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歯科用の無配管ユニットのおすすめ比較!価格はどれくらい安いか検証してみた

歯科用の無配管ユニットのおすすめ比較!価格はどれくらい安いか検証してみた

最終更新日

ある日、診療チェアを増設しようと決意したものの、床を掘り返す配管工事費と膨大な初期投資に頭を抱えた経験はないだろうか。たとえば新規開業時、理想の物件が見つかったが水回りの制約でユニット設置を諦めかけたことや、予防専用チェアを追加したいのに工事コストと診療中断のリスクで二の足を踏んだことはないだろうか。実はそうした悩みを解決するのが「無配管ユニット」である。コンセントさえあれば設置できるこのユニットなら、配管工事不要で診療チェアを好きな場所に置ける。メーカーによれば「無配管ユニットなら2,500万円から開業できる」という驚きのプランも登場している。本記事では、無配管ユニットがもたらす臨床的ヒントと経営的戦略を徹底解説する。チェア増設や低コスト開業に挑む歯科医師に向けて、比較ポイントと製品選びの指針を提示し、投資対効果の最大化に役立てたい。

無配管ユニット主要モデルの比較サマリー

配管工事不要な主な歯科用ユニットを、臨床性能と経営効率の観点でまとめた。一般的なチェアユニットが1台200~500万円前後と言われる中、無配管ユニットは低コスト化を実現している。以下の早見表で各モデルの特長とおおよその価格感を把握してほしい。

製品名 (メーカー)臨床の特徴・性能目安価格帯(公開情報)経営面のポイント
ブリングミーDr + 無配管チェア(Team Fortune/FEED)タービン・マイクロモーター・スケーラー搭載のオールインワンユニット。600W吸引モーター内蔵で通常診療に必要な性能を備える。チェア耐荷重135kgで患者の体格を選ばず安定。公開価格情報なし(※大手製と比べ低価格帯とされる)機械室不要で初期工事コスト大幅削減。設置後すぐ稼働可能。将来の移転やレイアウト変更も柔軟で投資回収しやすい。
ブリングミーPICO(Team Fortune)重量9.5kgの超小型ユニット。スケーラー・エンジン・3wayシリンジ・バキューム機能を搭載し訪問診療でも活躍。吸引300W級と小型ながら強力。公開価格情報なし(※BlingmeeDrより低価格と想定)低コストで導入可能なエントリーモデル。訪問診療サービスを追加し収益源拡大にも寄与。複数台を医院内で予防専用に配置するなど運用柔軟性◎。
FEED 無配管デンタルチェア(FEED)コンセントに繋ぐだけで使える配管工事不要チェア。レイアウト自由度が高く、狭小スペースや仮設診療所にも適合。電動リクライニング搭載で患者の体位調節も快適。耐荷重135kgで安心。要問い合わせ(※チェア単体価格)追加チェアとして低予算で導入可。ユニット増設による予防専用チェアの配置に最適。余剰スペースを有効活用しチェア回転率を向上、収益アップにつながる。
ポータキューブ+(モリタ)モリタ製の訪問診療用ポータブルユニット。小型コンプレッサーと吸引を内蔵し、診療に必要な器具をコンパクトに集約。信頼の国内メーカー品質で訪問先でも安定稼働。定価 約98~110万円訪問診療の開拓により新規患者層を獲得。耐久性・サポートが良好で長期利用によるコストパフォーマンス高い。初期投資も抑えめで開業プランに組み込みやすい。
海外製ポータブルユニット(BestDent 他)中国製など海外メーカーの簡易ユニット。数万円~数十万円程度で購入可能な超低価格モデルも存在。簡易コンプレッサーとシリンジ程度の機能が中心で、必要最低限の診療が可能。数万円~数十万円台(モデルにより異なる)圧倒的な低初期費用が魅力。開業資金を大幅節約できるが、耐久性や保証・メンテに不安も。割り切った活用で予備機材や研修用として導入するケースも。

