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GC(ジーシー)のコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

GC(ジーシー)のコンポジットレジン製品を比較!評判や価格、購入方法は?

最終更新日

歯科用コンポジットレジンの充填操作で、「気泡でマージンが欠けてしまった」「隣在歯と色が合わず浮いて見える」といった苦い経験はないだろうか。あるいは保険診療の忙しい日々で、1本のレジン充填に時間をかけすぎて収支が合わないと感じたことがあるかもしれない。コンポジットレジン修復は、技術と材料選び次第で仕上がりも治療効率も大きく差がつく領域である。本記事では、ジーシー(GC)社の代表的なコンポジットレジンを臨床性能と経営効率の両面から徹底比較し、それぞれの客観的な強み・弱みを明らかにする。読者である臨床家自身のニーズに合った最適なレジン材料を選び抜き、患者満足度と医院のROI(投資対効果)の最大化につなげるためのヒントを提供したい。

比較サマリー:GCコンポジットレジン早見表

まず、今回取り上げるGC社の主要コンポジットレジン製品について、特徴と基本情報を一覧表にまとめる。それぞれ臨床シーンでのメリットとコスト・効率面にも着目した。

製品名(GC)主な特徴(分類)臨床メリット(適応症)希望価格目安(税抜)時短・経営効率のポイント
G-フロー ONE単一色対応のインジェクタブルレジン (流動性高)シェード選択不要。研磨が容易で変色しにくい約4,000円/3.4g(2.0mL)色合わせの手間を削減し、在庫管理も簡素化
エバーエックス フローファイバー強化型レジン(フロアブル)大きな窩洞の破折リスク低減。支台築造にも使用可約5,800円/3.7g(2.0mL)深い窩洞を一括築盛(4mm以上)し照射回数減
ジーニアル アコードナノハイブリッドレジン(5色コアシェード)前歯~臼歯を1材で修復可。耐摩耗性・色調調和性に優れる約3,700円/4.0g(2.1mL)Vita16色を5色でカバー、在庫と選択が効率的
エッセンシア2層レイヤリングシステム(7色セット)エナメル+デンチンの簡便な2層築盛で高審美を実現約6,500円/2.0mL(シリンジ1本)シェードテイキングが簡略化、高価だが自費診療向き
グレースフィル シリーズインジェクタブルレジン各種(パテ~フロー)流動性の異なる4タイプであらゆる窩洞に対応可能約2,890円/1.0mL(例:フロー)適切な粘度で充填しやすく研磨時間も短縮
グレースフィル バルクフロー一括充填用フロー(厚み4mm硬化)4mmまで一括充填可能。深部への確実な充填と気泡低減約4,950円/2.0mL(シリンジ1本)レジン層を一度で築盛でき、チェアタイム短縮
グラディア ダイレクトマルチシェード対応ハイブリッドレジン豊富なシェード・エフェクトで自然感を再現可能約3,000円/4.7g(標準シリンジ)※症例に応じ保険~自費まで柔軟に使えるが築盛に時間
ソラーレ / ソラーレP前歯用マイクロフィラー / 臼歯用ハイブリッドソラーレは高艶仕上げ可能。Pは耐久性重視で臼歯適応約3,500円/4g(ソラーレ)※前後で材料分け専門特化。現在は後継品に移行傾向

※価格は発売時の希望医院価格(税抜)の一例です。実売価格はディーラー等で変動します。またグラディアダイレクトやソラーレは旧製品につき在庫状況によって入手価格が変わる可能性があります。

コンポジットレジンの物性・耐久性を比較

コンポジットレジンの物性(フィラー含有量や強度)と耐久性は、修復の長期予後を左右する重要な要素である。GC各製品の中でも、新世代のナノハイブリッドやファイバー強化型レジンは物性向上が顕著である。

まず耐摩耗性について見ると、ナノハイブリッド系の「ジーニアル アコード」は従来品より磨耗しにくく、咬合面での長期安定性が期待できるとされている。実際、メーカーの社内試験ではアコードの咬耗量は低く抑えられており、保険で頻用される後継材料として十分な耐久性を持つと示唆されている。これは臼歯部咬合面のレジン充填でも再修復頻度を下げ、長期的な再治療コスト削減につながる可能性がある。

一方、破折リスクへの耐性では「エバーエックス フロー」が突出している。短いグラスファイバーを配合した特殊レジンで、従来レジンの数倍の破壊靭性を示す。象牙質に近い弾性率も持つため、大きな修復において歯質と一体化して力を分散し、歯や充填物そのものの破折を防ぐ狙いがある。例えば大きなう蝕で歯質が薄くなった臼歯のⅡ級窩洞修復では、エバーエックス フローを底部に用いることで「ひび割れからの破折」や「充填後すぐの破損」のリスクを低減できる。このように重度崩壊歯でも直接修復を諦めずに済む点は、患者にとってクラウンを回避できるメリットであり、医院にとっても補綴物費用を抑えつつ信頼性を高める戦略となる。

レジンの硬化深度と物性のバランスも重要だ。厚盛りに対応する「グレースフィル バルクフロー」は、一度の照射で4mm硬化するよう光重合特性が最適化されている。通常、層厚2mmごとに積層硬化する手間を減らせるが、それに見合う機械的強度も確保されていなければ意味がない。グレースフィル バルクフローはフィラーの高充填と特殊光重合技術により、一括充填可能な厚みでも硬化収縮を抑え、十分な強度を発揮するよう設計されている。ただし、最表層は後述するように別の表面用レジンで覆うことが推奨される。これは一括充填レジン全般に言えるが、流動性を高めたバルクフロー単体では表面の耐摩耗性や審美性が若干劣るため、1~2mm程度は通常のコンポジットレジンでカバーすることで全体の耐久性を高めるのである。

