歯科医院のアポ台帳・アポ管理におすすめのソフト・システムを徹底比較
診療後の次回予約を取るために受付に患者が列をなしてしまい、スタッフも医師も気が焦った経験はないだろうか。紙のアポイント台帳(アポ帳)をめくりながら予約枠を探すうちに、待合室で患者が苛立つ。そんな情景は、多くの歯科医師に心当たりがあるだろう。また、突然のキャンセルでぽっかり空いた枠に頭を抱えたり、予約ミスによるダブルブッキングで診療室が混乱したりした日もあったかもしれない。
アポイント管理の悩みは臨床面と経営面の双方に影響を及ぼす。予約抜けによる空き時間は医院の損失であり、管理ミスによる患者満足度の低下はそのまま増患の妨げとなる。本記事では、これらの悩みを解決するための「臨床的ヒント」と「経営的戦略」を提供する。歯科医院の予約管理を劇的に効率化するソフト・システムを客観的データに基づいて比較検証する。臨床の質を維持しつつ、医院経営の投資対効果を最大化するために、自院に最適なアポイント管理システムを選び抜く一助となれば幸いである。
比較サマリー(主要システムの早見表)
以下に、国内で主要な歯科向け予約・アポイント管理システムの特徴と導入コストの目安をまとめる。各システムの主な機能に加え、初期費用・月額費用の概算を掲載している。コストや時間効率の観点から大まかな比較を把握してほしい。
| システム名(提供元) | タイプ・特徴 | 初期費用(税込) | 月額費用(税込) | 主な機能・特長例 |
|---|---|---|---|---|
| EPARK歯科予約(エンパワーヘルスケア) | 大手予約ポータル連携・LINE対応型 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | EPARKプラットフォームと連動、LINEから予約受付、複数媒体の予約一元管理、リマインド通知 |
| V-apo(日本ビスカ) | 歯科特化の時間枠管理・LINE対応型 | 約585,000円 | 月額15,000円 | クラウド型、PC・タブレット対応、LINE予約、複雑な治療向け「ななめ予約」機能、レセコン連携(別途費用) |
| ドクターズ・ファイル アポ レジタス(ギミック) | 医療情報サイト連携・LINE対応型 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | ドクターズ・ファイルサイト連携による集患、患者管理(来院履歴・キャンセル率確認)、LINE予約・リマインド、オンライン決済(オプション) |
| ApoDent(ナルコーム) | 多機能型・進化重視の予約管理 | 59,800円 | 月額8,000円 | リアルタイム予約更新、キャンセル待ち管理、患者情報共有、メール/LINE/SMS/アプリ通知、スタッフ・技工物スケジュール管理 |
| Ci Easy Apo2(歯愛メディカル) | 低コスト型・必要機能特化 | 50,000円 | 月額2,980円(基本)+1,000円(LINE) | クラウド型、アポ帳管理とリマインド等基本機能、直感的操作、必要機能に限定し低価格実現、LINE連携はオプション(患者予約確認・変更、医院から個別連絡) |
| Apotool & Box for Dentist(ストランザ) | オールインワン型(予約~会計管理) | 300,000円 | 月額18,000円 | クラウド型、予約・電子カルテ・会計まで統合管理、メール自動リマインド、患者毎の画像・検査データ管理、QRコード自動受付アプリ、キャッシュレス決済オプション |
| Fanka(TEN EXPERIENCE) | オールインワン型(待ち時間ゼロ志向) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | Web予約、事前問診、事前の保険証・カード登録で来院時待ち時間短縮、LINEで治療内容フィードバック、セグメント別一括配信、電子カルテ連携対応 |
| Dentry by GMO(GMO) | LINE対応型+IVR電話受付 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | クラウド型、自由診療の細かな処置時間設定対応、担当者指名可、24時間LINE予約と定期メンテ通知、IVR自動電話受付、スタッフ負担軽減 |
| PROGRAMα(プログラムアルファ)(メディア) | 電子カルテ一体型・受付効率化型 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 電子カルテと予約が一体化、24時間新患Web予約、SMS確認、定期健診リマインド、電話着信時の患者情報ポップアップ、保険資格自動チェック |
| DentNet(ジェニシス) | 経営支援型・高カスタマイズ | 約1,944,000円(分割払) | 月額14,500円(7台まで) | 歯科経営支援システム、きめ細かな389項目設定で院ごとに最適化、スマホ診察券・リライトカードで次回予約印字、受付業務の効率化、ユニット稼働率やリピート率など経営指標出力 |
| デスク(Doctorbook) | シンプル型・直感操作・カスタマイズ可 | 0円 | 要問い合わせ | クラウド型、歯科特化オンライン予約、患者管理・スタッフシフト機能、治療内容ごと時間設定、オンライン予約枠制限設定可、チェアサイド予約対応、メール/SMSリマインド、月次統計ダッシュボード |
| デンタルアクセス(ヴァンガード) | ハイブリッド型・高安定性 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | クラウド+オンプレミス併用でネット障害時も運用可、LINE/SMS/メール/アプリ/自動電話による99.9%カバーの連絡機能、医院HP埋込Web予約、歯科ポータル(e8148)無料掲載で集患支援 |
| デンタマッププラス(USEN) | クラウド型・実績多数 | 300,000円 | 月額7,500円~(SMS機能利用時+2,000円) | 業界最大級導入実績、24時間オンライン予約対応、クラウドで院外からも確認可、シンプル画面で操作容易、導入時サポート充実、メール/SMS自動送信、レセコン連携、定期健診リコールリスト作成 |
| Dentis(メドレー) | オールインワン型・クラウド歯科業務統合 | 要問い合わせ | 月額35,000円~ | クラウド型歯科業務支援、予約管理から電子カルテ・レセコンまで一括運用、高度なセキュリティ、LINE公式連携やオンライン診療等にも対応、データ分析機能、手厚いサポート |
| ジニー & myDental(Dentalight) | オールインワン型・アプリ活用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | クラウド型、患者向けスマホアプリでWeb予約・電子診察券機能、QRコード自動チェックイン対応、予約キャンセル率低減やメンテナンス再来促進に注力、データ分析とフォローアップ機能 |
※料金は記事執筆時点(2025年)の情報に基づく概算であり、実際の価格は仕様や契約条件によって異なる。正式な見積りは各提供元に確認されたい。
