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ニッシンのコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

ニッシンのコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

最終更新日

日々の診療で、コンポジットレジン充填にこんな悩みを抱えた経験はないだろうか。例えば、小さなう蝕を充填する際にレジンが硬すぎて隅々まで行き渡らず、マージン部に気泡が入ってしまったことはないだろうか。反対に、軟らかいフロアブルレジンを使ったところ流動性が高すぎて、思わぬ所までレジンが垂れ出し扱いに苦労した――そんなジレンマに陥ることもあるはずである。

保険診療中心の忙しい現場では、こうした手間取る処置が積み重なればチェアタイムの延長につながり、収益にも影響してしまう。もっと操作性が良く、短時間で確実に充填できる材料があればと考えることもあるだろう。加えて、材料費も軽視できない。1症例あたり数百円とはいえ、塵も積もれば年間のコストとなる。品質を犠牲にせず経費を抑えられるコンポジットレジンがあれば、臨床にも経営にもプラスとなるに違いない。

ニッシンのコンポジットレジン製品ラインナップ(いわゆるニッシンのCR)は、まさにそうした現場の悩みに応えるべく用意されたものである。臼歯部から前歯部まで幅広い症例に対応するため、流動性の異なる2種類のフロアブルレジンと、歯頸部修復に適したペーストタイプのレジンが揃っている。本記事では、それら各製品の特徴を臨床的価値と経営的価値の両面から客観的に比較検討し、先生方が自身の診療スタイルに最適な材料を選択する一助となる情報を提供する。効率的かつ質の高いコンポジットレジン修復を実現し、投資対効果(ROI)の高い医院運営につなげるヒントを探っていこう。

ニッシンのコンポジットレジン製品比較早見表

まず、ニッシンが国内で展開する主要なコンポジットレジン3種類について、臨床仕様と経営面に関わるポイントを一覧表にまとめた。各製品の流動性や適応症、X線造影性の有無、色調バリエーション、価格帯を比較することで、大まかな違いを把握してほしい。

製品名種類・流動性主な用途・特徴X線造影性色調標準価格(税別)
メタフィル Flo ミディアムフロー高流動フロアブルレジン(流動性大)浅い窩洞や小窩裂溝の充填、裏層など前歯〜臼歯の微小修復全般。細い23Gニードルで狭い窩洞にもレジンが行き渡りやすい。流動性が高く複雑な形態にもフィットしやすい。あり9色(A系4色、B2、CV、D-BROWN、OPAQUE系2種)¥4,200(1.5mL〈2.6g〉)
メタフィル Flo ローフロー低流動フロアブルレジン(流動性小)流れを抑え賦形しやすい非垂れタイプ。歯頸部や近心・遠心の壁の築造、裏層への適用に適する。狙った位置にとどまりやすく、レジンが垂れやすい症例で形態付与しやすい。あり7色(A系4色、B2、CV、D-BROWN)¥4,200(1.5mL〈2.6g〉)
メタフィル Cペーストレジン(前歯・歯頸部用)ベタつかず滑らかに広がる歯頸部修復用コンポジットレジン。前歯部の中程度までの窩洞やくさび状欠損の充填に適し、研磨により高い艶を実現できる。耐摩耗性・耐衝撃性にも優れ、審美領域の長期修復に向く。なし10色(A系5色、B2・B3、C3、インサイザル、DARK BROWN)¥3,650(2.5mL〈3.5g〉)

※CV=歯頸部向けシェード、OPAQUE系=金属色や変色歯遮蔽用シェード、インサイザル=切縁部用シェード
※価格はメーカー公表の税込み標準価格を税別表記に換算(2023年時点)

上記のように、流動性の高低や色調の種類、価格設定に各製品の特徴が表れている。それでは次章から、それぞれの比較軸ごとにこれら製品の違いを掘り下げ、臨床成績や医院経営に及ぼす影響について検討していこう。

コンポジットレジンを比較する主なポイント

ニッシンのコンポジットレジン3製品を選定するにあたり、見逃せない評価軸がいくつか存在する。ここでは、臨床性能に直結する「物性・耐久性」「操作性」「審美性」に加え、医院経営に影響する「コスト・タイムパフォーマンス(経営効率)」について順に比較し、それぞれの製品が持つ強みと留意点を考察する。