最後に長期の色安定性について触れる。経年的な変色や着色汚染は審美だけでなくレジン劣化の指標にもなる。「G-フロー ONE」は低吸水性マトリックスを採用し、水分による樹脂マトリックスの膨潤・着色を起こりにくくしている。そのため経年的に変色しづらく、周囲歯との色調調和も長持ちしやすい。この特性は保険内の後戻り保証期間中の色変化リスクを減らし、患者満足度にも寄与する。また「エッセンシア」など高価格帯レジンも、マトリックス改良により吸水を極力抑えた処方となっており、自費治療で求められる長期審美性に応える耐変色性能を備えている。

充填操作性・ハンドリングを比較

日々の臨床では、コンポジットレジンの操作感(ハンドリング特性)が治療効率と出来栄えの両方に直結する。ここではペースト硬さ・粘性や適合性といった観点で比較してみよう。

まずペーストの硬さと適度な粘性。従来からある「グラディア ダイレクト」や「ソラーレP」などは中程度のペースト硬さで、ヘラで載せても流れにくく形態を保持しやすい反面、細部への適合にはやや力を要する傾向があった。特にグラディア ダイレクトは前後歯共用だが築盛用ペーストはしっかりしたコシがあり、「形を作り込みやすいがもう少し軟らかいほうが楽」という声もあった。一方、最新の「ジーニアル アコード」はやや硬めとの評もあるが、そのおかげで咬合面の山谷を造形してもヘタりにくい。筆者の周囲でも「アコードは盛った形が崩れずそのまま固まるので高い咬頭形態を付与しやすい」と評価する先生がいる。硬めのペーストに不慣れな場合は最初戸惑うが、慣れれば隣接壁から咬頭までシャープに再現できるのが利点である。

対照的に、フロアブル系(流動性レジン)の操作性は全く異なるアプローチとなる。「グレースフィル シリーズ」のフロー、ローフロー、ゼロフローはいずれもシリンジから直接窩洞に流し込めるため、ツールで練和して運ぶ手間が省ける。例えば頬側からアクセスが難しい小さなⅡ級窩洞でも、細ノズル付きシリンジでレジンを直接注入でき、複雑な窩形への適合性が非常に高い。特にゼロフローは「ゼロ」と名がつく通りほとんど垂れない特殊フローで、注入後に形態が流れ出ずその場に留まる。これはペーストのような安定性とフローの適合性を両立し、インスツルメントでの細かい築形が可能な設計である。結果として、通常ペーストで行っていた操作をシリンジワークに置き換えられ、操作ステップが簡略化される。もちろん軟らかいフローは咬合面全てを一発で形成するのは難しいが、ゼロフローやパテタイプを併用することで最終形態も整えやすい。実際、グレースフィル パテ(高粘度ペースト)とゼロフローを使い分けると、隣接部は流し込み、咬合面は盛り上げるといった作業がスムーズに行える。

注入法による気泡混入の減少も見逃せないポイントだ。シリンジで直接充填する場合、へらで詰め込む操作に比べ気泡の巻き込みが少ない。特に透明マトリックスとの間や深部の微小な隙間に確実にレジンが行き渡りやすく、充填後にマージンから気泡が露出してリペア…という失敗を減らすことができる。この意味で、グレースフィル系やG-フロー ONEなどのインジェクタブルレジンは「充填操作そのものの失敗リスク」を下げることで結果的に効率を上げる存在と言える。

さらに研磨のしやすさも操作性の一部である。エッセンシアやアコードはナノフィラー技術により表面が滑沢に仕上げやすい。研磨器具で軽く磨くだけでツヤが出るため、研磨工程にかかるチェアタイムが短縮される。特にエッセンシアは数秒のポリッシングでエナメル質同等の光沢が得られるとされ、審美修復の最後の仕上げ時間を圧縮できる。一方、グラディア ダイレクトのような従来ハイブリッドは若干フィラー脱落が起きやすくツヤ出しに時間がかかる傾向があった。これは経年的な艶の持続性にも影響する。したがって、研磨性・艶持ちの良い新素材を使うことは、術後チェックや補綴物研磨の時間削減にもつながると言える。

色調再現性・審美性を比較

直接充填でも天然歯のように美しい修復物を作りたい――その実現度合いは、選ぶレジン材料の色調システムと審美特性によって大きく異なる。GCのラインナップは、「できるだけ簡単に色合わせできる」ことを重視した製品から「細部の色まで再現可能」な製品まで幅広い。臨床で求める審美レベルに応じて、どの材料が適しているか見ていこう。

シェード選択のシンプルさという点では、「G-フロー ONE」が群を抜いている。これは1色で周囲歯に調和することを目指して開発されたシングルシェードレジンである。充填後、周囲の歯の色味をレジン内部で拡散・反射させてカメレオン効果を発揮するため、患者ごとにシェードガイドと睨めっこする必要がない。例えば保険診療で多様な患者を短時間で処置する一般歯科では、「色を選ぶ時間ゼロ」は大きなアドバンテージだ。実際、複数のシェード在庫を持たずともA1~A4相当の歯なら違和感なく馴染むため、小規模医院で在庫負担を減らしたい場合や、色合わせが苦手な初心の先生にとってミスのリスクを減らせる救いとなる。ただし極端に漂白された歯や変色歯では1色適応に限界もあるため、そうしたケースでは従来型の複数シェードを用いた方が良い点は留意したい。