歯科予約システム比較のポイント
多数のシステムを比較するにあたり、何を重視すべきかを臨床面と経営面から整理する。以下の観点ごとに各製品の特徴が医院にもたらす効果を考察していく。
導入コストと費用対効果
デジタル予約システム導入に際してまず考慮すべきは、初期導入費用と月額費用である。紙の台帳から移行する場合、数十万円規模の初期投資は躊躇する要因となり得る。しかしその費用は、業務効率化と患者増加による利益改善で回収できる投資と捉えるべきである。例えば、DentNetやApotool & Boxのように初期費用が高額なシステムは、その分多機能であり受付業務全般のデジタル化による人件費削減効果や、将来的な再治療率低下による長期利益向上が期待できる。また、デンタマッププラスのように導入実績が多くサポート体制が整ったサービスは、トラブル時の迅速な対応によってダウンタイムを最小限に抑え、結果的に安定した診療収入に寄与する。反対に、Ci Easy Apo2やデスクのような低コストプランは基本機能に絞ることで料金を抑えており、小規模医院や段階的にデジタル化を進めたい場合に有効である。費用対効果を判断するには、「1症例あたりの予約管理コスト」を試算するとよい。月額費用を月の延べ予約件数で割り、紙運用と比べて許容範囲か検討する。長期的にはキャンセル減少や増患による収益増も加味して、総合的な投資対効果を評価すべきである。
予約管理の効率化と時間短縮効果
システム導入によって得られる時間短縮効果も重要な比較軸である。V-apoが搭載する「ななめ予約」機能のように、歯科特有の治療フロー(医師処置後に衛生士処置に引き継ぐ等)に応じて複数ユニットを自動確保できる機能は、手動調整の手間を省き、チェアタイムの有効活用に貢献する。また多くのシステム(例えばデンタマッププラスやDentis)が対応するチェアサイド予約は、診療チェアで患者と次回予約をその場で確定できるため、受付での待ち時間をなくしスムーズに診療から会計へ移行できる。これは患者満足度向上のみならず、受付スタッフが他業務に充てられる時間を生み出し、人件費効率の改善につながる。さらに、プログラムアルファやDentNetのように電話着信時に患者情報や予約状況を即座に表示するCTI連携は、電話対応時間の短縮とミス防止に寄与する。これらの機能差は、日々の診療オペレーションに蓄積的な差異を生む。予約調整に費やす時間が減れば、その分だけ患者一人ひとりへの診療やカウンセリングに集中でき、ひいては医院全体のサービス品質向上につながる。時間短縮の効果はスタッフ残業の削減や離職率低下といった形でも現れるため、経営面でも見逃せない指標である。
患者の利便性とキャンセル率への影響
患者視点で予約のしやすさを比較することも重要である。電話予約のみの体制では、診療時間外や休憩中の予約機会を逃しがちだ。EPARK歯科やドクターズ・ファイル アポ レジタスのように、大手の医療情報プラットフォームや検索サイトと連携したシステムは、患者が24時間ネットから予約できるだけでなく、自院の存在を新規患者にアピールする上でも効果的である。また、LINE連携は昨今のトレンドであり、EPARK歯科やDentryをはじめ多くのシステムがLINEからの予約受付や通知に対応している。日常的にLINEを使う若年〜中年層にとっては、電話よりも気軽に予約が取れるため、予約率向上に直結する。実際、LINE予約導入後に若年層の予約率が向上したケースもある。逆に高齢患者が多い医院ではLINE未使用者への配慮も必要だが、その場合もデンタルアクセスのように自動音声電話やハガキ併用など99%以上の患者にリーチする工夫を持つサービスも存在する。さらに、患者利便性を高める機能としてスマートフォンアプリの活用が挙げられる。ジニー&myDentalでは患者が専用アプリから診察券代わりにチェックインし、次回予約も簡単に確保できる。これにより患者が「歯科医院を身近に感じる」効果が生まれ、定期メンテナンスの継続率アップにつながる。
患者の利便性向上はキャンセル率の低減とも表裏一体である。オンライン予約と併せ、リマインド通知の自動送信はほぼ全てのシステムが備える標準機能である。予約前日にメールやSMS、LINEでリマインドを送ることで、患者の来院忘れを防ぎ無断キャンセルを減らす効果が期待できる。特にLINE通知は開封率が高く、ApoDentのように複数チャネル(メール・SMS・LINE・アプリ)でフォローするシステムではキャンセル発生時の再予約促進まで自動化されている。キャンセル率の1%削減はそのまま医院収益の増加に直結するため、これら機能の有無や精度は経営的にも見逃せない比較ポイントである。
機能の拡張性と他システム連携
システムごとの機能範囲と拡張性も比較しておきたい。単に予約台帳をデジタル化するだけでなく、関連する業務をどこまでカバーできるかは医院の規模や運用方針によって重要度が変わる。例えば、Apotool & BoxやDentis、プログラムアルファのように電子カルテやレセコン(レセプトコンピュータ)まで統合管理できるシステムは、受付から会計・経営分析に至るまで一貫したデータ管理を実現する。これにより、患者基本情報の二重入力が不要になりヒューマンエラーが減るほか、月初の保険証確認作業が自動化されるなど、大幅な業務効率化が可能だ。一方、既に使い慣れたカルテやレセコンがある医院では、デスクやDentryのように予約管理に特化しつつ他システムと最低限の連携(例えばレセコンへの予約情報出力や患者情報のインポート)を行う製品が適している場合もある。V-apoが提供するように、レセコン連動はオプション費用となるケースもあるため、必要な連携範囲を見極めてコストとのバランスを考えるべきである。
また、機能追加やアップデートへの柔軟性も重要な視点である。クラウド型システムでは定期的に新機能がリリースされることが多く、ApoDentのようにユーザーの声を反映して進化を続けるサービスも存在する。将来的にオンライン診療や決済、新たなコミュニケーション手段(例えば新興SNSとの連携)が必要になった際に、追加モジュールで拡張可能かどうかも比較しておきたい。逆に、Ci Easy Apo2のように必要最低限の機能に絞ったシステムは、余計な機能がない分シンプルでスタッフが戸惑わずに使える利点がある。その場合でもオプションで機能拡張できるか確認し、医院の成長に合わせてスケールできるかを検討するとよい。
操作性とスタッフへの馴染みやすさ
どれほど高機能でも、現場のスタッフが使いこなせなければ宝の持ち腐れになってしまう。UI(ユーザインターフェース)の分かりやすさや操作性も比較の際に重視すべきである。デスクやデンタマッププラスはシンプルな画面デザインと直感的な操作感が特徴であり、パソコンに不慣れなスタッフでも比較的短期間で習熟できるだろう。これに対し、DentNetのように設定項目が非常に多く高機能なシステムは、導入時に操作研修や初期設定の時間を要する。しかしその手間をかけ適切に使いこなせば、緻密な予約管理や経営分析という見返りを得られる。結局は医院の方針とスタッフのITリテラシーに応じた選択が肝要である。
