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訪問歯科のポータブルユニット、メーカーごとに価格比較しておすすめを紹介

訪問歯科のポータブルユニット、メーカーごとに価格比較しておすすめを紹介

最終更新日

訪問診療で感じる機材の課題

在宅の高齢患者を診療する際、ポータブルユニットの重さや吸引力不足に悩んだ経験はないだろうか。階段しかない住宅で腰に負担を感じながら機材を運び、いざ処置中にはバキューム(唾液吸引)の弱さにヒヤリとする…。訪問歯科診療が求められる今、このような現場のストレスは看過できない問題である。機材に起因するタイムロスや処置の制約は、患者満足度や医院の収益にも影響しかねない。

幸い近年、各メーカーから訪問診療専用のポータブルユニットが続々と登場している。軽量化や高性能化が進み、「診療室と変わらない治療環境」を掲げる製品もあるほどである。本記事では、ベテラン歯科医師の臨床経験と経営視点を踏まえ、主要メーカーのポータブルユニットを臨床的な価値と経営的な価値の両面から比較検討する。現場の悩みを解消しつつ、医院としても投資対効果を最大化できる一台を見極めるヒントをお届けする。

主要ポータブルユニットの比較サマリー

まず、日本国内で入手可能な代表的な訪問診療用ユニットの特徴を一覧で整理する。各製品の価格帯、重量、および主な機能を比較し、臨床パフォーマンスと経営効率の概要をつかんでいただきたい。

メーカー(製品名)価格(税別)重量特徴・備考
ナカニシ(VIVAace 2)約1,180,000円約8.6kgマイクロモーター・スケーラー搭載、高トルクモーター。吸引力が前モデル比向上。LED付き3ウェイシリンジ標準装備。
モリタ(ポータキューブ+ SV)約980,000円 ※推定約9.8kgモーター・スケーラー・バキュームを統合。SVモデルはチェアと同等の強力吸引。モリタユニットと共通操作パネルで違和感なし。
オサダ(デイジー2)約1,529,000円(一式)本体10.2kg + バキューム5.0kg業界トップクラスの吸引力と安定性。液晶タッチパネル搭載で直感操作。重量は大きいがカート使用で運搬可。
日本アイ・エス・ケイ(かれんEZ)約1,050,000円8.3kg(バッテリー無)業界最軽量級。オプションバッテリーでコードレス運用可。従来比75%吸引力アップ。片付け容易なオールインワン設計。
チームフォーチュン(PICO)880,000円約9.5kgキャスター付きで移動簡便。LEDライト内蔵。モーター・スケーラー・吸引一体型。300W級の強力バキューム。外部バッテリー利用も可能。
アンジェラス(レジェ)945,000円(メイン) +285,000円(バキューム)メイン5.6kg + 吸引1.9kgユニットと吸引を分離可能なモジュール型。総重量7.5kg程度と非常に軽量。スタック連結で作業時の適切高さを確保。
ヨシダ(カルフェ)711,000円(ユニット部) +282,000円(吸引部)ユニット5kg + 吸引部不明(数kg)最小クラスの本体質量。500mLペットボトルを水源に利用し衛生的。簡易ライト付きモーターと小型スケーラー標準搭載。

※価格は定価ベースの目安であり、実売価格は条件により変動する。モリタのポータキューブ+は標準モデルと高吸引モデル(SV)があり、表の価格は高吸引タイプの参考値。ヨシダ「カルフェ」は吸引機能を追加する場合、別売のバキューム部(カルフェV)を組み合わせる必要がある。

上記早見表から、各製品の方向性が見えてくる。例えば「デイジー2」は重量と価格は最大級だが機能充実度や吸引性能が際立つ。一方、「かれんEZ」や「レジェ」は軽さを武器に現場の機動力を高める設計である。それでは次章から、臨床性能と経営効率の観点で重要な比較軸を詳しく解説しよう。

【比較のポイント】臨床性能と経営効率で見る選定基準

訪問歯科用ユニットを評価する際、見逃せないポイントがいくつか存在する。ここでは臨床面と経営面の双方から、特に比較すべき主要な軸を整理する。製品ごとの差異が生まれる背景と、それが診療結果や医院経営に与える影響について考察してみたい。

【携帯性と設置性】重量・サイズが働き方を左右する

ポータブルユニットの重量や寸法は、訪問診療の現場で直ちに実感するポイントである。例えば、本体質量が5~8kg台の製品(ナカニシVIVAaceやヨシダカルフェ、レジェなど)は、女性歯科医師やスタッフでも比較的負担なく持ち運びができる設計である。軽量コンパクトな機材ほど車への積み込みや階段移動が楽になり、一日に訪問できる症例数の拡大につながる可能性がある。