物性・耐久性

コンポジットレジン修復の成功には、材料そのものの物理的特性が重要である。まず耐摩耗性や強度について見ると、ニッシンのフロアブルレジン(メタフィル Flo両製品)はナノフィラー技術の導入により機械的強度を高めている。メーカーも「前・臼歯部対応」と謳っているように、小〜中規模の窩洞であれば単独で充填しても十分な耐久性を示す設計である。ただし、大きな咬合力がかかる大規模な臼歯部修復では、流動性の高いフロアブルのみで埋めるとレジン量が多くなりすぎ、長期的な摩耗や破折リスクが増す可能性がある。そのため、フロアブルはミニマルな窩洞や裏層に留め、必要に応じて上層を他のハイブリッドレジンでカバーするなど、適材適所の使用が望ましい。適応症の範囲を守ることで、充填物の長期安定性を確保し、再治療による無収益なチェアタイム消費を防ぐことができる。

一方、メタフィル Cは歯頸部や前歯部に特化したペーストレジンであり、耐摩耗性・耐衝撃性に優れる。前歯部は直接咬合力が強くかかる部位ではないとはいえ、ブラッシング圧や外力によるチッピングなど独自の負荷がかかる。メタフィル Cはそうした応力を吸収する靭性を備え、適切に研磨すれば辺縁の欠けも生じにくい。結果として、知覚過敏を伴う歯頸部のくさび状欠損修復や、前歯の中程度のクラスIII・IV修復でも、長期にわたり形態と機能を維持しやすい。しかし本製品にはX線造影性が付与されていない点に注意が必要である。つまり、充填後のレントゲン検査でレジンの存在が写らず、二次う蝕の有無を診断しづらい可能性がある。そのためメタフィル Cは、レントゲンフォローが必要となる深い隣接面や臼歯部への使用は避け、術者の肉眼で経過観察しやすい前歯の唇側や歯頸部病変に限定するのが望ましい。このように各材料の物性と適応範囲を正しく理解し使い分けることで、充填物の長期予後を良好に保ち、患者の信頼を損なうような早期のやり直しを減らすことができる。それはひいては医院の収益ロス防止にも直結するのである。

操作性

材料ごとの操作性の違いも、臨床効率と仕上がりに大きな影響を与える。メタフィル Flo ミディアムフローは、非常に滑らかに流れる高流動タイプであり、23Gという極細ニードルから直接レジンを注入できる点が特徴である。これによりMI(ミニマルインターベンション)コンセプトの極小窩洞や、小児の乳歯のう蝕などでも、レジンが隅々まで行き渡りやすく充填漏れや気泡混入を最小限に抑えることができる。細かなリペア(例えばポーセレン冠の破損部修復)でもピンポイントにレジンを置けるため、無駄なく確実な操作が可能だ。注射器から直接充填できる手軽さは、充填操作の時間短縮にもつながっている。術者が充填器具で何度も材料を運搬・圧接する手間が省け、1処置あたりの所要時間を削減できるメリットは大きい。これは特に、一日に多数の小さなレジン充填をこなす保険診療主体のクリニックにおいて、積もり積もって診療全体の効率改善となる。また、ミディアムフローは低粘度ゆえに隅角まで自己延展し、窩壁との適合性も高い。充填後の微調整や研磨に費やす時間も減らせるため、結果的に患者の椅子への拘束時間短縮と快適性向上にも寄与するだろう。

これに対し、メタフィル Flo ローフローは「やや流れを抑えた」(低流動)タイプとして設計されている。実際に扱ってみると、注入後に材料が垂れて広がってしまうのを防ぎ、所定の位置に留まる性質が強い。例えば、歯頸部や傾斜のある窩底への充填でもレジンがジワッと流れ落ちにくく、術者の意図した形に留めやすい。近心・遠心壁が失われたII級窩洞では、本材料を用いて隔壁を築くように充填し光重合すれば、その後の積層充填が格段に容易になる。形態付与のしやすさという点で、ローフローはミディアムフローにない安心感を与えてくれる。操作中に「材料が勝手に動いてしまう」ストレスがないため、落ち着いて確実な充填操作を行えるのだ。ただし、その粘性ゆえに極めて狭い隙間への流れ込みはミディアムほど得意ではない。ニードルも付属は20Gのみであり(23Gニードルは使用不可)、微細なピットやフィッシャーシーラント用途ではミディアムフローほどの浸透力は期待できない。そのためローフローは、ある程度の窩洞の大きさがあり形態を作り込む必要がある症例で力を発揮する。一言でまとめれば「多少レジンを盛っても形が崩れず、器具で形態修正しやすいフロアブル」という性格である。操作に慎重さとこだわりを持つ術者には好ましい特性であり、結果として適合の良い修復物を得やすい。適合が良ければ二次う蝕のリスクも下がり、再処置の発生を防げる点で経営的にもプラスである。

