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クリアフィルユニバーサルボンドの使い方・用途や成分、添付文書を解説

クリアフィルユニバーサルボンドの使い方・用途や成分、添付文書を解説

最終更新日

誰もが一度は、接着操作中に経験したヒヤリとする瞬間がある。例えば、小児の充填治療でボンディング材塗布後に「10秒待って」と伝えた矢先、唾液が流入して全てやり直しになったことはないだろうか。また、2ステップの従来接着剤で実績を積んできたものの、チェアタイム短縮や多用途性を求めてユニバーサルボンドへの切り替えを迷っている先生もいるかもしれない。こうした臨床現場の悩みに対し、クリアフィルユニバーサルボンド Quick 2(クラレノリタケデンタル)は「待ち時間ゼロ」の迅速な操作性と、多用途に使える汎用性を併せ持つ新世代の歯科用接着剤である。

本稿ではその臨床的価値と医院経営への影響を詳細に解説し、自院の診療スタイルに適合する製品かどうかを見極める一助としたい。

製品の概要

クリアフィルユニバーサルボンド Quick 2(以下、Quick 2)は、クラレノリタケデンタル社の1液型(ワンボトル)ボンディング材シリーズの最新バージョンである。ボトル1本でエナメル質・象牙質の処理から各種修復物への接着前処理まで対応でき、直接法レジン充填から間接法補綴まで9つの用途を網羅するユニバーサルボンドである。本製品は2016年発売の初代「クリアフィルユニバーサルボンド Quick」および2018年発売の改良版「Quick ER」のコンセプトを継承しつつ、操作性や保存性をさらに向上させた製品である。正式な分類は管理医療機器の歯科用象牙質接着材(一般的な歯面処理材、セラミックス・金属用プライマー、知覚過敏抑制コーティング材を含む)であり、医療機器認証番号は305ABBZX00012000と届け出られている。Quick 2の基本セットは5mL入りボトル1本(単品価格約14,070円)から成り、2本組のWパックも用意されている。適応症は、う蝕処置時のレジン充填、支台築造、インレー・クラウン装着時の歯面処理、象牙質表面のシーリング(間接法補綴のための窩洞封鎖)、ならびに知覚過敏や根面露出へのコーティング処置、さらに破折補綴物の修復と広範に及ぶ。要するに、本製品1つで日常臨床の接着処置全般を賄える汎用的なボンディング材である。

主要スペックと技術的特徴

Quick 2最大の特徴は、「塗布後の待ち時間なしですぐにエアーブロー・光照射可能」という迅速性と、それを可能にする独自の接着技術にある。従来、1液タイプの簡便な接着剤は操作は速くとも接着強さや耐久性で2ボトル型に劣る傾向があったが、Quickシリーズでは先進のモノマー化学と触媒技術により、このジレンマを克服している。具体的には、新規の親水性アミド系モノマーを採用し、HEMAを上回る高い浸透性で象牙質に深くなじみ、重合も迅速かつ完結に行われる。このモノマーは重合後の耐加水分解性にも優れ、接着層の経時的劣化を抑制する。さらにクラレ独自開発の機能性モノマーであるMDP(10-Methacryloyloxydecyl Dihydrogen Phosphate)を高純度配合しており、歯質の水酸アパタイトや被着体であるジルコニア・金属に化学結合することで接着力と耐久性を高めている。これらのモノマー技術に加え、光重合開始剤としてカンファキノンとフェニルビスホスフィンオキシド(LED光対応のLucirin系フォトイニシエーター)を組み合わせ、さらに独自の化学重合促進剤も配合している。その結果、短時間の光照射(高出力LED下で3秒程度)でも強固な接着層が形成可能となり、またデュアルキュア系レジン使用時にも確実に重合が進行する。実際、同社2ボトル型の代表製品である「クリアフィルメガボンド」と遜色ない高い象牙質接着強さが得られたことが報告されており、水分吸収量も従来品の半分以下に抑えられることで長期耐久性の向上が期待されている。接着層内にはナノフィラー(無機シリカ)も配合されており、ボンディング層そのものの強度を高めつつ、薄く均一な膜厚で適用できるよう処方が最適化されている。これは前歯部の小さな窩洞から臼歯部の広い窩洞まで、溜まり(プール)やムラのない安定した塗布膜を形成できることを意味する。フィラーの添加によって本製品はわずかながらフッ素も含有する(NaF無機成分として全質量中0.1%未満)が、その含有率は低く二次う蝕予防効果は限定的と考えられる。しかし強化された接着層と相まって、適合隙間からの微小漏洩を防ぐ封鎖効果により結果的に二次う蝕発生率の低減に寄与する可能性はあるだろう。なお、Quick 2は使用環境にも配慮されており、組成の安定化により保管は2〜25℃の室温で可能となった(もちろん従来通り冷蔵保存も許容される)。煩雑な温度管理から解放され、診療台周りに常備してすぐに手に取れるのは日常診療の小さなストレス軽減につながる。

