
アポツール&ボックス(Apotool & Box)の診察券アプリの使い勝手は?歯科医師向けに解説
忙しい診療日、受付に患者さんが列を作り、電話は予約変更の対応で鳴り止まない――こんな経験をした歯科医師は少なくないだろう。紙の診察券や電話確認に頼った予約管理では、患者さんの予約忘れやキャンセルで診療スケジュールが乱れ、人件費や時間のロスも生じがちである。一方で、デジタル診察券アプリを導入すればこの状況が変わる可能性がある。本稿では、歯科向けクラウド予約システム 「Apotool & Box(アポツール&ボックス)」 が提供する診察券アプリの使い勝手について、臨床現場と医院経営の両面から詳しく解説する。本記事を読むことで、読者である歯科医師自身の医院にこのアプリが適しているか、その導入効果を具体的にイメージできるだろう。
製品の概要:Apotool & Boxと診察券アプリの全体像
Apotool & Box for Dentist(アポツール&ボックス) は、歯科医院専用に開発されたクラウド型の予約・患者情報管理システムである。患者の予約受付から来院記録、治療情報、会計、診療後のフォローまで、日々の歯科診療に必要な業務を一元管理するプラットフォームとして2015年頃から提供されている。基本機能で予約カレンダー管理や患者データ管理を行い、追加オプションとして様々なサービスを組み込めるのが特徴である。
そのオプションの一つがスマートフォン診察券アプリ「私の歯医者さん」である。これは従来のプラスチック診察券に代わって患者のスマホを診察券として活用し、予約の取得・変更、来院受付(チェックイン)、会計決済、診療後の連絡などを非接触・オンラインで行うためのアプリケーションである。2018年にリリースされ、日本全国で2025年時点で累計300万ダウンロードを超えるなど、歯科業界では標準となりつつあるデジタルツールだ。メーカーは東京都に本社を置く株式会社ストランザであり、医療機器には該当しないITシステムとして提供されている。したがって薬機法の承認や認証は不要だが、医療情報システムとして高い安全性と信頼性が求められる製品である。
診察券アプリ「私の歯医者さん」は、Apotool & Box本体とリアルタイムに連携する設計である。患者さんはApp StoreやGoogle Playから無料でアプリをダウンロードし、自分が通う歯科医院を選択・登録して利用する。アプリを介して患者自身が診療予約を入れたり変更したりでき、来院時には受付に設置したQRコードをスマホで読み込むだけでチェックインが完了する。また、会計もアプリ連携によるキャッシュレス決済に対応しており、受付で現金やカードをやり取りせずに診療後にそのまま帰宅できる。こうした患者サービスの利便性向上と院内業務効率化を両立させるのが本製品の目的である。
主要スペックと機能:アプリがもたらす臨床現場の変化
まず、診察券アプリの主な機能を整理してみよう。紙の診察券がスマホアプリに置き換わることで、患者には氏名・診察券番号・医院情報・次回予約日時などが画面上に表示される。予約日時は最大3件先まで表示可能なので、複数の予約を入れている患者さんでも忘れにくい。従来は予約カードやメモを渡していた情報を、患者自身がいつでも確認できる点は、予約忘れによる無断キャンセルの抑制に直結する。
さらに、アプリ上には「お知らせ」や「ご案内」といった項目があり、医院から患者へのメッセージを配信できる。定期健診のリコール案内、休診日やキャンペーンのお知らせ、治療後の注意事項など、医院側が発信した情報はプッシュ通知とともに患者のスマホ画面に表示される。既読・未読の状態も分かるため、患者が情報を見落とすリスクを減らせる。特に 自動予約リマインド の機能は強力で、例えば予約前日に自動送信される通知によって患者の来院率が向上したというデータもある。実際、ある導入医院ではアプリでリマインダーを活用した結果、定期検診の受診率(リコール率)が約60%から90%にまで改善した。このように、患者の通院継続や再来院を促す効果は臨床的にも経営的にも見逃せない利点だ。