※価格は記事執筆時点の情報や推定。実際の販売価格・構成は各メーカーへの確認が必要である。

無配管ユニットを選ぶ際の比較ポイント

治療性能と操作性

無配管ユニット最大の関心事は、「本当に従来の埋込型ユニットと同等の治療ができるのか」という点である。結論から言えば、主要モデルの性能は一般的な歯科診療に概ね対応可能である。たとえばBlingmee DrはISO規格のタービン接続(4ホール)を備え、マイクロモーターは1,000~40,000rpmまで変速可能だ。吸引も600Wのバキュームモーターにより、唾液だけでなくう蝕削除時の水噴霧やスケーリング時の水霧もしっかり吸引できる。実際、「無配管なのにいつもの診療が行える!」との触れ込み通り、開業医が日常的に行う保存修復から予防処置まで、性能面で大きな不満はないだろう。

もっとも注意すべきは連続稼働時の処理能力である。無配管ユニットは内部に900ml前後の給水ボトルと1,000ml程度の排水タンクを搭載する。長時間の外科処置や大量の注水を伴う処置ではタンク満杯がボトル交換のボトルネックとなるため、適宜排水する手間を考慮する必要がある。もっともタンクにはフロートスイッチが付いており満杯時には自動停止してオーバーフローを防ぐ安全設計である。タービンや超音波スケーラー使用時の水量も通常のユニットと遜色なく、根管洗浄等で大量注水しない限り許容量内に収まるだろう。Blingmee PICOのような小型モデルでは高回転エアタービンを搭載していない点に留意したい。PICOはマイクロエンジン主体で切削器具をカバーするため、たとえばクラウン切除など高速回転が求められる処置では時間を要する可能性がある。重度のう蝕除去や補綴切削はエアタービン搭載の上位モデルを選ぶか、必要に応じて院内の他ユニットと併用するなどの運用工夫が望ましい。

ユニットの快適性と操作フィーリング

無配管ユニットは可搬性ゆえの軽量・コンパクト設計が特徴であるが、それが操作性や患者の快適性を損なっていないか検証する。まず患者用チェアについては、Blingmeeチェアの場合、電動リクライニングとヘッドレスト調節機構を備えており、体格に応じたポジショニングが可能である。耐荷重も135kgと通常の据え置きチェア同等で、大柄な患者でも安心して座らせることができる。座り心地もクッション性を持たせるなど工夫されており、「簡易チェアだから不安定」という心配は無用だ。実際に導入した医院からも「4ハンドでも2ハンドでも通常のユニットと同様に、場合によってはそれ以上に使いやすい」との声がある。ユニット本体も大型キャスター付きで診療ポジションに応じて細かく位置調整できる。従来のユニットではドクターテーブルやアシスタントテーブルの位置が固定的だったが、無配管ユニットは可動性が高いためエルゴノミクスに沿った配置を追求しやすい利点がある。

一方、スピットン(コップ洗口)については据え置き型のようにチェアと一体ではなく、独立した移動式スピットンを併用する形式になる。患者がうがいをする際はアシスタントがスピットンユニットを近づける、あるいは患者に軽く体を起こしてもらう動作が必要になるため、この点は従来よりひと手間増えると言える。ただし移動式ゆえ使用しないときは邪魔にならない位置に退避でき、ユニット周りのスペース有効活用にはプラスだ。総じて無配管ユニットの操作フィーリングは上々であり、術者・スタッフにとっても患者にとっても従来型と大差ない快適性が得られる。強いて言えば「足元が少し狭い」と感じることがある。従来ユニットはユニット本体を床に埋め込むか左右に配置するため足元空間が広いが、無配管ユニットはチェア直下に機器本体を置くレイアウトになりやすい。特に足元からアプローチする6時方向位の処置では、本体や配線に足が触れやすい場合がある。これは配線処理や本体配置を工夫することで軽減可能だが、購入前にショールーム等で実際にポジションをとってみることを勧めたい。

設置のしやすさとレイアウト自由度

無配管ユニット最大のメリットは設置・撤去の容易さにある。通常、歯科用チェアを設置する際には給排水管の配管工事、真空配管、エアー配管、場合によっては床の段上げ工事が必要となり、院内工事費用や休診期間のコストが発生する。それに対し無配管ユニットは「スペースとコンセントさえあればOK」で、届いたその日から診療を始められる。例えば予防専用ユニットを増設するにあたり、わずかな空き部屋や物置スペースがあれば、その場所を即座に第2診療室に変えられるわけである。これは医院成長に合わせた段階的な設備拡充を可能にし、「手狭になったら移転するしかない」という従来のジレンマを緩和する。