最後にメタフィル Cだが、この材料の操作感は従来の前歯用レジンとは一線を画すものがある。まず充填器にベタつかず、スッと歯面に延ばせる滑沢性が大きな特徴である。歯頸部や隣接面の辺縁部にレジンを置く際、粘りの強い材料だと器具にくっついてせっかくの築盛部分が引き伸ばされてしまうことがある。メタフィル Cであればそうした心配が少なく、薄い層でも均一に広げやすい。これは、深いマージンを持つV級窩洞や、エナメル質が薄い歯頸部病変で特にありがたい性質である。また、本材料は重合後の研磨操作が容易で短時間で艶が出せるため、仕上げの段階での作業効率も高い。研磨器具でゴシゴシ時間をかけなくとも自然な光沢が得られやすく、患者にとっても「詰めた箇所がどこかわからない」審美的満足につながる。研磨時間の短縮はすなわちチェアタイム短縮であり、保険診療で収益を圧迫しがちな最終仕上げの工程が効率化できる意義は大きい。以上のように、各製品ごとの操作性の違いを踏まえて適切に使いこなすことで、充填操作のストレスを減らしながら高品質な修復物を短時間で提供することが可能となる。

審美性

直接修復において審美性は欠かせない評価ポイントであるが、ニッシンのコンポジットレジン各製品は必要十分な色調再現性を備えている。まず色の種類に関して、メタフィル Flo ミディアムフローは9色ものラインナップを持つ。A系の基本シェードに加え、変色歯や金属露出の遮蔽に使えるOPAQUE(不透明色)や、歯頸部特有の濃い色調を再現するCV(サービカル)など特殊色も用意されている。臨床では例えば、金属インレー除去後の窩洞で歯質が変色しているケースでも、OPAQUEシェードのFloで下地をマスキングし、その上を通常シェードで覆うといった応用が可能である。低価格帯のフロアブルながらこうした多彩な色調に対応できる点は、保険診療内でも審美性を高めたい術者にとって魅力である。また、ローフローも7色を揃えており、主要なA系シェードと歯頸部向け・高齢者向けの濃色までカバーしている。ローフローは基本的に目立たない箇所への充填がメインとなるが、それでも歯頸部や小窩洞で隣接歯に色調を合わせやすいよう配慮されている。

メタフィル Cに関しては、前歯用材料にふさわしく全10色と最も豊富なシェード展開となっている。A系(A1〜A4)やB2・B3といった基本色に加え、切縁部の透明感再現用のインサイザルシェード、さらに高齢者の歯根面う蝕修復向けのダークブラウンまで網羅する充実ぶりである。例えば、前歯の大きなクラスIV修復では、インサイザル(切縁透明色)を表層に薄く重ねることで、天然歯さながらのグラデーションを表現できる。保険診療でもここまで自然観のあるレジン修復ができれば、患者の満足度は高く医院の評価向上にもつながるだろう。

審美性という観点でもう一つ重要なのが、表面の光沢維持と色調安定性である。メタフィル Flo各製品は低吸水性の樹脂を用いることで、経年的な変色や着色汚染に強い。実際、コーヒーや茶渋による変色はレジンの吸水性と表面仕上げ状態に左右されるが、Floシリーズは表面が比較的滑沢に仕上がることも相まって、長期にわたり良好な審美性を保ちやすい傾向である。一方、メタフィル Cは研磨性に優れるため、鏡面に近い艶を出しやすく、プラークの付着や着色をさらに抑制できる。前歯部や歯頸部において充填直後の美しさが長続きすれば、患者との信頼関係も強まる。たとえば「せっかく白く詰めたのにすぐ茶色くなった」といった不満が出にくければ、リコール時にもポジティブなコミュニケーションが図れ、患者の定着や紹介にもつながりやすくなる。審美的な質の高さを維持することは、そのまま医院のブランド向上と増患効果に結び付くのである。