患者側の使いやすさも2024年の大型アップデートで向上している。UI(画面設計)とUX(操作体験)の刷新により、高齢の方でも直感的に操作しやすいデザインとなった。例えばボタンや文字の視認性向上、操作手順の簡略化などが図られている。また、家族アカウント機能では一つのアプリで家族全員分の診察券を管理できる。小児や高齢の家族の予約を代表者がまとめて管理し通知を受け取れるため、ファミリー層にも便利だ。口腔内写真や治療説明動画をアプリ経由で患者に共有する機能もあり、これは患者のデンタルIQ向上や術後フォローに役立つ。たとえばインプラント手術後の注意点を動画で送れば、自宅で再確認してもらえる。こうした機能は、患者の安心感を高め治療への満足度向上につながるだろう。
技術的な仕様としては、アプリはiOSとAndroidの両OSに対応している。患者情報や予約データはクラウド上で暗号化・保管され、個人情報保護とセキュリティ対策も万全である(システムはISO27001等の認証取得済み)。診察券アプリ自体の提供形態は 月額制のオプションサービス で、Apotool & Box本体と同じクラウド環境で稼働する。そのため医院側ではサーバー設置などは不要で、インターネット接続可能なPCが1台あれば運用可能だ。初期導入時には、受付用QRコードを印刷したアクリルパネルや患者案内用リーフレットなどが提供されるので、ハードウェア含め特別な準備負担なくスタートできる点もスペック上のメリットである。
他システムとの互換性と院内での運用方法
Apotool & Boxの診察券アプリを活用するには、医院側でApotool & Box本体を導入していることが前提となる。アプリ単体では機能せず、あくまでクラウド予約システムと連動して初めて力を発揮する仕組みである。既に他の予約管理システムや電子カルテを使っている場合でも、Apotool & Boxは多くの他社製品とデータ連携が可能だ。たとえばレセコン(レセプトコンピュータ)各種との患者基本情報や予約情報の同期に対応しており、主要な国産レセコン(モリタ、ノーザ、デンタルシステムズ、ミックなど)の製品と連携実績がある。データ連携にあたっては別途初期設定費用が発生するものの、一度接続すればApotool上で登録・変更した予約がそのままレセコン側にも反映されるため、受付スタッフが二度入力する手間が省ける。予約一覧や来院状況もレセコン画面上で確認でき、二重管理のミスや入力漏れを防止できる点は、院内オペレーション全体の質を高める。
また、Apotool & Boxは画像管理(Dental X線や口腔内写真の自動取込み)や自動精算機、レシートプリンター等とも連携を進めている。例えばデジタルレントゲンシステムから撮影画像をクラウドに自動保存し、診療後にその画像をワンクリックで患者アプリに送るといった運用が可能になる。会計面では、アプリと連動した自動精算機(セルフレジ)を併用すれば、患者がアプリ画面のQRコードを精算機にかざすだけで金額を呼び出し、決済を完了できる。現金の受け渡しやクレジット端末操作をスタッフが行わずに済むため、ヒューマンエラーを大幅に減らせる。実際にこの運用を導入したクリニックでは、現金会計のミスがほぼゼロになり、毎日30分以上かかっていた締め処理が数分で終わるようになったという。診察券アプリは単体でも便利だが、他の周辺機器やサービスと組み合わせることで、院内業務のDX(デジタル化)を総合的に推進できる点が大きな強みである。
運用面で留意すべきは、院内のWi-Fi環境と患者への周知方法である。受付でQRコード読取やリアルタイム通信を行う以上、医院には安定したインターネット回線とWi-Fiが必要だ。とはいえ通信量は予約データやテキスト情報が主体で大きくないため、一般的なブロードバンド回線で十分対応可能である。患者への周知については、アプリ導入当初こそスタッフがダウンロード方法を説明したり初期設定を手伝ったりする場面があるかもしれない。しかし、前述のように導入時に配布されるリーフレットや院内掲示ポスターを活用し、「当院ではスマートフォン用の診察券アプリを利用しています」と初診時に明確に案内することが最も効果的だ。実際、あるクリニックでは「当院の診察券はアプリです」と初診患者にその場でインストールを促したところ、ほとんどの患者が抵抗なく登録し、紙の診察券を一切発行しなくなったという。スマホ操作が苦手なごく一部の方には例外的に紙カードを用意したものの、その割合は数%程度に留まったとのことである。このように運用の工夫次第でスムーズな移行が可能であり、スタッフ全員で統一した案内ルールを設けておくことが成功の鍵となる。