互換性と使い方(運用方法)

クリアフィルユニバーサルボンド Quick 2の使い方は、基本的に他の光重合型ボンディング材と類似しているが、いくつか独特のポイントがある。まず、本製品はアシッドエッチ・セルフエッチ併用型のユニバーサル接着剤であり、症例に応じてエッチングの方法を使い分けられる。無加工のエナメル質が広範囲に存在する場合や、より高いエナメル質接着強さが必要と判断した場合には、付属のリン酸エッチャント(K-ETCHANTシリンジ、35%リン酸)を用いて選択的エナメルエッチングまたは全体エッチングを行う。一方、象牙質については自己エッチングモードで処置することで術後知覚過敏のリスクを最小限に抑えられる。したがって、「エナメル質は状況に応じて酸処理、象牙質は基本的にエッチング無し」が推奨されるプロトコルである。実際の手順は以下の通りである。窩洞や支台歯を十分に洗浄・乾燥させた後、必要に応じてエッチング処理を行い、水洗・エア乾燥する(乾燥させすぎず象牙質表面にわずかに湿潤感が残る程度が適当とされる)。続いて、本製品のボンド液を少量ディスペンサー皿に滴下し、専用または市販の使い捨てマイクロブラシで接着面全体に擦り込むように塗布する。1回の塗布量はごく微量で十分であり、ユニットドーズ容器の場合は0.1mLで1歯以上に対応可能である。塗布後は待ち時間を設けず、直ちに軽いエアーブロー(約5秒以上)を行い、溶剤を完全に揮発させつつ薄い接着剤膜を形成する。この時、液が飛散しないようバキュームで吸引しながらエアーをかけると安全である。エアーブロー後、直ちに光重合器で十分な光照射(通常モードで10秒程度)を行い、接着層を硬化させる。以上の操作で、エナメル質・象牙質表面にレジン充填やセメント装着に耐えうる強固な接着層が形成される。なお、直接法の光重合型コンポジットレジン充填ではこの時点で重合完了となるが、デュアルキュア型のレジンコア築造材やレジンセメントを使用する場合は留意すべき点がある。Quick 2自体は化学重合促進剤を含むため、例えば同社のデュアルキュア支台築造材やセルフアドヒーシブレジンセメント(PANAVIA SAなど)と組み合わせる際には、ボンド液への専用添加剤を混合しなくても接着層が重合可能である。加えて、セルフアドヒーシブタイプのレジンセメントを用いるクラウン装着時には、接着層をあえて光硬化させずセメントの自己重合に委ねる手法も選択できる(硬化収縮によるクラウンの浮き上がりを防ぐための処置であり、本製品は化学重合だけでも硬化が進行するよう設計されている)。一方で、直接法のデュアルキュアレジンコア(例えばファイバーポスト併用の支台築造)では、可能な限り接着層を予備重合しておくことが推奨されている。大きな材料塊の下でも接着層が確実に硬化するようにするためであり、これはQuick 2に限らず一般的な注意点である。以上のように、本製品はあらゆるレジン修復ステップに対応できる互換性を備えている。サンドブラストしたジルコニアや金属修復物内面へのプライマー塗布にも使用でき(MDPによる金属・酸化物接着)、HFエッチング処理済みのセラミックス内面に塗布すればシランカップリング剤としても機能する。実際、本製品は公的分類上も「歯科セラミックス用接着材料」「歯科金属用接着材料」として届け出られており、一口に「象牙質接着材」と言っても広義の接着関連処置をほぼ1本で賄える設計である。ただし、使用にあたっては他のボンディング材と同様に適切な前処置と管理が必要である。唾液や血液による汚染は厳禁であり、ラバーダム防湿や充分な乾湿管理を徹底する。万一塗布面が唾液で汚染された場合は、水洗・乾燥の上でもう一度ボンドを塗布し直す必要がある。また、ユージノール系の仮封材や止血剤との相性も悪く、残留していると重合阻害や接着不良、変色の原因となるため注意したい。仮封時はノンユージノール系を用いるか、接着面から仮封材を隔壁するなどの工夫が望ましい。ボトルから液をディスペンスする際には、術野のライトや周囲光が直射しないよう遮光板を用いることも重要である(わずかな光でもボトル内で重合が始まり得る)。ディスペンス後は7分以内に使い切ることが推奨されている。また、溶媒のエタノールは揮発しやすいため、ボトルは使用後すぐにキャップを閉め、長期間未使用の場合は使用前によく振って撹拌する。まれに先端ノズルが樹脂で詰まることがあるが、その際は無理に押し出さず、ピンなどで除去してから使用する。感染対策としては基本的にディスポーザブルの筆頭具を用い、使い回しや他患者への転用は避ける。以上のポイントを守れば、Quick 2は非常にシンプルかつ再現性高いオペレーションで確実な接着性能を発揮する。

