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モリタの歯科予約システム「Genifix(ジニフィクス)」とは?LINE連携はできる?

モリタの歯科予約システム「Genifix(ジニフィクス)」とは?LINE連携はできる?

最終更新日

忙しい診療日の朝、電話予約の対応に追われて受付が混乱し、ようやく埋めた予約枠の患者さんが無断キャンセル――こうした事態は歯科医院にとって日常的な悩みである。予約制が基本の歯科診療では、予約管理の巧拙がそのまま医院経営に直結する。一方で、患者側も治療の予約を忘れたり連絡をためらったりすることがあり、結果として継続受診が途絶えてしまうケースも少なくない。この記事では、こうした課題を解決するために株式会社モリタが提供する歯科予約システム「Genifix(ジニフィクス)」に注目する。本稿では臨床現場と医院経営の両面から、Genifixの特徴や導入効果、さらにはLINEとの連携機能について詳しく解説し、先生方が自身の医院にこのシステムを導入する価値があるかを判断する一助としたい。

製品の概要

Genifix(ジニフィクス)は、歯科医療機器メーカー大手のモリタが提供する歯科医院向けWeb予約管理システムである。正式な製品カテゴリは「歯科用予約システム」であり、院内の各種業務(患者の予約管理やスタッフのアサイン管理など)をインターネット経由で行うクラウドサービスとして位置付けられている。安全性に配慮して構築されたモリタのオンライン環境「DOOR Link」を基盤としており、医院と患者双方にとって便利な非対面での予約登録・管理を可能にしている。

Genifix自体は治療に直接用いる医療機器ではないため、医薬品医療機器等法上のクラス分類は対象外である。いわゆるソフトウェア医療機器ではなく診療サポート用のITソリューションであり、基本的にはどの歯科医院でも利用可能な一般向け業務支援システムという位置づけである。医院規模としては、チェア台数やスタッフ数の大小を問わず、予約制を採用する歯科診療所全般が導入対象となっている。特に、現在電話や紙台帳で予約を管理している医院にとって、Genifixは予約業務の効率化や患者サービス向上につながる有力な選択肢となり得る。

主要スペックと特徴

他の一般的な予約システムとは一線を画すGenifixの特徴は、歯科臨床に特化した高度な予約最適化エンジンを備えている点である。患者さん自身がWeb上で希望日時を入力すると、システム側で医院主導のスケジューリングが働く仕組みになっている。具体的には、患者の次回治療内容、担当する歯科医師や歯科衛生士の空き状況、使用する診療ユニット(チェア)や必要器材の稼働状況など、多くの要素を自動判別し、それらの条件をすべて満たす空き枠のみを提示する。患者は提示された選択肢の中から予約を取る形であるため、医院側のオペレーションに支障を来さない範囲でオンライン予約を受け付けられる。従来懸念されていた「患者任せのWeb予約では無秩序になりそう」というリスクにも配慮した設計である。

Genifixには歯科電子カルテやレセコンとのデータ同期機能も搭載されている。モリタ製の電子カルテ(例:DOC-5やPROCYONシリーズ)を導入している場合、カルテ上の処置内容や所要時間情報とGenifixが連携し、次回予約の必要枠を自動で算出することができる。例えば「次回は左上7番の根管治療・30分程度、アシスタント要」などの情報に基づき、該当スタッフとユニットが30分以上確保できる枠だけをシステムが抽出するといった具合である。また複数ユニット・複数スタッフでの同日並行予約にも対応し、大きな処置で歯科医師と衛生士が別々に動く場合でも、一括して患者に候補日時を提示できる。

ユーザーインターフェース面では、予約状況の見える化とカスタマイズ性が優れている。院内のパソコンからGenifixにログインすると表示されるトップ画面では、当日の予約総件数、新規患者数、要注意(リスク)患者の予約状況、特別な処置(外科処置など)の予約状況といった重要情報を一目で把握できる。また予約の変更履歴も記録されており、スタッフの操作ログや患者側での変更履歴を追跡できるため、「予約が消えている」「誰がキャンセル処理したかわからない」といったトラブルの抑止に役立つ。画面レイアウトも医院ごとに柔軟に設定可能で、チェア別・担当者別の表示切替、縦軸(時間枠)や横軸(ユニット)のサイズ調整、表示項目のフィルタリングなどを自由にカスタマイズできる。これにより、小規模医院ではシンプルな画面で見やすく、大規模医院では複数ユニットの予約を同時に一覧する、といった運用に合わせた表示が可能である。

