
歯科レセコン「大樹」の評判は?価格や使い方を徹底解説!
歯科医院の経営において、レセコン(レセプトコンピュータ)は診療の裏方を支える重要な存在である。毎月のレセプト請求業務や日々のカルテ管理に追われ、「もっと簡便でコスト負担の少ない方法はないか」と悩んだ経験はないだろうか。高機能だが高価なシステムを導入したものの使いこなせていない、あるいは未だ紙のレセプトに頼り手作業で凌いでいるという先生もいるだろう。本記事では、臨床現場と医院経営の両面から「大樹」の特徴を分析し、あなたの診療スタイルに合う製品かどうかを検討する材料を提供する。最後に導入判断のポイントも提示するので、ぜひ参考にしていただきたい。
歯科レセコン「大樹」とは何か?
「大樹」はシステムウェア大樹株式会社(旧・和みの工房大樹)の提供する歯科用レセコン一体型の電子カルテシステムである。正式名称は「歯科診療録 大樹」で、診療録(電子カルテ)作成機能とレセプト請求機能が統合されたオールインワンの診療支援ソフトである。レセコン老舗メーカーが手掛け、発売から20年以上の実績を持つため、全国の歯科医院や病院歯科・自治体の歯科診療所などでも導入されてきた歴史がある。その最大の特徴は何と言っても導入コストの安さであり、後述するように2年間のライセンス料金が約90,000円(税別)と業界でも屈指の低価格設定になっている。
大樹はパソコンにインストールして使用するオンプレミス型のシステムで、クラウド型レセコンとは異なり院内のPC上で全データを管理する。必要最小限の機能に絞り込みシンプルな設計とすることで、パソコンの操作に不慣れな歯科医師やスタッフでも扱いやすく、また古いスペックのPCでも動作する軽快さを実現している。実際、製品要件上は20年前のCPUでも稼働可能とされており(もちろん現在はWindows 10/11といった最新OS環境での使用が推奨されるが)、手持ちの旧式PCを流用できるケースもある。このようにシンプルさと堅実さを重視した大樹は、最新の華やかなUIやクラウド連携機能こそ備えていないものの、レセコンに「安定動作」と「必要十分な機能」を求める層から一定の支持を得ている。
大樹の主要スペックと特徴
低価格だからといって、大樹の機能が極端に限定されているわけではない。レセコン一体型電子カルテとして日常の歯科診療に必要な機能はひと通り網羅されている。主なスペック・特徴を挙げる。
まず、電子カルテ機能ではスタンプ入力による迅速な記録作成が可能である。あらかじめ約1550種類もの歯科診療用スタンプ(定型文や処置コード)が登録されており、各医院で独自のスタンプを作成してボタン一つで入力することもできる。カルテの自由記載部分もワープロ感覚で文字入力でき、診療中にスピーディーかつ詳細な記録を残せるよう工夫されている。また、一画面上で現在のカルテと過去のカルテ内容を時系列に連続表示できるため、患者の既往処置や前回までの経過を素早く参照できる。この連続表示は再来患者の対応や長期症例のフォローに役立ち、紙カルテをめくるような手間を削減する。
レセコン(医事会計)機能も充実している。保険点数の計算・レセプト電算処理はもちろん、領収書発行や診療報酬明細書(レセプト)作成まで一通り行える。
診療報酬改定や点数ルールの変更にも契約期間中のアップデートで随時対応しており、最新の算定要件に沿った請求が可能である。さらに予約管理や画像管理(口腔内写真やレントゲン画像ファイルの保存・参照)、歯周検査所見の入力、院内処方箋の発行、次回予約日時の案内、リコール管理、レセプト発行や各種帳票出力等をすべて標準装備している。
特別なオプションモジュールを後から購入しなくても、これらの機能が追加料金なしで全て利用できる点は、大樹の大きな魅力である。多くのメーカが予約システム等を有償オプションとする中、低価格帯でこれらが網羅されているのは驚きと言えるだろう。