またレイアウト自由度も無配管ならではだ。チェア位置を床配管が制約しないため、ユニットの向きや配置を自在に変更できる。たとえば診療動線を見直してユニットの角度を変える、セミナー時にチェアを一時的に移動するといった柔軟な対応ができる。ある開業医は無配管ユニットを導入し、診療時間外にチェアを隅に寄せて多目的スペースとして活用したケースもある。機械室を必要としない点も設計上のメリットで、コンプレッサーやバキュームポンプの置き場を考慮する必要がない。その分、院内を有効に使え、狭い物件でもユニット設置台数を最大化しやすい。将来的なクリニックの移転やリフォームの際にも、ユニットを丸ごと移設できるため設備を無駄にしない。撤去跡もコンセント以外には痕跡が残らず、原状回復も容易である。こうした設置・配置面の優位性こそ無配管ユニットが「開業をもっと自由に!」すると言われる所以であろう。

コストと投資対効果

医院経営の視点で無配管ユニット最大の魅力はコストパフォーマンスだ。まず初期導入費用について、一般的な歯科ユニットが1台あたり200~500万円と言われる中、海外メーカー製の低価格モデルなら100万円程度から入手可能になってきた。今回取り上げている国産無配管ユニットも具体的価格は公表されていないが、「適正価格」を掲げるチームフォーチューン社のPure Lineシリーズ(据置型ユニット)などは市場の半額程度を実現してきた経緯がある。無配管ユニットの場合、配管工事費も不要なため、例えば1台あたり数十万円の工事費や床改修費が丸ごと節約できる。加えて機械室設備(コンプレッサー・バキューム)を別途購入する必要もなく、一台のユニット費用に全てが含まれている点も見逃せない。実際、フィード社は「初期投資を抑えて自費診療用チェアを増設!」というコンセプトで無配管シリーズを提案している。ユニット増設にかかる総コストを劇的に低減できることが、ROI(投資対効果)を高める第一歩となる。

ランニングコストの面でも無配管ユニットは経済的だ。内蔵コンプレッサーはオイルフリータイプが多くメンテナンス頻度が低い。また院内配管がない分、配管内の水消毒システムなども不要で、消毒剤やメンテナンスにかかる費用・手間を削減できる。電気代は内蔵モーターを各ユニットで回す分若干増えるが、中央集中の大型機器と比べ必要なときだけ必要なユニットが稼働するため効率的ともいえる。何より機会損失コストの低減が大きい。従来なら増設を諦めていた狭小スペースにチェアを1台足せれば、例えば歯科衛生士によるPMTC専用チェアとして1日数人分の予防枠を新設できるかもしれない。それが年間を通じて生む自費収入はユニット導入費を上回る可能性が高い。実際、1台増設で月数十万円規模の収益増を報告する医院もある。初期投資が低い分、追加チェアによる増収でROI回収までの期間が短くなるのは経営上大きなメリットだ。無配管ユニットの導入は、単なる節約ではなく攻めの投資として医院の収益構造を強化し得るのである。

衛生管理とメンテナンス性

無配管ユニットならではの運用上のポイントとして、給排水ボトルの管理と作動音(騒音)について触れておく。まず衛生管理の観点では、ユニット内部の給水経路がボトル給水になっていることから、水質管理を自前で行いやすい利点がある。市販の蒸留水や精製水を給水ボトルに補充すれば、水道水由来の不純物や細菌混入リスクを低減できる。逆に言えばボトルを毎日交換・洗浄・乾燥するメンテナンスが必要不可欠だ。従来ユニットでも水ラインの除菌は課題だが、無配管ユニットではユーザーがこまめにボトル洗浄することで清潔を保てる。排水ボトルも同様に、使用後は分離した汚水を捨てフィルター清掃を行う必要がある。スタッフへの負担としては「午前・午後の診療後に5分程度のボトル処理」が日課になる程度で、大きな障壁ではないだろう。吸引ラインに関しては、排水ボトル内で血液など固形物が沈殿しやすくなるため、凝固防止剤や消臭剤の併用が推奨される。これも中央バキュームの分離槽掃除と本質的には同じ作業であり、運用上特段の困難はない。