医院経営にもたらす効果:コスト試算とROIの考察
診察券アプリ導入による経営インパクトを定量的に見てみよう。まずコスト面では、Apotool & Box本体の基本使用料が月額18,000円(税別、ユニット6台まで)であり、診察券アプリ「私の歯医者さん」は追加オプションとして月額24,000円(税別)で契約する必要がある。つまり、システム本体とアプリ併用時の固定費は月あたり約42,000円(税別、SMS送信費等を除く)となる。年間コストにすると約50万円前後であり、一見すると小さくない投資額だ。しかし、この費用対効果(投資対効果)を正しく評価するには、1回の診療あたりのコストとその見返りで考える必要がある。
例えば1台のユニットで1日に20人、月間400人の患者を診るクリニックの場合、診察券アプリにかかるコストは1患者あたり100円前後となる。これはハガキによるリコール案内(切手代や印刷代)や予約確認の電話にかかる通信費と人件費を考えれば、同程度かそれ以下の水準である。郵送コストの削減は顕著で、定期検診案内を往復ハガキや封書で送っていた医院では、アプリ通知への切り替えで毎月数千円~1万円単位の経費節減になったという。また、電話予約対応の件数が減ることで、受付スタッフの省力化により人件費の効率化も期待できる。仮にスタッフ1人分の電話対応時間を月10時間減らせたとすると、人件費に換算して数万円のコスト削減効果がある計算だ。
一方、収益の増加要因も見逃せない。自動リマインドによってキャンセル率が下がり稼働率が上がることで、空き枠の発生が減り売上機会のロスを防げる。例えば月に10件あった無断キャンセルが半減し5件になれば、残り5件分の時間で他の患者を診療できる可能性が生まれる。1件あたり5,000円の治療収入だとすれば、月25,000円の増収に相当し、ほぼアプリの月額費用を回収できる計算である。また、先述のようにリコール率が飛躍的に向上すれば、長期的な患者離脱防止による安定収益につながる。実際に診察券アプリ導入でリコール率90%を達成した医院では、継続的なメンテナンス来院が増えたことで年間の自費売上が大幅に伸びたとの報告もある。これは患者一人ひとりのライフタイムバリュー(生涯来院回数や治療貢献度)を高める効果があったと考えられる。
さらに、現金授受ミスの削減による損失防止も地味ながら重要なROI要因だ。会計ミスによる金銭差額がゼロになることで、医院側が負担する返金対応や過剰受取によるトラブルリスクが排除される。金額としては一件あたり数百円~数千円でも、信頼関係やスタッフ負担の点で無視できない損失であったはずだ。診察券アプリと自動精算機、オンライン決済を組み合わせれば、こうしたヒューマンエラー起因のロスを実質的にゼロにできる点も経営的メリットである。
総合的に見れば、診察券アプリ導入にかかるコストは多角的な効率化と増収効果によって十分ペイできる可能性が高い。特に保険診療中心の医院では予約漏れやキャンセル減少による稼働率アップが、自費診療比率の高い医院ではリコール徹底によるリピート増が、それぞれ大きなリターンとなるだろう。投資対効果を最大化するには、自院の患者数や予約状況を踏まえて「どのくらいキャンセルが減れば元が取れるか」「どの業務が何時間短縮できれば費用を上回るか」を試算し、具体的な目標KPIを設定して運用することが望ましい。
スムーズに使いこなすためのポイント
新たなシステムを導入するときには、初期段階で乗り越えるべきハードルがあるものだ。診察券アプリの場合、そのポイントは主に患者への周知・定着とスタッフの運用習熟にある。以下に、導入支援コンサルタントの立場から見た「使いこなしのコツ」を述べる。
