂れや咬合面での形態付与が難しいため、大きな修復では後述のペーストやHVとの併用が望ましい。
チャームフィル フローHV(ヘビーボディ)は、通常のフロアブルと比べて高粘度で「垂れにくい」性質を持つ。注入時は圧をかければスッと流れるが、離すとその場に留まるため、自分の思い通りの位置と形態に留めやすい。これは、隣接壁の欠損部にレジンで隔壁を築く場合や、矯正ブラケットの接着剤として使用する場合などに有効である。実際のユーザーからも「隔壁形成に使いやすい」「ブラケットがずれないので位置決めが安心」といった報告がある。一方で、高粘度ゆえにシリンジから押し出す際にわずかな力が要る点、ディスポーザブルチップ内に気泡が混入すると押出時に穴ができやすい点には注意したい。使用前にチップ内の空気を少量押し出して除去する、ゆっくり一定の力で注入するといった工夫で十分回避可能なレベルである。
チャームコアの操作性も特筆に値する。専用器具を必要とせず、二重構造のシリンジに付属のミキシングチップを装着して押し出すだけで、自動的にペーストが練和される。手動練和のレジンコアに比べて調和ムラや気泡混入が少なく、均質なペーストを直接支台歯に築盛できる点は大きな利点である。根管内に先細ノズルでレジンを流し込む際も、適度に流動して細部まで行き渡りつつ、築盛時には垂れにくい絶妙な粘性バランスになっている。結果として短時間で精度の高いコア築造が可能となり、支台形成のやり直しやポスト脱離のリスク低減にもつながっている。
以上のように、BSAサクライのレジン製品は各種テクニックに対応した操作性を持つ。もちろん、細かな使用感は他社製品と比較して好みが分かれる部分もある。例えばペーストの硬さ(軟らかさ)は適度で、厚手のマトリックスバンドへもしっかり圧接できるが、「もっとコシが欲しい」と感じることもあるかもしれない。しかし、総合的には日常診療で要求される操作性を十分満たしており、初めて使う場合でも大きな戸惑いなく移行できるレベルに仕上がっている。
審美性
審美的なクオリティも、コンポジットレジン選択の重要な要素である。チャームフィル プラスおよびフローは、基本的にA系(A2、A3、A3.5)およびB2といったベーシックなシェード展開となっている。各シェードは天然歯に近い色調を備え、実際の充填では周囲歯質とのなじみ(カメレオン効果)も良好である。他メーカーの高価格帯レジンと比較しても、「色のなじみ具合は遜色ない」という使用感の報告がある。したがって、通常の保険診療の範囲で要求される審美性は十分に満たせるだろう。
特にチャームフィル フローにはオパール効果(乳白色)が付与されており、充填物が単調に不透明にならず、周囲のエナメル質の色調を拾って自然に調和するよう工夫されている。前歯部の小さなレジン修復でも、周囲の歯との境界が目立ちにくい仕上がりとなりやすい。一方で、表面的な研磨性・艶に関しては、審美修復用に特化した一部製品(例えばシェード選択不要を謳う最新材料など)と比べ「やや艶が出にくい」と感じる意見もある。しかしながら、その差は微細であり、適切な研磨プロトコル(順序だてた研磨剤の使用)を踏めば十分に光沢のある表面を実現できる。ナノフィラー配合によるメリットとして、短時間で滑沢な表面が得られる点も見逃せない。実際、ラバーカップやディスクでの研磨操作に長い時間を要さずとも実用上問題ない平滑性が得られる。
審美性に関連してもう一つ注目すべきは、ユニバーサルシェード(色調選択不要)の存在である。チャームフィル フローおよびフローHVには、それぞれユニバーサルという単一色のラインナップが用意されている。このユニバーサル色は、広範な歯の色に一種類で調和することを目指したもので、実際中間的な明度・色相で多くの患者にマッチする。Omnichroma 等の革新的な一色レジンが注目を集める中、本シリーズも低コストでそのコンセプトを取り入れられる点は魅力である。ただし、ユニバーサルシェードとはいえ万能ではない。患者の歯が漂白直後のように非常に明るい場合や、逆に変色歯で暗い場合など、1色では対応しきれないケースもある。その際は従来通り近似のシェードを用意する必要があるだろう。幸いチャームフィル プラス/フローには基本シェードが揃っているため、必要最小限の在庫で大抵の症例に対応可能である。
