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「安い歯科用ユニット・チェア」は、どこまで安くなったのか?製品を比較

「安い歯科用ユニット・チェア」は、どこまで安くなったのか?製品を比較

最終更新日

歯科ユニット価格の壁に悩む先生へ

開業やユニット増設のたび、「歯科用ユニット」の見積価格に思わずため息をついた経験はないだろうか。1台で200万~300万円が当たり前とも言われ、軽自動車より高額なこの治療椅子を前に、買い替えを先送りして古いユニットをだましだまし使い続けている先生も多い。それに伴う故障や不具合が起きるたび、「患者さんに迷惑をかけられない」とヒヤリとする日々ではないだろうか。

実は近年、この状況が少しずつ変わりつつある。海外メーカーの参入や新興企業の努力により、100万円前後という従来の半額以下の価格帯で購入できる歯科用ユニットが登場しているのである。本記事では、「安い歯科ユニット・チェア」の実力と経営的メリットに焦点を当て、臨床面と医院経営の両面から賢い選択のヒントを探っていく。ユニット導入コストの悩みを解決し、投資対効果を最大化する戦略を考えてみよう。

比較サマリー

まず、代表的な低価格帯の新品歯科ユニットをいくつかピックアップし、臨床性能と経営効率の観点で一覧表にまとめる。価格は目安であり、実際の販売価格やオプション構成により変動するが、従来品との価格差は一目瞭然である。

製品名(メーカー)本体価格帯(目安)臨床面の特徴経営効率に関するポイント
SDユニット AJシリーズ(エスディーメディカル)約998,000円~(税別)必要機能に絞ったエントリーモデル。タービン用ハンドピース回路標準、マイクロモーター搭載機種も選択可。FDA・CE認証の世界標準部品を採用し品質確保。国内相場の約1/3という破格の初期投資額。過剰な機能を省くことで無駄なコストを削減し、浮いた予算を他の設備投資や複数台導入に充当可能。
929デンタルユニット(RF929)要問い合わせ(低価格帯)一般歯科診療に必要な機能のみを備えたシンプル設計。チェア動作音が静かで、5色の柔らかい色調からシート色を選択可。ユニット各部の清掃がしやすい構造。開業時の資金負担を軽減できる価格設定。シンプル構造のため故障リスクが抑えられ、メンテナンス頻度の低減や清掃時間の短縮による診療効率向上が期待できる。
Comfort Gentle(Ciメディカル)約980,000円~(税別)国内メーカーによる純国産ユニット。膝折れタイプとカンタータイプを選択可。衝撃を与えないスロースタート/ストップ機構や2関節ヘッドレスト標準搭載など、患者・術者双方に配慮した設計。国産ならではの全国規模のサポート体制と長期保証オプションで安心感が高い。価格を抑えつつ長期使用による総合的なコストパフォーマンスを重視する医院に適合。

※上記の価格は基本構成時の目安(税別)であり、オプション追加や取引条件により変動する。また主要メーカー(モリタ、ヨシダ、タカラベルモント等)の一般的なユニット価格相場は200~500万円前後である点を踏まえると、これら低価格モデルがいかに導入ハードルを下げているかが分かるだろう。

安価な歯科ユニットを選ぶ比較ポイント

低価格の歯科ユニットを検討する際、従来の高価格ユニットとは異なる視点で比較・評価することが重要である。ここでは臨床機能と経営効率の両面から、押さえておきたい比較の軸を解説する。

機能と性能

まず気になるのは、「安いユニットは機能や性能面で十分なのか」という点である。確かに高級機種には多彩なオプション(電動マイクロモーター内蔵、複数のハンドピース同時装着、自動うがい水消毒システム、モニター一体型など)が搭載される。しかし低価格帯ユニットでも一般歯科診療に必要な基本機能は一通り揃っているケースが多い。例えばタービン用のエアー配管やスケーラー用超音波配管、シリンジ、水洗スピットン、術者・アシスタント用テーブルといった標準装備は確保されている。

