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モリタの歯科用光照射器「ペンキュアー(Pencure)」とは?価格や性能を解説

モリタの歯科用光照射器「ペンキュアー(Pencure)」とは?価格や性能を解説

最終更新日

診療室でコンポジットレジン修復を行う際、光重合にまつわる小さなストレスを感じた経験はないだろうか。奥歯の深い窩洞で光照射器の先端が届かず、硬化不足にならないか不安になったり、長い照射時間に患者が口を開け続ける負担を気にしたりする場面である。また、忙しい保険診療の中では、1症例あたり数十秒の照射時間でも積み重なれば診療の回転効率に影響を及ぼしかねない。モリタの歯科用LED光照射器「ペンキュアー」シリーズは、そうした現場の悩みに応えるべく開発された製品である。本稿ではペンキュアーの特徴と性能を臨床と経営の両面から解説し、読者が自身の診療スタイルに適した投資対効果の高い機器導入を判断できるよう考察する。

製品の概要

ペンキュアー(PenCure)は、株式会社モリタ製作所が製造するコードレス式の歯科用LED光照射器である。レジン系材料の重合(硬化)や接着剤の光重合を行うための一般医療機器(クラスI)で、電池駆動のハンドピース型を採用している。初代ペンキュアー(型式VL-7)は2010年頃に登場し、光量1,000mW/cm^2の青色LEDを搭載して10秒・20秒・40秒の照射モードを備えていた。その後継機として現行モデルのペンキュアー2000(型式VL-10)が発売されており、光出力を倍増させた「2000」の名の通り高出力LEDによる高速重合が可能となっている。なお、ペンキュアー2000は一般的名称「歯科重合用光照射器」に加えて「歯面漂白用加熱装置」としても届出されており、専用オプションの交換ヘッドを装着することで単歯用のホワイトニング光照射にも利用できる特徴を持つ。いずれも院内据置型の大掛かりな装置ではなく、診療チェア毎に配備できるコンパクト機器であり、歯科医師やスタッフが手に持って直接照射操作を行う。モリタの技術と設計思想は、単なる重合スピード向上だけでなく、「レジンを確実に硬化させること」と「日々の臨床業務で使いやすいこと」の両立に注がれている。

主要スペック

ペンキュアー2000の光学性能は、光量が最大2,000mW/cm^2というハイパワーに達し、従来の約2倍の強度でレジンを短時間で重合できる点が最大の特徴である。高出力モードでは3秒間の照射で硬化が完了する設定となっており、臨床的にも少量ずつの積層充填であれば3秒照射×2回で十分な硬化深度(約3mm以上)を得られることが評価されている。標準モードでは10秒間の照射が設定可能で、症例に応じて2秒・3秒(高出力)、10秒(標準)、10秒・20秒のステップ照射、10秒・20秒のパルス照射といった複数のタイマー・モードを切り替えられる。ステップ照射とは照射開始数秒間は出力を抑えてその後フルパワーに上げるモード、パルス照射は間欠的に点滅させるモードであり、大きなレジン充填のポリマー収縮に配慮した硬化や歯髄温度の上昇抑制を狙った使い分けが可能である。光源波長は約420~480nmの「デンタルブルー」領域で、カンファーキノン系のフォトイニシエーターを主体とする市販のレジン材料であればほぼ問題なく硬化できる範囲をカバーする。一方、近年一部のレジンや接着材に併用されるタブレット状のフォトイニシエーター(TPOなど)に対しては、ペンキュアー2000は純青色LEDであるため波長405nmの成分がやや弱い可能性がある。そのため、該当材料を使用する場合は照射時間を延ばす、あるいは必要に応じてオプションの405nmホワイトニング用ヘッドを活用するといった対策が考えられる(405nmは本来漂白用だが、機構上は近紫外域の硬化促進にも利用可能である)。ヘッド部分は直径15mm程度と小型で前方への突出も少ないため、臼歯部遠心など開口量が限られる部位にも直接近接させやすいコンパクト設計になっている。また、光学ミラーと非球面レンズを組み合わせた独自の照射光学系により「平行光」すなわち高い指向性のビームを生成し、照射部位から多少距離が離れた場合でも光量低下を最小限に抑えて均一なエネルギーを届けられる。実測では先端から5mm離れても約80%の光強度を維持できるとされ、これによって深い窩洞や間接法用レジンの奥深い部分でも硬化不良リスクを軽減している。ペンキュアーシリーズはいずれもコードレスでリチウムイオン充電池を内蔵しており、一度のフル充電でペンキュアー2000の場合は3秒照射で約400回程度、10秒照射でも100回以上の連続使用が可能なバッテリー容量を備える。接続コードがない分ハンドピースを自由な角度で取り回せるため操作性は良好で、重量も旧モデル98gから現行モデル130gへわずかに増えた程度で依然として軽量な部類に入る。充電器は据え置き型の台座にハンドピースを差し込む無接点充電方式であり、金属端子の摩耗や接触不良が起きにくく日常の着脱もスムーズである。診療合間にスタンドへ戻してこまめに継ぎ足し充電を行う運用であれば電池切れの心配は少ないだろう(リチウム電池はメモリー効果がほとんどないため継ぎ足し充電による容量低下も起こりにくいとされている)。なおペンキュアー2000専用の充電池は約1年半(18ヶ月)程度の寿命が見込まれており、交換用バッテリーも入手可能である。バッテリー形状が旧ペンキュアーとは互換性がなく、ディスポーザブルの防護カバー類もそれぞれ専用品を用いる必要がある点には注意したい。

