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東京技研の口腔外バキューム「フリーアーム」シリーズの価格や評判を解説

東京技研の口腔外バキューム「フリーアーム」シリーズの価格や評判を解説

最終更新日

診療用チェアのライトに照らされた細かな粉塵が、治療後に宙を舞う光景を目にしたことはないだろうか。う蝕の切削や補綴物の調整で生じる削りカス、患者の呼気に含まれる唾液や血液の微粒子──これらエアロゾルは診療室中に拡散し、術者やスタッフの健康リスクとなるだけでなく、器具や床へ堆積して院内環境を悪化させる。特に新型感染症の流行以降、空気中の飛沫対策は患者の安心と医院の信頼を左右する重要課題となった。しかし毎回の徹底した換気や清掃には限界があり、診療効率との両立に頭を悩ませている開業医も多いだろう。

本稿では、こうした悩みに応える製品として定評のある東京技研の口腔外バキューム「フリーアーム」シリーズに着目する。臨床現場で培った知見をもとに、その特徴と導入効果を 経験豊富な歯科医師の視点 で分析し、感染対策と医院経営の両面から有用性を探っていく。

製品の概要

東京技研「フリーアーム」シリーズ は、歯科診療時に患者の口腔外へ飛散する粉塵や飛沫を強力に吸引し、診療空間をクリーンに保つための吸引装置である。初代モデル発売から改良が重ねられ、現在ラインナップされている第6世代「フリーアーム・アルテオ」シリーズ(アルテオ-F、アルテオ-I、アルテオ-S、アルテオ-T)および第7世代「フリーアーム・シーテクト」シリーズは、国内の多くの歯科医院で導入されている。いずれも一般的名称は「歯科用吸引装置」であり、医療機器区分は管理医療機器(クラスII)である。想定される適応範囲は、歯科診療全般における飛沫・粉塵の発生場面 だ。う蝕除去の切削時、クラウンやレジンの調整研磨時、超音波スケーラーによる歯石除去時、さらにはインプラント埋入の骨切削や抜歯など外科処置に至るまで、患者の口から飛び出すあらゆる浮遊物質を即座に吸引することで、術者・スタッフ・患者の三者に安全な診療環境を提供する。なお本製品は口腔外の空気中の浮遊物を対象とした集じん機であり、唾液や注水を直接吸引する用途(いわゆる口腔内バキューム)ではない。そのため、通常の唾液吸引や外科用吸引と併用して使用する補助的機器である点に留意が必要である。

「フリーアーム」 の名称が示すとおり、本製品は自由自在に動くフレキシブルアームを特徴とする。患者の口元へ向けて位置調整可能な吸引ノズル(フード)をアーム先端に備え、根元の本体ユニットに接続された強力な吸引機構によって空気を吸い込む仕組みである。東京技研は医科・歯科向け吸引装置の老舗メーカーであり、歯科用ユニットの吸引・分離装置から技工用集じん機まで幅広く手掛けてきた。同社の口腔外バキュームは、国内歯科医院で早くから導入が進んだ製品群の一つであり、第5世代モデル「フリーアーム・フォルテ」は長年スタンダード機として愛用されてきた経緯がある。その後継となる「アルテオ」シリーズでは、イタリア人デザイナーとの協業による洗練された筐体デザインと機能性の向上が図られ、より静音で扱いやすいモデルへと進化した。さらに近年発売された第7世代モデル「シーテクト」シリーズでは、歯科診療所のインテリアに調和する洗練性と、天井設置型など空間効率への配慮も備えている。本稿では主に現行主力であるアルテオシリーズを中心に、その仕様と評価を解説する。

主要スペックと臨床での意味

フリーアーム・アルテオシリーズは、臨床ニーズに合わせて複数の仕様が用意されている。自立式のアルテオ-S(単体移動型)、ユニットや床に固定設置するアルテオ-Fおよびアルテオ-I(配管接続型)、そして先代フォルテのコンセプトを継承したアルテオ-T(後述するユニット直付けタイプ)である。基本性能はいずれも共通しており、コアとなる吸引力は高出力モーターまたは中央集中式の強力ポンプによって生み出される。例えばアルテオ-Sの場合、定格出力約1.05kWの内蔵モーターを搭載し、約5kPaの負圧で毎分3.0立方メートルの風量を吸引可能である。これは口腔外バキュームとして非常に強力な部類に入り、肉眼では見えない0.001mmサイズの微細なエアロゾルまで強引に空気ごと引き寄せる性能を持つ。実際の臨床では、切削器具から飛散する目に見える削片だけでなく、微粒子状の唾液・血液エアロゾルを瞬時に吸い込む 感覚を得られるだろう。高性能な吸引力により、診療室内への有害物質の拡散を極力抑え、術野周囲の即時の清潔化を実現する点が本機の要となるスペックである。