チェアサイドでタブレットを用い予約を取る運用をする場合、画面の視認性や処理速度も重要になる。タイムラグなく予約枠が更新され、複数端末で同時操作しても衝突しないシステムであれば、診療中の医師や衛生士自身がサッと次回予約を入れられる。これは患者とのコミュニケーションの中で治療計画を立て、そのまま予約に落とし込める理想的な流れを生む。対照的に操作が複雑で予約入力に時間がかかるシステムでは、現場の誰もが敬遠し結局受付任せになってしまう恐れがある。実際にデモシステムを触ってみて、Fankaやジニーのようにスマホアプリを含めた操作体系が自院スタッフ・患者双方にとって親和性が高いかどうか確認することが望ましい。導入前の試用期間を設け、スタッフ全員のフィードバックを集めることで、現場にフィットする操作性かを見極めたい。
データ活用と経営分析への寄与
デジタル化の利点の一つはデータの蓄積と活用である。各システムが提供する統計・分析機能の違いも経営戦略上は無視できないポイントだ。例えばDentNetはユニット稼働率、新患数、リコール(定期検診)率といった経営指標を自動集計しCSV出力できる。これにより、月次の売上だけでなく患者来院間隔の傾向や曜日別の需要なども「見える化」され、経営判断の精度が高まる。DentisやApotool & Boxもダッシュボード機能や分析レポートを備え、院長が診療と並行してクリニックのKPIを把握できるよう支援する。逆に、予約特化型のシステムでは詳細分析は難しいが、その場合でも予約のキャンセル率やリマインド送付数など基本的な指標は確認できることが多い。データ活用に積極的な医院であれば、自院のKPIに合った指標を提供してくれるシステムを選ぶべきであるし、そうでなければシンプルさを優先する選択もあり得る。重要なことは、得られたデータを基にPDCAサイクルを回し、診療の空き時間にプロモーションを打つなど具体的な経営施策につなげることである。予約システムは単なるスケジュール帳ではなく、蓄積された情報を経営に活かしてこそ真価を発揮する。
以上の比較軸を念頭に、次章からは主要な製品ごとの詳細レビューに移る。それぞれの強み・弱みを踏まえ、自院のニーズに合致するかを考えながら読み進めていただきたい。
製品別レビュー
EPARK歯科予約
EPARK歯科は日本最大級の歯科検索・予約サイト「EPARK歯科」と連動した統合サービスである。自院の予約管理システム(EPARK歯科台帳)と、患者向けのEPARKウェブ予約機能、さらにはLINE予約導線を組み合わせ、認知度向上から受付効率化、定期来院促進までを一貫して支援する点が最大の特徴だ。患者はEPARKのポータルサイト上で医院を検索し、そのままオンライン予約できるため、新患の獲得経路として非常に強力である。特に若年層やネット検索で歯科医院を探す層にリーチでき、電話に頼らない集患が可能となる。
予約面では、EPARK経由だけでなくLINE公式アカウントからの予約受付にも対応している。EPARKの医院ページからLINEに遷移すれば、患者は個人情報入力の手間なくスムーズに予約が完了する仕組みだ。医院側ではEPARK歯科台帳上でEPARKサイト、LINE、他社提携サイトから入った予約をすべて一元管理できる。リアルタイムに空き枠が同期され、複数経路からの予約もダブらずに処理されるため、「ネット予約を受け付けたら裏で紙の台帳に転記」といった煩雑さから解放される。予約一覧には患者情報だけでなく診療内容や担当スタッフ、使用チェアまで紐付けて表示され、受付や診療の現場で次に何をすべきか一目で把握できる。
経営面で注目すべきは、EPARKが提供する豊富な付帯サービスである。例えば台帳システムと連動したLINEメッセージ配信により、休診日のお知らせや検診リコールの案内を自動送信できる。予約前日にはLINEまたはSMSでリマインド通知を送ることで無断キャンセルの抑制効果も見込める。こうしたきめ細かな患者フォローはスタッフの手間をかけずに実現でき、結果的にリピート率向上と収益安定につながる。費用は公式には公開されていないが、EPARKは成果報酬型の集患サービスとしての側面も持つため、契約内容によっては新患紹介数などに応じた費用体系となる可能性がある。注意点として、EPARKプラットフォームに依存する形になるため、自院独自の集患チャネルを併せ持つことも重要である。とはいえWebマーケティングに割く時間や労力が限られる医院にとって、EPARK歯科予約システムは強力なパートナーとなり得るだろう。ネット予約を積極的に活用し新規患者の流入を増やしたい、「デジタルで攻める経営」を志向する歯科医院に最適な選択肢である。
V-apo
V-apo(ブイアポ)は、日本ビスカ社が長年の歯科現場の研究に基づき開発した歯科特化型の予約システムである。従来の紙アポ帳の運用を徹底分析し、時間枠管理と複雑な治療順序の調整に特化した機能を搭載している点が特徴だ。最大の目玉は、歯科診療のユニークなニーズに応える「ななめ予約」機能である。例えば、30分の処置後に患者をいったん待合で待機させ、その間に別の患者を診療し、再度同じ患者を処置する、といったシナリオを考えてみよう。紙の台帳では二重線や矢印を書き込みながら手作業で管理していたこのようなケースも、V-apoなら2つのチェアを自動で確保し、必要な待ち時間もシステム上で設定できる。結果として、ユニットやスタッフの稼働効率を最大化しつつ患者待ち時間のバランスを取ることが可能となる。
UIはPCだけでなくタブレット操作にも適しており、受付でも診療室でも同じ画面で予約を確認・登録できる。チェアサイド予約に難なく対応できるため、院内どこでもリアルタイムに予約状況を把握できる利便性がある。患者向けにはLINE連携を活用しており、患者は医院のLINEから簡単に予約を取得できるほか、医院側から休診情報やリコール(定期検診案内)を配信することもできる。コミュニケーションチャネルとして普及率の高いLINEを採用したことで、リマインド開封率が向上し無断キャンセル減少に効果を発揮しているとの報告もある。
経営的観点から言えば、V-apoは「歯科の予約管理に本当に必要なもの」にフォーカスした職人肌のシステムといえる。一方でその専門性ゆえに、電子カルテ連携やオンライン決済といった周辺機能はオプション扱いであり、オールインワン型ではない。初期費用がおよそ60万円と高額で、レセコン連動など追加費用も発生するため、コスト面では慎重な検討が必要だ。しかし、院内の予約オペレーションを極限まで最適化することで結果的に「1日あたりの患者対応数を増やす」効果が期待でき、高いROIを叩き出す可能性を秘めている。特に保険診療中心で多数の患者を効率よく回したい開業医にとって、V-apoの導入はスタッフの負担軽減と収益拡大の双方につながる戦略的投資となり得るだろう。「紙の予約帳から脱却しつつ、紙時代の細やかな運用テクニックも残したい」という先生には、まさに打ってつけのシステムである。
ドクターズ・ファイル アポ レジタス
