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ヨシダのコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

ヨシダのコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

最終更新日

日々の診療でコンポジットレジン充填に時間がかかりすぎてはいないだろうか。充填後に「色が合わない」と患者に指摘されたり、詰め物の縁に気泡が入って再治療…そんな経験は多くの歯科医師に思い当たるはずである。臨床現場ではレジンの扱いやすさと仕上がりの美しさが医師の腕前に直結する一方で、医院経営の視点では材料コストやチェアタイムも無視できない。高価だが美しいレジンと、安価だが耐久性に不安のあるレジンのどちらを選ぶべきか、頭を悩ませる先生も多いだろう。

本記事では、ヨシダが扱う主要なコンポジットレジン製品について、臨床的なヒントと経営的戦略の両面から徹底比較する。20年以上の臨床経験に基づく率直な分析を通じて、それぞれのレジンがどんな診療スタイルの先生に合っているかを具体的に描き出す。色調選択の煩わしさを解消する最新レジンから、保険診療の強い味方となるコスト重視のレジンまで、読者の悩みを解決する指針を提示したい。最後まで読み進めれば、あなたの医院に最適な一品が見つかり、導入後の成功イメージがきっと鮮明になるはずである。

ヨシダ製コンポジットレジン主要製品の比較早見表

まず、ヨシダが販売する代表的なコンポジットレジン4製品について、臨床上の特徴と経営面のポイント、価格帯を一覧にまとめた。各製品の強みがひと目で分かるので、忙しい先生はこちらからチェックしてほしい。

製品名(タイプ)主な臨床特徴 (物性・操作性・審美性)経営面のポイント (効率・コスト)標準価格(目安)※
ア・ウーノ(ユニバーサルシェードレジン)シェード選択不要。一色でA1~D4の歯に調和し、硬化後は歯質になじむ色調になる。適度な硬さで賦形しやすく、ベタつきが少ない。フッ素徐放性があり強度も十分。ユニバーサル・ローフロー・フローと粘度違いのタイプを用意。在庫管理が簡素化(複数色の備蓄不要)。色合わせの時間短縮でチェアタイムを削減。1本で前歯から臼歯まで対応可能な汎用性が高く、材料廃棄ロスも減少。約¥2,900/4g(各種タイプ共通)
プレミス(ナノハイブリッドレジン)ナノフィラー配合のハイブリッドレジン。操作性が良くベタつかない。高い強度と低収縮を両立し、大臼歯部の咬合にも耐える。ボディ・エナメル・オペークなど複数のシェードと質感があり、審美修復では色調・透明感を細かく再現可能。研磨後の艶が長持ちしやすい。高度な審美修復に対応可能で、自費診療メニューの質を向上。複数のシェードを揃える必要があり初期投資増だが、患者満足度向上によるリピートや紹介増加が見込める。1症例あたり材料費は数百円程度で、利益率への影響は小さい。約¥3,000~¥4,000/4g(シェードにより変動)
デントクラフト ファインフィル(汎用充填用レジン)低価格ながら物性良好。曲げ強さ約145MPa、圧縮強さ約280MPaと耐久性が高く、臼歯部でも破折や摩耗が起こりにくい。明度が高い設計で1シェードでも自然な仕上がりになりやすい。研磨性にも優れ、滑沢な表面が得られプラークやステインの付着が少ない。1本あたりの価格が安く保険診療の材料コストを抑制。高強度でやり直しが減り、再充填にかかる無償修復の負担軽減に貢献。キットには接着剤も含まれており導入費用対効果が高い。長期的に修復物の予後が安定し、患者の信頼確保にもつながる。ファインフィルキット ¥26,000(4g×5本+ボンド等)単品シリンジ ¥3,300/4g
デントクラフト ファインフロー(低粘度フロアブルレジン)流れすぎず留まる絶妙な粘度のフロアブルレジン。細部まで行き渡りやすく、小窩洞や裏層に最適。インスツルメントから糸引きせず、操作ストレスが少ない。曲げ強さ約128MPa、圧縮強さ約246MPaとフローにしては高強度で、窩底や支台築造にも使用可能。9色のシェード展開で色合わせの幅も十分。小さな隙間や補綴物辺縁のシーリングに用いることで二次う蝕リスクを低減し、長期的な再治療コストを削減。充填操作の簡略化によるチェアタイム短縮効果も。必要な分だけ使えるシリンジタイプで材料ロスが少なく経済的。シリンジキット ¥11,000(2g×4本)単品シリンジ ¥3,300/2g