一方、吸引性能を支える静音性も重要な指標である。強力なモーター駆動の装置は一般に騒音が問題となるが、アルテオシリーズでは特殊設計のサイレンサー(消音機構)を内蔵し、運転音はおおよそ65dB前後に抑えられている。65dBという数値は、診療室内で人が会話する程度の音量に相当し、従来のフォルテ(第5世代)よりも体感上かなり静かになったとの評価がある。実際に患者のすぐそばで稼働させる機器ゆえ、騒音対策は患者の負担軽減とストレス軽減に直結する。音が静かであれば、患者とのコミュニケーションを取りながらでも運転を継続でき、術者自身も長時間の使用で疲労しにくい。さらに東京技研は、フリーアーム専用の追加アタッチメントとして「サイレントフィルタ(抗菌仕様)」も提供している。これは排気部に後付け装着することで吸音効果を高める消音器であり、素材に練り込んだ抗ウイルス性の銅イオン成分によって排気中の浮遊ウイルス量を抑制する工夫も凝らされている。静音性と感染対策を両立する周辺機器の充実も、本シリーズのスペック上の強みと言える。

アルテオシリーズのもう一つの特筆すべき仕様が、多層フィルタによる安全な排気構造である。いくら強力に吸引しても、集めた粉塵や微生物を装置から再放出しては意味がない。その点、本製品は内部に3層のフィルタユニットを搭載することで吸い込んだ空気を徹底浄化し、診療室内への排気も安心な設計となっている。具体的には、大きめの粉塵を最初に捕捉するプレフィルタ(塵受けフィルタ)、微小粒子や飛沫を本格的に除去する中間のパックフィルタ、そして最終段にはHEPAフィルタ(高効率空気清浄フィルタ)が配置され、0.3μmサイズの粒子もほぼ完全に捕集する。清浄化された空気は本体上部から四方向に均等に排気されるため、床の埃を巻き上げたり患者に直接風を当てたりしないよう配慮されている。この高度なフィルタリング性能は、術後の院内清掃負担を軽減し、空気清浄機にも匹敵するレベルで診療空間全体の清潔度維持に貢献する。事実、口腔外バキュームを使用することでユニット周辺に付着する切削粉塵や唾液由来汚染の量が大幅に減少したとの報告もあり、臨床の長期予後において器具の清潔保持やスタッフの健康管理にも好影響を与えることが示唆されている。ただし誤解してはならないのは、口腔外バキュームで吸い込みきれない微小な浮遊エアロゾルはどうしても残存する点である。いかにHEPAフィルタを通しても、完全な無菌空間になるわけではない。あくまで診療環境を「より清潔に近づける」装置であり、口腔外バキュームの使用に加えて引き続き通常の換気・空気清浄も必要であることは、使用者として留意すべきポイントである。

また、細部のユーザビリティに関わるスペックとして、アーム操作性と付加機能にも触れておきたい。フリーアームは名称通り自在に屈曲する関節構造を持ち、高さ・角度・距離を任意に調整して患者の口元に吸引フードを近接配置できる。アルテオシリーズではこの関節部の可動が一層スムーズになり、関節の硬さを院内で調整可能な機構が導入された。これによりアームが不用意に垂れ下がったり、逆に固すぎて細かい位置調整ができないといった事態を防ぎ、術者の好みの抵抗感で安定した位置決めができる。さらにアーム先端の吸引フードはワンタッチで脱着できる設計で、用途に応じた付け替えも簡便だ。東京技研からは直径の異なる「Lフード」「Nフード」がオプション提供されており、例えば広範囲の飛沫をまとめて吸いたい場合は大きめのLフードを、狭い部位にピンポイントで近づける場合は小型のNフードを使うといった工夫ができる。フード自体も耐久性のある樹脂製で、使用後にアルコール清拭で消毒するなどのケアが容易である。さらにアルテオシリーズでは、フード近傍をLEDライトで照らす機能が標準搭載された。吸引ポイントが明るく照らされることで、粉塵が可視化され位置合わせしやすくなるほか、暗部の見落とし防止や患者への説明時にも役立つ。加えて、手を離さずに電源操作できるセンサー式スイッチも備える。アーム途中に配置された赤外線センサーに手をかざすだけで本体のON/OFFが切り替わるため、グローブで操作パネルに触れる必要がなく感染対策上も有用だ。地味ながら現場経験に裏打ちされたこれら付加機能は、実際に導入した歯科医師から「細かい点まで痒い所に手が届く」と評価されている。総じてアルテオの主要スペックは、吸引性能・静音性・空気清浄機能・操作性のバランスに優れ、臨床現場の要求に応える充実した内容と言える。