経営インパクト(コストと投資対効果)

接着材は歯科医院において単価自体は高額ではないものの、その選択と使い方次第で間接的な経営効果を大きく左右するカテゴリーである。Quick 2の場合、5mLボトル1本あたりの価格は約14,000円(税別)であり、1症例あたりの使用量はおおむね0.05〜0.1mL程度である。粗算では1症例あたり数百円(約280円〜)の材料費となり、CR充填の健康保険点数(数千円)に対してごく僅かな割合である。一方で、もし接着不良が原因で補綴物の脱離や二次う蝕の再発が起これば、補綴物の作り直しや再充填に数千〜数万円相当のコスト(技工料金、人件費、チェアタイム、患者の信頼低下による機会損失など)が発生し得る。そう考えると、多少価格が高めでも接着信頼性の高いボンディング材を使うことは長期的に見れば十分ペイする投資である。実際、Quickシリーズは吸水率が旧来品の半分以下に抑えられ長期耐久性が向上したことから、接着層の劣化による数年後のやり直しリスク低減が期待される。またチェアタイム短縮効果も経営的メリットだ。塗布後の待ち時間10〜20秒がゼロになることは、単独の症例ではわずかな差だが、例えば1日20件の充填・補綴処置がある医院では合計で数分の時間短縮となる。年間ベースでは貴重な診療枠の創出につながり、スタッフ人件費換算でも看過できない効率化効果である。特に小児や要介護高齢者では治療時間の短縮それ自体が処置成功率を上げる(治療中断や誤飲事故の防止)ことにつながり、間接的に医院の収益と評判に寄与する。さらに、本製品は多用途ユニバーサルであるため、従来別々に購入していたセラミック用プライマーや金属プライマー、あるいは知覚過敏処置材を個別に揃える必要性が減る。例えばジルコニア修復装着用のMDPプライマー(合着用接着剤)や、ポーセレンリペア用のシランカップラー等を単独で購入すると各数千円〜1万円程度の費用がかかるが、Quick 2で代替できる場面が多ければ院内在庫を削減でき、在庫管理コストや在庫品の使用期限切れによる廃棄ロスも防ぎやすい。加えて、ユニバーサルボンド1種に絞ることでスタッフ教育も統一化され、煩雑さが減ることでヒューマンエラーのリスク低減と業務効率化につながるだろう。総じて、Quick 2導入によって「材料費の微増」を補って余りある「再治療削減」と「時間短縮」による投資対効果(ROI)の向上が期待できる。