※標準価格は税別の医院標準価格(2025年時点)である。実際の購入価格は歯科ディーラー等との取引条件により異なる。

コンポジットレジン比較のポイント

各製品の特徴が分かったところで、次に何を基準に比較すべきかを整理する。コンポジットレジン選択の判断軸として、「物性・耐久性」「操作性」「審美性」といった臨床面の要素に加え、「経営効率(コストパフォーマンスとタイムパフォーマンス)」が重要である。それぞれの軸でヨシダ製品同士を比較し、その差が臨床結果と医院収益に与える影響を考察する。

耐久性と物性

コンポジットレジンの物性(強度・耐久性)は、修復の予後と再治療率に直結する。強度が不足すれば、詰めたレジンが数年で欠けたり摩耗したりして、無料のやり直し対応に追われることになりかねない。ヨシダの各製品を見ると、いずれも曲げ強さ・圧縮強さといった指標で高い値を示しており、臼歯部咬合面への使用にも耐えうる。

例えばデントクラフト ファインフィルは曲げ強さ約145MPaと、公表データ上は国内他社のハイブリッドレジンと同等以上の高強度である。これは咬合力の強い臼歯部でも破折が起きにくいことを意味し、修復物の長期安定に寄与する。同様にア・ウーノやプレミスもナノフィラー技術によって高い強度を確保しており、日常臨床で耐久性に不足を感じる場面は少ないだろう。デントクラフト ファインフローは低粘度ながら128MPa程度の曲げ強さを持ち、フロアブルとしては異例の健闘といえる。ただし流動性レジンは基本的に単独で大きな咬合面を修復する用途には適さないため、あくまで裏層や小範囲の補修に留め、大きな力のかかる部位ではファインフィル等のペーストレジンを併用するのが望ましい。

耐久性の高さは医院経営にもプラスである。修復物の再治療発生率が下がれば、無償修理に割く時間・材料が減り、本来の収益に繋がる新規患者の診療へと時間を充てられる。さらに、「ここの先生の詰め物は長持ちする」という評判は患者の信頼を生み、自費治療の提案も受け入れてもらいやすくなる。強度と耐久性に優れるレジンを選ぶことは、患者満足と医院の長期的利益の双方を守る戦略といえる。

操作性

次に、操作性(ハンドリング特性)の比較である。レジン充填におけるストレスの多くは、「材料がネバついて器具に絡みつく」「軟らかすぎて形態付与しにくい」「重力で垂れてくる」といった扱いづらさから生じる。操作性の良いレジンは、施術時間の短縮だけでなく、充填の確実性向上による修復物品質の安定にも寄与する。

ヨシダの各製品は操作性にも工夫が凝らされている。プレミスはメーカー発表でも「ベタつかずインスツルメント離れ良好」とされており、実際操作時に器具にまとわりついて形が崩れるといったストレスが少ない。適度な粘性を保ちつつ、盛り上げた咬頭形態が垂れずに維持できるため、思い通りのシルエットを付与しやすい。ア・ウーノも同様に賦形性に優れ、ユニバーサルタイプは詰めてもヘタらないコシがある。一方でフロータイプやローフロータイプも展開しており、必要に応じて流動性の異なるペーストを使い分けられる点がユニークだ。例えば「小さな窩洞にはローフローで隅々まで行き渡らせ、大きな咬頭部分はユニバーサルで盛り上げる」といった使い方が1銘柄内で完結できるのは、効率的である。

デントクラフト ファインフィルは硬すぎず軟らかすぎない絶妙なペースト硬度で、充填時の押し込みやすさと形態の保持を両立している。流れにくいのでマージン部から垂れてくることも少なく、深いⅡ級窩洞でもコントロールしやすい。ファインフローは名前の通り流動性があるが、「狙った箇所にピタッと留まる」粘度調整がされており、細部への適応と操作性のバランスが良い。細い隔壁や隣接面の下部への充填でも垂れたり気泡が入ったりしにくく、経験の浅い先生でも扱いやすいフロアブルといえる。

