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松風のコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

松風のコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

最終更新日

う蝕充填の現場で、「もっと歯に馴染むレジンがあれば…」と感じたことはないだろうか。充填後に周囲の歯質との色差が目立って患者に指摘されたり、レジンの収縮でマージンに白いラインが生じて悔しい思いをした経験は、多くの歯科医師に共通する悩みである。また、小児の治療では処置に時間をかけられず、操作中にレジンが垂れてしまい苦労する場面もあるだろう。そうした臨床での歯科用コンポジットレジンに関する不満は、そのまま医院経営にも影響する。例えば、充填に時間がかかればチェアタイムが延びて患者回転率が下がり、充填のやり直しが発生すれば無償再治療で収益を圧迫する。

松風の「ビューティフィル」シリーズは、そうした悩みを解決するために開発されたコンポジットレジン群である。フッ素徐放性を可能にするS-PRGフィラー技術や一括充填(バルクフィル)、シェード選択不要レジンなど、臨床現場のニーズに応える先進機能を備えつつ、医院経営の効率化にも資する特徴を持つ。本記事では、松風の代表的なコンポジットレジン製品を臨床的価値と経営的価値の両面から比較検討する。どの製品が先生の診療スタイルに適しているのか、具体的な導入後のイメージを描きながら検証していく。

比較サマリー表(早見表)

主要な松風コンポジットレジンの特徴を一覧にまとめた。臨床性能に加え、経営判断に直結するポイントとしてシェード選択の要否や一括充填の可否、価格目安も記載している。

製品名(松風)タイプシェード選択一括充填4mm価格(目安)※
ビューティフィルIIペースト必要約3,670円/4.5g
ビューティフィルII LSペースト必要約3,670円/4.0g
ビューティフィル ユニシェードペースト不要約3,820円/4.5g
ビューティフィル ユニシェード フロー流動性ペースト不要約3,390円/2.1mL
ビューティフィル ネクストペースト(ワンプッシュ)必要約3,130円/3.0g
ビューティフィル バルクペースト必要約3,560円/4.5g
ビューティフィル バルク フローフロアブル必要約3,130円/2.4g
ビューティフィル フロー プラスX (F00/F03)ハイブリッドフロアブル必要約2,800円/2.2g
ビューティフィル キッズペースト & フロアブル必要 (※)約3,020円/2.2g~3g

※価格は単品購入時の参考定価(税抜)である。ビューティフィル キッズのシェードは実質1種(乳歯用の色調)で、ペーストと2種の流動性が用意されている。

比較のポイント

コンポジットレジン選択の判断軸として、臨床面では物性・耐久性、操作性、審美性の違いが重要である。同時に医院経営の視点ではコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスが大きなポイントとなる。以下、それぞれの軸で松風レジン各種がどのように差別化されているかを解説し、その差が臨床結果と医院収益にどう影響するかを考察する。

物性・耐久性の比較

コンポジットレジン充填後の重合収縮によるギャップ発生や摩耗耐性は、補綴物の長期予後を左右する重要な物性である。松風の製品ラインナップでは、この点において製品ごとのコンセプトが分かれている。

まず重合収縮率に関して、従来型のコンポジットレジンでは体積収縮2〜3%程度が一般的で、収縮応力によるコンtractionギャップやマージンのホワイトラインが問題となりやすかった。松風のビューティフィルII LSは、三井化学と共同開発した新モノマー「ML-01」を配合することで収縮率1%以下を実現した低収縮タイプである。大きな窩洞に充填してもレジンの引張応力が封鎖域にかかりにくいため、辺縁封鎖性に優れ、充填後の二次う蝕リスクや術後疼痛の軽減が期待できる。臨床的には、深いう蝕で歯質が薄いケースや、幅広いClassII修復でマージンのシールを確実にしたいケースにおいて心強い材料である。これにより再治療の発生率低下が見込め、長期的には無償修復の削減による医院の収益安定化につながる。

一方、同じビューティフィルシリーズでもビューティフィル バルクおよびユニシェードは、収縮自体の低減よりも収縮による影響を最小化する設計を採っている。例えばユニシェードは着色顔料を最小限に抑え高い光透過性を持つため硬化深度が4mmと深く、一度の光照射で厚みのあるレジン層を確実に硬化できる。積層充填を不要にすることで、各層間の収縮ストレスの累積を避けるアプローチである。またバルク系は粒径の異なるフィラーを高充填することで全体の収縮率自体もある程度低く抑えつつ、一括充填を可能としている。これらの製品では、注意深く2mmずつ積層する手間を省略できるため、術者のスキルや注意力によるミス(隙間やレジン未重合など)の発生リスクも低減できる。結果として、修復の信頼性向上によって患者満足度が上がり、医院の評判向上や紹介患者の増加といったプラス効果も期待できる。

耐久性に関しては、レジン自体の摩耗特性と対合歯への摩耗影響が重要だ。咬耗が早い材料では補綴の寿命が短くなり、医院の保証期間内に補綴やり直しが発生すれば経済的損失となる。一方、材料が硬すぎると今度は相手のエナメル質を過剰に磨耗させてしまいトラブルになる。ビューティフィルシリーズのレジンは総じてフィラー充填率が高く高強度だが、ビューティフィルII LSはその中でも「バランスのとれた咬合磨耗性」を謳っている。試験データによれば、LSはレジン自体とエナメル質それぞれの磨耗量が少なく、長期に艶を維持できる上に対合歯も減耗させにくい。これは咬合力が強い患者やブラキシズム傾向の患者に適した特性であり、直接修復でも長く機能させやすいことを意味する。またLSやビューティフィルIIは蛍光性も天然歯に近く付与されており、経年的な変色適合や光学的特性の維持にも配慮されている。こうした耐久性の高さは、自費診療で長期保証を謳う際の裏付けにもなるため、多少材料費が高くともROI(投資対効果)の高い選択と言える。

操作性の比較

コンポジットレジンのペースト性状(粘度・流動性)や器具への付きにくさは、臨床の作業効率と仕上がり精度に直結するポイントである。松風の各レジンは用途に応じてペーストの硬さや流動性が調整されており、それがタイムパフォーマンスに大きく影響する。

まず一般的なペーストタイプであるビューティフィルIIおよびII LSは、どちらも従来品からべたつきを低減して操作性を向上させている。20年以上の臨床経験を持つ筆者の実感としても、松風レジンのペーストは適度に“もっちり”としておりスパチュラ離れが良い。器具に絡みついて引き伸ばされるストレスが少ないため、窩壁への押し付け適合もスムーズに行える。これにより細部の整形に時間を取られず、イメージ通りの形態付与が短時間で可能だ。特にマージン付近での気泡混入や、小さなインクリメンタルラインの段差などは、ペーストをこね回す時間が長いほど起こりやすいミスだが、操作性の良いペーストはそうしたやり直しリスクを減らす効果もある。結果としてチェアタイム短縮だけでなく、1日にこなせる症例数の増加やアポイントの余裕にもつながる。

一方、フロアブル(流動性)レジンの扱いやすさも見逃せない。松風のビューティフィル フロー プラスXは、独自の「ゼロフロー(F00)」「ローフロー(F03)」という2種類の粘度バリエーションを持つ点が特徴である。F00は従来のフロアブルの概念を覆す超低流動性で、シリンジから出しても全く垂れないほど粘度が高い。これにより、隔壁形成や咬頭の細かな再現を流し込むだけでなく、盛り上げて形態付与することすら可能になった。複雑な隣接壁や小窩裂溝を形作る際にペーストのように盛り上げてもズレ落ちないため、細部を器具で整える時間を大幅に短縮する。F03は適度に流れることで自然なレベリングを示し、平滑な表面を形成しやすい粘度だ。充填時に「切れ」が良く糸を引かないので、細い窩洞でも糊状に伸びず狙った位置にピンポイントで充填できる。流動タイプでありながら変形に強く硬化後の強度も高いため、小〜中規模のII級窩洞ならフロアブル単独で修復を完結できるのもこの材料の売りである。これはつまり、従来ペーストとフロアブルの二段構えで行っていた操作をフロアブル注入一発で済ませられる場面が増えることを意味する。結果として患者一人あたりの処置時間が短縮され、予約枠にゆとりが生まれる。このように、松風のフロー系レジンは「垂れないが余計な抵抗もない」絶妙なペースト性状で、スピーディかつ正確な充填操作をサポートする。時間短縮効果はスタッフのアシスト負担軽減にもつながり、医院全体のオペレーション効率アップに寄与する。

