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フォレストワンのおすすめ口腔外バキュームの評判や価格について解説

フォレストワンのおすすめ口腔外バキュームの評判や価格について解説

最終更新日

エアロゾル対策に悩む歯科医院の現場

診療用チェアのライトに照らされて浮かぶ無数の水しぶき――歯科治療中に誰もが目にする光景である。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行以降、このエアロゾルが診療室内に拡散することに多くの歯科医師が神経を尖らせるようになった。う蝕の切削やスケーリングのたびに舞い上がる微細な唾液や血液の粒子は、診療空間の衛生に対する不安材料である。

徹底した吸引と換気を心がけても、目に見えない粒子まで完全に除去することは難しい。診療後の清拭や換気に時間を割きすぎれば、チェア回転率が下がり経営を圧迫する。感染対策と診療効率、その両立に頭を悩ませている先生も多いのではないだろうか。

そんな現場の悩みを解決する一つの手段が、口腔外バキュームの導入である。本稿では、日本の歯科業界で注目されているフォレストワン社の口腔外バキュームに焦点を当てる。その評判や価格、臨床面での効果と医院経営への影響まで、20年以上の臨床経験と経営視点を踏まえて解説する。

フォレストワンの口腔外バキュームとは

フォレストワンは歯科医院向けに感染対策機器を提供しているメーカーであり、その代表的な製品がFree100 Next D 口腔外バキュームとFree-100 mini 口腔外バキュームである。これらは患者の口もとに設置したアーム先端の吸引フードで、治療中に発生する飛沫や粉塵を強力に吸い込む装置である。

歯科診療時の空気中へのエアロゾル拡散を抑制する目的で用いられ、医療機器として適切に届け出がなされている(歯科用吸引装置)。Free100 Next D は標準サイズのハイパワーモデルであり、一方の Free-100 mini はコンパクトで取り回しやすい小型モデルである。

なお、前身となる「Free100 Next」(無印)というモデルも存在したが、現在は性能を向上させたNext Dが後継機種として位置づけられている。両機種とも基本的な適応症は同じで、う蝕治療からスケーリング、外科処置まで広く利用可能である。

主要スペックと臨床での意義

吸引力と性能

Free100 Next Dは大型の高出力モーターを搭載し、毎分数立方メートル級とも言われる強力な吸引風量を発生する。公式の風量データは公開されていないが、高速切削時に発生するミストをほぼ逃さずフード内に吸引できるだけの能力を備えている。対してコンパクトなminiはモーター出力が抑えられている分、最大風量は若干劣る。しかし通常の充填修復やスケーリングであれば必要十分な吸引性能であり、飛沫をしっかり捕集できる。吸引力の差は特に長時間の外科処置や連続稼働時に現れるため、ハードな使用が見込まれる場合にはNext Dの方が余裕が大きいと言える。

フィルター性能

両機種とも多段階のフィルターシステムを内蔵し、取り込んだ空気から微粒子を高効率で除去する設計である。まずプレフィルターで大きな湿性の飛沫や粉塵を捕捉し、続いてメインのHEPAフィルターで微小粒子を99.9%以上取り除く。公称の数値は非公開だが、一般的なHEPAフィルター(H13-14クラス)相当と考えられ、0.3µm程度の微粒子も99.97%捕集可能と推定される。さらに活性炭フィルターも搭載されており、う蝕除去時の嫌な臭気や有機溶剤の蒸気も低減できる。こうした高性能フィルターにより、吸引したエアロゾル中の細菌・ウイルスが再び診療室に拡散してしまうリスクを最小限に抑えている。

騒音レベル

動作音の大きさは、口腔外バキュームを導入する上で注意すべきポイントである。Free100 Next Dは防音構造の改良やモーター制御の工夫により、前モデルよりも運転音が軽減されている。公式なデシベル値は示されていないものの、実際に使用すると家庭用掃除機を中程度の強さで動かしたときに近い印象である。miniは本体が小さく防音材の余裕が限られるためか、Next Dよりやや動作音が大きい傾向がある。それでも、吸引中にスタッフが少し声量を上げれば患者と会話できるレベルであり、多くの患者は事前に目的を説明すれば騒音について理解を示す。むしろ「しっかり対策している」証として安心感を持つ患者もいるほどである。