設置環境と互換性

フリーアームシリーズは、その名の通り診療チェア周辺のどこにでも自由に設置・配置できる 柔軟性が特徴である。ただし具体的な運用形態はモデルによって異なるため、導入にあたって自院の環境に適合するタイプを選択する必要がある。まず、アルテオ-S(単体移動型)はキャスター付きの床置きタイプで、本体に吸引モーターを内蔵している。これは設置工事が不要で、コンセントに接続すればすぐ使用可能な手軽さが利点だ。複数の診療チェア間を移動させて共用することも物理的には可能であり、限られた台数で運用したい小規模医院にも向く。ただし実際には本体重量が約45kgと重く、頻繁な移動は負担になるため、通常はユニットごとに1台ずつ配備する運用が望ましい。次に、アルテオ-Fおよびアルテオ-I(固定設置型)は、本体内にモーターを持たないタイプである。これらは医院内の集中吸引設備(いわゆる「歯科用ユニットのバキュームライン」や機械室の集塵装置)に接続して使用するモデルで、各ユニット脇の床やユニット本体に据え付けて使う。アルテオ-Fは床上据え置き型で独立した支柱脚を持ち、床面に固定金具で設置する方式である。一方アルテオ-Iはユニットマウント型とも呼ばれ、歯科ユニットの側面やアーム部に直接取り付ける仕様だ。I型はユニット周りの省スペース化に優れるが、対応するユニットの構造やブラケットが必要なため、メーカーや機種によっては装着できない場合もある(この点は販売代理店と事前に確認が必要である)。いずれの固定型も、診療室の床下や天井裏を通した配管で機械室の集中ダストコレクターと接続する必要があり、導入時には工事が伴う。新規開業やリニューアルに合わせ計画的に導入するケースに適しており、既存の医院で後付けする場合には配管ルートの確保など現場調査と追加費用を見込む必要がある。とはいえ、集中吸引型は複数ユニットの排気をまとめて屋外へ排出できるため院内の換気負担がさらに軽減される利点がある。またモーター音源が機械室に集約されるため、チェアサイドではほとんど無音に近い快適さが得られる点も大きい。アルテオ-F/I型の導入には、既存のユニット用バキュームポンプの能力を見直すことも必要だ。大半の歯科医院では口腔内バキューム用に集中吸引ポンプを備えるが、新たに口腔外バキュームを複数台繋ぐことで吸引能力の許容量を超える恐れがある。その場合は東京技研が別途提供する高出力の集塵装置(例:「TCV-FACシリーズ」等)にアップグレードするか、アルテオ-S型のような独立モーター型を選択するなどの対策が必要となる。この判断には専門的な検証が要るため、メーカーや施工業者との打ち合わせを十分行いたい。

フリーアームのデータ互換性という点では、デジタル機器ではないため一般的なコンピュータ連携は存在しない。しかし他社製品との物理的互換性として、例えばタカラベルモント社などが提供する天井吊り下げ型アームとの組み合わせや、ユニット据付アームと本体の組み合わせなど、いくつかのメーカー間コラボレーションが見られる。実際、東京技研の最新モデル「フリーアーム・シーテクト」シリーズはタカラベルモント社からも天井設置型吸引アームとして紹介されており、診療ユニットと一体化したスマートな設置が可能である。これは東京技研がアーム部の標準化に取り組み、歯科ユニットメーカーとの協調を図ってきた成果といえる。逆に言えば、口腔外バキュームを後から単体導入する際には既存ユニットや天井レール等との干渉に注意が必要だ。特に床置き型では、ユニットのフットペダル位置や配管ルートと物理的にぶつからないか、ユニット可動域にアームが入り込んで破損しないかといった点を事前にシミュレーションしておきたい。設置場所は患者から見て圧迫感の少ないユニット背後や側面が望ましいが、そこにスペースがなければ天井吊り下げタイプを検討するなど、院内レイアウトに応じた柔軟なプランニングが重要である。

運用面では、日常の取扱手順とメンテナンス体制も考慮しなければならない。フリーアームは精密機器ではあるが操作はシンプルで、基本的にスタッフ全員が直感的に扱える機器である。電源を入れ、アームを適切位置に構えるだけで即座に効果を発揮するため、導入初日から診療に活用できるだろう。ただし、その効果を最大限得るには正しい使用方法の院内教育が欠かせない。例えば吸引フードの位置は患者の口から概ね10cm以内に近づけるのが理想とされる。あまり遠いと吸引力が拡散して効果が落ち、一方で近づけすぎると術野の視界や器具操作の邪魔になる。これは経験により勘所が掴めるが、導入当初は「コップ1個分の距離」を目安に調整するなど院内で統一するとよい。また、エアロゾル発生源に対してフードを垂直に近い角度で向けると捕集効率が高まる傾向がある。超音波スケーラー使用時なら口唇側から45度上方にフードを向けて添える、タービン切削なら口蓋側や舌側からもフォローする、といった具体的な活用例を院内で共有すると良いだろう。東京技研も推奨する「お掃除モード」という便利機能がアルテオ-Sには搭載されている。これは診療終了後にボタン一つで装置内部の粉塵を一気に吸い上げ、フィルタ表面に残った汚れを落とすモードで、日々の清掃負担を軽減してくれる。もっとも、完全にメンテナンスフリーというわけではなく、日常的にフードやアーム表面をアルコールで拭き取り、週単位でプレフィルタの清掃・交換を行う必要がある。メーカーは塵受けフィルタ(安価な薄手フィルタ)は1週間~1ヶ月、パックフィルタは6ヶ月程度、メインのHEPAフィルタは1年程度を交換の目安と案内している。交換部品は歯科ディーラーを通じて入手でき、装着自体は工具不要で誰でも行える。また廃棄するフィルタ類は血液や唾液由来の細菌・ウイルスを含む可能性があるため、感染性医療廃棄物として適切に処理することも心掛けたい。東京技研では定期点検やフィルタ交換時期の案内などのアフターサポートも提供しており、導入医院はそのスケジュールに沿って備品ストックや費用計画を立てておくと安心である。