操作性の良さはダイレクトに経営効率を高める。例えばレジンが器具に付きにくければ、一箇所を何度もやり直す手間が省ける。賦形がスムーズに決まれば咬合調整や研磨に割く時間も減る。チェアタイムが1本の充填あたり数分短縮できれば、1日の診療で余裕が生まれ、追加で1人診療を受け入れることさえ可能になるかもしれない。スタッフのアシスト負担も軽くなり、院内の作業効率も向上するだろう。ストレスフリーな操作性は、医師の精神的ゆとりにも繋がり、結果として診療全体の質と生産性を上げる重要なファクターなのである。

審美性

保険診療であっても、充填物の審美性は患者の満足度を左右する。前歯部は言うに及ばず、臼歯部でも「詰め物がどこか分からない」「時間が経っても着色せずきれい」といった仕上がりは、患者に「良い治療を受けた」という実感を与える。審美性の比較では、色調適合性(周囲歯へのなじみやすさ)と研磨後の光沢・長期安定性がポイントとなる。

ア・ウーノは最大の特徴が「カモフラージュエフェクト」による色調適合性である。一色しか用意されていないにもかかわらず、充填すると不思議なほど周囲の歯質に溶け込むように見える。これはフィラーの光拡散性や樹脂の透明度を巧みに調整することで、周囲の色を拾って融合する性質を持たせているからだ。実際、術者がシェード選択に悩む時間をゼロにできる点は大きな利点である。特に「色合わせが苦手」という先生には心強い味方となるだろう。とはいえ、漂白直後の非常に明るい歯や、テトラサイクリン歯のように極端に暗い歯では1色だけではやや限界がある。そのためア・ウーノには特別なホワイトシェードやダークシェードもオプションで用意されており、必要に応じて使い分ければほぼ全ての症例をカバー可能である。硬化前と硬化後で色調が変化しない「Stタイプ」というバリエーションもあり、「硬化後の仕上がり色をイメージしながら充填したい」という美術肌の先生のニーズにも応えている。

プレミスは審美修復用途に本領を発揮する。ボディ、エナメル、オペークなど複数のシェード・質感のペーストがラインナップされており、天然歯のような多層築盛が可能だ。例えば変色歯のカバーには不透明度の高いオペークで背景を遮蔽し、その上にボディで本来の象牙質色を再現、表層はエナメルシャードで透明感を与える――といったプロセスで、レジンによるダイレクトベニヤにも対応できる。ここまでの本格的築盛は時間とテクニックを要するため、全ての症例で行うわけにはいかない。しかし「自費で前歯の色と形態をベストに治したい」という患者には、細部までこだわったレジン修復で応えることができる。プレミスの研磨後の光沢保持力は良好で、マイクロフィラーを含有することで長期に渡り艶が持続しやすい点も特徴だ。数年経っても表面がくすまず綺麗な詰め物は、患者にとって何よりの価値提供となる。

デントクラフト ファインフィルも実は審美面で抜かりがない。メーカーは「1ペーストでも審美性の高い修復が可能」と謳っており、その言葉通りA系統のシェードを中心に13色という十分な色展開がある。明度がやや高めの色設定になっているため、単色充填でも暗く沈まず、自然で明るい詰め物に仕上げやすい。また研磨性に優れる処方で、仕上げの研磨を行えば表面は滑らかに光沢が出る。興味深いのは、その滑沢な表面のおかげでプラークやステインが付きにくい点である。術後の定期検診で見ても、ファインフィルで充填した部位は茶渋などの着色が少なく感じられることが多い。これは患者にとっては「いつまでも綺麗な詰め物」であり、術者にとってはクリーニングややり直しの手間が減ることを意味する。保険診療の範囲でも日常的にこれだけの審美性が確保できれば、患者満足度は確実に上がるだろう。

ファインフローは流し込み用ではあるが9色とカラーバリエーションが豊富で、小児の隣接面や咬合点のシーラント的充填などでも周囲に馴染む色を選べるよう配慮されている。フロアブル単独で審美修復を行う場面は限られるが、わずかな段差や気泡をフローで埋めておくことで仕上がりの均一感が高まり、結果として審美性向上に繋がる。細部まで気を配った処置は口コミで語られやすく、医院の評価アップにも寄与するだろう。