アームの可動性と設置性

アームの長さや自在に動かせる範囲も臨床上重要なスペックである。Free100 Next Dのアームは関節部が複数あり、患者の口元から適切な距離を保ちながら自由な角度でフードを位置付けることが可能である。術者やアシスタントの邪魔にならない位置にセットしつつ、必要に応じて微調整がしやすい設計だ。miniのアームも基本構造は同様だが、リーチ(長さ)はNext Dよりやや短い。しかし通常のユニット周囲で使用するには十分な可動範囲を持ち、口腔外バキュームとしての役割は問題なく果たせる。フード径はいずれの機種も大きく開口した丸型で、広い範囲の飛沫を一度に吸引できるようになっている。

本体サイズと消費電力

本体サイズはNext Dが大型のキャスター付き掃除機程度の寸法であるのに対し、miniは一回り小さく設計されている。重量は公称値の公開がないものの、Next Dは20kg前後、miniは10kg台と推定される。いずれも足元に自由に移動可能なキャスターを備え、必要に応じて診療室内を転がして移動できる。消費電力は数百ワット程度で、標準的な歯科用コンセント電源で問題なく使用可能である。これらのスペックから判断すると、広めの診療室で常設運用するならパワーと容量に余裕のあるNext D、小規模な診療室や複数のユニット間で共有したい場合には軽量コンパクトなmini、といった選択も合理的である。

以上の主要スペックは、単なる数字の比較に留まらず臨床現場での実用性に直結する要素である。十分な吸引力と高度なろ過性能は空間の清潔度や感染リスク低減につながり、低騒音・省スペース設計はスタッフと患者のストレス軽減に寄与する。Free100 Next Dおよびminiのスペックは、総合的に見て臨床と医院運営の両面に配慮されたバランスの取れたものとなっている。

互換性と運用方法

口腔外バキュームは基本的にスタンドアロンで機能する機器であり、Free100 Next Dとminiも特別な他機器との接続を必要としない。電源は標準的な100Vコンセントから供給し、導入に際して院内の電気工事やネットワーク設定は不要である。吸引した空気は内部フィルターで浄化された後、装置背面から室内に排気される仕組みで、天井ダクトへの接続などは不要である。このため既存の診療室に追加で設置する際も、大がかりな改修無しに運用を開始できる。

操作方法はシンプルである。本体のスイッチを入れ、吸引力をダイヤルやボタンで調整するだけで稼働する。治療開始前に電源をONにし、終了後にOFFにする運用が基本で、特別な同期制御やソフトウェアは伴わない。機種によってはリモコンスイッチやフットペダルが用意されており、術者が手を離さずに操作できる工夫もなされている。Next Dでは吸引力を数段階に調整可能で、処置内容に応じて「強・中・弱」など切り替えて使うことができる。miniも同様の調整機能を持つが、最大パワー時の連続使用時間には注意が必要かもしれない(小型ゆえのモーター発熱対策として、適宜休止を挟むなど取扱説明書に従った運用が望ましい)。

日常のメンテナンスとしては、使用後に吸引アームやフード外面に付着した汚れをアルコールや次亜塩素酸系の清拭で消毒することが重要である。使い捨てのフードカバーを併用すれば清掃の手間が減り衛生的である。プレフィルターは頻繁に点検し、目詰まりしていたら清掃または交換する。メインのHEPAフィルターや活性炭フィルターも、メーカー推奨のサイクル(例えば数ヶ月に一度など)で定期交換が必要である。フィルター交換時にはマスク・グローブを着用し、廃棄物として適切に処理する配慮がいる。

他機器との互換性については、基本的にはフォレストワン純正の消耗品・部品を使用する前提で設計されている。他社製フィルターやパーツを流用するとフィッティングが合わず性能を損なう恐れがあるため避けるべきである。また、既存のユニット付属の口腔内バキューム(唾液管)とは独立したシステムとして動作する。両者を併用することで初めて最大の効果を発揮するため、口腔外バキューム導入後も口腔内バキュームを省略するべきではない。

院内教育の面でも、特別難しい操作は必要ないとはいえ、スタッフ全員が適切に使いこなせるように周知することが大切である。例えば「どのタイミングでスイッチを入れるか」「フードを患者さんのどの位置に置くか」「処置後の清掃手順」などをマニュアル化して共有すると良い。装置の移動運用をする場合は、各ユニットで使用後に次のユニットへ速やかに移せるよう動線を考える必要がある。キャスター移動とはいえ重量があるため、床の段差を解消したりコードを這わせない工夫で、安全かつ効率的に運用できる環境を整えたい。