-
患者への案内と促進策 まず患者さんにアプリ利用を浸透させるには、最初の一声が肝心である。初診や次回来院時に「当院ではスマホアプリを診察券として利用しています」と明言し、その場でダウンロードと登録をお願いしよう。院内に専用QRコードやダウンロード方法を掲示し、スタッフも「こちらからすぐ登録できます」と声をかければ、多くの患者は素直に応じてくれる。特に若年~中年層はスマホアプリへの抵抗が低く、全国平均では利用者の約95%が10~60代というデータもある。問題は高齢の患者だが、実数で10万人以上の70代以上が既にこのアプリを利用している事実が示すように、決して不可能ではない。必要に応じて受付スタッフが一緒に操作を手伝ったり、家族と一緒に来院される方にはご家族に説明するなど工夫しよう。どうしても難しい場合のみ紙の診察券を発行する対応も用意しておけば安心である。ただし実際に他院の例を見ると、そうしたケースは全患者の数%以下に留まっている。「うまく使えなかったら紙カードもありますのでご安心ください」とフォローしつつ基本はアプリ利用というスタンスで、多くの患者はスムーズに移行できるだろう。
-
スタッフ教育と役割分担 システム導入時には院長やマネージャーだけでなく、受付担当や歯科衛生士を含むスタッフ全員に基本的な操作フローを共有する必要がある。Apotool & Boxでは導入時にオンライン研修やマニュアル提供が行われるため、それらを活用しチームで習熟しておきたい。例えば予約変更の手順、患者アプリへの情報配信方法、問い合わせがあった場合の対応方法などを事前にロールプレイしておくと安心である。患者から「通知が届かない」などの質問があれば、考えられる原因(通知設定の許可や機種変更時の再ログインなど)を即座に案内できるようにQ&Aを用意しておくと良い。また、日常運用では受付担当が患者アプリ対応の中心となる場合が多い。受付スタッフが患者のスマホ画面を確認したり、登録サポートを行う場面もあるため、抵抗感のないよう十分トレーニングしておこう。診療後の画像送信やメッセージ配信などは歯科医師や衛生士が行うこともあるが、そこは院内ルールで役割分担を決めておくと効率的だ。例えば「治療説明用の写真は担当衛生士がMedical Boxから送信」「クリニック全体のお知らせはマネージャーが月初に配信」などと決めれば、運用がスムーズになる。
-
患者とのコミュニケーションへの活用 アプリを単に予約管理ツールとして使うだけでなく、患者との信頼関係構築ツールとして活用することも重要だ。たとえば、治療後に患者さん宛に「今日は◯◯の治療お疲れさまでした。次回○月○日にお待ちしています。」といったメッセージを送れば、ちょっとした医院からの気遣いとして喜ばれるかもしれない(医療広告ガイドラインに反しない範囲で行うことが前提)。他にも、ホワイトニングや矯正のキャンペーン情報、自費製品の紹介をアプリ内で行うことも可能である。実際に物販提案機能でオーラルケア製品の案内を送り、追加購入に結びつけている医院もある。こうした付加価値サービスを上手に使いこなすことで、患者満足度の向上や自費率アップといった経営効果にもつなげることができるだろう。
適応するケース・適さないケース
診察券アプリ「私の歯医者さん」は多くの歯科医院で有用だが、万能ではない。導入が特に適しているケースとしては、まず予約枠の稼働率を上げたい医院が挙げられる。日々のキャンセルや無断欠席が問題になっている場合、アプリのリマインド通知や簡便な予約変更機能によって改善が期待できる。また、若年層やファミリー層の患者が多い医院も相性が良い。スマートフォンによるサービスに抵抗のない層では導入初日から高い利用率が見込め、紙のカード廃止によるコスト削減効果がすぐに現れるだろう。さらに、複数医院を展開している法人にも有効だ。各院の予約状況をクラウド上で一元管理でき、患者もアプリ内で医院を切り替えて使えるため、分院間で患者を紹介し合う際にも便利である。