次に作動時の騒音について。コンプレッサーやバキュームモーターがチェアサイドに内蔵されているため、「診療室が機械音でうるさくなるのではないか」と懸念する声がある。確かに旧来の無配管ユニットでは、作動音が80dB近くに達するケースもあった。しかし現在の製品では防音設計が進み、静音型モデルでは約65dBまで騒音を低減している。65dBは会話や電話の声と同程度であり、診療の妨げになるレベルではない。実際にBlingmee Dr静音型は従来機種比で騒音を大幅カットし、患者とも普通に会話できる静かさを実現している。どうしても気になる場合はユニット本体をチェア横ではなく診療椅子の後方に配置する、簡易な防音カバーを取り付けるなど工夫も可能だ。なお、複数の無配管ユニットを同時に稼働させると、その台数分だけモーター音が発生する。大型の集中機械と分散型の複数機械、どちらが静かかは一概に言えないが、少なくとも最新の無配管ユニットにおいて騒音は許容範囲内である。むしろ機械室が不要なため、コンプレッサー類の振動が院内に伝わる問題もなくなり、下階への騒音リスクが減る利点もある。

主要無配管ユニット製品のレビューと選び方

ブリングミーDr 静音型

無配管ユニットの代表格がTeam Fortune社の「ブリングミーDr」である。FEED社との協業モデルでは静音型に改良され、約80dBあった作動音を65dBまで低減している。本製品最大の強みはコンプレッサー・バキューム・給排水タンクを一体化したオールインワン設計だ。標準でタービン(ライト付き)、電動マイクロモーター、超音波スケーラー、3wayシリンジ、光重合器に至るまで治療機器一式が内蔵されており、購入後すぐに診療行為が可能となる完成度を誇る。吸引力も600Wモーターによる強力なもので、従来の機械室設置バキュームと比べ遜色ない。実際、保険診療の一般治療から自費の精密治療まで幅広く活用されており、「無配管だから治療内容を制限せねばならない」という心配は不要である。チェアは専用のBlingmeeチェアを組み合わせることで、配管無しながらユニット一式が完結する。電動リクライニングと上下動に対応し、据置型と同等の姿勢制御ができるため患者対応も快適だ。

弱みとして指摘できるのはサイズと重量である。ユニット本体は幅47cm×奥行50cm×高さ88cmとコンパクトだが、重量は約47kgある。キャスター付きで簡単に動かせるとはいえ、持ち上げて車に積むような用途には適さない。したがって本機は基本的に院内据え置きを前提とし、「必要に応じてレイアウト変更できる据置ユニット」と捉えるのが良いだろう。また吸引に関しては排水タンク容量1Lのため、外科処置など大量の液体を伴う場合は途中でタンクを捨てる手間がある(フロート停止機能で安全には配慮されているが)。総合的に見れば、ブリングミーDr静音型は「院内で通常診療に使える無配管ユニット」として最有力の選択肢である。こんな歯科医師にマッチする製品だ:

開業医でユニット増設を検討中の方

自費専用チェアやメンテナンス用チェアを追加し収益拡大を図りたい場合、本機なら工事費ゼロで短期間に導入できる。特に訪問診療併設型のクリニックで、空き診療室を予防ルームに転換するなど柔軟な戦略が取れる。

開業準備中で低コスト志向の方

初期投資を極力抑えたいが診療機能に妥協したくない場合、据置型ユニットの代替として本機を導入することで「ローコスト開業」が現実味を帯びる。例えば配管工事不要な分、限られた開業資金を他の設備(デジタル機器等)に振り向ける余裕が生まれるだろう。