さらに注目すべきは、院外からのアクセス性である。オプションサービスの「DOOR Linkモバイル」を利用すれば、診療室外の場所(自宅や訪問先など)からでも医院のGenifixに安全にアクセスできる。例えば院長が往診先で急な予約変更に対応したり、休診日に自宅から翌週の予約状況を確認するといった使い方が可能になる。モリタではこのモバイル運用向けに、設定済みのタブレット端末(Microsoft Surface)やWi-Fiルーターをセットにしたサービスパックも提供しており、機器の選定やセキュリティ設定に悩まずスムーズに遠隔利用を始められるよう配慮されている。

互換性と運用方法

Genifixは院内システムとの互換性という点でも優れている。上述のモリタ製電子カルテ連携に加え、他社製のレセコンやデジタルカルテとの連携も可能な場合がある。実際に、メーカー公式には具体的な対応ソフト名は公開されていないが、標準的なデータ形式(例えば患者IDや予約日時情報のCSVエクスポート等)によってレセコンと情報をやり取りするケースも報告されている。もし既存システムとの連携可否が医院にとって重要であれば、導入前にモリタ担当者へ対応実績や仕様を問い合わせることが望ましい。少なくともモリタ自身はGenifixを「カルテデータの同期を行う予約システム」として紹介しており、歯科領域特有のニーズ(治療内容に応じた次回予約提案など)を満たすためのデータ連携を重視していることが窺える。

患者側の利用環境についても解説しておこう。Genifixでは各医院ごとに患者向けの専用Webサイトまたはスマートフォンアプリが用意され、患者さんはスマホやPCから24時間いつでも予約の登録・変更が可能である。予約前日には自動でリマインドメールが配信され、無断キャンセル防止のためのフォローもシステムで行われる。例えば、予約日時を過ぎても来院履歴がない患者には、自動的に「予約をお忘れではありませんか?」といった確認メールが送信される仕組みである。メールだけでなくSMS(ショートメッセージ)や電話音声での通知にも対応しており、患者の年齢層や利用端末に合わせて最適な手段を組み合わせることができる。特にSMSは携帯番号さえ分かれば確実に短文メッセージを届けられるため、高齢の方やスマホアプリが苦手な層への連絡手段として重宝される。実際、Genifixには国産のSMS配信サービスが組み込まれており、送達エラーの検知や再送制御も含めて信頼性の高い通信が行われている。

中でも特筆すべきはLINE公式アカウントとの連携オプションである。患者にとって身近なコミュニケーションツールであるLINEをGenifixと結び付けることで、より双方向で密な連絡体制を構築できる。LINE連携を利用すると、患者は医院のLINE公式アカウントを友だち登録することでLINE上から予約の確認・変更が行えるようになる。従来のメール通知では見落とされがちなリマインドも、LINEのプッシュ通知であれば気付きやすく、結果として来院率向上に寄与する。また、LINEを活用したデジタル診察券機能も提供されており、患者はスマホ画面上のQRコードを受付で提示するだけでチェックインが可能だ(※この機能を使うには受付側でQRコードリーダー機器の用意が必要)。さらにLINE連携では、医院からのお知らせ配信や紹介機能も利用できる。医院側は新しい自費メニューの案内や休診日のお知らせ等を一斉配信でき、患者は受信したメッセージを家族や友人に転送することも容易になる。これにより紹介予約の増加も期待できる仕組みである。以上のように、多彩な外部サービス連携によってGenifixは単なる予約帳に留まらない包括的な患者CRM(リレーションシップ管理)ツールとして機能する。