逆に導入効果が出にくいケースも考慮すべきだ。例えばご高齢の患者が大半を占める地域密着型の医院で、かつ患者数がそれほど多くない場合、アプリへの移行率が伸び悩む可能性がある。このようなケースでは、無理に全員へ使用を強制するよりも希望者から徐々に広げ、並行してハガキや電話も併用する期間を設ける方が現実的かもしれない。また、院長やスタッフ自身がITツールへの苦手意識が強い場合も注意だ。システムは導入して終わりではなく、日々の運用とメンテナンスが伴う。例えばアプリからの問い合わせメッセージへの対応や、ソフトウェアアップデートへの理解などが必要になるため、全員が主体的にIT活用していく姿勢がないと宝の持ち腐れとなりかねない。そうした場合は、まずは院内のデジタル化に対する意識改革やスタッフ教育から着手すべきだろう。
また、歯科医院の経営方針によっても向き不向きがある。例えば「高齢者の訪問診療に特化しており、通院する患者は少ない」という医院では、アプリの恩恵は限定的だろう。訪問診療ではスタッフが直接患者宅へ行くため予約忘れの問題は少なく、スマホを使えない寝たきり高齢者も多いためである。このように、自院の患者層・診療形態を分析し、アプリ導入が解決する課題が明確に存在するかを検討することが重要である。課題が見当たらない場合は焦って導入する必要はないが、逆に少しでも「予約管理に課題がある」「業務効率化を図りたい」という点があれば、導入メリットは十分得られるはずだ。
導入判断の指針(医院のタイプ別)
最後に、読者である歯科医師がご自身の医院にこの診察券アプリが向いているか判断しやすいよう、いくつかのタイプ別に考えてみたい。
-
保険診療中心で回転率重視の医院 患者数が多くチェアタイムの効率化を最優先する医院では、診察券アプリは待ち時間短縮と予約管理精度向上の切り札となる。予約の自動リマインドにより空振りの時間枠が減少し、QRコード受付で院内滞在時間も短縮できるため、一日あたりの対応患者数を増やせる可能性がある。また電話対応の削減で受付スタッフの負荷が減り、結果としてスタッフを追加雇用することなく患者対応量を増やすことも期待できる。大量の患者データもクラウド上で整理・分析されるため、キャンセル率や受診率の推移を見ながら予約戦略を立てるといったデータ経営にも踏み出しやすい。したがって、ユニット数・患者数ともに多い忙しい医院ほど、このアプリ導入の投資対効果は高いだろう。
-
自費診療を積極展開し高付加価値サービスを目指す医院 審美歯科や矯正歯科など高単価の自費治療に注力する医院では、患者満足度の向上やブランディングの観点から診察券アプリの導入が有効だ。最新のITサービスを導入していること自体が医院の先進性をアピールし、患者に安心感や特別なサービスを提供している印象を与える。実際、アプリ経由で術後フォローのメッセージやメンテナンス時期の通知を受け取った患者からは、「きめ細かいフォローが嬉しい」「引き続きこの医院に通いたい」というポジティブな声が聞かれている。また、キャンセル防止による収益面のメリット以上に、患者との関係性強化によるリピーター化・紹介増加といった効果も期待できる。高付加価値路線の医院では患者一人当たりの価値が高いため、アプリ導入で数名の離脱を防げれば十分に費用を回収できるだろう。ただし、高齢の富裕層患者などでは紙の案内状や電話の方が良いと感じる場合もあるため、個々の志向に合わせた対応も並行して行うなど、柔軟な運用が求められる。
-
インプラント・口腔外科中心でメンテナンス重視の医院 大きな手術や長期治療を提供する医院では、治療後の定期メンテナンスやフォローが経営の鍵となる。そうした医院にとって診察券アプリはリコール徹底と術後フォローの強力なツールだ。インプラント埋入後の定期検診通知を確実に送り、患者がフォローアップを忘れないようにすることで、埋入歯の長期安定と追加処置の早期発見につながる。結果として患者の信頼を獲得し、インプラント保証やリピート治療の契約率向上にも寄与するだろう。また、手術前後の注意事項を動画で配信する機能は、口腔外科処置後の患者不安を軽減し、術後合併症の防止にも役立つ。患者側からもアプリで質問や相談を送りやすくなるため、術後フォローの質が向上する。以上から、インプラント・外科系の医院こそアプリを患者ケアの一環として位置づけ、導入する価値が高い。ただし、手術中心のクリニックで1日の患者数自体は少ない場合、費用対効果の検証は必要だ。アプリを活用する患者が限られる場合は、他のオプション(例えばLINE連携で個別フォローをする等)との比較検討も視野に入れ、自院に最適な体制を整えてほしい。