使いこなしのポイント

新しい接着材を導入した際には、その性能を最大限引き出す使いこなしが重要になる。Quick 2の場合、まず導入初期には院内で担当スタッフへの技術トレーニングを徹底したい。本製品は操作自体はシンプルであるものの、「待ち時間ゼロ」という従来品にない特徴を持つため、慣習で無意識に“塗布後しばらく放置する”クセがついていると効果を発揮できない。院長や担当歯科医師自ら実際に使用して操作手順を確認し、歯科衛生士やアシスタントにもエアーブローのタイミングや光照射までの流れを共有するべきである。メーカー提供のフローチャートやトレーニング用動画も活用し、院内で手順書を作成するとよい。また、本製品は室温保管が可能になったとはいえ、真夏の診療室など高温環境では性能劣化の恐れがあるため注意が必要である。直射日光の当たる場所や高温多湿な場所を避け、25℃程度までの安定した室温環境下で保管するか、冷所に保管して使用前に常温に戻すようにすると製品寿命が延びる。ボトル開封後はできるだけ数ヶ月以内に使い切る計画を立て、必要以上に大量の在庫を抱えず、適宜追加発注していく運用が望ましい。使いこなしという観点では、症例ごとに適切なエッチングモードを選択する判断もポイントだ。例えばエナメル質の切縁部を含むレジンべニア修復では、審美的長期安定のためにエナメル質をしっかり酸処理して接着するのが望ましい。この際Quick 2であれば、わざわざ別のエナメル質専用ボンドに切り替える必要はなく、同梱のリン酸ジェルでエナメル質のみエッチングし、あとは通常通り塗布すればよいのである。一方で、深い象牙質まで露出する大きな窩洞充填では、無エッチングで素早く処理し、知覚過敏のリスクやラバーダムによる圧迫時間を最小化する戦略が有効だ。このように1本でどんな症例にも合わせられる柔軟さが本製品の利点であり、術者側が使い分けの意思決定を行うことで真価を発揮する。さらに、Quick 2の多用途性を活かし、付加的な処置に応用することも使いこなしの鍵となる。例えば、重度の知覚過敏や根面う蝕のある高齢患者に対して、定期メインテナンス時に本製品を歯頸部に塗布・重合してコーティングしておけば、日常生活でのしみる痛みが軽減し患者満足度が上がる。これは保険算定上は「知覚過敏処置」としてわずかな請求に留まるが、患者からの信頼獲得には大きな効果がある施策である。また、補綴物の破損修理(リペア)への活用も挙げられる。口腔内でポーセレンインレーが一部欠けた場合など、HFエッチャントで破折部を処理後にQuick 2を塗布・重合し、そのままレジン充填すれば即日の修復が完了する。このように本製品は診療の引き出しを増やすツールにもなり得る。最後に、患者説明の面では、本製品自体をことさらにアピールする必要はないが、例えば小児や歯科恐怖症患者には「接着に時間をかけず短い治療で終えられます」と伝えることで安心感を与えられるだろう。日々の臨床で蓄積した先生自身の使いこなしポイントをスタッフや患者と共有し、本製品の価値を最大化してほしい。

適応症と適さないケース

適応が推奨されるケース(得意分野)は、公式に示されたとおり非常に広範囲である。具体的には、う蝕の充填修復全般(コンポジットレジン修復)、失活歯や大きな欠損への支台築造(ファイバーポストを用いたケースを含む直接法・間接法双方)、インレー・クラウン・ラミネートベニアなどレジン系セメントによる間接補綴物装着、インレー形成後の即時象牙質封鎖(IDS)や支台歯表面のコーティング、知覚過敏抑制のための歯根面コーティング処置、さらには口腔内での補綴物修復(リペア)にも用いることができる。要するに、レジンを介して歯質と何かを接着・コーティングするあらゆる場面が適応と言える。その中でも特にQuick 2が真価を発揮するのは、「処置時間の短縮が求められるケース」である。唾液分泌の多い患者や開口維持が困難な小児・高齢者では、待ち時間なしで即座に次工程へ進めるQuick 2のメリットが際立つ。また、複雑なステップを嫌う訪問診療や在宅歯科の現場でも、簡便な1ボトル操作と短時間処理はミスを減らし成功率を高めるだろう。一方、適さないケースや注意が必要な状況も若干存在する。まず、明らかな禁忌としてモノマーアレルギーの既往がある患者には使用できない。稀ではあるが、アクリル系モノマーに過敏な患者では接触皮膚炎等のリスクがあるため、これは本製品に限らず一般論として注意したい。加えて、ほとんどのレジン接着剤に共通するが、十分な隔湿・防湿が確保できないケースでは思わぬ失敗を招く恐れがある。歯肉縁下に達する深い窩洞や抜髄直後で出血が止まりにくいケースでは、無理にレジン接着修復を行わず、まず隔壁や覆髄処置で環境を整えるか、あるいは接着を要しない他材料(グラスアイオノマーセメント等)の仮封で様子を見る判断も時に必要である。術直前に止血目的で硫酸鉄系収斂剤を使用した場合も、組織に残留した鉄イオンが接着阻害や変色を引き起こす可能性があり注意が必要だ。なお、本製品は光重合型であるため、光の届かない深部への適用には工夫が必要である。例えば長いポストを用いた支台築造では、ポスト孔の奥深くまでは光が届かないため、あらかじめボンドにデュアルキュア活性化剤(同社クリアフィルDCアクティベーター等)を混和して化学硬化型に転換する方法が推奨される(混和した場合は別途光照射も行う)。ここまで配慮すれば、本製品が不得意とする症例はほとんど無いが、あえて言えばエナメル質の広範囲接着を長期安定させる症例では、セルフエッチ単独では懸念が残るためフルエッチングが必要である点には注意したい。また、数年~十数年スパンの長期症例に対しエビデンス最重視で臨む場合、発売間もない本製品の実績に不安を覚える先生もいるだろう。その場合は、従来型の2ボトル接着システム(例えばクリアフィルメガボンド2など)を継続使用することも決して間違いではない。しかし社内データではQuickシリーズの耐久性は2ボトル型に迫る水準と示されており、交換・再治療リスクを踏まえれば十分実用に耐えうると考えられる。最終的には診療哲学やリスク許容度に応じて使い分けるのが現実的だろう。