「ジーニアル アコード」も簡易シェード設計を採用しているが、こちらは5つのコアシェード(A1、A2、A3、A3.5、BWなど)でVitaの16色すべてをカバーするというコンセプトである。5色の中から最も近いものを選べば、多少の透過・拡散効果で自然に周囲と調和するよう作られている。実際にアコードを使用した臨床家からは「色の迷いが減った」「とりあえずA3を入れてみて大きく外すことがない」という声がある。特に保険診療中心でスタッフに色合わせを任せる場合でも、選択肢が少なければミスが起きにくい。加えて、アコードには必要に応じエナメル質色や不透明色(AO1-3、JEなど)もラインナップされており、単層充填のみならず凝った審美修復にも対応可能な柔軟さも持っている。

一方で、本格的な審美再現には「エッセンシア」のようなシステムが適している。エッセンシアはエナメル質用と象牙質用の2種類のシェードを組み合わせる2層レイヤリングコンセプトだ。基本7シェード(ライト~ダークのデンチン3種、ライト~ミディアムのエナメル2種、その他特殊シェード)から、患歯の明度やトランスルーセンシーに合うエナメル・デンチンを各1種選び、二層で築盛する。従来は前歯部で自然なグラデーションを再現しようとすると、何種類ものレジンを積層し細かな色調表現が必要だった。それをエッセンシアは「7色さえ揃えれば2ステップで天然歯に近い色が出せる」よう工夫されている。例えば若年者の明るいエナメルならライトエナメル+ライトデンチン、中年以降のやや象牙質露出感ある歯ならミディアムエナメル+ダークデンチン、といった具合に組み合わせるだけだ。難しかったシェードテイキングが「明るいか暗いか」「エナメルが厚いか薄いか」という直感的判断に簡略化され、審美修復のハードルを下げている。結果、ラミネートベニアに匹敵するような高度なダイレクトボンディングを比較的短時間で提供でき、自費治療のクオリティと収益性を両立できる。

補綴物級の審美性という観点では、グラディア ダイレクトも忘れてはならない。発売から長く経つものの、エナメル色・デンチン色・効果色(インテンシブカラー、OPAQUEなど)を豊富に取り揃え、緻密な色再現を追求する歯科医師に支持されてきた経緯がある。例えば前歯部の白斑やカラクルスなど微妙な色ムラまで再現したい場合、グラディアダイレクトのインテンシブカラーやオペークを駆使することで一点物のカスタムメイドな修復が可能になる。ただしそのぶんテクニックと手間は必要であり、保険診療の制約時間内でフルに活かすのは難しい。そのため現在では、グラディア ダイレクトは「とにかく美しさを求めるケース」に絞って用い、日常の効率重視ケースにはアコード等を使うというように、使い分ける医院も多い。言い換えれば、審美性と効率はトレードオフの関係にあり、ケースに応じ材料を切り替える発想が重要である。

コストとタイムパフォーマンスを比較

最後に、経営的視点から各レジンのコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスを考察する。材料費そのものだけでなく、1症例あたりのコストや治療時間短縮による生産性向上まで踏み込んで評価する。

各製品の単価を見ると、保険診療でメインに使いやすいアコードやグレースフィルは1本数千円台と手頃で、エッセンシアやエバーエックス フローは1本5千円以上と高価に見える。しかし4gのシリンジ1本で充填できる歯は10~20歯にも上り、1歯あたり数百円以下の材料費となる。むしろレジン充填の人件費(術者とアシスタントの時間コスト)や患者一人あたりのユニット占有時間の方が医院経営に与える影響は大きい。そのため「高い材料でも治療時間が短縮できるなら結果的に得」という観点が重要だ。

例えばチェアタイム短縮の具体例として、グレースフィル バルクフローを用いた症例では、2mmずつ3回に分けて充填・硬化していた臼歯の窩洞を一度の充填・硬化で済ませることができる。硬化に要する光照射時間(通常20秒程度)も1回で済むため、トータルでは1歯あたり数十秒~1分程度の時間短縮となる。些細に思えるが、保険診療で1日に何十歯も充填する医院では塵も積もればで日々数十分の効率化になる。また一括充填により充填操作が簡便になれば、術者疲労の軽減やミスの減少にもつながり、リスケややり直しによる無駄なコストも抑えられる。

在庫管理と発注コストの面でも差が出る。多色使いが前提の材料では様々なシェードを常備せねばならず、未使用のまま有効期限が切れるロスも発生しやすい。シングルシェードのG-フロー ONEであれば在庫すべき色は1種類のみで、発注も簡単である。これは棚卸資産の圧縮となりキャッシュフロー改善にも寄与する。ジーニアル アコードも主要5色+必要ならエナメル・OPA等で済むため、従来10数色揃えていた医院では色数半減による在庫負担減を実感できるだろう。また発注の簡素化は材料切れによる機会損失(「あの色が無くて治療が延期に…」)を防ぎ、ひいては診療機会の最大化につながる。

ROI(投資回収率)の視点では、高額なエッセンシアやEverXも決して無視できない。エッセンシアは1本あたりの値段は高いが、そのおかげで高付加価値な自費治療メニュー(ダイレクトベニアや審美CR修復)を提供できるなら、容易に元が取れる投資と言える。実際、エッセンシア導入後に「直接法での審美修復を積極提案できるようになり、自費の前歯修復症例が増えた」というクリニックもある。材料費数万円のスターターキットで何十万円もの治療売上を生む可能性があり、高単価レジンは戦略投資として考えるべきだろう。同様に、エバーエックス フローは直接修復か補綴か迷うボーダーラインケースで「もうしばらく様子を見ましょう」と経過観察になっていた症例を治療介入できるようにする武器となりうる。結果として患者の歯の寿命を延ばしつつ、もし将来クラウン補綴が必要になれば改めて当院で治療を受けてもらえる。こうした長期的信頼関係の構築がリコール定着や紹介患者増加をもたらすことを考えれば、見えにくいところでROIに貢献していると言える。