また、操作性という点では専用シリンジやチップの使い勝手も考慮すべきだろう。ビューティフィル ネクストは松風が新たに開発したワンプッシュ型シリンジを採用した製品である。従来より先端のニードルチップが細く設計され、小さな窩洞にも狙い通りにペーストを流し込める。さらにシリンジ本体を押し切るだけで1回分の適量を排出できるため、余剰なレジンを出しすぎて無駄にする心配が少ない。実際、煩雑なクラスIIの隣接壁充填などで「もう少し追加したいが出しすぎた」という経験はないだろうか。ネクストはそうした無駄を省き、材料コストの節約と手技の簡便化の両方を実現している。また松風はニードルチップ自体も改良し、金属から樹脂成型に変更した新Pニードルチップは押し出し力が約40%軽減されており、指の疲労も減って繊細な操作がしやすい。加えてチップ胴体部を薄肉化して術野が広く見えるよう工夫され、かつ装着時にしっかり締め込めてペースト漏れしにくい構造になった。これらの細かな改良は一見地味だが、毎日の診療でのストレス減少に直結する。特に短時間で多数のレジン充填をこなす開業医にとって、道具の使いやすさはそのまま作業スピードと仕上がり精度に影響するため、ネクストのような工夫は結果的に利益率の向上に貢献するだろう。

審美性の比較

審美修復としてのコンポジットレジンでは、色調適合性と表面の艶が患者満足度を大きく左右する。松風のレジンはすべて審美性に配慮した特徴を持つが、そのアプローチは製品により異なるため、自院の求めるレベルに応じた選択が重要である。

まず色調適合に関して、画期的なのがビューティフィル ユニシェードである。ユニシェードは単一のシェードであらゆる歯質に調和するよう設計されたレジンで、シェード選択そのものを不要にした点が最大の特徴だ。S-PRGフィラーの持つ光拡散性により、周囲歯面からの反射光を包含して充填部が背景と一体化するため、充填後の色ズレが非常に起こりにくい。実際に使用すると、術者がシェードガイドを手に悩む時間がゼロになるだけでなく、充填直後から境目がわからないほど自然に馴染むケースが多い。これは患者説明の場面でもメリットとなる。鏡で仕上がりを見せた際、「どこを詰めたのですか?」と言われるほど違和感のない修復物は患者に驚きと安心感を与え、医院の技術力アピールにもつながる。ただしユニシェードは周囲の色を透過・同化する設計上、もともと着色顔料が少なく半透明度が高い。そのため金属露出面や変色象牙質など下地の映り込みが懸念されるケースでは、別売の遮蔽用ブロッカーを併用する必要がある。この点さえ踏まえれば、ユニシェードは前歯部〜小臼歯部の大半の修復を1本でこなせる汎用性があり、在庫シェードを最小化できる利点も大きい。複数のシェード在庫を抱える場合、使わない色が期限切れで廃棄となる無駄コストが発生しがちだが、ユニシェード導入により材料在庫管理の手間とコストを大幅に削減できる点は経営上見逃せないメリットである。

他方、伝統的なマルチシェードによる色調再現を重視する場合はビューティフィルIIが基準となるだろう。ビューティフィルIIはA系統を中心に十数色のバリエーションが用意され、ベテランの術者であればエナメル質用・象牙質用と濁度の異なるシェードを使い分けて高度なレイヤリングも可能である。実際、ライトフィルII(旧製品)から引き続き松風レジンを愛用する歯科医もおり、その多彩な色調と安定した物性により自費の精密修復にも対応できるとの評価もある。松風レジンの特徴として全製品に天然歯類似の蛍光性が付与されているため、ブラックライト環境や写真撮影でも不自然に浮くことがない。この点は患者に見せる説明用写真や症例集のクオリティにも関わる細かな配慮だ。色調選択型のレジンは術者の美的センスと経験によって最高の審美性を引き出せる反面、シェードテイキングや築盛に時間を要するため保険診療ではオーバークオリティになりやすい。経営的には、「審美充填」を自費メニュー化している場合や、審美修復専門を標榜するクリニックでなければ、日常臨床の範囲ではユニシェードなど簡便な色調適合システムで十分患者満足が得られるケースが大半である。実際、ユニシェードを導入した開業医からは「術後の色調チェックに費やす時間が減り、その分ポリッシングや他の処置に時間を回せるようになった」という声もある。つまり、必要十分な審美性を得つつ時間配分を改善できる点で、ユニシェードのROIは高いと評価できる。

仕上げの研磨性・艶も審美性の重要要素だ。表面が滑沢で光沢がある充填物はそれだけで患者受けが良く、プラークも付きにくいため予後も良好である。松風レジンはいずれも研磨しやすく艶を出しやすいが、中でもビューティフィル フロー プラスXやユニシェード フローは未重合層を拭き取るだけで既にかなりの光沢が出るほど表面平滑性に優れる。ナノサイズのS-PRGフィラーのおかげで、簡単なラバーカップ研磨や患者の日常歯磨きでも艶が長持ちするというデータもある。高い研磨性は臼歯部レジンの短時間研磨にも寄与し、保険診療でも1歯あたりの仕上げ時間を圧縮できる。例えば、ビューティフィルII LSは短時間の研磨でも輝くうえ、たとえ経年的に表面が多少摩耗しても艶やかさを保つとされる。これにより定期メンテナンス時に毎回研磨し直す手間も減り、衛生士によるメンテナンス業務の効率化にもつながる。審美性と機能性の両立は患者満足度の向上とリコール率アップに貢献し、医院の長期的な収益増加サイクルの一翼を担う。

コストパフォーマンスの比較:材料費だけでなく運用コストまで

医院経営の視点でコンポジットレジンを評価する際は、単価の安い高いだけでなく1症例あたりの実質コストや運用に伴う隠れたコストまで考慮する必要がある。松風の各レジンの価格帯を見ると、1本あたり2,800〜3,800円程度で大きな開きはない。しかし臨床での使い方や運用効率を踏まえると、実質的なコストパフォーマンスには差が出てくる。

例えば、ビューティフィル ユニシェードは単価こそ従来品より若干高めだが、前述の通り在庫すべきシェード数を1色に集約できるためトータルでは経済的である。仮に従来A1〜A4やBW(漂白歯用)まで何色もストックしていた医院がユニシェードに切り替えた場合、在庫本数と在庫金額は大幅に減少する。また使い切れず廃棄するレジンがなくなるだけでなく、「あのシェードが切れていた」といったミスも避けられ、機会損失も防げる。これは小規模医院ほどメリットが大きく、材料ロス削減によって年間数万円単位の節約効果が期待できる。さらにシェード選択に悩む時間がなくなる分、1症例あたり数分の時短となり、それを積み重ねれば1日で数十分〜1時間の余裕が生まれる計算だ。浮いた時間で追加の処置をこなせれば収益拡大となるし、あるいは診療後の書類作業などに充ててスタッフ残業を減らすこともできる。ユニシェード導入費用はすぐに回収でき、むしろ使えば使うほど医院の利益を生む投資と言える。

ビューティフィル バルクもまた独特のコスト効果を持つ。バルク系レジン自体の価格は従来品と同程度だが、チェアタイム短縮による診療効率の向上が経済メリットとなる。保険診療下では充填1歯ごとの点数収入は決まっているため、術者の手間が減っても直接の増収にはならない。しかし、例えば通常15分かけていた大きめのコンポジット修復がバルク材で10分で完了すれば、5分の短縮は他の患者への充当や休憩時間確保に充てられる。1日に数件そうした効率化が図れれば、実質的なユニット増設と同じ効果が得られるわけだ。特に回転率重視の医院やアポイントが埋まり気味の医院では、バルク導入で診療キャパシティが上がることで患者満足度(待ち時間短縮)と医院売上の双方に貢献する。またバルクはテクニックセンシティブな積層操作が不要な分、術者間・症例間の出来栄えのバラツキが小さく、一定以上の品質を短時間で確保しやすいという利点も経営上は重要だ。院長不在時に代診の先生が治療する場合でも、ある程度安定したクオリティが期待でき、院全体の信用低下リスクを減らせるメリットがある。