もう一点、審美修復においては色調だけでなく、透明感やエナメル質・デンチン質の質感再現も課題となる。本シリーズはオールインワンの単層充填を想定しており、例えばエナメル用の高透明色や、切縁用のスペシャルシェードは存在しない。そのため、審美性を最優先する自由診療のダイレクトボンディングなどでは、他の多層築盛用レジンに比べ再現性の限界があるのも事実である。前歯部の大きな修復で分層築盛が必要な場合には、チャームフィルをベースにしつつ、他社のエナメル質シェードを併用するなどの工夫が考えられる。逆に言えば、保険診療で要求される「そこそこの審美性」を効率よく実現するのに特化したラインナップとも言える。適切なケース選択と技巧を施せば、患者満足度の高い自然な充填物を提供できるだろう。
長期的な色調安定性については、シリーズ全体でレジンの改良が図られており、経年的な変色耐性も高まっていると考えられる。古い世代のCRで見られた経時的な黄ばみや着色も、現在のナノハイブリッドではかなり軽減されている。チャームフィルシリーズも同様に、適切な研磨・コーティングを行えば数年単位で美観を維持できるレベルにある。
経営効率
歯科材料の選定は、単に臨床性能だけでなく、医院経営への影響も無視できない。コンポジットレジン修復は保険点数の範囲内で提供することが多く、材料コストや施術時間の積み重ねが収支に直結する。BSAサクライのレジン製品は、この「コスト・タイムパフォーマンス」の面でも優れた選択肢となりうる。
まずコスト面であるが、チャームフィル プラスの医院価格は1本(4g)あたり約1,400円と非常に手頃である。これは、同クラスのナノハイブリッドレジンとしては破格と言ってよい。大手メーカーの類似製品が1本あたり3,000~5,000円程度することを考えれば、半額以下で導入できる計算になる。例えば、月に100本のCR充填を行う医院の場合、材料費を年間で数10万円単位で圧縮できる可能性がある。もちろん安価であっても品質が低ければ再治療に伴うコスト増となるが、前述した通り本シリーズは物性・操作性ともに臨床に耐えうる水準を満たしている。したがって、「安かろう悪かろう」ではなく「安くても良いもの」を使うことで、収益性を高めつつ治療クオリティを維持できる点は大きな魅力である。
在庫管理の効率化という観点でも、BSAサクライの製品は貢献する。価格が低いため複数シェードをまとめて揃えても経済的負担が小さく、必要な色調を切らさず常備しやすい。ユニバーサルシェードを活用すれば、そもそもの在庫色数を減らし、在庫管理コストや期限切れ廃棄のリスクも下げられるだろう。また、国産メーカーの製品であるため流通も安定しており、急な欠品による診療への支障も生じにくい。仮に在庫切れになっても、国内ディーラーから迅速に取り寄せできる安心感がある。
次にタイムパフォーマンス(時間効率)である。まず、操作性の向上がそのまま時短につながるケースが多い。例えば、チャームフィル プラスは器具への付着が少ないため形成修正に手間取らず、結果的に充填に要するチェアタイム短縮に寄与する。チャームフィル フローを用いれば、複雑な窩底にもレジンを行き渡らせやすく、細かな気泡やボイドによるやり直しを減らせる。これは一つひとつは数分の差かもしれないが、積もれば大きな効率差となる。
さらに、チャームフィル フローHVのように事前に隔壁を築いたり、適度な形態を付与してから光重合できる材料は、補助的処置においても有用である。根管治療時の隔壁を素早く確実に築ければ、ラバーダム防湿や根管充填も円滑に進み、全体の治療時間短縮につながる。矯正のブラケットを装着する際も、ずれを気にせず一度で所定位置にセットできれば、微調整の手戻りが減る。