最後に購入方法とコスト管理にも触れておく。GC製品は歯科ディーラー経由で購入するのが一般的だが、オンラインの歯科材料ショップ(フィード、Ciモール等)でも各レジンの取り扱いがある。在庫状況や特売キャンペーンによっては実売価格が定価の数割引きになることも多い。例えばジーニアル アコードのシリンジは希望価格3,700円前後だが、通販サイトでは3,000円弱で販売されているケースもある。こうしたルートを活用し、定番色はまとめ買いして単価を下げる、あるいは新製品発売時のキャンペーンセット(ボンドとの抱き合わせ割引など)を狙うことで、材料コストをさらに抑えることが可能だ。ただし安価だからと使いもしない色まで買い込むのは逆効果なので、先述のように自院のニーズに合ったシェードを見極め適正在庫を保つことが経営効率の面では肝要である。

製品別:GC主要コンポジットレジンの評価と選び方

G-フロー ONEはシングルシェードで時短と在庫削減に貢献

2025年に発売された最新のレジンが「G-フロー ONE」である。その最大の特徴は「1色でどんな歯にも馴染む」というコンセプトにある。臨床現場では、患者ごとに微妙に異なる歯の色に合わせてレジンのシェードを選択するのが手間であり、時に失敗の原因にもなる。G-フロー ONEは光の透過と拡散を最適化したフィラー配合によって強力なカメレオン効果を発揮し、周囲の歯質の色を映し込むように調和する。筆者も実際に臨床で使用してみたが、A2相当の中間的な色調の歯はもちろん、多少明るめ(A1寄り)や暗め(A3.5寄り)の歯でもほとんど違和感のない仕上がりとなった。シェードテイキングや試適調整の時間がゼロになる恩恵は大きく、特に多忙な保険診療ではチェアタイム短縮の切り札と言える。

レジンの性状はインジェクタブル(流し込みタイプ)だが、極端にサラサラではなく適度な粘度を持つため、充填後に垂れてくることもない。細かい形態は多少盛り足しが必要だが、小~中規模の窩洞ならほぼこれ単独で充填可能な操作感だ。研磨もしやすく艶も出しやすいため、仕上げ工程もスムーズである。また低吸水性ゆえに長期の着色変化が少ない点も、定期検診での患者評価につながるだろう。価格は1本4,000円程度と標準的だが、「色数1種のみで在庫管理が完結する」ため結果的に無駄がなくコスト削減にもつながる。まさに保険診療の効率化にフォーカスした製品であり、「レジン充填に時間をかけず回転率を上げたい」「スタッフ任せでも色で失敗したくない」という開業医に最適である。

一方、真っ白な漂白歯や重度変色歯では1色適応は厳しい場合がある。また流動性レジンのため咬合面全体の高度な形態付与にはやや不向きで、深い咬頭溝を持つ臼歯では追加の築盛や他のペースト併用が望ましい。審美症例でもマルチシェードによる繊細な色表現はできない。しかしその割り切りこそがG-フロー ONEの価値でもある。「日常臨床の8割はこれで十分」と考える先生には、時間と管理コストを劇的に減らせる頼もしい相棒となるだろう。

エバーエックス フローはファイバー強化で大窩洞も諦めない

「エバーエックス フロー」は、コンポジットレジンに短いグラスファイバーを配合することで飛躍的な強度向上を実現したユニークな材料である。開発コンセプトは「人工象牙質」とも言われ、象牙質に近い弾性と高い破壊靭性を併せ持つことで、歯と一体化した下地を作ることにある。臨床的には、う蝕が大きく歯質が薄くなったケースで通常のレジン充填を行うと、咬合力で歯が割れたり充填物が破損したりしがちだ。そうしたケースでもエバーエックス フローをデンチン部分に用いれば、ファイバーがクラックの発生・進展を抑制し、歯全体としての強度を底上げしてくれる。筆者自身、大きなMOD窩洞に本製品を裏打ちのように使用し、その上に通常レジンを築盛して経過観察している症例があるが、1年以上再び破折も起こさず機能している。

使用方法としては、基本的にエバーエックス フロー単独で窩洞全部を満たすのではなく、あくまで下層(デンチン部分)の充填材として使い、表層2mm程度は通常のコンポジットレジンで覆う形をとる。これはエバーエックス自体がやや不透明で表面研磨性も標準レジンほど高くないため、審美と耐摩耗を担うエナメル層は別材に任せるのが望ましいからだ。幸いエバーエックス フローはデンチン(不透明色)とバルク(やや半透明色)の2種類があり、下層で隠蔽したい場合はデンチン色、深部まで光を通したい場合はバルク色と使い分けられる。いずれも流動性は高いがチキソトロピック(攪拌時は流れるが静置で止まる)なので、窩底に留まってくれる。

経営的観点で見ると、本材料は単価がやや高めで1歯の材料費も増える。しかし、通常なら抜髄や補綴を検討する大きなう蝕歯をレジンで保存できれば、患者に低侵襲な治療オプションを提供できるため差別化につながる。例えば「このままだと割れるので冠を被せましょう」と即座に補綴へ移行していたケースでも、「まずはファイバー補強レジンで様子を見ましょう」と提案すれば、患者の金銭的負担も抑えられ受け入れられやすい。そして結果が良好なら歯も長持ちし、万一破折して抜歯となっても患者はベストを尽くしたと納得しやすい。こうした信頼構築が医院の評判を高め、長期的にプラスとなるだろう。