動作面では非常に軽量で安定している。大樹はテキスト主体のシンプルな画面設計で派手なグラフィックスはないが、その分処理が速く、入力や検索のストレスを感じにくい。数万件規模のカルテデータや患者情報を蓄積しても動作が重くなりにくいという報告もあり、長期運用にも耐える設計である。また、院内LANを構築すれば複数のパソコンから同時利用が可能で、受付・会計用と診療室用など端末を分けて運用することもできる。ライセンス上も1医院内であれば追加料金なしでクライアントPCを増設できるため、小規模な歯科医院からユニット複数の中規模医院まで柔軟に対応できる。
導入・運用時の互換性と周辺環境
大樹は院内設置型のシステムであり、基本的にはWindowsパソコン上で単独で動作する。クラウド型ではないため、インターネットに常時接続していなくても院内業務は完結する(ただしレセプトのオンライン請求やオンライン資格確認を行う際にはインターネット接続が必要となる)。このため、自院のネットワーク環境や他システムとの連携について幾つか考慮点がある。
データ互換性については、他社レセコンからの移行を想定した支援策が用意されている。他社製品から乗り換える場合、過去のレセプト電算データ(レセ電、標準的なRECEIPT.UKEファイル)を取り込んで患者基本情報を一括移行する機能があり、数年分の患者データであれば1時間程度で移行できた例もある。これにより、新システムへの患者マスタ入力の手間を大幅に省ける。ただし、カルテの詳細な経過内容までは他社間で互換性がないため、紙カルテからの移行や経過情報の引継ぎには別途対応が必要になる。導入前に、現在使用中のレセコンやカルテから何をどこまで引き継げるか、メーカーに相談しておくと安心である。
オンライン資格確認や電子レセプト請求への対応も重要なポイントである。大樹そのものはレセプト電算データ出力に標準対応しており、厚労省のオンライン請求システムに接続して毎月のレセプト送信が可能である。また、最近義務化されたマイナンバーカードによる保険証確認(オンライン資格確認)についても、メーカーから「大樹認証ソフト」という連携ソフトウェアが提供されており、対応するカードリーダー機器と組み合わせて運用できる。これらオンライン対応に必要なソフトウェアアップデート費用も公的補助の対象となるため、条件を満たせば実質的な院内負担はわずかで導入できる。導入後は、診療報酬の改定や制度変更に応じたソフトウェア更新プログラムが随時提供されるので、サポート契約を継続することで常にシステムを最新状態に維持できる。
運用面の体制としては、日々のデータバックアップとハード管理が鍵となる。大樹は院内PCのローカルデータベースに患者情報やカルテを保存するため、万一のパソコン故障や災害に備えて定期的なバックアップを欠かさないようにしなければならない。外付けHDDやネットワーク上の別PC、クラウドストレージなどに毎日バックアップを取る運用が推奨される。ユーザーからは「紙レセプトから大樹に移行した後は、これまで以上にバックアップに気を配っている」という声もあり、重要データを守る意識が求められる。また、メーカーのサポートは電話やリモート操作による対応が基本で、必要に応じてアップデートディスクの送付や遠隔でのトラブルシュートが行われる。ハードウェアのセット販売はなく、ソフトウェアのみの提供であるため、自院で用意するPCのスペック管理やネットワーク設定は院内のIT担当者か業者に任せる形になる。幸い、大樹は軽量なので最新の市販PCであれば性能要件を満たすのは容易であるが、安定稼働のために信頼性の高いPCと無停電電源装置(UPS)などの導入も検討したい。
院内LANで複数端末を利用する場合は、いわゆるクライアント・サーバー型の運用となる。1台のPCをサーバー(兼メイン端末)としてデータを集中管理し、他の診療室PCや受付PCからそのデータにアクセスする形だ。設定自体はメーカーの手順書に従えば難しくなく、カルテ入力を担当する診療室のPCと、会計処理を行う受付PCで同時に大樹にアクセスし業務を分担できる。スタッフにカルテの入力補助を任せたい場合なども、LAN経由で情報を共有しつつ分担することで院内のワークフローが円滑になる。ただし、院内ネットワークのトラブル時には全端末でシステムが使えなくなる恐れもあるため、ネットワーク機器のバックアップやトラブル対応手順も確認しておくと安心である。