一部のモデル(例:SDユニットAJ15/18やComfort Gentleなど)では電動マイクロモーターが標準またはオプションで搭載可能となっており、エンド治療や低速処置もカバーできる。むしろ安価ゆえに「使い切れない高度な機能を省いた設計」と言え、必要最小限の機能に絞ることで操作がシンプルになる利点もある。高額ユニットで搭載されがちな機能でも、例えば水ライン自動洗浄や給水ボトル加圧洗浄機構が無い場合は、スタッフが手動で対応する運用で代替可能なことも多い。臨床上必要な機能と「あれば便利」な機能を峻別し、自院の診療範囲で本当に求められるスペックかどうか見極めることが大切だ。

一方、低価格ユニットの中には海外製品を日本向けにカスタマイズしたものが多く、その際に日本の薬事基準に合わせた仕様変更が行われている場合がある。例えばユニットと一体化したX線装置や麻酔システムなど、日本では別途届出が必要な機器は標準では付属しないことがある。しかしこれらは国内開業医にとってもともと必須ではないケースが多いだろう。総じて、保険診療中心の一般歯科診療であれば、低価格ユニットのスペックでほぼ事足りると言える。特定の専門処置(外科処置での特殊体位や全身麻酔モニタとの連携など)を想定する場合のみ、追加機能の要否を検討すればよい。

操作性と快適性

価格が下がっても、患者さんや術者にとっての快適性は看過できないポイントである。高級ユニットでは人間工学に基づくシート形状や膝折れ(ステップ)機構、美しい内装との調和を意識したデザインなどが特徴だ。低価格ユニットでも最近はこの点が向上しており、患者の乗降を助ける膝折れタイプのチェアや、ヘッドレストの細かな位置調整ができる2関節式ヘッドレストを採用するモデルも登場している。例えばCiメディカルのComfort Gentleは国産機らしく膝折れ式・カンター式の両タイプをラインナップし、小児から高齢者までスムーズに乗り降りできる構造だ。患者が長時間横たわっていても負担の少ないシートクッションや、昇降・背もたれ動作時に衝撃を与えないスロースタート&ストップ機構を持つ機種もあり、価格が低くても快適性への配慮は十分にされている。

一方、術者側の操作性に関しては、ユニットのテーブル配置やペダル操作など基本的な部分は大きな差がない。低価格ユニットでもドクターテーブルは広めで器具が取りやすく配置でき、アシスタント側にもスライドトレー式のテーブルを備えるものがある。ただし、ハンドピースのホース供給本数や配置の自由度は機種によって異なる。たとえば高級機では往診用モーターやレーザーなど複数の配管オプションに対応できるが、安価機種では標準的なタービン・スケーラー程度の本数に限られる場合がある。またユニットと一体化したモニターアームや書画カメラなどはコストの関係で省かれがちだ。しかしこれらは後付けでユニット外に設置することも可能なため、大きな制約にはならないだろう。

デザイン面では、色のバリエーションや診療室の雰囲気への馴染み方もポイントになる。昔は安価な海外ユニットというとデザインが野暮ったい印象もあったが、近年はシンプルかつ洗練されたデザインのものが増えている。例えばRF929デンタルユニットは淡いトーンの赤・黄・緑・青・水色の5色からシートカラーを選べ、クリニックの雰囲気を壊さないよう配慮されている。患者目線ではユニットのメーカーやブランドよりも「清潔で新しいか」「座り心地が良いか」が評価に影響する。古びて破れた椅子より、新品でシンプルでも清潔感のあるチェアの方が患者の安心感・満足感は高まるはずである。

耐久性とメンテナンス

医療機器としての信頼性や耐久性も比較の重要な軸だ。低価格ユニットは「壊れやすいのでは?」という不安の声もあるが、ここで注目すべきは各社の素材選定や部品調達の工夫である。SDユニット(AJシリーズ)やスペースディアなどは、世界標準規格の部品を採用しつつ過度なカスタマイズを避けることで品質を担保している。例えばホースやバルブ類はFDAやCE認証を持つ汎用部品を用い、安価でも必要十分な耐久性を確保している【25】。実際、チューブ類には米国製の耐久品を採用し3年保証を付与するなど、要所で信頼性を高める工夫が見られる。またシンプルな構造ゆえに故障箇所が少なくトラブルシューティングが容易というメリットもある。高度な電子制御や複雑な可動部が多い高級機は便利な反面、マイコン不良やセンサー故障などトラブル要因も増える。対して低価格機ではアナログに近い制御系統が多いため、自力で原因究明しやすく部品交換もしやすい傾向がある。