導入判断の指針(読者タイプ別)

1.

効率最優先の保険診療中心型の歯科医師の場合、本製品との相性は極めて良好である。日々多くの患者を短時間で処置する保険中心の医院にとって、「待ち時間ゼロ」によるチェアタイム短縮効果は塵も積もれば大きな価値となる。CR充填やクラウン装着といった頻繁な処置の一つひとつがわずかでも早く終われば、1日の診療スケジュールにゆとりが生まれる。Quick 2は操作ステップが単純なため新人スタッフでも習熟しやすく、院内のオペレーションを標準化しやすい利点もある。多様な用途に1本で対応できるので、「レジン修復にはA社ボンド、補綴装着にはB社プライマー」といった在庫管理や使い分けの煩雑さも解消できる。材料費は1処置あたり数百円程度と僅かであり、接着の安定によって再処置リスクが下がるメリットを考えれば、コスト以上のリターンが見込めるだろう。

2.

高付加価値の自費診療(自費補綴・審美治療)を重視する歯科医師にとっては、Quick 2は患者満足度と収益性の双方を高める戦略的ツールになり得る。自費診療では治療の質と耐久性が何より重要だが、本製品は高い接着強さと耐久性を持ち、セラミック修復やラミネートべニアの即時接着にも使用できる汎用性を備える。例えば高価なオールセラミッククラウン装着時、同梱のエッチャントと本製品でエナメル質処理からクラウン内面のプライマー処理まで一貫して行えるため、一貫性のある接着システムとして患者にも説明しやすい(「当院ではクラウン接着にもレジンを用い、接着強度と密閉性を高めています」等)。ポスト症例でも信頼性が高く、ファイバーポストとデュアルレジンコアを用いた審美的支台築造にも対応できる。さらに、処置時間の短縮は患者体験の向上にも直結する。長時間口を開けているストレスが軽減されれば、高額治療を受ける患者の満足度や口コミ評価にも好影響を与えるだろう。自費診療では再治療が無償対応になるケースも多いが、Quick 2の採用により接着起因のトラブルが減れば、保証期間内の無償修復コストを削減でき、その分が医院の利益となる。総じて、自費志向の医院にとって本製品は「質を維持しつつ効率化を図る」という難題を解決する心強いパートナーとなる。

3.

小児歯科や高齢者診療が主体の歯科医師にも、Quick 2はぜひ検討いただきたい製品である。小児歯科では患者の集中力が短時間しか持たず、接着操作の一手間が治療成否を左右すると言っても過言ではない。Quick 2なら塗ってすぐ硬化できるため、子どものわずかな協力時間内に処置を完了できる。実際、唾液や不動保持の問題で接着処置を敬遠しがちな場面でも、本製品のスピードはアドバンテージになる。また、高齢者や要介護患者でも、口腔内操作時間の短縮は誤嚥リスクの低減や全身状態への負担軽減につながる。さらに、これらの世代は根面う蝕や知覚過敏の悩みが多く、本製品を予防的・対症的に応用する価値も大きい。例えば定期検診時に露出象牙質へ本製品を塗布しシーラントのようにコーティングすることで、患者の日常生活のQOLを向上させることができる。こうした付加サービスは医院の差別化にも寄与し、口コミや紹介で新たな患者層の獲得にもつながるだろう。総合的に、時間制約の厳しい小児・高齢者診療にQuick 2はマッチしており、臨床上のストレス軽減と医院成長の双方に貢献し得る。

よくある質問(FAQ)