一方、10kgを超えるような大型機(オサダ デイジー2など)は、安定感やパワーの面で利点がある反面、運搬に体力を要する。しかしメーカー側も工夫を凝らしており、デイジー2ではショルダーベルトや専用カート(オプション)によって負担軽減を図っている。例えばデイジー2は本体とバキュームが分離するため、2個口に分けて運べば一つひとつの重量は抑えられる。持ち運びやすさは人的リスクの軽減だけでなく、訪問先での迅速な設置にも直結する。短時間で機材を設置・撤収できれば、患者や介護者を待たせることなくスマートに診療を終えられ、訪問件数の増加や移動効率の向上による収益アップも見込める。

【吸引力と操作性】臨床クオリティ確保の鍵

訪問診療でバキューム(吸引)の性能は極めて重要である。誤嚥や窒息のリスクを防ぎ、う蝕の削片や水分を確実に除去するため、チェアユニット並みの吸引力が求められる。従来、ポータブル機材は据え置きユニットに比べ吸引力が弱く、「訪問先では十分な吸引ができない」との声もあった。しかし最新モデルでは明確な改善が見られる。モリタ「ポータキューブ+ SV」はチェアユニットと同等の吸引量を実現し、実際に使用した臨床医からも「従来機(他社)より吸引力が強く、処置がスムーズ」との評価がある。ナカニシVIVAace2も前モデルより吸引性能を強化し、「診療室と変わらない治療環境」を謳っている。

吸引力向上の恩恵は臨床結果と患者満足度に直結する。例えば吸引不足で術野が不鮮明になれば処置時間が延び、患者の負担やストレスも増す。強力なバキュームを備えた機種なら、処置時間の短縮による肉体的負担軽減と、誤嚥予防による医療安全の確保が期待できる。これは医院経営の視点では、訪問診療の信頼性向上による口コミ効果や患者数増加につながる要素である。

操作性も比較軸として見逃せない。訪問先では治療スペースや体勢が限られるため、ユニットの操作パネルやインスツルメント配置が直感的であることが望ましい。オサダ デイジー2は液晶タッチパネルと物理スイッチを組み合わせ、初めての人でも戸惑わないシンプルなUIを実現している。モリタのポータキューブ+は、据え置きユニットと同一の操作体系を採用し、普段モリタ製ユニットを使い慣れた術者なら訪問先でも違和感なく扱えるよう工夫されている。こうした操作系の統一や視認性の高い表示は、ヒューマンエラーの防止と診療の効率化につながる。

【診療対応範囲】搭載機能と性能の差異

各ポータブルユニットが搭載する治療機能にも違いがある。ほとんどの製品は低速高トルクのマイクロモーターを主軸に据え、う蝕除去や義歯調整、簡単な外科処置までカバーできる設計だ。例えばアンジェラス「レジェ」のマイクロモーターは最大40,000rpmの回転に対応し、ギヤ比の異なるハンドピースを組み合わせることで、高速切削から低速研磨まで幅広い処置に応用できる。エアータービンのような超高速切削は基本的に搭載されないが、一般的な訪問診療ではマイクロモーター+コントラアングル(増速コントラ)で十分対応可能である。

また超音波スケーラーの有無も注目点である。口腔ケアや歯石除去の需要が高い訪問診療では、スケーラーを標準搭載する機種が望ましい。ナカニシVIVAace2やヨシダ カルフェ、Team Fortune PICOはライト付きスケーラーを標準装備しており、暗所でも視認性を確保しながら歯石除去やポケット洗浄が行える。スケーラーが付属しない場合でも、外付けのポータブルスケーラーを追加導入する手もあるが、オールインワン設計の機種では機材準備の手間が省ける利点が大きい。

さらに付帯機能として、照明や給排水システムの工夫も比較ポイントとなる。PICOやデイジー2はハンドピースにLEDライトを備え、訪問先の照明環境に左右されず口腔内を照らせる。ヨシダ カルフェは500mLペットボトルを水タンクとして使うユニークな方式で、毎回新しいボトル水を使用できるため衛生的かつ補充も容易である。排水タンク容量も製品により様々で、レジェは約900mL、デイジー2は同程度、VIVAace2は大容量ボトル採用と公表されている。容量が大きいほど吸引回数の多い処置でも余裕を持って対応できるが、一方で満水時の重量も増すため、タンク容量と安全装置(満水時自動停止等)の有無も確認すべきポイントである。

【経営効率とROI】価格だけにとらわれない投資判断

価格帯は数十万円から200万円近くまで幅があるが、経営判断では初期投資額に見合うリターンを多角的に考える必要がある。単純に安価な機種を選んでも、性能不足で使いこなせなければ宝の持ち腐れとなり、結果として訪問診療の機会損失やトラブル対応に追われるリスクがある。一方、最高額の機種を導入すれば必ずしも高収益に直結するわけではない。重要なのは、自院の訪問診療のニーズと将来的な展開を見据えた上でROI(Return on Investment)を最大化できるバランスの良い製品を選ぶことである。

例えば、今後訪問診療専門のチームを拡充し積極的に新患開拓を目指すなら、信頼性と機能が充実した本格モデル(デイジー2やVIVAace2など)の導入は長期的利益につながりやすい。強力なユニットを備えることで、在宅でも自費治療に近い高度な処置(例えば難しい抜歯や複雑な補綴調整)が可能となり、他院との差別化や患者紹介にも寄与するだろう。また、吸引力や操作性が優れる機種はスタッフ教育の時間短縮やアクシデント防止にも効果が期待でき、間接的に経営リスクを下げるメリットがある。