医院経営にもたらす影響

口腔外バキュームの導入は、臨床面だけでなく医院経営上のプラス効果も期待できる投資である。まず直接的な費用対効果として、本製品の価格を確認しよう。東京技研フリーアーム・アルテオの定価は機種により若干異なるが、例えば自立型のアルテオ-S本体で税抜850,000円前後がメーカー希望価格である(2025年現在)。一方、固定型のアルテオ-F/Iは内蔵モーター非搭載であるため若干低価格に設定されていた。旧モデルのフリーアーム・フォルテ(第5世代)では本体定価およそ62万円(フォルテ-Sの場合)であったことから、性能向上に伴い現行品では若干価格が上昇していると言える。加えて設置工事費(固定型の場合)や周辺オプション費用も発生し得る。導入初期費用として1台あたりおよそ70万~90万円程度を見込むのが現実的だ。複数台導入となれば当然ながらその倍となり、決して小さな設備投資ではない。

しかし、その支出に見合うだけのリターンを多角的に検証することが重要である。まず売上面で注目すべきは、診療報酬上の加算の存在だ。歯科外来における診療環境体制が整っている医療機関は、「歯科外来診療環境体制加算」(いわゆる外来環加算)を算定できる。この算定要件には緊急時の設備や滅菌体制と並んで「口腔外バキュームの設置」が含まれている。つまり本機を導入し所定の施設基準を満たせば、初診・再診ごとに一定の診療報酬点数が加算される仕組みである。具体的な点数は制度改定により変動するが、例えば初診時に数百円程度、再診時にも月1回数十円程度の加算が認められる。これを年間の患者延べ数に掛け合わせれば、それだけで数十万円単位の増収となるケースもあり得る。単純計算ではアルテオ-S本体1台の費用を数年で回収できる可能性があり、特に保険診療中心で患者数の多い医院ほど恩恵が大きい。もちろん加算算定には他の要件も伴うが、感染対策設備の拡充は今や標準的な歯科医院の要件となりつつあるため、将来の診療報酬動向を見据えても本機の導入価値は高いと考えられる。

売上以外にも、患者増患効果や自費率向上といった間接的な収益インパクトも見逃せない。近年は患者が歯科医院を選ぶ際、ホームページや口コミで感染対策状況を気にする傾向が強まっている。実際、「口腔外バキューム完備」「エアロゾル対策万全」などと謳う医院は、患者に安心感を与え集患にプラスに働いている。特に高齢者や全身疾患を抱えた患者ほど、衛生管理が行き届いた医院を選ぶ傾向があるため、フリーアームの存在は医院のブランディングにも一役買う。これは経営上の投資回収には数値化しにくいが、患者満足度や信頼性向上によるリピート率向上、紹介患者の増加といった形で長期的に表れてくるだろう。また、インプラントや自費補綴治療など高度な診療を提供する医院にとっては、手術用空気清浄装置として口腔外バキュームを活用することで、より安全なオペ環境を整えているアピールができる。結果として高付加価値医療への患者受療意欲が高まり、自費診療を安心して選択してもらいやすくなるといった効果も期待できる。

さらに、本機の導入は人的資本の維持にも寄与する。歯科診療における浮遊粉塵は、術者本人やスタッフの健康被害リスクでもある。長年削り粉を吸い込み続けることで呼吸器系の疾患リスクが増すことは周知の事実であり、近年ではウイルス感染症への曝露リスクも含めて歯科衛生士など従事者の不安材料となっていた。優秀なスタッフに安心して働き続けてもらうためにも、職場環境の安全投資は欠かせない。本機を導入することでスタッフの精神的負担は確実に軽減し、それが離職防止やモチベーション向上につながれば、生産性向上や人件費削減(採用コスト減)といった形で経営的メリットが返ってくる。チェアタイムの短縮にも間接的な効果がある。例えば、以前は治療後に診療室全体を消毒し空気清浄機を強運転して…と数分待っていたものが、フリーアーム導入後は汚染拡散が少なく簡易な拭き取りだけで次の患者に移行できるようになったという声もある。1患者あたり数分でも回転率が上がれば、1日の診療枠拡大につながり売上増をもたらす。特にコロナ禍で診療予約間隔を延長していた医院では、エアロゾル対策が強化されたことで元の予約密度に戻せるという効果も報告されている。これらは数値に直結しにくい部分ではあるが、総合的に判断すればフリーアーム導入は単なるコストではなく、中長期的なROI(投資利益率)を十分に見込める戦略投資と考えられる。

もちろん経営面ではデメリットや注意点も検討しておく必要がある。例えばランニングコストである。前述の通り、フィルタ類の定期交換には年間数万円単位のコストがかかる。アルテオ-Sの場合、6ヶ月ごとに25,000円のパックフィルタ、1年ごとに70,000円近いHEPAフィルタ交換が目安となり、1台あたり年10~15万円程度の維持費を見込むべきだ(使用頻度により変動)。これに加え、消耗品在庫の管理や交換作業の手間も発生する。またモーター内蔵型では電気代も無視できない。出力1kWを1日数時間使用すると月間で数百円~千円台の電力コストとなるが、昨今の電気料金高騰もあり台数が増えればそれなりの負担増になる。しかしこれらの維持費は先述の診療報酬加算や生産性向上による増収で十分吸収し得る範囲であるし、何より医院スタッフの安全と患者安心を買っていると考えれば必要経費と言えるだろう。