-
スタッフリソースに余裕がなく業務効率化を急務とする新規開業医院 開業したばかりでスタッフ数が最小限という医院では、一人ひとりの業務負担が重く、効率化できる部分はITに任せたいと考えるだろう。診察券アプリを含むApotool & Boxの導入は、人的リソース不足をテクノロジーで補う手段となる。予約受付の自動化、キャンセル時の即時通知、会計のセルフサービス化などにより、少人数でも回る業務フローを構築できる。事実、ある新規開業クリニックでは、院長と衛生士のみで始めたがアポツール導入により受付要員を雇わずに済み、人件費を治療設備投資に振り向けられたという例もある。ただし、新規開業では患者層も手探りの状態であるため、最初は紙の診察券と併用しつつ患者の反応を見て、本格運用に移るなど段階的に進めることも検討しよう。30日間の無料トライアルが提供されているので、開業直後で資金に余裕がない場合でも一度試してみてから判断できる点は安心材料である。
以上のように、医院の特性や戦略によって診察券アプリ導入の是非は変わってくる。しかし、多くの歯科医師が悩む「キャンセル対応」「リコール管理」「受付業務負担」という課題に、このデジタルソリューションは共通してアプローチし得る。「患者に使いこなせるだろうか」「スタッフが混乱しないか」といった不安も、実際の導入事例が示すように、適切な工夫で乗り越えられることが分かってきた。自院の状況と照らし合わせ、少しでも課題解決の糸口になりそうであれば前向きに検討してみる価値は十分にあるだろう。
結論
診察券アプリ「私の歯医者さん」は、単なる診察券代替に留まらず、歯科医院の診療スタイルと経営にプラスの変化をもたらす総合ツールである。臨床現場では予約漏れや待ち時間の減少、患者とのコミュニケーション強化を通じて診療の質と効率を高める。一方、経営面では無駄なコスト削減と患者リテンション向上により、中長期的な収益安定に寄与する。筆者自身、20年以上の歯科臨床経験の中でアナログ管理に起因する様々な非効率を痛感してきたが、まさにこうしたDXツールの導入によってそれらが解消されていく様子を数多く目の当たりにしてきた。
もちろん導入には準備と慣れが必要である。しかし、スタッフと患者の双方が一度慣れてしまえば、「どうして今まで紙の診察券を使っていたのだろう?」と思えるほど快適な日常へと変化するだろう。例えば、診療後に次回予約を入れ忘れて帰った患者さんにもアプリ経由ですぐリマインドが届き、そのまま自宅から予約を確定できる。受付終了後に明日の予約カルテを束で用意していたスタッフは、自宅のPCやスマホから予約一覧を確認して明日に備えられる。医院の業務フローと患者体験が一段上のレベルにシフトする――それが本製品導入のもたらす未来である。
明日からできる次の一手として、まずは30日間の無料体験に申し込んでみるのがおすすめだ。実際の自院の予約データを移行し試用してみることで、具体的なメリットと課題が見えてくるだろう。また、導入事例の豊富な公開があるため、似た規模・状況の他院がどう活用しているかを調べてみるのも良い。メーカーへの問い合わせやオンラインデモの依頼も積極的に活用し、不明点を解消してから導入に踏み切れば失敗は避けられるはずだ。医院経営者として、そして臨床家として、最適なツールを選び抜き患者とスタッフ双方に喜ばれる医院づくりを目指していただきたい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 高齢の患者が多いのですが、それでも診察券アプリを導入できますか?