医療情報ポータルサイトとして月間3,000万PVもの閲覧数を誇る「ドクターズ・ファイル」を運営する株式会社ギミックが提供するのが、ドクターズ・ファイル アポ レジタスである。最大の特徴はこの巨大メディアとの連携により、医院ホームページ以外からの予約導線を確保できる点だ。ドクターズ・ファイル上の医院掲載ページから直接予約を受け付けることで、新規患者がスムーズに来院予約まで完了できる。これは、Web広告やSEOに不慣れな医院でもメディアの力で集患が期待できるという意味で大きなメリットである。
システム自体も予約・患者管理の効率化に力を入れている。患者ごとの来院履歴やキャンセル率などを確認できるCRM(顧客管理)的な機能を持ち、リコール対象の抽出やフォローすべき患者の洗い出しが容易だ。スケジュール画面には従来のアポ帳を模した見やすい台帳形式を採用しつつ、デジタルならではの検索・フィルタ機能で過去の予約履歴もすぐ参照できる。受付スタッフにとっては、紙台帳とExcel台帳の“いいとこ取り”ともいえる操作感であり、事務作業のデジタル化への心理的ハードルを下げている。
LINE連携機能にも注目だ。患者は一度LINE上で情報登録すれば次回からログイン不要で予約が可能になり、UIに不慣れな高齢層でも比較的容易に扱えるよう工夫されている。来院前日にはLINEでリマインドが届き、開封率の高さから無断キャンセル防止に効果を示す。さらにオプションでオンライン決済機能にも対応しており、自費治療費用の事前決済やデポジット(予約金)の徴収など、患者の会計待ち時間ゼロを実現する活用方法も可能だ。これら多数の機能により、スタッフの負担軽減と患者満足度向上を同時に実現することを謳っている。
費用面は要問い合わせだが、推測するにポータルサイト掲載料や予約システム利用料がセットになったプラン形態であろう。高機能ゆえに安価ではないかもしれないが、「集患にも課題があり、受付業務も逼迫している」という医院にとって費用を払う価値のあるサービスといえる。特に新規開業から間もない医院で、地域の認知度向上と業務基盤づくりを同時に進めたい場合には心強い味方だ。反面、既に一定の患者数がおり集患よりリコール重視のフェーズでは、その強みを活かしきれない可能性もある。ドクターズ・ファイル アポ レジタスは、「攻めの姿勢」で患者獲得とDXによる業務効率アップを図りたい先生にフィットするシステムといえよう。
ApoDent
ApoDent(アポデント)は、常に機能追加・改善が続けられている「進化し続ける」クラウド型予約管理システムだ。株式会社ナルコームが開発・提供しており、比較的新興ながら歯科医院の細かなニーズを素早く取り込む姿勢で注目を集めている。特徴的なのは予約台帳機能にとどまらず院内情報の共有ハブとして機能する点である。予約状況はリアルタイムにスタッフ全員で共有され、誰かが変更を加えれば即時に他の端末にも反映される。これにより「更新漏れで受付と診療で予定が食い違う」といったトラブルを防ぐことができる。
さらに、予約ごとに患者の注意事項(たとえばペースメーカー装着やアレルギー情報など)や既往症、当日の来院状況(受付済みか待合か診療中か)を確認でき、チーム医療としての情報伝達がスムーズになっている。キャンセル待ちリストの管理も充実しており、突然キャンセルが出た場合には待機リストから患者に一斉連絡し、空き枠を素早く埋める運用ができる。こうしたきめ細かな機能は、「院内コミュニケーションの活性化=サービス品質の向上」に直結するものだ。
患者との連絡手段も豊富だ。標準ではメール連絡が可能で、オプション契約すればLINE、SMS、さらにはスマホアプリ「デンタルパス」による通知も利用できる。この4チャネル対応は他社にはないユニークな強みであり、どの年代の患者にもアプローチしやすい。特に専用アプリを導入すると、患者側で次回予約日時の確認や変更もアプリ上から行え、プッシュ通知によるリマインドも可能になる。アプリ利用には多少のハードルがあるものの、一度軌道に乗れば定期検診のリコールも自動化でき、キャンセル率の低下に大きな効果を発揮するだろう。
また、ApoDentは予約と関連づけてスタッフの出勤スケジュール管理や技工物の納期管理まで行える点が秀逸である。例えば「この患者のクラウンが技工所からいつ戻るか」を把握し、それに合わせて適切な時期に次回予約を設定するといった芸当がシステム内で完結する。院長のみならずスタッフ一人ひとりが経営視点を持ち、「段取りの良い診療」を実践する助けとなるだろう。
価格は初期約6万円、月額8千円と、機能の充実ぶりに対して比較的手頃である。オプション追加次第では月額費用が上がるが、それでも同等機能を持つ他社よりはコストパフォーマンスが高い印象だ。注意点として、機能が頻繁にアップデートされるため、それに追随する意欲が医院側にも求められる。新機能を積極的に取り入れて業務改善に活かしたい向上心のある医院には適するが、現状のまま安定稼働だけを望む場合は変化に戸惑うこともあるかもしれない。しかし総じてApoDentは、「使いながら一緒により良いシステムを育てていきたい」と考える先進的な医院にとって、有力な選択肢と言えるだろう。
Ci Easy Apo2
Ci Easy Apo2は歯科ディーラー大手の歯愛メディカルが手掛けるクラウド型予約システムで、その名の通り「本当に必要とされる機能だけ」に絞って低コストを実現した点が売りである。月額2,980円という破格の価格設定(ベーシックプラン)は、デジタル化に予算をかけられない小規模医院や、とりあえず紙の台帳から移行してみたいと考える医院にとって魅力的だ。初期費用も5万円と抑えられており、導入のハードルが低い。
機能面では、アポイント帳のデジタル管理、患者への予約確認・リマインドメール送信、キャンセル登録と再予約管理、定期健診のリコール管理、Web予約など、歯科医院の日常業務で必須となる要素は一通りカバーしている。逆に言えば、高度な分析機能や複雑なカスタマイズ機能、過剰な付加機能は意図的に削ぎ落としている。その代わり操作画面は一般的なカレンダーアプリに近いシンプルさであり、説明書いらずで使い始められることも魅力だ。
必要に応じて機能を追加できるオプションプランも用意されている。例えば、LINE連携機能は月額1,000円の追加で利用可能となり、新規予約の受付や予約変更確認を患者がLINEから行えるようになる。LINE公式アカウントを運用する場合に発生する費用は別途だが、「必要な医院だけが追加費用を払って機能拡張する」という柔軟な設計になっている点はユーザーフレンドリーと言える。SMS送信についても1通15円の従量課金で提供されており、頻繁に使わない医院は固定費を増やさずに済むのが嬉しい。
経営的なメリットとしては、とにかく安価に始められることで早期にROIをプラスに持っていきやすい点が挙げられる。仮に月額2,980円プランで導入し、リマインド機能で数名のキャンセルを防げれば、すぐに元が取れる計算だ。サポートについても歯科ディーラー系らしく手厚いとの評判があり、トラブル発生時に電話やオンラインで迅速に対応してくれる。反面、機能を絞っているがゆえにクリニック独自の細かい運用には対応しきれない場合もある。たとえば複数ドクターの指名予約やユニットごとの細かな時間管理などは、上位システムほど柔軟ではない。しかし、それを補って余りあるコストメリットがあるため、「まずは基本機能だけでも電子化したい」という医院にとっては理にかなった選択となる。シンプルイズベストを体現したCi Easy Apo2は、デジタル予約の入門編としても最適であろう。