もっとも、医療機器である以上ゼロリスクはない。故障時のサポート体制は必ず確認しておきたい。国内大手メーカー品であればメーカーまたは代理店のサービスマンが迅速に駆けつけてくれるのが一般的だ。では新興メーカーの安価ユニットの場合はどうか。例えばエスディーメディカル(SDユニット)は設置からメンテ対応まで自社で行っており、導入医院数4,000院以上の実績を背景に一定のサービス網を構築している。CiメディカルのComfort Gentleは全国12か所のサポート拠点と11か所の営業所ネットワークを持ち、メーカー専門スタッフが設置・修理を担当する体制を謳っている。地方開業でも安心できるサポート網かどうかは、メーカーごとに差があるので事前によく調べたいポイントだ。特に地方で開業し他にユニットが1台しかない状況では、万一の故障対応スピードが生死を分ける。契約前に保守契約や保証期間を確認し、できれば長期保証や定期点検プランの有無もチェックしておこう。

メンテナンス性に関しては、低価格ユニットの多くがユニット内配管の取り回しをシンプルにしており、清掃・消毒がしやすい利点がある。RF929デンタルユニットは清掃性を重視した構造とされ、術後ごとのユニット清拭や吸引ボトル洗浄などの日常メンテがスムーズに行える。さらに近年販売されているユニットは価格帯問わず、給水ボトル方式(タンクの水を給水し、残水はボトルを取り外して捨てる)が主流で、配管内の衛生を管理しやすい。安価な機種でもこのような感染対策への配慮は押さえてあることが多い。ただし、自動的に水路を消毒液で洗浄するといった高度なシステムは省かれがちなので、そこはスタッフの手作業や定期的な薬液洗浄でカバーする必要がある。機械に頼りすぎず手間を惜しまない運用さえできれば、低価格ユニットでも衛生面の不安を最小化できるだろう。

コストと投資対効果

最後に、経営的視点から低価格ユニット導入のメリット・デメリットを考察する。初期導入コストの低さは言うまでもなく最大の魅力である。例えば通常300万円のユニットを1台導入する予算があれば、100万円クラスのユニットなら3台導入してもお釣りが来る計算になる。これは開業準備医にとって極めて大きな利点で、ユニット台数を増やして診療効率を上げる戦略が可能となる。具体的には、複数ユニットを用意することで歯科衛生士が予防処置を行うチェアと、ドクターが治療を行うチェアを並行稼働させることができ、1日の患者対応数を飛躍的に増やせる。結果として収益アップにつながり、安価ユニットに投じた費用の投資回収も短期間で達成しやすくなるだろう。

さらに、価格を抑えた分の資金を他の設備投資や内装、広告に振り向ける余地が生まれるのも大きい。例えば最新のデジタルスキャナーやCTを導入したり、院内感染対策の充実、あるいは内覧会など開業プロモーションに予算を配分するといった戦略が可能だ。患者から見て評価されやすい部分(治療内容の充実や院内の清潔さ)にリソースを割き、ユニットは“足りていれば十分”と割り切る考え方は、特に保険診療メインでコスト意識の高い歯科医院に適している。

ただし留意すべきは、ランニングコストや将来的なコストである。安価なユニットは初期投資こそ低いが、耐用年数や故障率次第では長期的なコストメリットが薄れる可能性もゼロではない。法定耐用年数は歯科用ユニットで7年と定められているが、これは減価償却の目安に過ぎず実際には10年以上使う医院も多いだろう。仮に10年間使う前提で、「10年間壊れずメンテ費も大差ない」のであれば安価ユニットの勝ちだが、「数年で不具合が頻発し修理費や代替機購入が必要」ではかえって高くつく。現状、市場投入から数年の新興モデルも多く長期実績は読みづらいが、メーカー保証が手厚いか(例:5~10年の延長保証プラン等)や、導入医院の口コミ・評判を集めることで信頼度を推し量ることはできる。