逆に、訪問診療はまだ手探り段階で最低限の範囲から開始したい場合、初期コストを抑えたエントリーモデルが選択肢となる。例えばヨシダ カルフェは必要最小限の機能に絞った構成で、本体+吸引部を揃えても100万円前後と導入ハードルが低い。吸引も標準搭載の別製品に比べ力は劣るが、口腔ケア中心であれば問題ないレベルである。このようなモデルで訪問診療を軌道に乗せ、患者数増加に応じて上位機を追加導入するステップも現実的だ。

コスト評価では1症例あたりの減価償却費やメンテナンス費も考慮したい。耐久性の高い製品(実績ある国内メーカー品)は長く使えるため、結果的に年間コストが抑えられる可能性がある。また、故障時のサポート体制も経営面では重要だ。訪問ユニットが突然使えなくなれば診療スケジュールに穴が空き収益ダウンに直結する。モリタやナカニシ、ヨシダ、オサダといった大手は全国的なサービス網があり、代替機の貸出や迅速修理が期待できる。安価な海外製ユニット(例:BestDentなど中国メーカー製品)は初期投資こそ低いものの、故障時の対応や部品調達が不透明なため、結果的にダウンタイムの損失が大きくなるリスクがある。そのため価格だけでなく、アフターサポートを含めた総合的なコストパフォーマンスで判断することが肝要である。

以上の比較ポイントを踏まえ、次章では主要なポータブルユニットそれぞれについて詳細にレビューする。各製品の強み・弱みを再確認し、どのような診療スタイル・経営方針の歯科医師にフィットするかを探っていこう。

【製品別】主要ポータブルユニットの徹底レビュー

ナカニシ VIVAace 2は軽量高機能のオールインワン訪問ユニットである

国内ハンドピース大手のナカニシ(NSK)が手掛ける「VIVAace(ビバエース)2」は、持ち運びやすさと治療機能の充実を高い次元で両立した製品である。質量約8.6kgと比較的軽量で、女性でも無理なく持ち運べるサイズ感ながら、内部には高性能マイクロモーターと超音波スケーラー、さらにLED照明付き3ウェイシリンジやバキュームまで一通り搭載する。往診バッグを開いて電源に繋げば即座に治療を開始でき、診療室さながらの環境を患者宅に再現できる点が最大の魅力である。

VIVAace2の臨床的な強みは、ナカニシが培ってきたマイクロモーター技術の高さにある。低速から高速までトルクが安定したモーターにより、う蝕除去から根管拡大、義歯調整までスムーズに対応できる。特にエンドモード(根管治療用モード)も備えており、往診先で急な根管治療が必要になっても落ち着いて対処可能である。また、従来モデルで指摘のあった「吸引力の物足りなさ」もVIVAace2では改良され、吸引ボトル構造の工夫と専用バキュームモーターの強化により、唾液や水をしっかり吸引できるようになっている。LED付きシリンジは暗所でも患部を照らし出し、細かな処置や色調確認を助ける。

経営面では、VIVAace2は信頼性とブランド力で安心感をもたらす製品である。ナカニシは国内外で評価の高いメーカーであり、製品の耐久性や故障時のサポートも充実している。導入コストは約120万円と中価格帯だが、モーター・スケーラー標準搭載で追加器材の購入が不要なことを考えると、必要経費は妥当な範囲に収まる。軽量ゆえにスタッフ1人で訪問が完結し人件費の効率化にも寄与するだろう。VIVAace2は特に「訪問診療でも妥協のない包括的治療を提供したい」歯科医師に適している。例えば自費補綴や保存処置のフォローを往診で行う機会が多い場合、確かな切削能力と吸引性能を備えた本機が強い武器となる。同時に、軽量設計のため訪問件数をこなしやすく、保険中心でもスケジュール効率を高め収益性を維持しやすいだろう。

弱点を挙げるとすれば、吸引力やパワーは上位機種(デイジー2など)と比べわずかに劣る点である。大量出血を伴う抜歯やヘビースモーカーのヤニ除去といったヘビーな処置では、吸引や出力に限界を感じる場面があるかもしれない。しかし総合的には訪問診療の標準機と呼べる完成度であり、多くの開業医にとって満足度の高い選択肢となるであろう。

モリタ ポータキューブ+は据え置きユニット級の吸引力と操作性を誇る

医科歯科分野で信頼の厚いモリタが送り出した「Portacube+(ポータキューブ プラス)」は、訪問診療ユニット市場におけるゲームチェンジャー的な存在である。従来、モリタは用途別にモーター搭載のType T(治療用)とバキューム搭載のType H(口腔ケア用)という2モデルを展開していたが、Portacube+ではそれらの機能を統合しオールインワン化を実現した。特に上位モデルの「Portacube+ SV」は、チェアと肩を並べる強力な吸引性能が最大の売りである。