Apotool & Box for Dentist
Apotool & Box for Dentist(アポツール・アンド・ボックス)は、株式会社ストランザが提供する歯科医院向けオールインワン業務支援システムである。予約管理はもちろんのこと、電子カルテ的な役割や会計・決済機能まで備え、これ1本で医院のDXが完結すると言っても過言ではない。クラウド型で院内の複数端末から同時利用でき、予約情報はリアルタイムに共有される。
注目すべきは診療に必要な情報資源を一元管理できるプラットフォームである点だ。患者ごとにレントゲン画像や口腔内写真、歯周ポケット検査値などを紐付けて管理でき、過去のデータも予約画面からワンクリックで参照できる。例えば、次回来院時の予約枠を設定しながら前回撮影した画像に直接書き込みメモを追加する、といったシームレスな操作が可能だ。紙カルテや別ソフトを行き来する必要がなく、診療の質と効率を同時に高めることにつながる。
患者向けサービスも充実している。オプションとなるが、スマートフォン用の診察券アプリ「私の歯医者さん」は、来院前に患者がQRコードで受付を済ませられるシステムだ。受付に立ち寄らず待合で呼び出しを待てるため、患者の体感待ち時間を減らすとともに受付人数の削減も可能となる。またPOSレジ機能やキャッシュレス決済「お会計さん+ささっとPay」と連動することで、会計業務も短縮される。これらはすべて同じプラットフォーム上で統合管理されるため、診療後に会計ソフトへ入力し直す手間や金額ミスのリスクがない。特に自費診療額が大きい医院では、決済の迅速化と確実化は患者満足度と未収金防止に寄与するだろう。
経営分析機能も当然備えており、ユニットごとの稼働率、スタッフごとの売上、処置内容別の来院頻度など、マーケティングにも役立つデータが蓄積・可視化される。初期費用30万円・月額1.8万円とコストは高めだが、導入により新たな自費メニュー展開(例:ホワイトニング会員制プログラム等)が可能になったり、患者満足度向上で口コミが増えるなど投資回収の道筋は描きやすい。もちろん全機能を使いこなすにはスタッフ教育も必要で、オプションを付けすぎると月額費用が膨らむ点は注意したい。しかし必要な機能を取捨選択して組み合わせれば自院に最適化されたシステムを構築できる柔軟性は他に代えがたい。「患者体験の向上と医院の働き方改革を一挙に進めたい」という医院には、Apotool & Boxは極めて魅力的なソリューションとなるだろう。
Fanka
Fanka(ファンカ)は株式会社TEN EXPERIENCEがリリースした比較的新しい診療支援システムで、「待たせない医療体験で患者をファン化する」というキャッチコピーが示す通り、患者の快適さを徹底追求している点が他と一線を画す。具体的には、Web予約と事前受付を組み合わせて来院時の手続きを大幅に簡略化する仕組みを備える。患者は予約時にスマホから問診票に回答し、保険証やクレジットカード情報も事前登録しておくことで、初診時の煩雑な書類記入や保険証提示の時間が不要となる。来院後はほぼ待ち時間なく診療に入れるため、患者満足度の大きな要因である「待合室で待たされるストレス」を最小限にできる。
診療後にもユニークな工夫がある。LINEを用いて患者に診断内容や治療計画、ホームケアのアドバイスなどをフィードバック送信する機能があり、患者は自宅に帰ってからも自分の治療内容を再確認できる。これは治療の理解度を深めると同時に、「しっかりフォローしてくれる」という安心感から医院への信頼醸成につながるだろう。さらに、患者層や処置内容に応じてセグメント配信が可能であり、例えば若年層には智歯のケア情報を送る、インプラント治療後の患者には定期メンテナンスの重要性をリマインドする、といったマーケティング的アプローチも簡単に実施できる。適切な内容・タイミングで情報発信することで、再来院率の向上に貢献する。更に、電子カルテやレセプトとの連携にも対応。問診回答率や事後決済率が高まることで、受付業務の負担も軽減される。
Fankaはまた、電子カルテやレセコンとの連携も想定しており、既存システムを活かしつつ予約・受付部分だけ置き換える運用や、逆にFanka中心にして周辺機能をAPI連携するなど、柔軟な導入形態が可能とされている。公式価格は問い合わせとなっているが、充実した機能から察すれば決して安くはないだろう。しかし「患者の待ち時間短縮=医院の生産性向上」に直結する点を鑑みると、高額な設備投資と比べコストパフォーマンスは高いと考えられる。例えば、事前問診で受付業務を月に数十時間削減できれば、その分スタッフを他のサービス向上に振り向けることができる。まさに経営資源の再配分によって医院全体の価値を高める取り組みと言えよう。
Fankaは、「患者体験(PX)を究極まで磨き上げたい」と願う医院にとって格好のシステムである。特に自費診療に力を入れ、ホスピタリティを重視するクリニックであれば、その投資に見合うリターンが期待できるだろう。逆に言えば、患者体験よりも数を捌く効率を重視する保険中心型医院にはオーバースペックかもしれない。導入には自院の診療スタイルや患者属性を見極めた上で判断したい。
Dentry by GMO
Dentry by GMO(デントリー)は、GMOグループの医療予約技術研究所が提供するクラウド型予約システムで、予約手段の多様化と院内リソースの有効活用に重点を置いている。まず注目すべきは、一般的なWeb・LINE予約に加えてIVR(自動音声応答)による電話予約の自動受付を実現している点だ。通常、営業時間外やスタッフ手が足せない時の電話は留守電で対応するしかなく機会損失につながっていた。しかしDentryでは、患者が電話をかけると自動音声が対応し、ガイダンスに従って希望日時等を入力すれば予約が完了する。これにより、電話予約も24時間体制で受け付けることが可能になり、スタッフが不在でも患者の予約機会を逃さない。また営業時間内であっても、繁忙時には電話対応をシステムに任せて受付業務の負担を平準化することができる。
LINEを活用したオンライン予約はもちろん標準機能で、24時間好きな時に患者がLINEから予約可能だ。加えて、自由診療特有の細かな処置内容にも対応できる設定柔軟性があり、例えばインプラント手術枠を通常の診療枠と別に時間設定するといったカスタマイズが可能だ。担当の歯科医師や衛生士を患者自身が指名して予約することもでき、チェアやスタッフの空き状況をシンプルなUIで表示してくれるため、院内リソースを無駄なく使ったスケジューリングが容易になる。
経営的なメリットとして、Dentryはスタッフの定着率向上にも寄与しうる。電話対応や受付業務の負荷が軽減されれば、受付スタッフは患者応対や院内環境整備など本来注力すべき業務に集中できる。結果としてスタッフのストレスが和らぎ、離職防止や人件費増加の抑制につながる可能性がある。また、予約件数の増加も期待できる。電話予約を取りこぼさないこと、深夜でもネット予約を受け付けること、これらの積み重ねで1日1件でも予約が増えれば売上アップに直結する。