また中古ユニット市場の存在もコスト面で触れておきたい。予算を極限まで抑えるなら大手メーカー製の中古ユニットを選ぶ手も考えられる。中古なら数十万円台で手に入る場合もあり、新品100万円よりさらに安い選択肢だ。しかし中古導入には見えないリスクもある。まず故障リスク:前オーナーでどの程度酷使されたか不明なユニットは、いつ主要部品が寿命を迎えるか分からない。メーカーによっては既に生産終了し部品供給が止まっているケースもあり、修理不能となる懸念もある。さらに設置・移設には専門業者の技術が必要で、その業者選定を誤ると十分なサポートが受けられない恐れもある。患者の信頼を損なわないためにも、中古ユニット導入の際は販売業者の実績や保証内容を慎重に見極め、必要なら開業コンサルタント等にも相談すべきである。

総じて、安価な新品ユニットは経営効率向上の強力な武器となり得る。初期費用が抑えられ資金繰りに余裕が生まれることで、より戦略的な医院経営が可能になる。一方で長期運用における不確定要素(耐久性やサポート)も踏まえ、初期コストとランニングコストをトータルで考える視点が重要だ。次章からは具体的な製品ごとに、その強み・弱みとどんな医院にマッチするかを詳しく見ていこう。

製品別レビュー

SDユニット AJシリーズ

エスディーメディカル社の「SDユニット AJシリーズ」は、「歯科ユニットは高すぎる」という常識に風穴を開けたパイオニア的存在である。AJ10・AJ15・AJ18の3モデルがあり、廉価版のAJ10は税込でも約110万円程度から導入可能という業界衝撃の価格設定だ。最大の特徴は、必要な機能だけを搭載して価格を極限まで抑えた点にある。例えばハンドピースはタービン用が標準2本、スケーラー用1本程度(モデルによって異なる)が基本だが、電動マイクロモーターを使いたい場合は中位モデルのAJ15以上を選べば対応可能という具合に、用途に応じてモデルを選択できる。

低価格ながら臨床上妥協していない点として、チェアの基本性能が挙げられる。患者を乗せた状態での昇降やリクライニングの動作音が静かで滑らかであり、不快な衝撃も与えにくい。また給水ユニットは取り外し可能なボトル式で衛生管理に配慮している。シンプルなオーバーアームタイプのデザインは診療室にも馴染みやすく、無駄な装飾がないぶん清掃もしやすい。メーカーによればユニット内部には世界規格の汎用部品を採用し、各部品の品質は大手と遜色ないという。実際、米国FDAや欧州CEの認証も取得した機器であり、海外では年間数千台規模で販売されているグローバルモデルがベースとなっている。このため「安かろう悪かろう」ではなく、適正な価格で提供することにこだわった製品だと言える。

一方、弱みや注意点としては、やはりフルオプションの快適さには及ばない部分である。例えば自動的なコップ給水・うがい排水のタイマー制御や、複数パターンのチェアポジションメモリー機能など、高級機で標準の便利機能は省略されている。またメーカー営業マンが頻繁に訪問して細やかな調整をしてくれる…というような従来型のサービスは期待しづらい。エスディーメディカル社は効率的な経営でコストダウンしているため、必要以上の訪問営業やカタログ配布を行わない方針を公言している。その代わりWEBサイトやショールームで実機を公開し、興味ある医師には自ら問い合わせてもらうスタイルだ。このような点に抵抗のない先生にとって、AJシリーズはまさに「値段以上」の価値を発揮する。特にこれから開業する若手歯科医師で、初期投資を極力抑えて賢くスタートを切りたい人にはうってつけだ。保険診療主体で「高額なハイテク機能より台数と基本性能」を重視する医院や、ユニット増設でとにかくコストを抑えたい場合にも最適である。逆に、「最新鋭の高級機材であること自体が医院の売り」という自費中心のクリニックや、患者へのブランディングとして高級ユニットを敢えて導入したいケースでは、このユニットはミスマッチと言えるだろう。