エバーエックス フローは「直径の大きなレジン充填を増やしたい」「補綴前提だった歯も極力温存したい」と考える保存治療志向のドクターに特に刺さる製品である。反面、症例を選ばず使うものではなく、健全歯質が十分ある小さな窩洞では過剰性能でコスト高にもなる。したがって、大臼歯のMODや支台築造など用途を絞ってピンポイントで投入することで、その価値を最大限発揮することができる。

ジーニアル アコードはシンプルシェードで汎用性の高い本命材料

ジーニアル アコードは2021年発売のナノハイブリッドレジンで、保険診療の新たなスタンダードを目指して登場した製品である。最大の特長は前述した5色コアシェードによる色調簡略化であり、煩雑になりがちなコンポジットの色合わせをシンプルにした点だ。実際、多くの医院で「これまで何種類も常備していたが、今は主要色をA2とA3(実際の製品名ではAO2など)中心に数色だけ揃えている」という声を耳にする。1種類あたりのコストも抑えめなので、主要色を複数本ずつまとめ買いしても負担になりにくい。結果として頻用する色がいつも手元に十分にあり、滅多に使わない色にお金を寝かせない在庫運用が可能となる。このあたり、実直にコスト管理を考え抜かれている印象だ。

臨床性能においても、アコードは前歯~臼歯までオールマイティに使えるようバランスが取られている。ナノサイズフィラー充填による高い研磨性と艶、適度な曲げ強さと耐摩耗性、充分なX線造影性と、保険診療で要求されるスペックは一通り満たしている。実際に使った感触としては、ペースト硬さはグラディア ダイレクトよりややコシがあり、盛り上げた形が維持しやすい。その反面、薄く延ばす操作(例えば薄いマージン付近の馴染ませ)は多少テクニックを要するが、慣れれば問題ないだろう。色調も単色充填でかなり自然に馴染むため、小さなI級・III級窩洞程度なら5色から近似色を選んで入れるだけでまず問題なく審美的に治まる。患者さんに「どこを治療したかわからない」と言われる頻度が確実に増えたという報告もある。

汎用性の高さゆえに、「迷ったらまずアコード」という判断ができるのも強みだ。実際、自費診療専門で高度な審美要求がある場面以外はアコードで間に合うことが多く、開業間もない先生が最初の一式として選ぶ材料としても賢明である。保険診療でCR充填を多用する医院では、アコード導入後に「材料ロスが減り、1歯あたりの収益が微増した」というケースもある。これは安価だからというよりムダが減った効果であり、例えば色選択ミスによる取り直しや、在庫切れ対応のための無駄な時間が減ったことなどが寄与している。

一方で、アコードはあくまで簡便さと平均点の高さを狙った材料であるため、エッセンシアのように凝った多重築盛で魅せる審美性や、エバーエックスのような特殊強度は持たない。そのため症例によっては「もう少し透明感を…」と思ったり「もっと強度が…」と感じたりする場合も出てくる。幸い、GCはアコード専用の追加エナメル(クリアやウェアエナメル)や不透明色も出しており、必要に応じ拡張できる拡張性を備える。つまり、まず基本はアコードで効率よく治療し、より高みを望む症例では一部エッセンシアに切り替えたり、アコードに特殊シェードを足したりと、段階的に対応できる。総じて、ジーニアル アコードは「保険メインだが質も妥協したくない」という開業医にとってコスト・品質・効率のバランスが取れた本命材料である。

エッセンシアは2層で再現するハイエンド審美レジン

エッセンシアは、前述のように必要最小限のレイヤリングで天然歯の色調を再現することをコンセプトに開発された審美修復用レジンである。ヨーロッパの審美歯科医グループの知見を取り入れて設計されており、発売当初から「シェードテイキングが容易になった」「築盛に迷わない」と注目された。実際、筆者が所属するスタディグループでもエッセンシアを用いた前歯ダイレクトボンディング症例が多数発表され、その自然な仕上がりに驚かされた記憶がある。例えば、中等度の変色歯2本をエッセンシアでダイレクトベニア修復したケースでは、ライトデンチン+ミディアムエナメルの2色だけで、隣在歯と見分けがつかないほどの透明感と色深みが表現されていた。術者曰く「これまでなら何種類も試行錯誤していたシェード選びが一瞬で決まり、築盛も2回で済むので助かる」とのことだった。

エッセンシアのターゲットは明確に自費審美修復である。価格が1本6,500円前後と高めだが、前歯部のダイレクトボンディングなど1歯数万円の治療に使うのであれば材料費は全体の数%に過ぎない。むしろ材料の審美性能が治療結果を左右し患者満足度=医院の評判に直結する以上、ここに投資を惜しむ理由はないだろう。エッセンシア導入後に、保険CRでは対応しきれなかった審美ケースを積極的に自費提案できるようになった結果、年間のレジン自費売上が大幅に伸びたという声も聞こえる。これは医院経営にとって理想的なROI向上パターンだ。

操作性の面でも、エッセンシアはペーストの伸びが良く細部までなじみやすい。2色で色調を出すという思想上、境界がくっきり分かれてしまっては意味がないため、各層のなじみが滑らかになるよう設計されている。築盛後の研磨も容易で、高輝度の艶が出るためポリッシャーで短時間磨くだけで仕上がる。ただ、色調再現性が高いがゆえに周囲歯の特徴を見抜く審美眼は依然必要である点には注意したい。誰が使っても魔法のように絶対美しい修復が出来上がるわけではなく、歯の透過と明度を的確に捉えてエナメル・デンチンシェードを選ぶ判断力が求められる。とはいえエナメルとデンチン各1種を選ぶだけなので、以前に比べれば格段に簡単なのは間違いない。