経営インパクト

まず、導入コストについて押さえておく。フォレストワンの口腔外バキュームはオープン価格となっており、販売店や時期によって実際の購入価格が異なる。一般的な目安として、Free100 Next Dは本体価格がおおよそ20~30万円前後、Free-100 miniは15~20万円程度と見込まれる(2025年時点)。加えて、運用中の消耗品コストとしてフィルター類の交換費用が発生する。例えばHEPAフィルターや活性炭フィルターは年数回の交換が推奨され、年間で数万円程度のランニングコストを見込んでおく必要がある。電気代は数百Wの機器であるため1時間あたり数円程度と僅少である。

投資対効果を考えるために、一症例あたりのコストを試算してみる。仮にNext D本体を25万円、耐用年数を5年(60ヶ月)とし、年間のフィルター等メンテ費を2万円と仮定する。年間200日診療・1日20人の患者を診る場合、年間患者数は4,000人となる。本体減価償却費(月約4,167円)と年間メンテ費2万円を合計すると、年間約7万円のコストとなる。これを4,000人で割ると、1人あたり約17.5円の負担に過ぎない計算である。miniの場合は初期費用が低いためさらにわずかな額になるだろう。1症例あたり数十円であれば、患者1人当たりの診療単価に与える影響はごく軽微である。

むしろ導入によって得られる時間的・経済的メリットにも目を向けるべきである。口腔外バキュームを使用することで、治療後のユニット周辺の清掃や換気にかける時間を短縮できる可能性がある。例えば、従来はエアロゾル飛散後に5分間の換気停止時間を設けていたものを、バキューム併用で2~3分に短縮できれば、1症例あたり2分程度の時間短縮となる。1日20症例では約40分の時間創出となり、もう1人患者を増やす余裕が生まれる計算である。これは人件費換算すれば年間数十万円規模の効率化効果になりうる。また、エアロゾルによる機器汚染が減れば、器材の清拭や滅菌作業の負担もわずかながら軽減し、スタッフの業務効率改善にもつながる。

さらに、見えにくいが重要な効果としてリスク低減による損失防止が挙げられる。感染対策が不十分な環境では、院内感染やクラスター発生により一時休診を余儀なくされるリスクがある。実際、コロナ禍ではスタッフや患者から陽性者が出て数日~数週間診療停止となった歯科医院もあった。その間の機会損失や信用低下による経済的損失は、口腔外バキュームの数十万円という導入費をはるかに上回る場合もある。予防的に環境対策を施しておくことは、こうした最悪の事態を防ぐ保険のような意味合いも持つと言える。

患者側へのアピール効果も経営に影響するポイントである。感染対策が徹底された医院は患者からの信頼が厚く、紹介やリピートにも繋がりやすい。実際、「口腔外バキュームが常時稼働していて安心した」「コロナ以降もあの医院は対策がしっかりしているから通いたい」といった声を耳にすることもある。特に自費診療を積極的に提供するクリニックにとっては、高額な治療を任せる上で患者が感じる安心感は非常に重要であり、その環境整備への投資は結果的に自費率の向上や単価アップにも寄与しうる。

以上を総合すれば、口腔外バキュームの導入は単なるコスト増ではなく、中長期的に見て医院経営の安定と成長を支える投資であると位置づけられる。初期費用は確かに発生するものの、その効果によって得られるリスク軽減や患者満足度向上、新患獲得といったリターンを考慮すれば、投資対効果(ROI)は決して低くない。重要なのは、自院の診療スタイルや患者層に照らして適切なモデルを選択し、その性能を十分に活用することである。

使いこなしのポイント

最適なポジショニングを習得する

吸引フードの位置決めは効果に直結する。患者の口元からおおよそ10~15cm以内にフードを近づけ、噴霧の方向に対して斜め45度程度の角度で配置すると効率よく飛沫を吸引できる。例えば上顎のう蝕を削る際にはフードをやや上方から、下顎臼歯部では側方から当てるなど、処置部位に応じてベストな位置を探ることが重要だ。初めのうちは術者自身が試行錯誤して最適なポジションを見つけ、そのコツをスタッフと共有すると良い。