実運用上は、まず初期設定として医院側で診療時間帯、ユニット数、スタッフのシフト、各処置の所要時間や必要条件などをGenifixに登録する必要がある。この設定作業は導入時にモリタのサポートチームが支援してくれるため、ITが苦手な医院でも安心である。運用開始後は、受付スタッフが従来行っていた電話対応や予約票の管理作業が大幅に軽減される。患者からの電話予約も、スタッフがGenifixの管理画面から直接入力すればオンライン予約と統合管理されるため、二重帳票になることもない。注意点として、インターネット接続が基本となるクラウドサービスである以上、ネットワーク障害時のリスク対策は考慮すべきである。もっともGenifixの場合、万一サーバー接続が切れた際でもローカルの電子カルテ側で予約画面を表示・仮登録できる「オフラインモード」が用意されている(モリタのPROCYONを使用中の医院が対象)。通信復旧後に自動同期される仕組みのため、ネット障害で予約業務が完全停止してしまう心配は比較的少ないと言える。

医院経営への効果

Genifix導入がもたらす経営面の効果について、多角的に考察する。まず直接のコスト面から見ていくと、料金プランは月額制で、2025年現在月額およそ4,378円(税込)となっている(基本利用料。機能追加オプション契約やサポート内容により変動する可能性あり)。年間に換算すれば約52,500円程度であり、一般的な歯科用機器に比べれば小さな投資だが、医院規模によっては無視できない額でもある。加えて初期導入費用やセキュリティ対策ソフトウェア(ウイルス対策ソフト)のライセンス費用が別途必要になる。初期費用は公式には公開されていないが、システム設定料やスタッフ研修費などが含まれる可能性が高い。導入を検討する際は具体的な初期費用の見積りを営業担当から取得し、月額費用と合わせて数年間の償却期間で考慮するとよい。

一症例あたりのコストという観点では、仮に月100件の予約(=来院)を扱う医院であれば、月額費用4,378円は1予約あたり約44円の負担に相当する。この金額を高いとみるか安いとみるかは、そのシステムによって生み出される価値次第であろう。例えば、Genifixのリマインド機能やキャンセルフォローによって無断キャンセルが削減されれば、それだけ収入機会の損失を防げる。実際にモリタの発表によれば、同社のメール通知システムの改善で「無断キャンセル件数が導入前の1/3に減少した」ケースもあるという。仮に月に10件あった無断キャンセルが3件に減ったとすれば、残り7件分は本来失われていた治療収入が取り戻せたことになる。保険診療のスケーリング7件分でも月数千円から1万円程度の売上増になり、Genifixの月額費用を十分に回収できる計算である。ましてや、それが自費治療のキャンセルであった場合、取り戻せる金額的価値はさらに大きい。

チェアタイムの有効活用も経営改善につながるポイントである。予約の最適化によって治療と治療の間の空白時間(いわゆるスキマ時間)が減れば、1日に治療できる患者数が増える可能性がある。例えばGenifix導入前は1日20人の対応が限界だった医院が、予約管理効率化により21人目の患者まで診療できるようになれば、単純計算で5%の生産性向上である。人件費や診療コストはほぼ変わらず、売上だけが増えるわけなので、医院利益率の向上に直結する。

さらに、新患の獲得と既存患者の定着という観点でも投資対効果が期待できる。昨今は患者側もインターネットで予約できる歯科医院を選ぶ傾向が強まっている。特に新規患者は、電話で営業時間内に予約する手間よりも、夜間でもWebから予約枠を確保できる医院に魅力を感じるものだ。Genifixを導入し公式ホームページ等からオンライン予約を受け付ければ、ウェブ経由の新患流入が増える可能性がある。新患1人あたりの生涯価値(LTV)は一般に数万円〜数十万円とも言われるだけに、新患が年間数名増えるだけでも月額費用の元は取れる計算である。

既存患者に対しても、予約管理のデジタル化は患者満足度の向上につながる。予約確認の電話連絡が減り手間が省ける、自分の都合でネット予約できる、治療後にフォローの連絡がもらえる――そうした小さな満足の積み重ねが「かかりつけ歯科医院」としての信頼構築に寄与する。リコール(定期検診)の案内もGenifixから半自動で配信できるため、リコール率の向上、ひいては長期的な患者関係の維持にもプラスに働くだろう。リコール率が上がれば1人の患者から生まれる売上も伸び、患者数増と合わせて医院全体の売上底上げが期待できる。

費用対効果の最後に、各種助成制度の活用にも触れておく。GenifixのようなITツールは中小企業診療所向けのIT導入補助金の対象となる場合がある。実際、本システムは国のIT導入補助金リストに掲載されており、要件を満たせば初期導入費用の1/2程度の補助金を受けられる可能性がある(年度や公募時期により条件は異なる)。公的支援を上手に利用すれば、投資回収までの期間をさらに短縮できるだろう。以上のように、Genifix導入は単なる経費増ではなく、売上増・損失減・効率化による利益拡大効果を中長期で見込める施策であると総括できる。