導入・活用のポイント

フリーアームを有効に使いこなすためには、導入初期の工夫と日常運用上のコツを押さえておきたい。導入当初によくあるのが、「機械自体の性能は良いのに十分に活かし切れていない」という状況である。例えばアームの位置決めが甘く、患者の口から遠い場所で動かしてしまい吸引効果が半減しているケースだ。これを避けるには、導入時にメーカーや販売店による操作指導を積極的に受けることを勧める。東京技研では出荷時に簡易マニュアルや動画コンテンツを用意しており、正しい使用方法やメンテナンス方法を学べる。院長自身が習得するだけでなく、スタッフ全員が共通の認識を持って操作できるよう、時間を取って院内勉強会を開催すると良いだろう。吸引フードの最適ポジションや、症例別の効果的な向け方(例えば右上の奥歯治療時はアシスタント側頬部からフードを当てる等)について、実際の診療中に意識して試行錯誤することでコツがつかめてくる。

また、患者への配慮と説明も忘れてはならない。大きなアームが顔の近くに迫るため、初めて見る患者には恐怖心を与えかねない。そのため、治療開始前に一言「こちらの機械で飛沫や粉塵を吸い取りますのでご安心ください」と断りを入れるだけでも印象は大きく異なる。実際、多くの患者は口腔外バキュームの存在を歓迎する傾向にあり、「最近の歯科医院はしっかり対策していて安心だ」と好意的な声が聞かれる。特にコロナ禍以降は患者の衛生意識も高まっているため、院内掲示やホームページ等でフリーアーム導入の旨を周知し、積極的に信頼獲得につなげる工夫をしたい。

運用を軌道に乗せるには、院内体制の整備も重要だ。たとえばフィルタ清掃や交換スケジュールを誰が担当するかを予め決めておく。往々にして機器管理は院長だけでは手が回らないため、器具担当の歯科助手や滅菌担当スタッフに口腔外バキュームの管理も任せるとよいだろう。交換時期を院内カレンダーに書き込んだり、フィルタ在庫が少なくなったら自動発注する仕組みを作れば、いざという時にフィルタ切れで使えないといったトラブルを防げる。東京技研のサポート窓口に登録しておけば定期点検の案内も受けられるため、導入時に保証内容と併せて確認しておくと安心である。

活用の幅を広げることも検討したい。標準的な虫歯治療やスケーリングで使い慣れたら、応用として義歯調整や仮床研磨といった技工物の院内調整時にも活用できる。従来、院内でレジンや石膏を削る際は技工用集塵機がなければ粉塵が飛び散ったものだが、フリーアームをチェアサイドで併用すれば同様に対応できる。特診室でのインプラントオペでも、滅菌ガウンの上からでも操作できるセンサー式スイッチを活かし、術者が必要に応じて自分でON/OFFを制御する運用も可能だ。移動式カートに載せたアルテオ-Sをオペ室に持ち込めば、簡易な口腔外サクション装置付きオペ室として転用できる。特に全身麻酔下手術中は口腔内バキュームが使えない場面もあるため、フリーアームが全身麻酔科医からも「手放せない装置」として評価されている例もある。開業医レベルではここまで特殊な使い方は稀かもしれないが、一度導入した機器はフル活用してこそ価値が最大化する。スタッフとアイデアを出し合いながら、院内の様々なシーンで創意工夫して使い倒してほしい。

適応症例と導入すべきでないケース

口腔外バキュームは幅広い診療で役立つが、特に効果を発揮する場面と、それほど必要性が高くない場面とがある。その棲み分けを理解しておくと、導入の判断や運用の優先度付けに役立つ。まず適応が非常に有用なのは、エアロゾルや飛沫が多量に発生する処置である。代表例としては、タービンやエアローターによるう蝕除去、クラウンの除去切削、コントラでのレジン切削研磨などが挙げられる。高速回転器具は唾液と削片を混ぜた微粒なスプレーを飛散させるため、フリーアームによる捕集の有無で術野周囲の汚染度は大きく変わる。同様に、超音波スケーラーやエアフローによるクリーニング、歯周治療も適応範囲だ。特にペルプラストなど噴霧性の強い機器は、患者一人分の歯石除去で診療室全体に細菌を撒き散らすと言われるほどであり、衛生士単独で行うPMTCやメンテナンス時にもフリーアームがあれば安心感が違う。口腔外科領域では、外科用ハンドピースで顎骨を削削するインプラントオペや難抜歯が該当する。骨片や血液を伴う飛沫が出る処置では術者側もフェイスシールドを装着するが、フリーアームで吸引すればシールド表面の汚染や視界不良も軽減される。感染症リスクの高い結核患者の抜歯や、肝炎ウイルス陽性患者の治療などでも、飛沫の拡散を局所にとどめる意味で非常に有効だ。さらに、口腔外ではあるが補綴物の調整研磨(例えば義歯の床調整やクラウンの適合修正時)にも使える。これらは診療チェア上で技工物をリューターなどで削ることが多いが、アクリル粉や金属粉が飛ぶため衛生上よろしくない。そうした場面でフリーアームを軽く当てておけば、周囲への二次汚染をほぼ防げる。以上のように、本機は日常診療から専門治療まで極めて広範囲の症例で活躍し、「無くてはならない縁の下の力持ち」と言える。