習慣化とルーティン化

導入当初は新鮮さもあり積極的に使うものの、忙しくなるとつい電源を入れ忘れたり、セッティングを省略してしまうケースがある。これを防ぐには、診療のルーティンに組み込んで「使うのが当たり前」の状態にしてしまうことが大切である。毎朝のユニット準備時にバキュームの電源と吸引力をチェックリストに入れる、エアロゾル発生処置では必ず使用するルールを決める、といった具合に組織として習慣化する。また、担当アシスタントにも使用忘れを声掛けでフォローしてもらうなど、チームで活用率を下げない工夫をすると良い。

患者への事前説明

大きな機械や作動音に患者が驚かないよう、使用前にひと言断っておく配慮も必要だ。「飛沫を吸い取る機械を使いますので音がしますが、安全のためです」といった簡単な説明でも、患者の感じ方は大きく変わる。何も説明せず突然作動させると不安を与える恐れがあるため、導入当初は特に丁寧な声掛けを心掛けたい。多くの患者は趣旨を理解すれば快く受け入れてくれるので、「最新の対策をしている歯科医院なんだ」というプラスの印象につなげるチャンスでもある。

トラブル予防と安全対策

強力な吸引力ゆえの思わぬトラブルにも注意する。例えば、術中に使用したガーゼや軽い器具を誤ってフードが吸い込んでしまうことがある。小さなガーゼ片がフィルターを塞いで吸引力低下や故障の原因となりかねないため、フード周辺に漂う小片には気を配る。必要に応じて吸引力を一時的に下げるか、アシスタントが手で遮るなどして対処する。また、患者の長髪や衣服の一部がフードに引き寄せられる可能性もあるので、装置を患者から離す際には電源を切る、髪をまとめてもらうなど安全面にも配慮したい。

失敗例から学ぶ

実際に導入したものの「思ったほど使いこなせなかった」という声も耳にする。その一因として、性能を過信して他の感染対策を疎かにしたり、逆に効果に半信半疑で使用頻度が落ちてしまったりといったケースがある。ある医院では、最初の数週間は積極的に使っていたが、徐々に音やセットの手間を嫌がりスタッフが使用を省略するようになってしまったという。このような失敗を防ぐには、導入目的をスタッフ全員で再確認し、「使わない選択肢」を作らないことが肝心である。定期的に効果を実感できるエピソード(フィルターに大量の粉塵が溜まっていた等)を共有し、モチベーションを維持するのも良いだろう。

以上のポイントを踏まえて運用すれば、口腔外バキュームの持つポテンシャルを十分に引き出すことができるはずだ。単に機械を置くだけでなく、チーム一丸で「使い倒す」姿勢が、投資を最大限に活かす鍵である。

適応と適さないケース

口腔外バキュームが真価を発揮するのは、やはりエアロゾルが大量に発生する処置である。具体的には、タービンやコントラでのう蝕除去・クラウン形成、超音波スケーラーによるスケーリング、エアフローなどのパウダートリートメント、インプラント埋入や抜歯時の骨削除、レーザー使用時の煙霧などが挙げられる。これらの処置では高速回転機器や振動機器によって微細な水滴や粉塵が飛散しやすく、通常の口腔内バキュームだけでは診療室全体への拡散を防ぎきれない。口腔外バキュームを併用すれば、口腔外に漏れ出た飛沫もただちに捕捉できるため、ユニット周囲の空気清浄度が格段に向上する。また、義歯調整などでレジンを研磨する際の粉塵吸引にも効果的で、診療室内にアクリル粉が舞うのを防ぐことができる。要するに、エアロゾル発生を伴うほぼ全ての歯科処置が適応と言ってよく、感染対策のみならず術野の可視化や臭気低減といった付随効果も期待できる。

一方で、口腔外バキュームが必ずしも必要でない、もしくは注意を要するケースも存在する。まず、エアロゾル発生が少ない処置では必須ではない。たとえば矯正のワイヤー調整やカウンセリングのみの日など、切削やスプレーを伴わない診療では無理に稼働させる必要はないだろう。次に、小児や音に敏感な患者への対応である。幼い患者は大型機械の作動音に驚いてしまうことがあり、治療への協力度に影響を与える可能性がある。このような場合は無理に使用せず、まずはスタッフが近くでデモンストレーションして音に慣れさせる、あるいは必要最低限のタイミングのみに留めるなど配慮すると良い。狭小な診療空間で物理的に設置が困難な場合も、工夫が必要になる。ユニットが壁際にありスペースが限られる場合、フードの位置取りが難しくかえって術者の動線を妨げる可能性がある。その際はアームを延長できるオプションの検討や、miniのような小型機の導入で解決できることもある。