経営効率

最後に、経営効率(ROI)の視点から各製品を比較する。ここまで触れてきたように、材料費そのものだけでなく1症例あたりのコストや施術時間あたりの収益を考慮することが重要である。コンポジットレジンは歯科医院において毎日のように使う消耗品だけに、その選択が積み重なれば経営に無視できない差を生む。

材料費の面では、デントクラフト ファインフィルの低価格は魅力的だ。1本あたり約3,300円(4g)と相場より安価で、しかもキットにはボンディング材やエッチング材もセットになっているため、追加購入の手間も省ける。保険診療で充填を行う場合、レジン1本でおよそ数十歯分の治療が可能であり、1歯あたりに換算すれば材料費は数十円〜百円程度に過ぎない。その意味で、レジン材料費そのものは診療報酬に対してごくわずかな割合ではある。しかし保険点数内で利益を確保するには「安くて使いやすく、失敗が少ない材料」が最適解となる。ファインフィルはまさにそのコンセプトに合致し、材料コストを抑えつつ再治療リスクも低減できるため、トータルの利益率改善に有効だ。

一方、自費診療や高度な審美治療を視野に入れるなら、プレミスのような高機能レジンへの投資は十分リターンを見込める。例えば前歯部のダイレクトボンディングを自費で行う場合、患者は仕上がりの美しさに相応の対価を支払う。その際にプレミスの多彩なシェードを駆使して天然歯同様の透明感を再現できれば、患者満足度は非常に高くなるだろう。満足した患者はリピーターとなり、さらに友人知人を紹介してくれる可能性が高い。初期費用として複数シェードを揃えるコストはかかるが、「レジンでもここまで綺麗に治せる」という医院の評判を作れれば、中長期的には新患増加や自費率アップといった形で投資回収できるはずである。ポイントは、高価な材料を活かすだけの診療単価設定や患者コミュニケーションを用意し、投資を戦略的に位置付けることである。

ア・ウーノは経営効率の点でも興味深い存在だ。まず在庫管理がシンプルになるメリットがある。通常コンポジットレジンはA系〜D系まで複数色をストックし、使う色には偏りが出るため未使用のまま有効期限を迎えるシリンジも発生しがちだ。ア・ウーノなら基本色1本(+必要なら補助的なWhite/Dark)だけで済むので、在庫廃棄ロスが大幅に減る。またシェードテイキングの手間がなくなることや、「合わなければ削って色を足し直す」といった二度手間のリスクが低いことも見逃せない。色合わせに悩んで椅子側で患者と長時間向き合うことは、見方を変えれば生産性ロスである。ア・ウーノ導入でそのプロセスを省略できれば、月単位・年単位で見れば大きな時間節約となるだろう。さらに、色調適合技術のおかげで在庫1色でも幅広く対応できるため、小規模クリニックや開業間もない医院が最小限の投資で保険レジン治療の体制を整えるには理想的な選択といえる。

ファインフローなどフロアブル材の活用も、経営効率を陰で支えてくれる。ごく少量で細部の適合性を高められるため、わずかなコスト追加で二次う蝕予防効果を高められる。これにより患者の将来的な再治療を減らし、信頼関係を強化できれば、長期的には医院の収益性向上に資するだろう。また、複雑な窩洞でもフロアブルを併用することで確実な充填が一度で決まり、追加処置やトラブル対応の時間を削減できることも経営的メリットである。

総じて、コンポジットレジン選びでは単価の安さだけに囚われず、「その材料によって生まれる時間的ゆとりや患者満足度向上」がどれだけ収益に結びつくかを考えることが大切だ。ヨシダのラインナップは各製品で臨床性能とコストのバランスが異なるため、自院の診療圏や経営目標に合致するものを戦略的に選びたい。

製品別レビュー

上記の比較ポイントを踏まえ、ここからはヨシダが扱う各コンポジットレジン製品を個別に取り上げ、客観的データに基づく強み・弱みと想定される適合タイプの歯科医師像を述べる。製品ごとの特徴をより深く理解し、自身の診療スタイルにマッチする一品を見極める参考にしてほしい。