「大樹」導入による医院経営インパクト
大樹最大の魅力である低コストは、医院経営に直結する重要な要素である。他社の歯科レセコンと比較して、導入および運用コストが具体的にどの程度有利になるのか試算してみよう。
前述のように、大樹のライセンス費用は2年間で約90,000円(税別)である。月額換算すれば約3,750円(税別)ほどにしかならない。この料金にはソフトウェアの利用料だけでなく、保守サポートとバージョンアップ(点数改定への対応など)も含まれている。例えば、日本歯科医師会が提供するクラウド型レセコン「日歯レセプト電子請求(レセック)」では初期費用が約50,000円、月額利用料が約24,800円と言われており、6年間使用すると総額で約180万円にもなる。一方、大樹で6年間運用した場合の費用は約27万円(2年毎契約×3回として計算、税別)に過ぎない。約6倍以上のコスト差が生じる計算であり、長期的には大きな経営負担の差となる。もちろんクラウド型には別の利点があるものの、レセコンにかけるランニングコストを最小限に抑えたい医院にとって大樹の経済性は非常に魅力的である。
コストだけでなく業務効率化による利益貢献も考えてみる。従来、紙レセプトで請求業務をしていた医院では、レセコン導入によって毎月のレセプト作成・点検にかかる時間と人件費が大幅に削減できる。仮に紙請求で数時間かかっていた業務が大樹によって半減したとすれば、その分早く帰宅できるだけでなく、浮いた時間を患者対応や自費治療の相談時間に充てることもできる。1回の自費カウンセリングが新たな治療契約(例えば数十万円のインプラントや矯正治療)に繋がれば、これは大きな売上増であり、レセコンへの投資が生み出した付加価値と言える。また、カルテ管理が電子化されることで再来患者の取りこぼし防止やリコールの徹底が図れ、患者来院率の向上にも寄与する。例えばリコール葉書の送付や次回予約の促進が容易になるため、定期健診の来院者が増えればそれだけ保険点数収入や自費クリーニング収入も増えるだろう。
一症例あたりのコスト面で見ても、大樹の費用負担はごく軽微である。仮に月間延べ患者数が300名の保険診療中心の医院の場合、先述の月額3,750円を患者数で割ると1患者あたり約12.5円のシステム費用となる。これはほとんど無視できるレベルのコストだ。チェアタイム短縮やミス削減による時間の節約効果まで考慮すれば、実質的なROI(投資対効果)は非常に高い。特に、大樹の場合は初期導入費用も抑えられるため、開業直後で資金に余裕がない場合でも導入しやすく、早期に運用を軌道に乗せることで投資回収も速い。通常、数百万円の高額機器を導入する際には何年で元を取れるか慎重に検討するが、数十万円程度のシステムであれば数カ月運用しただけで十分元が取れてしまうケースも多い。
ただし留意すべきは、コストが低い分手厚いサポートや高度な機能は省かれているという点である。例えばトラブル時の即時オンサイト対応(技術者が直接来院しての対応)などは期待できず、万一の際には一定時間診療を止めて自力での復旧対応や電話サポートに頼る必要がある。安価な分、リスク管理や日頃のメンテナンスは医院側の工夫でカバーする前提と考えよう。その上で低コスト運用のメリットを最大化すれば、大樹は経営的に見て「費用対効果の高い賢い投資」となるはずである。
「大樹」を使いこなすためのポイント
大樹を導入したからといって、その効果を十分に発揮できるかどうかは使いこなし方次第である。ここでは、導入初期から円滑に運用し、メリットを最大化するためのポイントをいくつか挙げる。
導入初期の準備とスタッフ教育
新しいシステム導入時には、人間側の慣れが必要である。大樹はシンプルな操作性とはいえ、紙中心や他システムから移行する場合、最初は戸惑うこともあるだろう。導入直後は可能であれば診療時間に余裕を持たせ、スタッフと共に試行期間を設けるのがおすすめだ。例えば休診日に架空の患者で一連の操作(受付登録~カルテ入力~会計~レセプト作成)を練習し、エラーや不明点を洗い出しておく。また、院内でITに明るいスタッフがいれば「大樹担当」に任命し、マニュアル習熟や操作のコツを他のメンバーに展開してもらうと良い。メーカーから提供される操作マニュアルやサポート窓口も積極的に活用し、立ち上げ時につまずかないよう準備したい。