また、口腔外バキュームはあくまで補助的な吸引装置であり、これ単独で完全な感染対策が完結するわけではない点にも注意が必要である。口腔内バキュームやラバーダム、防護具の併用を前提として初めて意義を持つ機器である。したがって、それらの基本対策が困難な状況(例えば、嘔吐反射が強くラバーダムを装着できない患者)では、口腔外バキュームだけに頼るのではなく、他の方法でカバーする工夫が求められる。

なお、安全面での注意として、本機は電動機器であるため可燃性ガス下では使用しないという医療機器一般の原則も当てはまる。歯科診療で引火性ガスを使用する場面は通常ないが、万一酸素・笑気などの濃度が高まる処置環境ではスパーク防止の観点で電源管理に注意したい(通常運用で問題になるケースはほとんどない)。総じて、口腔外バキュームの適応は非常に広範囲だが、患者特性や環境によっては使用を控えたり他策と組み合わせたりする柔軟な対応が求められる。

導入判断の指針(医院タイプ別)

保険診療メインで効率重視の医院

保険中心で日々多数の患者を診ている医院にとって、設備投資には常に費用対効果の目線が求められる。このタイプの医院では、一見すると口腔外バキューム導入はコスト増のように映るかもしれない。しかし、実は効率と安定性の向上という観点から大きなメリットがある。まず、前述したようにチェアタイムの短縮や清掃時間の軽減によって1日に処置できる患者数を維持・増加できる可能性がある。患者回転率が命綱の保険診療主体クリニックにおいて、これは見逃せないポイントである。また、感染による臨時休診リスクの低減は経営の安定に直結する。クラスター発生で1週間閉院…となれば数百人分の診療機会損失になるが、口腔外バキュームの活用でそのリスクを下げられるなら、いわば営業保証を買うようなものだと言えよう。

予算面が厳しければ、まずは価格の抑えられたminiから導入し、要所で使う方法も考えられる。それでも効果を実感できれば、後に上位モデルの追加導入を検討する価値は十分にある。重要なのは、費用を投じた以上に設備を活躍させる運用であり、効率最優先の医院ほどその工夫次第で高いリターンを得られるだろう。

高付加価値の自費診療を提供する医院

自費治療中心で患者一人ひとりに時間をかけ、高品質なケアを提供する医院では、医院の設備・環境も診療の一部といえる。高級感のある院内環境や最新設備の導入は、患者からの信頼感や満足度に直結する。こうした医院にとって口腔外バキュームは、「安全・安心」という無形の付加価値を提供するツールとなる。たとえばインプラントやセラミック治療など高額な治療を任せる患者心理を考えると、「ここまで徹底した感染対策をしている医院なら安心だ」と思わせることは非常に重要である。導入コストは自費一本の高収益治療から見れば僅かな割合であり、投資への心理的ハードルも低いだろう。むしろ導入を積極的にアピールし、ホームページや院内掲示で「当院は最新の口腔外バキュームで安全管理を徹底しています」と謳うことで、他院との差別化を図ることもできる。

ただし留意すべきは、静かでリラックスした空間作りを重視する医院が多いため、騒音対策には配慮したい点である。幸いNext Dは動作音が抑えられているため、大きな妨げにはならないだろうが、使用時にはBGMの音量を上げる、患者にイヤホンで音楽を聞いてもらうなどの気遣いも考えられる。総じて、自費型クリニックにおいて口腔外バキューム導入は「患者サービス品質の向上」と「医院のブランディング強化」に資する有意義な投資である。