互換性や運用方法

ペンキュアーの導入に際し特別な工事や大規模な設置スペースは不要である。一般医療機器(クラスI)で特定保守管理医療機器に分類されるため、院内で適切な保守点検体制を取れば診療所で自由に使用できる。重合用光照射器は多くの歯科診療ユニットに標準付属する装置ではないため、新規開業時には他のハンドピース器具同様に必要本数を揃えることになる。ペンキュアーはコードレス独立型なので他社製チェアや機器との接続互換性といった問題は生じないが、代わりに院内で複数台を運用する際は各ユニットごとの充電習慣やバッテリー管理に留意が必要だ。例えば常に充電台に戻す運用をスタッフに徹底させ、定期的に外部の光量計で出力確認を行うことが望ましい(内蔵ラジオメーター機能は搭載されていないため、年に1度程度は客観的な光強度チェックを実施すると安全である)。感染対策上、照射時にはハンドピース先端にディスポーザブルの使い捨てカバーを装着することが推奨されている。ペンキュアー2000には専用の使い捨てカバーが別売りされており、旧ペンキュアーのカバーとはサイズが異なるため共用できない。幸い初期セットに100枚程度のカバーが付属しているが、消耗品として適宜追加購入して清潔な状態を保つ必要がある。照射部の小さなレンズ開口部はアルコール綿などで日常的に清拭消毒し、万一レジンや接着材が付着した場合は固まる前に速やかに除去することが重要である。光学系に汚れや傷が付くと光量低下やスポットムラの原因となるため、ラバーダム操作時のレジン浮き上がりなどでレンズ先端が接触しそうな場面ではカバー装着がとりわけ有効である。電池交換はユーザー自身で可能だが、交換用の予備バッテリーを常備するかどうかはクリニックの使用頻度に応じて検討するとよいだろう。充電完了までは約5時間を要するとのデータがあるため、フル充電のスペア電池があれば長時間連続使用でも業務に支障を来す心配が減る。なお、ペンキュアー2000には先述の405nm単歯用ホワイトニングヘッド(別売約7万円)がワンタッチで装着可能である。このヘッドに交換すると出力波長が405nmに切り替わり、歯面に塗布したホワイトニング剤へ集中的に光エネルギーを与えて漂白を促進する用途に使用できる。例えば失活歯の変色に対するウォーキングブリーチの際に、本製品を利用して歯冠部からの光照射で薬剤反応を高めるといった応用も考えられる。通常の口腔内全顎漂白(オフィスブリーチ)用ライトほどの広範囲照射はできないため、ホワイトニング専用機器の完全な代替にはならないが、あくまでオプション機能として“ひと工夫”できる点は本製品ならではの魅力と言える。