A1. 高齢の患者でも使えるようにアプリのUIは改良されており、実際に70代以上でも10万人以上が利用しています。ただし高齢者には抵抗感がある場合もあるため、無理強いは禁物です。希望者から順に案内し、必要に応じて紙の診察券も併用する柔軟さを持たせると良いでしょう。家族と同居の方であればご家族に代理管理してもらうこともできます。まずは患者さんの反応を見ながら段階的に広めていく運用がおすすめです。
Q2. 導入にあたって初期費用や準備はどの程度必要ですか?
A2. 初期費用としてはApotool & Boxのアカウント発行費やレセコン連携設定費(必要な場合)などが発生します。診察券アプリ自体の初期導入費には、受付用のQRコードプレートや患者案内用のチラシ類が含まれているため、医院側で特別な準備物を用意する必要はありません。ただ、院内ネットワーク環境(Wi-Fi)の整備は必須です。またスタッフへの操作研修に多少時間を割く必要がありますが、メーカーのサポート体制が整っており、オンライン講習やマニュアル提供も受けられるので安心です。
Q3. Apotool & Boxを使わずに診察券アプリだけ利用することはできますか?
A3. いいえ、診察券アプリ「私の歯医者さん」はApotool & Boxのオプションサービスであり、単体では利用できません。アプリ上の予約・受付情報はすべてクラウドシステム本体と連動して処理されます。そのため、まずはApotool & Box本体を導入いただく必要があります。ただし、既存のレセコンや電子カルテとApotoolを連携させて使うことは可能です。現在使用中のシステムを活かしつつApotool & Box+診察券アプリを併用することもできますので、詳しくはメーカーに相談されると良いでしょう。
Q4. 患者さんからの問い合わせやサポート対応が増えて逆に負担になることはありませんか?
A4. 導入当初は「登録方法が分からない」「通知が来ない」等の問い合わせが発生する可能性があります。しかし、これらは初期設定時の一時的なもので、多くの患者さんは一度登録してしまえば問題なく使い続けています。運用が軌道に乗れば、電話での予約変更や確認の問い合わせが減るため、トータルではスタッフ対応の手間は大幅に削減されるはずです。メーカー側でも患者向けのヘルプページや問合せ窓口を用意していますので、医院で抱え込まず適宜案内できます。結果としてスタッフの負担は軽減し、本来の対人業務に注力できるでしょう。
Q5. セキュリティや個人情報保護の面で心配はありませんか?
A5. Apotool & Boxおよび診察券アプリは、医療情報システムとして高いセキュリティ基準で運用されています。データはクラウド上で暗号化され、安全なデータセンターに保管されています。通信もSSL等で保護されており、第三者が盗み見たり改ざんするリスクは極めて低いです。また、システムは医療情報ガイドラインに準拠しており、アクセス権限の管理や操作ログの記録なども実装されています。医院側でも基本的なパスワード管理や端末のウイルス対策を行う必要はありますが、少なくとも紙のカルテや予約帳を運用するよりも遥かに厳重な管理が可能です。不安がある場合はメーカーからセキュリティに関する詳細資料を取り寄せ、院内のプライバシーポリシーとの整合性を確認すると良いでしょう。