モリタらしい特徴として、操作系や部品が同社製チェアユニットと共通化されている点が挙げられる。操作パネルにはモリタのユニットで見慣れたつまみや表示が配置され、モーター回転数調整つまみやスケーラー出力表示などがクリニックのそれと同じ感覚で扱える。初めてポータブルユニットを導入する際も、診療所での日常操作がそのまま活かせるためトレーニングコストが低い。また、ハンドピースやスケーラーのチップなど消耗品もチェア用と互換性が高く、院内在庫の共通化による経費節減にもつながる。

Portacube+ SV最大の強みである吸引力は、実際の臨床でも高い評価を受けている。ある訪問歯科医師のレビューでは「従来使っていた他社機(VIVAace)のバキュームより明らかにパワフルで、診療後の片付け時間まで短縮された」と報告されている。吸引能力が高いと、処置中に余裕が生まれ結果として作業スピードが向上する。術後の清掃・排水処理の手間も軽減され、撤収作業が素早く終わるため「お宅をおいとまする際にバタつかずスマートに帰れる」という。これは患者宅での印象向上のみならず、1日あたりの訪問件数を増やす効果にもつながり得る。

質量は約9.8kg(付属品除く)と中量級だが、キューブ型の堅牢なケースは車での移動中も安定し、耐久性と静音性にも配慮された設計である。電源ケーブルやフットスイッチが本体直付けな点は賛否が分かれるものの、部品の紛失防止や接続ミスを無くす利点もある。臨床的に見れば、マイクロモーターとスケーラー性能は必要十分で、特にモリタのスケーラーは水量・出力調整の精度に定評がある。頑固な歯石の多い患者でも効率よくスケーリングでき、口腔ケアニーズにも応えられる。

価格面では、Portacube+(標準吸引タイプ)が約90万円前後、強力吸引のSVタイプで約100万円弱と推定される。これほどの性能を考えると競争力のある価格設定であり、投資回収も比較的早期に見込めるだろう。特に「訪問診療専門で高齢者の全身管理を重視したい」先生に最適な選択肢である。強力な吸引は誤嚥性肺炎リスクを下げるため、患者や家族からの信頼獲得につながる。加えて、クリニックのユニットと同様の操作性はスタッフの心理的不安を和らげ、チーム全体の訪問診療への積極性を高める効果も期待できる。ただし、初期設定でモリタ製ユニットユーザーでない場合は操作習熟に少し時間がかかるかもしれない点と、電源コードの長さが短めで延長コードが必須など細かな使い勝手の課題はある。しかし総合的には、据え置きユニットの延長線上にある快適さを訪問先で実現した、隙の少ない一台と言える。

オサダ デイジー2は妥協なきパワーと安定性を備えた往診フラッグシップである

長田電機工業(オサダ)の「ポータブルユニット デイジー2」は、訪問診療ユニットの王道とも言える存在である。その特徴は何といっても豊富なパワーと充実した機能にあり、「訪問先でも診療室と同様の診療を」という開発思想のもと妥協なく作り込まれている。ユニット本体約10.2kg・バキューム部5.0kgと携行重量は他機種より大きいが、それを補って余りある性能が魅力だ。

まず注目すべきは、据え置きチェアと肩を並べる強力なバキューム吸引である。デイジー2は高出力の吸引モーターを搭載し、大量の水や切削片も滞りなく吸引できる。外科処置での出血や、嚥下反射の弱い高齢患者の唾液も確実に除去できるため、誤嚥事故防止に寄与する安心感が違う。また、付属の「口腔ケアセット」(オプション)を併用すれば、バキュームホースに口腔ケアブラシ等を装着して吸引しながら清掃が可能で、介護現場での口腔ケアも安全かつ効率的に行える点は他機種にないメリットである。ブラシ先端から水を出し同時に吸引する仕組みで、たとえ寝たきりの患者でも誤嚥リスク少なく清掃できる。このように予防処置から外科処置まで幅広く対応できるのがデイジー2の真骨頂だ。

操作面でも、デイジー2は先進的だ。ユニット本体上部の大型液晶タッチパネルは視認性が高く、回転数やモード切替を直感的に行える。さらに物理的なパワーコントロールノブも備え、タッチとダイヤルの併用で感覚的に操作できるよう工夫されている。例えば緊急時に素早くモーター停止したい場合など、触覚的なスイッチは安心感を与える。インスツルメントホルダーはユニット内にホースごと収納でき、準備・片付け時に脱着の手間が不要なのもありがたい。また本体とバキューム部は縦に積み重ねて設置可能で、床面スペースを取らずベッドサイドでも適切な高さで器具を操作できるよう支柱とホルダーで調整できる。訪問先の限られた空間を有効活用しつつ、術者の姿勢負担を軽減する設計となっている。