経営インパクト

光照射器は診療用チェア台数とほぼ同数が必要となる機器であり、その選択は医院の診療効率やコストに直結する。ペンキュアー2000の標準価格は約165,000円(税別)と公表されており、市販のLED光重合器としては中価格帯からやや高価格帯に位置する。ただし、単なる価格比較では見えない投資対効果を考慮すべきである。例えば、旧式のハロゲン光照射器で20秒かけていた硬化がペンキュアー2000導入により3秒で完了すれば、1回の充填処置あたり平均して十数秒のチェアタイム短縮が期待できる。数秒の差は些細に思えるが、1日あたり複数のレジン充填や接着処置を行う保険診療では、累積すれば1日数分の診療枠を生み出すことも可能である。また患者側の体感としても、特に小児や高齢者では「光を当てている間じっと待つ」時間が短いほど苦痛や不安が軽減し、治療満足度向上につながる。これは紹介増患やリピート受診といった形で間接的に経営利益に寄与する要素である。重合品質の向上も長期的には経営メリットをもたらす。高い光強度と平行光技術により、充填物の深部までしっかり硬化させられれば二次う蝕のリスク軽減や修復物の脱離防止に役立ち、再治療の発生率を下げて無償再製作のコストや患者の信頼低下リスクを減らせる。さらにペンキュアー2000ならではの付加価値として、単歯ホワイトニングという自費診療メニューの提供拡大が挙げられる。オプションヘッドの購入費用はあるものの、新たなホワイトニング症例を獲得できれば短期間で投資回収も見込めるだろう。機器そのものの減価償却については、仮に本体価格を5年で償却すると月額2,750円程度の負担であり、1日あたりに換算すればわずか百数十円に過ぎない計算である(165,000円÷60ヶ月≒2,750円/月)。この費用と照射時間短縮による生産性向上を天秤にかければ、ペンキュアー2000はコストパフォーマンスに優れた投資と言える。もちろん保守面のコストも無視できないが、バッテリー交換は1~2年に1回程度(数万円)で済み、その他のランニングコストはディスポカバー代(1枚数十円)程度である。モリタは国内大手でサポート体制もしっかりしており、故障時の修理対応や代替機貸出などのサービスも期待できる点は、機器の稼働率を維持する上で経営的な安心材料となる。

使いこなしのポイント

ペンキュアーシリーズを診療に導入した当初は、その高出力ゆえの扱いに最初は戸惑うかもしれない。3秒照射は従来の感覚より圧倒的に短く、うっかり光源の位置がずれたままスイッチを押してしまうと、修復物の一部が未硬化のままになりかねない。したがって、照射ボタンを押す前にヘッド先端の位置と角度をしっかり確認することが重要である。特に直接見えにくい臼歯部ではミラーで反射光を見ながら位置決めし、必要に応じて3秒照射を2回異なる方向から行うことが推奨される。これは保険修復のコンポジットでも、自費の大型レジンインレーやレジン充填でも共通して有効なテクニックで、短時間照射でも確実に硬化させるコツである。また高出力のメリットを享受しつつポリマー収縮応力を抑えるために、深い窩洞では最初の3秒はステップモード(弱→強の段階照射)で仮硬化し、その後標準モードで本硬化させるという段階硬化テクニックも考えられる。ペンキュアー2000が備えるステップ照射モードやパルス照射モードは、使いこなすことでレジン収縮によるマージンギャップ発生や歯髄への急激な熱影響を和らげることができるだろう。日常診療で本機を活用する際には、バッテリー残量の管理と常時充電の習慣付けもポイントになる。チェアサイドで使った後はこまめに充電器に戻すクセを付け、朝一番には満充電になっている状態を保つことで、忙しい診療中に突然充電切れを起こす事態を防げる。仮に充電が不十分なまま長時間の接着操作に入る場合は、予備の光照射器(あるいは充電済みスペア電池)がすぐ使えるよう準備しておくと安心である。感染対策の面では、滅菌できないハンドピース部を唾液や血液から保護するため必ずディスポカバーを装着し、患者ごとに交換する。カバーを装着しても光量にはほとんど影響しないが、装着し忘れて直接口腔内に入れてしまった場合はその都度アルコール清拭や紫外線ボックスで十分に消毒する。特に小児や嘔吐反射の強い患者では、誤って本体を咬まれたり汚染されたりしやすいため注意深いアシストが望まれる。患者への説明時には「最新の高出力LEDライトでレジンをしっかり硬化させます」「照射時間が短いので負担が少なくなります」といった分かりやすいメリットを伝えると良いだろう。専門用語を避けつつ、例えば「以前は20秒かかっていた光あてが今は3秒で終わります」という説明は、多忙な患者にも治療品質と効率の向上をアピールできるポイントである。ただし医療広告ガイドライン上、「完全に治療効果を保証する」ような断定的表現は避ける必要があるため、あくまで機器性能の事実と一般的メリットに留めて説明することが肝要である。