ブリングミーPICO

Blingmee PICOは上記Drの弟分にあたる超小型ユニットである。高さ48cm、幅・奥行き各34cmと一辺が30数cmのキューブ状で、重量も9.5kgと大人が片手で持てるほど軽い。キャスター付きでコロコロ引いて移動でき、車への積み下ろしも容易だ。最大の特徴はポータビリティであり、まさに訪問歯科の現場ニーズに応えて開発された経緯がある。機能面ではタービンこそ非搭載なものの、LED付き超音波スケーラー、マイクロモーター(エアーではなく電動エンジンタイプ)、3wayシリンジ、バキューム(排唾管も接続可)と、一通りの器具を備える。吸引力も300W級とこのサイズでは驚くほどパワフルで、居宅での口腔ケアや簡単な処置なら何ら問題ない。実際にPICOを往診用に導入した歯科医からは「従来の訪問用ユニットより吸引力が高く、誤嚥リスクが減った」と評価されている。またAC100V電源で動作するがポータブル電源(バッテリー)でも使用可能なため、訪問先で電源が確保できない場合でも対応しやすい。

PICOの弱点は、やはりその処置対応範囲の限定にある。高トルク・高速のエアタービンを必要とするう蝕除去や補綴切削は不得手で、あくまで「スケーリング・ポリッシング・簡易な調整」が主戦場となる。従って院内メインユニットとしてではなく、予防専用チェアのユニット部や訪問診療セットとしての位置付けが現実的だ。また排水は都度ボトルへ溜める方式で連続吸引には限界があるため、長時間の維持療法や外科処置には向かない。とはいえ価格も据置型に比べて格段に安価と予想され、サブユニットとして1台持っておく価値は高い。たとえば開業医であれば、PICOを使って月数回の施設往診サービスを始めることで新たな収入源を得られるだろう。その際も、普段は院内で簡易診療チェアとして活用しつつ必要時に持ち出すといった融通が利く。本製品は以下のようなニーズに適している。

訪問診療を本格化させたい医院

往診専用機材として最適。従来の訪問ユニット(例:モリタのポータキューブなど)と比べ軽量で持ち運びやすく、セッティング時間も短縮できる。これにより訪問件数を増やし、在宅患者の受け入れ拡大による収益アップが期待できる。

衛生士主体の予防ルームを低コストで増設したい

口腔衛生指導やPMTC専用に小型ユニットを設置し、空きスペースを有効活用するケース。PICOなら経費を抑えつつ「衛生士専用ユニット」を実現できる。例えばユニットが足りず患者のクリーニング待ちが発生している医院では、PICO導入でチェア回転率を向上させることができる。

FEED 無配管デンタルチェア – 工事ゼロで設置できる可搬式チェア

無配管ユニットとセットで語られるべきが配管工事不要のデンタルチェアである。FEED社の無配管式チェアは、文字通り床への固定や配管が一切不要で、コンセントに挿すだけで使用可能な診療椅子だ。このチェア単体には切削機能などは無いが、先述のブリングミーDrやPICOと組み合わせることでフル機能を発揮する。強みは何と言ってもレイアウト自由度の高さだ。床にアンカー固定されないため、診療室内で配置換えが容易であり、必要に応じて丸ごと移動することもできる。電源も標準家庭用コンセント(3P)で動作するため、移設先で特別な設備工事はいらない。具体的な仕様を見ると、電動リクライニングと昇降機構を備え、患者の体位調整や高齢者の乗降サポートもしやすい。寸法は幅約65cmとスリム設計で、診療スペースの有効活用に寄与する。耐荷重も135kgと十分であり、一般的な患者であれば安心して使用できる堅牢性を持つ。

一方、据置型チェアと比べると高級感や安定感で劣る面はある。床に固定しない構造上、体重移動時にわずかな揺れを感じることがあり、特に重度障害者歯科など全身を大きく動かす処置では不安を覚える可能性がある。ただし通常の範囲の治療姿勢では全く問題なく、患者から「グラつく」と苦情が出ることは稀だ。もう1つは足元スペースの問題で、無配管チェアでは床上に配線やチューブが伸びる関係上、従来より足元が狭く感じる場合がある。これは前述の通り配置工夫でカバー可能だ。価格面の情報は非公開だが、一般的な電動診療椅子より安価と推測され、開業時のコスト削減に大きく貢献する。例えば居抜き物件で配管位置が限られる場合でも、このチェアなら好きな位置にユニットをレイアウトできるため、物件制約を乗り越え理想の診療空間を作れる。適するユーザー像としては:

開業準備中で内装費を抑えたい歯科医師

テナント物件で配管工事に制約がある場合や、低資金で開業する戦略として、無配管チェアを選択する価値は高い。「ユニット1台200万円+工事100万円」という従来相場を覆し、工事ゼロでユニット導入できるため、物件選択の幅も広がるだろう。

分院や仮設診療所で機動的な運用をしたいケース

期間限定のクリニックやイベント歯科など、後で撤去する前提の場所では、無配管チェアなら原状復帰が容易で撤去コストも僅少だ。また、患者増に応じてユニット台数を段階的に増やすようなクリニック成長モデルにもマッチする。必要になれば追加、不要になれば別室へ移設といったフレキシブルな経営判断を可能にする。

モリタ ポータキューブ+

大手メーカーからはモリタの「PortaCube+(ポータキューブ プラス)」が無配管ユニットの選択肢となる。正確には訪問診療用のポータブルユニットであり、チェアは含まない機器ボックスだが、コンセプトとしては「持ち運べる歯科ユニット」そのものである。標準価格はタイプにもよるが98万円~110万円程度とされ、国内大手ブランド製としては比較的手の届きやすい価格設定だ。Type T(高トルクタイプ)とType H(高吸引タイプ)がラインナップされており、用途に合わせて選べる。内容はコンプレッサー、3wayシリンジ、バキューム(オプションで高吸引も可能)、タービン・マイクロモーター接続口などである。ブリングミーシリーズに比べると搭載機能は厳選されているが、その分質実剛健な設計と信頼性が売りだ。使用しないときはスーツケース大に収納でき、院内の物陰に保管しておける。実際にPortaCubeを予備ユニットとして導入し、メインユニット故障時のバックアップや、院内増設チェアが間に合わない時の応急処置として活用する医院もある。

デメリットとしてはチェアやライトを別途用意する必要がある点だ。訪問診療では簡易チェアや患者の車椅子等で代用するが、院内で使う場合は適合する可搬式チェア(例えば前述のBlingmeeチェア等)を合わせて導入する必要がある。また吸引能力や水量も、据置型ほど潤沢ではないため連続した大処置には向かない。それでもモリタブランドのアフターサービスが受けられる安心感や、日本製コンプレッサーの静粛性・耐久性は魅力である。訪問診療を積極展開する開業医にとって、PortaCube+は往診専用機として患者獲得力を高める武器となる。具体的にこの製品がフィットするのは:

モリタ等の国内メーカー設備で統一したい医院

既にモリタ製チェアやユニットを使っている場合、ポータキューブなら一貫した操作感とメーカーサポートを享受できる。院内の技工エアやハンドピースをそのままポータブルユニットにも転用でき、スタッフ教育の手間も少ない。

訪問診療専門の歯科や大規模法人

信頼性とメンテナンス性を重視するならば、多少高くとも国内メーカー品を選ぶ価値は大きい。頻繁な持ち運びに耐える筐体の強度や、消耗品供給の確実さは、長期的な稼働率に影響する。ROIの観点でも製品寿命が長いことは重要であり、モリタ製品の品質は安心料として計算できる。

海外製格安ユニット

最後に触れておきたいのが、中国など海外製の格安ユニットである。例えばBestDent社のポータブルユニットBD-402シリーズは通販サイトで7~8万円台という破格の値段で販売されている。これらはアタッシュケース型に小型コンプレッサーと簡易なシリンジ・バキュームを備えたもので、必要最低限の治療行為(切削というより応急処置や清掃)が行える。ただし性能・耐久性・法規適合の面で課題があり、日本の薬機法の承認を取得していない機器も多い点に注意が必要だ。また故障時の修理サポートや消耗品入手もメーカーによっては望めず、クリニックの主力設備として据えるにはリスクが高い。とはいえ「とにかく初期費用を下げて開業したい」というニーズに応じて、こうした輸入ユニットを導入する例がゼロではない。開業後の早い段階で実績を作り、その後信頼できる国産品へ置き換える前提なら、短期的ROIは非常に高いと言える。