ビューティフィル キッズについては、これは明確に小児診療特化のコンセプトでコスト設計も工夫されている。ペースト(3g)もフロー(2.2g)も1本あたり約3,000円強と、他製品よりやや割安に設定されている。これは乳歯の充填修復が保険点数的に低く抑えられている現状を踏まえ、コスト負担を抑えつつ短時間で処置完了できる価値を提供する意図だろう。ゼロフロー・ローフロー・ペーストの3タイプを症例に応じて使い分けることで、ラバーダム困難な幼児でも短時間で充填できる。具体的には、小窩裂溝の初期う蝕にはゼロフローで素早く充填、やや広い窩洞にはローフローで流し込み、咬合面全体に及ぶような症例ではペーストでしっかり充填という具合だ。これらを駆使すれば、患児が動いてもサッと充填を終えられ、チェアタイムの短縮と再治療リスク低減につながる。小児は診療1回あたりの利益は小さいが、治療がスムーズにいけば親御さんの医院への信頼は高まり、兄弟の紹介や予防での継続受診など将来的な収益源となる。「子どもの治療が上手な歯科医院」との評判を得ることは、周辺地域でのマーケティング上極めて有利だ。ビューティフィル キッズは単なる材料以上に、医院のブランド価値向上に貢献し得る存在であり、そのコストパフォーマンスは数字に表れない部分まで含めて大きい。

最後に、材料費そのものについて触れておくと、松風のコンポジットレジンは市場における他社製品と比べても極端に高価なものはない。ユニシェードのような特殊コンセプト品でも1本数千円程度で、例えば1症例で0.1g使用すると仮定すれば1歯あたり数十円〜百円程度のコストに過ぎない。むしろ術者の技術料や人件費のほうが遥かに高価なわけで、材料費をケチったために手間取り二度手間になるほうが損失は大きい。最終的には、材料費 < 時間コスト・信頼コストであることを念頭に、多少材料単価が上でも時間や失敗を減らせるレジンを選ぶことが、医院全体の利益を最大化することになる。

製品別レビュー:松風コンポジットレジンの特徴と適材適所

ビューティフィルII:汎用性の高いフッ素徐放性レジン

ビューティフィルIIは松風を代表する前臼歯共用コンポジットレジンである。S-PRGフィラー含有によるフッ素のリリース&リチャージ機能を備え、う蝕予防効果が期待できる点が特徴だ。実際、口腔内のフッ化物濃度が上がればフィラーがフッ素を取り込み、低下すれば放出するという可逆的な作用が確認されている。これは二次う蝕の発生リスクを低減させ、患者の長期的利益につながる重要なメリットである。また、フィラー高充填(質量比84%)による高い強度とX線不透過性(エナメル質の約1.7倍)をもち、術後のX線検査でも充填部を明確に識別できる。色調はA系統を中心に十数色と豊富で、シェードガイドも用意されているため審美修復にも応用可能だ。硬化前後での色調変化や透明度変化も少なく、築盛時に最終色をイメージしやすい点も扱いやすい。ペーストは適度な硬さでベタつきが抑えられ、従来のライトフィルシリーズから操作性が大幅に改良されている。光照射時間も短縮され(メーカー推奨条件下で10秒程度から硬化可能)、全体として使い勝手の良いオールラウンドなレジンに仕上がっている。

強み

ビューティフィルIIの強みは、何と言ってもバランスの取れた汎用性である。前歯部から臼歯部まで1本で対応でき、保険から自費まで幅広い症例で安心して使える安定感がある。フッ素徐放による二次カリエス抑制は患者説明時の説得材料にもなり、予防歯科志向の医院には魅力的だ。色調も多彩で、シェードテクニックを駆使すれば高度な審美修復も可能だ。研磨すればグロッシーな艶が出て、表面滑沢性も良好である。さらにX線造影性が高いため充填後の経過観察が容易で、術後検診時にレントゲンで充填部位を正確に把握できる安心感がある。

弱み

大きな弱点はないものの、敢えて言えば突出した特徴がない点が弱みとも言える。他の専用製品が持つような一括充填やシェードレス機能は搭載しておらず、あくまで従来型のインクリメンタル充填とシェード選択が前提となる。また、低収縮のLSやユニシェードほどの技術革新はないため、「最先端の材料を使いたい」という積極的な理由には乏しい。フッ素徐放もメリットだが定量的な予防効果をアピールしづらく、患者には伝わりにくい付加価値かもしれない。要するに、「可もなく不可もなく」な万能型ゆえに、尖った売りが必要な自費診療では他材と比較して決め手に欠ける場合もある。

導入に適した歯科医

ビューティフィルIIは、幅広い症例にオールマイティに対応したい歯科医に最適である。具体的には、「とりあえず迷ったらこのレジン」という安心感を求める先生や、開業直後で材料を絞り込みたい先生にはうってつけだ。逆に言えば、まだ症例数が少ない若手歯科医が最初の一本として導入するにも良いだろう。保険診療が中心で、複雑なラミネートベニアなどは行わないような一般開業医であれば、この1種類で日常の充填はほぼ対応可能だ。患者にもフッ素徐放の説明で予防的イメージを持ってもらえ、医院の信頼構築につながる。「迷ったらビューティフィルII」という位置付けで、欠点の少ない堅実な選択肢である。

ビューティフィルII LS:低収縮で信頼性を高めるハイブリッドレジン

ビューティフィルII LSは、ビューティフィルIIをベースに重合収縮を徹底的に低減したハイブリッドレジンである。Mitsui社と共同開発した新規モノマーにより、従来2〜3%が当たり前だった収縮率を約1%以下に抑えた点が最大の特徴だ。実際の臨床でも、充填後にマージンに生じがちなホワイトラインの発生がきわめて少なく、繊細なエナメルマージンでも安定した辺縁封鎖が期待できる。さらにLSは美的性能も高く、ビューティフィルシリーズ共通の天然歯類似の光透過性を持つため、周囲歯質との境界が目立ちにくい自然な仕上がりになる。シェード体系はビューティフィルIIと同じく複数色が用意されており、審美色調の再現も自在だ。研磨性にも優れ、短時間のポリッシングでも鏡面のような光沢が得られる。耐摩耗性に関する社内試験では、レジン自体と対合歯エナメル双方の摩耗量が少なく、長期にわたり艶やかな表面を維持するデータが示されている。つまり咬合ストレスの高いケースでもレジンが著しくすり減ったり、逆に相手歯を傷めたりしにくく、長期安定性に優れた材料と言える。

強み

LSの最大の強みは臨床結果の予測可能性が高いことである。収縮が小さい分、術者の腕や環境に左右されず常に高いシール力が得られる安心感がある。特に深いClassIIや複雑な多面窩洞で、一発勝負の充填でもポストオペ感の少ない仕上がりが期待できるのは大きい。これは医院にとって再診や補綴のやり直しリスクを抑え、保証期間内の無償修復発生を減らす財政的メリットとなる。また、高研磨・低摩耗のおかげで、経年的な表面粗造化や着色の発生が抑えられる点も強みだ。定期検診で充填部が美しく維持されていれば患者からの信頼も厚くなり、「レジンでも長持ちする」という医院の評判につながるだろう。総じてLSは、「直接充填でも妥協しない」という歯科医師の矜持を支える材料であり、高品質志向の医院経営にマッチした存在だ。

弱み

LSの弱みは、標準品に比べ価格がやや高めで内容量も少ない点である(4.0gと標準品より0.5g少ない)。1本あたり数百円の差ではあるが、保険診療主体で大量に使うと材料費が積み重なる可能性はある。また収縮低減モノマーの影響か、若干操作感が重めとの声もある。粘度自体は通常のペーストと大差ないが、フィラーも質量84%と高充填のため、繊細な修整時にはわずかに手に粘る感じがあるという報告もある。ただこれは慣れで解消するレベルで、大きな欠点ではない。審美性も十分高いが、ユニシェードのような「シェードレス」やバルクのような「一括硬化」といった派手な機能はないため、分かりやすい時短効果は生まない。要するに、品質を上げるためにコストと手技を少し増やすタイプの材料なので、保険診療の時間短縮には直接貢献しない点は留意が必要だ。

導入に適した歯科医

ビューティフィルII LSは、質にこだわる開業医に向いている。具体的には、直接充填でも可能な限り再治療なく長持ちさせたいと願う先生、自費レベルの精度を保険治療にも求める先生にマッチする。例えば、補綴の保証期間を長め(3〜5年等)に設定して患者に安心を提供している医院では、LSを使うことでトラブル発生率を下げ、保証コストを削減できるだろう。また、ミクロン単位の適合を追求するマイクロスコープデンティストや、接着修復の講師を務めるような先生にとっても、LSの低収縮は理想的な数字であり使用に値する。「直接修復で歯を守る」という信念を持つ歯科医師にとって、LSは頼もしい相棒となる。経営的にも、質の高い治療は患者の口コミやリピートに繋がり、長期的な収益増をもたらすだろう。