使いこなしのポイント

新しい予約システムを導入しても、使いこなせなければ宝の持ち腐れになる。ここではGenifixを最大限に活用するためのポイントを、臨床現場の視点からいくつか紹介する。

1. 初期導入時の段取り

Genifix導入直後の数週間は、医院スタッフへの周知徹底と患者への案内が肝心である。まず受付スタッフや歯科衛生士には、予約条件の設定方法や変更履歴の確認方法など、管理画面の基本操作をトレーニングする必要がある。幸い操作インターフェースは直感的で、マウス操作ができれば特別なITスキルは不要だ。診療後のミーティング時間などを利用して、スタッフ同士で予約登録・変更のロールプレイを行うとよい。また患者への告知も重要である。受付や会計の際に「次回からLINEでも予約できます」「スマホで予約確認できます」といった案内を積極的に伝え、希望者にはその場でQRコードを読み取ってもらいLINE公式アカウントを友だち追加してもらう。あるいはアプリ「Myはいしゃさん」の利用を促すなど、患者側の利用率を上げる工夫が必要だ。せっかくシステムを導入しても患者が誰も使わなければ意味がないため、ここは労を惜しまず周知したい。

2. 予約条件・属性の活用

Genifixの強みである予約最適化機能を活かすには、医院側がシステムに適切な情報入力をしておくことが大前提となる。具体的には、カルテに記載している患者属性(例:要介護、感染症リスク、常習的遅刻者 等)や処置内容に応じた標準チェアタイムをGenifix側にも登録・紐付けしておくことである。例えば「車いす利用の患者にはエレベーター近くのユニットを自動割当」「麻酔を使う処置の後は回復時間も考慮して予約枠を長めに確保」など、経験に基づく調整を事前にシステムへ織り込むイメージだ。これらの条件設定は最初は手間に思えるが、一度マスターすれば後は自動化されるため、結果的にスタッフの頭を悩ませることが減る。特に複数ドクターで診療している医院では、「誰がいつ空いているか」を人力で調整する負担が大きいため、処置カテゴリーごとに所要時間と担当可能者を登録しておけばシステムが最適枠を瞬時に提示してくれるメリットは計り知れない。

3. キャンセルポリシーとフォロー

Genifix導入を機に、医院のキャンセルポリシーやフォロー体制を見直すことも有効だ。例えば無断キャンセルが続く患者にはシステム上で「要注意」フラグを立て、今後Webからの直接予約をできないようにし、必ず電話確認を経て予約を入れる運用にすることも考えられる(システム自体にその制限機能がなければスタッフ運用で対処)。一方で、急なキャンセルが発生した際にはキャンセル待ちリストの患者に自動で空き通知メールが送られる機能もあるため、空き枠の再活用に繋げることもできる。こうした機能を活かしつつ、最終的には人間の目とフォローも組み合わせるのがポイントである。Genifixはあくまでツールであり、患者との信頼関係を築く主体は我々医療者であることを忘れないようにしたい。

4. セキュリティとデータ管理

オンライン予約システム導入時には患者情報の保護にも注意が必要だ。Genifixではクラウド上に予約データが保存されるが、モリタのDOOR Link環境下で厳重に保護されており、通信も暗号化されている。しかし医院側でも、端末に適切なウイルス対策ソフトを導入する、安易にパスワードを共有しない、診療後にはログアウトするなどの基本的なセキュリティ対策を怠らないことが肝要である。また、万一のシステム障害や災害停電に備え、当日予約一覧を朝に紙に印刷しておく、重要な予約情報はカルテにもメモを残しておくなど、バックアップ運用のルールも決めておけばより安心だ。

以上のポイントを踏まえて運用すれば、Genifixは単なるデジタル機器ではなく医院の頼れるパートナーとして機能してくれるだろう。

適したケース・適さないケース

新しい予約システムには万能薬のようなイメージが先行しがちだが、実際には各医院の状況によって向き不向きがある。ここではGenifixの導入が特に有効と考えられるケースと、逆に慎重な検討が必要なケースを整理する。