スタンプ機能の活用とカスタマイズ
大樹のキーポイントであるスタンプ入力を駆使すれば、カルテ記載の速度と統一性が飛躍的に向上する。デフォルトで用意された1550件のスタンプをまずは使ってみて、不足している項目や自院独特の表現があればカスタマイズ登録していこう。例えば「○○さんクリーニング約束日」等のリコール備忘録や、院長の癖のある表現もスタンプ化してしまえば、スタッフが代理入力する際もミスや表記揺れが減る。スタンプは科目別・処置内容別に整理しておくと探しやすく、自分なりの辞書を作る感覚で整備していくことがポイントだ。導入直後から完璧に作り込む必要はないが、日々の診療で「この入力をもっと簡単にしたい」と気付いたら都度スタンプを改良・追加し、時間短縮とカルテ品質向上に役立てよう。
電子カルテならではの院内ルール整備
紙カルテから電子カルテに移行すると、従来とは異なる運用ルールが必要になる。例えば、入力者の署名や押印が不要になる代わりに、誰がどのカルテを書いたかを明確にするためユーザーアカウント管理を徹底することが重要だ。大樹では複数ユーザーの操作ログを記録できるため、院長・勤務医・助手など役割に応じてアカウントを発行し、責任の所在を明確にしておくと良い。また、カルテに画像を添付できる場合は撮影日や内容のメモを付ける、処方箋発行機能を使うなら薬剤略号の院内統一ルールを決める、など電子化に合わせた運用ルールを院内で話し合っておくとミス防止になる。定期的なデータ整理(不要な一時ファイルの削除やバックアップデータの検証)も電子カルテ運用の一環として習慣付けたい。
トラブルシューティングとサポート体制
使いこなす上ではトラブル対応力も求められる。例えばレセプト請求直前にPCが不調になった場合、まず再起動やバックアップからの復元など基本的な対処を迅速に行えるようにしておきたい。大樹自体は安定しているが、Windowsパソコンで動作する以上、OSの不具合やハード障害は起こり得るためである。院内で対応不能な事態では、迷わずメーカーサポートに連絡しよう。サポート契約期間中であれば電話やリモート接続で支援を受けられるが、受付時間や対応範囲も事前に確認しておくと慌てずに済む。例えば「平日夜間や休日はどうするか」「データが飛んだ場合に参照できる紙記録は用意するか」といった非常時のシミュレーションを行っておけば、万一のダウンタイムも被害を最小限に抑えられるだろう。大樹に限らず電子カルテ全般に言えることだが、備えあれば憂いなしである。
適しているケースと適さないケース
大樹のメリット・デメリットを踏まえ、どういった診療形態・ニーズにマッチするのかを考えてみる。まず適しているケースとしては、やはり「シンプルでコストパフォーマンスの高いシステムを求める場合」が挙げられる。具体的には、保険診療が中心で大量の患者を効率よく捌きたい一般歯科や、開業間もなく予算を抑えたいクリニック、あるいはスタッフ含めITリテラシーが高くないが電子化に踏み切りたい医院などに向いている。これらの場合、大樹の低コスト・基本機能充実・操作簡便という特徴がダイレクトに活きてくるだろう。例えば地方で一人診療を続けるベテラン歯科医にとって、「PCが苦手でも何とか使える範囲のシステムで、費用も安い」大樹はうってつけである。
また、矯正歯科のように自費診療主体でレセプト枚数は多くないがカルテ管理を効率化したいというケースにも適合する。実際に、レセプト枚数が少なくオンライン請求義務を後回しにしていた矯正専門医が、同業者の勧めで大樹を購入し導入したところ、新しいスタッフが数日で操作に慣れ、カルテ入力やレセプト印刷までこなせるようになった例もある。必要十分な機能が詰まった大樹は、小~中規模の歯科医院で「身の丈に合ったIT化」を実現するツールとして適している。