外科・インプラント中心の専門性の高い医院

インプラント専門や口腔外科処置を多数行う医院では、診療室はすなわち手術室に等しい。無菌的な環境を維持し、術後感染リスクを可能な限り排除することが最優先課題である。このような医院にとって、口腔外バキュームは手術環境の必需品と言っても過言ではない。骨切削時に飛散する血液混じりのエアロゾルや、インプラント窩形成時の微細な骨片も瞬時に吸引し、術野と空間の清潔度を高めてくれる。全身管理下で行うインプラントオペでは、多量の生体粒子が飛ぶとサーキュレーターのフィルター詰まりや機器汚染を引き起こす懸念もあるが、バキューム併用でそれを未然に防ぐことができる。また、手術スタッフ自身も長時間そうした粒子を吸い込むリスクから守られる。

外科処置に長けた医院は感染対策にも敏感で、高性能空気清浄機やクラスBオートクレーブなどにも投資している場合が多い。その延長線上に口腔外バキュームの導入が位置付けられる。コストよりも安全性重視のマインドであるため、Next Dのように性能に優れたモデルを選び、オペ室ごとに配備するといった手厚い体制を敷くケースも見られる。唯一留意すべきは、鎮静下患者への影響である。静脈内鎮静など意識下で行う場合、突然の大きな駆動音が刺激になる恐れがある。術前にあらかじめ作動させて慣らしておく、鎮静が浅い間は極力音を立てない、といった工夫で対応可能だろう。総じて、外科系の医院では口腔外バキューム導入は標準的な設備投資とみなされており、患者・術者双方の安全確保の観点から優先度は非常に高い。

よくある質問(FAQ)

Q. 口腔外バキュームを導入すると感染リスクはどの程度下がるのか?

A. エアロゾル中の細菌・ウイルス量を大幅に低減できるため、感染リスクの低下が期待できる。具体的な数値は症例や環境によって異なるが、ある実験報告では使用しない場合に比べて空中浮遊粒子が70~90%減少したとのデータもある。ただし完全にゼロにできるわけではなく、口腔内バキュームや換気、個人防護具との組み合わせで総合的にリスクを管理することが重要である。

Q. フィルター交換など維持費と手間はどのくらいかかる?

A. プレフィルターは頻繁に清掃・交換が必要だが、数百円程度の消耗品である。メインのHEPAフィルターや活性炭フィルターはメーカー推奨では数ヶ月に一度(目安として6ヶ月毎など)の交換が望ましい。フィルター代は種類にもよるがHEPAで1枚1~2万円程度、活性炭フィルターで数千円ほどである。年間では合計2~3万円前後の維持費が目安となる。交換作業自体はスタッフが数分で行える簡単なものであり、販売店から取り寄せて院内で対応できる。

Q. 動作音は大きくないか?患者が驚いたりしない?

A. 動作音は一般的な家庭用掃除機と同程度で、無音ではないが過度に大きいという声は少ない。Next Dは従来型より静音化が図られており、患者と会話を完全に妨げるほどの騒音ではない。多くの患者は「少し音はするが安全のため」と説明すれば納得してくれる。どうしても音に敏感な患者の場合は、事前に断りを入れる、必要な場面のみ使用する、BGMで紛らわせるといった工夫で対応可能である。

Q. 小規模の歯科医院でも設置できるか?スペースや電源は問題ない?

A. Free100 Next Dでもフットプリントは大型の空気清浄機ほどの床面積(およそ30cm四方程度)で、一般的なユニット脇に十分置けるサイズである。miniであればさらにコンパクトなので、ユニット間隔が狭いクリニックでも工夫次第で設置可能だ。使わないときは隅に移動させておくこともできる。電源も通常のコンセントで使用でき、特別な高圧電源は不要である。消費電力は500W前後と歯科用ライト程度であり、既存の電気容量に大きな負荷を与える心配もほとんどない。ただし古い建物で回路に余裕がない場合は、他の大型機器と同時使用しないよう分散するなどの配慮はした方がよい。

Q. コロナが落ち着いた現在でも、導入する価値はあるのか?

A. コロナ禍で注目された機器ではあるが、エアロゾル自体はう蝕治療やクリーニングで日常的に発生しており、そこに含まれる細菌やウイルス(インフルエンザや一般の風邪など)のリスクは常に存在する。むしろ患者側の衛生意識が高まった今、口腔外バキューム未設置だと不安に感じる人も出てきている。加えて、粉塵や臭気の除去といった衛生面以外の利点もあるため、たとえ感染症流行が小康状態でも導入する意義は十分にある。長期的な医院のクリーン環境維持という観点からも、決して遅すぎる投資ではない。