ア・ウーノはシェード選択不要で自然調和する万能CR

ア・ウーノ(A・uno)は、「シェードガイド全A1~D4の歯に1色で適合する」という革新的コンセプトのレジンである。ヤマキン社が開発し、ヨシダが販売するこの製品は、独自のカモフラージュエフェクト技術により、充填箇所が周囲の歯質の色調と自然に同化する。実際に使用すると、術者が「この歯はA2だから…」と考えずとも適当に盛ったレジンが硬化後には周囲と違和感なく馴染んでいるという、不思議な体験をする。同時に適度な粘度と非粘着性を備え、形態修正のしやすさも良好である。臼歯部咬合も再現しやすいユニバーサルタイプ、やや流動性を高めたローフロータイプ、隅々まで流し込めるフロータイプと3種の硬さがあり、ユーザーの好みや症例に応じて選択可能だ。強度もハイブリッドレジン並みに高く、コンポジットレジン修復として一般的な2mm厚であれば十分な耐久性を示す。さらにフッ素徐放性も有しており、二次う蝕のリスク低減につながる点も見逃せない。

弱みとしては、通常1色で対応できるとはいえ極端な漂白直後の症例や変色歯では追加対策が必要なことである。しかしその対策もすでに用意されており、より明るい「ホワイト」シェードや暗い「ダーク」シェードを併用すれば、特殊な歯にも対応可能となっている。また、硬化前に色調が変化するノーマルタイプでは充填時はやや白濁した色をしているため、前歯部などで硬化後の最終色をイメージしづらいという声もある。そこは硬化前後で見た目が変わらない「Stタイプ」を選ぶことで解決できる。いずれにせよ、多少のコツは必要だが「基本1色で足りる」というメリットは計り知れず、一度使うと元の煩雑なシェードワークには戻れないというユーザーもいる。

このア・ウーノは、忙しく効率重視の先生にこそフィットする。毎日の保険診療で多数のコンポジット充填をこなすような場合、色合わせと在庫管理の手間を大幅に省ける恩恵は大きい。開業して間もなく、コストを抑えつつも最新の材料を取り入れたい先生にも向くだろう。逆に「レイヤリングテクニックで芸術的な再現を追求したい」という審美修復マニアの先生には物足りない場面もあるかもしれない。しかしそのようなケースでも、ア・ウーノをベースに微調整はステインやグレーズで行うといった割り切りも可能である。何より、患者からすれば「色が合わない」という不満が出にくくなる点で信頼獲得に直結する。テクニックや経験年数に左右されず安定した色調再現ができるア・ウーノは、まさに万能型のコンポジットレジンと言えるだろう。

プレミスは美しさと強度を兼ね備えたナノハイブリッドCR

プレミス(Premise)は、アメリカ・カボ社(旧Kerr社)のナノハイブリッドコンポジットレジンであり、ヨシダが日本国内で提供している。ナノフィラーとマイクロフィラーの複合技術により、従来のハイブリッドレジンでは難しかった高研磨性と高強度の両立を実現した製品である。具体的には、フィラー充填率が非常に高く(重量ベース約84%)、重合収縮も低く抑えられているため、大きな修復物でも歯との境目に段差ができにくい。物性の面では、曲げ強さ・圧縮強さともに他社の高強度レジンと肩を並べ、臼歯の咬頭修復や大MOD修復でも安心感がある。また、操作性の良さも評価が高いポイントだ。適度にクリーミーでベタつかず、ヘラや充填器での形態修正が思いのままに行える。そのため、細部の彫刻が要求されるようなケースでも材料由来のストレスなく作業に集中できる。

プレミス最大の特徴は、やはり審美修復におけるポテンシャルだろう。ボディ(デンチン)シェードだけでも十数色あり、必要に応じてエナメル用の半透明シェードや隠蔽用のオペークシェードも揃う。前述の通り多重積層によって天然歯さながらの再現ができ、レジン充填でありながらラミネートベニアに迫る審美性を発揮することも可能だ。とはいえ、このようなフルシェードテクニックは術者の審美眼と時間的ゆとりが求められるため、臨床現場ではケースを選ぶ。しかしプレミスの良い点は、オペーク+ボディ+エナメルのフルセットを用いずとも単色でも十分に高品質な修復が得られる汎用性にある。例えば「保険内でA2一色だけ使って充填する」という場合でも、プレミス特有の明るく透明感のある仕上がりと艶やかな研磨面が得られる。単色で用いた場合、ファインフィル等に比べ極端な差が出るわけではないが、「ボディだけでもなんとなく綺麗に見える」絶妙なマテリアル感はプレミスならではといえる。