経営的観点で見ると、デイジー2の導入はハイエンド投資に分類される。定価ベースで一式約153万円(別途オプション等)と高額だが、その価値は高収益の訪問診療部門確立という形で回収し得る。高度な処置対応力は、在宅患者に対して自費診療メニュー(例えば難易度の高い義歯調整や訪問インプラントメンテナンス等)の提供を可能にし、他院では断られる症例も受け入れることで差別化ができる。吸引性能の高さは介護施設等からの信頼感を生み、施設往診契約の獲得にもプラスに働くだろう。故障リスクについても、オサダは歴史ある国産メーカーでアフターフォローが充実しており、導入医にとって長期にわたるパートナーとなりうる。

デイジー2を最大限活用するのに向いているのは、「訪問歯科でトップクラスの質を提供したい」と考える歯科医師である。具体的には在宅でのターミナルケアや外科処置を積極的に行うケース、あるいは訪問専門クリニックで常に複数の難症例を抱えるようなケースだ。重い機材を持ってでも得たい性能が明確にあるなら、デイジー2は期待を裏切らない働きを見せてくれるだろう。

留意点として、やはり物理的重量の問題は残る。スタッフの人員配置や移動動線を工夫しないと、1日多件数の訪問では負荷が蓄積する可能性がある。またフットコントローラーは1つで、ドクターとアシスタントが同時に器具を使うには息を合わせる必要がある(もしくは二人診療用に分離して使うなど工夫が必要)。しかし、そのような弱点を差し引いても、訪問診療における最高峰のクオリティを追求するならデイジー2は有力な選択となる。

日本アイ・エス・ケイ かれんEZは業界最軽量クラスでコードレス運用も可能なスマートユニットである

新興メーカーの日本アイ・エス・ケイ(Nihon ISK)が展開する「かれん」シリーズの最新機種「かれんEZ」は、携帯性重視の設計と現場目線の改良が光るポータブルユニットだ。重量8.3kg(バッテリー非搭載時)という業界屈指の軽さを実現しつつ、必要な機能をコンパクトにまとめた完全オールインワン構成となっている。

かれんEZ最大の特徴は、オプションバッテリーによるコードレス運用が可能な点である。訪問先によっては電源コンセントが確保しづらい場合や、配線が邪魔になる狭小空間もある。この製品は専用のバッテリーユニットを装着すれば、コードを繋がずに一定時間駆動できる(重量はバッテリー込みでも8.6kg程度と依然軽量)。これにより、古い家屋で3ピンコンセントが無かったり、屋外テント下での診療といった特殊シーンでも臨機応変に対応可能となる。電源確保の煩わしさから解放されるメリットは大きく、往診のフットワークをさらに軽やかにしてくれる。

軽量化に伴って心配される吸引力や耐久性だが、かれんEZは前モデルに比べ吸引性能を約75%向上させており、実用上十分なパワーを確保している。実際に水の吸引テストでもスムーズに排液でき、在宅での日常的な処置(う蝕除去や小規模な補綴調整、口腔ケアなど)で困る場面は少ないだろう。本体寸法はW43×D29×H32cmと小柄で、インスツルメントの配置位置も高く設計されているため、術者が腰をかがめずに操作しやすい。特に座位が難しい患者のベッドサイド治療では、ユニットの高さが適切でないと手技がやりにくいが、かれんEZはその点で配慮が行き届いている。また、器具ハンガーが取り外し可能になり収納性が向上しており、片付けの際にはホルダーを外してコンパクトに格納できる。これにより、準備・撤収の時間短縮と機材破損リスクの低減につながる。

経営面でかれんEZを評価すると、費用対効果の高さがまず挙げられる。定価ベース約105万円と機能の割に手頃な価格設定で、標準でモーター(LED付き)・スケーラー・バキュームすべて備えているため追加購入品が少ない。さらに何より、8kg程度の軽量さは1人の術者でも無理なく扱えるため、訪問診療に余分な人手を割かなくて済む。例えばこれまで機材運搬のために助手をつけていた往診を、かれんEZ導入後は歯科医師単独で行えるようになれば、その分人件費削減や人員の有効活用につながるだろう。また、バッテリー駆動によって訪問範囲の制約が減る点も見逃せない。停電時の非常用ユニットとして院内で待機させておく活用法もあり、BCP(事業継続計画)的な観点からも価値を発揮する。

かれんEZがフィットするのは、「とにかく身軽に訪問診療を始めたい」という開業医や、女性歯科医師など力仕事を極力減らしたいユーザー層である。軽さゆえに車への積み降ろしや患者宅への持ち運びが楽で、毎日訪問に出ても疲労が蓄積しにくい。初めての訪問機材導入で慎重になっている場合にも、扱いやすさから来る安心感は大きなメリットだろう。

留意すべきは、軽量ゆえの限界もある点だ。吸引ボトル容量やモーター出力は上位機種ほどではなく、大量出血を伴う処置や重度歯周病患者の大規模清掃では頻繁な排水や休憩を挟む必要が出るかもしれない。また耐久性も、大柄な金属筐体であるデイジー2などに比べれば繊細な部分もあるため、運搬時の取り扱いには注意が必要だ。それでも、現場のニーズから生まれた工夫が随所に盛り込まれたかれんEZは、訪問診療をより身近で日常的なものに変えるポテンシャルを秘めた一台と言える。