ビューティフィル ユニシェード:シェード選択不要の時短レジン

ビューティフィル ユニシェードは、松風独自のシェード選択不要なユニバーサル色調コンポジットレジンである。充填したレジンが周囲の歯質の色を取り込み、境界がわからなくなるほど調和するという画期的なコンセプトで、臨床ではシェードテイキングの工程を省略できるメリットがある。S-PRGフィラーの特性により光を通しつつ乱反射させることで、隣接歯面からの反射光をレジン内部に取り込み、結果として充填部が周囲と同じ色調に見える仕組みだ。特筆すべきはその硬化深度の深さで、4mm厚までの一括充填が可能となっている点である。着色顔料を減らした高透過性設計が幸いし、通常2mm程度が限界の光硬化深度が飛躍的に伸びた。これにより、ユニシェードは「シェードを選ばず、一度で詰めて、一回で硬める」という理想的な時短を実現したレジンと言える。術式的には通常の二層充填を省略できチェアタイム短縮が著しいため、特に保険診療では一歯あたりの処置時間を大幅に圧縮できる。例えばClassI小窩の充填なら、ワンシェードで材料選択の迷いなく、ペースト充填も一発、照射も一回で済むため、熟練すれば5分程度で充填〜研磨まで完了するケースもある。忙しい外来でこのスピード感は大きな武器であり、医院としてユニット回転率を上げられるメリットは計り知れない。

強み

ユニシェード最大の強みは、極限までシンプル化された臨床手技である。煩雑になりがちなレジン充填工程を劇的に省力化できるため、術者の負担軽減と時間短縮効果が抜群だ。色調調和性が高いので、仕上がりの審美性もほぼ自動的に担保され、若手歯科医でも一定の質を確保しやすい。症例写真を患者に提示すれば、「色合わせが完璧ですね」と驚かれることもあり、医院の技術力アピールにも貢献する。さらに在庫管理面でもワンシェードのみ備えれば良く、材料管理の手間・コストを大幅に削減可能だ。コスト面で言えば、ユニシェード1本で多色キット数本分の役割を果たすため、総合的には経済的である。加えて、4mm一括充填により深い窩洞でも確実な硬化が得られる安心感も見逃せない。これはレジン未硬化による失敗リスクを低減し、充填後のトラブル(レジンの脱落や劣化)を減らすことにつながる。総じてユニシェードは、臨床効率・審美性・経済性の三拍子揃った、現代開業医にとって理想的な材料の一つと言える。

弱み

ユニシェードの弱みは、適応症例の見極めが必要な点である。色調適合能力は高いが、その実現には周囲歯質からの光反射が不可欠であり、歯質がほとんど無いようなスタンプカリエスでは真価を発揮しにくい。また前述の通り、金属露出部や重度変色歯ではブロッカー(遮蔽材)の併用が要るため、完全に1本で全てをこなせるわけではない。臨床的には、中程度までのカリエスを対象と考え、症例に応じて通常レジンとの使い分けをするのが無難だ。研磨に関しても、ユニシェードは一般的なハイブリッドレジンより柔らかめのペーストであるため、強く咬む部位に使用すると経時的に表面がマットになることがある。ただし表面の艶は簡単に再付与できるレベルで大きな摩耗ではない。価格面では1本あたりの単価が他より高めなので、多数の窩洞に大量使用すると材料コストは幾分上昇するかもしれない。しかしその分を超える時短効果が得られるケースが大半であり、費用対効果は十分に良いと考えられる。

導入に適した歯科医

ユニシェードは、保険診療の効率化を図りたい開業医に強く適している。特に一日に多くのコンポジット充填を行うプラクティスや、アポイントの詰まった繁盛医院では、ユニシェード導入による生産性向上メリットが大きいだろう。「とにかく早く、しかし雑にならずに美しく」を両立したい先生にとって、これほど心強い味方はいない。また、審美修復の経験が浅い若手にも扱いやすく、院内でDr間の仕上がり品質を一定に保ちたい場合にも有効だ。患者説明の面倒なシェード合わせが不要になるため、チェアサイドコミュニケーションの負担も減り、患者回転率を重視するチェーン系クリニックなどにもフィットする。逆に、自費中心で複雑なレイヤリングにこだわる審美歯科では出番が限定されるかもしれない。しかしそうした医院でも、簡易な補修や仮充填などでユニシェードを使えば効率が上がるだろう。総じて、「早い・キレイ・簡単」の三拍子を求める先生におすすめの一材である。

ビューティフィル ユニシェード フロー:細部に行き渡る万能フロアブル

ビューティフィル ユニシェード フローは、上記ユニシェードのコンセプトを継承したシェードフリーのフロアブルレジンである。前歯部から臼歯部まで1本で対応可能で、色調はユニシェード同様に周囲歯質へ同化するためシェード選択は不要だ。特筆すべきは、そのペースト性状が従来のフロアブル概念を超える「垂れないフロー」であることだ。設計的にはビューティフィル フロープラスXのF00に近い硬めの流動性で、シリンジ先端から出しても垂直面でほぼ流下しない。このおかげで、小さなII級やV級窩洞に注入してもダラダラ流れ出ず、狙った形でそのまま充填できる。逆に、ある程度の流動性も併せ持っているため、注入後に表面はなめらかに平坦化し気泡も入りにくい。ユニシェード フローはフィラー充填率も高く(重合収縮も低値)、硬化深度は4mmと深いため、フロアブルでありながら最大4mmまで一括充填が可能である。加えて、硬化前後で透明度変化がほとんどないため、充填中に最終仕上がりの色調イメージが掴みやすい。万一、下地の透けが気になる場合にはユニシェード同様ブロッカー(ユニシェード ブロッカー フロー)を部分的に併用することで問題を解決できる。総じて、ユニシェード フローは「流し込みやすさ」「色合わせ不要」「一括硬化」という特性を兼ね備え、細部への適合性に優れたフロアブルとして設計されている。

強み

ユニシェード フローの強みは、極小窩洞や複雑な形態への適応力である。フロアブルゆえニードルチップで狭い部位に直接注入でき、なおかつ垂れないのでコントロールがしやすい。従来、例えば小さなII級窩洞ではペーストを詰めると隣接壁にうまく届かず、かと言って普通のフロアブルでは流れすぎて咬合面に溢れ出る、といったジレンマがあった。ユニシェード フローなら適度に止まり適度に広がる挙動で、こうした細かな充填を一発で決めやすい。またシェードレスであるためペースト版と同じく手技が簡略化され、短時間で審美的な仕上がりが得られる。ナノS-PRGフィラー採用で短時間研磨でも十分な艶が出るため、小さな充填なら研磨レスでも許容できるほど表面が滑沢だ。これは忙しい臨床では大きな利点で、予防充填的なシーラントやPRR(予防的レジン修復)にも応用できる。経営的には、ユニシェード フローは複雑な症例をシンプルにこなせるため、術者の経験値に関わらず一定の効率で治療を提供できる点が強みだ。複数ドクターが在籍する医院でも、誰がやっても早く綺麗に仕上がる材料は、院全体の生産性を底上げしてくれる。

弱み

ユニシェード フローの弱みは、ペーストタイプに比べて全量が少なく割高に感じられる点である(内容量2.1mLで価格はペースト版とほぼ同じ)。フロアブルはもともと単位容量あたりのコストが高めだが、本製品も例外でなく、広範囲の大きな窩洞を複数本処置する際はランニングコストが気になるかもしれない。また、物性強化されているとはいえあくまでフロアブルなので、広い咬合面全面を本材料のみで修復するのは推奨されない。耐摩耗性ではハイブリッドペーストに一歩譲るため、大臼歯咬合面など咬合力の強くかかる部位は、最後にペースト系で表面を置換したほうが安心である。この意味で、ユニシェード フロー単独ですべての症例が完結するわけではなく、ペースト版や他のバルク材との使い分けが必要になる点は留意したい。幸い色調合わせは不要なので、たとえば深部はフローで裏層して表層のみユニシェード(ペースト)で築盛、といったコンビネーションもシームレスに行える。そうした応用力を考えれば、大きな欠点とは言えないだろう。