一方で適さないケースもある。まず、大規模な歯科医院や分院展開をしているケースでは、データが各拠点ごとに分散してしまうオンプレミス型の大樹は管理上のハードルが高くなる。クラウド型で統一管理できるシステムや、大手メーカーの手厚いサポート付きシステムの方が安心だろう。
また、最新のデジタルデバイス連携や高度な分析機能を求める場合も、大樹では物足りない可能性がある。例えばiPadで歯周ポケット測定値を入力してリアルタイム連携したい、患者向けWeb予約と自動連携させたい、治療内容や売上をBIツールで分析したい、といった高度なニーズには、より先進的なクラウドサービスやオーダーメイドのシステムが必要になる。大樹はあくまで汎用的な範囲に限定した作りのため、「○○機能がどうしても欲しい」という強いこだわりには応えられない可能性がある。
さらに、クリニックのブランディングを重視する場合も検討が必要だ。例えば高級感を打ち出す審美歯科や最新設備を誇るインプラントセンターが、患者の目に触れる受付画面や診療チェアサイドのPC画面に大樹の質素なインターフェースが映っていると、「古めかしいシステムを使っている医院だ」という印象を与えるかもしれない。実際にはシステムの新旧と診療技術の優劣は無関係だが、患者は見た目の印象で判断することもあるため、そうした点を気にする院長先生には不向きかもしれない。また、Mac製品などWindows以外の環境で統一している場合も、大樹はWindows専用であるため選択肢から外れる。
総じて、大樹は「シンプル・安価・必要十分」を求める医院にはマッチし、「スケーラビリティ・最先端・ブランド力」を求める場合にはミスマッチになりやすい製品と言える。次節では、医院のタイプ別に導入の指針をさらに詳しく見てみよう。
どんな医院に「大樹」は向いているか?(タイプ別の導入指針)
大樹の導入適性を、医院の志向や診療タイプ別に整理する。
保険診療中心で効率を最優先する医院
日々多数の患者を受け入れ、保険診療の回転率で勝負しているような医院では、大樹は有力な選択肢となる。このタイプの医院ではレセコンは単なる事務処理ツールであり、高度な機能よりも止まらない信頼性と処理の速さ、そしてランニングコストの低さが求められる。大樹は軽快な動作で会計処理やレセプト点検をサクサク行え、紙運用に比べて格段に業務効率が上がる。また月数千円という維持費は、診療報酬点数に換算すればごく僅かで、保険点数の収益を極力患者サービスやスタッフ給与に回したい医院にとって理想的である。チェア数が多い医院でも、LAN運用で複数端末を並行稼働できるため、受付と診療で入力作業を分担し患者待ち時間を減らすことが可能だ。ただし患者数が多い分、システムダウン時の影響も大きいので、UPSの導入や予備PCの用意などリスクヘッジには気を配りたい。総じて、大樹は「診療に直結しない部分には極力コストをかけず効率化したい」という経営効率重視型の医院と相性が良い。
高付加価値の自費診療を重視する医院
インプラントや審美治療、矯正など自費率が高く、一人ひとりの患者にじっくり時間をかけるスタイルの医院では、レセコンに求める役割もやや異なる。保険点数業務が少ないためレセコン活用頻度自体は低めだが、その分カルテ管理や顧客管理の重要性が増す。大樹はシンプルゆえに派手なCRM機能などはないが、カルテ情報に基づくリコール管理や次回予約の確実なフォローには十分役立つ。自費診療では術後フォローやメンテナンスのリコールが収益の柱になるケースも多く、大樹の標準機能であるリコール一覧や予約票の発行がフル活用できるだろう。またコスト面でも、自費診療中心で収入が高い医院にとってレセコン費用は経営を左右する項目ではないかもしれないが、だからと言って不要なところにコストを割かず、その分最新の医療機器やスタッフ教育に投資するという考え方もある。大樹なら必要最低限のIT投資で済むため、浮いた予算を本業に再投資しやすい。唯一懸念があるとすれば、前述のように患者への見た目の印象だ。高級感を打ち出す医院でシステム画面の質素さが気になる場合は、患者の目に触れるモニターには治療説明用の画像や動画を表示し、受付画面も極力隠すなどの工夫でカバーすると良い。総じて、「レセコンは裏方」と割り切り、経営資源を他に集中したい自費中心型の医院にも大樹は十分有用な選択となる。