弱点を挙げるとすれば、プレミスは多彩なラインナップゆえに管理が煩雑になる点がある。使いこなすには複数シェードを購入しておく必要があり、在庫コストや期限管理に気を遣う。また同社から後継のナノレジン(例:ハーモナイズなど)が登場していることもあり、今から導入するのであれば将来的な継続入手性について代理店に確認しておくと安心だ(執筆時点ではヨシダで入手可能)。価格も1本あたりの定価がやや高めではあるが、前述の通り1症例あたりに換算すれば微々たる差である。むしろ「高い技術を支える道具」と割り切って投資する価値があるのがプレミスだ。

このレジンは審美症例にこだわりたい先生にとって頼もしい相棒となる。例えば「前歯部のダイレクトボンディングで患者に心から満足してほしい」というケースでは、プレミスの持つ色調表現力が武器になる。研磨すればグロッシーな輝きが出るので、写真撮影して症例をPRする際にも映えるだろう。保険中心の診療でも、ワンランク上の仕上がりを密かな売りにしたい先生が導入するケースもある。実際に「保険の範囲でも目立たないよう丁寧に詰めます」といった付加価値を提供し、患者からの信頼と紹介を得ている医院も存在する。プレミスは歯科医師の美意識と探究心に応えてくれるレジンであり、その分野で医院の差別化を図りたい場合には投資する意義が大きいだろう。

デントクラフト ファインフィルは耐久性に優れコスパ良好な汎用CR

デントクラフト ファインフィル(Dentcraft Fine Fill)は、ヨシダが自社ブランドで展開する低価格・高性能の汎用コンポジットレジンである。保険診療で日常的に使いやすい材料を目指して開発されており、その特徴はまず価格の安さにある。標準的なシリンジが1本3千円ちょっとという設定は、他社の半額程度となる場合もありコスト面で大きなメリットだ。しかしファインフィルが優れているのは、安価でありながら材料性能に妥協が見られない点である。

物性データでは、曲げ強さ約145MPa・圧縮強さ約280MPaという高い強度が示されている。これは臼歯部咬合にも十分耐えうる値であり、実際に臨床でも「ファインフィルで詰めたレジンが欠けた」という話はほとんど聞かれない。適度に硬さのあるペーストだが操作時に極端なネバつきはなく、充填器で押し込んだ際に糸を引くようなことも起こりにくい。窩洞適合性も良好で、複雑な形態の窩壁にもフィットしやすい印象だ。ポキッと折れるような脆さも感じられず、むしろ程よい粘り強さがあり弾性にも富むため、咬合力による変形やマイクロクラックに耐えてくれる。

審美面でも前述の通り優秀で、単色充填でもそこそこ綺麗に仕上がる。とりわけ研磨後の表面滑沢性は価格から想像するよりはるかに良い。実際に研磨してみると、マイクロフィラー入り高級レジンほどのギラっとした輝きには及ばないものの、保険診療の範囲では十分満足できる光沢が得られる。表面が滑らかな分プラークが付きにくく、「レジン特有の経年的な黄ばみや変色が少ない」という臨床家の声もある。シェードはVITA系で13色と標準的だが、明度が高めのおかげで1色で詰めても歯全体がトーンアップしたように明るく見え、患者受けも良い。色調や透明感がシンプルな分、「あまり凝ったレイヤリングをしない」「保険でできる範囲の見た目改善をしたい」というニーズにはぴったり合う。

ファインフィルの弱みを敢えて挙げれば、プレミスのような凝った色調再現や、ア・ウーノのような色の自動適合といった特殊な機能は持たないという点である。良くも悪くも「オーソドックスなハイブリッドレジン」であり、そこに最新技術由来のサプライズはない。しかし言い換えれば、誰でも従来通りの手順で問題なく使いこなせる安心感がある。接着や表面処理についても、特殊なプライマーや専用機器を必要としないため導入ハードルは極めて低い。また、ヨシダから発売当初(2013年)から現在までロングセラーを続けており、市場での実績も十分だ。情報が少ない新製品に飛びつくのは不安…という慎重な先生にとって、ファインフィルは実績に裏打ちされた信頼できる相棒といえる。