導入に適した歯科医

ユニシェード フローは、ミニマルインターベンションを重視する歯科医やう蝕の早期発見・早期治療に取り組む歯科医院にフィットする。例えば、定期検診で初期の小さなう蝕を見つけた際に、本製品があれば即座に麻酔なしで充填修復してしまえる場面もある。シーラント感覚で処置でき、かつ色も違和感なく患者に嫌がられないため、予防プログラムの一環として取り入れることも可能だ。また、小児や高齢者など長時間の口腔開扇が難しい患者にも、フロータイプの素早い操作は有効である。保険診療下でのスピード処置と高品質維持を両立したい先生や、ユニシェードの利便性をさらに細部の処置にまで広げたい先生におすすめだ。一方、大面積の審美カリエス除去などには不向きなので、そのようなケースを主に扱う審美歯科では補助的な位置付けとなる。しかし審美歯科においても、例えばアクセスホールの充填やちょっとした補修修理などワンステップでサッと終わらせたい処置には重宝するだろう。ユニシェード フローは縁の下の力持ちとして、診療効率と患者満足度を支える頼れる相棒となる。

ビューティフィル ネクスト:無駄を省き効率化するワンプッシュレジン

ビューティフィル ネクストは、従来型のビューティフィルIIを新開発のシリンジに充填した製品である。一見スペック上はビューティフィルIIと同等の汎用レジンだが、その最大の特徴はワンプッシュタイプの細径シリンジという「器具」の革新にある。ネクストのシリンジは先端ノズルが極めて細く成形されており、小さな窩洞にも直接シリンジ先端を当ててレジンを圧入しやすい。また、シリンジを1回押し切るだけで適量が吐出される機構のため、余剰な盛り過ぎを防ぎつつ的確な量を充填可能だ。特にII級隣接窩洞の充填では、カリエス除去後のスペースが狭く深いことが多く、太いシリンジでは充填が難しくて一度パレットに出してから充填する手間があった。ネクストであれば直接シリンジで窩洞内にレジンを届けられるため、無駄な操作が減り感染リスクも下げられる(空気中に触れる時間が短い分、唾液汚染のリスクも低い)。また吐出量がコントロールされているため、出し過ぎたレジンを拭い取るロスも無く、材料歩留まりが高い。これは材料費の節約に直結するし、仮に出し過ぎて視野を乱すこともないのでやり直し時間の削減にもなる。ペースト自体はビューティフィルII譲りの優秀な物性(フッ素徐放性・高強度・良好な研磨性など)を備えており、12色のシェードバリエーションも共通だ。従って、ネクストは扱いやすさと品質のバランスが取れた汎用レジンを、より効率的なシリンジで運用するための製品と位置付けられる。

強み

ネクストの強みは、実地臨床における細かなストレスを解消してくれる点だ。例えば、大臼歯部の深い窩洞では通常ならコンポジットを器具で運搬する際に、奥まった位置に押し込むのに手間取ったり、周囲に付着して拭き取るロスが発生しがちだ。ネクストならダイレクトにレジンが届くため、そうした煩わしさが激減する。また吐出圧が軽いため、長時間の充填操作でも手指への負担が少ない。1日何十本もレジン充填を行う術者にとって、手先の疲労軽減は集中力維持とパフォーマンス向上につながる。経営的視点では、ネクストの材料ロス削減効果も見逃せない。毎回の充填で微量とはいえ余剰レジンを捨てていると、年間ではそれなりのコストになる。ネクスト導入によりそれらを極小化できれば、材料費の実質値下げと等しく、長期的には収支改善になるだろう。もちろん基本性能の高いレジンなので、患者満足度の高い充填結果も得やすい。周辺歯質と調和した色調や艶、適度な強度はビューティフィルIIゆずりで、オールラウンドに安心して使えることも経営上はリスクヘッジになる。

弱み

ネクストの弱みは、シリンジ機構以外は既存製品と大差ないため「画期的性能」という印象は薄い点である。あくまで操作系統の改善なので、たとえばバルク充填やシェードレスのように劇的な時短効果が得られるわけではない。またシリンジ形状が特殊なため、補充用のミニシリンジへの詰め替えなどはできず使い切りとなる。一般的には1本で複数症例に使えるが、残量が中途半端だと押し出しストロークの調整が難しく、早めに交換する場面も出てくるかもしれない(メーカー設計上は問題ないはずだが、感覚的な問題として)。価格も内容量3gで約3,130円と標準品に比べやや割高感がある。ただ上述のようにロスが減る分、実質コストはそれほど差がないとも考えられる。シェード選択が必要な点も踏まえると、シェードレスやバルク材には時短で及ばないため、劇的なROI改善を求める向きにはアピールが弱いかもしれない。

導入に適した歯科医

ネクストは、日常診療の細部にこだわる実直な歯科医に向いている。具体的には、毎日の充填操作で感じる小さな煩わしさ(ペーストの取り回しや余剰の処理など)を無くし、ストレスフリーに治療したいと考える先生だ。保険診療が中心でビューティフィルIIを愛用している先生にとっては、その上位互換として自然に受け入れられるはずである。また、材料ロスを嫌う几帳面な経営者タイプの先生にも適する。全ての無駄を省きたいとの信条があるなら、ネクストのシリンジは材料面でも時間面でも無駄を省いてくれる。スタッフ受けも良いだろう。細いシリンジ先端で視野が広がり、アシスタントも補助しやすい。反対に、新奇な機能を求める先生には物足りないかもしれない。とはいえ、堅実な診療効率アップを図りたいならネクストは有力な選択肢だ。「塵も積もれば山となる」ではないが、小さな効率化を積み上げて医院全体のパフォーマンスを底上げしたい医院に適した製品である。

ビューティフィル バルク:一括充填でスピード重視のポステリアレジン

ビューティフィル バルクは、臼歯部の大きな窩洞にも対応する一括充填型コンポジットレジンである。最大4mm厚までのレジンを積層せずに一度で硬化でき、チェアタイムの短縮に直結する設計が特徴だ。S-PRGフィラーを高密度に含有しつつ、粒径配列の工夫で光拡散性を高めたことで、適度な不透明度を保ちつつ深部まで光を届けることに成功している。具体的には、色調は臼歯部用に標準的な歯牙色2色(ユニバーサル系統)に絞られ、光を透過しやすいマトリックスでフィラーを包み込むことで厚みがあっても確実に硬化する。さらに低収縮モノマー技術も組み合わせ、収縮率を抑えて一括充填時のコンtractionギャップ発生を予防している。これらの結果、バルクでは4mmまで一気にレジン充填→照射というシンプルな術式で深い窩洞を素早く埋填できる。操作感はペーストタイプでありながらやや軟らかめで、窩壁へのなじみが良い。そのため、通常なら2層以上に分けて充填する中〜大規模のClassII修復でも、バルクを使えば1層で窩壁にきちんと適合する修復が可能だ。術後硬化を確認してもマージンの段差や隙間が少なく、レジン特有の収縮応力による離開が起きにくいのが実感としてある。バルクは経年的な変色も少なく、表層のみ軽く研磨しておけば自然な艶が長期間維持される。臼歯部修復に特化した時短&安定性重視のレジンとして、現在多くの臨床家が注目している。

強み

バルクの強みは何と言ってもスピードである。多層充填が不要ということは、充填操作と照射操作の回数が減り、その分ミスも減る。例えば3層で充填していたものを1層にすれば、照射回数も3回から1回だ。これは単純計算で充填・照射工程にかかる時間が1/3になることを意味する。実際には各層の操作時間も削減されるので、症例によっては半分以下の時間で処置完了できる。忙しい保険診療ではこの短縮効果は絶大で、1日に余裕で数人分の時間が生まれるだろう。また、一括充填ゆえに気泡混入やレイヤリング間の接着不良が起こらないという利点も見逃せない。充填層が一つしかないので、術者のテクニックに左右される要素が減り、結果に一貫性が出る。これは院内で複数のドクターが治療する場合に品質を均一化するのにも役立つ。経営的視点で考えると、バルク導入により保険診療の利益率が向上する可能性が高い。1歯あたりの診療報酬は同じでも、処置時間が短縮すればその分他の収益活動(例えば他の患者の処置や、説明・カウンセリング等付加価値業務)に時間を振り向けられる。つまり、ユニット1台あたりの売上生産性が上がる計算だ。さらに、バルクは一括硬化でも確実な封鎖性を示すため、充填物の予後が安定しやすい。二次う蝕や充填脱離が減れば再処置コストが下がり、保証期間内の無償修復件数も減少するだろう。バルクはコスト面でも1本約3,560円と良心的で、多層充填用に別々のフロアブルとペーストを用意するよりもコスト管理がシンプルになるメリットもある。