チャームコアに関して言えば、従来の手練りレジンや二回法のコア築造に比べて格段に時短が図れる。自動練和で一発練りのコア築造が可能なため、混合に要する時間や複数回積層する煩雑さがない。光照射だけでなく化学重合でも硬化が進行するため、深いポスト孔の先端まで硬化不良なく短時間でセットできるのも安心材料である。コア築造にかかる時間が短縮されれば、その分早期に支台形成~印象採得に進め、補綴治療全体の期間短縮や椅子回転率の向上につながる。
経営効率という点では、「投資対効果(ROI)が高いか」という視点も重要である。BSAサクライのレジンシリーズは初期導入コストが低く(例えば他社製品1セット購入分のコストで複数色を揃えられる)、すぐに元が取れる投資と言える。特に保険診療中心のクリニックにとって、CR充填の材料費率を下げられることは利益率改善に直結する。一方で、自費診療においても、例えば「ダイレクトボンディングによる審美修復」をメニュー化する際の材料コストを抑え、価格設定に柔軟性を持たせることができるというメリットがある。患者にとって求めやすい価格で高品質な治療を提供できれば、結果的に患者満足度向上や口コミ増にもつながり得るだろう。
総じて、BSAサクライのコンポジットレジン製品は、クリニックの日々の診療においてコスト削減と時間短縮の両面で貢献しうる、高コスパな選択肢である。その上で臨床性能が確保されている点にこそ、このシリーズを採用する価値があると言える。
製品別レビュー
上記の比較ポイントを踏まえ、BSAサクライが展開するコンポジットレジン製品それぞれについて、具体的な特徴と臨床・経営両面からの評価を述べる。自院のニーズに最も合致するのはどの製品か、イメージしながら読んでいただきたい。
チャームフィル プラス/広範な修復に対応する低収縮ナノハイブリッド
チャームフィル プラスは、う蝕処置のメインユースを想定したペーストタイプのコンポジットレジンである。1級~5級まで、前歯部から臼歯部の大きな窩洞充填にも対応可能な汎用性が特徴だ。最大の強みは、前述のように硬化収縮率が約1.2%と低い点にある。深い窩洞でも積層充填をきちんと行えば、収縮に起因するギャップ形成を最小限に抑えられるため、2次う蝕のリスク軽減が期待できる。加えて、フィラー高充填による高強度も備えており、大臼歯の咬合面修復や大きなMOD修復でも安心感がある。
操作性の面でも、チャームフィル プラスは「扱いやすい部類」に入る。ペーストは適度な粘性でベタつきが少なく、充填時にインスツルメントから素直に離れる。これは、形態を整える際にストレスが少ないことを意味する。例えば、近心壁を作ってから遠心側を充填するといったテクニックでも、隣接壁にレジンが引っ付きすぎて形が崩れるような事態が起こりにくい。また硬化後の硬さが象牙質に近いため、研磨や咬合調整の際に「削れすぎて凹む」あるいは「硬すぎてバリが残る」といったアンバランスも少ない。仕上げに時間を要さず、なめらかな咬合面が作りやすい印象である。
審美性に関しては、用意されているシェード(A2、A3、A3.5、B2)が典型的な歯の色をカバーしている。前歯部でもボディシェード1色である程度自然な色調再現が可能であり、実際、保険診療の範囲内であれば患者が見て違和感のない仕上がりとなるケースがほとんどである。もちろん、先述の通り精密な審美修復ではエナメルとデンチンの層を分けて表現する必要があるが、日常臨床でそこまで求められる場面は多くはないだろう。色のブレンド効果も良好で、周囲の歯との境界が目立ちにくい点は評価できる。
経営的視点で見ても、チャームフィル プラスは有力な選択肢だ。1本あたり1,400円程度という価格設定は、頻用するレジンとして破格である。仮に他社製品から置き換えた場合、材料費を大幅に削減できる可能性が高い。また、低価格ゆえにシェードを複数本まとめ買いしておいても在庫負担になりにくい。開業したてでコストを抑えたい先生や、保険診療中心で大量のレジンを消費する先生にとって、プラスの導入は経営効率アップに直結するだろう。