チームフォーチュン ブリングミーPICOは高い機動力と吸引力を兼ね備えたユニットである

国内ではまだ新興のブランドだが注目を集めているのが、チームフォーチュン社の「BringMe PICO(ブリングミー ピコ)」である。その名の通り“小さな相棒”のような位置づけで、キャスター(車輪)付きの移動式デザインを採用した点が他製品と一線を画す。9.5kg前後と標準的な重量ながら、据え置きではなくコロコロと転がして移動できるため、玄関から診療場所までの運搬が非常に容易である。特に施設内などフラットな床で多数の患者を次々診る場合、一々持ち上げず転がして運べるこの機構は大きな利点となる。

PICOの臨床性能も侮れない。超音波スケーラー、マイクロモーター、3ウェイシリンジ、バキュームと必要機能を網羅しており、さらに暗所用にLEDライトも内蔵している。狭い訪問先では器具ホルダーの向きが固定だと使いづらい場合があるが、PICOはホルダー角度を自在に調整でき、自分好みの配置で作業できるのも地味ながら便利な点だ。特筆すべきは300Wクラスの強力バキュームを搭載していることで、これは重量級機種に匹敵するモーター出力である。実際、水の吸引能力や軟質物の吸引ではかなり力強さを感じるレベルで、吸引性能についてユーザーから高評価が多い。加えて、「ポータブル電源も使用可能」と公表されており、本体にバッテリーは内蔵しないものの、市販のポータブル電源(大容量バッテリーパック)を接続すれば外部電源なしで駆動できる仕様である。これにより、半コードレス的な運用も可能であり、電源事情に左右されにくい点は経営上のリスクヘッジになる。

経営的視点でPICOを見ると、そのコストパフォーマンスがまず魅力だ。定価約88万円でこれだけの充実装備を備え、購入後に別途買い足すものがほとんど無い。品質も良好で、大きな不具合報告は今のところ少ない。車輪付きのため訪問時の肉体的負担軽減ができ、結果として往診件数を増やしたり高齢開業医でも長く訪問診療を続けられるというメリットも期待できる。また、他院との差別化という意味では、患者や施設スタッフにとって「キャスターでスマートに運ばれてくる機材」は新鮮で、洗練された印象を与えられるかもしれない。診療後の片付けも、PICOはホース類を本体フックにクルクル掛けるだけで収納できるため、撤収時間が短縮され次の訪問や帰院を急ぐ際に大きな助けとなる。

どんな歯科医師にPICOがおすすめかと言えば、「訪問診療を効率よく、かつ患者に安心感を与えながら行いたい」ケースだ。例えば介護施設で一日複数の部屋を回るとき、PICOならセッティングを小まめに畳まずとも転がして移動できるのでスピーディーだ。強力な吸引は誤嚥リスクを低減し、ケアスタッフからの評価も高まるだろう。一方で最大の注意点は、キャスター移動を前提とした造りのため段差や階段への対応には工夫が必要なことだ。もちろん持ち上げて運ぶこともできるが、他のボックス型に比べ取っ手構造が特殊なので、階段では二人がかりで慎重に運ぶことを推奨する。また、新興メーカーゆえの不安(実績やサポート体制)は少なからずあるため、購入時は信頼できるディーラー経由でアフターケアの確認をしておくと良いだろう。

総合すると、BringMe PICOは機動力とパワーを兼ね備えた意欲作であり、訪問歯科の現場に新風を吹き込む一台である。既存大手の製品と比較検討する価値は高く、自院のニーズにマッチすれば大きな戦力となるだろう。

アンジェラス レジェはモジュール構成により軽量と柔軟性を追求したユニットである

南米発祥の歯科ブランド「アンジェラス」の日本法人が展開する「レジェ(LEGER)」は、少しユニークなアプローチで設計された訪問診療ユニットである。本体(メインユニット)とバキュームユニットが別売り・別体になっており、必要に応じて組み合わせて使用するモジュール方式を採用している。そのため一式そろえた場合の価格は約110.5万円(メイン94.5万+バキューム28.5万、セット購入割引有)となるが、構成を分けたことで生まれる利点が随所にある。

最大のメリットはやはり携帯性の高さだ。メインユニット重量が約5.6kg、バキュームユニットが約1.9kgと、各モジュールが非常に軽量でコンパクトに作られている。分割して持てば一つひとつは片手でも楽々運べるほどで、狭い階段や車の積み下ろしでも取り回しがしやすい。訪問先ではこの2つを縦に連結させて設置可能で、バキュームユニットが土台兼ゴミタンクとして機能し、ちょうど良い高さの器械卓のようになる。これにより、持ち運び時は分散して軽く、使用時は一体化して省スペースかつ適切な高さを確保できるという、いいとこ取りの使用感が得られる。