Genifixの導入が適しているケース

複数ユニット・スタッフを抱える中規模以上の医院

チェアと人員の組み合わせが複雑になるほど、Genifixの自動スケジューリング機能が活きる。人手では見落としがちなリソース調整もシステムが最適化してくれるため、予約ミス(ダブルブッキング等)が減り全体の稼働率が上がる。またスタッフ間で常に最新の予約情報を共有できるため、院内コミュニケーションも円滑になる。

無断キャンセルやリコール漏れに悩む医院

約リマインドやキャンセルフォローの仕組みが整っているため、患者の来院率向上や定期検診の受診率アップが期待できる。特に定期検診ハガキを出しても反応が悪いと感じている場合、メールやLINEでの電子的なリコール通知は若い患者層にマッチし効果的である。

新患を積極的に増やしたい医院

Webからの24時間受付は、新規患者の獲得チャンスを広げる武器となる。仕事で昼間に電話できないビジネスパーソンや、ネット検索で歯科医院を比較しているユーザーに対して、「オンライン予約可」というのは大きなアピールポイントだ。EPARKなど外部の歯科予約ポータルを利用する手もあるが、Genifixなら自院のホームページで直接予約を受け付けられるため、無駄な手数料もかからない。

モリタ製のデジタル機器を導入済みの医院

すでにモリタのカルテや画像システム(i-Dixelなど)を使っている場合、それらとの親和性が高いGenifixはシームレスに運用に組み込める。同じメーカー製品でまとめるメリットとして、サポート窓口が一本化できる、トラブル時の切り分けが迅速になる、といった点も挙げられる。

Genifixの導入で注意が必要なケース

スタッフ人数が極端に少ない零細規模の医院

院長と助手1人程度で運営している場合、そもそも予約管理がそれほど複雑ではないため、高度なシステムを入れても宝の持ち腐れになる可能性がある。このような場合は既存の紙台帳やGoogleカレンダー程度で支障が出てから検討しても遅くないだろう。ただし将来的な規模拡大を見据えて、早めにデジタルシフトしておく判断も一概に否定はできない。

患者の高齢比率が高くデジタル利用に消極的な地域

地方の高齢者中心の診療所などでは、患者側がそもそもWeb予約やLINE連携を使いこなせない場合がある。その場合、結局受付による電話予約対応が主となり、システムの真価を発揮できない恐れがある。Genifix自体は院内管理ツールとしても有用だが、患者向けサービスの利点が活かせない分、投資対効果は下がってしまう。こうした地域では電話予約とハイブリッドで運用する、あるいは患者家族に代理登録してもらうなどの工夫が必要だ。

他社の電子カルテや予約システムと深く連携している医院

既に別の予約システムを利用中だったり、カルテと一体型の予約管理を使っている場合、Genifixへの移行にはデータ移行やスタッフ再教育といったコストがかかる。さらに他社システムとのインターフェースが確立していないと、二重入力が発生するリスクもある。現状で特に不満がないなら無理に乗り換える必要はないが、もし改善したい課題があればGenifixの持つ独自機能(例:LINE通知やキャンセル待ち自動管理など)との重要度を天秤にかけて判断するとよい。

ネットワークインフラが不安定な環境

クリニックの所在地によっては通信回線が不安定だったり、院内LANの整備が不十分な場合もある。クラウド型のGenifixではリアルタイム通信が基本のため、通信断が頻繁に起こる環境ではストレスになる恐れがある。その場合はまずネット環境の改善(有線回線の導入や回線増強)を優先すべきだろう。オフラインモードはあくまで一時的な凌ぎであり、常用するものではない。

以上を踏まえると、Genifixは多くの歯科医院にフィットする汎用性を備えつつも、各医院の患者層・規模・既存環境によって適用効果が変わる製品である。自院の状況を客観的に分析し、強みを最大化できるかどうかを判断することが重要である。