総じて、チャームフィル プラスは「オールラウンダー」として信頼できる性能を持ちながら、コストパフォーマンスに非常に優れた製品である。従来からのユーザーの評判も上々で、「多少感触に違いはあってもすぐ慣れた」「これで十分臨床に支障ない」という声が多い。初めて使う場合は、小さな窩洞で感触を確かめてから大きなケースに使ってみると良いだろう。きっと、いつも通り問題なく充填が終わる自分に気付くはずである。
こんな先生におすすめ
日々多数のCR充填を行い、とにかく材料コストを抑えたい先生。長期予後も含めて安心できる性能は確保しつつ、保険診療の利益率を上げたいと考える医院にフィットする。逆に、前歯部ダイレクトボンディングなど高度な審美症例には別途エナメル系材料との併用が望ましいが、通常の範囲ではまずプラス一本で対応可能である。
チャームフィル フロー/適合性に優れ自然な仕上がりを実現するフロアブル
チャームフィル フローは、文字通り流動性に富んだフロアブルタイプのコンポジットレジンである。小さな窩洞や複雑な形状の部位への充填で威力を発揮し、細部への適合性が極めて高い。特に、深いクラス1や2の窩底にまず薄く敷くことで、壁面との確実な密着と気泡のない土台作りが可能になる。硬化収縮率が約2.3%とフロアブルとしては低めに抑えられている点も注目で、従来懸念された「フロアブルは収縮が大きいから下層だけに…」といった制約も軽減されている。適切に積層すれば、小さな修復であればフローのみで完結させても十分な強度が期待できる。
本製品の審美的な特徴として、オパール効果(乳白色の光学特性)が挙げられる。充填物が単調に不透明にならず、周囲のエナメル質の色調を拾って自然に調和する。この効果は、特に前歯部の3級や4級で有効に働き、パッと見ではどこを修復したのかわからない仕上がりにもっていける。ラインナップとしてA2、A3、A3.5、B2の他、ユニバーサルシェードが用意されているため、多くの場合は細かな色合わせ作業なしに即座に充填に移れる。これはチェアタイム短縮にもつながり、忙しい診療の中ではありがたいポイントである。
操作性の観点では、チャームフィル フローは非常になめらかにシリンジから押し出せる。付属のディスポーザブルチップを用いて必要量を直接窩洞に流し込めるので、狭い部位にも確実に充填できる。粘度が低いため、細い隙間にも毛細管現象的によく広がり、筆や探針で突くような操作はほとんど不要だ。浅いクラス5(くさび状欠損など)では、チップ先端でそのまま形を整え、光照射して終わりというシンプルさである。一方で、流動性ゆえに大量に盛り足す用途には向かない。厚みが出ると垂れてきて形が安定しないため、大きな欠損ではベース/ライナー用途に留め、最終的な咬合面形成はペースト系に任せるのが賢明である。
経営面では、チャームフィル フローもコストメリットが大きい。2gシリンジ×2本入りで医院価格約1,700円という低価格は、一般的なフロアブル材の中でもトップクラスの安さだ。例えば「保険で多用するフロアブルのコストを抑えたい」というニーズにぴったり応える製品と言える。さらに、ユニバーサルシェードを活用すれば在庫色数を減らせるため、在庫管理もシンプルになる。実際「シェード選択不要のCRの中でも断トツのコストパフォーマンス」と評価する声もあるほどで、経営効率の観点からも導入しやすい。
チャームフィル フローは、その特性から様々なシーンで補助的な役割を果たすこともできる。根管充填後のわずかなポストスペース埋めや、クラウンマージン下の小欠損のシーリングなど、通常のペーストでは扱いにくい箇所にも流し込みやすい。歯髄保護や間接法用レジンライナーとして使うのも一手だろう。安価なので惜しみなく使える点も含め、診療の細部で活躍できる縁の下の力持ち的な存在である。
こんな先生におすすめ