Q. 「クリアフィルユニバーサルボンド Quick 2」と前バージョン「Quick ER」では何が違うのか?

A. 基本コンセプト(1ボトルで多用途・高接着・待ち時間なし)はQuick ERから踏襲されていますが、Quick 2では操作液性の改良により小窩洞から大窩洞まで塗布しやすくなり、エアーブロー後に薄く均一で強固な接着層を形成しやすくなっています。さらに室温保管が可能となり、冷蔵庫から出し入れする手間も解消されました。容器デザインはQuick ER同様にワンタッチ開閉のフリップトップキャップを採用しており、扱いやすさも継続されています。総じてQuick 2は、前モデルの長所を保持しつつ細かな使い勝手と保管利便性を向上させたマイナーチェンジ版と言えます。

Q. 冷蔵庫で保管しなくても本当に大丈夫ですか?

A. Quick 2は2〜25℃の範囲で保管可能とされています。一般的な診療室環境であれば常温保管で問題なく、使用直前に冷蔵庫から取り出して温度を戻す手間が不要です。ただし高温多湿や直射日光下は避け、夏季はエアコン下の戸棚に入れるなどして25℃前後に保つ工夫が望ましいです。長期間使わず保管する場合は、品質維持のために冷蔵保管しても構いません(使用時は室温に戻してからお使いください)。保管条件に留意すれば、性能劣化なく使用期限まで安定した接着力を発揮します。

Q. セラミックや金属にもこのボンディングで接着できますか? 専用プライマーは不要ですか?

A. はい、可能です。クリアフィルユニバーサルボンド Quick 2は、MDPとシランカップリング剤の両方を配合しているため、ジルコニアや金合金などの金属修復物からガラスセラミックスまで幅広く接着前処理できます。例えばジルコニアクラウンであれば、内面をサンドブラストした後に本製品を塗布・乾燥・光照射するだけで金属プライマー相当の処理となります。同様に、ガラスセラミックインレーの修理ではHFエッチング後に本製品を塗布すればシラン処理とボンディングを一度に行えます(通常はその後レジンを充填)。製品自体が「セラミックス用」「金属用」接着材料として認証を受けていることからも、その適合性は確認されています。もちろん高度な耐久性が要求される場合には専用プライマーを併用する選択もありますが、日常の臨床ではQuick 2単独で十分な接着強度が得られるでしょう。

Q. 従来の2ステップ接着システムと比べて耐久性に不安はありませんか?

A. Quick 2は、社内試験データおよび第三者機関の研究において2ボトル型に匹敵する接着強さと耐久性を示しています。特に象牙質接着強さはクリアフィルメガボンド(2ステップ接着剤)と近似し、水分吸収量の低減により長期的な劣化が抑制されることが報告されています。2016年発売の初代Quickから数えて既に約9年間の市場実績がありますが、臨床現場から大きな問題報告もなく、多くの歯科医師に受け入れられている背景にはその信頼性の高さがあります。ただし、最終的な耐久性は術者のテクニックや症例条件にも左右されます。適切な処置(隔離・エッチング判断・充分な重合など)を施す限り、Quick 2は従来法に劣らない長期予後が期待できると考えて良いでしょう。

Q. デュアルキュアレジンを使う時に注意点はありますか?例えばコア築造やクラウン装着での光照射の要否は?

A. Quick 2は化学重合促進剤を内蔵しているため、同社のデュアルキュア製品(例:Clearfil DC Coreやセルフアドヒーシブレジンセメント等)を用いる場合は追加の活性化処理は不要です。支台築造では、可能であればボンディング塗布後に一度光照射して接着層を硬化させておくと安心です(その上でデュアルキュアレジンを重ねれば確実な重合が担保されます)。一方、セルフアドヒーシブタイプの接着性レジンセメントによるクラウン合着では、ボンディング層を未重合のままセメントとともに自己重合させる手法が取れます。これはクラウン適合を最優先する場合のテクニックで、Quick 2は光を当てなくてもセメントの重合に連動して硬化が進む設計になっています。ただし、他社製のデュアルキュア材料を使う際には相手製品の指示に従い、必要に応じて専用のデュアルキュア活性化剤(例えばクリアフィルDCアクティベーター)をボンディング材に添加することを検討してください。要は、Quick 2自体は広範なデュアルキュア対応力を持ちますが、より安全策を取るなら「可能な限り光照射する」のが接着臨床の基本といえます。各ケースで適切な対応を選択してください。