Dentryは費用公開されていないものの、大手IT企業の開発するサービスとして信頼性やセキュリティ対策も万全と考えられる。導入を検討する際は、自院の患者層が電話予約派かネット予約派かも踏まえて判断すると良いだろう。高齢患者が多く電話予約が依然主流な医院では、「電話受付の自動化」というユニークなDXを実現できるDentryは強力な武器となる。逆に若年層中心で電話がほとんど鳴らないような医院では、IVR機能の恩恵は少ないかもしれない。「スタッフの業務負荷をとにかく減らしたい」「電話応対に追われている現状を改善したい」という課題を抱える医院に、Dentryはフィットするだろう。
PROGRAMα(プログラムアルファ)
PROGRAMα(プログラムアルファ)は、医科・歯科向けの電子カルテを開発するメディア株式会社による歯科用予約・予定管理システムである。その最大の特徴は、電子カルテ/レセコン機能と予約管理が一体化している点にある。単なる連携ではなく、一つのシステム内でカルテも予約も動作するため、患者基本情報や診療履歴を別システムに登録し直す必要がない。具体的には、患者の保険資格情報がカルテ登録時に紐付いており、月初めの受診時には予約一覧からワンクリックで全患者の保険証確認を自動で行えるなど、他にはない効率化を実現している。
予約システムとしての機能も充実している。24時間自動受付の新患Web予約機能を備え、医院のホームページや提携サイトから初診患者のオンライン予約を受け付けることができる。これにより診療時間外にも新規の集患が可能となり、増患対策につながる。またリコール対象者への定期健診案内や、予約前日のSMS確認メッセージ送信など、キャンセル率を下げつつ患者の継続来院を促進する仕掛けが標準で備わっている。電話対応についてもCTIでサポートされており、電話が鳴ると同時に該当患者のカルテと予約情報をポップアップ表示できる。スタッフは過去のキャンセル履歴なども踏まえて電話応対できるため、患者ごとに最適な予約提案や注意喚起が可能となる。
急な予約変更が発生した場合でも、カルテと予約が連動している強みでスムーズに対応できる。例えば当日になって患者から「体調不良で行けない」と連絡があった際、予約枠をキャンセル登録すると同時にカルテにその旨が記録され、後日振替予約を取った際もカルテに自動反映される。こうした一貫システムならではの整合性の取れたデータ管理は、人的ミスを防ぎ診療記録の信頼性を高める。
PROGRAMαは費用が公表されていないが、電子カルテ込みの総合システムであることから、初期・月額ともにそれなりの投資額となることは想像に難くない。しかし、受付スタッフと歯科衛生士が別々のシステムに同じ患者情報を打ち込む無駄が無くなること、データ二重管理のミスがゼロになること、さらには医院全体のDXによって患者待ち時間やスタッフ残業が大幅に減った事例もあるとされ、長期的に見れば十分な投資回収が望める。特に分院展開やユニット多数の大規模クリニックでは、スタッフ増に伴う情報共有コストが指数関数的に増すため、こうした統合システムの価値が一層高まる。「歯科医院のITインフラを根本から刷新し、生産性を極限まで高めたい」という先進的な医院には、PROGRAMαは有力な選択肢となろう。
DentNet
DentNet(デントネット)は、株式会社ジェニシスが提供する歯科予約・経営支援システムで、長年にわたり改良を重ねてきた実績あるサービスだ。89項目もの詳細な初期設定、さらに389項目に及ぶサーバー側設定によって、医院ごとの運用にきめ細かくフィットさせられるカスタマイズ性が最大の特徴である。例えば、医院独自の診療メニューの色分けや予約時間枠の細分設定、複数ドクターのシフトによる予約制限など、市販の汎用システムでは実現困難なニッチな要望にも対応できる柔軟性がある。
DentNetは紙の診察券を電子化するスマホ診察券機能をいち早く導入したことでも知られる。患者はアプリやウェブを通じてスマホ上に診察券を表示し、それがそのまま予約確認および来院チェックインツールとなる。さらにユニークなのはリライトカードとの連携だ。従来型の磁気診察券を活用し、次回の予約日時をそのカードに直接印字して患者に渡すことで、患者が自分で次回予約を記録する手間を省きつつ予約忘れ防止に役立てている。新旧の技術を組み合わせ、あらゆる患者層に配慮したアプローチはDentNetならではと言える。
経営支援システムとしてのDentNetは、数多くの統計レポート出力機能を備えている。ユニットごとの稼働率、担当医ごとの売上、新患率、患者の紹介元分析、キャンセル率、リコール率など、院長が把握したい指標はほぼ網羅されている。全てのデータはCSV形式で出力可能で、Excel等で加工・分析することで医院独自の経営戦略立案にも活用できる。例えば稼働率の低い時間帯が判明すればその時間にホワイトニングキャンペーンを打つ、新患紹介が減っていれば広告を強化するといった具合に、データドリブンな経営判断が可能となる。まさに歯科医院経営の「参謀」のようなシステムである。
費用面では、月額14,500円(ユニット7台までの場合)に加え、初期費用が約194万円(6年分割払いの場合)と高額だ。ただし高機能ゆえに単純比較はできず、この初期費用にはサーバー設置やスタッフトレーニング、きめ細かな設定調整などが含まれていると推察される。実際に導入すれば長期間安定して使えるシステムであり、「歯科医院経営をデータで語れるレベルに引き上げたい」と考える医院には大きな武器となるだろう。一方、小規模でシンプル運用を望むクリニックにはオーバースペックで、費用対効果が見合わない可能性もある。DentNetは、複数ユニットや分院経営でPDCAを回しながら成長志向のクリニックにこそ真価を発揮するシステムである。
デスク
デスク(Desk)は、Doctorbook社が提供する歯科特化型オンライン予約システムで、その名の通りデスクトップでもモバイルでも直感的に扱えるシンプルさが売りだ。初期費用無料で始められ、必要な機能を一通り備えつつ過剰な装飾を排したインターフェース設計は、ITに馴染みのないスタッフにも好評を博している。
デスクの特徴の一つは、診療内容ごとに最適な予約時間枠を柔軟に設定できることだ。例えば、初診カウンセリング枠は長めに確保し、定期健診は短めでOK、といった調整を医院側で自在に行える。設定画面も視覚的にわかりやすく、ドラッグ&ドロップで時間枠を変更するような直感的UIを採用している。また、オンラインからの予約枠と電話予約専用の枠を分けて管理できる機能も便利だ。具体的には、「午前のある時間帯はリピーター高齢者が電話で予約することが多いのでオンライン枠を制限する」といった運用ができ、既存患者への配慮と新患の取りこぼし防止を両立できる。
さらに、シフト管理機能も備えており、スタッフごとの勤務日・時間を登録しておけば、予約時に担当者不在によるミスブッキングを未然に防ぐ。例えば「午後は衛生士Aさん休みだからPMのSRP枠は非表示にする」といった細かな配慮がシステムで完結する。チェアサイド予約や院外からのスケジュール確認にも対応しているため、院長が往診先からスマホで翌日の予約状況を確認するといった使い方も可能だ。