小さな齲窩の充填や窩底調整にフロアブルを多用する先生。特に、小児や高齢者の浅い齲歯処置で手早く確実に充填したいケースに向く。コストを気にせず十分な量を使えるため、「フローをケチらず隅々まで行き渡らせたい」というニーズにも応える。反面、大きな修復や咬合面の再建には別途ペーストとの組み合わせが必要なので、その点の見極めができる先生向きとも言える。言い換えれば、フローを効果的に使いこなしてチェアタイム短縮を図りたいと考える先生にとって、本製品は強い味方となる。
チャームフィル フローHV/形態付与が容易な高粘度フロアブル
チャームフィル フローHV(ヘビーボディ)は、従来のフロアブルに「もう少し形を作り込みたい」というニーズに応えた製品である。粘度が高く、盛り上げても流れにくい特性を持つため、半分ペーストに近い感覚で使えるのが特徴だ。物性値(収縮率や強度)はチャームフィル フローと同等で、審美的なオパール効果も同様に備える。そのため、適応範囲としてはフローと重なる部分も多いが、HVならではの利点がいくつか存在する。
第一に、隔壁や充填形態の事前構築がしやすい点が挙げられる。例えば、大きな2級窩洞で近心壁が失われている場合、通常はマトリックスバンドを装着しペーストで一気に壁を作るか、フロアブルを流してからペーストを築盛するかなどの手順が必要だ。HVであれば、あたかもペーストのように欠損壁をレジンで築いた後、しっかり光重合してから本格的に充填を進める、といったステップを踏みやすい。流動性が低いため、築いた壁が重力で垂れることなく安定するのは大きな安心材料である。また、矯正用ブラケットの接着にも向いている。通常のフロアブルでは、ブラケットを歯面に圧接した瞬間にレジンが逃げて位置がずれることがあるが、HVなら所定の位置に留めやすい。実際に「ブラケット接着に好適」との声もあり、臨床応用範囲が広い。
操作上の注意点としては、高粘度ゆえにシリンジからの押し出しにやや力を要することがある。ただ、指先で押せないほど硬いわけではなく、少しずつ確実に圧をかければコントロールしやすい範囲だ。また、一部ユーザーから指摘があったのは「急いで押し出すと気泡が混入しやすい」点である。これはチップ内の空気を巻き込みやすいというより、粘度が高いため気泡が抜けにくいことに起因する。対策として、使用前にシリンジ先端から少量を捨ててチップ内の空気を追い出す、ゆっくり一定速度で注入するといった方法が有効だ。これらを心がければ、仕上がりに気泡が残るリスクはほぼ回避できる。
審美面では、基本的にチャームフィル フローと同じ利点を享受できる。ユニバーサルシェードもHVに用意されており、色合わせの簡便さを高粘度タイプでも享受できるのはありがたい。術者の中には「色合わせの手間が省け、しかも盛り上げやすいので、小~中規模のレジン修復はHV一本で完結する」と評価する向きもある。ただし、大きな充填ではやはりペーストとの併用が望ましい点、HV単独だと表面の形態修正にやや時間がかかる点(硬化前にあまり平滑にならしすぎると僅かに馴染んで凹凸が出ることがある)には注意したい。硬化後の研磨で十分リカバーできる範囲だが、ペーストほど表面形態がキープされない場合もあるため、最終的な形態修整時には軽い追加充填も辞さない心構えがあると良い。
コスト面では、HVも通常のフローと同価格帯である。ユニバーサルシェードについても数百円の差しかなく、「高粘度だから高額」といったハンデはない。経営効率的に見ても、用途に応じてフローとHVを使い分けても費用負担は増えない計算であり、むしろ症例に応じた適材適所で再治療リスクを下げられることを考えればプラスに働くだろう。
こんな先生におすすめ
根管治療時にレジン隔壁を頻繁に築く先生、矯正と一般診療を両立している先生、大きな窩洞でもレジンでできる限り直接修復したい先生にとって、チャームフィル フローHVは頼もしい武器になる。特に、「通常のフロアブルでは形が決まらず不満だった」という経験があるなら、一度HVを試す価値があるだろう。逆に、小さい窩洞ばかりでそもそも形態付与に困っていない場合や、全てペーストで充填してしまう習慣の先生には、HVの恩恵は感じにくいかもしれない。自院のケースで「もう少しここが楽になれば」と感じる場面にHVがマッチするなら、導入によるROIは高いと言える。