一方、導入しても活用頻度が低いケースも考えられる。例えば、診療スタイルがほぼ保存修復を行わずスケーリング中心である場合や、逆に補綴中心だが大部分を外注技工に出して院内調整をほとんどしない場合だ。前者は予防処置メインの小規模診療所などで、超音波スケーラー使用時に役立つものの、それ以外は口腔外バキュームの恩恵が少ないかもしれない。もっとも、近年の予防歯科ではエアロゾル対策がクローズアップされているため、たとえPMTC主体でも感染対策の観点から導入価値はあるが、ROIという意味では即効性が低い可能性がある。後者の補綴中心型は、高価なセラミック修復等を手掛けつつ院内ラボ機能が少ない場合である。削合自体は行うので飛沫は出るものの、もし完全個室でその都度清掃できる環境であれば口腔外バキュームなしでも凌げてしまうことがある。ただし患者側の安心を考えれば、やはり設置が望ましいのは言うまでもない。

導入を控えるべき状況としては、設備的にどうしても物理的スペースが取れない場合が考えられる。極端に狭い診療室でユニット周囲にフリーアームを置けない場合、無理に床置き型を導入すると移動動線を圧迫し事故の元となる。そのような場合は、天井吊り下げ型のシーテクトシリーズや、ユニット側への簡易装着型(他社製を含む小型バキューム)も選択肢となる。また経営的に極度の資金難で投資余力がない場合も無理は禁物だ。感染対策は重要だが、他に優先すべき投資(例えば滅菌器の更新等)があるなら、まずそちらに注力すべきケースもある。なお、誤った比較として「歯科用空気清浄機があるから口腔外バキュームは不要では」との声を聞くことがある。空気清浄機は室内浮遊粉塵を濾過する装置であり、エアロゾルを発生源から即時に吸引する口腔外バキュームとは役割が異なる。どちらか一方で十分とは言い難く、むしろ併用することで相乗効果が生まれる。空気清浄機だけでは患者の顔や術者の体表面に付着する飛沫は除去できないし、口腔外バキュームだけでは部屋全体の空気循環は補えない。したがって、両者は車の両輪として考えるのが正しい。限られた予算でどちらかしか導入できない場合も、目先の損得より感染対策トータルでの実効性を基準に判断するとよいだろう。

導入判断の指針(医院のタイプ別)

同じフリーアームであっても、医院の診療方針や経営戦略によって有用性の感じ方は異なる。ここではいくつかの歯科医院タイプを想定し、それぞれにおける導入検討ポイントを示す。

1. 保険診療が中心で回転率を重視する医院の場合

毎日多数の患者を診療し、効率よくチェアを回している保険主体のクリニックでは、フリーアーム導入のメリットは大きい。このタイプの院長は「チェアタイムを1分でも短縮したい」「院内感染リスクで診療停止など絶対避けたい」という考えが強い傾向にある。フリーアームは、患者間の清掃・換気時間を短縮しつつ外来環加算による収入増も期待できるため、まさに効率と収益に直結するツールとなるだろう。導入に際して注目すべきは、複数ユニットへの展開方法である。全ユニットに置くのが理想だが、予算的制約がある場合はまず主要ユニット1台から始め、徐々に増設する方法もある。あるいは可動型のアルテオ-Sを導入し、忙しい時間帯のみフル活用するという運用でも良いだろう。費用対効果に敏感な院長には、メーカーが提示するROI試算(例えば月○人診れば○年で元が取れる等)を参考にするのも有効だ。保険診療中心医院では、スタッフ数も限られる中で清掃・消毒業務が負担となっているケースが多い。フリーアーム導入でその負担が軽減されれば、スタッフの作業効率が上がり本来の業務(アシストや滅菌など)に集中できる。結果として医院全体の業務品質向上にもつながるだろう。留意点として、このタイプの医院ではコスト削減志向から他社の廉価な簡易バキューム装置で代用しようとする例がある。しかし吸引力や耐久性の面で本格的な歯科用機器とは一線を画すため、結果的に不満が残り買い直すケースも散見される。多少初期費用は嵩んでも、効果確実な東京技研フリーアームのような信頼ブランドを選ぶのが長期的に見て賢明である。

2. 高付加価値の自費診療を売りにする医院の場合

インプラントやセラミック治療、矯正治療など自費中心で患者単価が高い医院では、フリーアームの導入は患者満足度とリスクマネジメントの向上という観点で意義がある。まず、インプラントや外科処置では感染対策が結果の成功率に直結する。術野の無菌度を高めるためクリーンルームや口腔外バキュームを備えるのは、もはや高水準の医院では当たり前になりつつある。患者も高額治療を任せる医院にはそのレベルを求めるため、フリーアームがあることで「しっかりした滅菌環境で安心だ」と感じてもらえる。一方で、自費系医院は予約にゆとりを持たせゆっくり診療するケースが多いため、回転率改善の恩恵は相対的に小さいかもしれない。その代わり、治療中の快適性やアフターフォローに重きを置く。フリーアームが静音で患者のストレスを減らす点や、術後の細かな粉塵残りが少ないため患者の服や顔を汚さない点などは、まさに高級クリニックにふさわしいホスピタリティ要素となる。経営的には、装置の導入コストは1件のインプラント症例にも満たない金額である。例えばインプラント1本30万円の利益を得る医院なら、フリーアーム導入は患者に提供する安心サービスへの reinvestment(再投資)と捉えられる。高価格治療を提供する以上、それに見合う安全対策を施すのはプロフェッショナリズムの表れでもあり、長期的に見て医院の評判向上と紹介増につながるだろう。このタイプの医院では、見た目の高級感や空間デザインも重視するため、最新の第7世代「シーテクト-FI」(スタイリッシュな床置型)や天吊り型で空間をすっきり保てるモデルも検討すると良い。患者に「設備投資を惜しまないハイクオリティな歯科医院」という印象を与えることで、治療費への納得感も高まり、さらなる高付加価値メニューの提案がスムーズになるはずだ。