弱み

バルクの弱みは、前歯部など審美要求の高い部位には不向きな点である。色調が2色(および関連シェードガイド3色)と限定的で、透明感も臼歯部用に調整されているため、審美領域での色合わせは困難だ。患者の笑顔に直接見える部分では、やはりマルチレイヤリング可能な通常レジンの方が優れる。また、一括充填時にはレジン量が多いため、発熱量も相応に大きくなる。深い窩洞に一気にレジンを詰めて硬化させる際、歯髄への温度上昇リスクを指摘する声もある。ただしこれはエアーで歯冠を冷却しながら照射する、分割照射する等で対処可能で、実際トラブルはほぼ報告されていない。操作上は柔らかめのペーストとはいえ4.5gシリンジ全量を出し切るには押し出し力がやや要る印象もある。大量のペーストを一気に押し出すため、手の小さい術者には硬く感じるかもしれない。しかし一層で済むためトータルの力仕事は少ないはずだ。総じて、弱みという弱みは少ないが、審美領域をこれ1本で済ませられるわけではなく適材適所の使用が前提となる点は把握しておくべきだ。

導入に適した歯科医

バルクは、日々多数の保険レジン処置をこなす開業医にうってつけだ。具体的には、う蝕除去後の臼歯部CR充填が診療のかなりの割合を占める先生、あるいは衛生士に予防充填を任せているような場合にも有効だ。チェアタイムを短縮しつつ、充填結果も安定させたいニーズに合致する。地方開業で患者数が多く忙しい医院、あるいは人手不足で1人のDrが複数ユニットを掛け持ちして診療するスタイルの医院では、バルクの導入によって治療効率が飛躍的に改善するだろう。また、「保険の範囲でもベストを尽くす」方針の先生にとって、バルクの安定したシールは患者への約束を果たす材料となる。逆に、前歯部レジン主体の審美専門医などには用途が少ないかもしれない。しかし、そうした医院でも臼歯部の暫間修復やコア築造代用など、スピード優先の処置に使えば効果を発揮する。まとめると、保険診療の質と効率を底上げしたい一般歯科医院にバルクは非常にマッチしている。ROIの観点でも、導入コストが低く即効性のある時短効果が得られる点で、投資優先度の高い一品と言える。

ビューティフィル バルク フロー:適合性に優れた裏層用フロアブル

ビューティフィル バルク フローは、上記バルクと組み合わせて使える一括充填対応のフロアブルレジンである。最大4mmまでの厚みを一括裏層でき、深い窩底部への確実な適合と硬化を両立する目的で開発された。バルク フローは、バルクペーストよりも粘度が低く窩壁への馴染みやすさが際立っている。注入すると細かな段差にもレジンが流れ込み、気泡を巻き込みにくいため、特に複雑な窩洞形態のケースではペースト前に薄く裏層すると安心感が高い。もちろん硬化深度は4mmあり、充填した部位はそのまま最終充填として使える強度を持つ。メーカーの想定では、バルク フローのみで小〜中程度の窩洞を一括充填して完了することも可能である(必要に応じて研磨)。実際、ClassIや小さめのClassIIならバルク フロー単品でも十分な機械的強度と辺縁適合性が得られる印象だ。硬化後すぐに印象採得が可能な硬さになるため、窩洞を裏層材として満たした後、そのまま支台築造的に印象を取る用途にも使える。例えば深いクラック歯などで直接修復後にクラウン補綴する場合、バルク フローで4mm程度充填・硬化させれば、そのままファイナルインプレッションに移行できる(ユージノール系仮封材を使う必要がない)。色調はバルク同様に限定的だが適度に歯質色を持たせてあるため、裏層後に薄く残っても審美的に大きな問題は起きない。総じて、バルク フローは適合性・操作性重視のバルク対応レジンとして、単独でも補助材としても有用なフロアブルである。

強み

バルク フローの強みは、窩洞への完璧な馴染みである。サラサラしすぎず適度な粘性を持つため、窩底面に留まってじわっと広がり、隅々まで行き渡る。これにより、特に矩形に近いⅡ級窩洞の隅角部や、窩壁のアンダーカット部にもレジンの未充填エリアを残さない確実な裏層が可能だ。結果、充填後の二次う蝕リスクを極小化でき、患者にも術者にも安心感がある。また、直接ペーストでは入れにくいような微細な部位(たとえば深いグルーブの先端など)にフローを行き渡らせておけば、その後のペースト築盛も容易になる。臨床的な実際として、バルク フローで底部を満たし表層をバルクで蓋をする二層構造にすると、辺縁適合の良さと表面硬さの両取りができる。経営面では、バルク フローの存在で大きな窩洞にも迷わず短時間で対応できるため、診療効率が高まるメリットがある。従来なら非常に深いカリエスではコンポジットだけで埋めるのを躊躇し、間接法も検討するようなケースでも、バルク & バルクフローの組み合わせなら直接即日修復で乗り切れることが多い。これにより患者に複数回来院や高額負担を強いずに済み、満足度が向上する。医院としても即日治療完結率が上がればユニットを効率的に回せ、患者回転と収益性が向上する。さらに、バルク フロー自体の価格も約3,130円と手頃で、1本で多数症例に使えるためコスト負担は軽微だ。

弱み

バルク フローの弱みは、単独では表面の耐摩耗性がやや低いことである。これはフロアブル全般の宿命だが、やはり咬合面全体をフローだけで修復すると、長期的にはペースト使用時よりも摩耗しやすい傾向がある。そのため、大臼歯などの広い咬合面では最終的にバルク(ペースト)で2mm程度表層を置換するほうが望ましい。逆に、小臼歯や限局的な部位であればバルク フロー単独仕上げでも問題ないケースも多い。この見極めが必要な点が、ある意味弱点と言える。つまりバルク フローだけで全てを完結させようとすると適応が限定されるため、基本はペーストとの併用が前提になる。一括充填フローとして他社では表面硬度を上げた製品もあるが、松風はあえてバランス重視でしなやかな物性にしているため、この点は割り切る必要があるだろう。また、バルク フローも色調はユニバーサル系1色のみで、多彩なシェードニーズには応えられない。臼歯部限定の材料なので大きな問題ではないが、審美的工夫を凝らしたいケースでは不向きだ。以上のように、バルク フロー単独では弱点もあるが、それらは基本的にペースト版のバルクとのセット利用を前提とすれば解消できる。どちらか一方だけを導入するというより、両者を組み合わせて考える材料と言える。

導入に適した歯科医

バルク フローは、窩洞適合の精度を高めたい歯科医や深いう蝕にも直接治療で挑みたい歯科医に向いている。例えば、「ちょっと残った隙間にフロアブルを流しておけば良かった…」という後悔をした経験がある先生なら、最初からバルク フローで裏打ちしておくことでその不安を払拭できるだろう。深いClassIIや複雑なMOD窩洞が多い症例を扱う医院(高齢者の根面う蝕や、大臼歯の複数面う蝕など)では、バルクフローがあることで補綴に逃げずに直接修復で解決できる場面が増える。これは患者負担軽減とともに医院の技術的評価向上にもつながる。保険治療内であっても、「大きな虫歯を1日で詰めてもらえた」という患者の満足は絶大であり、口コミでの評価も高まるに違いない。経営的には、即日直接修復で対応できれば補綴に比べ治療期間が短く回転率も上がるため、売上効率は下手なクラウンより良くなることもある。以上より、保険診療での直接修復範囲を広げたいクリニックや、深いカリエスでも積極的に保存治療したいコンセプトの先生に、バルク フローはぜひ導入を検討してほしい。バルクとの組み合わせ運用で、その真価がフルに発揮されるだろう。

ビューティフィル フロー プラスX:多用途に使える高強度フロー

ビューティフィル フロー プラスXは、松風のフロアブルレジンにおけるハイエンドモデルであり、多用途利用を想定した高強度フローである。先述の通り、超低流動タイプのF00(ゼロフロー)と低流動タイプのF03(ローフロー)の2種類が用意され、築盛と充填の両方に適した粘度を選べる点が特徴だ。従来のビューティフィル フロープラス(X無し)からニードルチップが改良され、押し出し力が軽減するとともに視野の妨げにならないスリムチップに変更された。これにより、狭小部位への直接操作性がさらに向上している。物性面では、フローでありながら変形に強く硬い特性を持ち、メーカーは「臼歯部にも対応」と謳っている。実際、F03(ローフロー)は注入後に水平に近い表面を作りつつも、硬化後は高い圧縮強度を示すため、小さなⅠ級や浅いⅡ級窩洞なら補助的なペーストなしでも修復が可能だ。F00(ゼロフロー)はフロアブルで咬頭まで再現できるユニークな存在で、シリンジ先端や探針を用いて細部の解剖学的形態付与が容易にできる。このように、フロー プラスXは「流れるレジン」にありがちな用途制限を突破し、インジェクタブルなハイブリッドレジンとして幅広いケースに応用できるのが魅力だ。