総じて、ニッシンのレジン製品は大手他社の審美専用レジンに匹敵する実用十分な審美性を備えつつも、価格的には抑えられている点が特筆できる。「自費材料ほど高価ではないが、保険の範囲でできる限り自然な仕上がりを追求したい」というニーズにマッチするため、患者満足度向上とコスト管理のバランスが取れた審美修復が可能になるだろう。

経営効率

最後に、材料選択が医院経営に及ぼす影響について整理しよう。ニッシンのコンポジットレジン3製品はいずれも日本製ながら比較的廉価に設定されている。標準価格ベースで見ると、フロアブル各種は1本あたり¥4,200(2.6g入り)であり、他社のナノハイブリッドレジンなどと比べて低めの価格帯に属する。メタフィル Cに至っては1本¥3,650(3.5g入り)と更に容量単価が抑えられている。大手メーカーの高機能レジンでは1本¥6,000〜¥8,000程度するものも珍しくない中、必要十分な性能を持つ材料を半額程度のコストで導入できる意義は大きい。保険診療でコンポジットレジン充填を行う場合、材料代は医院負担となるため、1症例あたりの材料コストを下げられれば利益率の改善につながる。たとえば平均的な小さな窩洞で0.1〜0.2g程度のレジンを使用すると仮定すると、メタフィル Cなら1本でおよそ20〜35歯分の充填が可能である。単純計算では1歯あたり材料費100円前後と見積もられ、これは歯科用コンポジットレジンとしてかなり低い水準である。品質に信頼がおけるならば、安価な材料を採用すること自体が医院の経費削減策となり得るわけだ。

一方で見逃せないのがタイムパフォーマンス、すなわち診療時間の効率化である。前述のとおりメタフィル Floシリーズは注入から賦形までスムーズに行えるため、従来より充填に要する時間を短縮できるケースが多い。1本あたり数分の短縮でも、1日に複数本の充填処置を行えば合計の診療可能時間に余裕が生まれる。それを追加の患者対応に充てれば収益増加につながり、休憩やカウンセリング時間に充てればスタッフの余裕が生まれサービス向上につながるだろう。また、ローフローやメタフィル Cの扱いやすさは、いわゆる「手直し」の減少にも寄与する。充填中に材料が流れ出たり、形成不良で充填し直したりするといったタイムロスが減れば、その分だけ有効な診療行為に時間を充てることができる。言い換えれば、材料の扱いやすさに投資することはムダな時間を削減する投資対効果の高い戦略といえる。

さらに、材料の選択は患者満足や自費率にも影響を及ぼす。例えば、「白くてきれいな詰め物が保険でできた」と患者が感じれば、医院の評判は自然と向上する。小さな充填でも丁寧で美しい治療を提供できれば、信頼を得て他の自費治療(セラミックやインプラントなど)への相談につながることもあるかもしれない。逆に、材料コストを気にするあまり質が劣るレジンを用いて充填のやり直しが増えては本末転倒である。その点、ニッシンのレジンはコストと品質のバランスが取れており、保険診療の範囲内で医院の収支と患者満足度の双方に貢献できる可能性が高い。高額な最新機器への投資と比べても、レジン材料の見直しはごく少額で始められる改善策であり、ROI(投資対効果)の面でも優れた取り組みといえるだろう。

以上のように、単なる材料選びと思われがちなコンポジットレジンの選定だが、その判断は診療効率や経営効率に直結している。適切な材料を適切なコストで導入し使いこなすことで、短時間で質の高い治療を提供し、患者にも医院にも利益をもたらす好循環を生み出すことが可能になるのである。

ニッシンのコンポジットレジン製品別レビュー

以上の比較ポイントを踏まえ、ここからはニッシン(製造元:サンメディカル社)の各コンポジットレジン製品について、具体的な長所・短所とどのような診療スタイルに適しているかを解説する。それぞれの製品が持つ個性を再確認し、自院で採用するか検討する際の参考にしていただきたい。