適応と適さないケース

ペンキュアーの適応症例は、基本的には光重合型レジンや接着システムを使用するあらゆる処置である。具体的には、コンポジットレジン充填、レジン前装冠などの直接修復、接着ブリッジやベニアのレジンセメント接着、シーラントやボンディング材の硬化、矯正用ブラケットの接着などが挙げられる。短時間で強力な重合が可能なため、小児のう蝕処置や多数歯同時処置(例:ブラケットを一括接着する際の連続硬化)でも診療時間を短縮できる利点がある。特に矯正歯科領域では、マルチブラケット装置を装着する際に1歯あたり3秒で接着を完了できれば全顎での施術時間が大幅に短縮できるため有用である。一方で適さないケースとして考えられるのは、光重合によらない材料や手技の場合である。例えばレジンではなくグラスアイオノマーや化学重合レジンを用いる場合、本製品の出番はない。また、インプラント上部構造の装着や大きな補綴物の接着でも、使用するセメントがデュアルキュアもしくは自己重合専用であれば光照射器の出力に依存しないため恩恵は少ない。もちろんデュアルキュアレジンセメントでも光照射による初期重合を行えば圧着や余剰除去が確実になるので、ペンキュアーの高出力を活用できる場面は多い。ただし奥歯のインレーやクラウンの装着時に不透過性の金属やセラミックを介して照射する場合、いくら高出力でも光が届かないことには効果が発揮できない。そのため遮蔽物があるケースでは、透光性のある部位(例えば歯頸部や隣接面から)に光を当てる工夫や、可能であれば透過性の高い接着材料の選択が重要となる。硬化後に修正が難しいレジン系一時固定ブリッジの仮着などでは、ペンキュアー2000の2秒照射といった一瞬の照射で一気に硬化させるより、弱出力でゆっくり硬化させたほうが位置調整の猶予が生まれる場合もある。つまり、症例によっては敢えて高出力を使わない方が良い場面もあるということだ。また、広範囲を一度に照射するオフィスホワイトニング目的では、本製品は先端が単一の歯にしか当たらないため非効率であり、専用の広範囲照射ライトに軍配が上がる。総じてペンキュアーは汎用性が高い機器だが、光の届かない状況や光重合材料を使わない処置には無力であり、それらでは従来通り別の手法や機材に頼ることになる。

導入判断の指針

1. 保険中心・効率重視型の開業医

日々多数の患者を診察し、う蝕処置から小規模補綴まで幅広くこなす先生にとって、ペンキュアー2000はとなるであろう。例えばレジン充填のチェアタイム短縮により、1日あたりの処置件数を増やしたり患者待ち時間を減らしたりできる。高出力ゆえに一部の症例で収縮リスクが気になる場合も、ステップモードや2回照射を組み合わせることで対応可能であり、汎用性は高い。価格面では安価なライトに比べ初期投資は上がるが、時間短縮による生産性向上と再治療低減によるコスト削減を考慮すれば投資対効果は十分見込める。忙しい保険診療を回すには、壊れにくく信頼性の高い国内メーカー製である点も安心材料だ。同時にディスポカバーなど衛生管理も徹底しやすく、院内感染対策の意識が高いスタッフにとって扱いやすい点も評価できる。したがって保険診療メインの医院でも、効率と信頼性を求めるならペンキュアー2000は有力な選択肢である。