強み

フロー プラスXの強みは、フロアブルの利点とペーストの利点を併せ持つことだ。流し込みができるので隅々まで行き届き、かつ硬化後はペースト並みに強い。これにより、術式の自由度が大きく広がる。例えば、通常であればペーストでしか行わなかったII級隣接壁の形態付与を、F00であれば流し込みつつ壁を作るような芸当もできてしまう。あるいは、クラスVの楔状欠損修復ではF03を使えば、レジンライナーとコンポジット充填を一度に済ませたような効率の良い充填ができる。接着操作後にそのままF03を注入・硬化し研磨すれば完了という手軽さは、保険の前歯部処置の生産性を上げるだろう。さらに、フロー プラスXは表面平滑性が高く未重合層の拭取りだけで艶が出るほどで、最終研磨も短時間で済む。経営的視点では、フロー プラスXを導入することでレジン在庫本数の削減も見込める。なぜなら、従来ならフロアブルとペースト両方買っていたところを、この製品のF00/F03二本で代替できる症例が増えるからだ。例えば、小さな虫歯〜中程度の虫歯までフロー プラスXで一貫して対応すれば、ペーストの出番を減らせて在庫最適化につながる。また、技術的に難しい症例でもこの材料ならスピーディに処置を完了しやすく、患者の肉体的・精神的負担軽減と医院の時短利益の両方を得られる。

弱み

フロー プラスXの弱みとしては、あくまで補助的立ち位置の材料であるため、これ一本ですべてを置き換えられるわけではない点が挙げられる。確かに強度は高いが、極端に大きな窩洞や、複雑で美的要求の高いケースではメインのコンポジットに置き換わることはできない。あくまで「フローとしては破格に強い・使いやすい」という位置付けなので、万能材料と誤解すると期待外れになる可能性がある。またF00は非常に硬めのペースト状であるため、シリンジを強く押し出す力が他のフロアブルより必要になる。押し出し力40%軽減とはいえ、粘度が高い分シリンジが小刻みに震えたり、押し出し途中で指が疲れて停止すると糸を引く可能性もゼロではない。実際には慣れれば問題ないが、初めはゆっくり押し出して感触を掴む必要があるだろう。価格面でも、2.2gで2,800円(税抜)と標準フローより高めだ。ただ、これも別々のフロアブルとペーストを買うよりは安くつく場面もあり、一概に弱点と言えないかもしれない。総じて、フロー プラスXはコンセプトを理解し適材適所で使えば非常に有用だが、過信は禁物という程度の弱みしか見当たらない。

導入に適した歯科医

フロー プラスXは、フロアブルを積極的に活用したい歯科医やミニマルかつシンプルな修復を追求する歯科医に適している。例えばMI治療をモットーにしており、小さな虫歯を積極的にフロアブルで治療している先生にとって、フロー プラスXはまさに求めていた性能と言える。保険診療でも出来る限り削らず最小限の切削で治すというスタイルの医院なら、この材料があることで治療の質を落とさず簡便化できるだろう。また、小規模医院で材料在庫を減らしつつ多様な症例に対応したい場合にも、本製品は強い味方となる。ペーストの出番を減らし、2種類のフローを使い分けるだけで多くのケースを完結できれば、院内オペレーションも単純化する。逆に、大規模な補綴や審美修復がメインでフロアブルの出番が少ない医院にはメリットは薄いかもしれない。しかし、たとえ審美歯科でも細かな修正や仮修復、レジンライナーとしてこの材料を用いれば効率は上がる。結局のところ、日常臨床でフロアブルの使用頻度が高い歯科医にこそフロー プラスXは価値を発揮する。多用途に使えるので投資回収も早く、導入して損のない1本だろう。

ビューティフィル キッズ:小児のための時短充填レジン

ビューティフィル キッズは、その名の通り小児の充填修復専用に開発されたコンポジットレジンである。子どもの虫歯治療では、とにかくスピードと確実性が求められる。キッズはその点を追求し、短時間での充填を可能にする3種類のペーストを揃えたユニークな製品だ。具体的には、垂れないゼロフロー、少し流れるローフロー、そして一般的なペーストタイプの3タイプが存在する。ゼロフロー(ピンクのラベル)はビューティフィル フロープラスX F00と同様に超高粘度で、意図した形でピタッと止まる特性を持つ。ローフロー(青ラベル)は適度に流動しつつ形態維持性もあるバランス型で、多少広めの窩洞でも一気に満たせる。ペースト(緑ラベル)は先端が細いワンプッシュシリンジ入りで、適量を素早く採取して充填できる。いずれのタイプもX線造影性が高く、充填後の経過観察(レントゲンチェック)でも乳歯の虫歯進行と区別しやすいよう配慮されている。色調は基本的に1種類(乳歯に調和する白っぽい色)でシェード選択不要だ。これにより子どもの治療で迷う時間をゼロにしている。総じてビューティフィル キッズは、子どもを泣かせず素早く確実に虫歯を詰めたいという現場の願いを形にした製品である。

強み

キッズの最大の強みは、子ども相手の処置時間を劇的に短縮できる点だ。例えば乳臼歯のII級窩洞でも、ゼロフローを使えば隔壁形成も短時間で行え、ローフローやペーストで即座に充填を完了できる。うまくいけば数十秒〜1分程度で充填硬化まで終えられるケースもあり、小児がぐずる前に治療が終わるメリットは計り知れない。子ども自身のストレス軽減はもちろん、保護者にも好印象を与え、医院への信頼につながる。経営的視点では、小児診療は収益単価が低い反面、その子が成長してからの長期的患者化や家族の紹介など将来の顧客基盤となる重要な分野だ。キッズを用いることで小児診療の質とスピードが上がれば、「あの歯医者さんは子どもの治療が上手」と口コミが広がり、結果的に家族ぐるみで来院してくれる患者が増えるだろう。また、ゼロフロー〜ペーストまで揃っているため、症例の大小問わず柔軟に対応できる安心感もある。乳歯はう蝕進行が早いが、キッズのレジンはどれもX線不透過性が高いため、充填後のモニタリングで再発を見逃しにくい。これは再う蝕の早期発見・早期介入を可能にし、大事に至る前に対処できる。小児歯科としての評判が上がるのはもちろん、それ以上に子どもの歯を守れたという実績が医院の信頼を盤石にする。

弱み

キッズの弱みは、適応が乳歯・小児に限られる点である。成人の充填には基本的に他の製品を使うことになるため、導入しても小児患者が少なければ活躍の機会が少ない。特にゼロフローとローフローは乳歯用色調で明度が高いため、成人の象牙質色には合わず代用は難しい。言い換えれば、小児患者が一定数来院する医院でないと元が取れない可能性はある。また、在庫として3タイプを持つ必要があるため、一見非効率にも感じられるかもしれない。ただ内容量はいずれも少なめ(2.2〜3g)なので、無駄に余らせるリスクは低い。価格も1本3千円程度と高額ではないが、3本まとめるとそれなりの初期投資にはなる。さらに、子ども相手は材料だけで全て解決とはいかない部分もあり、キッズを使ったからといって絶対に泣かせない保証があるわけではない。トレーニングの浅いスタッフに任せれば、せっかくの短時間材料も宝の持ち腐れになる可能性もあるだろう。その意味では、導入後の院内オペレーション整備が伴って初めて真価を発揮する材料と言える。

導入に適した歯科医

キッズは、小児患者を積極的に受け入れている歯科医院やファミリー層をターゲットにした医院に最適だ。例えば、「子どもの虫歯治療に自信あり」とアピールしたい小児歯科専門医や、小児から大人まで家族で通えることを売りにする一般歯科だ。院長自身が小児対応に苦手意識があるなら、この材料の力を借りることで苦手克服につながるかもしれない。実際、キッズを導入した医院では「治療時間が短くなり子どもが泣かなくなった」「親御さんにとても感謝された」という声がある。逆に、全く小児を診療しない(紹介してしまう)医院には不要だろう。また、学校歯科健診後の大量う蝕処置など、季節的に子どものCR充填が増える歯科医院にもあると便利だ。まとめると、キッズは子どもの患者を医院の成長エンジンと捉えている歯科医に薦めたい。短期的な収入よりも、将来的な医院ファン作りに重きを置く戦略において、この製品は大きな武器になるだろう。