まとめると、エッセンシアは「ダイレクトボンディングで審美補綴に匹敵する結果を出したい」「自費レジンのクオリティで他院との差別化を図りたい」という医院にはうってつけの材料である。一方、保険診療主体でそこまで高度な色再現が必要ない場合は、性能を持て余すことになるため無理に使う必要はない。医院の診療コンセプトに応じて採用是非が明確に分かれる尖った製品と言えるだろう。

グレースフィル シリーズは流動性を選べる新世代レジン

グレースフィル シリーズは、GC独自のナノフィラーテクノロジーによるインジェクタブルレジン(シリンジ充填型レジン)の総合ラインナップである。パテ(高粘度ペースト)、ローフロー、ゼロフロー、フローの4種類が用意され、それぞれ流動性の違いにより適応できるケースの幅広さと操作性の良さを追求している。従来、流動性のあるフロアブルレジンは補助的な位置づけで、主要部分はペーストレジンで築盛するのが一般的だった。しかしグレースフィルでは、フロアブルを主役として使い、ペーストは必要最低限に抑えるという発想に転換している。実際、その高い物性から小~中規模の窩洞ならフローやローフローだけで形態再現から咬合調整まで可能であり、ペーストに劣らぬ修復ができる。

臨床上の利点として特筆すべきは、症例に応じて粘度を選択できる自由度だ。例えば、くさび状欠損や小さなIII級窩洞ではグレースフィル フロー(流動性大)を使って細部まで隅々充填し、一方でII級の広い窩洞ではまずゼロフロー(流動性小)で隣接壁付近を築盛し、その後ローフローで全体を満たす、といった組み合わせ技が可能だ。これによって、1種類のペーストで対応していた頃に比べ充填の適合精度や形態再現性が飛躍的に向上する。加えて、ナノフィラー配合により硬化後の強度や耐摩耗性も非常に高く、フロアブル=弱いという従来の常識を覆すパフォーマンスを示す。実験データでも、グレースフィル各種は従来ペーストレジンと同等かそれ以上の曲げ強さ・摩耗抵抗を持つことが確認されている。つまり、「流し込みだから物性的に不安」という懸念は少なく、日常の充填をこれらに置き換えても臨床成績は損なわれないと考えられる。

研磨や光沢保持の面でもグレースフィル シリーズは優れている。ナノサイズの多角形フィラーが表面に均一に分散しているため、研磨後の光沢が出やすく、さらに使用後の咀嚼による摩耗でもフィラー脱落が起きにくく艶が長持ちする。筆者も実際にローフローとゼロフローを小臼歯部で使ってみたところ、研磨はあっという間に終わり、半年後の定期検診でも充填部がマットにならず光を受けて輝いているのを確認した。これは患者説明時にも「このレジンは時間が経ってもツヤが落ちにくいです」とアピールできるポイントであり、自費CRと保険CRの差別化にも一役買うだろう。

経営面では、グレースフィル シリーズは1mLシリンジ単位で低価格から導入できるメリットがある。必要な種類だけ1本ずつ買い足せば良く、例えば「とりあえずゼロフローだけ試してみる」という柔軟な運用も可能だ。さらにシリンジがスリムで押し出しやすく、手が小さい術者やスタッフでも扱いやすいデザインとなっているため、勤務医や衛生士が充填をアシストする場面でも操作ミスが起きにくい。総じて、グレースフィル シリーズは「充填操作を革新して時短・高品質化したい」クリニックにフィットする製品である。反面、オーソドックスなペースト充填に慣れた術者には最初コツが必要かもしれない。しかし一度この快適さに慣れると元に戻れないほどで、特に若手歯科医師ほど抵抗なく取り入れやすい新世代の材料と言える。

グレースフィル バルクフローは一括充填でチェアタイムを短縮

グレースフィル シリーズの中でも異彩を放つのが「グレースフィル バルクフロー」である。名前が示す通り一括充填(バルクフィル)に対応したフロータイプのレジンで、深さ4mm程度までなら積層せず一度に充填・光重合できるよう設計されている。これは深いⅡ級窩洞などで特に威力を発揮し、通常なら2~3回に分ける充填工程を1回で済ませられるため大幅な時短となる。臨床例では、バルクフローを用いることでラバーダム下での作業時間が短縮され、患者の開口疲労軽減や唾液混入リスク低減にもつながったとの報告がある。

バルクフローの物性上の工夫として特筆すべきは、高いチキソトロピー性である。シリンジから押し出すときはスムーズに流れる一方、窩底に留まるとピタッと止まってくれる性質だ。これにより、窩洞の複雑な形にも隅々まで行き渡りつつ、過剰な部分は垂れずに盛り上げられる。例えば近心隣接壁から遠心咬頭頂にかけて一気に充填しても、中で偏ることなく満たされ、咬頭部では適度に山を作ってくれるイメージだ。流動性と賦形性という相反する要件を両立しているため、「楽に入れても形になる」というのが現場感覚として非常にありがたい。その後表層を軽く器具で形整え光照射すれば、4mm厚でも確実に硬化する(推奨照射時間20秒)。時間が無いときに無理に厚盛りして未硬化リスクを犯すくらいなら、初めから対応材料で安全に厚盛りする方がよほど健全であり、バルクフローは忙しい保険診療の中で安全と迅速を両立する材料と言える。

ただし、バルクフローのみで最終形態を作る場合、微調整が難しいこともある。特に咬合面の精密な形態付与や隣接面のコンタクト調整は、硬化後に研削調整が必要になるケースもあるだろう。そのため、バルクフローをあくまで下層~中層の充填に使い、表層1-2mmだけ通常ペーストで築盛するという使い方が推奨される。実際、その方が表面の研磨性・光沢も向上し、審美的にも有利だ。それでも全体工程は従来より格段に短くなるため、トータルの効率は十分高い。価格面もグレースフィル他製品と同程度であり、一括充填による照射回数減やミス削減を考えればコスパは良好だ。