3. 外科処置やインプラントに特化した専門性の高い医院の場合

口腔外科専門クリニックやインプラントセンターなど、特定分野に特化した医院では、フリーアームはもはや必須インフラと言える位置付けだ。とくに全身麻酔下の手術や、多数のインプラントを同時埋入するような大掛かりなオペでは、術者・スタッフ・患者すべての安全確保が最優先課題となる。こうした医院では、口腔外バキュームを複数台導入し、術者用・助手用と二方向から吸引するなど高度な活用も見られる。経営面では、患者1人あたりの治療単価が極めて高いため、安全投資の費用は十分に回収可能である。むしろ、手術中のスタッフ感染事故や術後の院内感染発生などが起これば、信用失墜によるダメージは計り知れず、それを防ぐ保険と考えれば安い投資である。専門性が高い医院では口コミや紹介で遠方から患者が訪れるケースも多いが、「あの医院は感染対策が甘く危ない」などという評判が立つことは絶対に避けねばならない。フリーアームはそうしたリスクを事前に潰しておく防護壁となるだろう。また、人員数も多く手術室が複数あるような規模では、集中真空ポンプ+各術台にフリーアームF型設置という形でシステマチックに全館対応することも可能だ。東京技研の製品は大型歯科病院への納入実績も豊富であり、将来的な増改築にも対応できるスケーラビリティを備えている。外科系医院では装置の酷使による故障リスクも懸念されるが、同社は全国対応のメンテナンス網を持ち、修理代替機の貸出制度も整えているためダウンタイムを最小限に抑えられる点も心強い。総じて専門特化型の医院では、フリーアーム導入は単なる設備強化ではなく、医院の信用と命運を守るライフラインとして位置付けるべきだろう。

4. 開業準備中・新規開業医院の場合

これから歯科医院を新規開業する、あるいはリニューアル移転する場合、口腔外バキュームを導入するか否かは悩むポイントかもしれない。開業直後は何かと出費が嵩み、目に見える内装やユニット台数、CT導入など優先事項が多いため、フリーアームは後回しにされがちだ。しかし、コロナ禍以降の時代背景を考えれば、開業時から設置しておくことが望ましい設備の一つである。理由の一つは、前述の診療報酬加算をスタート時から算定できるため、経営計画に組み込みやすいことだ。加算届出には装置設置の事実が必要なため、開業後に慌てて購入するとタイムラグが生じる。最初から備えておけば、その分早期に収益回収が始まるメリットがある。もう一つは、内装工事に組み込んだ方が設置がスムーズという点だ。床下配管や電源容量確保など、後付けより新築時の方が容易でコストも抑えられる。天井吊り下げ型やユニットマウント型も、開業時に計画しておけば美しく収められる。患者への印象という意味でも、開院当初から各ユニットにフリーアームが備わっていれば、「最新の設備が整ったクリニック」というブランディングが可能だ。これは競合医院との差別化にもなり、集患の武器となる。もちろん予算には限りがあるため、どうしても難しければ台数を絞って必要最小限から始めても良いだろう。例えばユニット2台の開業なら、エアロゾル多発のメインユニット側だけ導入し、残りは様子を見て追加する方法もある。ただし最初から患者に「当院は口腔外バキューム完備」とPRしている場合、途中で減らすと信用に関わるため、その点は慎重に検討したい。新規開業医にとって大切なのは、将来の医院像を見据えた長期的投資判断である。感染対策に注力する歯科医院像を掲げるなら、開業時の勇気ある一歩としてフリーアーム導入に踏み切る価値は十分にあるだろう。

以上、医院のタイプ別に見てきたが、どのケースにおいても共通するのは患者とスタッフの安全を第一に考える医院であれば、フリーアーム導入は概ねプラスに働くという点である。逆に、「患者にも自分たちにも我慢を強いてでもコスト削減したい」という医院では、本機を活かしきれないかもしれない。感染対策機器は使ってナンボであり、使えば使うほど院内のクリーン度が増し、人にも経営にも良い影響を及ぼす好循環が生まれる。自院の理念に照らし合わせ、導入判断の材料にして頂きたい。

よくある質問(FAQ)

Q1. フィルタの交換頻度と費用はどのくらいかかるのか?