口腔外科・インプラントなど外科処置中心の医院
外科処置をメインとするクリニックでは、手術記録や撮影画像の管理、他院との連携(紹介状・報告書作成)などが日常的に発生する。大樹は紹介状テンプレート作成機能等は備えていないが、工夫次第で対応は可能だ。例えばWordやExcelで作成した紹介状様式を活用し、必要事項は大樹からコピー&ペーストする運用でも十分実用に耐える。また画像管理機能は備えているため、撮影した術中写真やX線画像を患者ごとにデータベースに紐付けて保存し、カルテ閲覧時に参照することもできる(画像そのものの高度な編集機能はないが、保存・表示には支障ない)。外科系は一般歯科に比べ症例ごとの情報量が多くなりがちだが、大樹のカルテはテキストベースで膨大な所見も入力できるため、長文の手術記録も残せる。検索機能で過去カルテからキーワードを探すことも可能なので、「◯年前の◯◯さんのインプラント埋入時の骨幅は…」といった確認もテキスト検索で素早く行えるだろう。
他方、外科中心の医院では学会報告やエビデンス管理の観点から専用のデータベースや分析ソフトを併用することも多く、そうした高度な要求には大樹単体では応えられない。症例写真を詳細な所見付きで管理・共有したり、術後経過を統計分析したりといった用途には、専用ソフトやクラウドサービスと併用する運用が現実的である。幸い大樹はデータを汎用形式(画像ファイルやCSV出力など)で取り出すこともできるため、他システムへの橋渡しは難しくない。例えば患者基本情報はCSVでエクスポートしてDM発送ソフトに取り込む、画像は保存フォルダから直接コピーして学会発表用に加工するといった具合に、大樹をベースシステムとして位置付け、足りない部分は他ツールで補完する戦略が有効だろう。総合的には、外科系であっても「電子カルテ+レセコン」としての基盤を安価に整備できる大樹の価値は大きいが、自院の専門性に応じて必要な機能を見極め、適宜他のITツールと組み合わせて使う視点が求められる。
結論
歯科レセコン「大樹」は、低コストで基本機能が揃った堅実なシステムとして、多くの開業医にとって魅力的な選択肢になり得る。導入することで得られる変化は、経理業務の効率化やカルテ管理の省力化に留まらず、時間と資金の節約によって本来注力すべき診療や患者サービスにリソースを再配分できる点にある。例えばレセプト業務に追われていた時間が患者カウンセリングに充てられるようになったり、浮いた費用で新しい治療機器を導入できたりするかもしれない。大樹は決して派手さはないものの、導入後は縁の下の力持ちとして確実に医院運営を支えてくれる存在である。
もっとも、どんな製品にも向き不向きがあるように、大樹も万能ではない。最新ITを駆使したい医院や、大規模経営で手厚いサポートを求める場合にはミスマッチとなる可能性がある。本稿で述べたメリット・デメリット、そして様々なタイプの医院への適合性を踏まえ、自院にとっての価値を冷静に見極めていただきたい。その上で「コストを抑えて必要十分なIT化をしたい」「とにかく日常業務の効率を上げたい」と感じる先生には、大樹は明日からの強い味方となるだろう。
次の一手として、興味を持たれた場合は実際に大樹のデモや詳細説明を受けてみることをお勧めする。メーカーのサポートセンターに問い合わせれば、操作画面のスクリーンショットや体験版ソフトの提供を受けられる場合がある。また、すでに大樹を導入している知り合いの歯科医がいれば、率直な使い勝手やサポート対応の感想を聞いてみるのも参考になるだろう。導入前に確認すべきポイント(既存データ移行の可否、PC環境の準備、契約更新条件など)をリストアップし、不明点は遠慮なく質問して解消しておくことが成功への鍵である。適切な準備を経て大樹を導入すれば、煩雑だったレセプト業務が驚くほどスムーズになり、医院経営の新たな改善サイクルが回り始めるに違いない。
よくある質問(FAQ)