メタフィル Flo ミディアムフローは狭い窩洞にも届く高流動レジン

メタフィル Flo ミディアムフロー(以下、ミディアムフロー)は、その名が示す通り流動性の高いフロアブルタイプの光重合レジンである。他社を含め「フロアブルレジン」は様々存在するが、本製品の特長は非常に細いニードルチップ(23ゲージ)を使用できる点と、前歯から臼歯までオールマイティに使える強度を備えている点である。臨床ではMIう蝕や小さなクラスI窩洞、裏層目的のライナーなど、従来なら流れ込み不足や気泡混入が懸念されるシチュエーションで力を発揮する。実際、ミディアムフローを使うと、肉眼では確認しづらいような狭い隙間にもレジンが自発的によく広がって充填されていく印象がある。これはフィラー技術の工夫により低粘度ながら垂れにくい適度な粘性も両立しているためで、浅い窩洞やフロアブルでは充填しにくいとされていた症例にも応用範囲が広い。さらに、本製品にはX線造影性が付与されているため、充填後のフォローアップX線写真でも充填部位を容易に判別できる。これは、万一充填物の下で二次う蝕が発生した場合にも早期発見につながる利点であり、臨床的安心感を高める要素である。

経営面から見ても、ミディアムフローの存在価値は高い。まず、注入器からダイレクトに充填が完結するため、操作ステップが少なくチェアタイム短縮に寄与する。小さな窩洞であれば練和紙も充填器具も不要で、使い捨てニードルのコスト以外ほとんど経費も手間もかからない。これは、多数の小規模修復を短時間で処理し回転率を上げたい保険診療メインの開業医にとって大きな武器となる。例えば、小児の齲歯を数本まとめて治療する際にも、子供が飽きる前に素早く充填と硬化を終えられるのはミディアムフローならではである。また、補助スタッフにとっても扱いやすい材料であり、必要な色のシリンジとニードルを準備すればすぐに術者が使える状態になるためアシスト業務が簡便である。これらの効率化によって生まれた時間は、他の処置や患者対応に充てることができるため、結果として医院全体の生産性向上につながるだろう。

注意すべき点としては、やはり「高流動ゆえの扱いの難しさ」がゼロではないことである。ミディアムフローは流れやすい反面、一度に出し過ぎると窩洞から溢れるリスクがあるため、注入量のコントロールに慣れが必要である。特に隔壁のないII級窩洞で本製品を用いる場合は、マトリックスやウェッジで確実に封鎖しておかないと、レジンが染み出して隣接面にフラッシュ(余剰樹脂)を生じやすい。術式としては少量ずつ注入し、都度光照射を行う分割充填が望ましい。また、深い窩洞を一度に本製品だけで満たすと、収縮応力による辺縁漏洩や歯髄刺激のリスクが高まる可能性がある。必ず2mm程度の厚さで積層し重合する基本に忠実な手技が求められる。以上の点に留意すれば、ミディアムフローは日常臨床の強い味方となる製品である。忙しい保険診療で「とにかく手早く、小さな虫歯を確実に埋めたい」という先生には、取り入れる価値の高い一品と言えるだろう。

メタフィル Flo ローフローは形態付与しやすい非垂れタイプ

メタフィル Flo ローフロー(以下、ローフロー)は、ミディアムフローの高い流動性に対して「あえて流れを抑える」ことで独自のポジションを築いている材料である。実際にシリンジから押し出してみると、糸を引くような粘度を感じ、注入後もレジンが盛り上がった形で留まる傾向がある。この非垂れ性のおかげで、例えば歯頸部のV級窩洞では、歯肉方向へレジンがだらりと垂れて乾湿境界を汚染するリスクを減らせる。また、支台築造やクラスIIの近心・遠心壁再建にも威力を発揮する。従来、隔壁が欠損した窩洞ではマトリックスバンドを精密に適合させてもレジンが重力で下方へ垂れ、点隙が再現できないことがあった。ローフローを使えば、粘性が高いためにバンドからの垂れ出しが少なく、隣接面の輪郭をコントロールしやすい。さらに小さな築壁であればローフローのみである程度形を作り、そのまま硬化させてしまうことも可能である。そうすることで、続く本充填の際に理想的な窩洞形態が得られ、隣接面のコンタクトも良好に付与できる。要するに、ローフローは「レジンを盛って形を作る」場面に適したフロアブルなのである。