このレジンは、保険診療を中心に効率良く診療を回したい先生に最適である。とにかくコストを抑えつつ、品質もそれなりに確保したいというニーズにマッチする。例えば1日に十数本のレジン充填を行う保険診療主体のクリニックでは、材料費の積み重ねもバカにならない。ファインフィルなら材料代を気にせず惜しみなく使え、万一気泡や形態不良でやり直しても痛手ではない。現に「多少余裕を持って多めに盛り、研磨で削り出すような使い方をしている」といった声もある。安価な分、新人歯科医師のトレーニングにも使いやすいというメリットもあるだろう。もちろん、低価格とはいえ臨床性能は確かなので、忙しい保険診療の現場で酷使されても応えてくれるタフさがある。利益率を重視しつつ、患者にも安心して長持ちする治療を提供したい――そんな医院の強い味方になるレジンである。

デントクラフト ファインフローは微小部位の充填に最適な操作性CR

デントクラフト ファインフロー(Dentcraft Fine Flow)は、上記ファインフィルの姉妹品として位置づけられる低粘度タイプの光重合コンポジットレジンである。フロアブルレジン全般に言えることだが、直接充填法において細かな隙間を埋めたり、裏層に流し込んで適合性を高めたりする用途で真価を発揮する。ファインフローは特に操作性に優れ、「狙ったところにスッと流れ、余計な所へは垂れない」という絶妙なバランスを実現している。

粘度は「ローフロー」と「フロー」の中間くらいで、一般的なフロアブルよりややしっかりしている印象だ。シリンジを押す力で量を調整しやすく、少量ずつ充填するのも容易である。また、硬化前のレジンが糸を引きにくく作られており、充填後にニップルを引き抜く際もレジンが持ち上がって空洞が生じるリスクが少ない。細かいが臨床では重要なポイントである。曲げ強さ128MPa・圧縮強さ246MPaと、物性も同クラスのフロアブル材の中では上位に入る数値だ。これにより、小さなⅠ級窩洞程度であれば単独で咬合面を形成しても問題ない耐久性を持つ。ただし基本的にはファインフィル等と併用し、下層や隙間充填に使うことが推奨される。

ファインフローの色調展開は9色で、通常のA系・B系に加えC2やOPA2(不透明色)などが用意されている。審美的に要求の高い部位では最終表層にファインフィルを使うとしても、隣接面下部など光重合器が届きにくい箇所まで確実にレジンを行き渡らせるにはフロアブルが欠かせない。ファインフローは適度なX線造影性も持ち、レントゲンで充填状態を確認しやすい点も安心できる。硬化収縮はペーストレジンよりやや大きいものの、少量使用が前提のため臨床上問題となるケースはほぼないだろう。

経営面から見ても、フロアブル材を併用することは「安い保険点数内で質を上げる工夫」として有効だ。例えばクラスⅡ修復でマトリックスとの間に微小なすき間が残りがちな場面でも、あらかじめファインフローを流し込んでおけば確実にシールできる。結果として二次う蝕の発生を抑え、詰め直しによる無収入の時間を減らせる。患者にも「虫歯をしっかり封鎖してあります」と説明すれば安心感を与えられるだろう。また、乳歯や高齢者の小さな根面う蝕修復など、ペーストでは押し込みにくいケースでも短時間で充填可能なのはチェアタイム短縮につながる。治療のスピードアップは患者の肉体的負担軽減にも直結し、医院の回転率向上と患者満足度向上を同時に達成できる。

ファインフローは、すべての歯科医院に1本常備を勧めたい隠れた功労者だ。普段ペーストレジンだけで治療している先生も、いざという時フロアブルがあると「あと一押し」が簡単にできて仕上がりがワンランク上がることを実感できるだろう。コストもさほど高くなく、1本でかなり長持ちするため費用対効果は高い。強いて言えば、粘度が絶妙に調整されている分「もっとサラサラの液状が欲しい」という用途(例えばシーラント的な応用)ではやや物足りなく感じるかもしれない。しかしその場合でも、ア・ウーノのフロータイプなどより流動性の高い製品を選べばよいだけで、ヨシダ内で代替が効く。総合すると、ファインフローは医院の裏方として治療品質を支える縁の下の力持ち的な存在であり、導入して損のない一本と言える。