デスクは基本機能としてメールやSMSのリマインド送信、予約件数やキャンセル数を可視化するシンプルなダッシュボードも提供している。これにより、直感的操作性を損なわない範囲で最低限の分析もできるため、デジタル予約の効果を把握しやすい。料金は月額制だが公式サイトには「要問い合わせ」とあり、規模やニーズによって異なるプランを用意していると考えられる。初期費用ゼロで始めやすいことから、「まずは紙の台帳から移行してみたい」「現場になじむか様子を見たい」という医院にマッチするだろう。シンプルでありながら歯科向けの痒い所に手が届く機能を備えるデスクは、全機能を使い倒さなくてもその恩恵を十分に享受できるため、小規模クリニックから中規模クリニックまで幅広く検討に値する存在だ。
デンタルアクセス
デンタルアクセスは株式会社ヴァンガードネットワークスが開発した予約システムで、他社とは一線を画すハイブリッド型(クラウド+オンプレミス)のアーキテクチャが特徴だ。多くの予約システムがクラウド化で利便性を高める一方、ネット障害時には利用できなくなるリスクを孕んでいる。デンタルアクセスは、クラウドの利点を活かしつつ院内サーバー/PCにデータを保持することで、仮にインターネットが不通となっても予約業務に支障が起きることはないため、安定した運用が可能だ。言い換えれば、ほぼダウンタイムゼロの安定運用を実現するための保険が掛けられているのだ。これは山間部や離島などネット環境が不安定な地域の医院や、システム停止が許されない大規模医院にとって大きな安心材料となる。
連絡手段の多様さにも目を見張るものがある。LINE、SMS、Eメール、スマホアプリ、そして自動電話連絡に至るまで、想定し得る全チャネルで患者への予約通知・リマインドが可能だという。そのカバー率は99.9%に達するとされ、まさに老若男女どのような手段を好む患者にもアプローチできる。例えば普段LINEを使わない高齢者には自動音声電話を発信し、若い世代にはLINEやアプリ通知で届けることで、それぞれに最適な方法で情報を伝達できる。この手厚い通知体制は、予約忘れによるキャンセルや無断キャンセルを極限まで防ぐ効果が期待できる。
集患支援にもユニークな取り組みがある。医院のホームページにオンライン予約ボタンを簡単に埋め込めるのはもちろん、歯科医院ポータルサイトである「e8148.com(いいはよい歯)」への無料掲載も可能となっている。自前でWeb集客するのが難しい医院でも、同ポータルに情報を載せることで露出を増やし、新患獲得のチャンスを広げている。USENグループのデンタマッププラスと提携した取り組みとも言われ、こうした外部連携による付加価値提供は小さな開業医にとってありがたいサービスだ。
費用は問い合わせベースだが、高度なシステムゆえ月額料金は中~高水準と推測される。だが「10年で400万円以上の差も!」との比較サイト情報もあり、導入する機能や規模次第では他社に比べ割安になる場合もあるようだ。何より、トラブルに強い設計はレセプト請求締め日前日にシステム停止、といった最悪の事態を防いでくれるだろう。デンタルアクセスは、「システム障害で診療が滞るリスクは絶対に避けたい」「患者との連絡ミスを限りなくゼロにしたい」という、安全運用重視の医院にうってつけである。
デンタマッププラス
デンタマッププラスはUSENグループが販売するクラウド型予約管理システムで、導入実績2,000医院以上と称される業界でも有数の実績を持つ定番製品だ。多くの医院に支持される理由は、機能バランスとサポート体制の良さにある。
まず、24時間対応のオンライン予約機能によって夜間や休診日でも患者の予約申し込みを受け付けられる。ネットで予約を完結できるため、「電話が繋がらないから他院を探す」といった患者の離脱を防げる。クラウド型ゆえ、院長が自宅や外出先から予約状況を確認・変更することも容易であり、場所を選ばない管理体制が敷ける点もメリットだ。
操作性については、医療スタッフ以外(例えば受付専門の事務員やアルバイト)でも直感的に扱えるシンプルな画面デザインが特徴だ。マニュアルに頼らなくても使えるUIはスタッフ教育の手間を減らし、新人でも早期に戦力化できる。導入支援としてUSENのスタッフがしっかりサポートしてくれるため、機械操作に不慣れな医院でも安心だ。実際に初期設定から運用定着まで手厚くフォローを受けられるとの評判があり、「ITが苦手な院長先生でもストレスなく使い始められた」という声も聞かれる。
もちろん機能も一通り揃っている。予約前日の自動メール・SMS送信、レセコンとのデータ連携による患者情報の共有、定期健診対象者のリストアップ機能など、必要十分なものが網羅されており、劇的な新機能こそないものの安心感がある。価格面では、初期30万円・月額7,500円~と中程度だが、SMS利用時は別途2,000円/月が加算される。総じて標準的な価格設定だが、裏を返せば高すぎず安すぎずでコストパフォーマンスに優れるとも言える。10年以上利用している医院も多く、トラブル発生時のノウハウ蓄積も豊富だろう。
デンタマッププラスは、「色々な製品があるが結局どれがいいか迷う」という先生にまず検討してほしい基本形である。大きな尖った特徴はないが、大失敗もない安定感が最大の魅力だ。特に単体開業医でスタッフも限られる場合、変に奇をてらったシステムよりもこうした定番品を選ぶ方が、結果的に早くDXが根付くことが多い。システムに振り回されず、自院の診療に集中するための縁の下の力持ちとして、デンタマッププラスは極めて信頼に足る存在だ。
Dentis
Dentis(デンティス)は、医療系ITベンチャーの株式会社メドレーが提供する歯科向けクラウド業務支援システムである。その特徴は予約システムに留まらず、電子カルテ・レセコン機能・オンライン診療・在宅訪問管理など歯科医院運営のあらゆる要素をオールインワンで備えている点にある。いわば歯科版ERP(統合業務システム)のような存在で、予約管理はDentisがカバーする広範な機能の一部という位置づけだ。
予約システムとして見ても、Dentisは近年のトレンドをしっかり押さえている。スマホやPCからのオンライン予約対応は当然ながら、LINE公式アカウントとの連携もサポートしており、患者がLINE上で予約可能な仕組みを構築できる。また、他のDentis内機能(例としてWeb問診、メッセージ配信機能)と組み合わせることで、予約→問診→受診→事後フォローまで一貫してデータが繋がる。例えば予約完了と同時に問診票を自動配信し、来院前に患者に入力してもらうことも可能で、受付業務は劇的に簡素化されるだろう。
Dentisの強みは、複数の機能を横断したデータ分析ができる点だ。予約システム単体では得られない「患者属性と予約傾向の関係」「治療内容ごとのキャンセル率」なども、Dentisプラットフォーム内のデータを集約すれば可視化できる。さらに、本部機能として複数医院を束ねて管理する仕組みもあり、分院展開している医療法人が全院の予約状況や売上をリアルタイムでモニタリングする、といった高度な運用も可能だ。