なお、SDユニットと類似コンセプトの製品として「スペースディア」シリーズがある。こちらは別会社(地域の器械商社など)から販売されているが、基本的には同じ海外製ユニットをベースにした兄弟モデルで、価格帯も99.8万円~とほぼ同水準だ。販売経路や地域によって入手しやすい方を選べばよく、いずれも「適正価格で使う機能だけを搭載する」という思想は共通している。

929デンタルユニット

RFシステムラボ株式会社の929デンタルユニット(通称:RF929ユニット)は、製品名からもうかがえるように「リーズナブル&シンプル」をコンセプトに掲げたモデルである。価格は公表されていないものの、開業時の資金繰りを圧迫しない優しい価格設定とされており、市場では100万円台程度との声もある。特徴は、贅沢な機能をそぎ落とし必要十分な機能に徹した点だ。チェア周りにはタービン用ハンドピースホルダーとスリーウェイシリンジ、吸唾器とバキュームといった標準装備のみを搭載し、あえて高度な機器は内蔵していない。その分、ユニット全体の構造が簡潔で操作も直感的に行える。

臨床面では、一般歯科治療を行ううえで困る点は特にない。患者用シートは包み込むような形状で、バックレストを倒した際にも姿勢が安定しやすい設計になっている。リクライニング動作も滑らかで、動作音も静かなので患者を驚かせない。シートカラーは先述のようにパステル調の5色展開で、「明るく優しい色味」がコンセプトだ。小児から高齢者まで、誰でも抵抗感なく座れる親しみやすい雰囲気を醸成している。ユニットの寸法は標準的で、最低設置スペースは約2.7m×1.8mと、開業医の限られた区画にも収まりやすい。

このユニットの経営的メリットは、なんと言っても故障リスクの低減とメンテナンスコストの安さに直結する点だ。構成がシンプルで電子機器も最低限しかないため、不具合が発生する箇所が限られる。ユニット内部に複雑な制御盤がぎっしり詰まったタイプでは、部品交換だけで高額になりがちだが、RF929ならパーツ自体も汎用性が高く修理費用も抑えられやすいと考えられる。また清掃しやすい構造で日常のケアに手間取らないのも地味ながら診療効率に貢献する。スタッフがユニット清掃に費やす時間を短縮できれば、そのぶん他の業務に集中でき患者回転も上がる可能性がある。

サポート体制に関しては、RFシステムラボは元々医療機器開発の技術系企業であり、歯科用CTなども手掛けてきた実績がある。同社のクリニック向け事業部が販売・保守を行っているため、電話やオンラインでの遠隔サポート、必要に応じた現地訪問修理に対応している。台数的には大手に及ばないとはいえ、導入医院にはきめ細やかな支援を約束している点は安心材料だ。

このユニットが最適なのは、「凝った機能は要らないから、とにかく故障の心配なく使いたい」という実務派の先生だ。例えば開業まもない頃は診療メニューもシンプルなことが多く、高額な多機能ユニットは持て余しがちである。そういった状況で、まずは壊れにくく日々の診療に集中できるツールとしてRF929を選ぶ価値は高い。また、経営においても「過剰投資せず黒字化を急ぎたい」という堅実志向の医院にマッチする。一方で、自費診療で特殊機器を多数使う予定がある場合や、高級感ある内装にユニットも合わせたい場合には物足りなく感じる可能性がある。RF929は質実剛健なユニットであり、「シンプルな良さ」を理解できる先生にフィットする製品と言える。