臨床家にとってこの操作感は、一度慣れると手放せないものになるだろう。特に、コンポジットレジン修復で形態修正にこだわりたい先生には打ってつけである。ミディアムフローでは流れてしまうような場面でも、ローフローならピタッと止まり思い通りの形に寄り添ってくれるため、レジン充填がまるでワックスアップのように感じられるかもしれない。その結果、充填物の形態修正や研磨にかける時間も減り、術者のストレス軽減と時短につながる。経営面では、やはり修正時間の短縮=回転率向上というメリットがあるほか、肉眼で明瞭な解剖学的形態を付与しやすいため患者への説明ツールとしても一役買うだろう。充填後の写真を患者に見せた際、隣接面や咬合面の形が自然に再現されていれば、患者はその技術に感心し医院への信頼を高めるに違いない。

もっとも、ローフローにも注意点は存在する。まず、本製品は粘度が高い分、極細のニードルでは押し出しにくい。付属ニードルが20Gのみとなっているのもそのためで、ミディアムフローのように23Gニードルで極狭小の隙間に流し込む用途には向かない。したがって、小児のシーラントや微小う蝕ではミディアムフローに譲り、ローフローはある程度スペースのある窩洞に使うという住み分けが必要である。また、垂れにくいとはいえ注入しすぎれば溢れる点は変わらず、結局のところ基本に忠実な少量積層充填が望ましい点は共通である。粘性が高い分、1回の照射で厚く硬化させすぎると収縮応力も大きくなるため注意したい。

ローフローは総合すると、「レジン充填の精度を上げたい」「形態に妥協したくない」という要求に応えてくれる製品である。保険診療中心であっても、近年は審美面・機能面の質を患者から問われる時代である。そんな中、短時間でありながら形態の整った充填物を提供できれば、患者満足度と医院の信頼度向上につながる。ローフローは、几帳面な性格の術者や丁寧な治療を売りにしたい医院にとって、費用対効果の高いパートナーとなるだろう。

メタフィル Cは歯頸部の審美修復に適した滑らかな操作性

メタフィル C(以下、メタフィルC)は、前述の2製品と性格の異なるペーストタイプの前歯・歯頸部修復用コンポジットレジンである。近年、審美修復用レジンは各社から高価な自費専用材料が出回っているが、メタフィルCは保険の範囲内で前歯部や歯頸部の審美性に配慮した治療を可能にする点で貴重な存在である。まず特筆すべきは独特の賦形性である。臨床で本材料を練ってみると、指や充填器へのベタつきが非常に少なく感じられる。まるでワックスを彷彿とさせるような滑らかな操作感で、薄い層に延ばしてもムラなく広がり、歯面にピタリと寄り添う。この特長のおかげで、歯頸部のくさび状欠損修復ではマージンが美しく適合しやすく、唇側エナメル質が薄い前歯部のIII級やIV級窩洞でも、内部までしっかりレジンを行き渡らせることができる。硬化後の研磨ではわずかなバフ掛けで輝くような艶が出るため、仕上げ作業も容易である。例えば前歯の直達修復後、ラバーカップや研磨ディスクで数十秒磨くだけで隣接歯と遜色ない光沢が得られたとき、術者としても思わず笑みがこぼれるほどである。患者から見ても、「詰め物をした箇所がまったくわからない」と感動を与えられるレベルの審美性を達成できる。

メタフィルCのこうした性能は、経営的にも見逃せないメリットとなる。まず、保険診療で対応できる範囲で患者に高い満足を提供できれば、口コミやリピートにつながりやすい。特に前歯の治療は患者の関心も高いため、「保険でもこんなに綺麗になるんだ」と驚かれれば医院の信頼度は確実に上がるだろう。また、本材料は1本あたり3.5gと内容量が多く価格も抑えめであるため、コストを気にせずふんだんに使える利点がある。例えば複数歯にまたがる大きなレジン修復でも、「材料費が高いから」と躊躇する必要がなく、結果的に妥協のない治療を提供できる。さらに、研磨や調整にかかる時間が短縮できる点もチェアタイム削減に寄与する。前歯部の充填は形態・色調合わせに時間がかかるものだが、メタフィルCはその操作性の良さから比較的スピーディに仕上げまで持っていける。言い換えれば、短時間で高品質な前歯修復が完了するため、患者一人あたりの診療効率が上がる。同じ時間でより多くの診療をこなせる、あるいは患者とのカウンセリングや説明に時間を回せるという点で、医院経営にプラスの効果をもたらす。