医院タイプ別導入判断の指針

最後に、医院の診療スタイルや経営方針ごとに、Genifix導入の向き不向きを整理する。先生方ご自身の医院像に近いタイプを思い浮かべながら読んでいただきたい。

保険診療中心で効率重視の医院

日々の来院患者の大半が保険診療で回転率を重視する一般歯科医院では、Genifixは効率化の強力な味方となる。診療報酬単価が低い保険治療では、1日の患者数をある程度確保しなければ経営が成り立たない。このタイプの医院では、受付業務や予約管理に割ける人員コストも限られているため、システム導入による省力化効果がダイレクトに利益改善につながる。Genifixなら二重予約の防止やスキマ時間の圧縮によって1日あたりの診療件数を増やすことができ、例えば1日あたり1〜2人多く患者を診られれば、月に数万円規模の増収も見込める。また、保険診療中心の患者は定期メンテナンスや複数回通院が前提となるケースが多いが、Genifixのリコールメールや次回予約自動提案により患者の離脱を防ぎつつ計画的に通院を促すことができる。経営面では少ない投資で大きな効率化が期待でき、臨床面でも継続受診率アップに繋がるため、このタイプの医院とは極めて相性が良い。

高付加価値の自費診療を志向する医院

インプラントや矯正、審美治療など自費率が高く、質の高い患者サービスを重視する医院にとっても、Genifixは患者満足度向上のツールとして有用である。このタイプの医院では1人あたりの診療時間を長く確保し、ゆとりある予約体制を敷いていることが多い。そのため純粋な効率化のメリットは保険中心医院ほどではないかもしれない。しかし、自費診療の患者層はWeb予約やデジタルサービスへの期待度が高い傾向がある。予約のたびに電話連絡が必要な医院よりも、スマートフォンで簡単に予約や問合せができる医院の方が、現代の患者には「先進的で患者想い」という印象を与えるだろう。特に矯正歯科などでは若年層の患者も多いため、LINEで気軽に予約確認や相談ができる環境は他院との差別化になる。経営的にも、数万円〜数十万円単位の自費治療が無断キャンセルで失われるダメージは大きいが、Genifix導入後はリマインドの徹底でキャンセル率の低減が期待できる。さらに治療後のフォローメッセージ(「その後お痛みはありませんか」等)を送ることで患者感動を生み、リピートや紹介に結びつけるといった付加価値戦略も可能になる。高付加価値診療を掲げる医院にとって、Genifixは単なる便利ツールではなくブランド体験の一部として機能し得る。

口腔外科・インプラント中心の医院

親知らずの抜歯やインプラント手術など、外科処置を多く扱う医院では、予約管理は一般歯科以上に綿密な計画が要求される。このタイプの診療では1件の処置に長時間と複数スタッフを要し、手術室や滅菌器といったリソースも限られるため、予約調整を誤ると大きな混乱につながる。Genifixは前述の通りユニット機材やスタッフの空き状況を加味して予約枠を提示できるため、手術枠の管理に適している。例えば「〇月〇日の午後はインプラント手術でオペ室使用中だから他の外科処置は入れない」といった制限もシステムが自動反映してくれるため、人的ミスを防げる。また外科処置では術前の準備・説明や術後の経過観察が重要であり、患者とのコミュニケーション頻度が高い。Genifixを使えば事前問診をWeb上で受け付けたり、手術前日に注意事項のリマインドを送信したりと、きめ細かなサポートが可能になる。万一患者が直前キャンセルしてしまった場合でも、キャンセル待ちの他患者に即座に案内するなど空いた手術枠を埋める工夫もしやすい。経営面では、インプラント1本の売上は保険診療数十人分に匹敵するため、そのキャンセル防止効果だけでもGenifixの価値は十分あるだろう。一方で完全紹介制などで年間症例数が非常に限られる場合、予約システムに頼らず個別対応で十分なケースもある。その場合は無理に導入は必要ないが、症例数増加に合わせて検討するタイミングが来るかもしれない。

よくある質問(FAQ)

GenifixはLINEと連携できますか?

回答:はい、可能である。GenifixにはLINE公式アカウントと連携するオプション機能が用意されており、これを利用すれば患者さんとのやり取りをLINE上で行えるようになる。患者は医院のLINE公式アカウントを友だち追加することで、予約の確認・変更をチャット感覚で行うことができる。予約日前日にはLINEでリマインド通知が届き、キャンセル発生時には別の患者へのLINE通知による繰上げ案内も可能だ。さらにLINE上でデジタル診察券を表示し受付に活用する機能や、患者からの紹介を促す機能も備わっている。ただしLINE連携機能は基本利用料とは別のオプション契約となるため、導入時に追加費用や設定が必要になる点には注意が必要である。

現在使っている電子カルテやレセコンとデータ連携できますか?