格安ユニットのメリットは何と言っても金銭的ハードルの低さである。100万円を切る価格でユニットが手に入れば、開業資金の融資圧縮や、他の設備(CTやマイクロスコープ等)に予算を回せるメリットがある。例えば「診療ユニットは安いもので済ませ、患者ニーズの高い最新医療機器に投資する」という戦略も成り立つだろう。デメリットは上述の耐久・保証の問題に加え、操作性の甘さや細かな不具合が起きやすい点だ。実際に海外製ユニットを個人輸入したある歯科医師は「数ヶ月でコンプレッサーが故障したがパーツ供給がなく結局買い直した」と明かしている。また医療広告ガイドライン上、承認外機器を使っていることを対外的に公表するのは望ましくなく、その意味でも長期利用は推奨できない。総じて海外格安ユニットは「短期間で減価償却し使い捨てる」くらいの割り切りが必要だ。開業前の実習や院内研修用、あるいは予備ユニットとして購入し、メイン機が故障した際の繋ぎに使うなど限定的な用途であれば、一考の価値はあるだろう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 無配管ユニットの吸引力や処理能力は中央据置ユニットと比べて見劣りしないか?
A1: 多くの場合、見劣りしない。例えばBlingmee Drでは600Wモーターにより唾液だけでなく削合時の湿潤や洗浄水も十分に吸引できる。排水タンク容量は1L程度で、通常の治療なら途中で満杯になることは少ない。長時間の外科処置では途中排水が必要だが、フロート停止機能により安全に対処できる。したがって一般的な保存修復・補綴治療レベルでは吸引力不足を感じるケースはほとんどない。

Q2: 無配管ユニットの給水ラインの衛生管理は難しくないか?
A2: 特別に難しくはない。ボトル給水方式のため、毎日使用後に給水ボトルを洗浄・乾燥させれば衛生を保てる。水道直結型と違い、水質管理を自前でできる利点もある。むしろ従来ユニットの配管内バイオフィルム問題を考えれば、ボトル交換の方が確実に清潔を維持しやすい。排水ボトルも毎日廃棄と洗浄を行うことで問題ない。消毒や臭気対策として酵素系クリーナーを用いるとより良い。

Q3: 無配管ユニット導入による騒音や振動が心配だが実際はどうか?
A3: 静音化技術の進歩で、現在のモデルはかなり静かである。Blingmee Dr静音型では約65dBと会話程度の音量に抑えられている。中央機械室方式ではコンプレッサー音が離れた場所で響くのに対し、無配管ユニットはチェアサイドにあるが動作音自体が小さい。振動も装置内で吸収される設計で、患者が揺れを感じることはまずない。配置に工夫すれば音はさらに軽減でき、騒音が診療の妨げになることはほとんどない。

Q4: 無配管ユニットが故障した場合のリスクと対策は?
A4: 内蔵コンプレッサーやバキュームが故障すると当該ユニットは使用不能になる。ただしこれは据置ユニットでも同様で、中央コンプレッサーが故障すれば院内全ユニットが停止するリスクがある。無配管ユニットの場合、万一の故障時も他のユニットには波及しない利点がある。対策としては、定期メンテナンス契約を結び故障予兆を早期発見する、予備のポータブルユニットを用意しておく等が挙げられる。また販売元のサポート体制も確認し、代替機貸出サービスなどがあると安心だ。

Q5: 無配管ユニットと相性の良い診療科や逆に不向きなケースはあるか?
A5: 相性が良いのは予防歯科・訪問歯科・小児歯科など比較的水使用量が限られ大掛かりな機材を必要としない分野である。例えばPMTC専用ルームや学校検診などでは無配管ユニットの手軽さが活きる。不向きなのは長時間の外科処置や全身管理を伴うオペ室用途で、これは無配管ユニットが不得意というより、手術設備一式や静脈内鎮静用モニター類との配置上、専用の特別診療室が望ましいためである。とはいえ簡易な抜歯やインプラント埋入程度であれば十分対応可能であり、運用次第でほとんどの診療科に適用できる。