Q. パソコンが苦手なスタッフや高齢の歯科医師でも使いこなせるか?
A. はい、比較的容易である。大樹は画面レイアウトや操作手順がシンプルで、キーボード入力とマウス操作の基本が分かれば運用できるよう設計されている。導入当初は誰でも戸惑うものだが、スタンプ入力など定型化された仕組みを活用すれば短期間で慣れるはずだ。実際に紙カルテ運用から移行したベテラン歯科医も、最初の数週間で抵抗感が薄れ、その便利さを実感しているケースが多い。メーカーのサポートも電話越しに丁寧に教えてくれるため、不明点があれば逐一確認しながら進めればよい。大樹に限らず電子カルテ全般に言えるが、「触って覚える」姿勢で臨めば、PCが苦手でも十分使いこなせるようになる。
Q. 導入費用以外にどんなコストが発生するのか?
A. 基本的にはパソコン等の機材費とライセンス更新費用以外に大きなコストはない。大樹の場合、ソフトの2年ライセンス料にサポートとアップデート費用が含まれるため、契約期間中の追加料金は発生しない。2年経過後に継続利用する際は再度ライセンス更新料(約90,000円程度)がかかるが、それも2年間分の保守を含んだ料金である。その他、オンライン資格確認を行うなら対応カードリーダーの購入費やネット回線料が必要だが、これは大樹固有の費用ではない。トラブル時の予備機材やバックアップ用ストレージなども一応用意した方が安心だが、こちらも市販品で代用可能なため高額にはならない。総じて、他社システムのように高価な初期導入費や追加モジュール料金が発生しない分、コスト構造は明瞭と言える。
Q. 他のレセコンから乗り換える場合、患者データの移行はできるか?
A. 大部分の患者基本情報は自動移行が可能である。他社レセコンから出力したレセプト電算データ(標準フォーマット)を大樹に取り込むことで、氏名・生年月日・保険情報など患者マスタ項目を一括登録できる機能が用意されている。ただし、カルテの治療経過内容や画像データはフォーマットが各社異なるため、自動では移せない。必要な過去情報は紙に出力して保管したり、PDF化して大樹の画像管理機能に添付するなどの工夫で対応する形になる。メーカーや販売代理店が乗り換え支援を行ってくれる場合もあるので、契約前に現在のシステムからのデータ移行方法について相談しておくとよい。
Q. システムトラブルやパソコン故障時のリスクが心配だが大丈夫か?
A. ローカルPCで動作する以上、クラウド型に比べれば機器故障のリスク対策は必要である。ただ、大樹自体は長年の実績から非常に安定したソフトウェアで、日常的に不具合で業務が止まるようなことは稀だ。万一ハード故障やデータ破損が起きても、日次バックアップさえきちんと取っておけば新しいPCに大樹を再インストールして復元することで比較的短時間で再開できる。実際にユーザーからは「古いPCから新PCへの移行も30分程度で完了した」という報告もある。さらに不安であれば、院内に予備のPCを用意しておき、トラブル発生時にはそちらで稼働できるようにしておくと安心感が増すだろう。メーカーサポートもリモート接続等で復旧を手伝ってくれるため、バックアップとサポート体制を押さえておけば過度に心配する必要はない。
Q. 将来的にクラウド型への切り替えも検討しているが、導入して無駄にならないか?
A. 大樹はあくまでオンプレミス型であり、クラウドへの直接移行パスは用意されていない。しかし、将来クラウド型システムへ切り替える場合でも、大樹で蓄積したデータは標準フォーマットでエクスポート可能なので無駄にはならない。患者情報やレセプト情報をCSVやレセ電ファイルで出力し、新システムへインポートするといった形で大筋のデータ移行は可能だ。そもそもIT業界の進化は早く、現時点で最適なシステムも数年後には様変わりしている可能性がある。その時々で柔軟に乗り換える前提で、まずは現段階で費用対効果の高い大樹を使ってみるのも一つの戦略である。大樹の導入コストは十分低いため、たとえ数年後に他に移行するとしても投資が無駄になる心配は小さい。むしろ、それまでの間に電子カルテ運用のノウハウが蓄積できるメリットの方が大きいだろう。