チャームコア/確実硬化と高強度を両立する支台築造用レジン
チャームコアは、支台築造(コア築造)専用に開発されたデュアルキュア型のレジンである。根管治療後のポスト&コア形成に用いることで、短時間で強固な土台を築くことができる。最大の特徴は、光照射と自己重合の両方で硬化が進行するデュアルキュアである点だ。深い根管内は光が十分届かないが、本製品なら照射できない部分も化学重合で確実に硬化するため、コアの内部が生硬(半硬化)状態で軟らかいまま残るといった失敗を防げる。臼歯部など光の減衰が大きい部位でも安心して一度に築盛でき、再感染やポスト緩みのリスク軽減につながる。
機械的強度の面でも、チャームコアは非常に優れている。圧縮強度は約300 MPa に達し、重荷重がかかっても変形・破折しにくい耐久性を有する。支台築造用材料は、築造後に咬合力・印象圧・支台形成時の切削力など様々な応力にさらされるが、その過程に十分耐えうる剛性を備えている。また、硬化後の硬度が象牙質に近いため、支台形成する際の切削感が自然でコントロールしやすい。これは地味だが重要な点で、極端に硬すぎるコア材だとエナメルとの削れ方に差が出てマージンが整えにくかったり、逆に柔らかすぎるとバーが沈んでしまい形態が狂ったりする。チャームコアはその点バランスが良く、術者にストレスを感じさせない。
操作性については、専用シリンジによる自動練和で手早く充填できる点が大きなメリットだ。触媒とレジンがミキシングチップ内で均一に混ざり合いながら出てくるので、手早く支台歯に盛り上げていける。根管内には細長いエンド用チップを付けて薬液注入器感覚でレジンを注入でき、気泡なく隅々まで行き渡らせられる。築盛時には適度に粘性があり垂れにくいため、一度成形した柱状のコアが傾いたり流れ落ちたりせず、そのままの形で固まってくれる安心感がある。ワーキングタイムも実用上十分な長さが確保されており、通常1歯のコア築造で慌てる必要はない。光を当てれば即時に表面硬化するため、その後すぐに支台形成に移行できるのも臨床的にはありがたいポイントだ。
経済性の面でも、チャームコアはコストパフォーマンスに優れる。10gが2本セットで約4,600円という価格設定は、1gあたりに換算すると230円程度に過ぎない。他社のレジンコア材と比較してもかなり安価であり、例えば1症例あたり5g使用したとしても材料費は1,150円程度となる。保険診療におけるコア築造の点数から考えても、十分採算の合う水準と言える。逆にケチって使用量を減らす必要がなく、歯質との継ぎ目をしっかり覆う十分な量を築盛できる。結果としてコアの脱離・破折リスクを下げ、再治療コストを防ぐ効果も期待できる。また、本製品はWhite(白)、Blue(青)、A3(歯牙色)の3色展開となっている。金属ポスト併用時に透過して暗く見えないよう白や青を選ぶもよし、オールレジンポストで歯と同色に仕上げたい場合はA3を選ぶもよしと、症例に応じた使い分けが可能だ。色による物性差はなく、青色は肉眼で確認しやすく、A3はオールセラミックでも透けにくいなど、それぞれ実用上のメリットがある。複数色がセットになっているわけではないので、必要な色だけ選んで導入でき、在庫負担も少ない。
こんな先生におすすめ
自院で積極的に根管治療後の支台築造を行っている先生なら、チャームコアは是非試してほしい製品である。特に、これまで手練りのレジンコアやグラスファイバーコア+デュアルレジンなどで時間と手間がかかっていた部分が、一気に効率化できる可能性が高い。ペーパーミキシング時代からの移行組はもちろん、開業準備中で初めてコア材を揃える先生にも、安価で高品質な選択肢として適している。強いて言えば、ワーキングタイム内に迅速に築盛するスキルは必要だが、慣れてしまえばそのスピード感が当たり前になるだろう。結果として、補綴までのリードタイム短縮や患者満足度向上にも貢献してくれるはずである。
よくある質問(FAQ)