Comfort Gentle

歯科ディーラー大手のCiメディカルが手掛けるComfort Gentle(コンフォートジェントル)は、「純国産」であることを強みに掲げた異色の低価格ユニットである。価格帯は100万円前後と海外製格安機に匹敵するが、日本国内メーカーが製造・販売を行っているため、品質管理やサポート体制で一歩リードしている。まず目を引くのは、選べるチェアタイプと充実した人間工学的機能だ。Comfort Gentleではベースマウント型のチェアにおいて、患者の脚を折り曲げて乗降しやすい「膝折れタイプ」と、足を伸ばしたまま座れる「カンタータイプ」の2種類のシート機構をラインナップしている。低価格ゾーンでは膝折れ機構がない製品も多い中、こうした選択肢を用意している点で患者サービスに注力していることが分かる。

またヘッドレストは2関節で細かな高さ・角度調整ができ、小児から大柄な成人まであらゆる体格の患者にフィットさせやすい。チェアの昇降・背もたれ可動も、スムーズかつ静音で、スロースタート&ストップ機能により動き始めと停止時のショックを吸収する配慮がなされている。これらはモリタやタカラベルモント等の高級機にも匹敵する快適機能であり、「本当にこの価格帯でよいのか」と思わせる充実ぶりだ。実際に座った患者からも「動きがソフトで怖くない」「長く座っていても楽」といった好印象が聞かれるという。

臨床面では、ドクターテーブルが広く取られており作業性が高い。器具トレイやバキューム位置も調整しやすく、術者・アシスタントともに治療の流れを妨げない設計だ。ハンドピース類の本数やオプション対応も柔軟で、必要に応じてスケーラーや電動モーター、さらには口腔内カメラ用モニターなども追加できるよう考慮されている。全12色から選べるシートカラーや、布地調シートのオプション(リミテッドエディション)など、院内インテリアとの調和も図りやすい工夫も秀逸である。

このようにスペック面が充実しているComfort Gentleだが、その経営的価値は「国産ゆえの安心感」にある。Ciメディカルは全国展開する歯科ディーラーであり、ユニットのサポート拠点を日本全国に複数持つ。設置時はメーカー専門スタッフが対応し、導入後の故障対応も最寄りのサービス拠点から迅速に駆け付ける体制だ。つまり、地方開業であってもアフターサービスに不安が少ない。保証期間についても標準で数年のメーカー保証が付き、必要に応じ延長保証や保守契約を結ぶことができる。こうした手厚いサポートは海外系格安ユニットには真似できない強みだろう。

もちろんデメリットが皆無ではない。国産と言えど低価格を実現するため、部品の一部には海外製を活用しコストダウンを図っている。また製品自体の歴史が浅いため、長期間使用した際の耐久データはこれから蓄積される部分もある。とはいえ、仮に不具合が生じてもメーカー側が最後まで面倒を見るという姿勢は経営者にとって心強い。開業医にとって機械トラブルほど業務を止めるリスクはないため、そのリスクヘッジの費用と考えれば、Comfort Gentleの価格は極めてリーズナブルに感じられるはずだ。

どのような医院に向くかと言えば、「低価格でも品質とサービスには妥協したくない」という欲張りなニーズにぴったりだ。具体的には、地方や郊外で開業し機器トラブル時のサポート重視派の先生、自費・保険問わず広く診療する中で患者の快適さも追求したい先生などである。例えば高齢患者が多い地域なら膝折れチェアは喜ばれるだろうし、キッズルーム併設のファミリー歯科ならカラフルなシートカラーが院の雰囲気づくりに役立つだろう。一方、初期費用の安さだけを求めている場合には、他の海外系ユニットの方がさらに安価なモデルもあるため、Comfort Gentleは「安さと安心のバランス」を評価する医院にマッチする。Ciメディカルはユニット以外にもCTやデジタル機器を含む開業パッケージ提案を行っており、「まとめて任せてコストを抑えたい」層にも支持されている。総合的に、価格以上に付加価値の高い低価格ユニットとして注目できる存在だ。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中古の歯科用ユニットを導入するのはアリでしょうか?
A1. 予算を最小限に抑える手段として中古ユニットも選択肢にはなるが、注意が必要である。中古品は初期コストが安い反面、残存寿命や故障リスクが不確定で、結果的に修理代や買い替えで高くつく恐れがある。特にメーカーの保守サポートが終了している旧型ユニットだと、部品入手難や修理対応不可の場合もある。また設置工事や保障も自己責任になりやすい。従って、中古を選ぶ場合は信頼できる中古業者から購入し、オーバーホールの有無や短期保証の内容を確認するなど、慎重に検討すべきである。長期的に見ると、最新の安価モデルを新品導入した方が安心感とコストパフォーマンスで勝るケースも多いだろう。