費用は基本プラン月額35,000円(税別)からとなっており、安価とは言い難い。しかしそれにはサブカルテ(紙カルテ補助機能)やセキュリティ対策、24時間サポートも含まれ、SMS送信料程度以外は大きな追加費用なく広範な機能を利用できる。つまりDentis導入は、医院内のIT環境をクラウドに全面移行し、インフラ管理コストを削減する効果も持つ。バックアップやシステム更新も自動化され、院長自身がIT管理者を兼ねる負担から解放される意義は大きい。
Dentisは、「将来的な医院経営の在り方を見据え、早いうちからクラウド基盤に乗り換えておきたい」という先進的な院長にマッチする。新規開業時に導入すれば紙カルテ不要のスマートな体制でスタートダッシュを切れ、既存医院でも移行を経て業務効率が飛躍的に向上した事例がある。反面、一度に多くの機能が変わるためスタッフには相応のトレーニングが必要であり、使い慣れるまで時間を要するかもしれない。しかしメドレー社の手厚いサポートと定期的なアップデート提供により、導入医院からは高い満足度が報告されている。Dentisは単なる予約ソフトではなく、歯科医院経営のDXを包括的に支えるプラットフォームとして、その存在感を増している。
ジニー & myDental
ジニー & myDentalは、株式会社Dentalight(デンタライト)が提供する予防歯科重視の患者管理クラウドシステムである。ジニーが医院側の予約・患者管理システム、myDentalが患者向けスマートフォンアプリという位置づけで、この2つが連動することで他にないサービス体験を生み出している。
患者はスマホアプリmyDentalをダウンロードし、通院先の歯科医院を登録する。アプリが電子診察券の役割を果たし、次回予約日時の確認やプッシュ通知リマインド、さらにアプリ上での予約申し込みも可能だ。来院時にはQRコードを受付機にかざすだけでチェックインが完了し、待合で呼ばれるのを待つだけで良い。煩雑な受付手続きが不要になるため、医院側は受付に人員を張り付けなくてもスムーズに患者導入が行える。特に大型の医療モール内にあるクリニックなど、受付動線が混雑しやすい環境では威力を発揮するだろう。
ジニーは予防歯科支援システムとしての顔も持ち、リコール対象者へのフォローアップに定評がある。例えば6か月ごとの定期検診時期が近づいた患者に自動で通知を送り、アプリから簡単に予約を取ってもらえるよう誘導する。キャンセルが出た場合も、別のメンテナンス希望患者に対してアプリ経由でお知らせを飛ばすことができるため、空き枠の早期充填と患者の来院機会損失防止に役立つ。こうした機能により、導入クリニックではメンテナンス患者数が飛躍的に増加したという報告もある。
また、ジニーはデータ分析にも力を入れている。キャンセル率やリコール率はもちろん、患者の中断リスク(治療途中で来院が途絶えているケース)を検知しフォローリストを自動生成するなど、患者の生涯価値(LTV)を最大化するための機能が充実している。これは、「一人の患者さんと長く良好な関係を築き、健康増進に貢献する」という予防歯科の理念に則った設計と言えるだろう。
価格は問い合わせベースであるが、クリニック規模に応じてスターター/スタンダード/プロの各プランが存在し、それぞれ機能範囲が異なる。ITに明るい若手院長層を中心に導入が進んでおり、アプリを活用した先進的な取り組みが口コミで広がっているようだ。ジニー & myDentalは、「歯科医院を患者さんの生活の一部に溶け込ませたい」「定期メンテナンスこそが歯科医療の核だ」と考える医院にとって、まさに待ち望まれたツールと言えよう。ハードルがあるとすれば、患者にアプリをインストールしてもらう促進策だが、逆にそれをクリアできれば強固な患者ロイヤリティを築ける。時代の半歩先を行くシステムとして、今後も注目される存在である。
よくある質問(FAQ)
Q. 紙の予約台帳から移行する際、これまでの予約データは引き継げるのか?
A. ほとんどのシステムでは、初期導入時に既存の予約情報をインポートするサポートが用意されている。エクセル等で管理している場合は指定フォーマットに変換して取り込みが可能だ。紙台帳のみでデータがない場合でも、過去の来院患者リストを用意すればリコール対象者を一括登録できるなど、移行を円滑にする手段が提供されている。導入時にはベンダーの担当者が丁寧にヒアリングを行い、必要に応じてデータ入力を手伝ってくれるので安心である。
Q. 年配の患者が多くオンライン予約やアプリを使いこなせるか不安だが大丈夫か?
A. 高齢の患者でスマホやPCに不慣れな方は一定数存在するため、完全にデジタル化するのではなく並行して電話や窓口での予約も受け付ける体制は残すべきである。その上で、システム側で電話受付分もまとめて管理できるものを選ぶとよい。例えばデスクでは電話予約用の枠を確保する設定が可能だし、デンタルアクセスのように自動電話連絡機能があると高齢者へのリマインドも確実だ。最終的にはスタッフが患者一人ひとりにあった予約方法を案内し、徐々に慣れてもらう取り組みが肝要である。
Q. インターネット障害やシステムダウンが起きた場合、予約情報にアクセスできなくならないか?
A. クラウド型システムではネットワーク障害時にアクセス不能となるリスクはゼロではない。ただ、多くのベンダーが24時間体制の監視と冗長化構成でダウンタイム極小化に努めている。さらにデンタルアクセスのように院内サーバー併用でネット切断時も院内で閲覧可能なタイプや、DentNetのように院内設置型(オンプレミス)で動くタイプもある。自院のネット環境に不安がある場合や地方で回線品質にばらつきがある場合は、そうした製品を検討すると良い。また万一のダウン時にも備え、前日までの予約一覧を印刷しておく等のバックアップ運用を決めておくと安心である。
Q. 今使っているレセコンやカルテと新しい予約システムは連携できるのか?
A. 製品によるが、多くの歯科向け予約システムは主要なレセコンとデータ連携できるよう設計されている。例えばレセコンから患者基本情報を取り込んで予約システム側で利用したり、逆に予約一覧をレセコンに出力して受付で参照したりといった使い方が可能だ。V-apoやApotool & Boxなどは専用の連携モジュール(オプション)を用意している。ただし、完全一体型のPROGRAMαやDentisのように最初から統合された製品を除き、連携できる範囲は限定的である点には注意が必要だ。導入前にお使いのレセコン名をベンダーに伝え、具体的にどの程度データが連携できるか確認するとよい。
Q. 導入後にスタッフが使いこなせるか心配だが、トレーニングやサポート体制は?
A. ほとんどのシステム提供会社は、導入時に操作説明や初期設定支援のサービスを含んでいる。USENやメドレーのような大手は専任スタッフが現地でレクチャーすることもあるし、DentNet等では数日にわたる研修を実施するケースもある。オンラインでのトレーニング動画提供や、導入後一定期間は専任担当者がフォローアップしてくれるなど、手厚いサポートを受けられることが多い。不安な場合は契約前に「サポート体制」について質問し、過去の導入事例でどの程度の期間で現場に定着したかを聞いてみると良いだろう。スタッフが自信を持って使えるようになれば、システム導入効果は最大限発揮される。