よくある質問(FAQ)

Q: これらのレジンはすべて保険診療で使用できますか?
A: はい。ア・ウーノ、プレミス、デントクラフト ファインフィル/ファインフローはいずれも厚生労働省の承認を受けた歯科充填用レジンであり、保険適用材料として使用可能である。ただし保険算定上は、コンポジットレジン充填は充填箇所や歯種によって点数が決まっているため、材料の種類にかかわらず算定ルールに従った請求となる。製品ごとの差額を患者に請求することはできないので、どの製品を使っても保険点数内でやりくりする点は同じである。

Q: コンポジットレジン修復の長期予後はどの程度期待できますか?
A: 一般にコンポジットレジン修復の平均的な寿命は5〜7年程度とも言われるが、術式や咬合条件、患者の口腔衛生状態によって大きく左右される。ここで紹介したレジンは強度や封鎖性が高く、適切な接着操作と噛み合わせの調整がなされていれば10年以上良好に機能する症例も珍しくない。長期予後を伸ばすには、材料まかせにせず定期メインテナンスで研磨やチェックを行うことも重要である。今回の各製品は研磨面が滑沢に仕上がりやすくプラークも付きにくい傾向にあるため、適切に管理すれば長期にわたり審美性・機能性を維持できるだろう。

Q: フロアブルレジンは必ず併用した方が良いのでしょうか?
A: 必ずしも併用が義務というわけではないが、併用を推奨できる場面は多い。例えばⅡ級窩洞のマージン部や、ボンディング後の窩底の小さな不整にフロアブルを先に流しておくと、ペーストレジンでは埋めにくい微細な部分まで確実に適合させることができる。結果として隙間由来の二次う蝕リスクを減らし、予後の安定に寄与する。特に深い窩洞や複雑な形態では、最初に薄くフロアブルを敷いて光重合し、その上にペーストを充填すると失敗が少ない。時間に余裕がない場合は無理に使わなくても良いが、ワンランク上の確実な治療を目指すならフロアブル併用は有効と言える。

Q: ア・ウーノ1色だけで本当にどんな歯にも合うのでしょうか?
A: ア・ウーノ基本色(ベーシック)はA1〜D4までの標準的な歯の色域をカバーするよう設計されており、多くの症例で違和感のない色調調和が得られる。ただし、漂白後の非常に白い歯(シェードガイドより明度の高いケース)や、テトラサイクリン歯などの非常に暗い歯では、さすがに1色だけでは周囲と差異が出る可能性がある。そのためア・ウーノにはホワイト(明度の高い白系)とダーク(色相の濃い暗系)の補助シェードが用意されている。極端なケースではそれらを併用するか、あるいは一部に他のレジンの力を借りることも選択肢だ。基本的には95%以上の症例でベーシック1色のみで許容範囲のマッチングが得られるとの報告もあるため、日常臨床では追加シェードが不要な場面がほとんどである。

Q: プレミスを使ってみたいが、多くのシェードを全部揃える余裕がありません。ボディシェード1本だけ購入して使っても効果がありますか?
A: プレミスは単一シェードでも十分高性能なレジンとして機能する。ボディシェード(例えばA3など)1本だけでも、他の汎用レジンと比べ遜色ない強度と美しい仕上がりが得られるだろう。実際、全てのシェードを最初から購入して使いこなす必要はない。まずはよく使う色のボディシェードを導入し、日常症例で操作性や仕上がりを試してみると良い。使い勝手に慣れて効果を実感できたら、必要に応じてエナメルシェードやオペークシェードを追加購入すればよいだろう。ポイントは、自院の患者ニーズに合った範囲で無理なく活用することである。例えば前歯の色合わせに苦労するケースが多いならエナメルやオペークもあった方が良いが、臼歯中心ならボディ1本で十分という判断も合理的だ。プレミスはスモールスタートしても良さを発揮する柔軟性があるので、予算や用途に合わせ段階的に活用してほしい。