臨床性能の面では、レジェは堅実な基本性能を備えている。マイクロモーター(LED付き)は1,000~40,000rpmの範囲で回転制御が可能で、訪問診療で行う一般的な切削・研磨処置は問題なくこなせるトルクを持つ。3ウェイシリンジや超音波スケーラーも標準装備されており、オールインワンユニットとしての体裁はきちんと整っている。特筆点として、収納性の良さが挙げられる。ホース類は素早く巻き取って本体に掛けられ、スケーラーハンドピースなども付けたままホルダーに固定して収納できる構造になっている。いちいち器具を取り外してケースにしまう手間がなく、撤収時間の短縮に寄与している。

吸引力については、別体のバキュームユニット次第だが、標準のアンジェラス製バキュームはコンパクトながら良好な吸引を示す。容量約650~900mL(仕様により差)の廃液ボトルを備え、満水時には自動停止する安全機能もある。重量2kg弱とは思えないほど効率的な設計で、ポータブルの吸引装置として単体でも高く評価できるレベルだ。必要ない場面ではバキュームを持って行かず本体のみで運用することも可能であり(例えば吸引不要な簡単な検診や調整だけの日など)、機材を減らしてさらに身軽に動ける柔軟性もレジェの魅力である。

経営面でレジェを考えると、その柔軟な投資形態がメリットとなる。初めからフルセット購入せずとも、まずメインユニットだけ導入し、必要性が出たら後からバキュームユニットを追加するという段階的導入が可能だ。総額では他社中~上位機種と同程度だが、分割購入できることで資金繰りに融通が利く。また、軽量ゆえにスタッフの肉体的負荷が少なく、長期間にわたり訪問診療を続けやすい環境をつくれる点も見逃せない。モジュール構成は故障時にも強みとなり、万一どちらかが不調でも片方だけ代替機を手配すれば対応できるため、診療停止リスクを低減できる。

レジェをおすすめできるのは、「訪問診療を無理なく長く続けたい」と考える開業医である。例えば体力に自信がない場合や、小柄な歯科医師にとって、機材の軽さは継続の大前提となる。レジェなら日々の訪問負担を抑えつつ、基本的な処置は網羅できるので安心だ。また、すでに他社ポータブルユニットを持っているが吸引を強化したいという場合に、レジェのバキュームユニット単体(他ユニットでも使える汎用バキュームとして)を導入するような活用法も考えられる。逆に、デメリットとしてはモジュール分割ゆえに初期セットアップに少し慣れが必要な点だ。組み立て連結に戸惑う場合もあるが、一度コツを掴めば難しくはない。総じて、アンジェラス レジェは軽さと機動性、そして必要十分な治療性能を兼ね備え、訪問歯科の現場をスマートにする選択肢として注目に値する。

ヨシダ カルフェは超軽量コンパクト設計で訪問診療のハードルを下げる

老舗ヨシダの提案する「コンパクトポータブルユニット カルフェ」は、訪問診療機材のエントリーモデルとも言える存在だ。本体質量5kgという驚異的な軽さで、片手でも持てるサイズに基本的なユニット機能を凝縮している。カルフェ本体(カルフェU)にはマイクロモーター(光付き)と超音波スケーラー(プチピエゾ)を標準装備し、水供給は500mLペットボトルで行うユニークな方式だ。別売のバキュームユニット「カルフェV」(重量約2~3kg程度)を追加すれば吸引も可能になるが、まずは最低限の治療行為に特化して軽量化・低価格化を図ったのがカルフェのコンセプトである。

臨床的には、カルフェは簡易ユニットとして割り切った使い方が合っている。モーターは光付きで視野確保を助けるがトルクは控えめで、主に充填物の調整や義歯調整、小さなう蝕除去などライトな処置に向く。大きな歯を削合するようなヘビーな用途には時間がかかるだろう。スケーラーは小型のプチピエゾという機種で、歯石除去やポケット洗浄は問題なく行えるが、パワーは病院の据え置きスケーラーほどではない。しかし訪問先で求められる歯周基本治療レベルには十分対応でき、むしろ振動がマイルドな分高齢者にも優しい面がある。器具ホルダーは磁石式で、スチール製のベッド枠などにペタッと貼り付けておけるため、機材を置くテーブルが無い環境でも工夫して対応できる。

カルフェの強みは何と言っても圧倒的な扱いやすさだ。5kgの本体はノートパソコン程度の重さで、ショルダーベルトを使えば肩に掛けて楽に運べる。往診バッグに入れても嵩張らず、他の診療器材(印象材や薬剤など)と一緒にまとめて一人で持ち運べるだろう。準備もシンプルで、ペットボトルを水源に差し込み電源に繋げば即スタンバイできる。ペットボトル水を使う利点は毎回清潔な水で処置できることに加え、使用後の水路洗浄も容易なことである。タンクを都度滅菌する手間が無く、使い捨て感覚で衛生管理しやすいのは訪問診療に適している。排水タンクは付属しないため、バキューム使用時は別途排唾ボトルが必要になるが、バキューム部を接続すれば一体化する設計だ。