留意点として、メタフィルC最大の欠点はX線造影性がないことである。これは前述のとおり、使う場面を選べば大きな問題にはならないが、隣接面う蝕などレントゲン診査で追跡したいケースには不向きである。また、臼歯部など高荷重がかかる部位での使用も避けるべきだろう。そもそも適応外ではあるが、万一臼歯部に用いた場合、レジン自体は硬化後かなり硬質とはいえフィラー含有量の点で重度咬合には耐えられず、摩耗や破損を招きかねない。さらに、その残骸がレントゲンで見えないとなれば二次カリエスの発見も遅れてしまう。したがってメタフィルCは、あくまで前歯部と歯頸部専用と割り切って使うことが肝要である。この点さえ守れば、同種の前歯修復用レジンとしては極めてコストパフォーマンスが高く、万人に薦められる良材と言える。保険診療内で前歯部の審美性にこだわりたい先生や、高齢者の知覚過敏処置を効率よく行いたい先生にとって、メタフィルCは心強い選択肢となるだろう。

よくある質問(FAQ)

Q. メタフィルCはX線に写らないとのことですが、二次う蝕の発見など臨床上の不都合はないのでしょうか?
A. 確かにメタフィルC自体はX線造影性を持たないため、充填部位がレントゲン上では歯と区別できない。そのため隣接面の深いカリエスや、充填後の経過観察が必要なケースには不向きである。ただし前歯部や歯頸部の表層に限局した修復であれば、定期検診では視診や触診で十分評価可能であり、大きな支障はない。術後に術者が把握していれば問題は防げるので、カルテに使用材料を明記し管理しておくと良い。

Q. フロアブルレジンだけで大きな窩洞を一括充填しても大丈夫でしょうか?
A. 推奨できない。フロアブルは流動性が高く適合性に優れる反面、一度に大量に充填すると重合収縮や材質強度の面でデメリットが生じる。特に深く大きな窩洞では2mm程度の厚みで層状に重合を繰り返し、必要に応じて通常粘度のレジンと併用することが望ましい。フロアブル単独での一括充填は、辺縁漏洩や咬合力による破折につながる恐れがあるので避けるべきである。

Q. ニッシンのコンポジットレジンは保険診療で使えますか?
A. いずれも歯科用コンポジットレジンとして医療機器認証・承認を取得しており、保険診療で使用可能である。実際に多くの歯科医院で保険のレジン充填に用いられている。保険請求上も他のCR材料と同様に処理できるため、安心して日常診療に取り入れて問題ない。

Q. レジン充填の長期予後はどの程度期待できますか?
A. 一般にコンポジットレジン修復の寿命は症例や術式により幅があるが、小〜中規模の充填であれば適切な手技のもと5〜10年は良好に機能するケースが多いとされる。ニッシンの各レジンも物性上は他社の高品質レジンに劣らないため、適切な症例に使えば同等の耐久性が期待できる。ただし患者の口腔衛生状態や噛み合わせの力などによって左右されるため、定期的なメンテナンスとチェックは欠かさないことが肝要である。

Q. 使用するボンディング材に指定はありますか?相性の良い接着システムはどれでしょうか?
A. 特に指定はなく、普段お使いの信頼できるボンディング材で問題なく接着できる。サンメディカル社は自社製の「AQボンド」シリーズとの併用を想定しているが、シングルボンドや多用途ボンドなど一般的なエッチング・ボンディング手順で十分高い接着強さが得られる。なお、ポーセレン修復物の破損部に本レジンを用いて修復する場合は、補助的にシランカップリング剤などを使うとより確実に接着できる。基本的には通常のコンポジットレジンと同様の前処理・接着操作で良好な結果が得られるであろう。