グレースフィル バルクフローは「厚みのある窩洞を一発で詰めたい」「フロアブル主体でスピーディに治療したい」というニーズにマッチする。ただ、2mm以下の浅い窩洞や、小さな窩洞には無理に使う必要はなく、通常のローフロー等で十分だろう。要は深いケースに威力を発揮する専門ツールであり、そうした症例が多い医院には大きな時短恩恵があるという位置づけである。カリエス多発で毎日深い充填を数多くこなすような小児~若年者の患者層が多いクリニックでは、導入価値が高いだろう。

グラディア ダイレクトは実績豊富だが次世代への移行期

グラディア ダイレクトはGCを代表するハイブリッド型コンポジットレジンで、発売以来20年前後にわたり世界中で使用されてきたロングセラーである。その大きな強みは豊富なシェードバリエーションで、前述の通りエナメル・デンチン・特殊色を含めたマルチレイヤリングが可能な点だ。筆者自身、研修医時代に前歯部ダイレクト法を学ぶ際、グラディア ダイレクトのA2エナメル+A2デンチンで基本形態を作り、ホワイト色や透明色でエフェクトを足して…といった練習をした記憶がある。当時はその多彩さに感嘆したものだが、裏を返せば使いこなすには材料知識と経験が必要でもあった。実際、日常臨床では「結局いつも使うのはA2とA3くらいで、他の色は在庫のまま余らせてしまった」という声も聞く。そうしたニーズを受けて誕生したのがアコードなどの簡略シェード版と言えるため、グラディア ダイレクトは徐々に世代交代が進みつつある。

とはいえ、今なお「細かな色調表現が必要ならグラディア直」という信頼は根強い。例えば、中等度の変色歯を単色レジンで充填するとどうしてもグレーがかった仕上がりになるが、グラディア ダイレクトならAO2(不透明色)で下地を隠蔽し上からエナメルを被せることで、明るさと遮蔽性を両立した自然な色にできる。審美にこだわるケースでは、やはりこの「色を作り込める余地」が武器になる。また物性面でも発売当時から高評価で、適度な硬さで操作しやすく、耐久性も臨床実績で証明済みだ。10年以上グラディア ダイレクトを使い続けてきたベテランドクターにとっては、手に馴染んだ安心感のある材料だろう。

経営的視点では、現在グラディア ダイレクトをメインで使うメリットは在庫が潤沢に市場にあり慣れたスタッフも多いため導入ハードルが低いことくらいかもしれない。価格もアコードなど新製品と大差なく、むしろ特殊シェードまで揃えるとトータルコストは上がる傾向にある。近年はGCから後継ポジションの材料が次々登場しているため、今からあえてグラディア ダイレクトを医院の主力に据えるケースは少なくなった。しかし既存ユーザー向けの供給は継続しており、関連製品(フロー、OPAQUEなど)も入手可能であるため、使い慣れている医院では無理に切り替えなくとも困ることはない。加えて、患者説明時に「当院ではグラディアという材料で白い詰め物をしています」と謳っているケースも散見され、一定のブランド認知があるのも事実だ。特に自費診療でグラディア ダイレクトを用いる場合、患者向けパンフレットなども整備されていたため、素材名で品質を訴求するマーケティングにも使いやすかった経緯がある。

総じて、グラディア ダイレクトは実績豊富で今でも通用するが、次世代の簡便な材料へ移行が進む過程にある製品と位置付けられるだろう。「昔からの信頼感を重視し、細かな色も自分で操りたい」という職人肌の歯科医師には依然魅力的だが、効率や合理性を重んじる昨今の臨床環境では出番が減りつつある。もし既存ユーザーでなければ、今から新規採用するよりアコード等の導入を検討した方が総合的なメリットは大きいかもしれない。

ソラーレ / ソラーレPは往年の審美レジンだが用途限定的

「ソラーレ」はGCがかつて前歯部審美修復用に開発したマイクロフィラー系コンポジットレジンであり、その姉妹品「ソラーレP」は臼歯部用ハイブリッドレジンである。発売当初は天然歯のエナメル質に迫る美しさを謳い、特にソラーレ(前歯用)は微粒子フィラーにより優れた光沢と色調再現性を実現していた。当時、前歯部のダイレクトベニア的な用途で愛用した先生も多く、研磨後のガラスのような艶はマイクロフィラーならではと評価されていた。一方で力のかかる部位ではやや弱いため、臼歯部にはフィラー充填率を高めた「P(ポスタリア)版」を使い分ける必要があった。

現在ではソラーレシリーズはやや旧世代となり、公式にも後継製品のグラディア ダイレクトやアコードへの切替が推奨されている。その理由は、色調ラインナップが限定的で汎用性が低かったこと、そして物性面で最新ナノハイブリッドに及ばなくなったことが挙げられる。実際、ソラーレは前歯審美重視のためシェードはエナメル系が中心で、保険診療で日常使いするには色が合わないケースも多かった。またマイクロフィラー特有の吸水による経年劣化が多少あり、長期の色安定性では近年の材料に劣る面もあった。それでも「ソラーレの磨き上がりの感じが好き」という根強いファンがいるのも事実で、そうした先生方はメーカー在庫がある限り使い続けているようだ。

価格面では当時としては高価だったが、現在は入手ルートが限られむしろ割高になっている可能性がある。一般的なディーラー在庫は薄くなりつつあり、一部では在庫処分セールのような形で安く手に入ることもあるようだ。ただし積極的に探してまで採用するメリットは少なく、これから新規開業で導入する材料としては選外と考えてよいだろう。