経営面では、カルフェはローコスト導入の切り札と言える。ユニット部約71万円+バキューム部約28万円で合計100万円を切る価格は、主要メーカー製の中では破格である。訪問診療を始めたいが予算が限られる場合、この初期費用の低さは大きな魅力だ。仮に本体のみ導入し、吸引は訪問先備え付けの簡易吸引器やアシスタントによるスポイト等で代用するなら、更に低コストで運用開始できる。実際にカルフェは、保険診療中心で訪問は簡易な処置が主という歯科医院に採用されるケースが多い。往診患者の義歯調整や口腔ケア指導、簡単な充填処置程度であればカルフェで十分賄え、費用対効果が非常に高い。

ただし、カルフェには明確な限界もあることを承知しておくべきだ。大きな咬合面の修復や抜髄処置、重度の歯周処置など高度な治療には不向きであり、そうした症例は無理せず院内へ誘導するか上位機種の併用が望ましい。また耐久性もフルスペック機に比べれば簡素な面があり、酷使すると寿命が縮む可能性があるため、定期的なメンテナンスは欠かせない。しかし裏を返せば、役割を限定し上手に使えばこれほど軽快で便利なツールもない。カルフェは「まず訪問診療を始めてみる」という段階の先生や、「簡単な往診は手軽な機材で済ませたい」というニーズにぴったり応える入門機であり、その存在意義は決して小さくない。

よくある質問(FAQ)

Q1. ポータブルユニットでエアタービン(高速切削機)は使えないのか?

A1. 基本的に多くの訪問診療用ユニットはエアタービン用の強力なコンプレッサーを搭載しておらず、代わりに電動マイクロモーターでの切削を想定している。電動マイクロモーター+増速コントラで最高約20万rpm程度の回転が得られるため、通常のう蝕除去や形成は概ね可能である。どうしてもエアタービンが必要な大きな形成は、患者の全身状態が許せば来院を促すか、あるいは一部ユニットにはオプションでタービン接続が可能なもの(コンプレッサー増設が必要)もあるので検討されたい。

Q2. バッテリー駆動のユニットは何時間くらい使えるのか?

A2. バッテリーの持続時間は製品や使用状況によって異なるが、かれんEZの場合オプションバッテリーでおおよそ30~60分程度の連続使用が可能とされる。通常の訪問診療1件(処置時間20~30分)であれば十分賄える計算である。吸引やモーターをフル稼働させ続けると短くなり、待機状態が多ければ長くなる。バッテリー残量が不足しても、近くにコンセントさえあればAC電源に切り替えて使用を継続できるため、実用上は大きな問題はない。

Q3. 訪問診療ユニットのメンテナンスや消毒はどう行うのか?

A3. 基本的にクリニック内のユニットと同様、使用後の水路洗浄・吸引ラインの洗浄が重要である。各ユニットには取扱説明書に準じた清掃法が示されている。例えば排水ボトルは毎回洗浄・乾燥し、吸引チューブには専用の洗浄剤や次亜塩素酸を通してバイオフィルムの蓄積を防ぐ。水タンク方式なら残水を捨て乾燥させる。ヨシダ カルフェのようにペットボトル式の場合は使い捨てでき衛生的だ。ハンドピース類は通常通りオイル注油・オートクレーブ滅菌し、ユニット本体表面はアルコールで清拭する。持ち運び中に汚染しやすい部分もあるので、患者ごとに清潔を保つ意識が求められる。

Q4. ポータブルユニットの耐用年数はどのくらい?元を取れるか心配です。

A4. 耐用年数は使用頻度やメンテナンス状況によるが、目安として7~10年程度は主機能を維持できる製品が多い。国産大手メーカー品では10年以上故障なく使えている例も珍しくない。仮に100万円のユニットを10年使えば年あたり10万円、月8,000円強の減価償却である。訪問診療1件あたりの収益(保険点数または自費収入)から考えれば、十分回収可能な投資と言えるだろう。むしろ機材導入によって新規に受け入れられる患者や処置が増えることを踏まえれば、数年以内に機材費の元は取れるケースがほとんどである。大切なのは購入後も定期点検を受け、消耗部品を交換しながら長持ちさせることでROIを最大化することである。

Q5. ドクターとアシスタントの二人で訪問診療する場合、一台のユニットで対応できるか?

A5. 基本的には一台のポータブルユニットで歯科医師とアシスタントが協働して診療可能である。例えば歯科医師がハンドピースで切削し、アシスタントがバキュームで吸引するといった連携は、据え置きユニット同様に行える。フットペダルは通常一つだが、バキュームは常時オンにしておくかフットペダルを都度踏んでもらう運用となる。一部機種(ナカニシVIVAace2など)はフットペダル操作で1人用/2人用モードを切替えでき、2人態勢での作業性を高める工夫もある。ただし、同時に2本のハンドピースを独立して動かすことはできないため、処置内容に応じて役割分担と声かけでスムーズな進行を図ることが重要だ。一台で難しければ、スケーリングと切削を分けて2台体制にする方法もあるが、まずは一台を有効に活用してみるとよいだろう。