2. 高付加価値・自費診療型の開業医

審美修復や高度な保存治療など、自費治療中心でクオリティ最優先の診療スタイルを持つ先生にとっても、ペンキュアー2000は価値ある導入だろう。最大のメリットは重合の確実性と患者満足度である。高価な審美修復ではわずかな硬化不足が長期予後を左右しかねないため、強力な光照射で十分に硬化深度を確保できる安心感は大きい。実際、大学機関の試験でも3秒×2回照射で3mmを超える硬化深さが得られており、ボンディングから表層まで高強度の一体化が期待できる。さらに患者への説明時には、「当院では最新式の光照射器でレジンをしっかり硬化させています」とアピールすることで、技術投資を惜しまない医院という信頼感も与えられるだろう。自費診療では1症例あたりの利益率が高いため、再治療を防ぐこと自体が経営利益の保全になる。ペンキュアー2000はその意味でリスクマネジメントツールとも言え、導入費用は高品質維持のための保険と捉えられる。また単歯ホワイトニング機能は審美歯科におけるニッチな需要にも応えられる付加価値であり、他院との差別化につながる可能性がある。ただし、高出力ゆえレジン硬化時の収縮ストレス管理はよりシビアになるため、術者がモードを適切に使い分ける高度なテクニックが求められる。質を追求する歯科医師であれば、こうした使いこなしも前向きにチャレンジしてみる価値があるだろう。

3. 口腔外科・インプラント中心型の開業医

主に外科処置や補綴を専門とし、レジン充填は頻度が少ない先生の場合、ペンキュアー2000導入によるメリットは限定的かもしれない。インプラントや義歯中心の診療では光重合器の出番は少なく、安価なLEDライトや既存の旧式ライトでも日常業務に支障をきたさないことが多い。このタイプの医院で重要なのは費用対効果の見極めである。例えば直近で矯正治療も併設するとか、予防歯科部門でシーラントやCR充填を増やす計画があるなら、ペンキュアー2000を導入して体制強化を図るのも一案だ。そうでなければ現在使っている光照射器がまだ健在である限り、無理に高額機種へ買い替える必要性は高くない。ただし、患者説明用のツールとして最新機器を導入していることを示すPR効果もゼロではない。口腔外科・インプラント系の患者でも、精密治療の裏付けとして最新鋭の機器が揃っていることに安心感を覚える人はいる。そのため予算に余裕があり院内の設備レベルを底上げしたい場合には、あえて導入することでスタッフの意識向上や患者への訴求点とする考え方もある。ただ一般論として、レジンを日常的に多用しない医院ではペンキュアー2000の能力をフルに活かす機会が少ないため、投資優先度は低めと判断できる。

よくある質問

Q. 本当に3秒の照射でレジンは十分硬化するのか?

A. 臨床的に問題ない硬化を得るには症例に応じた照射テクニックが重要である。ペンキュアー2000の高出力モード(約2,000mW/cm^2)で3秒照射を2回行えば、少なくとも3mm以上の硬化深度が得られることが大学機関の評価で確認されている。1回3秒でも多くのケースで実用可能だが、メーカーは余裕をもって二度照射する方法を推奨している。特に窩洞が深い場合や光が当てにくい角度では、3秒×2回を様々な方向から当てることで十分な重合を確保すると良い。結論として、3秒という短時間でも適切に照射すれば必要な強度は得られるが、照射モードの選択と回数の工夫で安全域を取るのが賢明である。