ライトフィルII A・P:レガシーな前後分業型レジン

ライトフィルII A(前歯用)およびライトフィルII P(臼歯用)は、ビューティフィルシリーズが登場する以前から松風が提供しているコンポジットレジンである。かつては前歯部と臼歯部で分けて最適化する考えが主流であり、ライトフィルIIはその時代の製品だ。A(Anterior)は高い審美性を追求し、透明度の異なる2系統・計13色ものシェードを揃えていた。一方P(Posterior)は高い充填密度(フィラー容積率73%)と強度で咬合力に耐える設計で、色調も実用的な範囲に絞られている。蛍光性も付与されており、当時としては物性・操作性ともにバランスの取れた製品だった。現在でも販売は続けられており、古くから使い慣れた歯科医の中には指名買いする例もある。

強み

ライトフィルIIシリーズの強みは、豊富なシェード展開と確立された実績である。特にAでは、透明度の異なるエナメル・デンチン色を駆使して高度なレイヤリングが可能であり、ベテランの技工型ドクターには使いこなせば精密な色合わせができる点が評価されている。Pは高フィラー充填で強度十分、長期症例でも大きなトラブルが少なかったという安心感がある。両者とも硬化安定性や蛍光性など基本スペックは押さえており、極端な欠点がないのも長所だ。経済的にも1本あたり約3,000円程度と現行品と同水準で、導入ハードルが低い。もし開業当初からライトフィルIIを使い続けているなら、材料特性を熟知しており勝手が分かっていること自体が強みになる。

弱み

現代の視点で見ると、ライトフィルII最大の弱みは先進機能がない点である。フッ素徐放性は無く(S-PRGフィラー未搭載)、当然シェードレスやバルク硬化もできない。重合収縮率も一般的な値で、LSほどの収縮抑制効果は無い。また前後で材料を使い分ける必要があり在庫管理に手間がかかる。シェード数が多いため、色によっては使い切れず廃棄になるリスクも高い。操作性も、近年のビューティフィルシリーズと比べると粘り気が強めで器具に付きやすい傾向があるとの声もある。総じて、現在発売されている他の松風レジンと比べると、ライトフィルIIをあえて選ぶ積極的理由は乏しい。既存ユーザー以外にはやや時代遅れの感は否めず、ROIの観点でも他製品に軍配が上がるだろう。

導入に適した歯科医

新規にライトフィルIIを導入するケースは稀と思われるが、現在ライトフィルを使用中でアップデートを検討している歯科医にとっては比較対象として意識すべきだろう。長年使った素材への愛着や信頼も理解できるが、ビューティフィルシリーズへの移行で得られるメリット(フッ素徐放や時短機能など)は大きい。とはいえ、もし既にライトフィルIIで臨床成績に不満がなく、自院の診療スタイルにもマッチしているなら無理に変える必要もない。あくまで既存ユーザー継続用の製品と言える。経営戦略的には、新規開業や若手開業医があえて古い材料を選ぶメリットは少ないため、特別な理由がなければビューティフィルシリーズからニーズに合うものを選ぶ方が妥当である。

よくある質問(FAQ)

Q: 松風のコンポジットレジンはどこで購入できますか?
A: 松風の歯科材料は、全国の歯科商店やディーラーを通じて購入可能である。具体的には歯科材料店の営業担当に問い合わせるか、フィードやCiメディカル、フォルディなど主要な歯科通販サイトで注文できる。楽天市場などにも歯科専門ショップが出店しており、「管理医療機器」扱いだが歯科医師であれば購入手続きが可能だ。購入前にメーカー(松風)の営業所に連絡すればデモ依頼や最新カタログ送付も受け付けている。新製品は地域の歯科医師会や学会で展示されていることも多いので、そうした場で直接触れてみてからディーラー経由で発注するのも良いだろう。

Q: フッ素徐放性のレジンは本当に虫歯の再発を防げますか?
A: フッ素徐放性レジン(S-PRGフィラー含有)は、従来のレジンに比べれば二次う蝕のリスク低減が期待できる。ただし「完全に再発防止できる」わけではない点には注意が必要だ。口腔内におけるフッ素の放出・再取り込みにより、充填周囲の歯質が酸性に傾きにくくなる効果が報告されている。これにより脱灰抑制や再石灰化促進が働き、結果として辺縁部の虫歯進行が遅れる可能性がある。ただ、患者のプラークコントロール不良や飲食習慣によってはフッ素効果を上回る酸攻撃が起き得るため、フッ素徐放レジンを使っていても定期的なメンテナンスやフッ化物応用は引き続き重要である。要は「再発しにくい材料」ではあるが、「再発しない材料」ではないということで、過信は禁物である。とはいえ、臨床的な実感としても二次う蝕の頻度が減ったとの声はあり、費用対効果に見合うメリットは十分あると言える。

Q: バルク系レジンを使うと術後の歯髄痛が出やすいと聞きますが本当ですか?
A: 適切に使用すれば、バルク系レジンだからといって特段術後疼痛が出やすいことはない。歯髄痛の原因として考えられるのは、重合時の発熱や収縮応力による歯髄刺激である。確かに4mm一括硬化ではレジン量が多いため発熱量も増えるが、光照射を間歇的に行う・エアブロー併用で冷却するなど配慮すれば問題ない範囲に抑えられる。また松風のバルクは収縮率が低減されており、収縮応力による歯髄圧迫も起きにくい設計である。むしろ、従来の多段階充填で各層をラミネート照射していた方がトータルの発熱や収縮ストレスは大きかったという指摘もある。筆者自身の経験でも、バルクを使用して特に術後痛が増えた印象はない。ただし術前に既に深い虫歯で歯髄炎症があれば、どんな材料を使っても痛みは出る可能性があるため、診断と処置計画を適切に行うことの方が重要だ。要約すれば、「バルク材だから痛い」ということはなく、むしろバルク材を正しく使えば術後の問題は減らせるくらいである。

Q: シェード選択不要のユニシェードで本当に全ての歯に色が合いますか?
A: ユニシェードは多くの場合で周囲歯質に溶け込むように色調が合致するが、100%完全に全症例対応というわけではない。標準的なA系シェードから多少明るい漂白歯レベルまではかなり良好に同化するよう設計されている。しかし、極端に色の濃い歯(例えば高齢者の変色歯や失活歯)では、充填部がわずかに明るく白っぽく見えるケースがある。また、充填部の厚み自体が薄いと下地の影響を強く受けすぎて色が沈み込む可能性もある。メーカーも推奨しているように、そういう場合は専用の遮蔽用ブロッカーを先に置いて背景を調整すれば解決できる。実際臨床では、ユニシェード単独でほとんどのケースは満足できる色合わせとなり、術者よりも患者の方が境目に気付かないほど自然だ。ただ、審美眼の鋭い術者には稀に「硬化後にわずかに白く感じる」という指摘もあるため、絶対的な完璧さを求めるならマルチシェード充填も選択肢に残しておくべきだろう。総合的には、「通常の保険治療範囲であればシェード選択不要でほぼ問題ないが、特別難しい色調ケースでは補助が必要になることもある」という理解でいてほしい。

Q: 松風レジンは他社のボンディング剤とも併用できますか?
A: 基本的に併用可能である。松風のコンポジットレジンは、一般的なボンディングシステム(エッチング+プライマー+ボンド or セルフエッチボンド)との相性において特別な制限はない。実際、松風自身も自社製品のビューティボンドシリーズ以外に、例えば他社の一液ボンドなどを組み合わせた資料を公開している。レジンとボンドの化学的相性は、同じメーカー同士が望ましい場合もあるが、松風レジンの場合成分的に標準的なメタクリル系レジンなので汎用品なら問題なく接着する。ただし、強いて言えばS-PRGフィラーの表面処理やモノマー組成が各社で微妙に異なるため、最高のパフォーマンスを求めるならメーカー推奨の組み合わせ(例えばビューティフィル系+ビューティボンド Xtremeなど)を使うのが無難だ。いずれにせよ、特殊なプライマーが必要なわけではないので、現在お使いのボンディングをそのまま活かして松風レジンだけ導入するといったことも容易にできる。既存システムに乗せ換える際は、ボンディングの手順書に沿って適切に処理しさえすれば、接着力の低下などの問題は生じない。万一不安があれば、念のため歯科メーカーの技術相談窓口に問い合わせてみると安心だ。