Q2. 低価格ユニットは壊れやすいということはありませんか?
A2. 一概に「壊れやすい」とは言えない。紹介した低価格ユニット各製品は、それぞれ品質確保の工夫を凝らしている。例えばSDユニットやスペースディアでは世界基準の耐久部品を採用し、RF929ユニットはシンプル構造で故障要因を減らしている。むしろ電子制御満載の高機能機種よりシンプルな安価機の方がトラブルが少ないという現場の声もある。ただし製品ごと耐久年数の実績は異なるため、保証期間の長さや導入医院の評判は参考にしたい。国産のComfort Gentleのようにメーカーが長期保証を提供している例もある。つまり、安価=低品質とは限らないが、購入時には保証やサポートを含めて信頼できるメーカーか見極めることが大切だ。

Q3. 安価なユニットでも今使っているハンドピースや機器はそのまま使えますか?
A3. 基本的には使える場合が多い。多くの歯科ユニットは国際標準化された接続規格を採用しており、タービンやモーターの接続口(カップリング)は大手メーカー品でも互換性があることが一般的だ。例えばスペースディアやSDユニットでは「タカラ、モリタ、ヨシダ社のタービンがそのまま使用可能」と案内されている。ライト付きタービンなども光源の供給方式(電気式かフィーバーオプティクスか)が合えば利用できる。ただし、特殊な機器(インプラント用ユニットや外科用直刃ハンドピースなど)の取り付け可否は機種によるため、購入前に手持ち機器の互換性をメーカーに確認すると安心だ。またユニット付属のハンドピースも最初からセットになっている場合と別売の場合があるので、その点も注意して見積もりを取ろう。

Q4. 安価なユニットには搭載されていない機能で、後から必要になりそうなものは?
A4. 想定されるのは高度な衛生管理機能と患者サービスに関わる機能である。例えば水路の自動洗浄・除菌システム、口腔外バキュームとの連動制御、タブレットやモニター一体型の説明用ディスプレイなどは、高価格帯ユニットでは搭載例があるが低価格機では省かれがちだ。これらがなくても診療自体は可能だが、将来必要性を感じたら外付けの機器で補う選択になる。幸い、近年はポータブルの口腔外バキュームやタブレット説明ツールなど独立機器が充実しているため、ユニット本体に組み込まれていなくても大きな問題にはならない。また、チェアのメモリーポジション(ボタン一つであらかじめ設定した体位に動く機能)は安価機種では簡易的だったりするため、診療効率への影響を考えるなら留意が必要だ。総じて、後からどうにかなる機能か否かを考え、不安が残る点は事前にメーカー担当者に相談しておくと良いだろう。

Q5. 実際に安価なユニットを導入する場合、失敗しないためのポイントは?
A5. まず複数メーカーの製品を比較検討し、自院の優先順位をはっきりさせることが肝要だ。価格だけを見るのではなく、機能・デザイン・サポートのどれを重視するか軸を決めて選ぶと失敗が少ない。また前述のとおり可能な限り実機を見るかデモ使用してみることだ。パンフレット上魅力的でも、触れてみると操作感が合わないこともある。さらに、契約前に保証内容や保守サービスを細かく確認しよう。例えば「〇年間は無償修理対応」「代替機貸出の有無」「消耗部品の価格」などを質問し、隠れたコスト要因がないか洗い出すと安心である。最後に、導入後は定期点検や日々の清掃を怠らないことも重要だ。安価な機種ほどユーザー側のメンテナンス意識で寿命が大きく左右される。取扱説明書に沿った使用とケアを心がければ、きっと価格以上に長く医院経営に貢献してくれるだろう。