Q. 手持ちのレジン材料はすべてペンキュアーで硬化できるのか?

A. 一般的な歯科用レジンの主たる光重合開始剤はカンファーキノンで、その感度ピークは約470nm付近である。ペンキュアーシリーズはいずれも420~480nmの波長域をカバーしており、カンファーキノン系の材料であれば問題なく硬化可能である。近年一部の審美修復材料ではIvocerinやTPOなど405nm近辺に吸収極大を持つフォトイニシエーターが併用されることがあるが、その場合でも420nm以上の光である程度は重合が進行するよう設計されている。ただ、完全に405nm帯専用の材料に対しては効率が落ちる可能性があるため、メーカーが推奨する照射時間を延長したり、必要であればペンキュアー2000のホワイトニングヘッド(405nm)を併用したりする方法も考えられる。総じて、市販されている主要なレジン・接着材には概ね適合すると言ってよいが、特殊な材料を使う際は取扱説明書の指示に従って照射条件を調整することが望ましい。

Q. 電池の寿命や交換について教えてほしい。

A. ペンキュアー2000に使用されているリチウムイオンバッテリーは、日々の使用状況によって異なるが約1年半(18ヶ月)程度で性能劣化が見られるとされている。劣化すると1回のフル充電で照射できる回数が徐々に減少し、充電時間も延びる傾向がある。そのため、1年以上使用して充放電効率が落ちてきた場合には、メーカー純正の交換用電池(ペンキュアー2000専用)を購入して取り替えることが推奨される。交換手順は比較的簡単で、モリタのサポート情報にも掲載がある。費用は数万円程度かかるが、新品同様の照射回数に回復するため投資する価値はあるだろう。なお旧モデル(ペンキュアーVL-7)の電池とは互換性がないため流用はできない。また、長期間使わず放置するとリチウム電池は自己放電で劣化しやすいので、適宜充電する習慣も寿命を延ばすポイントである。

Q. ペンキュアー2000はホワイトニングにも使えるのか?

A. 限定的ではあるが使用可能である。ペンキュアー2000本体は標準状態では青色LED光(約460nm)を照射するため、これは主にレジン硬化用の波長でありホワイトニング剤の活性化には適していない。しかし、別売の単歯用ホワイトニングヘッド(波長405nm)に付け替えることで、歯面漂白用の紫外~バイオレット光を出すことができる。このヘッドを使えば、失活歯など1本の歯を集中的に漂白するケースで薬剤反応を促進する補助ライトとして機能する。例えば変色した前歯1本にホワイトニング剤を置き、ペンキュアー2000で集中的に照射することで、薬剤のみより短時間で漂白効果を引き出すことが期待できる。ただし一度に照らせる範囲はスポット的なので、上下顎全体を一括で白くするオフィスホワイトニングには非効率であり、専用のLEDライトやプラズマライトの方が適している。そのため、ペンキュアー2000は「ポイント漂白」用途と割り切り、必要に応じて活用するのが現実的である。

Q. 既にユニット付属の光照射器を使っているが、買い替えるメリットはあるか?

A. ユニット一体型のハロゲンライトや初期のLEDライトからの買い替えで得られるメリットは、重合性能の向上と使い勝手の改善である。まず重合性能については、旧来のハロゲンライトでは光量500~800mW/cm^2程度で20秒以上の照射が必要だったものが、ペンキュアー2000では2,000mW/cm^2で3秒照射が可能となり、硬化不足のリスク低減と大幅な時間短縮が実現する。また青色LEDはハロゲン光源と比べ熱放射が少なく、歯髄や軟組織への温度上昇を抑えられる利点もある。次に使い勝手だが、コードレスのペン型ハンドピース形状は取り回しが良く、ユニットにぶら下がるタイプより軽量で視野を確保しやすい。奥歯遠心でも本体が頬に干渉しにくく、術者・アシスタント双方にとって扱いやすいデザインと言える。さらにモード選択肢が豊富で、症例に応じた硬化戦略を立てられるのも強みだ。一方で既存ライトに特段不満がなく、重合不良のトラブルも経験していない場合は、買い替えの優先度は他の投資項目と比較検討する余地がある。経営資源の限られる開業初期などであれば、今あるライトを予備として活かしつつまず1台のみペンキュアーを導入してみるのも現実的なアプローチだろう。その1台を主要チェアで使ってみてメリットを実感できれば、順次全ユニットへの展開を検討すればよい。要は、現状抱えている課題(照射時間・硬化精度・扱いやすさ)と投資額を天秤にかけ、メリットが上回ると判断した時が買い替え時であると言える。