A1. フリーアームにはプレフィルタ・パックフィルタ・HEPAフィルタの3層があります。それぞれ交換時期の目安が定められており、プレフィルタは1ヶ月程度(汚れ具合により随時清掃・交換)、パックフィルタはおおよそ6ヶ月ごと、HEPAフィルタは1年ごとの交換が推奨されています。費用はプレフィルタが数千円、パックフィルタが2~3万円、HEPAフィルタが6~7万円程度(いずれも税別)です。従って年間のフィルタ代は機種1台あたり10万円前後を見込む必要があります。ただし使用状況により寿命は前後しますので、フィルタの目詰まり具合を定期点検しながら交換時期を判断してください。なお、フィルタの交換作業は自院で簡単に行えますが、感染防止のため使い捨て手袋やマスクを着用し、使用済みフィルタは密封して産業廃棄物として廃棄してください。

Q2. フリーアームを使用すると診療中の騒音がうるさくないか?患者に嫌がられないか?

A2. 東京技研アルテオシリーズの運転音はおよそ60~65dB前後で、これは人同士の会話や歯科用タービンの作動音と同程度です。患者さんには多少の動作音が聞こえますが、大声で会話するほどの騒音ではありません。むしろ、多くの患者さんは機械音よりも飛沫がしっかり吸われている安心感の方を強く感じます。実際に「音は気にならないし、治療後に顔に水しぶきが飛んでいなくて良かった」という声も聞かれます。どうしても音を抑えたい場合は、オプションの消音アタッチメント(サイレントフィルタ)を装着することでさらに数dB程度の低減が可能です。また、複数台を同時使用する際は診療室にBGMを流すなど環境音でカバーする工夫も有効です。総じて、適切に設置・運用すればフリーアームの音が問題になることはほとんどありません。

Q3. 集中吸引(歯科ユニットのバキュームライン)と併用する場合、院内の真空ポンプ容量は大丈夫か?

A3. アルテオ-Fやアルテオ-Iのような集中配管接続型を導入する場合、既存のバキュームポンプ能力との兼ね合いを確認する必要があります。通常、歯科ユニットの吸引ポンプは口腔内バキューム(唾液や水の吸引)用に設計されており、そこに追加で口腔外バキュームを繋ぐと空気流量が増えてポンプが過負荷になる恐れがあります。東京技研では、フリーアーム1台あたり毎分約3立方メートルの空気吸引量を推奨しています。もし既存ポンプでそれを複数台同時にまかなえない場合は、同社の大容量集塵装置(機械室設置型)への更新や増設を検討してください。導入前に歯科ディーラーやメーカー技術者による現状設備の診断を受け、問題があれば適切な対応策を提案してもらうことをお勧めします。逆に、アルテオ-Sのような独立モーター型は既存吸引ラインに影響を与えないので、そうした制約なしに導入できるメリットがあります。医院規模やユニット数に応じて、最適な方式を選択すると良いでしょう。

Q4. 製品保証や故障時の対応はどうなっているか?

A4. 東京技研のフリーアームシリーズには通常1年間のメーカー保証が付帯しています(販売業者によっては延長保証プランを提供する場合もあります)。万一初期不良や製造上の問題があれば無償修理・交換の対象となります。使用中に不具合が発生した場合は、まず購入先の歯科商店や東京技研カスタマーサポートに連絡してください。同社は全国主要都市にサービス拠点があり、技術員が訪問点検・修理を行います。保証期間を過ぎた後の故障でも、消耗部品の交換や調整で直るケースがほとんどです。修理中に手元にフリーアームが無いと困る場合は、代替機の貸出制度も利用できます(状況によりますので事前に問い合わせてください)。また、長年使用して劣化が進んだ場合の買い替え相談にも応じてもらえます。旧モデルのフォルテからアルテオへのアップグレードでは、本体設置ベースなど一部互換性があるため工事負担を抑えられる場合もあります。定期的な点検契約を結んでおけば故障の予防保全も可能です。いずれにせよ国内メーカー品ならではの手厚いサポート体制がありますので、アフターサービス面でも安心して導入いただけます。

Q5. フリーアームを導入すれば院内感染対策は万全と言えるか?

A5. フリーアームの導入は院内感染リスク低減に非常に有効ですが、これだけで完璧というわけではありません。口腔外バキュームは飛沫や粉塵を吸引除去する装置であり、エアロゾル拡散防止策の一つです。これに加えて、口腔内バキュームによる吸引、口腔外科処置時のラバーダムや吸引装置の適切使用、術者・スタッフのマスクやフェイスシールド装着、処置後の換気と空気清浄機運転、環境表面の消毒など、総合的な感染対策が必要です。フリーアームはあくまで「強力な補助兵器」であり、基本的な標準予防策を怠って良い理由にはなりません。しかし実際には、本機があることで空気中の浮遊菌数が減少し、患者ごとのユニット清掃にかける時間が短縮するといったデータが示す通り、感染予防効果は確かに得られます。最善なのは、フリーアームを含めた多層的な感染予防策を講じることです。その上でスタッフ一同が気を緩めず衛生管理を続けていれば、患者にも「この医院は徹底している」と伝わり、結果として万全に近い安全な環境が維持できるでしょう。フリーアーム導入を機に、院内の感染対策マニュアルを再点検し、足りない部分があれば補完するようにしてください。院内感染防止は一朝一夕に築かれるものではなく、日々の積み重ねに先端設備が加わってこそ盤石になるという点を忘れないことが肝要です。