Q. 保険診療で使用できますか?
A. はい。BSAサクライのコンポジットレジンは薬機法の承認を受けており、歯科用コンポジットレジン修復として保険適用で使用可能である。他のCR材料と同様に、充填処置として通常通り算定でき、患者に追加費用が発生することもない。
Q. 長期的な耐久性や変色は大丈夫でしょうか?
A. 本シリーズはナノハイブリッド型で物性が高く、適切な処置とメインテナンスのもとでは長期にわたり良好な状態を維持できると考えられる。摩耗しても表面が荒れにくくツヤが持続しやすい点は既に述べた通りである。変色についても、従来のレジンより耐色性が向上しており、数年程度で極端に色が変わるような報告はない。ただし、喫煙やカレー・赤ワインなど着色しやすい嗜好品の習慣がある場合、わずかに表面が着色する可能性はどのレジンにもある。定期的な研磨やクリーニングで美観を維持することが望ましい。
Q. チャームフィル フローとフローHVはどう使い分ければよいですか?
A. 基本的には、流動性の高いチャームフィル フローは小さな窩洞やライナー用途に適している。形態付与しやすいチャームフィル フローHVは隔壁形成やブラケット接着など形を保持したい場合に向いている。例えば、浅いクラス5や小さなクラス3ではフローで素早く充填し、近心壁の欠損が大きいクラス2ではHVで壁を作ってからプラスで本格充填するといった使い分けが考えられる。ただ実際には両者の使い道は一部重複するため、最終的には術者の好みや癖による。HVはフローに比べ流れない分、広い範囲に行き渡らせるには向かない。そのため「狭い範囲に留めたい時はHV、広く行き渡らせたい時は通常のフロー」というイメージで使い分けるとよいだろう。
Q. ユニバーサルシェード1色で本当に様々な歯に適合しますか?
A. ユニバーサルシェードは、中間的な色調と高い透過・反射バランスにより、多くの歯に違和感なく調和するよう設計されている。実際、平均的な明度の歯であれば1色でカバーできるケースが多い。ただし、全ての症例で完全に色合わせの手間がゼロになるわけではない。非常に白い歯や著しく変色した歯など、極端なケースでは専用のシェードを用いた方が審美的に優れることもある。ユニバーサルで対応困難な場合には、本シリーズのA系/B系シェードや他社のシェードを補助的に使う柔軟性も必要である。とはいえ、日常臨床ではユニバーサルがうまく適合する場面が多く、在庫管理やチェアサイドの迅速な色選択という点で大きな利点となるだろう。
Q. 接着システム(ボンディング剤)は何を使えば良いですか?
A. チャームフィルシリーズは一般的な歯科用ボンディングシステムと併用可能で、特定の接着剤しか使えないという制限はない。お手持ちのエッチング・ボンディング手順に従って処置を行い、その上に本シリーズのレジンを充填すれば問題なく接着する。もし新たにボンディング剤を検討している場合は、同じBSAサクライから発売されている「シャイニングボンド プラス」が選択肢になる。シャイニングボンド プラスはプライマー一体型のワンボトルシステムで、チャームフィルとの相性も良好である。知覚過敏抑制効果もあり使い勝手が良いと評判だ。いずれにせよ、適切なエッチングとボンディング処理が行われていれば、本シリーズの物性を発揮する強固な接着力が得られる。普段お使いの信頼できる接着システムで問題ないので、無理に変更する必要はないだろう。