まとめると、ソラーレ/ソラーレPは「マイクロフィラーの審美性にこだわりたい」という特殊なケース以外では現行の他材料で十分代替可能である。往年の名品としてその存在を記憶しつつ、実際の臨床ではより汎用性の高い後継製品を使っていくのが現実的だ。既に愛用していた先生にとってはノスタルジックな製品だが、今まさに開業準備中の読者であれば、ソラーレではなくアコードやエッセンシアといった最新ラインナップから必要なものを選ぶのがおすすめである。

よくある質問(FAQ)

Q. コンポジットレジンの長期的な耐久性はどれくらい期待できるのか?
A. 適切に処置されたコンポジットレジン充填は5~10年以上機能するケースも少なくない。実際、ナノハイブリッドレジンの登場以降は耐摩耗性や適合性が向上し、臼歯部でも5年生存率が高いという報告がある。ただ耐久性は材料の性能だけでなく窩洞の大きさ・場所、接着操作の質、患者の口腔衛生や咬合力など複数の要因に左右される。GCの新材料(アコードやエッセンシア等)は長期のデータが蓄積中だが、メーカー試験では従来品より優れた耐摩耗・耐着色特性を示している。要は適材適所で使い、ボンディングを確実に行えば相応の長期安定は期待できるということだ。逆に材料任せで雑に詰めれば高性能レジンでも脱離・二次う蝕は起こり得るため、基本に忠実な術式が長持ちの鍵となる。

Q. 各種レジンは手持ちのどのボンディングシステムとも併用できるのか?
A. 基本的にどのコンポジットレジンも各社の光重合型ボンディング剤と併用可能である。レジン自体はボンディング材の種類に影響されない。ただ相性という観点では、同メーカー製の組み合わせ(例えばGCならG-PremioボンドやG2ボンドとの組み合わせ)は材料開発時に相互の性能確認がなされているため安心感がある。また、ボンディングの被膜厚や硬化挙動がレジンとマッチしているかもポイントだ。例えばエバーエックス フローのような特殊レジンでも、通常のエッチング&ボンド手順で接着すれば問題なく使用できる。近年は多くの先生が1本で何にでも使えるユニバーサルボンドを採用しているが、それらとGCレジンの併用も全く問題ない。要は適切なエナメルエッチングと確実なボンド重合がされていれば、レジン側はメーカー問わず強固に接着するということである。

Q. シングルシェードのG-フロー ONEで色合わせが心配だが、本当に1色で大丈夫?
A. G-フロー ONEは標準的なA系シェード(明度中程度の黄系)をベースとしており、多くの人の歯に調和するよう最適化されている。周囲の歯がその範囲内であれば、実際1色でほとんど違和感なく仕上がる。筆者の経験でも、口腔内で見る限り修復部位がほぼ判別不能なケースが大半だった。ただし例えば漂白直後のような極度に明度の高い歯(B1より白いなど)や、テトラサイクリン歯のような特殊に色味が暗い歯では、さすがに単一シェードではカバーしきれない可能性がある。その場合は無理せず他のレジン(例えばエナメル質色のあるアコードや、より白いシェードを持つ他社製品)を検討した方が良い。要は大多数の一般的なケースには1色対応できるが、イレギュラーな症例では従来通りの色合わせが必要というスタンスで活用すると良いだろう。

Q. エバーエックス フローは表面を他のレジンで覆う必要があるとのことだが、その理由と具体的な覆い方は?
A. エバーエックス フローはファイバー配合ゆえにややマットな質感で、研磨しても通常レジンほど滑沢な光沢が出にくい。また光の透過性も抑えめで審美的にやや不透明感が残る。そのため充填物表面をすべてエバーエックスで終えると、見た目や舌触りの面で劣る可能性がある。加えて、ファイバーが露出したままだと長期経過で表面がザラついたり着色しやすくなったりする恐れもある。そこで、エバーエックスはあくまで下層の支台構造的に使い、最後の1~2mmは通常のコンポジットレジンでカバーするのがお勧めだ。具体的には、窩洞底からエバーエックスを充填し約2mm程度のスペースを残して硬化→残りのスペースを例えばアコードやグレースフィル等で築盛・形態付与して最終硬化、という手順である。こうすれば表層は通常レジンなので審美性・耐摩耗性・滑沢性が確保され、内部にはファイバー補強の芯が入った状態になる。少々手間だが、これがエバーエックス フローの長所を引き出しつつ短所を補う賢い使い方だ。

Q. GCのレジン製品はどこで購入するのが良いか?定価より安く買える方法はある?
A. GC製品は全国の歯科材料店(歯科ディーラー)で取り扱っており、そこから購入するのが一般的だ。担当営業に注文すれば在庫があれば即日~翌日には届けてくれるだろう。また近年は歯科材料のネット通販サイト(フィード、Ciモール、デンタルフィットなど)でもGCレジン各種が販売されている。通販の場合、まとめ買いやキャンペーンで定価の2~3割引きになっていることも多く、コスト重視なら活用したい。ただし利用には歯科医師免許の確認登録が必要で、一般の方は購入できない。また、ネット通販では商品の到着に数日かかるため、緊急で欲しい場合は地元ディーラーから取り寄せてもらう方が確実だ。価格交渉については、ディーラーでもある程度まとめて買えば値引きしてくれることが多い。例えばアコードやグレースフィルのよく使う色を5本単位で発注する、ボンディング剤とセットで購入する等で、担当者に相談すれば柔軟に対応してもらえるだろう。さらにGCには「GC友の会」という会員制度があり、定期購読誌やセミナー割引などの特典が受けられる。直接的な価格割引はないが、新製品情報やモニター募集などが届くので、情報面で先手を打ちたい方は会員登録しておくと良いだろう。