回答:モリタ製の電子カルテ(DOC-5など)や画像管理システムとは標準で深く連携するよう設計されている。カルテから次回処置内容を受け取り、それに適した予約枠をGenifixが提示するなどの動作が可能だ。他社製のレセコンや電子カルテとの連携については、ケースバイケースである。一部にはCSVデータのインポート/エクスポートや、スケジュール情報の同期に対応した例もあるようだが、すべての組み合わせで保証されているわけではない。Genifix単体でも予約管理システムとして完結はするが、既存システムとの二重入力を避けたい場合は、事前にモリタ側へ対応状況を確認すると良い。なお、一般的なGoogleカレンダーとの連携機能も備えており、例えばドクターごとにGenifixの予約をGoogleカレンダーに同期してスマホで閲覧するといった応用も可能である。

インターネットが不安定でも運用できますか?

回答:基本的にGenifixはクラウド上のサービスであり、リアルタイムにサーバーと通信しながら動作する。そのため安定したインターネット接続は不可欠である。しかし、短時間の通信断であれば業務に支障が出にくい工夫がなされている。具体的には、モリタの電子カルテ「PROCYON」と組み合わせて使う環境でオフラインモードが利用可能だ。万一サーバーに接続できない場合でも、院内のPC上で通常とほぼ同じ予約画面を表示して新規予約や変更を仮登録できる。通信が復旧すれば自動的にクラウド側と同期が取られ、データ整合性が保たれる仕組みである。ただし長時間ネットが使えない状況ではリアルタイム共有ができなくなるため、紙の予約簿を非常用に備えておくなどの対策は考えておくべきだ。総じて言えば、短期的なネットワークトラブルには耐性があるが、安定した運用のためには可能な限り信頼性の高い回線を用意することが望ましい。

導入費用はどれくらいで、投資に見合う効果がありますか?

回答:料金体系は基本利用料が月額制(約4,378円/月税込)で、年間では5万円強のコストとなる。これに加え初期設定費用や必要に応じて端末・ネットワーク整備費などが別途発生する。初期費用については規模によって異なるため一概に言えないが、数十万円程度を見込んでおいた方が良いだろう。投資対効果については本文でも述べた通り、無断キャンセル減少による損失防止や予約枠有効活用による収入増といった形で十分回収可能と考えられる。例えば無断キャンセルを月に数件でも防げれば、失っていた売上が戻ってくるので月額数千円の負担は容易にペイする。また、新患獲得やリコール率向上による長期的な増患効果まで含めれば、見えない利益はかなり大きいだろう。もちろん効果は各医院の状況によって変わるため、「〇ヶ月で元が取れる」と断言することはできない。しかし、適切に運用し患者にも活用してもらえれば経営指標の改善につながる可能性は高いといえる。導入前に効果目標を設定し、一定期間後に評価・調整することで、より確実に投資を回収できるだろう。

年配の患者が多い医院でもGenifixは有効でしょうか?

回答:高齢の患者さんが多い地域密着型の医院でも、Genifixは内部管理ツールとして十分役立つ。患者自身がWeb予約を使わなくても、受付スタッフが電話予約を受けてGenifixに登録すれば、一元管理やリマインド送信はシステムが担ってくれる。電話で予約を受けた際に「念のため前日に確認のお電話を…」といった負担も、Genifixが自動メールやSMSで肩代わりしてくれるためスタッフの負担軽減になる。また、スマホを持たない高齢者でも携帯電話のSMS機能なら利用しているケースが多いので、希望者にはメールの代わりにSMSで通知を送る設定もできる。さらに、ご家族が代理で予約を取れるよう「家族LINEで友達登録してもらう」「家族にMyはいしゃさんアプリを入れて管理してもらう」といった応用も考えられる。要は使い方次第であり、高齢者が多いからといって導入が無意味になるわけではない。ただし若年層主体の医院に比べると患者自身の積極的利用率は下がる傾向にあるため、主な効果を院内業務効率化に求める形になる。それでも紙の台帳管理に比べれば遥かにミスが減り安心できるため、スタッフの世代交代などを見据えて早めにデジタル化しておく意義は大きいだろう。